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麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成26年5月30日(金)8時54分~9時18分)

【質疑応答】

問)

財政制度等審議会の報告書が、本日の午後に提出されます。社会保障費の抑制が必要との考えが示される見通しですけれども、今後どのように進めていかれるのでしょうか。また、都道府県ごとに医療費の数値目標を作るという案も提案されていますが、実効性はあるのか、国民の反発を招くことはないのか、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

世界に冠たる国民皆保険制度を抱える日本の社会保障制度は御存知のように、保険料だけでは給付は賄い切れず、公費負担に4割ぐらいを依存しています。税金で補っているということです。その公費負担の財源も税財源だけでは足りませんので、特例公債を発行して借金を将来に先送りしているという状態です。持続可能な社会保障制度にしていこうとするのであれば、給付と負担をバランスさせることを行わなければいけないことは、はっきりしています。具体的に給付面を考えてみた場合は、公的給付範囲を見直す、また医療・介護サービスの提供体制、レセプトの話や、新薬の話やジェネリックの話などいろいろありますので、そういったものを改革する。また、診療報酬・介護報酬の抑制などについて、1つ1つ具体策を積み上げていく必要があると思っています。したがって、御指摘をいただいた医療費の支出目標については、先月の経済財政諮問会議で、私の方から提案をさせていただいております。その際、総理からも、国や都道府県ごとの医療費の水準の在り方を含め、その具体化に向けた検討を進めていただきたいとの御指示があったところでもあります。実質的な制度を構築しないといけませんので、関係大臣と連携をとりながら、具体的な案の検討を今後行っていかなければいけないと思っています。これは非常に大きな問題と思い、真剣に役所の中で、前々からいろいろ検討していた話でありますけれども、総理の指示もありましたので、きちんとやっていかなければいけないと思っています。

問)

法人税改革についてですが、先日の経済財政諮問会議において、日銀の黒田総裁が恒久財源確保の必要性を強調されました。法人税率の引き下げの財源は、100%恒久財源がなければいけないのでしょうか。100%にこだわると早期の引下げは難しくなるとの指摘もありますが、大臣の御見解をお伺いさせてください。

答)

法人税の改革については、財政健全化との両立を実現することが大事ですが、2020年度にプライマリーバランスの黒字化を達成しますということは、我々は海外に向けてもお約束をしている話なのですから、恒久的な財源をきちんと確保しませんと、内閣府が出した中期的な見通しですと2020年度に12兆円ぐらい不足します。6年間で割りますと毎年度2兆円不足しますので、その毎年度2兆円分をきちんと手当しませんとバランスしないということです。経済財政諮問会議において、総理から、法人税の減税については、法人税を成長志向型の構造に改革していくための方向性を、年末を待たず骨太方針に示していただきたいという御発言があったところです。したがって、与党においても議論が進められているものと承知していますが、責任ある法人税改革の考え方をお示ししなければいけないということですので、骨太方針に向けて議論を今後進めていかなければいけないのだと思っています。与党や政府税制調査会などにおいて、この問題については幅広い御意見がいろいろ出されていると理解しているところです。

問)

景気についてですが、4月1日の消費税8%引上げから2カ月になります。今日発表された消費者物価指数ですが、消費税の引上げの影響込みで前年同月比3.2%の上昇となりました。一方、同じく今日発表された家計調査ですけれども、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比4.6%の減少となっています。もともと駆け込み需要の反動減を想定されていたわけですけれども、大臣が想定されていたより今の景気の現状について、大臣はどのようにとらえていらっしゃいますでしょうか。また、今後の景気の見通しについて、どのように見ていらっしゃるか、大臣のお考えをお伺いさせてください。

答)

4-6月期の動向は、民間研究機関の調査によりますと、41社の総平均は確か約1.8兆円のマイナスで出していたと記憶しているのですが、我々もそういったことを予想して5.5兆円の補正予算を組み、税制対応で約1兆円等々をやらせていただいた結果もあったのだと思いますけれども、我々の予測と民間の機関の予測よりは、落ち込みは少なくて済むのではないかと期待しています。結果として4-6月期の落込みが少なければ、その分だけ7-9月期の回復も早いです。落込みが浅ければ、その分だけ回復も早いということになると思います。7-9月期、10-12月期がどうなっていくかというところが、来年に予定されている残りの2%、来年10月の消費税の引き上げを考えた時に、きちんとした対策を行っておきませんと、数字としては基本的には思ったよりマイナスが少なくて済むかなという話だと思っています。家計消費は4月の実質は4.6%のマイナスになっていますが、確か予測はマイナス3.3%だったと記憶しておりますので、それよりはマイナスが多かったということは、その分だけ駆け込みが多かったというように考えるべきなのか、それとも消費を抑えたと考えるべきなのか、少しそこのところまでは分かりません。少なくとも3月の駆け込みが、確かプラス7.2%とかあったと思いますので、それからですとかなりの部分は駆け込みにいったと予測されます。それが4月でどれぐらい取り返してきているかと言いますと、高額なものは確かに4月になって落ち込んでいますけれども、普通のものは1月からずっと変わりません、4月になって落ち込みもしませんでしたというのが現実の数字です。そういった意味では、もう少し様子を見ないと分からないところが多くあるとは思いますけれども、いわゆる極端な数字にはならなくて済みました、1997年の時のような形ではありません。消費税を3%から2%引き上げたあの時とは、少し違っているという感じです。

問)

法人税の改革についてですが、経済財政諮問会議で民間議員が法人税収の見積りを超えた分を法人税減税の原資としてという案を出されて、現在それについて、いろいろ各所で説いて回っていらっしゃいます。大臣は議事録等で拝見しますと反対の意見を述べられていますけれども、具体的にどういったところがこの案に対して反対なのかというところを、改めてこの場で教えていただけないでしょうか。

答)

法人税を考えた時には、法人税実効税率を仮に35%から20%台に下げる、5~6%下げるということになりますと、それはそれなりの財源が必要になります。その財源は、現実問題として法人税を今払っておられる企業が、全法人のうち約30%しかないと言われていますので、残りの約70%の企業は応益負担を全然負っておられないという形になります。そういった意味では、少なくとも払っておられない企業から、それなりの応益負担をいただくというのが1つの考え方です。外形標準課税にするとかいろいろな案が出ていますけれども、少なくとも来年10月にさらに消費税を上げると言っている時に、法人税は下げるという話をしておられるわけでしょう。企業側の理屈としては、分からないことはないと思います。しかし、負担しておられる企業は約3割で、負担しておられない企業が約7割、下げたところで今まで払っておられない企業は何のメリットもないわけです、今まで払っていないわけですから。そうしますと、今まで払っていた企業の税金が下がる、それは税収入が下がるということですから、我々としては2020年度までのプライマリーバランスを考えましたら、法人税以外でそういったもののカバーをするものと言いますと、所得税とか消費税とか、ほかにもいろいろ税はありますから、そういったもので法人税の落ち込んだ分をカバーしますと、法人税収の落ち込みを個人からの消費税でカバーするといった形は、政治的に見まして、世間として納得してもらえる案でしょうか。いろいろな話があるのだと思いますけれども、少なくとも一度下げたら、それはその時だけの話ではありません。これはずっと継続していく話ですので、継続した減税ということになるのであれば、それを補うためには恒久的にそれを補う財源が要るという話です。上振れした分をという話は、法人税収は毎年上がったり下がったりしますから、下がった時には上げても良いのですねという話にもなりかねません。そういった意味では、基本的にはこの種の話は、代替財源がきっちりしませんとなかなか話は難しいと、私はそう思います。

問)

政府全体の話で見ますと、法人に対しての復興特別法人税も廃止になりましたし、法人税減税というところで議論もなっていますが、6月1日から地方税などで、所管ではないかもしれないのですけれども、復興特別税の関係で個人住民税が引き上げられます。どうしても法人に寄っているのかなというふうに、個人の負担は増えますけれども、法人には優しくというふうに見えてしまうのかなとも思ってしまうのですが、大臣はその点はどのようにお考えでしょうか。

答)

法人が下がった、個人は上がった、消費税も含めてそういったものも上がった、何で法人は安くなるのというのが、一般的な感情として当然予測されますから、そういったものを考えてこの種の話は考えませんと。法人実効税率が国際的に見て高いとか低いとかという話を皆されますけれども、それが日本に出てくるに当たって、最も日本に投資しない理由ですかと言いますと、法人税が高いとかという順番はそんなに高位に位置するのではないでしょう。ほかにもっと、規制の緩和ですとかいろいろな話がありましたので、そういった意味では法人税減税の話というのは、よく聞かされている話や、いろいろな方が言われる話と、私共がいろいろなところから聞かされる話とは少々ずれがあるかなという感じがします。

問)

一昨日に自賠責の制度に関する懇談会があったのですけれども、その中で2つの団体が一般会計に繰り入れている6,000億円について返済を求めています。既に今年度の勘定の中でも運用益では賄い切れずに、基金を切り崩すような形になっています。一刻も早く返済を求めているわけですけれども、その声は大臣にも伝わっておりますでしょうか。

答)

伝わっています。一昨日、御意見が出たと。5月28日に出たので、引き続き国土交通省と協議をしていかなければいけないのだと思っていますけれども、平成6年度、7年度にさかのぼっての話なのですが、一般会計に繰り入れたのが、25年度末の時点で6,035億円がまだ繰り戻されていません。総額、今言われましたけれども、6,035億円が繰り戻されていないと。合計6,921億円は繰り戻しが行われたのですけれども、残り6,035億円については、平成15年度を最後に繰り戻しが行われていないというのが事実です。26年度の予算編成において、過去の大臣間の合意というのを踏まえて財務省と国土交通省で協議をした結果、もともとの時は馬淵国土交通大臣と野田財務大臣との間の話なのですが、26年度の予算の編成において、それまでの大臣間の文書というのがありますので、それを踏まえて財務省と国土交通省の間で検討した結果なのですけれども、26年度には繰り戻しは行わないこととしております。27年度以降の取扱いについては、引き続き国土交通省と検討していかなければいけないということなのだと思いますけれども、6,000億円というのは大きな額ですから、それをどうやって分割して戻していくかというのは、今後の検討課題だと思っています。

問)

副総理としてのお答えをしていただければと思いますけれども、昨日の日朝政府間協議について、大臣の評価をお伺いさせてください。

答)

行方不明の方々を含めて、少なくとも日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施するということを約束したと、約束は実施していただかなければいかけないわけです。少なくともこうした動きがもし仮に実行に移されるというのであれば、特別調査委員会を立ち上げてそういうことをきちんとやられるというのであったら、我々としては実際にそれは喜ばしいことなので、そういった意味では、現在、人的往来というのを規制していますから、そういったものの規制は緩和をしましょうと。現金持ち出しは10万円、送金は300万円と決まっていたでしょうか、確か。そういったものに関しましても、届けの金額に関しましても、そういった特別な規制は緩めますとか、また船舶の日本への入港禁止等々は解除しますとかということを合意しています。少なくとも数週間以内に特別調査委員会が立ち上がるという話ですから、そういったようなものに関する問題について、早期に具体的な結果が出るということを期待するのであって、御家族のことを考えれば、誠に大きな一歩になったかなという感じがします。安倍内閣としては、この問題を非常に最初から真剣に、1次内閣の時もそうでしたけれども、今回も非常に強く思っておられるので、1つの流れとしてそういった情勢が出てきたのは、これまでの努力の成果が少しは出てきつつあるのかなというのが感想です。ただ、こういうものは交渉ですから、相手も相手ですので、そんなに簡単な交渉ではありません。

(以上)

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