鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、黒田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和4年5月20日(金曜)15時33分~16時00分)

【冒頭発言】

大臣)

G7の2日目となる本日は、債務問題、国際課税、気候変動について議論をいたしました。ワーキングランチでは、保健大臣と合同で国際保健について議論をいたしました。この2日間の会合の成果を申し上げます。
まずウクライナ支援については、ウクライナが基本的サービスの提供を引き続き確保することに資するよう、2022年中に、本会合に至る直近の95億ドルのプレッジを含め、既に合計198億ドルの財政支援を動員した旨が表明されています。これは昨日申し上げた世銀との協調融資6億ドルも含まれております。
ロシアに対する制裁については、断固として協調した制裁へのコミットをしていることや、ロシアを世経済から孤立させることによって戦争の代償を高めることなどを確認いたしました。
マクロ経済の安定につきましては、足元で必要に応じて的を絞った支援を提供し、世界経済、自国経済への影響を最小限に抑えるために協力すること、中長期的には財政の持続可能性と強靱な金融セクターを実現するよう、安定成長を志向するマクロ経済政策にコミットすることなどに合意いたしました。
なお、為替につきましては、昨日私から会議の場でも申し上げたとおり、過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得るといった点を含むこれまでの合意事項を再確認する旨、共同声明で明記されております。
国際保健につきましては、世界銀行に新たな基金(FIF)を設立することを支持することなどで合意しました。私からは、新たな基金の設立に向けまして、ガバナンス等についてG7でよく連携していきたいと申し上げました。
国際課税につきましては、2本の柱の合意の適時かつ効果的な実施に対する強い政治的コミットメントを再確認しました。
気候変動につきましては、議長国ドイツの提案する開放的で協調的な気候クラブについて、財務大臣・中央銀行総裁の間で初めて議論をいたしました。私からは、各国がとる多様なアプローチを許容し、炭素強度の低下という結果に焦点を置くことで排出削減と炭素漏洩リスクの双方に効果的に対応すべきこと、G7以外の主要排出国の気候クラブへの参加意欲を高めるために、脱炭素移行のための協力を活動の柱の1つとするとともに、炭素漏洩リスクへの対応等を強調し過ぎないよう留意すべきことなどを申し上げ、その趣旨は共同声明にも反映をされております。 債務問題につきましては、低所得国に多額の債権を有する中国のような非パリクラブ国を含む全ての債権国が建設的に貢献することが不可欠であること、日本が指摘してきているとおり債務データの正確性と透明性を高めるために債権国がデータを共有し、協力すべきであることなどに合意をいたしました。
このように、今回の会議ではウクライナ情勢、気候変動や国際保健、債務問題を含む様々な分野において議論を深め、今後も緊密に連携していくことを確認できたと考えております。冒頭の私の発言は以上であります。

総裁)

G7の議論の内容については、ただいま鈴木大臣から説明があった通りです。私から二点申し上げます。
まず、ロシアのウクライナ侵略に伴う資源価格、エネルギー価格、食料品価格の上昇により、多くのG7諸国でインフレ率が数十年ぶりの水準に達しているという認識を共有しました。G7の中央銀行は、こうした状況を注視し、今後明らかになる経済指標を踏まえて、明確なコミュニケーションを行いながら、適切に金融政策を運営していくということを確認しました。私からは、わが国の経済・物価見通しを説明したうえで、日本銀行は、現在のイールドカーブ・コントロールを軸とする強力な金融緩和を粘り強く続けていくことを説明しました。
次に、気候変動については、今しがた、鈴木大臣から様々な議論の成果についてお話がありましたが、G7の中央銀行は、気候変動やネット・ゼロへの移行がもたらす影響について調査分析に取り込んでいくことの必要性を認識し、今後、分析面での協力を強化していくことで一致しました。

【質疑応答】

問)

黒田総裁に二点お願いします。G7の多くの国ではインフレが数十年ぶりの高水準ということで、多くの国からはインフレがリスクであるという言及もあったようなんですけれども、日本はまだまだインフレ、低い状態が続いていますが、これだけ世界的にインフレの圧力が高まると、やがては日本に予想以上に波及する可能性があるようにも思われるんですが、その日本への波及というのを今回会議に参加されてどういうふうにお感じになられているのかというのが一点目です。
二点目は、そうした中、金融政策の引締めのペースを適切に調整するというのがG7の共同声明にありますが、日本はまだまだ強力な緩和を続けるということでしたが、そうした中でもヨーロッパはもうすぐマイナス金利をやめるだろうというのが、今日の色々な方からの発言からも分かりますし、日本はまだまだ緩和といっても、マイナス金利をいつまで続けられるのかという議論も出てきそうなんですけれども、改めてマイナス金利政策というものの整理、どういう効果があったか、日本においてこれが継続される、どこまでも継続していくのか、その辺を今回の議論を踏まえてお考えをお聞かせください。

総裁)

まず、インフレの現状についてはご案内の通りであり、4月以降、昨年の携帯電話通信料引き下げの影響が剥落し、最近のエネルギー価格の上昇もあって、2%程度になると従来申し上げていました。展望レポートでも示しました通り、2022年度の物価上昇の見通しは1.9%程度、しかし2023年度には1.1%程度に低下していくとの見通しになっています。これは一方で国際商品市況の上昇により、いわば交易条件が悪化していますので、そうした状況での物価の上昇は持続性があまりないということであり、現実にも予想物価上昇率は、短期のものは上がっていますが、中長期のものはあまり上がっていません。そういう意味で、私どもの見通しの通りに物価動向も動いていますので、そうしたことを踏まえて、既に現在のイールドカーブ・コントロールを軸とする強力な金融緩和を続けることを金融政策決定会合で決めており、今、見通しで申し上げている以上のインフレが日本に波及してくるという可能性は薄いと思います。
二点目については、既にインフレ率が非常に高くなっている欧米では、米国は既に金利の引き上げを始めていますし、ECBも間もなく金利を引き上げるということを言っておられますが、私どもとしてはこうした物価情勢も踏まえると、現在のイールドカーブ・コントロールを引き続き粘り強く続けて、コロナ禍からの景気回復をしっかりサポートしていくと、そういう中で徐々に2%の「物価安定の目標」に向かって物価と賃金が合わせて上昇していくことを期待しています。現時点では、マイナス金利も含めて現在のイールドカーブ・コントロールを続けていくことがやはり適切であるということが金融政策決定会合における決定であり、それは現在も全く変わっていないということです。

問)

1問目、鈴木大臣に伺います。昨日お話のあった為替の部分で大臣の求めた文言がコミュニケに盛り込まれました。このことについて、まず受け止めを教えてください。また、例えば対ドルでユーロが今、下がっている状況もありますけれども、為替については日本だけでなくて、他国においてどのような関心があったのか、そのあたりを教えてください。
2問目は黒田総裁に伺います。コミュニケには、ある意味当たり前と言えば当たり前なのかもしれないんですけれども、金融政策の引締めのペースを適切に調整するという文言が入ったと思います。各国の中央銀行は独立的に金融政策を実行するというのは当然なわけで、こういった文言があえてコミュニケに入ったということの意義を教えてください。

大臣)

為替についてですけれども、他国のそれぞれの国の発言は申し上げないというのが国際的な慣行ですので申し上げませんけれども、率直に言いますと為替についてそれほど大きな関心が参加国からあったかというと、そうではなかったという印象がございます。

問)

その中で文言が入ったことについては、日本としてはどういう受け止めを。

大臣)

我が国は関心がございますので発言をいたしまして、その旨がコミュニケに明記されたと。つまりは為替の安定というものが大切であって、最近の急激な動きというのは好ましいことではないと、そういう現状認識の上で、今までのG7等での様々な合意事項がございますので、その合意事項というものを今の時点においても、もう一度再確認するということ、これは意義のあることであったと思っています。

総裁)

G7のコミュニケにおける金融政策の面については、先ほど申し上げた通り、G7の多くといいますか、実際は日本以外のG7諸国、ちなみにG7にはEUの代表も参加していますし、ECBも参加しているわけですが、かなりの国で相当な物価上昇率になっているということは事実です。それらの国は、既に金利を引き上げ、引締めを始めた米国もありますし、あるいはBOEも既に金利を引き上げていますが、ECBも金利を引き上げるということです。それぞれの国の物価上昇率が既に数十年来の高さになっていますので、それは当然であり、適切であると思います。

問)

鈴木大臣に1問お願いします。為替に関する合意についてなんですが、今回合意されたことによって今後、例えば日本として為替に介入する必要性が出てきた場合なんですけれども、仮定の話で申し訳ないんですが、その介入を難しくする可能性というのはないんでしょうか。

大臣)

それは今までの合意の確認でありますから、今までどおりであると思っております。これは国会でも、いつでもそのようにお答えしているわけです。つまりはG7の今までの合意事項に従って対応すると。そして対応するに当たっては、米国をはじめとする様々な国と連携をしながら取組を進めていることでございます。

問)

鈴木大臣にお伺いしたいんですけれども、今回ウクライナ支援に関して合意があったということですけれども、今回この意義と、また今後も長期化が想定されますけれども、日本としてこの支援、どのように続けていくのかというのが1点。また、今回のコミュニケを見ますと、ロシアの孤立化ということが書かれておりますけれども、先日のG20のときは中国・インドなど、G7とは立場が違う国もありまして、ロシアが中国・インドなんかに接近するという動きもありますけれども、こうしたところ、新興国の、G7の場で何か議論があったのか、あと孤立化に向けてどのようになっていくのがいいのか、このあたりの認識をお願いします。

大臣)

日本はこれまでもG7をはじめとする国際社会と連携をして、特に同志国と連携をしながらロシアに対して、とにかくロシアの行為というのは国際秩序の根幹を揺るがす許せない行為でありますから、これをやめさせるために外交的、そして経済的な圧力をかけてまいりました。やはりこれはバラバラでやっても効果がないので、まずはG7をはじめとする国際社会、それから同志国とともに進めていく、それが効果が上がっていくことだと思っておりまして、そのことについて今回も確認をすることができたと思っております。
2問目の質問は今後のことですね。今後のことにつきましてもコミュニケにあるとおり、協調しながら必要に応じて進めていこうということでございます。それから中国やインドといった国ということですが、例えば気候変動とかそういうところでは中国とかインドに対しての議論がありましたけれども、制裁についてはそうした国々をどうするかといったような具体的な話は出ませんでした。

問)

黒田総裁にお伺いしたいんですけれども、G7の話とはちょっとずれてしまうんですが、20日に発表された消費者物価指数が2.1%となり、日銀の2%目標を超えたんですけれども、それについての受け止めを教えていただけますでしょうか。

総裁)

最初に申し上げた通り、既に前回の金融政策決定会合においても、4月以降は携帯電話通信料の引き下げの効果が剥落し、最近のエネルギー価格上昇等を反映して2%程度になると申し上げており、その通りになったということです。また、展望レポートでも、2022年度全体でも生鮮食品を除いた消費者物価は1.9%の上昇を予測していますが、他方で、2023年度には1.1%程度に上昇率が低下していきます。これは輸入物価の上昇、すなわち交易条件の悪化ですから、それだけをとりますと当然のことながら国民所得が流出していくわけですから、経済に対する下押し圧力なので、そのまま2%が続くということにはならず1.1%に低下してしまいます。他方、生鮮食品とエネルギーを除いた指数で見ますと、ある程度着実に上昇してはいくのですが、2024年度でもまだ2%には達しないという状況です。ですから、私どもとしては、引き続きイールドカーブ・コントロールを中心とした金融緩和を粘り強く続けていき、2023年度、あるいは2024年度にはまだ2%になっていない可能性が高いわけですけれども、それでも先ほど申し上げたように生鮮食品とエネルギーを除いた指数ではかなり着実に上昇し、たしか2024年度は1.5%程度の上昇になっていると思います。そういう意味で、足許で2%になっているのは、基本的にエネルギー価格等の輸入物価が上昇しているということですので、それで安定的に2%を達成することにはなりません。もっとも、現在の金融緩和を粘り強く続けていくことにより、経済の回復をしっかりサポートし、労働市場も次第に引き締まっていくという過程の中で、賃金・物価が緩やかに上昇していくという姿を期待していますし、徐々にそちらに向かっていくという見通しです。

問)

G7と直接関係なくて大変恐縮なんですが、幹部職員が逮捕される事案がありましたけれども、そのことについての受け止めをお願いします。

大臣)

幹部職員とおっしゃったので私の方からもあえて名前を出しませんが、電車の中で暴行の疑いで現行犯逮捕されたということは、報道として私も、夜に目が覚めましてスマホで記事を見て知ったわけでございます。その後、東京とも少し連絡をいたしましたけれども、今、事実関係を確認中ということで、その詳細がまだ分からないわけでありますので、今の時点でのコメントは控えたいと思っております。いずれにいたしましても、財務省の幹部の職員が逮捕されたことは誠に遺憾ですし、私としても残念な気持ちでなりませんし、財務省としてお詫びを申し上げたいと思います。

問)

昨日たまたま居合わせたドイツのメディアに、日本の金銭的な貢献は少ないんじゃないかと一方的に言われました。それはどういうことかと反論したくなるわけですけれども、G7の一員として日本がこれだけのコミットをして、ウクライナ、対ロシアで貢献をしていくことの意義をもう一度お伺いしたいと。今日、ヨーロッパの共同債務構想について、ドイツのリントナーさんはドイツとしては反対だと。まさに是々非々で議論がされているわけですけれども、日本は今回の対ロシアでのコミット、どういう意味があり、どういう覚悟でやっていらっしゃるのか、ぜひ伺いたいと思います。

大臣)

G7の場では、むしろ遠く離れているウクライナに対して日本がよく貢献してくれていると。しかもアジアにおいて、そうした方向に取りまとめようということで努力しているということで、むしろ感謝の言葉がございました。その上で、なぜこういうことをしなくちゃいけないのかというのは、やはり先程申し上げましたとおり、今回のロシアの行為は力による現状の一方的な変更を、そして領土の一体性を損なう、しかもその過程において、女性や子どもを含む無辜の市民を虐殺するというふうなことであって、これは絶対に許すことのできないことであります。そうした決して許すことのできない行為に対して制裁を課して、また外交的な圧力をかけてこれをやめさせよう、これはある意味当然のことであると思っております。これを放っておくと、こうしたことがさらに広がりかねない。ウクライナは日本から見れば距離が遠いわけですけれども、決して対岸の火として見過ごすわけにはいかない。こういうことに対しては力強く、G7、国際社会、同志国と協調しながら対応するというのは、これは政治的にも当然の判断であると思っています。

(以上)

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