鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、黒田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和4年4月20日(水曜)22時33分~23時02分)

【冒頭発言】

大臣)

本日G20とG7の財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されました。議題は幾つかございましたけれども、G20の世界経済セッションでは、ウクライナのマルチェンコ財務大臣の対面での参加を得て、ロシアのウクライナ侵略による世界経済への影響等について議論を行いました。私からはマルチェンコ大臣の参加を歓迎するとともに、ウクライナとの連帯を表明いたしました。ロシアの侵略については、国際秩序の根幹を揺るがす行為で明白な国際法違反であること、国際協力に当たって平和の維持は不可欠であり、これに反するロシアの行為は断じて容認できず、最も強い言葉で非難することを指摘をいたしました。また、ロシアの侵略は、エネルギー・食料価格の高騰、サプライチェーンの混乱、金融資本市場の不安定化、難民の増加など世界経済が直面する多くの困難の元凶であると、このことを指摘いたしました。
その上で、こうした困難を乗り越えるため、多国間協調が一層重要であるとして、以下の3点を申し上げたところでございます。第1に一刻も早く平和を取り戻すことが世界経済にとって最も重要であり、ロシアのウクライナからの一刻も早い撤退を求めること、そのためにも制裁措置によって戦争のコストを高めることも含め、国際社会が一致団結してロシアに圧力をかける必要があること、第2にウクライナや周辺国に対して、国際金融機関と連携して迅速に支援を提供する必要があること、日本はウクライナに対する世銀と協調して行う融資を1億ドルから3億ドルに増額すること、第3にエネルギー・食料価格の高騰は、脆弱な人々に最も大きな影響を与えており、各国の経済状況や財政余力も踏まえて迅速に対応するとともに脆弱国への支援を強化する必要があること、私と同様にG7各国を含む多くの国がロシアの侵略行為を厳しく非難し、ロシアに圧力をかけるとともに、侵略行為によって世界経済が直面する困難に対し、協調して対応する必要があること、このことを指摘いたしました。
そして、G20におけるその他の議題でありますが、G20では、国際保健、国際金融、脆弱国支援、サステナブルファイナンス等についても議論が行われました。このうち国際保健につきましては、既存の国際保健システムにおける資金ギャップに対処するため、国内資金や既存機関の取組を補完する新たな資金メカニズムの設立を進めることについて多くの国が同意いたしました。具体的には、世界銀行に新たな基金を設立する案が多くの支持を集めており、今後その具体化の作業が進むことを期待しております。
SDRチャネリングにつきましては、多くの国がIMFにおいてRST、強靱性・持続可能性トラストの新設が合意されたことを歓迎しました。私からは、日本としてSDR新規配分額の20%のチャネリングをプレッジするとともに、このうちRSTへの最初の貢献として10億ドル相当のSDRと、それに見合う準備金を拠出することを表明いたしました。
債務問題につきましては、多くの国が「共通枠組」の早急な進展や予見可能性の向上が必要であること等を指摘しました。
こうした議論の成果として、ロシアへの非難、国際保健での資金メカニズムの進展、「共通枠組」での進展等が議長総括発言でも盛り込まれました。しかしながら課題は山積しておりまして、一刻も早く平和を取り戻して、G20で経済協力の議論に集中できる環境を実現する必要があると考えております。
次に、G7についてお話をさせていただきます。G7でありますが、ウクライナのマルチェンコ財務大臣の参加を得まして、ウクライナ支援やロシアへの制裁等の議論を行いました。詳細はお手元にお配りをいたしております資料を御覧いただければと思いますが、G20等へのロシアの参加は遺憾であること、これは1ページの中段に書かれていると思います。それからウクライナやその周辺国への支援について、緊密に協調し続けること、1ページの下段であります。プーチン大統領らが戦争の社会的・経済的結果に対する全ての責任を負っていること、2ページ下段であります、といった内容を含むG7声明を公表いたしました。私からは、日本としても強力な制裁措置を講じていることを説明しました。本日、与野党に賛成をいただいて暗号資産が抜け穴として悪用されないための外為法改正法案と、ロシアの最恵国待遇撤回のための関税暫定措置法改正法案が成立をしたことにつきましても報告をいたしました。
また、G7での世界経済に関する議論の一環として、為替について最近のやや急激な円安の進行について説明した上で、高い緊張感を持って市場動向を注視していくこと、そして、G7でもこれまでの合意に沿って緊密な意思疎通を図っていくことを申し上げました。
冒頭、私からの発言は以上となります。続いて黒田総裁から。

総裁)

議論の内容については、ただいま鈴木大臣からご説明があった通りです。G7財務大臣・中央銀行総裁会議では、ロシアのウクライナ侵攻が世界経済に与える影響について詳細な議論が行われ、私からは、資源価格の上昇などが日本経済に与える影響について説明しました。G20財務大臣・中央銀行総裁会議においても、ロシアのウクライナ侵攻が、日本経済や物価に与える影響について説明したところです。

【質疑応答】

問)

最初に鈴木大臣に質問いたします。その後、黒田総裁に質問いたします。大臣には、今回対立があらわになったという見方もあるG20内で、大臣としては成果があったとすればどういうことか、あと今後の財務省、大臣とか日銀の総裁の会合は続くんですけれども、11月にはサミットもあります。協調体制の枠組みの維持に向けて今回の会議が何か影響があるとお考えか、お願いします。もう1つがカナダやイギリスなどはロシアへの非難の意思を示すためにロシアが発言するときに離席したんですけれども、大臣のご対応はいかがだったのか、また席を立たなかったのであればなぜなのか、教えてください。

大臣)

まず実際に会議に参加してみて、何かそうしたG7と新興国の間の隔たりというものは、あまり感じたことはございませんでした。冒頭申し上げましたけれども、ロシアによるウクライナ侵略については、これは国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明確な国際法違反であります。また、国際協力に当たって平和維持は不可欠であって、これに反するロシアの行為は断じて容認できません。こうした点について、先進国・新興国からにかかわらず、これは広く共有されているものと理解をしているところでございます。
 

問)

あと、今後11月にはサミットもありますので、協調体制の維持に向けて影響があるのかということと、離席について、あと離席しなかったのであればなぜなのかというのをお願いします。

大臣)

この状況は刻一刻と変わる状況でありますが、我々としては、G7をはじめとする国際社会との連携の中で、その連携をこれからも強化しながらロシアに対する制裁をし、究極的には侵攻をやめさせてウクライナから撤退をさせると、その目的のためにやっているところでございますので、秋まで時間がございますが、そういう思いの中で、我々の思いがしっかりとできるように努力をしていくということだと思います。
それから、各国の対応ですね、アメリカ、カナダ、英国というお話があったようですが、ロシアに対する各国の対応については、日本が申し上げる立場にはありませんけれども、私は事実関係として退席はいたしませんでした。退席をせずにG20の会議の場において、ロシアのウクライナ侵略は世界経済が直面する多くの困難の元凶であって、現下の情勢において、ロシアのG20参加はすべきでないという考えをはじめとしてロシアを厳しく批判をさせていただいたということでございます。

問)

黒田総裁に質問いたします。G7でも為替の問題が、為替について言及があったということなんですけれども、総裁は、18日の国会では1カ月ほどで10円くらい進んでいて、かなり急速な為替の変動だというふうに発言しております。その後も円相場1ドル129円台前半まで下落していまして、この急な動きについての受け止めをお願いします。また、経済界から業界によっては懸念する声も上がっていますが、このまま円安が進んでもプラスという考えに変わりはないか、経済のマイナス面は出てこないのか、お願いいたします。

総裁)

私の立場から為替相場について具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きます。日本銀行としては、為替相場は、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えており、為替相場が短期的に過度に変動しますと、先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定等が難しくなる面もあります。日本銀行としては、為替相場の変動が経済・物価に与える影響には十分注意してみていきたいと思っています。

問)

3点お伺いしたいんですが、1問ずつお伺いできればと思います。1点目、まず大臣にお伺いしたいんですけれども、先程、大臣、冒頭も早く経済問題に集中できるような環境になってほしいというご発言がございましたけれども、今回G20の現状、ロシアをめぐる問題などが中心になって十分議論ができなかったのではないか、G20の役割を果たせなかったのではないかというような指摘もございますけれども、今回、共同声明が出なかったことも含めて大臣のG20についての考えがあれば教えていただけないでしょうか。

大臣)

今回の主な議題としても、国際経済ということが議題でありましたけれども、それは現下で言えば、やはりロシアのウクライナ侵略という出来事の中での国際経済でございますから、それが中心となった議論になったところでございます。そういう中で私が公平な立場にそこで座っていて、ほとんどの国がやはりロシアの侵略は許せないんだと。それはやっぱり濃淡はございます。私は厳しい方の色合いの方の発言になりましたけれども、総じてほとんどの国がロシアの侵略は許せないという、こういうことでございました。G20には、当たり前ですけれどもロシアもいれば、中国もいるわけですから、そういう意味では心配をされる向きもありますけれども、今日の状況、特にウクライナの侵略ということについては、そこは総じて同じ、基本的には同じ考えであって、今の状況をもとに何かG20が機能を失ってしまうんじゃないかとか、バラバラになってしまうんじゃないかということは、率直に言って今日の会議を通じてはあまり感じなかったところでございます。

問)

2点目についてお伺いしますけれども、先程も質問が出ましたけれども、イギリス、アメリカ、カナダが退席したことに関してなんですけれども、こちらに関しては事前にそうした国との間で日本も退席するかどうかというのは、何か調整などなさった上で判断されたのかどうかという点も、理由が、併せてお伺いできればと思います。

大臣)

これはやはり各国の、それぞれの国の主体的な判断ということでございます。それぞれの対応はそれぞれの立場で行われていて、私としては会場に参加を最後までして、そこでロシアに対する厳しい議論、思いを伝えたということだと思います。ということでございまして、退席した国も抗議の意味を表すということだったと思いますが、この部分は全く同じだろうと思っております。

問)

3点目に為替について大臣と総裁とそれぞれにお伺いできればと思うんですけれども、先程、先日の国会の閣議後会見でもアメリカと通貨について提携していきたいというお話もありましたけれども、今後、日米での財務相会談なども調整されていらっしゃると思いますけれども、そうした中で、アメリカとはどういった為替政策について、協調した政策を議論されていきたいというふうにお考えなのか、お伺いできればと思います。黒田総裁にはそうした中でどういった議論に期待をなさっていかれるのかという点も併せてお伺いできればと思います。

大臣)

為替相場の水準につきましては、従来から私の不用意な発言が何か及ぼしてもいけませんので、コメントはしないということにさせていただいておりますけれども、やはり為替相場の安定ということは大変重要でありますし、特にも急激な変化というものは望ましくないと、それが基本的な考え方です。その中でこれまでG7等で合意をされた考え方があります。それはすなわち、為替レートは市場において決定される、為替市場における行動に関して緊密に協議する、過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得るという合意がございますので、それに基づいて、米国等の通貨当局と緊密な意思の疎通を図っていきたいと思います。
今回のG7につきましては、声明も出たわけでありますが、表題にあるとおり、ロシアのウクライナに対する侵略戦争に焦点を当てたものであることから、為替への言及はないところでございますが、言うまでもなく、これまでの、先程私が申し上げたG7で合意された考え方というものは、今もそのまま維持をされているということでございます。

総裁)

私からは先程申し上げた通りであり、また鈴木大臣がおっしゃった通りかと思います。

問)

鈴木大臣に2点あります。1つずつお願いいたします。1点目ですけれども、コミュニケをなぜ出せなかったのかということです。つまり、先程ロシア以外のほとんどの国は、ウクライナへの侵攻に対して、みんな濃淡はあれども、思いで一致であるとおっしゃっていました。であるならば、なぜコミュニケを出せなかったかということは、これはロシア一国が反対したからという理解でいいのかということです。
あともう一つ、先程各国で大体考え方は一致していたとおっしゃっていましたけれども、やっぱりコミュニケをG20として出さないと、国際社会に対して、ロシア以外の国はこう考えているんだということをきっちり示せないのではないかというふうに思います。そういう意味で、コミュニケを出せなかったことについて、大臣がどういうふうに受け止めていらっしゃるか。

大臣)

このG20の会合を開くに当たって、議長国であるインドネシアを中心にいろいろ準備されたわけでありますが、そうした準備の中で、また本日の会合も踏まえて、最終的にこの共同声明を発出するかどうかということ、これはもう最後は議長国でありますインドネシアが判断するものでございますので、インドネシアとして、議長国の責任において、そのように判断をして、議長総括という形になったと思います。

問)

もう1点なんですけれども、他国についてコメントするのは難しいと思うんですけれども、ロシアがG20で今回どのような発言をしていたのかというのは、とても関心があるところでして、それはちょっと言えないのかもしれないんですけれども、日本も財務大臣として、ロシアの言っていることについて、どのような受け止めなり感触なりを持っていらっしゃったかというところを、もし可能であれば教えていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

大臣)

感触だけで言えば、国際経済について、何かいわゆる一般論を述べていたような、そういう印象がいたしました。

問)

大臣にお願いします。為替のことなんですけど、先程G7の会合の中で、円安について説明した上で、このG7の緊密な意思疎通を図ることを申し上げたということでしたけど、大臣からこういうご発言をされた意図と、それに対してほかの国からどういう反応があったのか、あとはG20、G7を通じて、為替に関する議論がほかにあったのなら、それも併せて教えていただければと思います。

大臣)

私からは、やはり政府として関心があることでございますので、ここ数日で8%円安が進んだという具体的な数字を申し上げて、この為替についても発言をしたところでございます。しかし、今回のG7の主な議題は、国際経済、それはもうロシアのウクライナ侵略の下での、この国際経済ということでありますので、為替というのは主要な議題ではないわけでございますので、私はそのことを申し上げましたが、特に各国からそれについて発言はありませんでした。

問)

G20、G7を通じて、特にほかに発言はなかった、議論はなかったということですね。

問)

後の国際協調の形というのを大臣にお伺いしたいんですけれども、貿易だとか、あと債務の問題だとか、テーマごとに本来効率的に話し合うべき国の形というのは、国の数というのが違うという考え方があるかと思うんですけれども、G20、この20という枠組みにこだわるべきだとお考えなのか、それともこだわるのであれば、その理由はどんな形なのか、改めてお伺いいたします。

大臣)

G20について言えば、G20自体の規約といいますか、決まりの中、メンバーシップに関するものはないということだそうでありますので、これはもう今のところ、G20という、この枠の中で、今までのメンバーの中で開催されるということで、今回も議長国でありますインドネシアは、全ての国に対して招待状を出したということでございます。私としては、G20にロシアが参加するのは好ましくないんじゃないかということも、今日発言させていただきましたけれども、それについては議長国がそういう判断をされて、結果としてオンラインでの参加と、こういうことになったんだと思います。
 それから、G20の本来の経済関係、特に経済協力につきましては、今回もきちっとそのことを議論されたところでございまして、例えば、この国際保健の問題とか、それから、途上国に対します財政支援の話、要するに、SDRチャネリングの話を今、私はしているわけでありますけれどもそういうこと、それから債務問題についても、きちんと議論をされたということでありまして、本来のG20の役割といいましょうか、そういうことも議論がされたというところでございます。
 

問)

大臣に1点だけ質問があるんですけれども、アメリカのバイデン大統領がG20からロシアを排除するべきだという表明をしていますが、今日の会合でそういったような議論はあったのかということと、大臣としては、その意見についてどうお考えになるかお聞かせください。

大臣)

今日発言したところでございますが、今の状況の下で、もう何事もなかったかのようにロシアと今までの関係を持つことはできない、これは岸田総理もそういうふうに申し上げているところでございます。その文脈の中におきまして、このG20にロシアは参加すべきでないということを私も申し上げましたし、他国の発言は紹介しませんけれども、どの国とは言いませんけれども、他の国からもそういう発言があったところでございます。

問)

それは、今後も出席するべきじゃないという、いわゆるメンバーシップを取り除くべきだという文脈ですか。

大臣)

我々が今、制裁をしております目的は、ロシアの侵略をやめさせて、そしてウクライナの領土から撤退させるということでありますから、その目的が達成をされて、今日も、早く平和が戻って、本来の経済のことについて議論ができるような環境に戻ることが望ましいということが言われているところでございますが、そういうことが達成されれば、また状況は変わってくるんだと思います。

(以上)

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