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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成26年5月13日(火)10時18分~10時38分)

【冒頭発言】

物価連動国債については、これまで個人による保有を禁止してきたところですけれども、デフレ不況からの脱却を目指しております中、物価連動国債は個人からの要望が非常に多いことを踏まえ、個人からのニーズに応えることも政策上重要となってきたのではないかということで、財務省としては平成28年1月以降に満期を迎える物価連動債につきまして、平成27年1月から個人による保有を解禁することとしております。

【質疑応答】

問)

昨日発表された国際収支ですが、経常黒字が1兆円の大台を割り最も少なくなりました。最大の要因が燃料輸入額の増大ということで、いわゆる国の富がエネルギー確保のためにどんどん海外に流出していってしまっています。今そういった状況にあることについて、大臣のお考えをお伺いさせてください。

答)

経常収支のうち、貿易収支が赤字になっていることが、今一番大きな問題になっているのだと思います。基本的には幾つも要因があるのだと思いますが、原発停止等々によって燃料輸入額が約3兆6,000億円ぐらい増加していると試算されています。また、企業が海外へ工場を移転する等々の影響も出てきているのだとは思っていますが、平成23年度と平成24年度を見ますと、貿易赤字額のうち、原発停止に伴う燃料輸入額の増加が大きな要因となっていたことは、この数字で明らかだと思っております。その後、平成25年度においては、さらに貿易赤字額が増大しているのですけれども、燃料輸入額の増加に加え、1つは円安で輸入価格が伸びたこと、また、輸出数量が伸び悩んだ一方で、内需が極めて堅調でしたので、パソコンやスマートフォンなどいろいろなものの輸入数量が好調だったことがその背景になっています。ただし、貿易赤字を考える時に、よく考えておかなければいけないのは、燃料の輸入の増加による貿易赤字は、3兆6,000億円の国富の国外への流出であり望ましくないと思いますけれども、一方で製造業の海外移転によって生産拠点が海外に移転することは、日本としてお金の稼ぎ方が変わってきたということなのであって、海外に出ていった企業等々が海外で稼いだお金の配当・送金等々で利益が国内に還流する可能性があります。また、GDPはよく聞きますが、いわゆるGNI、グロス・ナショナル・インカムというものはあまり使われておりませんけれども、グロス・ナショナル・インカムという点から、日本経済の稼ぎ方の構造的な変化ということを考えますと、海外投資によってより高い収益を得ているということは、良いことなのであって、決して悪いことだとは思いません。いずれにしましても、今後とも国際競争力というものを高めておくためには、技術はもちろんのことですが、投資収益が拡大していく等々、規制を更に緩めるとか構造改革をするとかいろいろなことを今やろうとしていますけれども、そういった成長戦略を一層進めていくというのを基本にしておかないといけません。原発停止による燃料輸入額の純増、円安、生産の方法の変化、構造の変化というようなものが複合的に出てきて、大きな影響が出ていると思います。これによって、原油1バレルを100ドルで買える日本は、それで良いと思いますが、問題は1バレル100ドルではとても買えないという新興国等々の経済は、日本は原発が止まって3兆6,000億円支払いが増えているのですけれども、支払える国と上がったから払えない国ということを考えますと、日本の原発が止まっていることによって、海外のエネルギーコストにも影響を与える、輸入価格にも大きな影響を与えるぐらい、やはり日本の経済力は大きいという点も考えておかなければいけない大事なところだろうと、国際的にはそう思います。

問)

経常黒字の縮小をもって日本の稼ぐ力が弱まってきているという見方もある一方で、大臣が仰ったように稼ぎ方が変わってきているという、債権国として成熟しているという姿もあると思います。一番心配なのは、これだけ燃料費が増えて、それが電気料金という形で全部転嫁されていきまして、企業活動で言いますと、今、法人減税の議論がされていますけれども、たとえ法人減税を行ったとしましても、電気料金が10%も20%も上がったら元も子もないと思います。家計で言えば、消費増税に加えて更に電気料金となりますと、これ以上負担は負えないという、非常に負のスパイラルに陥りかねない、燃料費の増加が電気料金という形で、こうなっていってしまうことについて問題意識を感じるのですけれども、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

非常に根幹的なことですが、昔、日本ではアルミを精錬してましたので、いろいろなアルミ会社があったのですけれども、今アルミ会社はありません。現にアルミ会社はないのです。なぜないか、アルミは大量の電気で作りますので、アルミの精錬は日本ではとても採算が合わなくなりました。アルミ産業が日本から撤退せざるを得なくなった最大の理由は、電気料金です。今、溶鉱炉としては電気炉もありますが、電気炉の電気の値段は隣の韓国に比べれば大幅に高いのではないですか。そういった意味でいきますと、電気料金は産業の中では、コストに占めるシェアが大きいですから、そういったものを考えなければいけないというところになってきています。やはり原発というものは、当面の間は一番安い電気料金で供給している、隣の国々では稼働していることを考えても、そういった面で、我々は一番基礎的なところでコストが高いために、産業に影響を与えて、結果として物価に影響し、個人の消費にも全て影響するという形になっているのは事実です。そういった意味では、原発の安全というものを確認した上で早く動かすということを考えていかないと、国全体に及ぼす影響は大きなものになるのでしょうという感じはします。

問)

物価連動国債についてですが、去年10月に入札が5年ぶりに実施された時にも、大臣は期待を示す発言をされておりました。今回の個人向けについては、どのような期待をされていますでしょうか。

答)

一番手間がかかるところというのは、税金の話だったと思うのですけれども、満期になるまでの期間が10年ですので、その間、所有者が移転するたびに所得としてどう計算するかという話です、個人で言えば。それを資料として残しておかなければいけないわけですが、10年間も記録をとっておけませんということにきっとなると思いますので、そういった意味で、これは利子所得から譲渡所得に移行させます。28年1月から譲渡所得に移行しますということをやりませんと、現実問題として今のままの利子所得では個人には売れません。譲渡所得に変える等々を行っていくのですが、法人の希望者が極めて多いですし、世の中がデフレでは物価連動債なんて売れるはずもないのですけれども、どうやらデフレから脱却するということになりますと、物価連動債の方がかたいと思えばそちらの方に移行してくることが、法人に限らず個人も多いのは当然です。そういった意味では課税方法を変えますので、売れていく可能性はあるのではないかなとは思っていますけれども、ただどれぐらい売れるかと言われますと、そこのところは分かりません。

問)

整備新幹線についてですが、北陸新幹線は金沢-敦賀間の着工が認可されておりまして、北海道新幹線については新函館-札幌間の着工が認可されております。福井県からは工期を3年前倒しできるだろうという試算が示されておりまして、週末も北海道の高橋知事が太田国土交通大臣に前倒しを要請し、今日も、これは連続して開かれていますけれども、与党の新幹線に関するPTが開かれまして、そういった声が相次ぐのではないかと思われます。ただ、財政面については非常に課題があると思うのですけれども、こういった前倒しの声について、麻生大臣のお考えをお伺いさせてください。

答)

新幹線を前倒しで作り上げる、北陸新幹線は金沢までは来年に開通しますが、こういった話というのは、少なくとも新幹線を最初に作った昭和39年の頃、あれは全て国有鉄道が行ったわけです。当然のこととして、国家財政で行い、予定金額の約2倍かかって結果的にでき上がったのですけれども、あれがもしなかったら、今の日本はどうなっていただろうと思うぐらい、やはりあれは非常に投資効果の大きかったものだと、私はそう思います。そういった意味では、東北新幹線も岩手で止まっていたり、山陽新幹線も岡山で止まっていたりしていましたが、山陽新幹線を九州まで延ばしていった結果、私はいろいろな意味で極めて波及効果は大きく、国鉄の費用だけ見ていればいろいろな言い方はあるでしょうけれども、それによって旅行が増えたり、いろいろな意味で商売などに波及効果は極めて大きかったと思います。北海道等々でこういったものを希望されているというのは、私はよく理解できるところですので、北陸新幹線の話も、今これだけ南海トラフなどいろいろなことを言うのでしたら、少なくとも東海道線が地震で不通となった時に、例えば静岡のあたりでは、東海道新幹線、国道1号線、東名高速の全てが2キロぐらいの幅に集中していますから、あそこあたりに地震が来たら東西完全に分断となります。国の危機管理としては、そういうことになると思いますので、そういった意味では、上の方から中央線回りというのを考えても少しもおかしくないのであって、その時には福井から京都・大阪まで延ばしていくというのも、全体としての国の安全ということを考えた時には大きいと思います。こういうものを考える時には全体の絵を見て考えませんと、その地域の話だけに矮小化するのは国としてはいかがなものかという感じはします。私は今の話は財政と地元負担とか、いろいろな話がありますけれど、いろいろなものを考えてやっていかなければいけないと思っています。今の話に関して、これは財政の話、地元負担の話、JR東日本の話、JR北海道の話、いろいろみんな関連してくるところは多くあると思いますけれど、こういったものはなるべく、私はできる限りやっていった方が良い、前倒しできるのであれば、そういったものを考えた方が良い、結構前向きに考えた方が良いと私はそう思います。

問)

年金財政についてですが、今、厚生労働省が5年に一度の年金財政検証を進めています。今回はデフレ下でのマクロ経済スライドの発動ですとか、年金保険料納付期間の延長ですとか、社会保障制度改革国民会議が提唱した改革を実施した場合の試算についても検証を行っています。そうした改革、高齢者の負担増になる一方で、将来世代の負担軽減には効果があると思われるのですけれども、そうした改革の必要性、特に世代間の公平にかかわる改革の必要性について、大臣のお考えを改めてお伺いさせてください。

答)

これは田村厚生労働大臣が、それぞれの個人の判断でとお断りになった上で、公的年金の受給開始年齢を75歳まで延ばせるように検討するということを言われたという話は承知しています。いずれにしましても、今年は5年に一度の年金財政検証の年であり、そういった意味では、きちんといろいろな社会保障改革のプログラムは、社会保障と税の一体改革等々を清家会長のところでやっていただいておりますので、検討が進められていくというのはすごく大事なことです。年間1兆円ずつ財政支出が伸びているという現状を放置したままというのは、とても財政としてはもちませんから、そういった意味で改革というものを是非やらなければいけないと思っております。今、厚生労働省がいろいろやろうとしておられるのは良いことだと思いますし、財務省としてもこういったものは積極的に一緒に行って、結果として効率的なものを考えていかなければいけないと思っています。

(以上)

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