衆議院財務金融委員会における鈴木財務大臣兼金融担当大臣の所信表明
(令和5年11月1日)
(はじめに)
財務大臣兼金融担当大臣の鈴木俊一でございます。本委員会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)
日本経済は、コロナ禍の三年間を乗り越えて改善しつつありますが、輸入物価の上昇に端を発する物価高の継続は、国民生活を圧迫し、回復に伴う生活実感の改善を妨げています。こうした経済の現状を踏まえ、足元の物価高から国民生活と事業活動を守るとともに、長年続いてきたコストカット型の経済からの脱却を図り、構造的な賃上げと攻めの投資によって、消費と投資の力強い循環につなげていくため、総合経済対策の速やかな取りまとめに努め、また、その裏付けとなる補正予算についても、速やかに編成してまいります。
令和六年度予算については、国内外の構造的な課題の克服に向けた改革を前に進めるため、必要な予算を重点的に振り向けるとともに、財政投融資も活用し、持続可能な成長の実現に向けた経済構造の強化を進めてまいります。
同時に、コロナ禍から脱していく中で、歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないことも重要です。こうした考え方の下、これまでの歳出改革努力を継続することにより、経済成長と財政健全化の両立に向けて、引き続き取り組んでまいります。
併せて、市場動向も踏まえつつ、市場との緊密な対話に基づき、引き続き安定的な国債発行に努めてまいります。また、GXの推進に向けて、GX経済移行債の発行も進めてまいります。
税制については、引き続き、経済社会の構造変化に対応した税体系全般の見直しを進めるとともに、インボイス制度の定着に向けて、事業者の立場に立って、柔軟かつ丁寧に対応してまいります。
国外に目を向けますと、本年、日本は、G7議長国として、ウクライナ支援や対露制裁、途上国の債務問題や国際金融機関の改革、国際保健などについて、議論を主導してまいりました。今後とも、世界経済を巡る国際的な対応に貢献してまいります。
また、税関行政につきましては、入国者数と輸入申告件数が増加してきていますが、引き続き、不正薬物やテロ関連物資等の厳格な水際取締りと円滑な通関の両立に努めてまいります。
(今後の金融行政の在り方)
続いて、金融行政について申し述べます。物価高騰等による厳しい環境が続くとともに、実質無利子・無担保融資の返済が本格化している中、金融機関による事業者の実情に応じた経営改善支援、事業再生支援等の徹底を促してまいります。また、地域金融機関が、地域経済の回復・成長に一層貢献できるよう、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組を促します。さらに、事業性に着目した融資を促進するための制度や実務の在り方に関する検討を進めてまいります。併せて、国内外の金融経済情勢の動向を注視し、金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、法令等の遵守の徹底も含め、金融システムの安定や信頼の確保に努めてまいります。
次に、「成長と分配の好循環」を実現していくため、資産運用業とアセットオーナーシップの改革や、資産運用業への国内外からの新規参入と競争の促進など、資産運用立国の実現に向けた取組を推進するとともに、国内外への積極的な情報発信を行ってまいります。また、国民の安定的な資産形成に向けて、新しいNISA制度の普及・活用促進や、金融経済教育の充実に向けた体制の整備等を進めてまいります。併せて、幅広い金融事業者等による顧客本位の業務運営の取組の定着や底上げが図られるよう、必要な対応を行ってまいります。
また、社会的課題の解決と持続的な成長に向けて、サステナブルファイナンスの更なる推進を図ってまいります。加えて、コーポレートガバナンス改革と企業開示におきましては、大量保有報告制度の見直しや、人的資本を含む非財務情報の開示の充実、四半期開示の見直しを行ってまいります。さらに、利用者利便性の高い新たな金融サービスの創出に向けて、利用者保護に配慮しつつ、金融サービスのデジタル化や金融機関のDXを推進してまいります。
(臨時国会提出法律案)
今後、御審議をお願いすることを予定している金融庁関係の法律案としては、第二百十一回国会に提出し参議院において継続審査となっております「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」及び「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案」がございます。金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護等を図るため、速やかな御賛同をお願いいたします。
(むすび)
今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。津島委員長をはじめ、委員各位におかれましては、御理解と御協力をお願い申し上げます。