令和7年3月11日

参議院財政金融委員会における加藤財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

財務大臣兼金融担当大臣の加藤勝信でございます。本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方

日本経済は、三十三年ぶりの高水準の賃上げ、過去最大規模の設備投資、名目六百兆円超のGDPが実現するなど明るい兆しが見られております。これを確かなものとし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していく必要があります。

こうした中、賃金・所得の増加を最重要課題とし、省力化・デジタル化投資支援等の賃上げ環境の整備や成長分野における投資促進などにより、生産性や付加価値を高め、安定的に賃金・所得が増えていくメカニズムを構築してまいります。そのため、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」及び「国民の安心・安全の確保」を柱として閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」と、その裏付けとなる令和六年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、令和七年度予算、そして令和七年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

同時に、財政は国の信頼の礎であり、我が国を取り巻く諸課題に的確に対応するため、歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、不測の事態においても日本の信用や国民生活を守るための財政基盤を平時より備えることが不可欠です。日本の財政は、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、引き続き厳しい状況にあることも踏まえ、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」で示された「経済・財政新生計画」の枠組みの下、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでまいります。

このように、経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。

令和七年度予算及び税制改正の大要

続いて、令和七年度予算及び税制改正について、衆議院における御審議に際して修正を受けましたので、政府案及び衆議院における修正を御説明申し上げます。

令和七年度予算の政府案では、官民連携のもとでの「AI・半導体分野の投資促進」や「GX投資促進」の実施、「こども未来戦略」に基づく子育て支援の本格実施、「防衛力の抜本強化」の着実な実施といった、複数年度で計画的に取り組むこととしている重要課題への対応のほか、地方創生交付金の倍増や、内閣府防災担当の予算・定員の倍増など、重要政策に予算を重点的に配分しています。

あわせて、公務員・教職員・保育士の給与改善や物価動向の反映などを行いつつ、政策的予算を適切に確保するなど、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」に基づき、経済・物価動向等に配慮しつつ、これまでの歳出改革努力を継続しています。

また、財政投融資計画につきましては、成長型経済への移行に向けた取組を進めるため、必要な資金需要に的確に対応してまいります。あわせて、金融市場の状況に変化が見られる中で、市場との対話に基づき、引き続き安定的な国債の発行に努めてまいります。

その上で、衆議院における修正により、いわゆる高校無償化関係の修正増加、高額療養費制度関係の修正増加、所得税の収入の修正減少等による一般会計予算の歳出・歳入総額の修正減少等が行われています。

令和七年度税制改正の政府案では、まず、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額等の引上げ及び大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行います。また、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充するとともに、国際環境の変化等に対応し、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置や外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行います。

その上で、衆議院における修正により、低所得者層の税負担に配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設することとされております。

さらに、税務行政においては、税務を起点とした社会全体のDXを推進しつつ、納税者利便の向上や適正・公平な課税・徴収の実現を効率的・効果的に推進してまいります。

国際的課題への対応等

世界経済の安定を維持し、持続的な成長を実現するには、国際協調の推進が重要です。二国間や多国間の様々な機会を活用して、ウクライナ支援や対露制裁、国際開発協会等を通じたグローバル・サウスへの支援、サプライチェーンの強靱化等の取組を進めるとともに、国際金融機関の改革や途上国の債務問題、国際保健などの議論に貢献してまいります。

税関行政につきましては、入国者数と輸入件数が急増する中、不正薬物や金の密輸入の摘発件数が高水準で推移しています。本年は大阪・関西万博が開催され、更なる入国者数の増加等が見込まれるところ、テロ対策も含めた厳格な水際取締りと円滑な通関の両立に努めてまいります。また、軍事転用のおそれのある製品や技術の不正輸出等を防止すべく、輸出貨物の審査・調査の強化にも取り組んでまいります。

今後の金融行政の在り方

物価上昇や人手不足への対応等、地域の事業者が抱える経営課題が多様化する中、金融機関が、金融仲介機能を十分に発揮するとともに、持続可能なビジネスモデルの確立に向けて取り組むことを促します。さらに、国内外の金融経済情勢の動向を注視し、金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、法令遵守態勢の徹底、顧客本位の業務運営の定着・底上げに取り組み、金融システムの安定や信頼の確保に努めてまいります。加えて、保険に対する信頼性の確保及び健全な発展を図るため、保険会社及び損害保険代理店の体制強化等に向けた環境整備を行います。

次に、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の政策を推進してまいります。具体的には、NISAの適切な活用促進も含めた金融経済教育の充実や、コーポレートガバナンス改革の推進、資産運用業の改革やアセットオーナーシップの改革に取り組んでまいります。あわせて、我が国市場の魅力を国内外へ積極的に発信してまいります。

さらに、社会的課題の解決と持続的な成長に向けて、サステナブルファイナンスの更なる推進を図ってまいります。加えて、金融のデジタル化等の進展に対応し、送金・決済サービスに関する規制の見直しや暗号資産に関する制度の検証等を行い、利用者保護を確保しつつ、イノベーションを促進してまいります。

提出法律案の概要

今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」、「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」、「株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律案」及び「特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」でございます。

また、金融庁関係の法律案は、「保険業法の一部を改正する法律案」、「信託業法の一部を改正する法律案」及び「資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」であり、以上八法律案でございます。

法律案の内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、内外の社会経済情勢を注視しつつ、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

三宅委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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