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自見内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要
(平成24年1月13日(金)10時33分~11時01分 場所:金融庁会見室)
【大臣より発言】
私は1月8日(日)から5日間の日程で米国へ出張し、金融・会計の関係者と面会を行ってまいりました。今回の出張を通じ、欧州の債務危機の影響を受けて、世界の経済、金融の不確実性が高まっている中、現状についての率直かつ有益な意見の交換を行うことができました。また、当局間の緊密な協力関係を維持することが一層重要であるということについての認識の一致を見ました。
会計の分野では、国際会計基準に関する米国における検討状況について伺うとともに、諸外国における国際会計基準の対応についても情報交換を行ってまいりました。
以上でございます。
【質疑応答】
- 問)
-
閣議では、辞表を出されたかと思うのですけれども、この間、郵政改革法案というのは成立しないまま、今日を迎えました。どうすればよかったのか、今後どういうふうにしていくべきなのかということも含めて、お考えをお聞かせいただければと思います。
- 答)
-
今日、辞表取りまとめということでございまして、私も辞表を書いてまいりました。
今、郵政改革関連法案についての質問だと思いますけれども、郵政改革担当大臣の在任中に、郵政改革関連法案が成立しなかったことは、極めて残念でございます。
郵政改革関連法案については、現在衆議院において継続審議になっていますが、郵政株式売却による震災復興財源確保といった側面においても、一日も早い成立が期待されているところであります。
私が郵政改革担当大臣を亀井静香(前)大臣の後引き受けさせていただきまして、1年7か月になるわけでございますが、先の臨時国会において、初めて衆議院の郵政改革に関する特別委員会において、郵政改革関連法案の提案理由を説明することができたことは、大変重要な一里塚だというふうに認識をいたしています。
法案については、国会閉会中も与野党で協議されていると聞いておりまして、野田総理自身も郵政改革の実現に向けて、通常国会で全力を尽くす決意だと述べておられます。一日も早く与野党の協議がまとまり、次期通常国会において、早期議論されることを強く期待をいたしております。
- 問)
-
オリンパスの問題で、オリンパスが新旧の経営陣19人を提訴しましたけれども、こちらについてのご感想と今後の問題で最大の課題、懸案事項というのはどういうところにあると見ていらっしゃいますでしょうか。
- 答)
-
オリンパス社が1月8日に、現旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起したことは承知をいたしておりますが、個社に関する経営をめぐる個別の問題については、コメントは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
しかし、金融庁といたしましては、オリンパス社において損失先送りが行われていたということは極めて遺憾であり、正確な実態解明と迅速な情報開示が行われること、そして行政としても、法と証拠に基づいてこの問題に厳正に対処していくことが重要と考えています。
ただし、こうした個別ケースを以って、我が国の上場企業全体が市場全体の規律に欠けるものとして評価することは、適当でないというふうに思っております。
他方、今回の事件により、内外の投資家から我が国の市場の公正性、透明性に関して疑念を持たれることは、憂慮すべきことだと考えております。当局としては、これまでも市場の公正性、透明性を確保すべく、金融商品取引法の改正等、いわゆる金融ビッグバンの時、橋本龍太郎さんが大蔵大臣だったと思っておりますが、当時からずっと一歩、一歩、歩を進めてきたわけでございます。フリー、フェア、グローバルというようなことでやってきて、私もその中で与党の一員として経験をしておりますし、また何回も言いましたように、1997年から98年まで、第二次橋本改造内閣の郵政大臣をさせていただいた時に、北海道拓殖銀行が崩壊し、山一証券が崩壊したことに、閣僚として遭遇したわけでございますから、そういった歴史を考えてみたら、金融庁としても、金融商品取引法の改正等、各般の制度整備に努めてきたところでありますが、今回の問題の解明を通じて、改善すべき点がある場合には、これは適切に対処していく所存であります。
- 問)
-
東証がオリンパスに対して上場は維持し、特設注意市場銘柄にさせるのではないかというふうに一部で報道されていますが、これについての見通し、ご見解を教えていただけますか。
- 答)
-
それは基本的に私が色々コメントをする立場にもございませんが、ご指摘の点については、東京証券取引所において、現時点で何ら決定した事実はないというふうに承知しております。いずれにせよ上場の取扱いについては、上場取引所である東京証券取引所において、有価証券上場規定等に基づき、適切に判断されるものと考えております。
これはご存じのように、自由主義経済と国家権力がどうあるべきかどうかということが原理原則でございます。
- 問)
-
法と証拠に基づき、厳しく処分すべきというふうにお考えということですよね。
- 答)
-
それは当然、法と証拠に基づいて、きちっと私が申しましたように、当局としてはオリンパスの損失先送りが行われたということは極めて遺憾でありますが、正確な実態解明と迅速な情報公開が行われること、そして行政としても法と証拠に基づいて、この問題に厳正に対処していくことが重要だと思っていまして、こういった中で、今ご質問ございました上場の取扱いについては、上場取引所である東証において、有価証券上場規定等に基づき、適切に判断されるものというふうに考えております。
- 問)
-
先ほどおっしゃったアメリカでのご出張で、(会計基準に関し)現地の検討状況を伺ったというふうにおっしゃっていたのですけれども、会計に関してアメリカの検討状況というのは、どういったものだったのかというのと、それを踏まえて、日本でどういうふうに対応されているのか。
- 答)
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会計については、会計基準設定主体や企業の財務担当者、あるいは大学教授、現、また前アメリカ会計学会の会長にもお会いしました。(現会長は)わざわざジョージア州のアトランタから来てくれました。前会長はイエール大学の教授で、現会長はアトランタの大学の教授でございまして、そういう方にもお会いさせていただきました。国際会計基準(IFRS)の適用に関する見方や会計基準の国際化に関する考え方についてお話をお伺いすることができました。
また、私からは、我が国におけるIFRSの適用に関する検討状況や会計基準と経済活動や金融・資本市場との関係、戦略的な対応の必要性などについてお話をしましたが、理解と賛同を得られたというふうに考えております。
今後、日本におけるIFRSの適用については、米国をはじめとする海外の動向もしっかり参考にしつつ、我が国の会計がどうあるべきかという戦略的視点を持って、企業会計審議会において引き続き論議を行っていただきたいというふうに思っております。
- 問)
-
何か特段印象とか、新しく得られた事実とか、そういったものはあったのですか。
- 答)
-
IFRSを任意適用いたしておりますけれども、もし強制適用するとしても、5年から7年の期間を置く、それからこのアメリカ会計基準でアメリカに上場しているトヨタのような大きな企業は、日本基準とアメリカ基準(を採用しており)、アメリカのニューヨーク証券取引所に上場しております。2016年3月期で使用中止とされている米国基準での開示は使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とするということ、それから少なくとも私が昨年の6月21日に「IFRS適用に関する検討について」を公表をさせていただいたわけでございます。少なくともその時点では、2015年3月期についての強制適用は考えていないということを申し上げたわけでございます。IFRS関係では、米国財務会計基準審議会(FASB)のサイドマン議長だとか、この財務会計財団(FAF)のブレナン理事長、それから財務役員国際組織(FEI)のホライン会長兼CEO、ダナハー・ゼネラルエレクトリック(GE)の経理担当の補佐、ゼネラルエレクトリックは7万5,000人ぐらいアメリカで雇用していまして、20万人ぐらいの人を世界で雇用している、ご存じのように非常に大きな会社ですけれども、そこの財務会計の責任者、そういった方々とお話をいたしました。それからこのイエール大学のサンダー教授、これは前米国会計学会の会長であります。それからエモリー大学のウェイマイア教授、この方は今のアメリカ会計学会の委員長でございまして、全米に6,500人ぐらい会員がおられるという話でございました。そういった方々とお話をさせていただいて、今の日本の立場や、こういうことを決定させていただいたということをお話させていただきましたが、非常に妥当な線だろうというような印象を受けました。
しかし、一度ワシントンに行く日程を閣議で了解していただいていたのですけれども、その後から官房長官から、今日の金曜日の今開かれた閣議にぜひ出席してくれという話でありましたので、残念ながら米国証券取引委員会(SEC)のシャピロ委員長等と会う約束はしていたのですが、面会がキャンセルになってしまいました。まだ全体的なことは申し上げられませんけれども、色々な人と面会して、国によって多様な考えがあるということがよく分かったというふうな感じがいたしております。
- 問)
-
ちょっと漠然とした質問なのですが、日本社会は非常に内外も含めて厳しい状況に置かれているのですけれども、今年の日本社会、あるいは日本人が大事にしなければならない、あるいは非常にポイントになってくるキーワードをあえて一つ、二つ挙げるとすると何でしょう。
- 答)
-
私は絆だと思うのです。「絆」、それから「自信」、「再建・再興」だと思います。
絆ということは、この前申し上げたと思いますが、昨年10月に、ドイツ、フランス、イギリスに行きまして、ドイツ連銀の副総裁、ラウテンシュレーガーさんという女性の副総裁にお会いしました。今年、お正月の新年賀詞交歓会というのに各信託銀行をはじめ、信用金庫の賀詞交歓会だとか、色々な金融機関の賀詞交歓会に出席させていただきまして、ありがたいことに挨拶をさせていただきました。そこでも申し上げたのですけれども、副総裁がおっしゃるには、3月11日の東日本大震災が発災した後、ドイツでもヨーロッパでも大変大きなニュースになりまして、大体1週間ぐらい連続してニュースをずっと流していたそうです。
また、津波で家が流れたりするところもずっとテレビで流していたそうなのですが、そうしたらドイツ連銀の副総裁の19歳の大学生の娘が、2万人近い方が命を奪われた1000年に一遍の大脅威にも関わらず、どうして日本人というのは、ああいう危機の中においても、人間としての尊厳を失わず、平然と冷静に対処できるのか。
そして、一つの避難場所なんかもよくテレビに出たそうなのですが、最初、私も記憶にございますが、なかなか国道が一部通行不能になったり、それから非常に最初物資の搬入が滞ったり、電気や電話が切れたりつながらなかったりしたのですけれども、その中でも、みんなが助け合って、一つのおにぎりを二つに、あるいは三つに分けて、助け合いということで、平然としているということに対しても、日本人というのはどういう国民なのかと、本当に娘が感動し、驚嘆し、驚愕していたという話をドイツ連銀の副総裁から聞きました。また、どんな国であれ、国家であれ、ああいう状況になったら、必ず略奪が起るのだが、確か私も見ましたけれども、(被災地では)スーパーマーケットの前にずっと人が並んでいるのです。配給か何かを待っていた姿を私もよく覚えていますが、どうしてあんなことができるのかと、世界に冠たるイギリスの中央銀行総裁のキング総裁も同じことを言っておられました。私はそういった意味で、国家というより日本国民が非常に助け合いの精神、現実に絆を持っておられることが日本の社会の一番強いところだと、こう私は日頃から選挙を9回していますから、思っていました。それがきちっと世界に再認識されて、世界から逆にはね返ってきて、日本人というのはそういう性向がなきにしもあらずですが、自信を持ったというか、外国から日本の国民というのは大したものだといったことが(認識されました)。私は、この話をしたら、20年間眠っていたのかというお叱りをいただいたこともございますが、失われた20年という話になりましたけれども、ペリーが来たときも、第二次世界大戦の結果も、第一次、第二次オイルショックのときも、危機になれば、日本人というのはきちっと本当に団結するといいますか、本当に人間としての基本的なものを失わないといいますか、人間としての尊厳を持っているということが我々国民の持っている優れた特徴だというふうに私は思っております。そのことが東北の震災の復旧・復興、例えば色々なことがありましても、私は非常に大きな話だと思っております。
それから、そういった絆があったからこそ、160年前にペリーが来た後、15年間で、アジアで唯一の近代国家ができたと、あるいは67年前に(戦争で)焼け野原だったのだけれども、日本が起き上がることができたと(思っております)。
むしろ、この伝統的に脈々と続く国民の助け合いという精神があったからこそ、逆に日本の国家の危機を乗り越えてこられたというふうに私は思っております。そういった意味で、今度の東日本大震災は大変苦しいことで、亡くなられた方に本当に言葉もない、お気の毒なことなのでございますけれども、それを乗り超えて、ここできちっと復興・復旧をしなければ、命を落とされた方には本当に申し訳ないというふうに思っております。そういった意味で、やはり絆ということが、たまたま去年の字に選ばれましたけれども、そのことが、以心伝心、我々が語らずして、持っている国民としての一体性、いざとなったらお互い助け合うのだということは、東北地方の被災地でも生きているということを、私自身も被災地に3回も行きまして、確信をさせていただいております。絆が復興、再生、こういったことに結びつく(と思っております)。
実は円高で、日本の輸出産業が大変厳しいのでございますけれども、アメリカで聞いた話でございますけれども、アメリカに行っているのはメガバンクの人が多いわけですけれども、ある意味で20年ぶりに日本の金融機関に順風が吹いてきたということを言っておられました。
それまではバブルの時代は非常に肩で風を切っていくというような状況がございまして、それからバブルが崩壊した後、日本が停滞の20年と言われて、それからご存じのようにリーマン・ショックがあって、今度は欧州の通貨危機がありました。
そんな中で、日本の金融機関の人たちの話ですが、カナダの金融機関が一番うまくシステムとして乗り切ったのではないかと、2番目は日本だということは、大体世界の金融界で定着しているということです。特にヨーロッパの銀行を中心に、日本に資産を買ってくれと、本当に殺到しているという話がありました。しかし当然ですが、こういうとき慌てますと、余り優良でない資産をつかまされることもございますから、そこら辺はよく邦銀の責任者の方はよく分かっておられまして、きちっといい資産を買いたい、あるいは出資したいということを言っておりました。そういう意味では、20年ぶりに日本の金融機関に順風が吹いてきたといったことも、象徴的な言葉ですけれども、邦銀のアメリカにおける責任者の方から聞きました。確かに円高、それは一方では国内においては輸出企業が大変厳しい、国内中小企業も厳しいと、そういったゆえに、出口戦略を考えながら、中小企業金融円滑化法も延長させていただいたわけでございます。そういった当然デメリットとメリットがあるわけでございますが、アメリカに行って、現実にそういった直接現場の声を聞くと、これはメリットの部分ですが、非常に日本がある意味でピンチのときはチャンス、チャンスのときはピンチでございますから、しっかり政治がそういったことを踏まえつつ、間違えのない舵取りをしていかなければならないということを私自身考えさせていただいたわけでございます。
- 問)
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東洋経済、井下です。
昨日、発表したボルカー・ルール(案)に対するレターなのですけれども、日本国債(JGB)への影響のところに触れられておるのですが、あの辺のところの懸念というのをもう一度ちょっと説明いただけますか。
- 答)
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昨年12月28日、当庁と日本銀行は、ボルカー・ルール案の市中協議文書に対して、米国金融規制当局にコメントレターを連名で提出をいたしております。
一般論としては、米国の金融規制改革法、いわゆるドッド・フランク法を含む各国の金融規制改革の実施は、その国の金融システムの安定につながる形で行われることが期待されるわけでございます。
一方、ボルカー・ルール(案)は、外国の金融グループの米国外拠点に対する広範な域外適用の規定を含んでおり、世界の金融市場や金融機関の流動性、安定性に悪影響をもたらす懸念があることから、今般、レターを提出したものであります。
当庁といたしましては、今後、日本銀行や海外当局と連携の上、米国規制当局との協議を行い、各国の金融市場に対して悪影響が生じないように、最善を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
これはアメリカで非常に巨大な民間銀行のナンバーツーの人と話したときも、このことが話題に出ました。例えば日本の国債の流動性が落ちるというようなことになりますと、これは大変影響が大きいわけでございますから、このボルカー・ルールについても、きちっと我々の意見というのは言っておきました。
それから、この私の聞いたところによると、金融庁長官がバーゼルに日本銀行総裁と一緒に行ってまいりましたが、このボルカー・ルールについて、今私が言ったような趣旨を国際会議でも主張してきたというふうに報告をいただいております。
(以上)