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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成26年1月14日(火)10時47分~11時07分)

【質疑応答】

問)

経団連の次期会長に東レの榊原会長がつくことになりました。榊原さんは産業競争力会議の民間議員として、法人実効税率の引下げですとか成長戦略の推進についても発言をされております。経済再生やその鍵を握る企業の賃上げに向けてどのような役割を期待されるでしょうか。榊原さんが経団連会長に選出されることへの評価も含めて、感想をお聞かせください。

答)

榊原さんの発言は、昔からきちんと一貫しています。年齢は私より3歳若いと思いますけれども、研究開発に先行投資をしたお金の回収には、数年、数十年かかるものをやり続けるということが大切なのですと、極めて真っ当な話をしていらっしゃったというのがこの方の印象です。きちんとそういった下積みの人に対して報いるということをしない限り、企業がきちんとした技術を獲得し、世界に売れるような技術は、基礎を作らないとできないという話をしていたのは、極めて説得力がある話だなと思って5~6年前に聞いた記憶があります。この1年間ぐらいの間でも似たような話は何回もあったと思いますけれども、経営者としては極めて大きく、長期に物が見えている方で、今のカーボンファイバーのあのシェアをあれだけ作り上げたのも榊原さん、あの方は確か普通の事務職ではなく、技術職の出身だと思います。名古屋大学の出身であり、極めてそういうイメージであり、私はこの方の経営感覚は極めて真っ当だと思っていますから、良い方がなられたと思います。

問)

成長戦略に対しては、どのような期待をされるでしょうか。

答)

我々としては、成長戦略はいわゆる好循環ということを言うのですけれども、第1の矢、第2の矢は政府が行える範疇ですが、第3の矢は民間がそれに応えてどう反応するかというのが一番大きな問題です。その反応が今のような形で、この4月から給与にどう反映してくるかというのが非常に大きな要素だと思います。今、景気の気の部分が上がったというのは、去年1年間で言えると思いますし、事実としてボーナス等々賞与の面では反応がそれなりのものが出てきていると思いますが、賞与ではなくて給料に出てきたかと言えば、そこまではまだいっていません。したがって、全国約6,500万の労働者の懐の話から言いますと、そこが上がってこないと景気が良くなったということを実感できません。初任給は20年間ぐらいずっと据え置きのような状況で、デフレでしたからそれなりで、経済全体を見ればデフレですからと言えばそれまでの話ですから、これが変わっていくに当たって、給与が上がっていくということが出ないと消費にも関係します。景気の面から言っても、東レに限りませんけれども、経団連がいわゆるベースアップという言葉を6年ぶりに使って、そういった意味ではなかなか難しい時代にあったのだと思います。これがインフレターゲットとしては、2%というのを目標に据えてスタートしていますので、その方向でやるのだという方向に踏み出していただける、傘下の企業もその方向でということになります。加えて経団連の場合は主たる経営者を見ても、これまでほとんどがいわゆる物づくり、二次産業が主たる企業の内容であり、会長さんの経歴はほとんどそういった形になっています。鉄鋼、自動車という二次産業の方が多いので、そういった意味では、日本の場合は二次産業がきちんとやっていく、物づくりをきちっとやるという国であり続けないと、日本という国の国家としての安定性はないと、私はそう思っています。その意味では、榊原さんのような方が会長に選ばれたのは良いことだと思いますし、景気循環という話から申し上げましても、良い方向に動いていくと思っています。

問)

経常収支について伺いたいのですが、今日発表された去年11月の経常収支が過去最大の赤字になったのですけれども、以前大臣が御指摘されていたように、日本は貿易立国から投資で稼ぐ国に姿を変えつつあると思います。こうした中で、稼ぐ力である経常収支が赤字に転落したことをどのようにとらえていらっしゃるのか、なかなか難しいとは思うのですけれども、今後の見通しも含めてお考えをお伺いさせてください。

答)

一番大きな理由は、液化天然ガス、LNGとか原油が急激に増えていったということであり、これは貿易収支に最も影響するのですけれども、11月としては過去最大の赤字となっているのが、一番大きな原因なのだと思います。したがって、これが解消されない限りは、経常収支等々についても同じく黒字化は急激には見込めないということになってくるのだと思います。幸いにして、これまでのところ、いわゆる所得収支とかそういったようなものが、昔と比べて投資のリターンとか貸したお金の金利とか、そういったものが昔に比べてそのシェアが大きくなっていますから、今のこの問題が大きな騒ぎにならずにこの程度で済んでいるのだとは思います。今後ともこの問題が簡単に変わっていかない以上は、我々としてはそれがシェールガスに換わって安くなるのか、石炭を使ってその分安いエネルギーに換えていく、原子力発電等々を使って石油・ガスの消費量を減らす、いろいろなことを考えて総合的にエネルギー政策というのを考えませんと、今の経常収支に及ぼす影響は大きいと思います。

問)

消費税の引上げの関係ですが、週末のテレビ番組でも甘利大臣から、かねてから大臣仰っておられる話だと思うのですけれども、10%引上げについては、年末に判断するのではないかという御趣旨の発言をされていらっしゃいました。それについて、そもそも附則第18条第3項には、判断時期は書いていないですけれども、民間が対応するということを考えれば、半年前には決めなければいけないのではないかというのが、8%への引上げ時の判断だったと記憶しております。そういった中で9カ月前に判断したことが、これが最終判断になるのだろうかという点と、それに関連して年末に判断するとなりますと、最も重要なGDP統計を考えていきますと、4-6月期が落ち込んで7-9月期の戻りが出てくる、その7-9月期を確認するということになると思うのですけれども、果たして4-6月期が落ちて7-9月期が戻ったというところだけをもって消費税10%に日本経済が耐えられる状況にあるのだろうかということを、4-6月期、7-9月期、その2つを見て判断できるのだろうかと思いますが、大臣のお考えをお伺いさせてください。

答)

学術的な話としてはおもしろいですが、政治というのは現実をやるのであって、理想とか理屈だけでやっている世界ではないですから、経済を考えた時に今言っていることは、では6カ月前でそれが正しいのですかと。予算を組むという技術論的なことを言った場合に、12月までに27年度の予算を決めておかないと、27年度の税収が10月以降に2%上がると計算するのか、上がらないで計算するのかでは全然違ったことになります。それで仰る理屈に従って3カ月延ばしたとするか。その答えが出てくるのは2月になります。予算をそれで組み替えて3月。それから予算編成ですか。そうしますと、予算の組み替えで国会が荒れるというのが、最も国益にはそぐわないですけれども。そういうふうな理屈を言ったら、幾らでもおもしろく話はできます。ですが、政治という現実、行政という現実を預かっている立場から申し上げますと、予算というものを3月で組み替えますと言って予算が大幅に遅れるというのは、平成27年度の景気に与える影響は極めて大きいものなのであって、予算編成が大幅に遅れた1994年、細川内閣の時、予算が6月に上がった結果として、日本の経済は急激に悪化していったのもあの時でした。政治改革もあの時でしたし、いろいろな意味で93年、94年というのは大きな変化の起きた年でしたけれども、予算編成がずれ込み、予算の成立が遅れ、成立したのが6月です。その意味では、大きく経済に影響を及ぼしたことは間違いありませんから、ああいう愚は避けたいです。

問)

甘利大臣が先週に、法人税の改革について諮問会議で議論したいということを仰っていました。思い出しますと、2002年ぐらいに諮問会議で税制改革を議論したことがあったと思うのですけれども、ある意味それは当時挫折をして、党税調で議論するというふうに戻ったと思います。今回そういうふうに甘利大臣が仰ったことについて、どうお考えになっていらっしゃるか、それは何か税制改正のプロセスを変えるようなものになるのか、その方向性が良いか悪いかということについて、大臣のお考えも含めて教えていただたきいと思います。

答)

経済財政諮問会議は、非常にいろいろなものについて大まかな方向等々を考えるという意味では、良いところだと思いますが、税制というような最終的な問題を詰めるという話になりますと、これは税調ときっちり話ができませんと、今度は税制改正法案が通りません。ですから、与党税調の話をきちんとやっておかないと、なかなかできないと思います。いろいろな考え方があるのだと思いますけれども、きちんと検証をしておきませんと、経済財政諮問会議の方々で税制にそんなに詳しい方がいらっしゃるかと言えば、経済財政諮問会議で税に詳しいのは、主税局で課長を務めた経験のある黒田日銀総裁ぐらいでしょう。他の方で、そんなに詳しい方はいらっしゃらないと思いますので、そういった意味では、税制というのは最も慎重に扱わなければならない問題なのだと、私はそう思います。

問)

アメリカの雇用統計を受けてアメリカ経済の動向ですとか、出口戦略をめぐっていろいろな思惑が相場にも表れているように見えるのですが、大臣はアメリカ経済の動向について、今どのように見ておられますでしょうか。

答)

思っていたよりは悪くならなかったなと多くの人が思っているのではないですか。もっと悪くなるかと思っていたけれども、あまり悪くならなかったなとあの数字を見て思ったのではないですか。その割に株価が下がってみたり、ドル安に振れてみたり、いろいろしているので何とも言えませんけれども、正直、雇用統計だけではどうにもなりませんが、やはりアメリカという国は、シェールガスを開発し、これが大規模に操業され、ましてやそれが輸出につながっていく段階になってきますと、私はアメリカ経済というのは全く今とは違った極めて力のある経済に変わっていくのではないかなと予想します。シェールガスがどれくらい早くと言いますと、少なくともこれまで輸入してメキシコ湾から全国に輸送していたものを、今あるところから逆にメキシコ湾に輸送するような形になっていけば良いだけの話なのであって、あのパイプラインをそのまま使え、設備投資がかなり少なくて済むというのであれば、シェールガスは大変安い形で輸出でき、すごい力になります。それはアメリカにとっては、大変大きな政治力になり、軍事力にもなるでしょうし、もちろん経済力にも、いろいろな意味で大きな力になるものだと、私はそう思います。

(以上)

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