「渡辺金融担当大臣と地域の企業経営者等との意見交換会」
後の大臣記者会見の概要

(平成20年1月16日(水)12時08分~12時23分 場所:三条・燕地域メッセピア)

【冒頭発言】

どうもお疲れさまでございました。

私、今日久しぶりにこちらに参りまして、いつも冬に来ますと、トンネルを抜けると雪国だったという川端康成の一節を思いおこすのですが、ものの見事にそういう景色に遭遇しまして、この雪深い越後の地で世界を相手に頑張っている地域があるのだということ、しかし、その地域が「ピンチはピンチだ」と言うぐらいに非常に厳しい状況に直面しているということを肌で感じた次第でございます。先ほども申しあげましたように燕・三条というのは、日本のものづくりを象徴的に体現している地域であり、今、日本が置かれた状況からどうやって脱却していくか、それを実践するフロントランナーでもあるかと思います。そうした意味で今日参りましたが、改めて地域の皆さんの声を聞いて、日本の置かれた立場の難しさも同時に実感をした次第でございます。私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

今、冒頭に大臣がおっしゃったとおり、「ピンチはピンチ」というお話が(意見交換会で)あったかと思います。大臣の基調講演には勢いがあったのですが、実際、地方はそうではないという現れかと思いますが、率直にそのあたりをもう少しどのように感じられたか教えてください。

答)

冒頭申し上げたように、サブプライム関連で一次産品価格、なかんずく原油価格が相当高騰していると思います。これがいろいろな素材価格に反映されていますから、このコスト高で苦しんでおられる企業が相当多いのだと思います。ものづくりの最前線ではそういうコスト高とどう戦うかということで、なおさらご苦労されているかと思います。ここへもってきて、ピンチがピンチになってしまっているのは、やはり、為替の動向だと思います。日本が実質実効レートでも相当円安の恩恵を蒙って、なんとか景気回復をしてきたのも決して実力がついたからというわけではないのだけども、ドルがさらに安値に向かっていっている、その反射的に円高になっているということから、今度は製品価格に影響が出てきている。コストだけではなくて、売上にまで響くようになってきているというところが、「ピンチはピンチ」という側面だと思いました。

これは金融的側面からいきますと、日本の政府や日銀の思い描いている、「景気は拡大基調にある」ということはあるのかもしれませんが、ここへもってきて相当ダウンサイドリスクは高まってきているなという思いを新たにしたものであります。我々の金融行政を預かる立場としては、新たな金融のいろいろな枠組みについて、資本的資金を供給する金融とか、土地、担保に拘らないいろいろな融資とか、そういった新しい機軸を更に深めていきたいと考えております。また、日銀の金融政策につきましては、やはりこういったダウンサイドリスクがかなり顕著になってきているということは当然お考えをいただいていると思いますので、適切な金融政策を行っていただきたいと考えております。また、先ほども申し上げましたように、地域力再生機構については、新たな取組みとしてスタートするわけであります。これは、地域の構想力が問われることでもありますので、地域の面的再生の枠組みの下で、それぞれの地域でどういう取組みがあるか、これをぜひ考えてほしいなと思いました。以上でございます。

問)

米銀の決算の発表がありましたけれども、サブプライムの損失が更に膨らんで、それに伴って日本の株価も下げていますが、この辺の見方についてぜひお願いいたします。

答)

株価については、いちいちコメントはいたしませんけれども、LCFI(巨大複合金融機関)の一角が相当、損失を拡大をしているということですから、ある程度予想はされたものとは言え、やはり日本が辿ってきた道と非常に似ているという印象を持っております。結局、いつも申し上げますように、流動性の危機というのは、最終的にソルベンシーの問題である、支払い能力の問題であるというのが日本の歴史の教訓でありますから、こういったことは是非参考にしてほしいと思っております。資本をどうやって増強していくかという中にあって、ソブリン・ウェルス・ファンドがかつての日本の公的資金の代わりを果たしているんだと思いますが、これについてはいろいろな議論が出てくるのかもしれません。日本のみずほ(コーポレート銀行)がメリルリンチに資本を提供するという報道がなされていますけれども、これはそれぞれの経営判断において行っていただくことでありますからコメントは申し上げませんけれども、日本としてこの危機のマグニチュードというのと、より真剣に向き合う必要があるなということを感じた次第でございます。

問)

先ほど質問者の方からもあったのですが、結構、地方の優良先の企業のところにメガバンクとかが、すごい低い金利とか、簡単に貸しやすい仕組みでお金を貸しているという攻勢が強まっているのですが、そのことに関してどう思われているのかということが一点と、地方のリスクマネーを供給するにあたっては、地域金融機関は非常に重要だと思いますが、新潟県内、たくさんの信用金庫とか信用組合があるのですが、規模が少し小さいためになかなか、人材面であるとか、金融の先進的な技術の取組みに皆さん非常に苦労されているのですが、それにあたって、ある程度規模のメリットを少し考えた方がいいのかという意見もありますが、そういう面に関して意見をお願いいたします。

答)

まず、一般的に金融機関がリスクを取るというのは当然のことです。金貸しがリスクを取らなくなったらお金が世の中に回らなくなってしまうのですから、きちんとリスクを取って、金融仲介機能を発揮をしてもらうというのは、メガであろうが地域金融機関であろうが同じことだと思います。その中にあって、コーポレートファイナンスという観点から中長期の視点で資金を供給しているところと、ビジネスライクに金融商品を提供しているという事例が先ほど出たのだろうと思いますけれども、やはり、借りる方においてもこの金融商品はどういう契約に基づいているかということは、よく把握をしてほしいと思います。一方、金融商品を提供する側は、これはこういう状況ではこういう契約になりますよというリスクの説明をきちんとする必要があると思います。それは当然のこととしてやっていただく必要があるかと思います。

一方、地域金融や協同組織の方は、地域の中でよりリスクを取りやすくなるためには、ある程度の規模の利益を求めるという経営戦略も当然あり得ると思います。ですから、それはそれぞれの地域の中で経営者の皆さんが経営戦略をどう決定をしていくかということに行き着くわけであって、いちいち、金融担当大臣としてどうしなさい、こうしなさいということは申し上げませんけれども、日本の置かれた地域金融の実情というものを、十分踏まえたうえで経営判断をしていただきたいと思います。

問)

大臣、二点ほどお伺いしたいのですがよろしいでしょうか。まず、一つが、今、先ほどサブプライムの関連でみずほコーポレート(銀行)がメリルリンチに資本を提供したことに関連して、大臣から「日本としてこの先のマグニチュードとより真剣に向き合う必要がある」とご発言がございましたが、この意味するところは、他のメガバンク等々にも、アメリカの危機的な状況になっている金融機関に対して、資本増強してはどうか、という意味なのかなというように聞こえるのですが。

答)

いや、違います。みずほにおいて、メリルリンチの資本増強に協力するというのは、先ほど申し上げましたようにみずほの経営者の経営判断であって、それについて私の方からどうこう言うことはないと先ほど申し上げたとおりでございます。また、「危機のマグニチュードと向き合う必要がある」というのは、これは、今回新たに損失が拡大をしているわけでありますから、こういうものが今回全部出尽くしたということであれば、それはそれで結構なことでありますけれども、更に新たなSIVの連結とか、あるいはレベル3の評価とか、そういったことから損失が拡大する可能性がないとは言えないとするならば、そういうことも踏まえた見通しを持っておく必要が、心構えを持っておく必要があるのではないかということを申し上げたところでございます。したがって、いつも申し上げるように、現時点では日本の金融機関が金融システムに大ダメージを与えるような状況にはなっていないと考えておりますけれども、油断は大敵だということを改めて申し上げたわけでございます。

問)

もう一点、先ほどの地元金融機関、経営者との意見交換の中で、協同組織金融機関の方から、業態の見直しについて質問があったかと思います。それに対して大臣の方から、「協同組織という精神を持って、原点に立ち返ってやってほしい」というお話があったかと思います。政府の中で協同組織金融機関のあり方の見直しについて、検討を進めていこうという方向性が出されておりますが、その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

これは、経営判断において業態の見直しという路線を選択をされることは大いに結構だと思います。協同組織という形態を取り続けるという立場を取るのであれば、これは原点を忘れずにやっていく必要があるでしょうという原則論を申し上げたところであります。

問)

今の質問にも関わるのですが、新たなマグニチュードを踏まえて見直す必要がある、見ていく必要があるという趣旨でおっしゃられたと思うのですが、現時点では影響、損失は金融システムに与えるような状況ではないという認識だったと思いますが、9月末に発表されたサブプライム関連の投資、あるいは融資量、そこに計上されている損失がその後、あれより減る可能性よりも増えている可能性のほうが明らかに多いと思います。現時点でそのあたりのニュアンスをどのように思っておられますでしょうか。

答)

一般的な傾向としては、損失が減っているということはあり得ないでしょう。損失は増えていると思いますけれども、それぞれの金融機関において適切な開示はしていただきたいと思います。金融庁としては、全体としてどういう状況になっているかということについては、いろいろな機会を通じて把握に努めているということであります。現在進行形で動いている話なので、できるだけ早め早めに情報を把握していく必要があるかと思います。

(以上)

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