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「渡辺金融担当大臣と地域の企業経営者等との意見交換会」後の大臣記者会見の概要

(平成20年5月19日(月)15時27分~15時44分 場所:ホテルモナーク鳥取)

【大臣より発言】

今日は、地域に出向いて行って地域の声を聞いてくる試みの第2回目でございます。前回に引き続いて、非常に困難な状況を抱えている地域の一つとして鳥取を選ばせていただきました。しかし、困難を抱えているというのは、逆に言うと、これから伸びる可能性も極めて大きいということであります。「ピンチはチャンス」という基本コンセプトに相応しい地域だという思いを込めて鳥取を選ばせていただいた次第です。

【質疑応答】

問)

先ほどの講演の中で年金積立金の話をされ、年金積立金が150兆円あると、これをもっと力強くすべきだ、と一言おっしゃったのですが、これはどのような意味かということが一点と、そのあとすぐにSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)の話もされました。SWFに対しての大臣のお考えを改めてお聞きしたいと思います。

答)

年金運用については舛添大臣のところで既に検討を開始しておられますので、私の方から領空侵犯的にいろいろ申し上げるのは避けたいと思います。今までのいわゆる受動運用、パッシブ運用というやり方だけでよいのかどうか、はたまた年金と言ってもカルパース(カリフォルニア州公務員退職年金基金)のようなモノ言う株主、アクティビストという領域にまで踏み込むのかどうかという議論は大いにやっていただきたいと思っております。ソブリン・ウェルス・ファンドにつきましては、私のところの「金融市場戦略チーム」で引き続き議論をやっているところでございますので、第二次レポートの中でその成果を報告させていただきたいと思っております。

問)

第二次レポートはいつ頃でしょうか。

答)

国会が終わるまでには何とか出したいと思っています。今月はいろいろ世界的な枠組みの中でもレポートと言いますか報告が出てくるかと思いますので、そういったことも横目で睨みながら出していきたいと思っています。

問)

地域金融機関のことでお伺いしたいのですが、先週、荘内銀行と北都銀行が県境を越えた経営統合を発表しました。今年2月には池田銀行と泉州銀行も経営統合ということがありました。背景には地域経済の低迷というところがあり、資金需要もなかなか先細りであるというところがあるのかなと思うのですが、このような地域金融機関の再編が今後もまたずっと加速していくものかどうかということについて、大臣はどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

答)

昭和金融恐慌の後の一県一行主義という国策とは全く別で、それぞれの金融機関の経営判断で行われていく種類のものです。ゆうちょ銀行というモンスターがいよいよ登場してきたわけでもありますし、金融大競争の時代が始まっているわけですから、それぞれの金融機関が生き残りをかけた大作戦をそれぞれ練っておられると思います。そのような生き残り戦略の中で経営統合という道を選ばれるところも出てきているわけで、それはそれで大変結構なことだと思います。

いずれにしても、戦略の選択肢の中にはいろいろな選択肢が可能だろうと思います。リレーションシップバンキングの手法においてもいろいろな金融ビジネスが可能でありますし、それぞれの得意分野に特化していくところもあるでしょうし、私としては先ほどお示しをした直間(直接金融と間接金融)比率のグラフ、これが依然として日本は統制型金融の時代に培われた比率からなかなか脱却できていないなという思いがあるのも事実です。 したがって、新しい時代の金融サービスを地域金融機関には是非手がけて欲しいと思いますし、その手がける過程で統合という戦略を選ばれるのも大変結構なことだと思います。

問)

今日、住友信託銀行のシステムにまたトラブルがありまして、ATM等が一部止まって利用者に迷惑がかかるという事態がありました。最近(システムトラブルが)相次いでおりますが、今日の件も含めまして大臣のご所感をお願いします。

答)

トラブルの中身までは詳しく報告は聞いておりませんけれども、こうした不具合がしょっちゅう起きるというのは問題です。一体どういうことからこのようなことが起きるのか。だいたい金融業というのは相当大きな部分を情報通信、ITの分野に依存しているわけであって、そのITの分野で不具合を起こすというのは、当然お客様に大迷惑をかけることになりますので、このようなことがおきないように常日頃からきちんと点検を怠らないように、また、システムが不具合を起こさないようにやっていただきたいと思います。

問)

講演で日本経済の中で官が占める割合が非常に高く、民を圧迫しているというお話をされていました。金曜日(16日)に立入検査に着手しました新銀行東京、これもこの間の400億円の増資を受けまして、大半というよりほとんど100%近く東京都が出資しているという官製銀行になりましたが、この銀行の先行きというかビジネスモデルについて改めてご所見をいただきたいと思います。検査の結果、この銀行が市場から退出することになるのかどうかも含めまして大臣のご見解、見通しをいただければと思います。

答)

まず、検査は始まったばかりなので、その検査の結果を今の時点で申し上げることはできません。検査にはおそらく1ヶ月以上かかるでしょうし、結論が出るのはずっとその先のことになります。

新銀行東京の最初の理念というのは、銀行法上の銀行という形をとりながら自治体が行う政策金融だったかと思います。したがって当時、「貸し渋り」や「貸し剥がし」など民間金融機関の資本が痛んでいる時代の発想としてはそれなりに意味があったのだろうと思います。また、中リスク、中リターンというビジネスモデルも当時としては非常に面白いアイデアだったと思います。しかし、それがなぜ今日のように失敗をしてしまったのか、やはりその原因を徹底究明していただく必要はあるかと思います。せっかく始めた中リスク、中リターンの世界が、やはりこのようなビジネスモデルは全部だめなのだ、ということになってはいけないと思います。この分野というのは、まさに統制型金融の結果、先ほどの講演の中でも申し上げましたように、非常に手薄になっていた分野であります。この世界、中リスク、中リターンの世界をもっと伸ばしていこうということを我々は考えているわけであって、そこでの失敗事例の研究は大いにやっていく必要があろうかと思います。

問)

会見の冒頭で困難な状況を抱えているということでこちら(鳥取)にということなのですが、数ある地方の中で鳥取に来られた困難な状況というのは一体どのようなものかというご認識なのか。それから、これから伸びる可能性も同時にあるというのは、これから企業を回られると伺っていますのでまだ十分ではないかもしれませんが、鳥取のその可能性とはどういうことか、さらに地元の金融機関の役割、鳥取ではどのようなことができるのか。この3点をお願いします。

答)

具体的に数字があって申し上げたわけではございませんが、先ほども質問が出ましたように、高速道路がないと言うと必ず出てくるのが宮崎と鳥取だったりするのです。それから、景気の良くない地域としてイメージ的に挙げられるのも中国地方の日本海側だったりするわけです。したがって、そういう地域は日本経済の中でいわゆる格差問題のシンボリックな地域の一つであるという紹介のされ方もしたりするのだと思います。

しかし、同時に鳥取というのは、先ほどの講演の中でも申し上げたように農産物の輸出という点では、どこにも負けないくらいのノウハウを既に蓄積しておられるのだと思います。ですから、このような「お宝」のノウハウ、あるいは砂丘があるが故にアラブと非常によく似た気候、風土の中で育つ農産物というのを武器にするということもあり得るのだと思います。先ほども少し話がでましたが、砂地で栽培される「らっきょう」をドバイに持って行ってもできそうだなという話で、現にそのような作戦を立てつつあるわけです。それは、大変な「お宝」ではないでしょうか。気が付かなかった「お宝」を掘り起こし、発掘し、それを大きく磨き上げることによって地域が活性化していく。とんでもない大転換期の世界の中で地域が活性化し、生き残っていく可能性を限りなくもっているのが鳥取だと私は思うのです。そういう意味でここを選ばせていただいたということでございます。

その中で金融機関が果たす役割というのは、これまた統制型のシステムに安住していたのではリスクは取れません。時代が明らかに変わっているのだという認識の下に、かつての統制型金融、つまり護送船団方式の延長線でものを考えない方がよいと思います。残念なことに日本は護送船団方式から脱却しよう、金融自由化を進めようとした矢先に金融危機に見舞われてしまいました。金融庁の金融行政というのは、事前の統制型から事後チェック方式に大転換をしたのでありますけれども、肝心の金融機関の方が護送船団から大転換をすべきときに金融危機に見舞われて、相変わらずリスクの取れない、金融庁の顔色ばかりを伺うような体質を温存しているというのでは駄目なのだと思います。金融庁の顔色を伺ったって金融庁は昔の金融庁ではないのですから、自分で考えろよ、と言うしかないわけです。そのような時代になってしまったのだという頭の切替えができていない金融機関がもし地域金融機関の中にあるとすれば、早いところ頭の中の切替えをやってもらわないと困ります、ということではないでしょうか。先ほども申し上げたように、鳥取には探せばいくらでも「お宝」が出てくる。そういう「お宝」を金融機関がリスクを取ってバックアップをする。お互いがウィン・ウィンの関係を構築するというのが大切なことだと思います。

(以上)

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