参議院財政金融委員会における鈴木財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(令和4年3月3日)

(はじめに)

 財務大臣兼金融担当大臣の鈴木俊一でございます。

 本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

 日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況から徐々に回復しつつありますが、オミクロン株の感染拡大に直面し、国民生活や経済への影響は依然として続いております。また、先行きにつきましては、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されますが、ウクライナ情勢等の影響を含め、下振れリスクにも十分注意する必要があります。

 こうした中、まずは、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期してまいります。また、この感染症による危機を乗り越え、「新しい資本主義」に向けて、「成長と分配の好循環」を実現していく必要があります。そのため、先に成立した令和三年度補正予算の速やかな執行を期すとともに、いわゆる「十六か月予算」として同補正予算と一体的に編成した令和四年度予算、そして令和四年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

 日本の財政は、少子高齢化が進む中、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題に直面しております。財政は国の信頼の礎であり、財政健全化の旗を降ろすことなく、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二一」等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革をしっかり進めてまいります。

(令和四年度予算及び税制改正の大要)

 次に、令和四年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和四年度予算は、先ほど申し上げたとおり、いわゆる「十六か月予算」の考え方のもと、令和三年度補正予算と一体として編成し、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しつつ、「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図るための予算としております。

 具体的には、まず、令和三年度補正予算による感染拡大防止策等を着実に進めるとともに、令和四年度予算においても、引き続き五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置し、予期せぬ状況変化に備えることとしております。次に、「新しい資本主義」の実現のため、成長戦略として、「科学技術立国」の観点から、過去最高の科学技術振興費を確保し、イノベーションを促進するとともに、「デジタル田園都市国家構想」の観点から、地方創生推進交付金等による支援を行うほか、「経済安全保障」の観点から、研究開発等を推進することとしております。また、分配戦略として、看護、介護、保育、幼児教育等の現場で働く方々の処遇改善や、人への投資を推進する施策等に取り組むこととしております。

 同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二一」の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続しております。また、予算の単年度主義の弊害是正に取り組むなど、予算の質も向上させております。

 令和四年度税制改正につきましては、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講ずることとしております。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直すこととしております。

(今後の金融行政の在り方)

 続いて、金融行政について申し述べます。

 新型コロナウイルス感染症による厳しい環境が続く中、金融機関による事業者に対する資金繰り支援の徹底や、経営改善・事業再生・事業転換支援等の積極的な対応を図ります。また、地域金融機関等が、地域経済の回復・成長に一層貢献できるよう、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組を促します。併せて、より利用者利便の高い新たな金融サービスの創出に向けて、金融デジタライゼーションを推進してまいります。さらに、FATF対日相互審査の結果を踏まえ、マネー・ローンダリング等への対処も進めてまいります。

 また、気候変動への対応が重要となる中、国内外の資金が、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組む日本企業に活用されるよう、金融面での取組を進めてまいります。加えて、企業開示においては、非財務情報の開示の充実を図るとともに、四半期開示の見直しを行ってまいります。

 さらに、昨今の金融機関によるシステム障害やサイバー犯罪の動向、金融や経済を巡る様々なリスクを踏まえ、金融システムの安心・安全や信頼の確保に努めてまいります。

(提出法律案の概要)

 今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」及び「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

 また、金融庁関係の法律案は、「保険業法の一部を改正する法律案」、「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案」及び「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」であり、以上、六法律案でございます。

 法律案の内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

 以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢等の影響による、内外の社会経済情勢の変化を注視しつつ、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

 豊田委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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