英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成27年11月13日(金)9時50分~10時18分)

【質疑応答】

問)

消費拡大をめぐる経済対策についてお尋ねします。政府は現在、高収益を上げている企業に対して賃上げや設備投資の拡大に向けた積極的な行動を繰り返し呼びかけています。それに対して経済界から政府に対して、法人税の実効税率の引き下げ等に加えて、消費喚起策も必要だというふうな意見が挙がっていると思います。先日開かれた経済財政諮問会議でも自動車や住宅の取得時にかかる税金の引き下げとか、将来の消費拡大につながるようにパートタイムの例えば主婦の方が働いて収入が増えた場合の社会保険料負担の軽減等も含めて様々な対策を求める意見が相次いでいると聞いています。現在、個人消費が伸び悩んでいる中で、大臣は喫緊の消費喚起策としてどのような施策が重要だとお考えでしょうか、お聞かせください。

答)

簡単に言えば、消費が伸び悩んでいるけれども喚起策はあるかという話ですね。個人消費は総じて伸び悩んでいるという話もありますけれども、極めて底堅い動きということも確かだと思っていますので、基本的には賃金が上昇する、賞与が上がるということにより消費が拡大することが一番の効果がある政策なのだと、私共はそう思っています。前にもよく言ったように平成26年度の企業の内部留保を見れば350兆円を超えていると思います。この2年間で約50兆円、正確には49.9兆円だと記憶しますけれども、増えています。労働分配率は、2009年度以降70%を超えていました。今それが66%ぐらいまで下がっているのかな。過去最高水準の企業収益を上げているのでしょう。設備投資はしていないのでしょう。だからそういった意味では、賃金引き上げに取り組んでもらう余裕があると思います。だったら少なくとも賃金を引き上げるのに努力するのは連合の仕事なのではないですか。

問)

公認会計士についてお伺いします。公認会計士試験、先程お隣の建物で合格発表が始まりまして、公認会計士の役割というのが東芝の不正会計問題ですとか改めて注目を集めていまして、公認会計士の役割として麻生大臣として期待されること、あるいはあるべき姿、御所感をお聞かせいただきたいと思います。

答)

前にも言ったと思いますけれども、日本では公認会計士より税理士の方が勢力が大きかった。税理士の方が公認会計士より力が大きいというところはドイツ、日本等々、敗戦国の方が多い。公認会計士の方が強いのがアメリカ、イギリス等々、戦勝国の方が多い。いわゆる第二次世界大戦の話ですよ。その結果どういうことになっているかといえば、例えば、私に対して「私は会社やるから、お金を貸して」というのと、「私は会社やるから、投資して」、私にとってお金を出すことは両方とも同じ。債権で持つか、株式で持つかの違い。お金を出すということにおいては同じ。同じでも何でその差が出るかといえば、株式を持つ場合は、それに対するリターンは配当です。だから公認会計士の方が発達する。お金を借りている場合は、金利を払っておきさえすれば別に会社は赤字でもいいので、そういった意味で税理士の方が発達した。それが今間違いなく資産が増えてきて、民間資産が1,700兆円を超えるという話になってくると、個人金融資産の部分が大きくなって、そのうち半分以上が現預金だということになってくると、そのお金を少なくとも資産として現金という資産から株という動産という名の資産に変わる、そういうようなことができるような力を持ってきたことに伴って、日本でも公認会計士というものの値打ちというなり、存在意義というものが上がってきているのだと思います。公認会計士というものの力がもう少しきちんと発揮できるというような時代になってきつつあるのだと思いますけれどもね。株主の側に立って話せる、投資家の側に立って話せるという機関として、税理士よりは公認会計士というものの存在意義が大きくなりつつあるのだと思っていますけれどもね。いいことですよ。

問)

いわゆる消費税の益税問題についてお伺いしたいのですけれども、毎日払っている身とすれば、おかしいのではないかと思うのですけれども、大臣御自身のお考えとして、あまり厳格にやり過ぎると経済の足を引っ張ってしまうので、ここは割り切って多少の益税が発生するのはしようがないというお考えなのか、それとも、そうは言っても問題ではないか、いわゆるみなし率を細分化して、益税が発生しないように工夫されるのはわかるのですけれども、今後益税の問題をどういうふうにして対処なされていくおつもりなのか、お考えをお聞かせ願えれば。

答)

益税の問題があるというのは知っています。今の段階でそれをどうするか、これは今から自民党と公明党で、まさに今税制調査会でやっておられますので、その答えを見てからですね。

問)

今、行革推進会議が秋のレビューをやっていまして、河野大臣がやっているということで関心をかなり集めているのですが、河野大臣はいろいろ事業を取り上げながら、消費税率の10%の引き上げも控えているので、しっかり予算を精査しなければいけないというような言い方をされているのですけれども、予算編成を前にしたこの時期に、このレビューの取組を大臣はどのように御覧になっていますでしょうか。

答)

最初に自民党で行政事業レビューをやり始めたのは、稲田大臣のときだと思います。秋のレビューは、一昨日から始まっているのだと思いますけれども、予算の重点化・効率化につながるようにいろいろ議論をしてもらうということを我々としては期待しています。検証結果が取りまとめられたときには、財政当局としてはそれを受け止めて予算編成に反映していきたいというのが基本です。この行政レビューというのは年に一遍、予算編成の前にこういうことをやるというのは、私は良いことだと思っていますし、民主党が残した遺産の中で数少なく良いものの1つなのではないですか。私はそう思いますけれどもね。いろいろ指摘があるというのは良いことだと思います。全く別の視点からこういう意見を聞くというのは大事なことだと思います。

問)

消費税の10%引き上げと財政再建とデフレ脱却の関係についてお尋ねします。去年11月18日に安倍総理は、最終的に消費税10%引き上げの先送りを判断されました。その判断の理由の1つはGDPが2期連続でマイナスだったこととかであります。来週16日には今年7-9月期のGDPの速報値が出て、これもマイナスになるのではないかと予測されています。大臣は去年の今頃は総理大臣の先送りの判断の直前まで10%引き上げを訴えておられたと伺っています。そこで質問ですけれども、10%引き上げを先送りしたのにもかかわらず、今回2期連続のGDPがマイナスになりそうな状況の中で、この1年間を振り返ってみるとやっぱり予定どおり今年10月に10%引き上げを実施しておけば財政再建もデフレ脱却も現実に近くなってきたとお思いなのか、あるいは、もし10%に予定どおり引き上げていたら財政再建もデフレ脱却も遠のいていたと御判断されるのか、お聞かせください。

答)

まだゼロ近くになるであろうという予測は、民間のシンクタンク40幾つの平均値で出しますから、そういったもので出てくる可能性はあるだろうなとは思っていますけれども、実質賃金の増加など雇用や所得環境の改善に支えられ、個人消費が結構堅調ですし、海外景気はアメリカが良い、中国は悪いというような中ですけれども輸出は増加してきていると思います。一方で自動車等を見ると前向きな在庫調整を今しておられますので、そういった意味では在庫寄与度がマイナスに響きますので、企業の収益が十分な割に設備投資がいま一つというようなところも含めて、こういったものについては我々の予測していたものと違いました。加えて、中国の上海の話やドイツのフォルクスワーゲンの話とか、いろいろなものがくっついたので。我々の予想していたものとは違ったものになったことは確かだと思います。一部に弱さが出ているということは、この一連のものからこれは危ないということで、去年から中国から一斉に企業が人を引き上げるなど、そういったものを見ていると、今やっていたらどうだったかという予測は迂闊には答えられないところです。もうちょっと数字を見た上でないとちょっと言えません。予想が外れたことは過去何回もありますから、数字が出た上で、確定が出ないと何とも言えません。

問)

内部留保について、昨日、自民党の若手議員の会合の集まりで内部留保課税というような話も出たようです。大臣は常々、企業は最高の収益を上げながら投資もしない、賃金も上げない、内部留保をため込んでいるというお話をされていて、かなり内部留保がたまっているわけですけれども、内部留保に対して課税をするべきだという考えについて、大臣御自身はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

答)

今言われた内部留保の二重課税については安易にやるべき話ではないということははっきりしています。それはそう思いますけれども、基本的に内部留保が何でこれだけたまっているのかと言えば、それは経営者の気持ちの問題もあるとは思いますが、92年からと多分歴史家は書くのだろうけれども、92年から始まった土地の暴落、90年から始まった株の暴落、2つかかって結果として日本の国民の資産は株で3分の1、土地でも同じく下がったというので貧乏になったのですよ、簡単なことを言えば。企業は資産がそれだけ下がったことによって、企業はその資産を担保に銀行からお金を借りていますから、その意味からいったら債務超過になったのですね。債務超過になれば銀行はお金を貸さないのですよ。貸してくれないから、結果的にはどうしたかと言えば利益を借金の返済に充てたのですね。利益はすべて借入金の返済。設備投資でもない、賃金でもない、みんな配当も全部減らして借入金の返済をすべての経営の優先順位の1番に上げた。決して間違っていないですよ、正しい行為。借金を踏み倒すよりよっぽどいい。全部返した。一方で96年ぐらいから銀行は間違いなくおかしくなってきて、ばたばた潰れて、97年には北海道拓殖銀行、証券会社で三洋証券、山一證券も潰れましたね。明けて98年になったら長銀も潰れて、日債銀も潰れてというふうな話になって、都市銀行も全部合併して、富士銀行、興銀、東海銀行の名前は今何になったのですかなんて、答えられる方が少なくなってしまったほどの話で、大阪に銀行は三和、どこにありますかなんていう話になったほどの騒ぎになったのですよ。それは間違いないと思いますね。したがって銀行がお金を貸さない、具合が悪くなったら貸し剥がすという痛い目に遭った企業側の当時の経理担当の人たちが今ちょうど重役ですよ。社長ですよ。その人達にとってみれば、絶対に二度と銀行からお金は借りない。やるなら自己資金でやるということになって、結果として内部留保がどんどんたまっていくことを促進したことは事実ですね。こういった状況というのは1930年代後半にも起きていますから。あのときもデフレ不況が終わって、ルーズベルトの2回目の選挙が終わった後からも、あれだけアメリカの景気は回復したけれども、銀行の貸し出し、いわゆるマネーサプライは増えなかった。アメリカも同じようなことが起きていますから。だからその意味では日本も同じようなことが起きているということなのだと思います。しかし、ため過ぎているというのは明らかに偏っている、正常とは言いがたいので、そろそろ経営者のマインドの変化が起きてこないとおかしいと。それを促すために税金やら何やらいろいろやっているところですけれども、まだそこまでいっていないというのが今の状況だと思います。それを今のような形でやる、内部留保でやるのか、もっと別の形でやるのかというのは、今から考えなければいけないところだとは思います。

問)

そうすると、経営者に自助努力を促して、投資または労働分配率を上げるような取組を促したとしても、もし取り組まない場合は内部留保課税も選択肢として考えるべきだというお考えですか。

答)

今、まずは経営者の方々に、少なくとも労働組合は政府に頼まないで、賃上げの交渉ぐらい自分達でやってくださいと。政府がGDPの伸びを実質で2%、名目で3%だと言っているときに、組合の来年の春闘の賃上げが2%だとおかしいでしょう。3%なら、こっちは4%上げてもらって当たり前ではないかと言うのが労働組合だと思うけれどもね。そういう意味からいくと、もう少しきちんとした対応を民間同士で、政府が介入するとか政治家がどうのこうのということを言う前に、きちんとそういったことをなさるべきではないのですか。法人税を下げた分だけまた内部留保や現預金がたまるだけなら、何のために法人税を下げているか、意味がないということを申し上げているということです。

問)

先日の諮問会議で民間議員から130万円の壁を下げるために、社会保険料の負担軽減措置が必要ではないかという提案がありましたが、それについて麻生大臣はどうお考えでしょうか。

答)

これはそのときも答えたと思ったのですが、この前のときは103万円の壁の話で、そのときに私が103万円の壁もあるけれども、130万円の壁もあるのではないかという話をしました。103万円の壁が今どうなったかといえば、しっかりと段階的にやる仕組になったからみんな言わなくなりました。130万円の壁の課題というのは、簡単に言えば、高所得のサラリーマンの配偶者の保険料というものを国民の税金で穴埋めするという話でしょう。そんな話が世間で通りますか。労働者が負担しないということなのであれば、その分だけ企業がその保険料の負担割合を引き上げるとかというやり方もあるだろうし、保険の適用を拡大するというのだったら、保険料というものの設定を、壁をなだらかにするという設定にするとか、もう少し考えたらどうですか。時間が限られているからああいう発言になって、報道もさらにそれを短くしようとするから話が偏ったものに聞こえますけれども、103万円の壁の話だって、今そういうことを言う人は減ってきていると思いますよ。なだらかにしたから。その例を知っているのだったら、それと同じようにしたらどうですかという話が何で出てこないのかな。また、企業の側がその分だけ負担するという話もパーセントで言えば少ないはずですから、そういったものの方が形としてはいいと思いますし、ああいったもので壁ができるので、11月、12月になるとパートをやめるという話が出てくるわけです。一番忙しい11月、12月になって人手が足りないとかという話があるのは、その話に重なっていますから、そういうのでやるのだったらもうちょっとという感じがしますね。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る