鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(令和3年10月5日(火)15:47~16:14)

【冒頭発言】

初めに私の方からご挨拶させていただきます。このたび財務大臣・金融担当大臣を、そしてデフレ脱却担当大臣を務めることになりました鈴木俊一です。どうぞよろしくお願いいたします。大臣就任に当たりまして総理から財政金融全般にわたって指示を受けましたので、その主なものを簡潔に申し上げたいと思います。1つはデフレからの脱却に向けて大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3原則で取り組むこと、内外の状況や経済の動向等を注意深く見極め、臨機応変かつ時機を逸することなく対応し、経済財政運営に万全を期すること、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとし、新しい資本主義を実現すること、骨太方針に従い経済・財政一体改革を進め、中長期的に持続可能な財政構造を目指すこと、「経済再生なくして財政健全化なし」の考えのもと、新型コロナからの経済の正常化を図りつつ財政健全化を目指すこと、現下のゼロ金利環境を最大限に活かし財政投融資を積極的に活用すること、新型コロナによる厳しい経済事情に対して政策を総動員して万全の対応を行うこと、企業が長期的な目線に立ち、従業員、取引先にも配慮した経営ができるよう環境整備を進めること、労働分配率の向上に向けて賃上げに積極的な企業への追加的な税制支援を検討すること、国際金融都市を確立すべく受け入れ環境整備の加速やコーポレート・ガバナンス改革、デジタル化などを進めること、新型コロナにより厳しい経済状況にある中小事業者等に資金繰り等の支援を迅速に行うことなどについて指示を受けました。総理からの指示を踏まえ、新型コロナへの対応と経済成長の実現に取り組みながら、次世代のために重点分野への投資や歳出・歳入両面の改革を進め、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。また、金融面でも金融仲介機能を発揮し、力強く経済を支えていくほか、国内外の資金の好循環や多様な金融サービスの創出に取り組んでまいります。

【質疑応答】

問)

今後の財務金融行政の運営方針に関して2点伺います。まず現在の日本の財政状況、それから金融情勢について、どのように認識されているのかという現状認識、またそれに対してどういった対応を現時点でお考えになっているのか、お聞かせください。2点目なんですが、岸田総理は追加経済対策を策定されるという方針を示されています。それに関係する補正予算と来年度の予算案の編成の方針について現時点での考えをお聞かせください。

答)

まず現下の財政状況に対するご質問でしたけれども、日本の財政、これは足元のコロナ対応により一層厳しさが増しております。また、新型コロナ以前から少子高齢化の進行を背景に社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的な課題があると思っております。財政に対する市場の信認を確保して、社会保障の持続的可能性や危機発生時の対応余力を確保するためにも、財政健全化の道筋を確かなものにする必要があると、そのように考えているところでございます。金融情勢の現状につきましては、コロナの影響拡大によりまして多くの事業者が売り上げ減少など厳しい経営環境に直面しております。こうした事業者を資金繰り支援等により支えて、力強い経済回復を後押ししていくこと、これが重要であると考えております。また、国内外の資金の好循環の実現や多様な金融サービスの創出を可能とする金融システムの構築などに取り組み、企業・経済の持続的な成長と安定的な資産形成等に資する金融行政を推進してまいりたいと思っております。
経済対策、令和4年度の予算についてご質問もございました。経済対策につきましては昨日の記者会見で総理から策定する方針が示されたと、そういうふうに承知をいたしております。具体的な検討・指示はこれからになると思われますが、その内容を踏まえまして与党と連携しながら、その取りまとめに向けて議論をしていくことになります。また、令和4年度予算編成につきましては新型コロナ対応に万全を期すとともに、総理が掲げられた成長と分配、この好循環を実現していくという観点からグリーンやデジタルといった分野に予算を大胆に重点化していくなど、歳出改革の取り組みを継続しつつも質の高い予算をつくり上げてまいりたいと、そのように思っております。

問)

森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざんの再調査について伺います。麻生前大臣は読者の関心があるのかねなどと発言されていましたけれども、鈴木大臣はこの問題についてどう認識されていますか。国民の関心はあるとお考えでしょうか。

答)

森友学園の案件について、これまでも国会などにおきまして様々なお尋ねがあり、説明を行ってきたところであると思いまして、そういう意味におきましては今後もしっかりと説明をしてまいりたいと思ってございます。再調査のことについて、よく質問があると認識をしておりますが、この件につきましては第三者によります調査という意味では会計検査院の検査、さらには検察当局の捜査が進められたところでありまして、結果として検察当局の捜査においては不起訴処分となっていると、そういうふうに認識をしております。また、財務省といたしましても、文書改ざん等の問題につきまして説明責任を果たすために徹底した調査を進めたところでございます。平成30年、2018年6月に調査結果を取りまとめまして、関与した職員に対し厳正な処分を行ったこと、これにつきましては麻生大臣からも度重なるご説明をしたところであると承知をいたしております。財務省としてはできる限りの調査を尽くした結果をお示ししたものでありまして、再調査を行うということ、それを私は考えていないところです。

問)

国民の関心はあるかどうかというところについては。

答)

国民の関心があるかどうか、それはちょっとよくわかりませんが、ご質問があるんですから、そういう関心をお持ちの方がおいでになるということはもちろんそう思っています。

問)

岸田総理は先程の経済対策につきまして、数十兆円規模という表現で経済対策の策定について取り組んでおられるかと思うのですが、この数十兆円規模という表現につきまして、財源について大臣はどのようにお考えでしょうか。

答)

まず財源の前に、そもそも総理の数十兆円と言われたということですけれども、総理のご発言につきましてはもちろん承知をしておりますけれども、そういうことを念頭にこれから各省としっかり議論して、必要な施策を検討していくということになろうかと、そういうふうに思います。補正の規模ということにつきましては、経済対策や補正予算の規模は各省と中身をしっかり議論した上で必要な施策を積み上げて、それによって決まってくるものであると、そういうふうに思っておりますので、各省からの中身というものはまだ出ていないわけでありますので、今の時点でお答えすることはちょっとできないと、こういうふうに思っています。

問)

金融所得課税について伺います。現状の所得に占める金融所得の割合が高い富裕層ほど税率が低くなるということについて現状どのような問題意識をお持ちなのか、また一方で、導入すればマーケットの投資意欲を冷やしかねないという警戒感もありますけれども、これについてどのようにお考えなのか、教えてください。

答)

このことにつきましては与党の税調の大綱におきましても、検討を続けるということが書かれておりますので、今後の税制改正プロセスの中で議論が行われると、そういうふうに思ってございます。ご指摘のとおり1億円の壁を打破するということについて、高額所得者が守られ過ぎているんじゃないかというご意見と、それから今申し上げたような金融業界の方からは、やはりそれによって投資が抑制されるのではないかという両面のご意見があるということも十分承知をしておりますが、それを踏まえた上で検討事項とされております与党の税制調査会でございますので、今後12月に向けても税制改正の議論が行われると思いますので、それをしっかりと注視していきたいと思います。

問)

先程の質問にも関連するんですが、税制全般についてお伺いしたいと思います。新型コロナ禍で財政支出も拡大し、岸田総理が掲げる格差是正のためにも今後の財源の確保というのが必要とされると思いますが、鈴木大臣としては税収確保のための消費増税の必要性ですとか、法人税ですとか、先程ありました金融所得課税も含めた所得税など、現在の税制で再検討が必要なところはあるとお考えでしょうか。もしあるとすれば、どのようなところに具体的に課題があるとお考えか、教えてください。

答)

税制につきまして、歳入という観点から消費税の引き上げということが、その可能性についてご議論があるわけでありますけれども、今現在、将来の消費税率の在り方につきまして具体的な検討というのはしていないわけでございます。いろいろと、例えば何年間は増税を、消費税率を上げなくていいのではないかとかどうだとかという話がありますが、これは将来どういうような財政需要が出てくるかわかりません。ということにおいて、今現在は少なくとも消費税率の在り方について検討はしていないということでご理解をいただきたいと思います。

問)

岸田総理から大臣は新しい日本型資本主義や賃上げについての税制について検討するように指示を受けたということですが、その具体的な目標として岸田総理が総裁選で令和版所得倍増計画というのを掲げられていましたが、大臣としてこれについて何か指示を受けたり、もしくはお話がありましたでしょうか。

答)

具体的な制度の中身にわたるような、そういうようなものはまだ明確には受けておりません。ただ、総理の今までの発言を聞いておりまして感じますことは、企業が内部留保も今かつてないほどたまっているわけですけれども、そうしたものが、企業が長期的な目線に立って、株主のみならず従業員、それから取引先にも配慮した経営を取り組んでいただくということが1つ重要なことではないのかなと、そういうふうに考えます。それに関連いたしましては、具体的な税制、例えば賃上げに積極的な企業への何か税制支援が必要なのかなと、これはわかりませんけれども、そういうようなことが議論になってきた場合は今後与党の税調などでの議論も踏まえて対応していくということで、今そういう話が出たばかりでございますので、具体的にどういう制度設計でいくのかということについては、これからの検討に委ねられると、こういうふうに理解しています。

問)

2点ほど伺わせてください。1つは岸田総理が言及されている現金給付についてです。岸田総理は経済対策の中身としてコロナ禍で困難にあえいでいる事業者であるとか、あるいは困窮している非正規労働者や女性など、そういった困っている事業者や企業に給付金や現金を届けるというふうに言っております。一方で与党の公明党は、個人に対しては18歳まで一律の給付をするべきだというふうに主張していて、給付の在り方に複数の案が与党から出されているわけですが、これについて大臣がどのようにお考えで、今後どうしていくべきとお考えか、教えてください。もう1点は、今回鈴木さんが財務大臣になられたわけなんですが、財務大臣に次なってほしいという打診を受けたときに、率直にどのような思いを持たれたのかという感想といいますか、そのときのお気持ちを教えてください。

答)

生活困窮者に対する給付金でありますけれども、例えば現在も生活困窮世帯に対しまして新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金ということで、最大30万円を支給をしているところでありまして、まずはこうした支援を着実にお届けするということなんだと思います。総理がご発言になったことにつきましても、もう少し総理とも詰めてみませんと、どういうところを対象にするのか、あるいはどういうような水準で行いたいのか、そういうことについてはまだ全く考えが、方針と申しますか、考えが示された段階で、中身についてはまだ詰めたところがないと、そういうふうに思っているところでございます。ですから、これからの議論ということだと思います。
それから、公明党がご主張されておられます子育て世帯に対しての一律支給というご主張でありますが、低所得の子育て世帯に対しましてはこれまでも児童1人当たり5万円の給付金などの支援を既に行っておりまして、こうした支援をしっかりとお届けするということが重要なことなんだと、こういうふうに思います。新型コロナの影響を受ける子育て世帯への支援の在り方につきましては、与党のお考えも伺いながら、これもまさにこれから、今後検討する事項であると、そのように思っております。
それから、私が財務大臣を打診をされたときの気持ちでありますが、大変荷の重い重責を担わなければならないと、率直に申し上げてそういう思いをいたしました。かつて閣僚になるときは、半分うれしい気持ちと半分大変だなという気持ちと両方ありましたけれども、今回は率直に言いまして、うれしいと思う気持ちよりも大変だと思う気持ちの方が倍近く大きかったような気がします。

問)

来週G20の会議があるんですけれども、国会の日程もある中で大臣としては海外に出張される考えはありますでしょうか。

答)

出席の可否なんですが、まだ国会日程が具体的に詰まっておりませんので、何しろ閣僚の出張というのは国会の了解がなければできないわけでありますので、国会日程というものも見ながら適切に判断しなくちゃいけないことだなと、そういうふうに思っております。もう少したつと国会日程もだんだん明らかになってくるのかなと思っています。

問)

本日、麻生前大臣から引き継ぎを受けられたところだと思いますけれども、前大臣、8年9カ月の長きにわたる在任期間でございました。前大臣から特にここは気をつけて見てほしいと重点的に引き継がれた部分、また長きにわたった麻生カラーの財務省から鈴木大臣がこうしたいと、自分の色をここで出していきたいと思われる点、あるいは前大臣のときから変えていきたいと思われる部分、そういったところがありましたらお聞かせください。

答)

麻生前大臣から特に個別具体的にこういうことをしっかり引き継いでほしいという話はございませんでしたが、今日ではないときの話といたしまして、例えば麻生大臣が長い間大変に力を入れてまいりました国際課税の原則の見直しなどについて、今いよいよ最終段階に来ておるわけでありますので、そうしたものの最終合意に向ける大変な期待というものは、それは私、十分知っているわけでありまして、ぜひ100年ぶりの見直しでありますので、実現できればなと私も思っているところでございます。
それから、麻生カラーと鈴木カラーの違いということですが、麻生カラーと鈴木カラーは違い過ぎちゃって、普通にやっていれば麻生カラーとはすごく違うんだと思いまして、普通にやっていることで違いが十分出るのではないかと、こう思います。

問)

その違いというのは、どのあたりが特に。

答)

何て言ったらいいんでしょうか、私は麻生流に仕事をするということは、所詮それは無理ですと思っています。地味でも堅実に仕事をする、職責をこなしていくというのが私の流儀であると、こういうふうに思っておりますので、そういう姿勢をもってして、これからカラーの違いというのがはっきり出てくるんじゃないでしょうかと思います。

問)

日銀の2%の物価目標について伺います。麻生前財務大臣が今週、2%の日銀の物価目標について引き下げてはどうかと以前黒田総裁に打診されたことがあったと発言されました。鈴木大臣はこの2%の物価目標についてはどのようにお考えでしょうか。今後引き下げは検討されるべきだというふうにお考えでしょうか。

答)

金融政策につきましては、ご承知のとおり日本銀行が自主的におやりになることであるわけでございまして、具体的な手法については日銀に委ねられるべきものであると、そういうふうに思っております。その上で申し上げますと、日銀は2%の物価安定目標を実現するために現在持続的な金融緩和を継続していく、そして物価、経済、金融情勢の変化に対して躊躇なく機動的かつ効果的に対応していくことが重要であると日銀は説明をしていると、こういうふうに承知をしているところでございます。政府といたしましては今後ともこうした日銀が企業金融の円滑確保や金融市場の安定維持等に万全を期すということとともに、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定の目標の実現に向けて努力されること、そのことを期待をすると、そういう立場でございまして、あくまでこうした金融政策の具体的なことにつきましては日銀でご判断されるべきことと、そういう立場でございます。

(以上)

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