「金融市場戦略チーム」第一次報告書公表に係る
渡辺大臣・髙尾座長共同記者会見の概要

(平成19年11月30日(金)12時08分~13時03分 場所:金融庁会見室)

  1. 冒頭発言
  2. 報告書の構成
  3. サブプライムローン問題の展開
  4. サブプライムローン問題が市場混乱につながった原因の分析
  5. グローバルな視点からの市場正常化に向けた道筋
  6. 我が国としての対応
  7. 質疑応答

【冒頭発言】

大臣)

金融市場戦略チームで10回ほど議論を重ねていただき、第一次レポートを本日まとめていただきました。大変中身の濃いレポートになっております。残念ながら問題の出口がまだ見えてきておりませんので、この戦略チームには今後も引き続き議論を深めていただきますよう先ほどお願いを申し上げた次第でございます。それでは髙尾(義一)座長(朝日ライフアセットマネジメント常務執行役員)からお話をさせていただきたいと思います。

座長)

渡辺大臣の私的懇談会といたしまして、この9月より当金融市場戦略チームはスタートいたしましたけれども、本日で10回目ということで、サブプライムローン問題を中心とした議論を踏まえた成果として第一次報告書を大臣にただいまお渡ししたところでございます。

本日はお手元に報告書と、それから全体を概観いたしました資料1枚をお付けしていると思いますけれども、全体を一つ一つ説明いたしますと時間がかかりますので、概略としてどういったことがあるかということを一枚紙でご説明させていただきたいと思います。

【報告書の構成】

PDF一枚紙をご覧いただきますと、前提といたしましては、今回の報告書では第一点はいわゆるサブプライムローン問題とはなにか、どういった経緯であったかということを取り上げまして、第二にそうしたいわゆるサブプライムローン問題に端を発する金融市場の混乱が生じてきた背景及び原因を考えてございます。そして、その原因分析等々を踏まえまして、三つ目といたしまして、グローバルな観点から見た場合に市場の正常化等に向けてどういったことがなされていて、どういうことをすべきかということについて、戦略チームで重要だと思われることを議論してございます。そうしたことを踏まえて、四つ目に我が国としての対応ということで八点ばかり挙げさせていただいております。

【サブプライムローン問題の展開】

それではまず初めのサブプライムローン問題についてですが、これはいまさら説明するまでもないと思いますが、いわゆる信用力の劣る借り手に対する住宅ローンということでございますけれど、残高といたしましては日本円に直しますと約140~170兆円程度、それから、住宅ローンの保有世帯が全米で約5,000万世帯といわれておりますけれど、サブプライムローンについては約1,000万世帯に上ろうかと思います。こうした中で2006年あたりからアメリカの住宅市場の調整が始まりまして、2007年に入りますと春に若干金融市場の問題が出たわけでありますけれど、本格化したのはこの夏に入ってからでございます。ベアースターンズ傘下のヘッジファンドの経営危機等々に端を発しまして、当初は市場リスクといいますか、いわゆる価格変動リスクであったものが、7月、8月を経まして、ついには流動性リスクが発生するに至ったと、こういう経緯を踏まえまして、9月、10月に少し改善が見られたものの、10月末から11月に入りまして再び問題が大きくなってきていると、市場リスクから発生したものが流動性リスクに発展をし、最近ではソルベンシーの問題に発展しているのではないかと推測されているところでございます。しかも、状況がまだ動いているということかと思います。

【サブプライムローン問題が市場混乱につながった原因の分析】

こうしたサブプライムローン問題でございますけれど、背景は、証券化等の金融技術の普及により金融仲介として新しいパターンができてきたと言われます。従来のオリジネイト・トゥ・ホールド(Originate to Hold)モデル(その後も保有することを前提に信用を創造するというビジネスモデル)から、オリジネイト・トゥ・ディストリビュート(Originate to Distribute)モデル(自らは保有せず他に移転することを前提に信用を創造するというビジネスモデル)という状況が発生したということかと思います。しかも、Distributeの中で証券化ということが当たるかと思いますけれど、一次証券化から更に二次証券化というところまで進んで、証券化の中でも大きく変化があったと思います。こうしたプロセスを一枚紙のちょうど真ん中あたりに図示してございますけれど、借り手からスタートいたしまして、住宅ローンモーゲージの貸し手、証券化商品のいわゆる組成者、セキュリタイザーと申しますか、そういった参加者があって、そうした証券化商品の組成者に対してそうした証券化商品を格付けするということで格付会社が一応参加している。それから、こうした組成者が組成した商品を販売する業者が当然入ってくる。それからその先には当然、投資家が存在するわけでございます。こうしたプロセスにつきましてはこれまでもご説明したところでございますから、一つ一つ説明することは省きたいと思います。

(三つの不確実性)

こうした新しい金融仲介の中で今回サブプライムローン問題として金融市場で混乱的になってきた背景といたしましては、三つの不確実性といいますか、これが顕現化してきたということがあるのかと思います。第一点がこうした証券化プロセスの中でOriginate to Distributeしていく過程でリスクの所在が不確実になってきていたという実態です。もう少し言いますと、リスクの量とその分布、誰が持っているのかというところがなかなか簡単には把握ができない。それから第二点といたしましてこうした証券化商品の価格形成がかなり容易ではない事実、それから三つ目はこうしたことも重なりまして、流動性の不確実性が発生してきている、この後ろにはいわゆるコンデュイット(導管体)と申しますか、SIV(ストラクチャード投資ヴィークル)に対する流動性補完等々を経由いたしまして、金融機関の流動性問題として波及するリスクが発生してきている、あるいは、昨今CDO(合成債務担保証券)に対して格下げ等々があった場合にCDOを売却したものを引取るといういわゆるリクイディティ・プットと呼ばれていますけれど、こうしたものもございまして、金融機関から見ますと流動性の状況が極めて複雑になっている。また、金融機関の運用につきましては長短のミスマッチが発生する。流動性のほうは一夜にして、瞬時に消える事態すら夏場には発生した。そしてこうした三つの不確実性が別個に発生しているわけではなくて相互に作用しながら進行していて、しかもこうした三つの不確実性の状況というのは現在も継続中であると一応考えております。

(考えられる問題点)

こうした状況を受けてどういった論点といいますか問題点が指摘できるかということでございますけれど、大きく分けますと今回の第一次報告書では市場参加者といいますか、プレイヤーの観点に視点を当てたわけでございます。プレイヤーはご覧いただきますとおりその図に描いてあるものですべてでございまして、これが第一点で、プレイヤーごとにどういった問題点があるかということを報告書ではたくさん指摘してございますけれど、エッセンスをまとめますと、主な問題点というところでございますけれど、4点に一応まとめてございます。これが一つ。もう一つは、今回の金融問題というのは旧来のパターンとは違って、旧来はある個別銀行で問題が発生してそれがインターバンク等を経由して金融システム等々に派生していくというプロセスをとるわけですけれど、今回は個別行に問題があるわけではなくて、市場で問題が発生してそれが個別行に対して影響し、全体の金融システムに波及していくといういわゆる新しい型の金融危機になるわけでありますけれど、これへの対応及び監督体制をどうしていくかという問題があるわけです。このように、プレイヤーごとに見た時の証券化プロセスの中で存在する問題点、それから市場発の新しい金融危機への対応の二点を今回主に取り上げているわけでございます。

こうした観点で、まず最初のプレイヤーごとでございますが、主な問題点として四点挙げさせていただいております。

まず第一点は原債権のリスクについて、各段階の貸し手から始まりまして、証券化のセキュリタイザーあるいはアレンジャー、格付会社、証券化商品の販売者、投資家等々当事者間で情報伝達が適正になされていたかどうか、これがやはり大きな問題で、今回はどうも適正な情報伝達がなされていなかったのではないかということが指摘できるかと思います。

第二点は、証券化商品の組成者において一定部分のリスク性のあるものを保有せずに証券化商品を組成し、投資家に安易にそうしたリスクを移転(トランスファー)していたのではないか、これはOriginate to Distributeモデルに内在する基本的な問題でございますけれど、こういった信用リスクのトランスファーが当事者間で安易に行われていた形跡があるわけでございまして、これは経済学的に言いますと一般的にはプリンシパル・エージェント・プロブレムと呼ばれているわけでございますけれど、それが典型的に発生したケースではなかったかなということ、平たく言えば総無責任体制ができていたということであろうかと思います。

第三点は格付会社でありますけれど、証券化商品の格付ビジネスに利益相反の可能性が内在していたのではないか、この辺もある回の会合でこうした問題については若干ご説明差し上げたのではないかと思います。それから格付会社につきましては、モデル内容やその妥当性及び格付に際して使用しているデータ等について適切性がいかがであったか、それからディスクロージャーがどうであったか、こういったところが指摘できます。それから格付の情報の意義について誤解を与えてはいなかったか、格付というのは信用格付といいますかクレジット格付でありますけれど、証券化商品の中には信用格付ではなくて、価格変動あるいは流動性に対する問題も入ってくるということで、これまでのところクレジットリスク+αという形で表現してまいりましたけれど、こういったものがあって格付会社から見ればこれはクレジットリスクに対してのみの格付である一方で、投資家のほうはクレジットの格付に加えまして流動性の格付あるいはプライシングの格付も含んだものであるとどうも誤解していたのではないかというような見方もあるわけでございます。

それから第四点は、金融機関を含めました投資家サイドにおいて適切にリスク管理あるいはディスクロージャーがなされていたかという問題がありますけれど、投資家においては証券化商品の購入等に当たっては格付に過度に依存していたのではないか、及び、そうした流動性リスクを適切に管理していたかどうか、ということがあろうかと思います。

【グローバルな視点からの市場正常化に向けた道筋】

こういった論点を整理いたしまして、次にどういった対策が必要であろうか、あるいはするべきであるかということでありますけれど、まず今回の問題というのはグローバルな問題でありますからグローバルな視点でどのような取組みがなされているかということをまず整理、ないし分析してございます。全体としますと、サブプライム問題の震源地はアメリカ、ないしこの先欧州が入ってくるかもしれませんが、この問題については現状欧米で検討されている最中の問題でございまして、この段階でどういうことを具体的に結論付けるかということは申し上げられないし、まだ不明でございますけれど、日本サイドから見まして一般的にいえますことは四つばかりございます。

まず第一点は証券化商品のいわゆるエクスポージャーの開示をしっかりとするべきであるということであります。第二点はそうしたエクスポージャーの開示に加えましてそうしたエクスポージャーのプライシングを適正なものにする、それから公正価値という概念がございますけれど、適正な公正価値でプライシングをし、その上で発生しているロスをしっかり情報開示する。三つ目はそうしたロスを極力早期に処理していくべきである。こうした動きの中で四つ目として、現段階では民間が自主的に対応していくべきであると、こういった四点が指摘できるかと思います。

(国際的な議論等の現状)

この中で現在国際的にどういったことがなされているかと申しますと、まずG7がございまして、10月に開催されましたG7ではFSFに対しましていくつかの調査項目を指示しているところでございまして、来春おそらくG7関係では来年2月に東京で開かれますG7で第一次の報告があり、第二次、最終報告が今の予定ですと来年4月になりますか、ワシントンでありますので、全体的な国際的な、対応というのが大体2月、4月という形で出てくるかというのが今のところのスケジュールでございます。あと、アメリカ自身では大統領の市場対応チーム等がこの流れについて鋭意検討中でございますし、それからIOSCO等でも来春には報告書が出るという予定になってございますし、ヨーロッパでも鋭意検討が進められているというところでございまして、国際機関、それから震源地でございますアメリカ及びヨーロッパで来年の春に向けて様々なことが検討されている。

(国際的な議論の中で考慮されるべき論点)

そうしたことを受けましてこの戦略チームでは、こうした国際的な議論のなかで考慮されるべき論点といたしまして、五点指摘させていただいております。

第一点は原債権の信用リスク、クレジットリスクの情報伝達について適切になされるべきだ、当然適切な審査も含めて伝達をしっかり行うべきであるということでございます。

第二点は金融機関や投資家のリスク管理のあり方についてでございます。これには流動性リスク、与信、クレジットリスク、あるいは問題が発生した場合にどういうことが起こるかといういわゆるストレステストを行う、あるいはそうした情報収集体制等基本的なリスク管理をしっかりと進めることに加えて、バーゼルIIの枠組みが有効ではないかというふうに今回指摘させていただいております。

第三点は、格付会社の格付手法やその利用方法及び格付会社に対する監督体制等についての海外での動きについてでございます。ヒアリング等を通じまして、様々な論点がございましたけれども、今回は国際的な問題ということでございまして、現状では我が国単独の対応というよりはIOSCO等の議論を踏まえると同時に様々な問題の検証がやはり必要であると、こういった形でございます。

第四点は、証券化商品のプライシングの問題あるいは会計処理の問題についてでございます。この辺についてもアメリカでは、今般11月15日でございますが、この日を境にしていわゆるSFAS157号でしたか、金融資産をレベル1、レベル2、レベル3と分けてレベル3はプライシングが難しい、マーク・トゥ・モデル(モデル準拠)といった形で評価するといったように分けて表示するという形になってございますけれど、それと同時にプライシングについてもしっかりと公正価値を追求していくというそういった動きもございます。こういったものもやはり問題の解決、正常化には有意義であろうというような判断をしてございます。

第五点はコンデュイット、SIVの連結・非連結の会計処理の問題でございまして、日本ではさほど大きな問題等は見られませんけれども、海外では、とりわけ米欧の金融機関にとっては大きな問題でございまして、若干計数をご紹介いたしますと、現状ではコンデュイットは大体1兆円を少し上回るくらいのスケールになっております。それからSIVにつきましては大体3,000億ドルくらいございますから、両方を加えますと1兆ドルを超えるので、これが連結になるかならないかというのはこの先金融システム等を考える上でも大変な重みを持っているということではないかと思います。どうなるかということをしっかりと見きわめていきたいというところが第五点でございます。

【我が国としての対応】

以上の国際的な動き等々を勘案いたしまして、我が国の対応といたしまして、どうしたことをすべきか、ということでございますけれど、基本的な判断といたしまして、今後我が国でも証券化というのはやはり重要なテーマでございますから、しっかりと証券化を進めていくべきという判断に立っておりまして、そうした判断の上で監督体制等もしっかりと確保しつつ、そのためには欧米から、特にアメリカの今回の混乱等を教訓としてどういったことをしていくべきかということでございます。八つございますけれども、上段のサブプライムローン問題の背景の白丸が二つございますけれども、それと、主な問題点四点、これに大体対応して論点をまとめてございます。

まず第一は、監督当局における市場動向の把握、モニタリング強化ということでございまして、オフサイトモニタリングを強化すべきであるということでございます。これのヒントは9月にノーザンロックに対して発生しました、イギリスでの140年ぶりの取り付けということになります。ノーザンロックというのはご案内のとおりサブプライムには直接関与していなかったわけでございますけれど、マーケットの流動性リスクの影響を受けて一夜にして取り付けが起こってしまう、ということになっているわけですから、現在の金融庁のオンサイトモニタリングだけでは金融システムの安定性は図れない、広く市場動向ないし、経済金融情勢、クレジット情勢、その動き等々のモニタリングを充実、強化していくべきではなかろうかというのが第一の教訓でございます。

第二点は、国際的な問題でございますから監督当局間における国際的な連携強化がやはり必要であると、そうでないと市場発の危機への対応は難しいと、これが第二点であるかと思います。

第三点は、証券化というのはリスクをトランスファーするわけですけれど、こうしたOriginate to Distributeに内在する問題にどう対応すべきか、もう少し具体的に申し上げますと、リスクを安易にトランスファーしていたということは本来オリジネイターないしセキュリタイザーが持つべきある種のリスク部分を安易に転嫁していたということであり、これを防止する何かうまい方法はないかということですけれども、報告書の中ではいわゆる劣後部分の情報開示、ないしはそれを踏まえまして、格付の際にそうした劣後部分を反映したものにならないかということを考えているところでございます。

第四点は証券化商品の原債権の追跡可能性、いわゆるトレーサビリティーとよく言っておりますけれど、これの確保をすべきではないか。もう一度図をご覧になっていただきたいのですけれど、現在アメリカで発生しているのは、リスクはどこにあるのか、その量はどれだけになっているのかがわからない、更にはプライシングが難しいというのは、私が持っている証券化商品、ABSないしCDOの本来の原資産はどこになっているのかというのがはっきりしていない。そこで疑心暗鬼が発生してきて、しかも、その証券化商品の中に含まれている全体が値崩れを起こしてしまうという、まさに完全なシステミックリスクが発生してしまうという状況になっているわけですけれども、こうしたなかで私が持っている原債権がどこにつながっているのかということをはっきりすれば、そうした問題もかなり解決できるだろうと、こういった枠組みが何かできないかということでございます。もう少しこの辺を説明いたしますと、先ほどモーゲージの保有主体が5,000万件あって、そのうち1,000万件がサブプライム関連だと申し上げました。今アメリカで困っているのは、この先来年にかけて大体200万件のサブプライムのモーゲージの保有者がいわゆる資産の差し押さえに直面するといわれておりますけれど、当然ながら大きな政治問題になってきているわけで、救済をしようとすると当然ながら元の借り手の債権を誰が持っているのか特定しないと容易ではないわけでございますけれど、その図をご覧いただきますと、もともとの住宅ローンの、あるいは専門会社の貸し手が一応持っている、あるいはセキュリタイザーあるいはアレンジャーが持っている、最終的には投資家が持っている、その投資家の中でも二次証券化がございますから多岐にわたっていると、これをいちいち特定するのは容易ではない。こうした問題も発生してくるということもあるのでこの点からのこのトレーサビリティーというのはきわめて重要な問題であります。こうした枠組みをどう確保していくかというのが第四点でございます。

第五点は、今回格付機関が批判を多々浴びているわけですけれど、その一端としてやはり十分なデータによるモデル分析に基づいた格付がなされていなかった可能性があるのではないかというのが大きいと思います。アメリカの場合は、おそらく1930年代あたりからのクレジットリスクを含んだデータに基づいたレーティングをしていればもっと違ったものになっていたのではないかという推測がなされますけれど、具体的に申し上げますと、これまでのアメリカでの議会証言等を踏まえますと、格付機関の言い振りは、今回のサブプライムの問題は想定外であったというものです。フォアクロージャー(差押え)等の率も確か元々が11~12%だったものがこの第2四半期で15%弱になったわけでございますけれど、それでこれは想定外だということを聞いて投資家が驚いたという経緯がございます。それくらいの上昇で格付が大きく変化するのかということです。ちなみに、大恐慌時のアメリカの住宅モーゲージに関するデフォルト率でございますけれども、頭金が20%のプライムモーゲージを想定いたしますと1930年代のときの最悪のデフォルト率はプライムモーゲージで大体15~16%に達したということでございましたからちょうど今のサブプライムの数字と同じなのです。その当時のサブプライムの数字がいくらであるかがあればいいのですが、それはなかなか今までの調査では我々も特定できなかったので、数字を申し上げるわけにはいきませんが、この辺がいかにデータとしては不十分であったかと、従って十分なデータで証券化の格付をすべきであると、これが第五点でございます。

第六点は証券化市場のいわゆる原理・原則というものが確定しておりませんから、金融庁が今進めてございますベターレギュレーションの中のプリンシプルの提示とベストプラクティスの模索というものがございますけれども、今般の証券化のプロセスではまさにこういったものが当てはまると一応考えてございます。

第七点は格付会社に対する適切な対応ということでございまして、この辺につきましては少し詳しくご覧いただきたいと思います。報告書の19ページからご覧いただきたいと思いますけれども、格付会社につきましては、日本では現状ご承知の通り指定格付制度となっておりまして、いわゆる入り口規制と申しましょうか、参入規制があるわけでございますけれども、そのあといくつかの行為規制ですとか、情報開示の開示規制等々に分けてみますと参入規制止まりになってございまして、そのあとどうするかということでございまして、それとの関連で報告書にございますとおり、アメリカではクレジット・レーティング・エイジェンシー・リフォーム・アクト(格付機関改革法)が2006年9月に成立いたしまして、それを受けて2007年6月にはリフォーム・アクトの施行規則の公表になっております。それを受けて今年の9月24日には7社がSEC登録をなされていると、そういった経緯の中でSECはこうした7社に対して監督権限を有するというのが今のアメリカの実情でございます。現在SECが検査・監督に入っている最中だと思います。こうした中で我が国でも議論は今回も行いましたけれども、仮に規制を検討する場合には実効性を保ちつつ、過度の規制を回避するバランスの取れた対応を選択するということが重要であると思います。仮に、現在のアメリカの規制ないしIOSCOの行動規範(コード・オブ・コンダクト)をベースにするならば、格付の内容には当局は直接関与すべきではない。格付のプロセスに関与すると官製格付になってしまい、これは市場を殺してしまいますから、それはすべきではないというのがコンセンサスでございます。第一点は、格付会社に対して独立性の確保及びそれの態勢整備、利益相反行為の禁止等を求める。それから第二点といたしまして、格付モデル、格付プロセスの利益相反に関する情報開示を求める。それから三つ目は当該証券化商品に対するモデルにつきまして、安定性の検証やその公開及び過去の格下げの記録の開示を求める。例えばアメリカの例を引けばこういうことになるかと思います。いずれにいたしましても、格付会社を巡りましては現在IOSCO等で証券化商品の格付に関しまして幅広く調査中でございますし、国際的にも様々な角度から議論が深められている最中でございますから、我が国金融監督当局においてはこうした状況を注視し、必要に応じて適時適切な対応を行うことが重要であると考えたところでございます。それが我が国の対応の第七点目でございます。

最後に第八点でございますけれども、証券化商品の価格評価あるいは会計処理に関する国際的ないわゆる会計処理のコンバージェンスに対して積極的に参画をしていくべきであるというようにまとめたところでございます。

以上が、長くなりましたが、第一次報告書の概要となります。私のほうからは以上でございます。

【質疑応答】

  • 問) 大臣に伺いたいのですけれども、今回の第一次レポートを受けまして、これをどのように活かしていかれるのか、具体的な方針をお聞かせください。

  • 大臣・答) これは、議論しっ放しということではなくて、ここでいろいろ検討していただいたわけでございますから、金融庁としても金融行政の中で反映をしていけるものも大いにあろうかと思います。今すぐできる、というのはなかなか難しいものがあろうかと思いますけれども、こういうご提案をいただいたわけでありますから、どういうところで活かせるのかを早速考えていきたいと思っております。

  • 問) こちらの戦略チームですが、引続きサブプライムローン問題及びその周辺の問題について検討されると思うのですが、具体的に何がテーマとなるのか、これをさらに発展させる形になるのか、あるいはサブプライムの中で今後の状況に即していくのか、どういったテーマになっていくのか、お聞かせ願いたいのですが。

  • 大臣・答) 先ほど、髙尾座長も言われたように、G7その他で国際的な連携強化も深めながら議論をしているわけです。そういったことも踏まえて、次の議論をしていく必要があろうかと思います。また、先ほどの指摘のように、これから起こりうる問題がありますから、そういう問題についても、さらにフォローアップをしていく必要があろうかと思います。例えば、ソブリン・ウェルス・ファンドなどは世界の金融市場で、無視できない存在になってきているわけであります。G7でも、その議論は行われているわけでございまして、我々としてもそういう議論は、この戦略チームの中で行っていただきたいと思っております。

  • 問) 座長にお伺いしますが、トレーサビリティーなのですけれども、これも「言うは易く、行うは難し」だと思うのですが、具体的にどういった手段が考えられるか、などの議論はありましたでしょうか。

  • 座長・答) それについては、民間の方でこの先しっかり検討していただく、ということに今の段階では尽きるのかと思います。

  • 問) 具体的なスキーム等はどうでしょうか。

  • 座長・答) 具体的なスキーム等については、今のところはまだこれから、ということです。

  • 問) 大臣にお伺いしますが、今おっしゃられたソブリン・ウェルス・ファンドについては、今回シティにもお金が入ったり、世界中あちこちで、非常に全体的に規模が大きくなってお金が入っている状況ですけれども、今後これについて議論をしていかなければならないという、この辺の問題点といいますか、議論のきっかけについてお聞かせ下さい。

  • 大臣・答) G7でも、無視し得ない存在だと、各国が認めるような存在になっているわけです。日本としても、現に日本市場にも何がしかのお金は入っているわけでしょうから、そういった問題について、戦略チームとしても議論を深めていくということでございます。

  • 問) 例えば日本にお金が入る際に、きちんと見ていくといいますか、チェックなのか規制なのか分かりませんけれども、この議論の方向性はどのようにお考えでしょうか。

  • 大臣・答) 例えば、サブプライム問題がどういう現実なのか、これが分からないとその後の議論が出来ないわけです。ソブリン・ウェルス・ファンドがどういう存在で、今どういう動き方をしているのか、まずそこからの議論になろうかと思います。

  • 問) 格付けについてですが、これまで大臣は講演などで、「ひょっとしたら利益相反があったのではないかという指摘がある」とか、外国人記者クラブでだったでしょうか、「中には、詐欺的な面もあったのではないかという指摘もある」というようなこともおっしゃっていました。今回の議論の中でも、格付機関の規制について、我が国でやるならば、というところで踏み込んだところまで言っていますけれども、改めて議論を進めてみて、いわゆる利益相反の有無ですとか、この格付けとサブプライム問題との関係についてのお考えをお聞かせ下さい。

  • 大臣・答) これは、まさにそういう指摘なども踏まえて、この戦略チームで議論をしていただいたわけです。これが最終結論という形には、もちろんなっておりません。ここから国際的な議論も踏まえて、次の第二次レポートの議論の中で、さらに深めていただくことだと思っています。

  • 問) ソブリン・ウェルス・ファンドの検討なのですけれども、国際競争力強化の観点から、日本でも設立すべきといったような意見を持っている方もいらっしゃるのですけれども、戦略チームでそういった観点で検討する予定はあるのでしょうか。

  • 大臣・答) そういうご意見の方に来ていただいて、ご意見を聞くということはあり得ると思います。日本としてソブリン・ウェルス・ファンドを創設するとか、そういう方向性について、現在考えを持っているわけではありません。

  • 問) 今すぐにはなかなか難しい面もあるかと思うのですけれども、現在の対応として出来ることはやっているので、政策提言もいくつか含まれていますけれども、特に急いで対応すべきというものはないということでしょうか。

  • 大臣・答) 急いでというのは、どういう時間感覚を持ってやるかということだと思います。まさに、世界的な金融資本市場の変調がいつから起こり、これからどうなるかということを考えれば、おのずとその時間概念というのは出てくるのだろうと思います。

  • 問) 例えば、モニタリング機能の強化ということで予算要求もされていますけれども、この辺について、組織の改編とかお考えになっていますでしょうか。

  • 大臣・答) できることはもう始めているということです。予算要求をしなくとも、現段階でできることはもうやっています。世の中、杓子定規で動いているわけではありませんので、金融庁としてはかなり俊敏に動いてきたと思います。

  • 問) このチームでいろんな問題点を洗い出して、日本としての対応という8項目が具体的にあると思いますが、例えばトレーサビリティーひとつを取っても、商品の原資産なり何なりというのはだいたいサブプライム関連ですとアメリカにある、そして日本の当局の範囲内でも問題の相当程度大きな部分を占めるという中にあって、こういった対応をどう実現していくかということになると、やはり、二つ目にある国際的な連携強化みたいなところに大きく依存するような形になるかと思いますが、今後こうした考え方を、例えばFSFとかIOSCOといった日本が参画している場で大きく訴えていって実現を目指していくという運び方になるのでしょうか。

  • 大臣・答) グッドアイディアは別に日本の中だけに止めておく必要はないのではないでしょうか。いろいろな機会を通じて、「こういう考え方はどうですか」というアピールはしていって当然だと思います。

  • 座長・答) 付け加えますと、トレーサビリティーということを考えていくと、証券化について、アメリカで一番の問題となっているのは、原資産や一次証券化というよりは、二次証券化商品のところである。具体的にはCDOと言われるものです。さらに、それをシンセティックCDOというものもあります。そこまでくると、やはりトレーサビリティーを追求するというのは、そう簡単ではない。ということは、トレーサビリティーが確保できる範囲内での証券化ということに段々なってくるのではないかなというふうに、一応、推測はできます。それから、蛇足ですけれども、この夏以来、CDO関係の発行はほとんど停止状態となっているというのが事実です。ですから、CDO、いわゆる二次証券化商品というのには、この先大きな見直しが入ってくると思うわけです。それとヨーロッパでは、証券化商品を標準化するといった形の提案も既に出てきているわけで、そうすると、誰がどう繋がっていくのかわからないというもので標準化されていくのはまずありえないと思います。そういった形の動きも出てきているので、それは我々が今回提案している、トレーサビリティーを作るというのとだいたい似たような感じになってきている。証券化も一次、二次、三次ということは、なかなか、そう簡単には進まなくなってくるのではないかとも考えられます。全体でいえば、やはり、ディシプリン(規律)を効かせた証券化のプロセスというものは残りますけれども、今回のような行き過ぎたディシプリンのないモラルハザードのようなものには、おのずとブレーキがかかりだしているということだと思います。ですから、トレーサビリティーも、今のところ、具体的にどうこうするということはこれからのことですけれども、発想とすれば、当然の、本来追求されるべきということです。それから、いわゆる証券化ないし、オリジネイト・トウ・ディストリビュート(Originate to Distribute)モデルというのは、情報の伝達がうまくできていないと成り立たない。ということは、トレーサビリティーを確保していないと成り立たないという、本題的なところだと思います。

  • 問) 先ほどの格付機関のところですが、IOSCOその他の国際会議で来年春までにいろいろな議論が行われて、その動向を見ながら判断をしていくということだったかと思いますが、春までの間に、こちらに今回まとめられているような、独立性確保のための態勢整備や利益相反行為の禁止を求めるとか、情報開示を求めるですとか、こういったことを先行してやっていかれるのか、先行してできることはあるのかという点についてお聞かせください。

  • 大臣・答) まず、こういう議論は格付会社にも来ていただいて深めてきた議論ですので、それぞれの格付機関において、対応は適切にご判断をされるものと思います。その上で、先ほども申し上げましたように、世界的な議論も踏まえた対応策を取っていきたいと思います。

  • 問) 金融機関側の情報開示という観点でお伺いしたいのですが、今回、数字もまとめてらっしゃいますが、地方の地銀に聞くと、決算の場で聞いても、サブプライム関連の評価損は積極的に開示しない銀行が多いわけですが、そういう点で金融機関側の情報開示の課題というか、現状をどういうふうに見てらっしゃいますか。

  • 大臣・答) 情報を開示しなければ不安心理を持つ人が増えてしまうわけです。それはまさに我々が学んだ失敗の教訓の一つです。ですから、きちんと適切な開示を適宜行っていただくということが大事なことでございまして、我々としては、きちんとウォッチをしながら、新しく出てきた数字にはその都度、きちんと開示を求め、そして、金融庁としてもそれをフォローしているということでございます。

  • 問) 開示基準というのが、簿価の30%減とか、40%減とか銀行によってレベルが違うのも(開示の進まない)原因だと思いますけれども、こういう観点ではもっと50だ、60だと言わずに、どんどん開示していく姿勢を広くするべきだというふうにお考えでしょうか。

  • 大臣・答) これは、先ほどレベル1、2、3の話が髙尾座長からありましたけれども、現段階では、日本の会計基準もございますので、きちんと監査法人のチェックも受けておられるわけですから、そういう現段階でのルールできちんと出していただくということではないのでしょうか。

  • 問) 16ページのところの大臣の見解を伺いたいのですが、苦情に関する調査・分析能力向上について必要な態勢整備と書いてありますが、具体的にどういうふうに提案を活かしていかれるというお考えでしょうか。専門家を採用するとか、人員を増やすとか、特別の部屋を新しく作るとか、そういう意味なのでしょうか。

  • 金融庁・答) 現在、機構定員要求の中でも市場モニタリングの関係の参事官クラスの職員を要求するなど、一部取組みとしては進めておりますし、大臣からお話があったように、今の態勢の中で、マクロ経済に詳しい方を採用するなど、任期付職員の採用も含めて、今できることも進めている状況でございます。

  • 問) 今後の第二次報告に向けての会合というのは、年明けからスタートさせるということでよろしいでしょうか。

  • 大臣・答) 次回をいつにするかは決まっていません。今までかなり頻繁にやってきましたので、もう少し情報を収集・分析するインターバルはあろうかと思います。

(以上)

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