衆議院財務金融委員会における鈴木財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(令和5年2月8日)

(はじめに)

 財務大臣兼金融担当大臣の鈴木俊一でございます。

 本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)

 日本経済につきましては、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、一部に弱さがみられるものの、緩やかな持ち直しが続いております。一方、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増しております。

 こうした中、足元の物価高を克服しつつ、日本経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていく必要があります。そのため、先に成立した令和四年度第二次補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和五年度予算、そして令和五年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

 日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や累次の補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠であると考えております。責任ある経済財政運営を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要であります。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進してまいります。

(令和五年度予算及び税制改正の大要)

 次に、令和五年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和五年度予算は、歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り拓くための予算としております。

 具体的には、新たに策定された国家安全保障戦略等の下での防衛力の抜本的な強化やその裏付けとなる財源の確保、本年四月に新たに設置されるこども家庭庁を司令塔とした、こども・子育て支援の強化、GXの実現に向けた「成長志向型カーボンプライシング」による民間投資を支援する仕組みの創設、デジタル田園都市国家構想の下での地方公共団体のデジタル実装の加速化や地方創生に資する取組への支援など、現下の重要課題に正面から向き合い、一定の道筋を付けております。

 また、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費を四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費を一兆円措置し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や物価高騰、世界的な景気後退懸念など、予期せぬ状況変化に引き続き万全の備えを講じることとしております。

 同時に、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成するとともに、社会保障関係費以外について、防衛関係費の増額を達成しつつ、経済・物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行うことを通じて、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

 令和五年度税制改正につきましては、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行うとともに、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化するための税制上の措置を講ずることとしております。また、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバル・ミニマム課税の導入及び資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行うこととしております。

(今後の金融行政の在り方)

 続いて、金融行政について申し述べます。

 新型コロナウイルス感染症や物価高騰等による厳しい環境が続く中、金融機関による事業者に対する資金繰り支援の徹底や、経営改善・事業転換・事業再生支援等の積極的な対応を図ります。また、地域金融機関等が、地域経済の回復・成長に一層貢献できるよう、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組を促します。さらに、事業性に着目した融資を促進するための制度や実務の在り方に関する検討を進めてまいります。併せて、金融市場の変動を含めた金融経済情勢の動向や、マネー・ローンダリング対策等の強化に関する国際的要請、サイバー犯罪の動向を踏まえ、金融システムの信頼の確保に努めてまいります。

 次に、国民の安定的な資産形成に向けて、NISA制度等の普及に向けた取組を進めてまいります。また、幅広い金融事業者等による顧客本位の業務運営の取組の定着や底上げが図られるよう、必要な対応を行ってまいります。併せて、国全体として中立的立場から金融経済教育を推進する機構を設立し、広範な観点から金融リテラシーの向上に向けて取り組むとともに、顧客の立場に立ったアドバイスの提供を促すための環境を整備してまいります。

 また、気候変動、少子高齢化をはじめとする社会的課題の解決に向けて、サステナブルファイナンスの更なる推進を図ってまいります。加えて、企業開示におきましては、人的資本を含む非財務情報の開示の充実を図るとともに、四半期開示の見直しを行ってまいります。さらに、利用者利便の高い新たな金融サービスの創出に向けて、利用者保護に配慮しつつ、金融デジタライゼーションを推進してまいります。

(提出法律案の概要)

 今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」、「株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案」及び「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

 また、金融庁関係の法律案は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案」であり、以上、七法律案でございます。

 法律案の内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

 以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、内外の社会経済情勢を注視しつつ、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

 塚田委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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