渡辺内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成20年1月25日(金)9時26分~9時44分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

おはようございます。

本日の閣議において、本日1月25日から27日の日程でスイスに出張することにつき、了解をいただきました。今回の出張はスイスのダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)に出席し、世界各国の官民のオピニオン・リーダーと、世界の経済情勢や今後の見通し等について率直な意見交換を行うものです。具体的には、「2008年の世界経済の見通し」というセッションで、現下の世界的な金融市場の混乱を踏まえた上で、日本経済の状況や日本の金融危機の経験から学んだ教訓等についてお話しできればと考えております。

私の方からは以上です。

【質疑応答】

問)

ダボス会議でのセッションのことですけれども、日本としてどのようなメッセージを出していこうと考えていらっしゃるか具体的に教えて下さい。もう一つ、日本の改革意欲が薄れて日本株が大きく売られたり、戻りが今一つだったりとかいう指摘もあるかと思いますけれども、この点についても何か言及というのはお考えなのでしょうか。

答)

サブプライム・ローン問題については再三申し上げてまいりましたが、現時点で日本の金融システムに大したダメージにはなっていないということは、改めて申し上げてこようかと思っております。また、日本の株がとりわけ売られているのかというと、実際はそうではないということは最近明らかになってきておるかと思います。ただ、日本の改革指向にどうもバックギアが入っているのではないかという誤解があるとすれば、その誤解は、是非解いてまいりたいと考えております。また、日本の教訓については、日本が欧米の後追いをしてきたというのとはまったく逆で、日本が20年近く先を行ってしまったということだと思います。ちょうどベルリンの壁が崩壊をした年に日本の銀行貸出のGDP比は過去最高に達したわけでございまして、たまたまその翌年から株価が下落をし、その2年後に地価が大暴落をするということが起こったわけです。その後の展開で日本がどういうことをやってきたか、また反省点はどういうことであったか、というお話はしてこようと思っております。

問)

サブプライム問題のことで、モノライン(金融保証専門保険会社)についてニューヨーク州当局が救済ということを検討したり、アメリカの議会で住宅ローンの買取機構という構想が出てきたりとかいった、公的資金を使うという動きが出てきたのかなと思いますけれども、大臣は問題の解決に向けてこういった動きがどのような意味を持っているとお考えかお聞かせ下さい。

答)

アメリカがどういう対策を取るかについていちいち私の方からコメントいたしませんが、ブッシュ政権は金融問題の解決には公的関与は行わないということは、この間の対策の中ではっきり言っているのではなかろうかと思います。ですから、民間の力でそういった問題解決が可能であるならば、それはそれで結構なことだと思います。

日本の経験に照らしていきますと、実は日本も民間の力に任せてやろうとしていたわけでありますが、残念ながらそれがうまくいかなかったということだと思います。その結果、公的資金を注入する、それも最初は住専問題の解決において、お金の貸し手ではなくて住専そのものに公的資金を投入し、住専は解体をし、結果としてお金の貸し手の預金者を守るという非常に回りくどいことをやってしまったが故に、国民の総反発を招いたという手痛い失敗をしてしまったわけであります。一方、バランスシートの資産の方に着目をして、資産買取りも行ったりしたのでありますけれども、これも飛ばしみたいなことに使われてしまったり、はっきり言って共同債権買取機構等うまくいきませんでした。そういう失敗の教訓は、おそらくアメリカにおいてもかなり真剣にご研究いただいていると聞いております。今回のマグニチュードは日本の金融危機よりはるかに大きいものでありましょうから、是非そういったことはご参考にしていただけるとよいと思います。

問)

本日、予算委員会の集中審議、特に金融の部門で集中審議があるかと思いますけれども、特に野党との対立線といいますか、例えば金融に限らず、おそらく野党は改革逆行ということも言ってくると思いますが、これについてどのような審議になるとお考えでしょうか。

答)

改革が後退しているから日本の株が売られているという解説は私も何度も聞いたことがございます。そういうことがもし真実であるとするならば、これは大変残念なことでありますが、私の立場では改革は続行しているわけでして、是非こういう改革続行の努力は評価をしていただきたいと思います。

一方、株価が売られている背景に新興市場諸国などとの成長力の差というものもあるのかもしれません。新興市場諸国が二桁成長をしている一方、我が方は名目成長率が極めて低い状況にあります。これが改善を見ないというメッセージになりますと、株価回復にとっては非常によろしくないことになるのではないでしょうか。したがって、日本は改革を続行し名目成長率も今まで以上に伸びを示すというメッセージが大事なことだと思います。もしそういったご質問が出れば、そういった議論をさせていただきたいと思っております。

問)

今回の一連の株安について、この間、大臣もできることは日銀の金融政策であるということをおっしゃいましたけれども、それ以外に政府として、株価対策ではありませんが、総合的な経済対策で何ができるのか、また、今回証券税制も出ていますけれども、一度決まったことなのでなかなか変えることは大変だと思いますが、これについて将来的なお考えも踏まえて教えてください。

答)

私は昨年の11月ぐらいから、是非、証券税制は株価のことも考えてキャピタルゲイン課税の軽減をし続けてほしいということを申し上げてきたつもりでございます。いろいろな政治的プロセスの中で、我々の要求が100%受け入れられたわけではなかったのは残念でございますが、これも税制の政治決定プロセスが今までの流儀の延長線で行われてきたわけでございますから、何らかの着地点は見出さなければならなかったという背景だと思います。緊急対策を求める議員連盟もあるようでございますが、私も政府の中にいなければああいう運動に加わっていたかもしれません。政府の立場にあって、昨日、一昨日、歳入関連法案に署名をしたばかりでございますから、政府の立場としては、なかなかものは言いにくいということだろうと思います。

問)

12月の消費者物価指数が前年比0.8%で、前年度ベースでまた上昇率が跳ね上がったのですが、名目成長率ではプラスですが評価はいかがでしょうか。また、この物価の上昇が株価や金融機関に及ぼす影響についてどうご覧になっていらっしゃいますでしょうか。

答)

今朝の閣議で総務大臣の方から報告がありましたのは、0.8%、3ヶ月連続の上昇ということでしたが、コアコア(指数)で見ますと相変わらずマイナスになっています。つまり生鮮食品、エネルギーを除く物価は相変わらず下落が止まっていないという状況でして、非常によくない状況になってきていると思います。つまり、生鮮食品やエネルギー価格が上がり続ける、しかし、コアコアのCPI(消費者物価指数)は下げ止まっていないということでございます。まさに生活実感としては物価が上がる、しかし、全体として中核的なところの物価が上がっていないということでございますから、非常に厄介な状況になっていると思います。こういう状況の中で、まさしく政府と日銀というのが、心を同じにして、同じ方向に向いてやっていくということが非常に求められると思います。それに加えて、世界の金融資本市場の動揺が治まったとは言い切れないという状況でございますので、なおさら、日本銀行にはそうしたことも勘案した金融政策の舵取りを行っていただきたいと思います。

問)

政府の有識者懇談会が、先週、公務員制度改革について最終答申案をほぼ大筋でまとめました。この答申案の評価と、改めて今国会に提出する基本法案の策定作業への意気込みを教えてください。

答)

これは、いわゆる全体パッケージをご議論いただく懇談会としてスタートしたわけです。福田内閣になりまして、総理の「慎重に丁寧に」という方針を踏まえて、拙速に結論を出すことを避け、十分議論を尽くして結論を出していただきたいということで、11月取りまとめを1月に2ヶ月ほどずらした経緯がございます。理念の議論もしっかりとやっていただきました。そのうえで、今回出された原案でございますので、私の立場としてはこうしたご議論を尊重していきたいと考えております。法案化にあたっては、是非こうした議論を踏まえた法案化をしてまいりたいと考えます。

(以上)

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