鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、黒田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和4年10月13日(木曜)18時39分~18時58分)

【冒頭発言】

大臣)

今回のG20が終了いたしましたので、私から会議のことについて発言をさせていただきます。
先ほどG20が閉幕しました。今回の会議は、ロシアの侵略戦争によって世界経済が抱える多くの困難が深刻化する中で開催されました。今回の会議の概要は、以下申し上げるとおりですけれども、後日、議長国より、議長サマリーとして発表される見込みであります。
まず、昨日も申し上げましたとおり、日本を含む多くの国がロシアの侵略行為を厳しく非難をするとともに、食料・エネルギー不安やインフレ圧力など、世界経済に多くの困難をもたらしていることを指摘しました。
その上で、G20としてこうした課題に協調して対処すべく議論を行いました。
食料・エネルギー不安につきましては、最も影響を受けやすい脆弱層への支援が重要であって、IMFで新設された食料ショックウィンドウなど、国際協調を推進していくこととしました。
インフレ圧力の高まりや先進国の金融引締めの国際的な波及効果につきましては、最も影響を受けている脆弱層への的を絞った支援が重要であることや、各国間への波及効果の抑制に配慮しつつ、インフレ予想の安定維持を確保するよう、データを踏まえて明確なコミュニケーションを行いながら、金融政策を適切に調整すること、との認識が示されました。
為替については、議長サマリーにおいても、多くの通貨がボラティリティの増加を伴って大幅に変動したことの認識が新たに共有されるとともに、為替相場のコミットメントが再確認される見込みであります。
低所得国等の支援につきましては、IMFのRSTの稼働を歓迎しました。また、債務問題についても、議長サマリーにおいて、「共通枠組」を予測可能な形で、タイムリーに実施し、中所得国の債務問題にも全ての債権者が協調して対処していくことが確認される見込みです。
このほかにも、現下の非常に困難な情勢にもかかわらず、国際保健、国際課税、金融セクター、コーポレートガバナンス、気候変動、インフラを含め、インドネシア議長の下のG20の取組を推進できたこと、これは有意義であったと考えております。
いずれにいたしましても、一刻も早く平和を取り戻して、G20で経済協力の議論に集中できる環境を実現する必要があり、国際社会がロシアに圧力をかけ続ける必要があると考えています。
このほか、ウクライナのマルチェンコ財務大臣と面会をし、ウクライナと一層緊密に連携していくことを確認しました。
また、IMFCの導入セッションにおいて、為替市場、日本経済の現状について私から説明をしております。
最後に、この場をお借りしてお伝えをいたしますが、先日、新潟県新潟市で開催することを決定いたしました来年のG7財務大臣・中央銀行総裁会議の日程につきましては、2023年5月11日から13日にかけて会議を開催することといたしました。会議の成功に向け、関係機関と密に連携しながら、準備に全力を挙げて取り組んでまいります。
冒頭、私からの発言は以上です。

総裁)

議論の内容については、ただいま鈴木大臣から説明があった通りです。
なお、G7財務大臣・中央銀行総裁会議では、ロシアによるウクライナ侵攻等を背景とするインフレ圧力の高まりと、そのもとでの財政・金融政策の方向性について議論がされまして、気候変動対応を巡っても意見交換がされました。私からは、日本の物価動向や日本銀行の政策対応について説明いたしました。
また、G20財務大臣・中央銀行総裁会議でも、ロシアによるウクライナ侵攻等を背景とするインフレ圧力の高まりや、各国における政策対応等についても議論が行われまして、私からは、G7の方と同様に、日本の物価動向、あるいは日本銀行の政策対応について説明いたしました。

【質疑応答】

問)

鈴木大臣と黒田総裁、それぞれ1問ずつお願いします。まず鈴木大臣に、G7の声明では各国の通貨安を念頭に多くの通貨がボラティリティを高めて大きく動いたことを認識しているという記述が入りました。こうしたドル独歩高という状況の中で、これが問題であるという認識なのであれば、それを変えるためにどのようにするべきかという議論がG7内であったのかどうか、例えばG7が協調して何かアクションを起こすべきであるという、そういう議論に発展する可能性があるのかどうかをお願いします。

大臣)

今のお話ですけれども、多くの国から、会議におきましても、世界的な金融環境の引締めがもたらす世界経済への波及効果を注視し対応する必要性というものが指摘されまして、こうした中で、為替の問題に言及する国もありました。
会議ではそういう問題意識が語られて、それが声明に反映されたと、こういうことでありますが、それに基づいて、具体的な協調した方策をどうするかといった、そういう手段についての議論はなされませんでした。

問)

黒田総裁への質問なんですけれども、IMFの専務理事の会見やWEOではインフレの抑制というのを当局者が優先課題であると指摘するなど、インフレが大きな世界経済のリスクであるという議論が中心だったと思います。インフレに対応するための利上げで世界が景気後退に陥るリスクについてもIMFは指摘していますが、こうしたリスクおよびインフレについての議論、総裁としてお話を聞いていて、これが日銀の日本経済の先行き見通しにどう影響を与えるのか、会議に参加されてご感想および今後の10月の展望レポートに向けた議論にどのような影響を及ぼし得るのか、お願いします。

総裁)

世界経済の見通しについては、ご指摘のようにインフレがかなり高進したということもあって、多くの国で利上げが進められているわけであります。ただ、これは私からも説明いたしましたが、日本の消費者物価は、コスト高を背景にして、生鮮食品を除くベースで2.8%の上昇となっておりますけれども、来年度以降は2%を下回る水準まで低下していくとみられるということを申し上げました。
そのうえで、欧米各国あるいは多くの途上国と違いまして、日本の物価上昇率はこの水準で、しかも来年度以降は2%を下回る水準まで低下していくとみているということで──これはIMFもそうみているわけですけれども──物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して、金融緩和を継続するということを説明いたしました。

問)

鈴木大臣に質問です。4月のG20のときはロシア団の発言の際に欧米の参加者が欠席するなど、そういう異例の対応もあったと思うんですが、今回は全体的にどのような進行状況だったのか、大臣の口からお願いします。

大臣)

今回は、ロシアからはIMFの理事の方が参加をされました。あとは事務方の参加でありました。前もってG7でも意思疎通をしたわけでありますけれども、今回は退場しないと。発言のときも退場しないということで、全員退場しないでいたと思います。むしろ、会場にいて、ロシアに対して最大限の非難をそれぞれの国が行ったと、こういうような感じで会議が開かれました。

問)

鈴木大臣に2問お願いいたします。G7・G20でも議論になりました為替なんですけれども、円相場が今足元147円台後半にまで進みまして、先般の為替介入の水準を超えるところまで来ました。今朝、朝方のアメリカCPIの発表を受けても変動が見られるような場面もあったと見られますが、介入を含めた対応をとる考えはないか、改めてこの姿勢について教えてください。

大臣)

為替の相場の動きにつきましては、私の不用意な発言が影響を与えてもいけませんのでコメントしないということにしておりますけれども、投機による過度な変動、これは容認できません。
為替市場の動向を高い緊張感を持って注視をしているところでありまして、過度な変動に対しましては適切な対応をとりたいと、そう考えております。

問)

先程のご説明の中でG20の議論においても為替政策について、従来のコミットメントの確認に加えて、ボラティリティの増加の認識というのが共有されたというふうな話がありましたけれども、これはこれまでの合意内容から一段と踏み込んだ対応をとれたというふうな受け止めなのか、このあたりについて教えてください。

大臣)

やはり各国の金融引締めというものが、世界経済にいろいろな面で影響を与えているんだと思います。為替はもちろんでありますけれども、資本フローの問題、あるいは債務の問題、こういったものも今日、世界経済、各国がいろいろな影響を受けているということで、そういう認識がしっかりと示されたということは、前回のG20の会議以降の動きの中でのそういう認識がしっかり示されたということであり、これは意味があることであると思います。
加えて、今までのG20やG7等の為替についての合意事項を再確認したということも、これも大変意味のあることであると、そういうふうに認識しています。

問)

大臣にお伺いしたいんですけれども、今回9月に介入してから初の対面でのこういった会議になったわけですが、大臣としてはこの会議を終えて日本の為替介入について理解は得られているというご感想をお持ちなのかどうかがまず1点です。もう1点が、今回私の認識ではイエレン財務長官とバイの会談はされていないと思っているんですけれども、今回は会われる予定がないのか、それと9月に介入したということと何か関連があるのかどうか、一応お願いします。

大臣)

今回は私、先月の日本の為替介入について、こういうような状況で介入をしたということを発言いたしました。それは説明という意味で発言をしたところであります。そして前回の介入につきましては、アメリカから理解を明確に示していただいております。
今回はイエレン長官と個別の会談は行いませんでした。これは米国等とは日頃からあらゆるチャネルで緊密に連携をしておりますし、またG7やG20でも議論ができるわけでありますので、今回会談は行われなかったということであります。

問)

大臣に1点お願いします。先程、議長サマリーで後程示されるとおっしゃったということは今回も共同声明はまとめることができなかったというふうに受け止めてよろしいんでしょうか。もしそうであれば3回続けて見送られることになるんですけれども、そのことについても大臣としての受け止めをお願いします。

大臣)

共同声明につきましては、これはコンセンサスが原則でございます。そういう中において、やはりロシアの侵略戦争というようなことがございまして、コンセンサスを得ることがこれは難しい状況だと、こういうことであります。
もう1つ、私の受け止めですが、これはよくG20が機能不全に陥っているんじゃないかということを言われるわけでありますけれども、先程もちょっと触れましたけれども、やはりロシアの侵略戦争によって、世界経済はすごく困難に直面をしております。こうした中で、G20でも、ロシアが建設的な議論を難しくしているということ、これは事実なんだと思います。
そういう意味におきましても、いろいろな面、例えば国際協調を通じて食料・エネルギー不安をはじめとした喫緊の課題に対処すべく尽力をしているところであります。また、債務問題など日本がコミットしてきた重要な課題についても、具体的な進展に向けて議論を積み重ねるということは、G20もしっかりとやっているというところであります。
しかし、一刻も早く平和を取り戻して、G20で経済協力の議論に集中できる、そういう環境を実現する必要があると思います。そういうことができなくなっている基本的な原因、これはロシアにあるわけでありますので、国際社会がロシアに圧力をかけ続ける必要があると、そういうふうに認識をしております。

問)

黒田総裁にお伺いします。今回、G20の方でも、現在、緩和的な政策を採っているのはロシアと中国と日本ということになると思うんですけれども、ロシアも中国も経済制裁だったりとかゼロコロナとかで国内の経済に明白な下押し要因がある中で、日本は現在もなかなか力強い回復がないというところで、総裁は今回、G20以外の会合とかでも、各国に対して日本の状況等を説明されてきたと思うんですけれども、このあたりの日本がいまだ利上げをできないような環境にあるということについて、その要因、なぜそのような要因になっているかということを、どのようにご説明されていますでしょうか。

総裁)

欧米が8%から10%という非常に高いインフレのもとで金利を引き上げているということは、当然、適切であり、正しいと思いますけれども、日本が金利を引き上げられないという見方はちょっといかがかと思います。
金利は、経済・物価に応じて適切な水準にするということが正しいと思いますので、その面で言いますと、日本経済は、コロナ禍を脱して、消費・設備投資を中心に回復してきていますけれども、まだ、例えば米国などと比べると回復のテンポが遅いということも事実でありますので、当然その回復を支援していくということが必要だということは、まずあります。
もう一つは、そもそも金融政策は物価の安定を目的として行われるわけですけれども、先ほど申し上げたように、消費者物価は足元で2.8%になっているとはいえ、来年度以降2%を割っていくという見通しであり、そういう中で、今、金利を上げることは適切でないということは当然出てくる話です。上げられないとかそういう意味ではなくて、経済・物価に対して最も適切な金融政策、金利を考えると、今引き上げる必要はないし、適切でないということであります。

(以上)

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