麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(平成27年12月1日(火)11時22分~11時47分)

【質疑応答】

問)

軽減税率について、安定財源をめぐる話し合いがまだ与党間で続いておりますけれども、総合合算制度見送りで安定財源は4,000億円ほど捻出できるというお話になっておりますが、これをさらに上積みできる余地というのはあるのでしょうか。

答)

総合合算制度の話から4,000億円というのが1つの財源としてあるのは事実です。問題は軽減税率をやるときには幾つかの条件がついていたでしょう。自由民主党と公明党の合意文書を覚えていますか。消費税率10%時に軽減税率を導入する。そして29年4月スタート。ただし区分経理等いろいろなものをきちんと納得できるような形にする。その話でいくと、4,000億円、では仮にあと1,000億円、2,000億円、3,000億円上積みしたとします。その3,000億円を使って何をするかというと、多分、加工食品と言いますよね。加工食品というと、酒類を除く飲み物まで入れると1兆数千億円になります。飲み物だけ除くとか、いろいろな切り方をやるのだろうけれども、どこで区分するかというのが一番もめるわけです。これはイギリスのときもそうだったし、世界中同じで軽減税率を採用したときにはそこがもめたわけです。日本でもやるようになったときには、再来年4月からやろうと思ったら、加工食品の場合、ご飯はいいけれども、おにぎりは駄目とかというような話がでるはずでしょう。それは混乱を招くことははっきりしていますね。したがって、どこで切るかといえば、食品表示法でいえば生鮮食品で切ると言ったらほぼ4,000億円弱でそれがおさまるというのが1つの方法です。また、加工食品までだというのだったら、どこで区分するかでごちゃごちゃするということを考えると再来年4月には間に合わない。したがって区分がきちんとできた上で、かつそれを買う消費者以前に企業間で仕分けをしなくてはいけない。BtoCの話の前にBtoBの話があるから、そのところもきちんとやっていかなければならないということになれば、どこで切るかというと、4,000億円の次は1兆3,000億円ぐらいまで持っていかないと、そこの間のがちゃがちゃの部分をどう整理するか非常に混乱を来すことになるから、4,000億円の次にあと少し積み増したらどうかという、政治がやる足して2で割るような話で解決できる種類の話ではないということなのだと思います。よく分かっておられる方も与党の中におられますから、そういった方々でさらによく議論を詰めていただくということになるのだと思います。

問)

安定財源として税収の上振れを充ててはどうかという御意見もあるようなのですが、大臣はどう思いますか。

答)

税ということを分かっておられない方の御意見なのだと思いますけれども、来年は上振れします、再来年はどうですかと言ったら、極めてクエスチョンマークがつくと思いますね。だけど、上振れを当てにするということはそういうことでしょう。傍ら消費税の方は毎年1兆数千億円減るのですよ。毎年1兆数千億の上振れが期待できるという保証があれば良いですよ。それがなければ1年限りとなります。復興税のときの1年前倒しをやったことがありますが、あれは1年限りでしたから。これは毎年ですよ。毎年1兆数千億円といったら、毎年新幹線を造るような話ですよ。大きなお金なんです。私はそういったものが毎年出ていくというところが一番大きな問題点だと思っていますから、財源がない形でそれをやるということはとてもできません。

問)

国際金融の話なのですけれども、現地時間の昨日、国際通貨基金が中国人民元のSDRの構成通貨入りを正式に決定しました。まずこれについて大臣の受け止めをお願いします。

答)

人民元がSDRに入るということに関しては、IMFも既存の基準がありますから、その基準に照らしてIMFの理事会が判断されたもので、どうこう言う筋の話ではありません。私共としてはそういった基準通貨に入ってこられるということを歓迎するということは前から言っていますので、それに対しては特に言うことはないです。人民元の場合もこれまでSDR、特別引出権の構成通貨に入るということを進めてきておられましたので、今後、金融とか資本市場改革ということをさらにやっていくというお話ですから、それが実際に努力されることを期待するというところです。

問)

SDRの構成比率をめぐって、人民元が第3位で10.92%、日本円が8.33%ということで、人民元の方が日本円よりも構成比率が高いのですけれども、これについて大臣はどのようにお考えかということと、人民元が国際通貨になることによって円の国際通貨としての地位に影響を及ぼすのかどうか、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。

答)

御存知のように、SDRは通貨提供の請求権、通貨提供請求権ですからね。これは加盟国の間で、自由に利用ができることが可能な通貨と交換することを求める権利ですよ。ということは、SDRは民間取引に利用されるものではないんですよ。したがって、人民元のSDR構成通貨入りということによって、これは象徴的な意味合いを持つのだと思いますけれども、これによって民間取引が大宗を占めている世界の経済とか資本取引に対して直接の影響はないと思います。

問)

人民元についてですけれども、大臣をはじめ財務省は中国政府に対して人民元の決済銀行を日本に設置するよう求めていますが、まだ実現していません。これの実現には日中の外交関係も少なからず影響しているのではないかと推測しますけれども、今後、近い未来に決済銀行が日本に設置される見込みはあるのでしょうか。あるいは、今のままですと日本円や日本の貿易や国際金融にどんな影響が出ているのでしょうか。

答)

このSDR構成通貨入りが決まったからといって直接にそれが今すぐ、先程申し上げた答えと重複しますけれども、すぐ出てくるということはないということです。

問)

地元の福岡で話題になっている人事のことでお伺いしたいのですけれども、福岡財務支局長に森山預金保険機構検査部長が当たるという話が出ているのですけれども、3カ月間空白になっていまして、今回のこの人事の狙いについて大臣から、もし御所見があれば教えてください。

答)

森山には、福岡財務支局長の発令を今日行ったのですけれども。前任者の上羅が9月1日付で本省に異動になったものですから。その間、3カ月間支局長を置かなかったのですけれども、我々としてはしかるべきときというのがちょっとなかったこともあり、支局長業務を支障なくきちんとできるような体制を整えていましたので、私共としては地方の意見交換等で直接地方から不満が出てきたというようなことも聞きませんし、そういった意味では特に問題があったと考えているわけではありません。いずれにしても新支局長が適切に業務を遂行していってくれるものだと思っています。

問)

今朝、法人企業統計が発表になりました。その中で設備投資の伸びについていろいろ大臣も、もう少し企業は投資すべきだという御意見があったのですが、リーマンショック後の最高の伸びといいますか、かなり市場の予測を大幅に超えた伸びになりました。この動きについてどのように見ていらっしゃるか、御所見をお願いします。

答)

機械受注が伸びると半年後に設備投資がほぼ同じ角度で上がってくるというのは御存知のとおりなのだと思いますが、今回の場合も前年比及び前期比で両方とも増加している、前期比だけではなくて前年同期比でも伸びているというところが大事なところなのだと思います。企業収益が好調で、その好調な部分が賃金とか配当とか設備投資にはね返らず、内部留保だけが24兆円増え、26兆円増え、この2年間で49兆9,000億円増えている、そういったようなものが少なくとも設備投資に回っていくということにならないと、いわゆる国内総生産が伸びてきませんので、また、給料が上がらないと消費も増えませんから、消費が増えないということは国内総生産が伸びないということでありますので、そういった意味では今そういった方向でずっとこの1年半少々言い続けているのですけれども、少しずつその方向になってきて、給与が2年連続で少なくともベースアップという形で上がってきたというのは過去何十年ぶりかで、ベアなんていう言葉を聞いてもそれがベースアップにつながることを知っている若い社員はいませんから、ベースアップがずっとなかったから、そういったものになってきているのだとは思っていますので、設備投資もその一環で形として出てきているのですが、少なくともこの20年ぐらい設備投資に対する額は横ばいですから、止まっていますから、少なくとも企業が生産性を上げようということを考えるのだったら、設備投資をして新しい機械を増やすことによって生産性を向上させる、コストを下げるというようなことを頭に入れて、中国から撤退した部分を日本にとか、TPPができたので輸出を日本からやるとか、中国からやらずにTPPに入ったベトナムからやるとか、そういったようなことをみんないろいろ考えられているのはその一環なのだと、私はそう思っています。いずれにしても良い方向に動き出しつつあるのかなと思っています。

問)

人民元のSDR入りの話なのですけれども、民間にはあまり影響はないというお話だったのですが、財務省として人民元の適格外国機関投資家枠の開設を求めていらっしゃると思うのですけれども、こちらについての見通しはどのように考えていらっしゃいますか。

答)

これはもうちょっと見ないとわからないですね。今すぐ、即どういう反応が出てくるかというのは、今の段階で言えるところにはありません。もうちょっと時間をもらって、動きを見てからでないと迂闊なことは言えませんというところですかね。

問)

SDRの関連なのですけれども、今回SDRに人民元が入ったことは国際取引の中で人民元が使われることが増えたということも背景にあるかと思うのですけれども、一方、日本の円について考えますと、かつて言われていた円の国際化というような議論が最近ではあまりないようにも思えます。大臣は円の国際化ということについてどのようにお考えでしょうか。

答)

円の国際化ということにどれぐらい銀行が興味あるか。ほとんどないでしょう。それが実態です。ないなら動くわけないでしょう。どうして動かないのか。今でも十分動いているんですよ、金利は安いし、それはすさまじい勢いで日本にお金を借りに来ている海外からの企業が多いということだと思いますよ。日本のメガバンクにはお金を借りに来ている人が多い。また、地方銀行に対してもお金を持っているから借りに来る人は多い。そのお金を借りに来る人の内容のレベルを調査、審査する力が地銀には少ないから、それをメガに頼む。メガとジョイントでやるといったようなことで銀行というのは結構なお金を海外に貸している。ということはドルを買って円を売るということだから、それは間違いなくドルは上がって円は下がる。今日、122~123円ぐらいでしょう。だからそういったものを調べてみると、やはり円をそんなにしゃにむにしなければならないというほど困っていない。別に円というのは強い通貨だから。だから、私から見ると、さらにこんなに強いんですなんていう必要を認めないのですよね。だから銀行は、そんなに一生懸命、円の国際化というのに興味がなくなってきている、ないというのは別に悪いことではないけれども、引き続き大きな通貨であることは間違いありませんから、そういったもので日本の貿易量がTPPや何かで増えてくれば、ドルも増えるだろうし、円も増えますよ、それは必然的に。そうだと思いますけれどもね。

問)

またSDRの話で恐縮なのですが、中国の金融制度改革の努力を期待すると先程おっしゃいましたけれども、急激に資本市場の改革とかが進むと、それはそれでよくない影響もあるのではないかという声も、急に資本市場をオープンにしてしまったりすることを急激に進めると、大臣が前におっしゃったキャピタルゲインが起こるとか、あまり急激なラジカルな改革というのも好ましくないのではないかなと思うのですが。

答)

何のラジカルな改革ですか。SDRに入ることですか。

問)

SDRに入ることそのものではないのですが、ラガルド専務理事が声明でも中国の金融市場の改革とかそういったことの一里塚ではあると。SDR入り自体が何かを変えるわけではないですけれども、中国の金融市場改革とかそういったものの全体の工程の中の一里塚であるというようなことはおっしゃられていて、大臣も先程中国の努力を期待するというようなことをおっしゃられたので、中国のこれからの金融市場改革について、ロードマップとかが示されているわけではないとは思うのですが、具体的にどういうような、例えばスケジュールとか、どういうような手法で金融市場改革を中国が進めるのかということに大臣としてどう期待されるのか、あるいは要望したいのかということをお尋ねしたいのですが。

答)

SDR、Special Drawing Rightsというものを使うためにルールがあるので、中期的には健全な発展に向けてということになるに決まっているので、中国の現状において言えば、過剰設備があると言われてみたり、過剰信用というものが行き過ぎているといったような話がいっぱいありますので、そういった意味で構造改革を図ることが重要、これは誰が見てもそうです。何もIMFが言っているだけではない。世界中みんなそう思って見ているのだから。だから上海がドンと下がってみたり、何かしているわけでしょう。みんな同じことを考えているわけで、しっかりやってもらえばいいのですよ。

(以上)

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