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自見内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成23年12月16日(金)11時34分~12時00分 場所:金融庁会見室)

【大臣より発言】

昨日、地方における景気動向や経営環境についての実情を把握するために、大阪市に出張をしてまいりました。まず、大阪商工会議所をはじめとする地元中小企業4団体の幹部や地域金融機関の経営者の方々と、特に中小企業の業況及び資金繰り等について、率直で有意義な意見交換を行ったところであります。

意見交換の中では、中小企業を巡る経営環境について、震災の影響からは回復しつつあるものの、円高やタイの洪水等による輸出の減少等を通じて、総じて見ると厳しい経営環境にあるとのお話がありました。

こうした中、中小企業金融円滑化法について、中小企業団体の方々からは、同法に期待する声が聞かれる一方、金融機関の代表者の方々からは、過去1年半の真摯な取組みにより、その定着が図られているとの意見を伺いました。

金融庁としては、これらの意見も踏まえつつ、今後とも中小企業等の金融の円滑化に取り組んでまいる所存でございます。

また、郵政改革担当大臣として、郵便局株式会社近畿支社を訪問し、現場の状況等について、意見交換を行ったところです。昨日、ぶら下がり(会見)も、大阪で各社と行わせていただきました。

それからもう一点は、オリンパス社についてでございます。

オリンパス社において、長年に亘り損失先送りが行われていたことが、適切な情報開示や投資者保護の観点から極めて遺憾なことであることは繰り返し申し上げてまいりました。こうした個別ケースをもって、我が国上場企業全体や市場全体が規律に欠けるものとして評価されることは適当でないと考えますが、内外の投資家より、我が国市場の公正性・透明性に対し、疑念を持たれることは憂慮すべきことであり、同社に対しては、正確な実態解明と迅速な情報開示を求めてまいりました。

これを受け、同社からは、今月上旬に公表された第三者委員会調査報告書を踏まえ、今般、過去5年分の訂正有価証券報告書等が提出されました。

今後の対応について申し上げれば、既に申し上げている通り、金融商品取引法上の法令違反に該当する事実があると疑われる場合には、証券取引等監視委員会において、厳正な検査・調査等が行われるものと承知しており、本件においても、必要な対応がとられているものと考えています。

また、公認会計士法上の問題となる事案については、従来より、必要な調査を行い、法令に則り、厳正に対応してきているところであり、本件についても適切に対処してまいります。

さらに、金融庁においては、これまでも市場の公正性・透明性を確保すべく、金融商品取引法の改正など各般の制度整備に努めてまいりましたが、今回の事案の解明が進展しつつある中で、今後、制度の運用面を含め、所要の点検・検討を行い、各関係者が連携して適切な再発防止策を講じていく必要があると考えます。このため、企業統治のあり方については、形式だけにとらわれることなく、各企業において真に実効性ある企業統治を実現させていくための方策について、検討する必要があります。企業統治に関する議論が、現在、法務省法制審議会等で進められていますが、こうした観点から、議論の進捗を期待します。

また、証券取引所が設置を求めている独立役員等について、その独立性や役割の明確化等が図られるよう、証券取引所の規則や開示ルールの見直しが必要となると考えます。

会計監査のあり方については、今回の会計不正に対して監査人がその機能を有効に発揮し得なかった要因について分析を行い、それを踏まえ、日本公認会計士協会等とも連携し、今後、会計不正に対応するための監査手続き等の充実を図っていく必要があると考えます。

今回の事案が発生した要因の一つのとしては、外部協力者としての金融関係者等の存在が指摘されています。今後の事案の解明の進展を踏まえつつ、このような者の行為の是正・予防に向けた対応を検討してまいります。

今回のような事案の再発防止に向けては、証券取引等監視委員会や証券取引所等と適切に連携して、情報の収集・分析に努め、有価証券報告書等の適正確保のため、検査・モニタリングの強化を図っていくことが必要であると考えます。あわせて、M&A等に関する開示の充実のための方策について、証券取引所等と連携して検討してまいります。

私は、我が国企業が健全で力強い成長を遂げるためにも、それを支える資本市場に対する信頼を回復・向上させていくことが重要であると考えております。このため、金融担当大臣として全力で対応してまいる所存です。

以上でございます。

【質疑応答】

問)

まず、大阪のご出張なのですけれども、両論出たということなのですが、大臣はこのご意見を踏まえて、(中小企業金融)円滑化法の延長の是非について、昨日を踏まえてどのような思いを持たれましたでしょうか。

答)

中小企業金融円滑化法の延長の是非等を含めた今後の取扱いについては、我が国経済や中小企業等の資金繰り等の状況、金融機関の金融円滑化に向けた取組みの状況等を、十分に見極めつつ、慎重に判断してまいりたいというふうに思っております。私は昨日、大阪に行かせていただきましたが、副大臣も来週また地方に行かせていただきまして、場合によっては大臣政務官も、他に税制の関係で忙しいのでございますが、他の地方のご意見を聞きに行くということも考えております。

昨日、色々なお話をしましたが、色々意見が出てまいりました。その中で複数の金融関係の方から聞いて私の印象に残っているのは、昨日のぶら下がり(会見)でも言いましたが、メガバンクと地方銀行、メガバンクと信用金庫とかで協調融資と言うのをやるときに、この中小企業金融円滑化法がなければ、メガバンクは、どちらかというと大企業に大型の資金を融資するのが基本的な使命となっていますので、メガバンクは融資を打ち切りたいと言って、率直に言えば話にも乗ってこなかったことが多かったのです。

(私は大臣に就任して)1年半ですけれども、最初に来た時、1年3、4か月ぐらい前に、関東財務局から帰って来た若い金融庁の職員との色々な会がありまして、「自見さん、今まで地域の金融機関の集会にメガバンクは一遍も来たことがなかったが、この法律が出来てからメガバンクが出席するようになりました。」と言っていたことを、私はよく覚えています。

そのことが頭に鮮烈に残っているのですが、昨日大阪でも、2、3人の金融機関の方から協調融資の話が、(似たような話が)期せずして出まして、この法律が出来てから、協調融資の場合にメガもきちんと話し合いに応じるようになったということを言われました。これは確かに金融界にこういう法律を作って、大きな銀行といえども、一零細企業・一中小企業の融資に関して、きちんと関心を払ってくれるというか、そういうふうになったのだなということを、昨日ぶら下がり(会見)でも私はそのことを申し上げましたけれども、近畿地方の地方銀行、信用金庫、信用組合の方々から話しがあり、それが非常に印象に残っています。

問)

もう一点、オリンパス問題なのですけれども、各関係者と連携して、再発防止策に金融庁としても取組んでいくということなのですが、このタイムスケジュールなのですけれども、例えば法改正が必要なものについては来年の通常国会に関係法令を提出するとか、その辺のタイムスケジュールをちょっと教えていただけますか。

答)

今回は、オリンパス等の事案を踏まえ、今後、点検・検討を要すると思われる事項について、申し上げたものであります。それぞれの事項については、直ちに具体策を提示するということではなく、今後、各関係者と協議・連携していく必要があり、また、今後の事案の解明の進展も踏まえていく必要もあると思っております。したがって、今後の検討スケジュール等については、現段階で確たることを申し上げることは困難であることをご理解いただきたいというふうに思っております。

問)

さっきのいくつかおっしゃったオリンパス問題の再発防止策の中で、取引所のルールということもおっしゃいましたけれども、場合によっては取引所のルール、または場合によっては金商法の有価証券報告書の開示情報なんかの関係での改正、いずれの可能性も両方あるということで今後検討していくのでしょうか。

答)

東証規則では、上場会社は、一般株主と利害相反が生じるおそれがない役員を、独立役員として、1名以上確保するというふうにされております。オリンパスの事案では、こうした独立役員がいたものの、その機能が十分に発揮されなかったのではないか、との指摘があり、こうした点を踏まえて、取引所規則や開示ルールについて適切に見直す必要があるというふうに考えております。

もう一点でございますが、金融商品取引法の改正如何にと、こういうご質問だったと思いますけれども、再発防止については、これから具体的な検討を行っていくものであり、実際にどのような形式で実施するかという点については、現段階では確たることは申し上げられません。

問)

関連なのですけれども、今回具体的な検討はこれからということなのですけれども、第三者委員会等では問題点は既に指摘されていますが、大臣御自身として、今回の問題、どういったところに問題意識をお持ちで、今回制度の改正に取組もうと考えになったのか、その点をお聞かせください。

答)

私が今言いましたように、オリンパス社においては損失先送りが行われたということは、極めて遺憾であり、正確な実態解明と迅速な情報開示が行われていること、そして、行政としても、法と証拠に基づいてこの問題に厳正に対処していくことが非常に重要だというふうに思っております。今はその経過途中にあるわけでございますが、こうした個別ケースを以って、我が国の上場企業全体や市場全体を規律に欠けるものと評価することは適当でないというふうに思料しております。今回の事案により、内外の投資家から、我が国市場の公正性・透明性に対し、疑念を持たれていることは憂慮すべきことでございまして、これまでも市場の公正性・透明性を確保すべく、金融商品取引法の改正等各般の制度整備に努めてきたところでありますが、今回の問題の解明を通じ、改善すべき点がある場合には、適切に対処していく所存であります。

問)

問題はまだ解明途中であるというのは、それはこちらも認識しておるのですけれども、とはいえ、具体的に制度の改正、法律の改正に乗り出すということを改めて表明されたということですから、どういったところを大臣は問題点をお持ちで、どういったところを強化していく必要があると。

答)

改善すべき点がある場合にはきちんと改善をしていくということでございまして、色々な改善の仕方がございますから、今日も最初から申し上げたとおり、そういった点をきちんとやっていきたいというふうに思っております。

問)

昨日、全国銀行協会の永易会長の会見で、オリンパスの件でこれを見抜けなかった銀行にも社会的な責任、道義的な責任があるというふうに認めていらっしゃったのですけれども、今大臣がおっしゃったお話の中では、取引銀行に関しての責任追及のことは出ていなかったんですけれども、今後、銀行に対しての責任を追及していく、もしくは制度を見直して規制強化していくということもあり得ますか。

答)

前回、私は似たようなご質問をいただいたと思っておりますけれども、個別金融機関の個別融資の問題については、当庁として、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思っています。ただし、一般論として申し上げれば、過去において、メインバンク制度というのがありまして、我々、国会議員に28年前に通ったとき、日本の企業というのはほとんどメインバンク制がございまして、メインバンク制は、金融機関が、借り手の企業経営のガバナンスに一定の役割を果たしていた時代があったことは事実だと思っております。

しかし、日米構造協議の中で、確か中曽根内閣の時だと思いますが、前川レポートというのが出てきまして、持ち合いだとか、系列化というグループ化を大変厳しくアメリカから批判されました。他方、今や金融機関といえども、公開情報以上の情報を得て、更には不正を見抜くことは一定の限界もあると認識をいたしております。

いずれにいたしましても、金融機関が、顧客企業の財務内容の他、できる限り幅広く情報を集め、適切な経営判断をしていくことは重要であるというふうに考えております。

問)

銀行の責任の話ですけれども、責任があるといえば酷な気もしますし、責任がないと言ってしまうと、銀行が実にずさんな経営をしているのだなということになってしまうのですけれども、昨日、永易全銀協会長は、社会的、道義的責任はないことはないと、銀行業界のほうから出てきたと思うのですけれども、まさに個別の、今回のケースの大臣の見解、見識をお聞きしたいのですけれども、これはこれから具体的に何か明らかになってきたからコメントできるという状況ではないと思うのですね。ここでコメントしておかないと、銀行の社会的な責任とでも言ますか、公的な地位というのが、もう昔よりもないのだというような響きにも聞こえるのですが、いかがでしょうか。

答)

私が今申し上げたのは、個々の企業に関して、昔はメインバンクというのがございまして、私も22年前、通産政務次官をしましたから、企業によく接触をさせていただきましたが、大変力が強かったです。業績が悪い場合に、極端な話、取締役を代えるあるいは代表取締役を替えるとか、そんなことはごく一般的でもありました。

ところが、そのことが系列だということで大変非難をされまして、銀行が昔のメインバンクのときのように、一般に昔に比べればグリップが弱くなったと思っています。ただし、銀行につきましては、個別のことについては、最初に言いましたが、個別の問題についてはコメントすることは差し控えますが、一般的に言えば、銀行というのは公共性と公益性というのがあり、これは銀行法に書いてあるわけですから、そういったことは当然社会的常識として、公益性、公共性というのはあると思います。それ以前に、商業道徳というのはあると思っています。

3年前のアメリカのリーマン・ショックで、ただお金を儲けるだけでいいのかということは大変厳しく問われましたし、そういった中から、この前話したかと思いますけれども、公益資本主義だとか、あるいは日本の石田梅岩塾の見直しなんか非常に進んでいるという話を私はしました。これは江戸時代に大阪で、商業道徳と儒教の教えを合わせたような石田梅岩塾というのは今でもあるそうでございまして、大阪というのはずっと長い間、江戸時代から日本の商業、経済の中心でしたけれども、やはりそこは一定の商業道徳といいますか、倫理があったということも事実でございます。そういった意味を歴史的に考えて、金融機関が顧客企業の財務内容のほか、できる限り幅広く情報を集めて、適切な営業判断をしていくことが重要であるというふうに考えております。

問)

今日は個別のケースについては言及されないということですけれども、今後状況がさらに明らかになっていく中で、いずれオリンパスのケースで取引銀行に責任があったのか、なかったのかの見解を話していただくタイミングが来るのでしょうか、来ないのでしょうか。

答)

それは、今からどういうふうな展開なるのか、あるいは証券取引等監視委員会でも色々調査をしているやに聞いております。何度も言いましたように、基本的にここは、総理大臣といえども、金融庁長官といえども指示はできません。独立性がございますから、あくまでこれは予算・機構についてのみ金融庁は影響力があるわけです。これは私がこの前も言いましたように、国家権力と自由主義経済、そこのまさに接点ですから、そこは非常に大事なところだと私は思っています。そんな中で、今は予断をもって色々個々の企業に関して、コメントすることは差し控えたいというふうに思っております。

問)

銀行法は公益をとても重視している法律で、それを監督しているのが金融庁、金融担当大臣、自見大臣ということになるのですけれども、その個別のケースについて言及できないというのは、ちょっと私は納得いかない部分があるのですけれども、今日はともかく、今後もまたこの件、責任というテーマでお聞きしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

答)

はい、分かりました。

問)

今の追加でというか、同じ事をもう一回聞きますけれども、証券取引等監視委員会ではなくて、これは銀行の融資の問題であって、今回の不正で明らかになっているのは、M&Aによって、多めの金を払って戻したというところが不正であって、そこの間で融資が伸びているというのは、これも公開情報でわかっているわけですから、それについて、銀行についてもう一度検査をするとか、責任をどう考えるか、これは系列の問題でもなければ、証券取引等監視委員会の問題ではないと思うのだけれども、それについて大臣、ご見解、もう一度お聞きします。

答)

当然今調査中でございますから、マスコミには色々な記事が踊っておりますが、やはり行政庁としてはきちんと実態が解明されることが必要だと思っておりますので、今の時点では、恐縮でございますけれども、個々の企業のことについて、私は金融を監督させていただく行政(機関)の長でございますから、今私の立場から申し上げるのは適当でないと思っています。

(以上)

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