全国一斉多重債務者相談ウィークに係る渡辺大臣、平山日本弁護士連合会会長、佐藤日本司法書士会連合会会長による共同記者会見の概要

(平成19年12月4日(火)17時25分~17時50分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

本年の8月15日、多重債務者対策本部において、12月10日から16日までの一週間を全国一斉多重債務者相談ウィークとすることを決定いたしました。これは、全国の地方自治体における相談窓口の整備を一層促進し、各地域の多重債務者が相談窓口を訪れる一つの契機を提供することを目的としてこの一週間を設けたわけでございます。

多重債務問題というのは、政府や自治体その他、弁護士会、司法書士会、いろいろな団体が一丸となって取り組むべき重要な課題だと思います。多重債務者が一体誰に相談していいのかわからない、こういう現状がありますと、せっかく法改正をしたにも関わらず、実際上、ものが先に進まないということがあるわけでございます。そういう意味で多重債務者から丁寧に事情を聞いてアドバイスをし、速やかに債務整理が行われる、そういう相談窓口を開設し、整備強化をしていくことが非常に大事な課題でございます。

借金の整理のためには、多くの場合、法律の専門家、弁護士の先生、司法書士の先生のご協力が必要になります。今回、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会の全面的なご協力が得られたために、このような企画が実現をしたわけでございます。相談ウィークの期間中、全国の延べ約450箇所で無料相談会を実施できることになりました。本日ご同席いただいています平山会長、佐藤会長をはじめ、関係者の皆様には心から感謝を申し上げる次第でございます。ポスターにもありますように、借金で悩んでおられる皆様方は、是非この機会に相談窓口会場にまでお越しいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたしします。

【平山日弁連会長より発言】

日頃こういうことに関心を持っていただいて、非常によく報道していただいていることに感謝をいたします。ありがとうございます。

今回の企画につきましては渡辺大臣のご報告のとおりでございまして、政府がこの問題にこういう形で力を入れていただくということは画期的なことであり、本当に感謝いたしております。日弁連はご案内のとおり、調和の取れた公平・公正な、誰でも納得できる社会作りに貢献しようということでやっておりまして、その中で多重債務問題というのは、本当に大事なことだと思っております。この方々の中で7千人も死者が出る、自殺者が出るという問題については放置できないということで、全力投球で、昨年、この多重債務の法律改正に努力させていただきました。それを十分、政府の方も受け止めていただきまして、昨年、新しい法律が出来たことはご案内のとおりでございます。

法律はできましたけれども、実際の現場では、多くの市民が、多重債務者が、悩んでいらっしゃるということで、これをどうするかということにつきまして、政府の方でこの8月に大きな決定をしていただきまして、多重債務者相談ウィークを設けていただくということになりまして、本当に私は素晴らしいことだというふうに思っております。我々の趣旨からいっても、これは全面的に協力しようということで取り組んでまいりまして、900名を超える弁護士がこれに参加する、全国の弁護士会が全部参加するということになりましたので、できましたら、みなさんに十分PRといいますか、広報していただきまして、多くの悩んでいる方がひとりでも多く、この多重債務者相談窓口に駆けつけていただくことが非常に大事だと思います。これを突破口といたしまして、自治体の方で窓口ができる、これは大変大きなことでございまして、相談にも行きやすいし、いくら取られるか分からないというような心配も要らないわけでありまして、是非、この問題を解決してより社会が安定するように、そのように努力したいと考えております。本当に、渡辺大臣ありがとうございました。

【佐藤日司連会長より発言】

日本司法書士会連合会会長の佐藤純通と申します。よろしくお願いします。本日は、政府、内閣府、金融庁主導のもとに、日弁連さんと我々日司連とで、この多重債務者問題について共同事業として取り組む、ということになったわけでございますが、これはおそらく、私どもの司法書士会の歴史の中で初めての共同事業になります。これまでは各地方の弁護士会、司法書士会等で各地方での共同の法律相談会等を全国各地でこれまでも幾度にわたり行ってきておりますが、全国規模で日弁連と日司連が共同で、多重債務者問題のみならず一般的な法律問題について、共同での事業を開催するというのは初めてのことでございます。そういう点では、このような機会を作っていただいた内閣府、金融庁、並びに日弁連に、私ども日司連として深く感謝を申し上げたいと思っております。

司法書士は平成14年の法改正によりまして、平成15年から簡易裁判所における民事事件についての代理権を獲得しました。毎年、数千名ずつ増えておりまして、今現在、全国1万8,800名ほどの全国会員のうち、1万100名ほどが簡易裁判所の認定資格を持っております。そして、近年の簡易裁判所の取扱い件数は初年度、平成16年度は1万6,800件ほどでした。平成17年には、2万6,800件、そして、昨年度、平成18年には4万4,600件という件数の簡易裁判所での事件についての司法書士の取組みがありました。また、この多重債務問題については、代理権を取得する以前から、書類作成業務を通して本人訴訟を支援するという形で、長年やってきた実績がございます。このたび、このような形で弁護士会とともに、司法書士会がこの多重債務問題について、全国的規模で一緒に合同の相談会を開催できるということになりまして、これにつきましては、私どもも司法の一端を担う資格者団体として、50の司法書士会全て、合計で約500名の会員が今回の相談会を担当するということで、既に配置済みでございます。今後とも大きな社会問題としての認識のもとに、これらの多重債務問題の解消に向かって、私どもも一端を担っていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【質疑応答】

  • 問) まず、大臣にお伺いしたいのですが、昨年の法改正で多重債務者を防ぐという、数を増やさないというような枠組みができたかと思いますが、今いる多重債務者を救うというのが一番大きな問題として残っているかと思います。ただ、これまでもずっと、呼びかけてこられたかと思うのですが、230数万人いると言われる多重債務者がなかなか相談に来てくれないという現実があって、例えば、先日、クレディアについても、潜在的にいると言われる多重債務者の方の1%にも満たない方しか来ないと、こういう現状があると思いますが、まず、なぜ、これだけたくさんいるのに、呼びかけてもいるのに、こういう救済が進まないのか、今回の全国一斉の相談ウィークをすることによって、例えば効果的にどのようにこの人達を相談窓口に来てもらうということができるのか、その辺の問題点と今回の対策についてお聞かせください。

  • 大臣・答) まず、数については事務方から詳しい説明があろうかと思います。国会では230万人と説明してきましたが、実際上は139万人、これは、平成19年10月末の時点での数字でございます。リボルビング契約で残高のないものを除いて残高ありというベースで集計した場合、5件以上の借り入れをしている人が139万人という数字になっております。まず、こうした大勢の多重債務者の皆さんが非常に思い悩んでしまっているという側面があるのではないでしょうか。それぞれ、事情があってこういう借金地獄にはまったのだと思いますけれども、この際、法改正も行われたわけですし、弁護士会も司法書士会もいろんな団体の皆さん方が一丸となって、この多重債務問題に取り組もうと、政府を上げて取り組もうという決意をして、今日までその体制を作ってきたわけです。これは一人で思い悩む問題じゃないんだと、社会全体で考えていく問題なんだという位置づけが行われたわけでございますから、とにかく悩む前に相談に来てほしいと思います。なかには、自殺などという手段・道を選ばれる人達も後を絶ちません。こういうことで、大切な命を落とすなんてばかばかしいじゃないですか。とにかく、悩まないで相談に来てくださいということを申し上げたいと思います。

    今、自治体の方は相談窓口の整備が相当進んでおります。まず、金融庁の方から多重債務者の相談にあたる自治体職員向けの相談マニュアルの冊子を作りました。また、DVDも作成をして、全国全ての1,800自治体に配っております。多くの自治体で、このマニュアルを利用した説明会が既に開催をされています。相談窓口の整備については、非常に前向きの取組みが行われてきていると思います。今回の相談ウィークによってさらにこの相談窓口が強化をされていくことを期待したいと思います。

  • 問) これまで新聞やテレビなどでも繰り返し言ってきたと思うのですが、その声が届いていないのか、もしくは届いているけれども聞けないのか、このあたりはどうお考えでしょうか。

  • 大臣・答) 相当、辛いと思います。多重債務地獄に陥った人達は。おそらく、こういうパブリックな相談に足が向かない、そういう悩みを抱えているのだと思います。しかし、相談窓口はどんな相談にも応じられる体制になっているわけであります。弁護士の先生や司法書士の先生、そういう専門家がもうきちんと悩みの根本のところから聞いてくれるわけでありますから、これは、是非、悩む前に足を運んでほしいということを申し上げたいと思います。

  • 問) 今回の1週間のウィークで、全国で450ヶ所ということですけれども、目標といいますか、今回のウィークの目標、例えば全体の何名ぐらいの方の相談に乗れる体制があって、どんな目標があるのか。今回のウィーク自体での目標というのがあれば、お聞かせください。

  • 大臣・答) ウィークでどれくらいいけるかは、事務方に聞いていただきたいと思いますが、これは、それぞれの自治体、全国1,800の自治体がやはり一番身近なところにあるわけですから、こういうところの窓口整備を一層促進していきたいという思いが込められております。各地の多重債務者にとって、こういう取組みをやっているのだということを、まず、分かっていただくというのが今回の趣旨でございます。

  • 問) ウィーク期間中に、今日の会見とは別に、大臣自ら、例えばどちらかの相談場所にいって呼びかけるとか、佐藤さん、平山さんがそれぞれのウィークで何か知らされるという予定がありましたら教えてください。

  • 大臣・答) 私もぜひ現場に足を運んで、直接、多重債務者の方と悩みを聞いてみたいと思います。私自身も議員として取り組んできたこともございました。例えば、特定調停という制度は議員立法で作ったのです。山本幸三さんや私が提案者となって作った制度であります。この制度が相当、債務整理で使われているという現実もございます。また、昨年の貸金業法改正をやった時には、私は自民党の金融調査会の事務局長をやっておりました。したがって、まさしくその今回の制度改正の企画・立案から携わってきた人間でございまして、法改正に至った時は金融副大臣として、昨年のちょうど今頃でございますが、臨時国会でこの貸金業法改正を全会一致で成立をさせていただいたわけでございます。そういう今までの経験と思いをこめて多重債務者の皆さんに、悩む前に相談に来てよ、ということを言いたいと思います。借金ぐらいで首をくくるなよ、ということを言いたいですね。

  • 平山会長・答) 私の方も、頭の中で我々が考えていることと、現場であらゆる悩みを持った方々にお目にかかっていくことは、非常に違いがありますので、私は全力投球で取り組みたい。政府におかれても、「それは民衆の利益を擁護するということになるのか」という立場から、この問題の解決に関して現場で取組みを設けてやっていただくというからには、私も現場に行きまして、その方々の悩みをじかに体験しなければいけないと思っております。いわば、多重債務問題は「命の問題」だということで、放置すればそういうことになりますから、その前に「借金の問題」としてきちんと解決しましょう。それには国もこういう取組みをやっていただけるし、我々も全力投球でやるんですよということを知っていただく。これが解決の大きな流れを作ることができると思っておりますので、できるだけ参加して状況を拝見しなければいけないと思っております。

  • 佐藤会長・答) 私ども日司連には内部に消費者問題等対策本部というものを設置してございまして、その中にさらに多重債務対策部という部門をとっております。そして、50の都道府県の司法書士会の内部におきましても、消費者問題対策委員会等がございます。今回はこの連合会の対策部を中心として、各都道府県の司法書士会の対策部もしくは委員会等のメンバーを動員して行っております。もちろん、私ども連合会長並びに対策本部の各委員もどちらかの会場にはお手伝いでお伺いするということは当然考えております。

  • 問) この試みというのは今回限りのものなのか、あるいは、また、今後も同じようにやっていくのでしょうか。

  • 大臣・答) これは、今回どれくらいの方々に来ていただけるのか、そしてその結果として相談窓口の強化・充実がどれくらい進むのか、これを見て次回やるかどうか、また、決めたいと思います。今回だけではどうもふったからない(勢いがつかない)という場合には、再度考える必要があるかと思います。

  • 問) 過払い金返還請求を巡って、一部の弁護士とか司法書士とかが多額の報酬を得ているという声もあって、本当に多重債務問題の解決に繋がっているのかという見方もあると思いますけれども、その点についてどういうふうにお考えでしょうか。

  • 大臣・答) それは、国会の論議の中でも何度かそういう指摘は出たかと思います。所管の大臣としては、ぜひ、貸金業法等改正の趣旨に則り、また、様々な個人の債務整理の制度、個人の再生の制度がございますので、そういう趣旨に則ってそれぞれのご専門の分野で活動していただきたいと思っております。

  • 問) 貸金業法改正で、前倒しで上限金利の引下げ等ある程度進んでいますけれども、1年前と比べて多重債務者の状況はある程度好転しているのか、あるいは変わっていないのか。どのようにご覧になってますでしょうか。

  • 大臣・答) これは、事務方から説明があるかと思いますが、多重債務者の数は減ってきていると承知しております。平成19年2月には、176万8,000人いたのが、10月で138万6,000人という数字になっておりますので、いわゆる多重債務者、ここで言う人は、リボルビング契約の残高有りで5件以上の借入れがある人という仕切りにしておりますが、そういう人達は減ってきているということが言えるわけです。これは、法改正の結果だろうと思います。

  • 問) 今後、テレビCMですとか、PRとして他の手段を行う予定はありますでしょうか。

  • 大臣・答) そこまでは考えませんでしたけれども、今回、この相談ウィークを見て、どういう反響があるか、それを見て検討したいと思います。

  • 平山会長・答) 大阪弁護士会(近弁連)はPRについて、ラジオ放送・20秒のコマーシャルを35回、1週間流しております。日弁連が費用を負担しております。

  • 大臣・答) 多重債務問題は、債務整理と同時に消費者の教育というのも非常に大事なことだと思います。せっかく債務整理をしてもらっても、また、同じ多重債務地獄にはまってしまうことにならないことが大事なことです。ぜひ、そういう教育プログラムの充実ということも、この際、併せて強調しておきたいと思います。借金というのは返すのがこの世のルールです。しかし、借金ごときで首をくくる必要は全くないわけでございまして、債務整理が必要であり、また、その合理性があるというケースがたくさんあるわけでございますから、そういう人達が多重債務地獄から立ち直れる、そして、二度とこういう地獄にはまらないようにしていくということも併せて訴えていきたいと思います。

(以上)

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