与謝野財務大臣兼金融担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成21年8月4日(火)11時11分~11時41分 場所:財務省会見室)

【冒頭発言】

今日は閣議・閣僚懇の後、自由民主党から園田政調会長代理がお見えになりまして、麻生総理を除く閣僚に自民党のマニフェストの作成過程並びに注目点、これについてのご説明がございました。以上です。

【質疑応答】

問)

今のお話にもありました自民党のマニフェストですが、大臣は今、政府のお立場ではありますけれども、政権公約をご覧になった総括と評価についてお聞かせください。

答)

自民・公明は与党を形成しておりますけれども、ここでは日常的に必要な政策は毎年やっておりますし、また新たなものをつけ加えているわけでございますので、選挙だからといって急に何か全く新しいものが出てくるということはない、いずれの政策も今までの政策の延長線上にあるということが普通でございます。しかしながら、幼児教育の無償化とか、あるいは所得についてはこの10年間で落ち込んだ分を取り戻すとか、かなり色々考えて作ってくださったものでありまして、そこは私は高く評価したいと思っております。

問)

消費税の話題についてなんですけれども、自民党のマニフェストの中には消費税の引き上げ時期や幅についての明言はマニフェストの中にはなかったわけですけれども、今まで政府としては税法の附則である中期プログラムを掲げていらっしゃるのは承知しているんですけれども、そこら辺についての整理はどうしていかれるのかをもう一度お聞かせください。

答)

税法の附則では税制全体の考え方もきちんと示しておりますし、また消費税のあり方については目的税的に使うということも書いてありますし、一応あの法律は政府に対しても一定の拘束力を持っている。また、立法府に対しても多分拘束力を持っているというふうに思っておりますので、マニフェストに書いてあろうがあるまいが、あの法律が与党として国会を通した法律なので、あの法律によって我が党の将来の行動は規定されると考えております。

問)

民主党の最近のご主張なんですけれども、仮に民主党が政権をとった場合、民主党で言う歳出項目をどう担保するかについて、大臣がまとめられた今年度の補正予算を含めた現政府・与党の予算の組み替えで当面はしのげるというご発言を繰り返されているんですけれども、そのことについての現実味、あるべきかどうかも含めて大臣のご所見をお聞かせください。

答)

仮に民主党のご主張のどおり組み替えたり、あるいはあちこちからお金を探してきてやったりしても、せいぜい民主党の言われる政策が持続可能であるのは1年ぐらいだと私は思っております。民主党の細かい政策はともかくとして、やはり全体を流れる民主党の政策の基本となっている思想は、北欧の社会民主主義、すなわち高福祉国家を作るという思想が民主党の思想の根底にあるわけでございます。高福祉国家というのは誰しもが望むわけでございますけれども、やはり高福祉を実現するためにはそれなりの高負担というものがついてまいるわけでございます。これは今回政権交代とか政策の選択とか言われておりますけれども、実は国民が選択をしなければならないのは、どういう社会を国民が選択されるのかと。低福祉なんだけれども低負担なんだ、あるいは民主党が言われるような高福祉、そこには語られていませんけれども高負担という、そういうところ、あるいは自民党が営々とやってまいりました中福祉・中負担の社会、この3つがあるわけですけれども、民主党は明白に、民主党が意識されているかどうかは別にして、政策の項目を全部検討しますと、明らかに北欧型高福祉社会、これを目標にされている。これを持続させるための努力というのは並大抵のものじゃない。北欧はスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、これは一律ではありませんけれども25%前後の消費税になっています。それから国民負担率も7割、あるいは7割5分、こういう世界を国民が選択されるのか、今の中福祉・中負担を若干手直ししながら持続させるのか、そういうおそらく社会のあり方の選択なんだろうと思っています。鳩山さんの方が格好がいいとか、そういう話ではなくて、この選挙の最大のポイントは社会のあり方を国民の皆様方に選んでいただくという選挙だと。そういう意味ではどういう社会が望ましいのかと、これは国民お一人お一人の判断にゆだねざるを得ないと私らは思っています。自民党の立場は中福祉・中負担、これは以前からの我が党の一貫した政策なので、若干の手直しをしながらも大きな枠としての中福祉・中負担というのは持続させていきたいと思っております。

問)

投開票日まで1カ月を切っているわけですけれども、選挙の投開票までもう間近となってきていますが、世論調査によって自民党が追い上げているものもあれば、差が拡がってしまっているものもあって色々あるわけですけれども、大臣、与謝野さんとしての実感については最近いかがでしょうか。

答)

それは国民の世論調査を通じてのご評価というのは、我々謙虚に受け止めなきゃいけないと思っております。しかし政党ですから、我々の政治姿勢や政策を最後まで愚直に訴えていく、そこに活路を見いだしていくということでなければならないと思っております。

問)

先日、自公政権について経済同友会とか連合が評価をされて、この4年間の評価でかなり厳しい評価をされたんですけれども、その点について大臣のご所見をいただけますでしょうか。

答)

同友会も歴史のある立派な団体なので、ご意見を言われるということは大事なことなので、静かにお伺いするということでございます。

問)

先程の質問の関連で、消費税を含む税制抜本改革をこの前の任期である程度道筋はつけましたし、中福祉という点でも安心実現会議での提言というのがまとめられたと思うんですが、次の任期では実行に移していかなきゃいけないと思うんですが、大臣自身のお立場として、その次の任期の前にあるこの選挙というのをどういうふうに位置づけて戦っていらっしゃるのかということをお伺いします。

答)

実際我々の予想し得る行動というのは税法の附則に書いてある通りでございまして、景気回復を前提に出来れば2011年から税制抜本改革を行うと。そのために必要な法制上の措置を2010年に行うと。これは法律が我々政府に対して命令していることでございまして、我々は景気回復というものを前提に法律に書いてある、定めたとおり行動するというのが政府の立場ではないかと思っております。ただし政党の方は、景気回復ということも考えなければなりませんし、そういう難しい問題が政治的に消化出来るかどうかという、国民の動向等を考えながら行動をされるのではないかと思っております。

問)

その政治的に難しいところを克服するためにも選挙というのは政策を訴えていく機会だと思うんですけれども、そういった点についてこの選挙戦でどういうふうに臨んでいきたいかという点をお聞かせ下さい。

答)

高福祉国家をきちんとお約束をしながら4年間議論する必要もないという政党もある中で、あの法律は結構愚直に正直に真正面から物事をとらえているという面では評価すべきものがあると思っております。

問)

その財源の点なんですが、民主党は予算を組み替えて何とか対応すると言っているんですが、自民党は赤字国債も財源の1つだというふうに明言されていると思うんですけれども、それによって財政とか長期金利に影響があるんじゃないかという懸念もあると思うんですが、この点についてどうお考えでしょうか。

答)

我々は実際15兆円の補正予算を組み、市場の動向もよく見ながら、市場との対話も考えながらやってまいりましたが、我々の予算編成は実は長期金利には影響がなかった。どういうわけか、むしろ長期金利はわずかですけれども下がったと。そういうことですけれども、民主党があれだけのことをやられるというのは、それは国民の選択であればやっていただいて結構だと思いますけれども、やはりそのためには恐らく消費税率を25%以上にしないと、あれだけの政策を持続可能なものとして成立させることは出来ないと。その部分を避けて通るということは、1年、2年はもしかしたら可能かもしれないが、5年、10年の単位で考えれば、そういうことは避けられない。ですから、民主党の今の政策を考えると高福祉社会になる。しかし将来を考えれば、高負担の世界が現実のものとして出てくる。これは私は選挙ということを別にしても、普通の家計を預かる者としてはそう考えざるを得ないことじゃないかなと思っております。我々の税に対する姿勢というのは、中期プログラム及び中期プログラムを法制化した税法の附則に書いてありますので、我々は真正面から取り組んでおりますし、もちろん赤字国債を出しているということに関しては財政再建の目標、これはプライマリーバランス、プラス国債発行残高の対GDP比横ばい、あるいは減少、こういう目標は「骨太方針2009」にきちんと書いて、これは政府の閣議決定をしておりますから、また与党の了解の上で作ったものですから、財政再建目標はきちんと出しているというふうに確信をしております。

問)

長期金利のことでお伺いしたいんですけれども、これまで低水準で推移していた長期金利のことなんですけれども、ここ最近、足元で1.4%台に入ってきて、じりじりと上昇傾向にあるみたいなんですが、現状をどのように考えていらっしゃるのか、先行きの後、懸念についてもお話をお伺い出来ればと思うんですが。

答)

長期金利が上がらない理由というのは幾つかあると思っていまして、1つは成長に対する期待が小さいということ、それからインフレの懸念がないということ、それから民間の資金需要が少ない、低くなったとは言え国民の貯蓄は大きいという中で多分こういう低金利が実現されているわけですけれども、そういう中でもう1つ大事なことは、やはり財政再建に対する政府の熱意、誠意というものが広く認められているという政府に対する信任というものがあるわけでして、いずれもこういうものがそれぞれ作用して1.35から1.4ぐらいの間で行っているわけですが、これも無茶な財政運営をすればそれなりに市場が反応する可能性がある。これは現政府も注意しながらやっておりますし、将来の政権もこういうものはよほど注意しないといけないと思っております。

問)

長期金利の本当にここ直近の動きなんですけれども、少しずつ足元上昇傾向にあるというのは、これは予想の範囲内、今おっしゃられた中では1.4%ぐらいまでの低水準というふうなお話をされたかと思うんですが、懸念するに至らないというふうにお考えなのか、それとも何か懸念材料、幾つか論点を挙げられるのか、現状の動きについて、一部政局とは離れる面があるかと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

答)

基本的には長期金利をコントロール出来るか出来ないかという根本の問題があるんですけれども、長期金利はコントロール出来ないと考えるのが普通です。短期金利は日銀や何かがある一定のコントロールを及ぼすことは出来ますけれども、長期金利というのはもともと成長率に対する期待、インフレ率、プラスリスクプレミアム、これを総合したものでございまして、市場がそういうものを見ながら判断するということなので、それは政府のコントロールがうまく利かない分野で、今の動きが懸念材料かと言えば微小の動きでして、この春ぐらいには1.5ぐらいまで行ったことも多分あったと思うので、あまり今の動きは私どもは心配をしておりません。

問)

大臣ご自身の選挙戦のことでお伺いしたいんですが、今大臣は支持者の方を回られるのを中心にやられていると思うんですが、今後無党派層をどういうふうに考えていくのか、無党派の方にどうやって訴えていくのかをお伺い出来ますでしょうか。

答)

正直に自分の政策を訴えるしかないと思っています。ただ、我が選挙区には20何階建てとか40何階建てとかというマンション群が出来まして、ここがオートロックで、昔だったら自分の政策の紙なんかポストに投げ込んだんですけれども、それも出来ない。今回は事務所に言いまして、スピーカーを今横につけているんですけれども、こういうふうに、縦のスピーカーをつけないと間に合わないぞと言って、縦のスピーカーもつけてもらうことにしました。かようにアクセスのきかない方々が増えたというのは我が選挙区のとても大変なところなんですけれども、それでも色々な方法で何とか我々の考え方が少しでも伝わるようにいたしたいと、そういうふうに思っています。

問)

この選挙について、鳩山代表はいわゆる政権交代の選挙だと。麻生総理は政策選択の選挙だとおっしゃっていますけれども、大臣はこの選挙はどういう選挙だというふうに。

答)

ですから先程申し上げましたように、どういう社会がよろしいんですかということが実は選挙の本質で、そういう意味では麻生さんが言っている政策選択という方が正しいんだと思います。ただ政権交代、政権交代で北欧型の高福祉社会、こうおっしゃっていただければはっきりするんですけれども、提示されている政策は北欧型の非常に高い福祉政策、それをやっぱりちゃんと言っていただいた方がよいのではないかなと思っております。私は前から3カ所ぐらいで、いわば地元の後援者とのお話し合いをしていますけれども、一般の方は財源なんて言葉は使わない。よい政策なんだけれども誰が払うのというのが皆さんの質問です。私も困っちゃう。誰が払うんだって、民主党の政策を見ても答えが出ていないので、今回はそれは、民主党の言っておられる政策というのは子ども手当とか、みんなの注意を引きつけるような政策が出ていますけれども、あの政策集には財源なんていう話じゃなくて、じゃあ誰が払うのという部分がやっぱり欠けているので、お答えに窮しているというのが私の現状です。

問)

金融の状況についてお伺いしたいんですが、株価も回復してきて、証券会社、銀行の決算も黒字に四半期でなるところも出ています。現状どのようにお考えでしょうか。

答)

一部を除いてわずかながら黒字決算になったというのは大変喜ばしいことであると思います。恐らく株価も1万円を超えていますから、自己資本比率もそれなりに改善していると思っております。ただし、金融の世界の方に希望を申し上げれば、やはり金融機関というのは金融仲介機能を果たすというのが最大の社会的使命でございますので、是非銀行の本来の業務でございます金融仲介機能、これは大中小いずれの企業を問わず、個人を問わず、大事な金融仲介機能を是非果たしていただきたたいと思っております。欧米に比べますと証券会社、金融機関が実はこの1年間、あまり不安な状況にならなかったというのは日本の社会にとっては大変幸せな状態だったと私は思っております。

問)

改めてなんですけれども、選挙のことで、自民党にとって厳しい展開が続く中で選挙戦に突入して、現時点での大臣は社会のあり方を訴えるというふうに説明していらっしゃいますけれども、手応えというのを改めてお伺いして、この選挙戦に臨む気持ちというのをお聞かせいただけないでしょうか。

答)

手応えというのはそう簡単には分からないというのが実情です。しかし、国民が選挙に非常に関心を持っておられるということは肌で感じます。というのは、街頭演説、たった1人でやっているんですけれども、非常に多くの方が足をとめて聞いてくださるということで、この選挙の行方について国民が非常に高い関心を持っておられるということは事実ですが、手応えということまでお答えする段階にまだなっていないということです。

問)

自民党のマニフェストで道州制について打ち出されましたが、税財政の面から大臣のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

答)

考える順番の問題なんですけれども、税制を考え、財政を考え、道州制に至るのか、大枠として道州制を考えて、その中で道州制をやるとしたらこういう税制のあり方、こういう財政のあり方、あるいは財源調整、財政調整をどうするか、そういうものを考えていくということですが、自民党は2017年ですかね、道州制をやるという一応の目標、枠を作りましたので、そういうことをやるとすれば税制はかくあるべき、財政はかくあるべき、国の権限、地方の権限はこう整理されるべきというものが自然に出てくるのではないか、そういう手順を私は考えております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る