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与謝野内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策) 記者会見要旨

(平成18年9月8日(金)10時26分~10時54分 於 金融庁会見室)

1.発言要旨

閣議は案件どおりでございましたが、当方に関係しますのは、内閣府政務官後藤田正純の願いにより職を免ずるという決定がなされました。

以上です。

2.質疑応答

問)

一部報道で、デフレ脱却宣言を内閣府が見送るという報道がありましたけれども、改めまして大臣のデフレ脱却に関する御認識をお聞かせください。

答)

従来から、私は、デフレ脱却宣言が経済の問題として意味があるのかどうかということを申し上げてきました。しかしながら、小泉内閣がこの9月に終わるわけですから、経済の問題の総括をする必要があるのではないかと思って総理にお尋ねしたところ、「政治的な判断はしなくてよい。自分としては専門家の判断に委ねる」ということでしたので、私どもとしても淡々と、専門家があらゆる統計、経済指標を駆使して判断する、それを国民に御報告することにしたいと思っております。

問)

総理の御意向を確認されたのは、いつ頃ですか。

答)

今から一月半ぐらい前ではないかと思います。

問)

内閣府内では慎重な見方が多いのですけれども、そういう結果が上がってくれば、それを尊重するというお立場でよいのでしょうか。

答)

経済情勢とは関係なく、5年数カ月にわたる小泉内閣の経済財政政策の総括をする必要があるのではないかということを考えて総理にお伺いしたのですが、それは専門家の判断に委ねるということを言われましたので、それならば従来どおりの考え方でやっていこうということでやっております。

もちろん、いろいろな国内指標もありますし、主要な貿易相手国である中国を始めアジアやヨーロッパの経済動向等を総合的に勘案しなければならないと。これは外需がどうなるのか、世界的な流動性がどうなるのか、あるいは世界的な長期金利の水準がどうなるのかなど、諸々のことを考え、さらにもう一つの不安定要因である原油価格のベクトルが上に向いているのか、あるいは若干下を向くのかといった不確定要因も勘案しながら物事を考えていかざるを得ないと思っております。

問)

大臣から冒頭にお話がありました後藤田前政務官に関して、後藤田前政務官の問題提起が今の貸金業規制の見直しの問題に与える影響について、大臣はどうお考えかというのが1点。それから、自民党で昨日、一昨日と論議があったようですが、論議がまとまらず、結論は来週に持ち越されたようですけれども、改めて今後の貸金業制度のあるべき姿について、大臣はどのようにお考えか教えてください。

答)

後藤田さんは正義感の強い方で、この貸金業の問題については、利息制限法、出資法、貸金業法それぞれについて改革に向けて非常に強い推進力を発揮されておられたと私は思っております。

金融庁案なるものは、三國谷局長の下につくられた懇談会の意見を正確に反映しなければならないと。また、自民党の金融調査会や公明党の考え方をも正確に反映する案を作ることに腐心してきたわけでございます。その結果、もちろん途中段階で与党の枢要な方々と打ち合わせをしながら進めてまいりまして、私どもとしては両者の御提言に沿う形の案を作り、機微に触れる部分については、「これは1案です」という注をわざわざ付けながら御提示申し上げ、これについて議論が始まったということは、むしろ歓迎すべきことだろうと思っております。

貸金業につきましては、今回の出資法、利息制限法で皆様方に御注目いただきたいのは、まず貸金業を始めるに当たっての参入条件が非常に厳しくなっております。1つは、純資産5,000万円ということがほぼ決まりそうですし、それから従来、宅地・建物を取引する時には宅建の資格を持っていなければいけませんが、今回は貸金業についても資格制度を設けるということで、参入のためには資産の面でも知識・資格の面でも、きちんとした体制で始めなければならないと。

それから、参入条件で最も厳しく、またその他のことにも大きく影響を受けることは、一つのコンピュータシステムに全業者がぶら下がる、というのはあまり正しい表現ではないのですが、信用情報や取引情報という点で、一つのコンピュータシステムに全業者が加入しなければならない、加入しないと貸金業自体が始められないと。ここのところが、実は今回の全体の法改正の決定的なところだと私は思っておりまして、その点は、これから述べますいろいろな点について、一応、行政がいろいろ物事を判断できる、あるいは業界が物事を判断できる基礎になると思っています。

金利については、法施行まで1年、それから今申し上げましたように膨大なコンピュータシステム、ソフトでございますから、そうしたソフトを計画し作り、試運転するのにそれぞれ1年ずつぐらい時間がかかることなので、全業者がコンピュータに参加して業務を開始できるのはこれから4年後というのが、私は常識的な線だろうと思っております。

実際は、その4年後から出資法の上限金利と利息金利の上限金利は一致する、4年後に一致するというように理解していただかないと正確ではないのだろうと思っています。

それでは、これからの1年プラス3年の間、グレーゾーンは存在するのか。これは、法的には存在するわけでございますけれども、グレーゾーンの部分で契約する場合には、業者に説明責任を課しておりまして、特に大手は、グレーゾーンで契約しても、その後返還請求されるリスクがございますから、事実の問題としては、グレーゾーンの契約というのは、大幅あるいは決定的に減少すると私は考えております。

それから、4年経った時に出資法と利息制限法の金利が一致いたしますが、それ一本槍でよいのかということを考えますと、やはり貸金業の懇談会でも、あるいは自民党・与党の考えでも、少額短期のものについては、道を開いた方がよいのではないかと。これは、業者寄りということよりは、むしろ利用者に対する激変緩和的な措置としてやったらよいと。こういう考え方で、金融庁として一案をつくりました。これを、党の方がどういう議論をされるのかということは、これからでございます。

しかし、よくこれを見ていただくと、他の消費者金融から1円でも借りていた人は、この少額短期というのは利用できないという規定になっています。それから、少額短期だからといって、たくさんの業者から借りることもできないと。業者数も3社、それから総額も、30万円に落ち着くのか50万円に落ち着くのかは党の判断ですが、総額として30万円ないし50万円ということですから、私は少額だと思っております。しかも、1年未満ということは、法律上、義務付けられておりますから、短期という意味では期間も義務付けられていると。

最もこの貸金業の問題で問題になりましたのは、多重債務者がたくさん発生して、いろいろな意味で悲しい結果をもたらしていると。この多重債務者の発生をどう抑えていくのかということ。これは、1つは、貸金業というのは1万数千社ございますから、その1万数千社の行っている貸付業務全体を掌握しなければ多重債務の発生は抑えられないということで、一つのコンピュータシステムに全部の業者が参加して、全部の取引をそこに報告するシステム、これはいわば革命的なシステムなので、その点は皆様方もご研究していただければと私は思っております。

それから、多重債務の時にそれだけで管理が行き届くのかということですが、多重債務者が、お金を借りに行くと必ずそのコンピュータシステムに、何丁目何番地の何の誰兵衛さんはどういう借入を消費者金融会社から行いますかということを照会しなければいけない。そうすると、その方の借入の現状が全部把握できると。それで、今度は貸付限度をどうするかということですが、考え方としては、累積残高は年収の3分の1を超えてはいけないという規定を設けております。

これは、一連の話は、罰金も倍ぐらいにいたしますし、懲役刑も、従来最高刑が5年だったものを10年にいたします。それから、自主規制とはいえ、広告などの活動についても自主規制機関が規制すると。どう規制するかについては、金融庁の認可事項でございますから、事実上の間接規制ではございますけれども、貸金業者の派手派手しい広告に対しては一定の歯止めがかかり得る措置が盛り込まれていると。それから、取り立てについても、規定を見ていただくと、かなり厳しい規定を設けておりますので、全体としては、今回自民党が考えられた案は、画期的な厳しさを実は内包していると私は理解しております。

いずれにしても、特例金利が残る残らないという問題は、所詮3年か5年の話でございまして、この法案さえ通れば、一定期間過ぎれば非常に整合性のとれたきちんとした法律の姿が現れるのだと私は思っております。

ただ、これは金融庁としては、与党の御注文に応じてその範囲内で考え得るベストな案を提出させていただいたわけですから、今後は与党の中の御議論、多分月曜日にもう一度開かれると思いますが、その議論を待ちたいと思っております。

以上です。

問)

確認ですが、大臣のお考えとしては、与党に示した金融庁の検討案は、昨日一昨日の議論を踏まえて、金融庁の方から変える必要はないとお考えですか。

答)

もともと議員立法でやっていただいて結構ですという立場でございましたが、今回の法改正は、役所でいえば金融庁、法務省にまたがる話ですし、それから改正の内容が単に金利の部分のみというものではなくて、例えば信用情報について一元化するといった非常に難しい法案の内容になっておりますし、自民党の方から、自分たちが考え方をまとめる、それに基づいて内閣提出でやってほしいということですので、我々としては与党の中の結論を待って、それで具体的な立法作業に取りかかるという立場でございます。

問)

後藤田前政務官が辞められる時に繰り返しおっしゃられたのが、大臣の特例に反対する意向を無視した形で今回の案がまとめられたということですが、それについてはいかがですか。

答)

この特例については、私は多分2度オープンな場でお話をしております。それは、懇談会の場で、特例が特例でなくなるようなことでは困りますと。これはどういう意味かといいますと、特例という条項を作って、それを永久的に生き延びさせる。臨時異例の特例ではなくて、恒久的な制度をつくってしまう。これはだめですと。飽くまでも暫定的なものであるべきだということを、私はあそこで示唆したつもりでございます。

それからもう一つは、この記者会見で、やはり制度を変える場合には、激変緩和的な、また関係者が穏やかに着地できるようにするべきだということも申し上げましたので、金融庁の案は、私の考え方に沿ったものでございます。

問)

デフレ脱却宣言は、以前はそういうものが本当に必要かどうか疑問視していたと思うのですけれども、それで総理から専門家に任せますからということになると、経済あるいは物価情勢、国際金融、経済情勢をみて宣言をするということでよろしいですか。

答)

前々から申し上げましたように、「デフレ」という言葉を使う時に、経済全体を捉えて「デフレ」という言葉を使うのか、総合物価を捉えて言うのか、あるいは石油製品等々を除いて判断するのか。今の時点で最後に残っているのは、物価の動向という意味でのデフレという表現であると思っております。

しかしながら、日本の経済は、その物価の動向の他に、やはり世界の経済とつながっているという意味では、原油価格の動向あるいは米国を始め日本の主要な貿易相手国の経済の動向には当然左右されるわけですから、次の月例経済報告では、やはり単一の項目に着目して物事を判断するのではなくて、国内の状況あるいは国際的な経済の動向等をみて、日本の経済の動向を判断していくことになると思っております。

問)

以前、大臣は、個人的にはデフレ状況を脱しているとおっしゃったかと思うのですけれども、その認識自身はお変わりないのでしょうか。

答)

国民が使っている「デフレ」という表現は、最初「デフレ、デフレ」と使っていた時には、いわば供給過剰の状況で物価がどんどん下がる、経済が縮小し、その縮小がまた縮小をもたらすという、いわばデフレスパイラル、縮小均衡的な危険を感じながら「デフレ」という言葉を使っていたわけです。そういう状況はもうとっくの昔になくなっており、失業率や設備稼働率等々を見れば、もう相当以前に脱却しているわけです。物価の問題としては、統計の取り方もありますし、物価が下がる要因も、供給過剰で需要が不足であることによることもありますし、輸入物価の下落によってもたらされることもありますし、大変需要が旺盛である中でも、激しい競争によって物価が下がることもある。例えば、薄型テレビなどはその典型です。物価下落が国民にとって歓迎すべきものでないのかといえば、物価が安定している、ないしは自分が買いたい物が少しずつ安くなるという意味では、消費者にとってそんなに悪い話ではないと、私は思っております。

問)

デフレ脱却判断を巡っての最後の判断基準としては、デフレに後戻りしないということが議論の焦点になっていたかと思うのですけれども、大臣御自身は、後戻りはしないというように御覧になっていますか。

答)

専門家はやはり専門家としての判断を求められるわけですから、後戻りしないということについて、かなり強い心証を持ちたいということなのだろうと思っております。どういう心証が形成されるのかは、まだ話を伺っておりませんので判りませんが、こういう判断をしろとか、ああいう判断をすべきだということを私どもの方から申し上げるつもりはなく、全く独立して専門家らしく御判断をいただければ、それは従容として受け入れるということでございます。

問)

9月の月例経済報告での判断は、まだ決めていないということですか、それともデフレ脱却判断は見送るということですか。以前よりも非常に慎重な言い回しになっているようにお伺いするのですけれども。

答)

まだお勉強中なのではないかと思います。

問)

大臣は以前記者会見で、この貸金業制度の見直しに関連して、グレーゾーン金利の廃止まで3年、特例金利が5年存続するという期間について、個人的にはそんなに必要かなという思いもあるということをおっしゃっていましたけれども、この期間についても、今の金融庁案は大臣のお考えに沿ったものだということでしょうか。

答)

3年から5年と書いてありますから、私の考え方はその範囲に入っています。

問)

今日が自民党の総裁選の公示日ですけれども、大臣の個人的な見解で結構なのですが、これまでの候補者の政策の中で共鳴できる政策あるいは候補者は、もう意中にいらっしゃるのでしょうか。

答)

私にとってですか。誰が立候補するか、今日わかりますので、その上で御判断を申し上げたいと思います。

(以上)

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