衆議院財務金融委員会における麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(平成31年2月15日)

(はじめに)

 財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎でございます。
 
 本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

 日本経済につきましては、企業部門の改善が家計部門に広がり、好循環が進展する中で、今回の景気回復期間は、本年一月時点で戦後最長になったとみられ、緩やかな回復を続けております。
 
 このような状況の下、引き続き、経済再生と財政健全化に着実に取り組んでいく必要があり、その鍵となるのは、少子高齢化への対応です。その一環として、全世代型社会保障制度の確立とその持続可能性の確保が極めて重要です。この観点から、「新経済・財政再生計画」に沿った歳出改革等を行うとともに、本年十月の消費税率の引上げを実施することにより、安定的な財源を確保いたします。

 消費税率の引上げに当たっては、低所得者への配慮として軽減税率制度を実施し、需要変動を平準化するための十分な支援策を講じるなど、あらゆる施策を総動員し、経済の回復基調が持続するよう、全力で対応してまいります。

 世界経済につきましては、緩やかな回復を続けている一方、下方リスクも存在します。その中で、本年、日本は、G20議長国として、G20財務大臣・中央銀行総裁会議を日本で初めて開催します。議長国としての機会を積極的に活用し、世界経済の持続可能で包摂的な成長の実現のための基盤づくりに向けて、活発で建設的な議論を主導していく所存です。

(平成三十一年度予算及び税制改正の大要)

 次に、平成三十一年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
 
 平成三十一年度予算につきましては、消費税の増収分を活用し、全世代型の社会保障制度への転換に向けた社会保障の充実を行うこととしております。また、消費税率引上げに伴う需要変動を平準化するため、通常分の予算に加え「臨時・特別の措置」を講じることとし、その一環として「防災・減災、国土強靱化」に対応することとしております。
 
 一方で、「新経済・財政再生計画」に沿って歳出改革の取組を継続し、新規国債発行額を安倍内閣発足以来七年連続で縮減するなど、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算としております。
 
 平成三十一年度税制改正につきましては、消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅と自動車に対する支援策を講じるとともに、デフレ脱却と経済再生を確実なものとするため、研究開発税制の見直し等を行うこととしております。
 
 このほか、国際的な租税回避に効果的に対応するための国際課税制度の見直し、経済取引の多様化を踏まえた納税環境の整備等を行うこととしております。

(今後の金融行政の在り方)

 続いて、現下の金融行政について申し述べます。
 
 金融面でも、経済の好循環の確立に向けて、デジタライゼーションの進展等の課題に的確に対応するとともに、いわゆる金融処分庁の印象から金融育成庁への転換を一層進めてまいります。
 
 金融を巡る環境が変化する中にあっても、将来にわたり金融システムの安定性が維持され、金融仲介機能が発揮されるよう、内外の経済・市場動向を注視するとともに、金融機関の経営者等と、適切な経営戦略の策定・実行、また、ガバナンスの発揮に関して、深度のある対話を行ってまいります。加えて、投資用不動産向け融資については、顧客保護の観点から、更に適切な検査・監督に努めてまいります。
 
 人生百年時代を迎える中、国民の生涯を通じた切れ目のない安定的な資産の形成とその活用を推進するため、金融経済教育を通じた金融リテラシーの向上及び少額からの長期・積立・分散投資を促す「つみたてNISA」の普及等の施策を、包括的に進めてまいります。あわせて、金融事業者による顧客本位の業務運営の取組を深化させるとともに、高齢社会における金融サービスのあり方の検討を進めてまいります。

 また、近時のフィンテックの進展に伴う金融取引の多様化に対応し、金融の機能に対する信頼の向上及び利用者保護等を図るため、金融制度の整備を行ってまいります。
 
 さらに、国際的な議論については、G20議長国として、 国内外共通の新たな課題について、各国と知見を共有しつつ、解決に向けて主導してまいります。

(提出法律案の概要)

 今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案」及び「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。
 
 また、金融庁関係の法律案は、「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案」及び「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」でございます。
 
 法律案の詳しい内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

 以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。
 坂井委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

 

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