麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣臨時閣議後記者会見の概要

(平成27年1月14日(水)10時03分~10時31分)

【冒頭発言】

先程の閣議において平成27年度予算の概算を決定しておりますので、その概要を説明させていただきたいと存じます。平成27年度予算は、経済対策・平成26年度の補正予算、また平成27年度の税制改正と併せて経済再生と財政健全化の両立を目指す、実現するという予算です。地方の創生、子育て支援などの社会保障の充実、公共事業の事前防災・減災対策のほか、老朽化対策への重点化など日本が抱えております諸課題への対応を強力に推進するとともに、社会保障の自然増を含め歳出の徹底的な重点化・効率化を図っております。以上の結果、基礎的財政収支対象経費につきましては総額72兆8,912億円となりました。これに国債費23兆4,507億円を加えた一般会計歳出の規模は96兆3,420億円ということになります。次に歳入につきましては、租税及び印紙収入は54兆5,250億円、またその他の収入は4兆9,540億円となります。この結果、国債発行額は36兆8,630億円となっておりまして、前年度当初予算から4兆3,870億円の減額を行っております。この予算を前提にするとかねてから申し上げておりましたように基礎的財政収支赤字の対GDP比の半減目標の達成を見込むことができるようになっております。また平成27年度税制改正の大綱につきましても閣議決定をしております。平成27年度税制改正におきましては、成長志向に重点を置いた法人税改革などデフレ脱却・経済再生に向けた税制改正や地方創生に向けた税制改正、また消費税率の引き上げ時期の変更などのための税制改正等を行うこととしております。

【質疑応答】

問)

今朝決定されました予算案ですけれども、大臣として特にこだわられた点はどんな点か、それが実際にどのように反映されたかお聞かせください。

答)

これは前々から申し上げておりましたように経済再生と財政の健全化、いわゆる財政再建をいかに両立させるかということが最大の課題であったと思っております。今回の予算では昨年末でしたか、国の総合戦略等を踏まえて地方創生というものを全力で応援する、都市部はいいけれども地域ではとかいろいろ御意見がありましたので、そういった面で地方創生を全力で応援する、また社会保障につきましては子育て支援などの充実や公共事業の事前防災・減災や老朽化対策というものへの重点化によって暮らしの安心・安全を守るなど、日本のいろいろな課題に対応するということを強力に推進していくことにしております。財政健全化の方につきましては、これは国債の発行額を先程も言いましたように前年度から4兆4,000億円ぐらい減額しておりますので、平成21年度当初予算編成以来の30兆円台にしております。このように財政健全化に向けた最大限の努力を行うということで、この予算を前提とすれば前々から申し上げておりましたプライマリーバランスの赤字半減目標を見込むことができるようにしたいと思っておりましたので、そういった方向に私共としては両立できるようにしたいと思っていた予算が組めたと考えているということです。

問)

財政健全化計画についてですが、2020年度にPB黒字化の目標を達成するためにこれから夏までに具体的なプランを策定されていくと思うのですけれども、そのプラン策定に関する基本的な考え方として、確実に目標を達成するために例えば毎年何兆円改善するといった具体的な数値目標を盛り込むような形にしていくべきか、あるいはまた違ったアプローチ、表現方法があるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

答)

次の目標として、仮に2015年度にこれが達成できたとして次の5年後の2020年度にはぜひこのプライマリーバランスを黒字化したいということで我々はずっと申し上げてきているのですが、いろいろな意味で極めて難しい状況にあるということは中期財政計画でも出ているとおりです。従って、まずは徹底した歳出面の改革が必要ということで、社会保障につきましては持続可能な制度としていくためには今後とも給付と負担の両面につきまして改革を行っていかなければならないということだと思っております。また、その他の歳出についても、人口減少社会になっていきますので、それを見据えた見直しに取り組んでいく必要があると思っております。また国・地方の歳出全般について踏み込んだ議論をやらないと、国だけでやっていてもできるわけではありませんので、プライマリーバランスは国と地方と両方でやっておりますので、そういったことです。また歳入面についても、経済社会の構造の変化が急速に進んでいる、少子化等々、既存税制の部分的な手直し程度ではとてもいかないので、公平、中立、簡素の三原則の下で中長期的な視点から税制体系全般にわたる構造改革を検討していく必要があるのだろうと思っています。いずれにしても、新たな財政計画というものを夏までに検討してまいりますので、今からこれは、いろいろな問題としては大きな課題として5カ年計画を立てていかなければならないということだと思っています。

問)

復興財源のことでお尋ねをします。27年度において復興の25兆円のフレームは一応使い切るという形になるのですけれども、復興自体はまだ道半ばということだと思うのですが、新たな財源をどのようにお考えなのか、前回のような復興増税という形の可能性があるのかを含めてお尋ねします。

答)

このことに関しては今いろいろなことを考えているところです。いろいろな政府の持っている資産等々、株を含めた資産等々の売却を含めて、いろいろなものを今考えていますので、こういったようなものがどのような形でできてくるかというのはいろいろな手段を考えなければいけないということだと思いますね。

問)

地方創生について大臣のお考えを聞きたいと思います。本格実施は28年度からですけれども、今年度から地方が自由に使えるお金は多く措置された予算になっていると思います。地方自治体の責任も重くなっている予算だというふうに思います。大臣、地方に対してどういうふうに活用してほしいかというようなお考え、思いがありましたらお願いいたします。

答)

これは新聞でも書いていたような話だったと思いますけれども、中央で決めないで地方に決めさせるべきだ、規制は緩和すべきだ、大体そういう主張でしょう。そういう状況の中にあって地方でこれをやった場合は、その地方でそれをやる人の意欲、能力、アイデア等々によって格差がつきます。今、世の中、格差を是正しなさいと言っていながら、こういう方策をやれば、格差がつきやすくなるという状況を作れと言っているわけですから、これはよほど選ばれる首長さんなり、その自治体にいる人の意識なり、そういったものをきちんとやっていただかなければなりません。いよいよとなったら中央がやってくれるのだろうとか、政府がやってくれるのだろうということはありません、これは間違いなく自分達で考えなければいけないですという話をするのであって、過去の例で見れば、竹下内閣の時でしたか、全国一行政体当たり1億円ずつ交付をして、使い方に随分差がつきましたものね、あれは。同じ1億円でも。そういった意味では今回も同様にそういった差がつきやすくなる可能性がありますので、自分のところでアイデアがないというのだったら、今インターネット等々いろいろなものがありますので、同じような地形、同じような人口、同じような財政指数等々のところでうまくこれをやっているところの例は今簡単に引けるわけですから、そういったものを引かれて、かつ総務省等に相談をして、そういったところときちんと話を詰めていかないと。いい人だからといって首長を選んでいたら、いい人がいい能力があるという保証なんかありませんからね。だからそういった意味では、きちんとそういったものを選べる人をちゃんと頭に立てて、首長ができないならできる人を頭に立ててされるというぐらいのものをやっていかないと、随分差がつきかねないという感じはしますけれどもね。

問)

御発言の最後にあった税制体系の構造的な改革が必要だという御発言についてお伺いしたいと思います。2015年度の大綱では法人税改革に工程表も作り、着手することになりまして、消費税の方も軽減税率の話も含め確実に進んでいるような印象も受けますが、一方、税目で言えば所得税についてのところが残っているかと思いますけれども、確かに女性の働き方に中立的なということで配偶者控除も見直しに着手はしておりますけれども、先程の税制体系の構造改革という意味で具体的に、特に所得税について大臣の御所見なり、見通しなりがありましたらお願いします。

答)

今の段階でそういったものがアイデアとして、いろいろあるのは知っていますけれども、今の段階でそこの段階まで行っているわけではありません。今からこの話がいろいろ出てくるのだと思いますけれども、これは本当に根本的なところから手をつけていかないとなかなかできない話だと思っています。

問)

来年度の経済の見通しについてお伺いします。税収については消費増税が平年度化するだけではなくて経済成長に伴い税収も増加するというふうな見通しになっているかと思いますが、今、原油安で可処分所得の増加が期待される状況にあるのですけれども、実際に経済が拡大するには手元にお金が残るだけではなくて企業や消費者がより積極的にお金を使ってくれるようにならなければいけないと思うのですが、その点についてどのように見通されているでしょうか。

答)

これは3年目に入りますけれども、3本の矢の1本、2本は日銀でやったり、政府でやったりするところなので、その対応は結構、いろいろ御意見があったことは確かですけれども、それなりにいろいろ事は進んでいったと思いますが、3本の矢の3本目は明らかに民間が主体ですから、その民間主体のところをどうするかという話は、これは政府がいくら言ってもなかなか。給料というものが上がらないと、ベースアップがないと、今の日本の賃金というのは、ドルが上がっていますから国際的な面から見れば日本人の賃金の絶対量というのは減った形になってくるということ。いろいろな形のものがあるのだとは思いますけれども、そういったようなものを今やっているわけですけれども、一番の問題は20年間デフレーションにマインドセットされているようなところがありますので、その意識はそんな簡単に変わらないのだと思います。自民党が変わると言っても、また選挙で変わるのではないかと思っている人が多かったと思いますよ。2回選挙やったから、2回選挙やって290を2回続けて取ったというのは過去にありませんからね。少なくとも自民党結党以来こういったことは小選挙区になってからもちろんありませんし、そういったようなことになっていますので、これはこのまま今の経済政策は継続性を持っているからインフレ率2%というのは日銀と組んで本当にそっちに行くのだなと思って、かつ人件費が他の国は上がり、それからドル高円安に振れ、そして石油も等々いろいろな理由もあって、国内で物を作ろうということでいろいろな会社で国内の設備投資が始まる、それから給与もベースアップをやりますという話になってくると、当然のこととしてそれは消費に回りやすいということになります。そういうものをやると我々としては、NISAとか設備投資の即時償却とかいろいろなことを言っていますけれども、そういった所得の拡大の促進税制というものの条件を緩和していきますので、そういったものをやっていることによって効果が出てくるという気がしますし、事実、意識的にもそういった設備を、海外にあったものを日本になんていう機運は少なくとも一昨年ぐらいは全く出ていませんでしたから、そういったようなものが出てきつつあるというのは1つの効果が少しずつ出てきているのかなと思っていますので、そういった意味では期待ができると私自身はそう思っています。

問)

当初予算の社会保障関係費についてお尋ねします。大臣は聖域なく見直しと言われておりまして、介護については介護報酬を引き下げて利用者の負担が減りました。医療については国民健康保険について財政支援をされています。子育ては新制度をスタートさせることになりましたが、年金については法律に消費税10%引き上げ時にと書いてある低所得者への給付と年金支給資格の短縮、これは次の増税まで先送りになりました。この4事業のうち年金だけが置いてけぼりになった印象を私は持っています。2年後の再増税までの間にもう1回また予算がありますね。予算編成された直後にお尋ねしにくいのですけれども、今年の年末の予算編成を大臣が手がけられる意欲がおありの場合、次の増税までの1年間に年金について何らかの施策を講じられるおつもりはありますか。

答)

今の段階で考えていることはありません。

問)

先程税制の構造改革というお話がございましたけれども、今年の夏の財政の新たな目標の中では、例えば法人税ですとか所得税ですとか、もしくは消費税なりの税制の改革の方向性を示す必要があるというふうにお考えでしょうか。

答)

それは今から夏までの間に考えられる話の中の1つかもしれませんけれども、今の段階で考えているとも考えていないとも言えません。今予算が終わったばかりで、とてもそこまでの段階に行っていません。

問)

本日閣議決定された予算案のことです。これから国会に提出して成立を図るわけですけれども、恐らく提出は2月の半ば、そうするとなかなか年度内成立が微妙なタイミングだと思います。大臣はもし必要ならば暫定予算ということも考えて、できるだけそれを短くしなければならないというお話ですけれども、暫定予算を組むとしてどのぐらいの期間を念頭に置かれていますでしょうか。

答)

それは国対に聞いてください。それは国対に聞かれた方がいいと思いますよ。基本的には昔と違って、暫定予算は例えば3日間でも組まなければいけないということになったのですよ、今は。昔は1週間ぐらいなら大丈夫ではないかとか、刑務所のご飯が出せなくなるからとか、いろいろ言われた時代があったのですけれども、今はもう一律、1日でも2日でも暫定予算を組みますというルールに変わっていますから、そういった意味では今でいえば3月31日までに通るというようなことはちょっと考えにくい状況にあるなと思ってはいますけれども、これは国会対策にかかわることであり、そういったところの国会の運転をどうやっていくかというところが参議院の国対、衆議院の国対等々の話し合いのところが出てきますので、今どれくらいというのを言える段階にはありません。

問)

冒頭におっしゃいましたように年末に決定した経済対策、そして税制改正、そして今回の予算、この一連の対策を通して企業の収益改善を後押しするような施策が多く並んでいると思います。大臣は常々法人減税などを通しまして従業員の賃金アップに回すべきだとおっしゃっていますけれども、今回の一連の対策で経済界にどのようなメッセージを送ったか、あるいはアベノミクスの進展に向けて経済界に期待することを改めてお願いいたします。

答)

前にも言ったと思いますが、企業の内部留保は、去年9月公表、一昨年9月公表で比べてみると、一昨年9月公表で企業の内部留保は304兆円、それが去年9月公表では328兆円、プラス24兆円、月割り2兆円、その後それがどうなっているか、今年9月まで正確には分かりませんが、少なくとも企業というものはお金を貯金するのが目的ではありませんから、そのお金を使って何をするかといえば、投資してくれた人に配当する、働いている人の賃金を上げる、もしくはさらなる設備投資を行って企業を拡大する、生産性を上げる等々のものにそのお金は使われるのが常識なところだと思いますが、それが使われずにじっと長くこのままいた最大の理由は、私はデフレが大きな理由だと思います。デフレーションにおいてはお金の価値が上がって物の価値が下がるわけですから、そういった意味では我々としてこれを脱却するためにはインフレターゲットですということで、日本銀行と一昨年1月に話をして、日銀との間に共同声明というのを出させてもらいました。その結果インフレターゲットは2%、そのために金融を緩和します、オープンエンドでやりますというふうなことをずっと話をさせてもらって今日まで来たのですが、その結果、企業の意識も少しずつは変わってきておられるのが先程の誰かの質問にあった企業の国内への回帰とか新たな設備投資とか、いろいろな話が出始めているし、また下請に対しての買入価格を円安になった分考えなければいけないとか、いろいろな話が少しずつ地方においても聞かれるようになりつつあるのだと思います。そういったような形を我々としては、法人税でいえば、世界でも高いという話があるけれども、アメリカの方がもっと高いですからね。だから、ドイツ並みに29%を目標というので、安いにこしたことはないかもしれないが、安くなって法人が純利益を上げた場合、その純利益の使い方が一番問題なのであって、使わず貯めていて、金利のつかないお金をずっと貯めて何をするのかよく分かりませんけれども。そういったものを何に使われるか、それは経営者の見識が問われるのであり、そういった意味ではいろいろな意味で企業がそれをもっと賃金に回すか、何に回すか、いろいろな考え方があるでしょうけれども、賃金に回して人がより集まりやすくなる、1つの考え方としては、配当を上げることによって企業の資産が、持っている自己株式が上がるとか、いろいろな目的や使い方があるとは思いますけれども、これは企業経営者の見識なり、企業経営者の物の考え方というものにかかってくるのだと思います。我々として一番困るのは、貯めておかれてじっと持っておかれるということで、お金は置物でもなければ眺めるものでもありませんから、あれは使うものなのであって、ぜひそういった意味ではそこらのところがきちんと対応していただけることを期待しています。

(以上)

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