与謝野財務大臣兼金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成21年7月28日(火)10時49分~11時11分 場所:財務省会見室)

【冒頭発言】

閣議は案件通りでございましたが、閣僚懇では昨日発表されました民主党のマニフェストに対して何名かの閣僚の皆さんから感想が述べられておりました。

【質疑応答】

問)

今おっしゃったように、昨日民主党のマニフェストが公表されまして、暫定税率の廃止でありますとか子ども手当の支給でありますとかそういった重点施策が盛り込まれています。大臣ご自身がご覧になってのご所見というのをお伺いしたいんですが。

答)

あのマニフェストは人を喜ばすために作った文章であると思っております。しかしながら、あの中にはマクロの財政政策は入っておりませんし、またマクロの経済政策も入っていないということで、選挙対策用の文章でしかないと思っております。現実の財政運営というのはもっと現実感がなければならないと思っておりますし、いわば、極言すれば本当に純粋に選挙用のフライフィッシングみたいなものだと思っています。

問)

民主党のマニフェストの表紙を見ますと「政権交代」という言葉と併せて「国民の生活が第一」という言葉があり、自民党の方であったり政府の方というのはおそらく安心社会の実現というのが大きなテーマだと思うんですが、キーワードとしてはちょっと似たような感じもあるんですけれども、自民党として民主党のマニフェストとの違いというものを打ち出していくという時にどういうところを鮮明にしていくべきなのかお考えをお聞かせください。

答)

戦後60年の日本の歴史は、対外的な平和を維持する、また軍事大国にならない等々、実は常に国民の生活が第一、日本の経済の発展が第一ということで、国民生活第一というのは戦後64年、いつの時代をとっても一番高いプライオリティのついていた政策なので、今さらおっしゃっていただくことでもないのだろうと思っております。自民党・政府の政策も、常に国民生活第一と暮らしを守る、これは当たり前のこととして、論ずるまでもないこととして我々は政治をやっていく上での前提としてきたことでございまして、今さら言っていただく必要もないことだと思っています。

問)

鳩山代表が消費税の議論につきまして、4年間の引き上げというのは封印したままなんですが、議論そのものは容認するような発言があったわけですが、その発言につきまして大臣のご所見を。

答)

民主党の中でも良識のある方々は税制抜本改革はやらなきゃいけないということは当然分かっておられるはずでして、なぜそれが4年なのかというのはよく分かりませんけれども、麻生総理の場合は08年からかけて3年間はやらないと。やる場合は景気回復が前提だと条件付きなんですけれども、鳩山さんの4年というのはどういう根拠で4年と言うのか、その根拠は明らかにされていない。だけど、財政が大変厳しい状況であるという認識を少しは持っていただいたということは大変良いことじゃないかと思っています。

問)

先程、極言すれば選挙用のフライフィッシングのようなものだとおっしゃったんですけれども、具体的にどういうことをおっしゃっているんですか。

答)

子ども1人持っておられる方のところに30万円以上のお金が行くというのは、多分受け取る方はうれしいはずです。2人おられれば60万円以上行くと。これは初年度半額、次の年度から全額やろうというんですけれども、2年度に入りますと年間5~6兆、恐らく必要なんだろうと思います。誰が払うんですかということに対して答えが出ていない。ですから、みんながうれしい側面だけ表に出しておられて、誰が本当に負担するんですかと、それを。そのことについてもやはりきちんと言っていただかないと、私は話として、全体としての整合性がとれた話にならないんだろうと思っています。

問)

大臣、先週の会見などでも民主党は既に政権をとったような気持ちで前祝いをしているんじゃないかというようなことをおっしゃっていましたが、民主党が政権をとった場合にどういうところが懸念されるとお考えですか。

答)

それはこれだけ色々なことを約束しちゃったわけですから、財政は恐らく破綻状態になると思います。タダにするものはいっぱいありますと。差し上げるものもいっぱいありますと。税金の話は一切触りませんと。成長戦略も見えてこない。そういう状況で恐らく財政の状況はさらに悪くなるだろうと思っています。それと同時にやはりもう1つ心配なのは、やはり日米関係なんかも地位協定を改定するというようなことも言っておられて、実際何を言っておられるのか分からないんですけれども、地位協定というのは安保条約の運営そのものですから、やはりこういうものもはっきりさせていただかなきゃいけないと、そういうふうに思っております。それから、役所の中に100人も国会議員が入ってくる。専門家でない、知識もない、経験もない人達が入ってきて、役所に来て、ああでもないこうでもないという指示を出すと。恐らく行政はその対応に追われて仕事どころではなくなるという可能性が非常に強い。

私が最も懸念しているのはそういう具体的な政策ではなくて、昨日の鳩山さんの記者会見を聞いていても何か暗い感じが非常にするわけで、あの方が政権をとられると、どうも暗い世の中が始まるんじゃないかなというような気がして、昨日テレビのマニフェストの会見を見ていて私自身嫌だなと、そう思いました。

問)

一方で、ここまで財政を悪化したのはやはり自民党政権としての責任もあると思いますし、また自民党としてもマニフェストをこれから発表されなきゃいけないと思うんですが、そのあたり、責任政党としてのこれまでの総括とか今後どうやっていくかというお考えはどうですか。

答)

これは中曽根政権までさかのぼりますけれども、中曽根政権も実は財政再建目標を掲げました。赤字国債をゼロにしようと。それから次の橋本内閣もそれを掲げたわけでございます。その時々の政治情勢、経済の情勢によってそれぞれ困難に遭いました。我々もただ漫然と時を過ごしていたわけではありません。2006年には大胆な歳出削減を決めましたし、その路線に従ってやっておりますし、世界経済の悪化によって実現出来なくなりましたけれども、2011年、プライマリーバランスを何とか黒字にしようということを考えたわけでございます。昨年の暮れには、やはり消費税を含む税制の抜本改革をやろうと。それから、消費税については目的税として考えて、これを全部年金、医療、介護、少子化対策に使おうと、そういう形、それから今年の骨太ではプライマリーバランスの到達目標等々もきちんと書いておりますから、我々は姿勢としては常に財政再建をやらなければいけないということを訴え続けてきております。それでよしとするのかというと、そんなことはなくて、今年の税法の附則で書いた税制の抜本改革というのを実現するということがやはり我々に課せられた責任であるということを前提に常に行動しているつもりでございます。もちろん過去、税制改革が出来たとすれば、それは満点だったと言えますけれども、その時々の経済や政治情勢がそれを許さなかったという面もご理解をいただければと思っております。

問)

大臣の場合は衆議院を解散された後、公務と両立しながら選挙戦を奔走されているということで、その難しさというか大変さ、そういうことと、あとこれまでの序盤戦なんですけれども、手応えはいかがですか。

答)

実は解散になったのはシーリングも決まった後ですから、大きな問題は財務省としては片づいた後の話です。ですから、日常業務はちゃんとやっておりますけれども、地元での活動とぶつかるということはございません。それから、今のところ私が接触している範囲というのは、もともとの私の支持者でございますから、もともとの支持者は本当に快く応援してくださるということなんですけれども、それ以外に有権者の方は大勢おられるわけで、そういう方々のお気持ちがどうなっているかということは実際にはまだ把握出来ていないと思っております。

問)

先日もお聞きしたんですが、アリコジャパンの方で情報流出して、その不正利用された件数が2,200件まで増えています。あの情報流出の問題の影響が広がっていますけれども、現時点での認識とか、どう対応すべきかといったことに新たな部分はございますか。

答)

1つは、もともとの情報管理のあり方というものをきちんとしなければならないということが1つ。これはアリコジャパンだけじゃなくて、この種の業態を持っておられる他の企業においても同じことが言えると。それから、アリコの場合はそういう被害が広がっているというのを何としてもこれ以上広がらないように、会社自体も、また金融庁もしっかりお手伝いをしなければならないと思っておりますし、起きた被害についてもこれを最小限に食い止めるという努力もしなければならないと思っております。ですから、起きてしまったことに対するそのもともとの情報管理の問題と、現にそれによって引き起こされている被害の問題、両方をきちんとやらなきゃいけないんですが、当面は現に発生している被害の方に力を入れて、この拡大をなるべく小さくするという努力をアリコを始め関連企業も、それからまた金融庁もやらなければならないというふうに思っております。

問)

大臣は今年の補正予算で苦しい中で、およそ15兆の財源を見つけてきて補正予算を取り組まれたわけですけれども、一方、民主党の掲げている政策は今年度民主党の独自政策で7兆円、何年か後で15~16兆円なんですけれども、それすら、この今の現状を考えると7兆とか数年後の15~16兆ですら見つけてくるのはなかなか難しい現状にあるのではないかというご認識でいらっしゃいますか。そこら辺の財源のところについてもう少しお聞かせいただけないでしょうか。

答)

軽い気持ちで無駄の排除と天下りを廃止して何とかするとお金が出てくると。ひもつき補助金を一括交付金に直すとまたお金が出てくるという、それはいずれも点検すると、そんな簡単な話ではない。そういう演説をされると、そうかなと思ってしまう部分があるんですけれども、具体的に個別項目でやっていきますと、そうはいかないということは職人的に見ればすぐ分かるわけです。演説の材料にそういうふうに言っておられるのは、選挙だから放っておくしかないんですけれども、現実離れしているということはすぐ分かってしまうことだろうと思っております。ただ問題は、そういう個別の問題もそうなんですけれども、民主党が財政政策をマクロでどう考えているのか、経済政策をマクロでどう考えているのか、その辺がよく分からない。それから、一方では民主党の方々というのは、やや金融資本主義に近い方々が非常に多いわけです。市場原理主義に近い方が多いわけですけれども、そういうものとの民主党のご自分達の政策との関係はどうなっているのか、その辺も不分明です。これから一月も選挙戦をやっているわけですから、両方とも口角泡を飛ばして議論をすると思いますけれども、やっぱり議論が真実に近いところに落ち着くことを私は党派を超えて期待をしているわけです。

問)

民主党のところなんですが、子ども手当の財源として扶養控除の廃止をうたっております。そこら辺についてはどうお考えでしょうか。

答)

なぜ扶養控除が廃止されて子ども手当に行くのかという、そのリンクは全く不明なわけです。ですから、むしろ民主党が言っていることは所得税制を変えますということを言っておられるにすぎない。だけど、専業主婦が家におられて家事をやっておられる。家庭を支えておられる。所得税の中ではその方をパートナーが養うということはある種の経費性を認めているということなので、その経費性を認めないということは本当にいいのかどうかという問題はあるわけです。

(以上)

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