鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、黒田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和5年2月25日(土曜)19時27分~19時56分)

【冒頭発言】

大臣)

24、25日の2日間にわたって、インドが議長国を務める最初のG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されました。
今回の会議は、ロシアがウクライナに対する不法かつ不当で、いわれのない侵略戦争を開始してから1年という節目の時期に開催されました。こうした中で、日本を含め、多くの国がウクライナとの連帯を改めて表明するとともに、国際秩序の根幹を揺るがすロシアの侵略行為を最も強い言葉で非難をしました。
こうした各国の意見を踏まえ、今回の会議の成果文書でも、昨年行われたバリ首脳宣言で合意された文言に沿って、戦争が世界経済に悪影響を与えていることや、ほとんどの国がロシアを非難していることなどが盛り込まれています。
他方で、こうした文言を盛り込むことについて、ロシア、中国が反対したことから、一連の会議の成果は、共同声明ではなく議長総括となりました。
共同声明ではありませんが、議長総括の他の部分は、債務問題も含め大臣・中央銀行総裁全員の合意事項であり、この2日間議論してきた幅広い課題について成果が盛り込まれています。
世界経済については、インフレ率の上昇や、金融環境のタイト化とそれに伴う新興途上国の債務脆弱性の悪化など、引き続き下方リスクが根強いとの認識が共有されました。
こうした中で、財政の持続可能性を維持しつつ、脆弱層へ一時的で的を絞った財政支援を行うこと、金融政策について、インフレ予想の安定を維持し、各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスを明確に意思疎通することなどの重要性を確認いたしました。
また、低所得・中所得国の債務問題への対応の緊急性を確認しました。その上で、共通枠組を予測可能かつタイムリーに実施する取組を強化し、ザンビア、エチオピア、ガーナといった個別の債務措置でも迅速な進展が必要である旨が強調されました。また、スリランカの債務状況の迅速な解決も期待する旨を明記しました。さらに、債務データの正確性・透明性の向上のため、かねてより日本が重要性を指摘してきた債権国による国際金融機関に対する債権データ共有に関する取組も議長総括に盛り込まれました。
MDBs改革やSDRチャネリング等を通じて脆弱国支援を強化することも確認しました。私からは、こうした取組の一環として、SDR新規配分額の20%を速やかに実施すること、さらに、IMFのPRGT(貧困削減・成長トラスト)の利子補給金として新たに5,000万ドル拠出することなどを表明しました。
このほか、未来都市の建設に向けた都市インフラ整備、暗号資産が潜在的に広く経済・金融に与え得る影響の対処といった議長国インドが重視する課題や、気候変動、国際保健、国際課税といったG20の重要課題について、幅広く議論が行われました。
また、G20に加えてIMF・世銀が主催したグローバル・ソブリン債務ラウンドテーブルの大臣級会議にも参加したほか、米国のイエレン財務長官、ドイツのリントナー財務大臣、ジェンティローニ欧州委員、IMFのゲオルギエバ専務理事とバイで面会いたしました。
23日のG7から始まり、G20やバイ会談を通じて極めて有益な議論ができたと考えています。

総裁)

議論の内容につきましては、ただいま鈴木大臣から説明があったとおりでありまして、私からは2点申し上げました。
まず世界経済等に関するセッションでは、世界経済の見通しやリスク要因、世界的な食料・エネルギー不安の影響などについて議論されました。私からは日本の物価動向や日本銀行の政策対応について説明いたしました。具体的には、日本の消費者物価は輸入物価の上昇を背景に生鮮食品を除くベースでプラス4.2%となっていますが、2023年度半ばにかけて2%を下回る水準まで低下していくとみられるということも申し上げました。その上で、現在は経済をしっかりと支え、企業が賃上げをできる環境を整えることが重要であり、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融緩和を継続するということも申し上げました。
次に、金融のセッションでは、2023年の金融安定、金融規制に関するG20の作業計画や暗号資産の金融システムに対する影響等について議論されましたが、私からは、このG20の作業計画などについて支持する旨を申し上げました。

【質疑応答】

問)

なぜコミュニケという形ではなく議長総括という形になったのかについてなのですが、鈴木財務大臣にお伺いしたいです。
昨年11月のバリ首脳宣言として採択されたものがウクライナ侵攻をめぐる記述について、なぜ今回は同意を得られなかったのか、また、議長総括ではこれまで各国の主張について国名を明示していなかったと思うんですけれども、中国とロシアが同意しなかったと明らかにしたのはなぜでしょうか。これらの点について大臣の受け止めとお考えを伺いたいです。
併せて、日本としてウクライナについてどのような主張をしたのか、議長国インドやG7以外の国がどのような反応だったのかも教えてください。

大臣)

今回の会議では、共同声明ではなくて議長声明ということになったわけでございますが、しかし中身を見てみますと、今回の成果文書でも各国大臣・中央銀行総裁の議論を踏まえて、昨年行われたバリ首脳宣言で合意された文言、これに沿っていると基本的にはそのように理解をしております。
実際、戦争が世界経済に悪影響を与えていることや、ほとんどの国はロシアを非難していることなどがこの議長声明にも盛り込まれているところであります。
しかし、ロシアと中国が、こうしたロシアに対する非難といいますか、ロシアのウクライナ侵略が世界経済に悪影響を与えているということに合意しないわけですね。これを共同声明として書くことを。具体的には、ロシアと中国、2つですけれども。そういうような反対があったことから、中身の上では先程申し上げたとおりなんですけれども、形の上では、私にとってみればちょっと残念な気がいたしますけれども、共同声明に合意することができなかったと。結局は議長総括ですね、議長総括ということになったわけであります。
繰り返しになって恐縮ですが、先程、冒頭発言でも申し上げましたけれども、議長総括の他の部分、ロシアの侵攻にかかる部分のその他の部分ですけれども、これは債務問題を含めまして、大臣・中央銀行総裁全員の合意事項として、この2日間議論してきた幅広い課題についての成果が盛り込まれたと、そのように理解をしております。
昨年のバリでのG20の財務大臣・中央銀行総裁会議では、債務のところで1カ国が反対してという、そういうことで具体的な国名は挙げなかったわけでありますが、今回はロシア、中国と明示をしたということは、ある意味ロシア、中国に対して、特にロシアに対してより強い立場の表現になったと、そのように理解しております。

問)

鈴木大臣に伺いたいんですけれども、今回、議長総括になったということで、よりロシアへの強いメッセージということはありましたが、一方で財務相会合という意味では4回連続して議長総括になっているということを踏まえると、このG20としての難しさといいますか、こういうのもあるのかなと見受けます。G7では声明は出ましたけれども、G20では出なかったと。ここについてはご自身、どのような難しさ、困難さなどを感じていらっしゃるのかということをお聞きしたいです。
もう1点、今回評価する点もあるということで、特にどの点を評価されているのか、その点も教えてください。

大臣)

よくG20が機能不全に陥っているのではないかというようなご指摘があるわけでありますけれども、冒頭申し上げましたとおり、ロシアの侵略戦争は国際秩序の根幹を揺るがす行為であって、G20でもロシアが建設的な議論を難しくしているという、そういう事実があるんだと思います。
しかし一方では、国際秩序を守る多くの国が国際協調を通じて世界経済が直面する喫緊の課題に対処するという、そういう努力は行われ、そういう表明もございました。
そして、今、大変重要な課題となっております債務問題をはじめ、日本がコミットしてきた重要な課題につきましても、具体的な進展に向けて議論を積み重ね、一定の成果を得ることができたと考えております。
やはりG20は様々な国がメンバーでありますし、それから、ちょっとリーチアウトしていろいろな招待の国もあったりもいたします。そういうことでだんだん1つに議論を集約して絞り込むというのが難しくなっているということは、それはそれぞれの立場がありますから、それはあるんだと思います。特に、1年前のロシアのウクライナ侵略ということが、それに輪をかけて、さらにそういう傾向を強めていくというのは実際のところであると、このように思います。
それから、今回のことでどういうところが評価をできるかということでありますが、先程申し上げましたけれども、喫緊の課題となっております債務の問題につきましては、本当に重要な課題として議論が行われました。そしてその中で、かねてより日本が主張してきた考え方というのが1つの重要なポイントとして認識されつつあると、いろいろな立場がありますが、そのように思っているわけでありまして、その点については評価できるのではないかと思います。
このほかにも国際保健の問題というのは、これも日本がかねてより議論をリードしてきた部分でありますけれども、そういう点についても、今回、きちっと議論され、一定のことが議長総括にも盛り込まれているということで、本当に大変な中、よく議長国のインドは頑張ってくれたと、そのように思っております。

問)

新興国の債務問題についてお伺いします。先程も一定の成果があったというふうに、大臣、言及されましたけれども、具体的に今回のG20でどういった進展があったというふうにお考えかということをお伺いしたいのと、今回、中国がこの問題に対してどのように向き合ったのか、またその受け止めについて教えてください。

大臣)

まずいろいろな国からいろいろな発言がございますが、それぞれの他国の発言については基本的には申し上げないというのが、マナーですので、中国の発言については控えさせていただきたいと、このように思います。
その上で、債務問題でありますけれども、低所得、それから中所得国への対応が、喫緊の、緊急性を持った課題であると、まずそういう債務問題そのものに対する位置付けというものがG20メンバーの間で共有されたということだと、そのように思います。
その上で共通枠組についてですが、共通枠組を予測可能かつタイムリーに実施する取組を強化して、ザンビア、エチオピア、ガーナといった個別の債務措置でも迅速な進展が必要である旨が強調されました。
また、中所得国で共通枠組の対象外でありますスリランカの債務状況についても迅速な解決を期待する旨を明記いたしました。
さらに日本が重要性を指摘してきたことにもあるわけでありますが、債務データの正確性・透明性の向上のため、かねてより日本が重要性を指摘してきた債権国による国際金融機関に対する債権データ共有に関する取組ということも議長総括に盛り込まれました。
こうした具体的な取組を全てのG20メンバーで合意できたこと、これは大きな成果だと考えていいんだと思います。
今後、今回の合意を速やかに実施していくことが重要であると、そのように思っているところであります。

問)

鈴木大臣と黒田総裁それぞれにお伺いできたらと思います。
まず鈴木大臣になんですけれども、今回のG20の中でロシアを非難されたと思うんですけれども、具体的に日本としてどのような文言で非難をされたのか、特にG7議長国としてどのような発言をされたのかというのをお伺いできますでしょうか。
黒田総裁には、先日のG7の会見でも質問があったんですけれども、今回国際会議に出られるのが最後ということで、実際に参加国の方からお声がけがあったりですとか、最後というところでご自身を振り返られて、最後の国際会議、どのようなものだったかというのをお伺いできますでしょうか。

大臣)

ロシアのウクライナ侵略については、主に私からは3点発言をいたしました。具体的にどういう非難をしたかというのは、大体こういう会議では、最も強い言葉で非難をするというのが最大級の非難の表明であるわけでありまして、まさにその言葉どおりを発言いたしました。
関連して発言しましたのは、やはり制裁をくぐり抜けるといいますか、迂回をしようと、そういう動きがある、そういうことはきちっと対応しなければいけないということ。
それから、ロシアは、今の世界経済に与えている影響は、これは制裁が原因なんだと、そういう誤ったナラティブがあるわけであります。そういうことが中進国等に広まっていってはならないわけで、それは違うんだと。世界経済が混乱している元凶、それは全てロシアのウクライナ侵略によるものなんだということ、そういうことは会議の中で強調をさせていただきました。

総裁)

今回のG20が、私として最後のG20の参加になったわけですけれども、振り返りますとG20が1999年にできまして、できたときから、当時は財務官として参加し、その後、アジア開発銀行総裁として参加し、この10年間は日本銀行総裁として参加してまいりました。
その時々の重要な世界経済、金融の問題について、大変有意義な議論が行われ、それに対して何がしかの貢献ができたのではないかということは思いますが、それ以上に、そういった議論の中で学ぶことが非常に多かったというふうに思っております。

問)

鈴木大臣にまず1点伺いたいんですけれども、新興国の債務問題についてお伺いいたします。今回、議長声明の中で、スリランカについて触れられていると思うんですけれども、スリランカ自身はコモンフレームワークの枠組みの対象ではないかと思うんですけれども、ここで触れたことによって今後どのような処理が進んでいくことを期待されていらっしゃるのか、まずそれを教えてください。
2点目は黒田総裁にお伺いしたいんですけれども、本日、G20の最後にフェアウェルセッションがあったんじゃないかという情報があるんですけれども、もしあったのであれば、どういった場で、黒田さんの方からどういうお言葉があったのか教えてください。

大臣)

スリランカについては、ご指摘のとおり、共通枠組の外であるわけであります。これに対する日本の主張は、とにかく債権・債務の関係を透明性をもって進めなければならないと。それが債権国全体に、一体どこの部分がどれぐらい債権を持っているのか分からないままに、例えば1対1でやるということになると、これは本当に収拾がつかない、要するに公平な処理にならないと思うんですね。ですから日本としては、そうした透明性を明らかにするということと、これは債権国が集まって1つの合同合議体の中で透明性をもってこれに対応していきましょうと、そういうのが日本の基本的な立場でありまして、そのことについては今回の会議でも発言をしたところであります。

総裁)

会議の最後に、議長から、今回のG20が私にとって最後のG20であるということで、フェアウェルというか、そういうことのご紹介がありましたので、私からは、そういったことに対してお礼を申し上げるとともに、先程申し上げたような、1999年以来G20の議論に参加して大変学ぶところが多かったということを申し上げました。

大臣)

加えますと、最後全員が立ち上がって拍手をして、黒田さんの長年の貢献をみんなでたたえました。

問)

黒田総裁にお願いします。冒頭の発言で日本の物価の状況を説明して、どういう政策スタンスでということで説明されたということだったんですけれども、各国、総裁も木曜日におっしゃったように、ほかの国では物価が非常に高止まっているというか、まだまだ油断ができない、しっかり引締めを緩めるわけにはいかないという状況だと思うんですけれども、そういった中で、日本の、ある意味特殊な状況を改めてどういうふうに説明されたのかというところと、それから総裁からして、やっぱりこれはかなり日本特有の要因というのが働いて、こういう各国との差異が生まれているのかというところを教えていただければと思います。

総裁)

私が説明したことは先程申し上げたとおりで、足元4.2%の消費者物価の上昇になっていますけれども、これの大半は、輸入物価の上昇を消費者物価に転嫁した結果でありまして、ご案内のとおり、輸入物価の上昇率も既に下がってきております。それから、2月分から、政府によるエネルギー価格高騰に対応する補助金が出ていますので、その影響もあります。そうした輸入物価の影響から、2023年度の半ばにかけて物価上昇率は低下していって、2%を割るというのが我々の見通しであります。ただ、その後は、賃金の上昇率を反映して、少し物価上昇率は高まっていくというふうに考えていますけれども、現在の政策委員会の見通しは、ご案内のとおり、2023年度も2024年度も2%以下というのが続くという見通しになっております。
そうした状況で、確かに欧米先進国とはかなり状況が異なっているということもありまして、2%の物価上昇率が、いわば安定的・持続的に達成されるように現在は金融緩和を続けているという考え方をして、こうした考え方は、他のG20諸国の中央銀行総裁からも十分理解をされたというふうに思っております。

問)

大臣にお伺いしたいんですけれども、今回4回連続で共同声明が採択されずに残念で、さらに意見集約も難しくなっているということなんですけれども、一番は、ロシアが侵略をやめることというのが一番だとは思うんですけれども、ただ、長期化も予想されている中で、今後各国がG20の場で、その機能の改善とかというのを、どういうことをしていくことが求められると思っていらっしゃるのか、お願いします。

大臣)

これはなかなか難しいんですが、共同声明が発出できないということが、何かG20の意義を損ねているものではないんだと思います。
先程申し上げましたとおり、端的に言えば、今回はロシアのウクライナ侵略ということ、これが世界経済に影響を与えているんだという、そういう一連の関わりについて、ロシア自身と中国がこれに反対したと、そういうことで議長総括という形になりました。
しかし、その他の部分においては、財務大臣も中銀の総裁も全員一致をして、全部合意もされたことです。その中では、今後本当に喫緊の課題になる、世界経済全体にとって重要なことになる債務の問題も話し合われて、議論するということでありますから、何かG20が全く意義を失っているということはないわけで、そういうことでありますから、どうやって機能回復をするのかということよりも、今の形の中で、とにかく議論を進められるところはしっかりと進めて合意していくということになるのではないかなと思います。

(以上)

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