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G7財務大臣・中央銀行総裁会議議長国記者会見の概要

(令和5年4月12日(水曜)17時48分~18時15分)

鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁と神田財務官によるG7財務大臣・中央銀行総裁会議議長国記者会見の概要(日英同時通訳を媒介)は以下のとおり。

【冒頭発言】

大臣)

本日、日本議長下でのG7財務大臣・中央銀行総裁会議を開催しました。
会議後、共同声明を発出しております。会議のポイントとして私から3点申し上げたいと思います。
まず先月、金融市場の不確実性が高まったことを受けて、世界経済、金融市場の動向を議論いたしました。2008年の世界金融危機以降に実施された規制改革等によって、金融システムは強靱であるとの認識を共有しました。その上で、引き続き金融セクターの動向を注視し、国際金融システムの安定と強靱性を維持するために適切な対応をとる用意があることを確認いたしました。
第2に、世界経済の強靱性をいかに高めていくかについて議論をいたしました。今回の会議では、自由・公正でルールに基づいた多国間システムを維持し、経済の効率性と強靱性を両立する必要性で一致いたしました。
特に、サプライチェーンについて、財政・公的金融手段を活用して、強靱で持続可能なサプライチェーンを構築していくための「ハイレベル政策ガイダンス」を取りまとめました。今後、このガイダンスに基づき、G7間で協力を続けるとともに、低中所得国がサプライチェーンにおいてより大きな役割を果たすことができるよう、互恵的パートナーシップの具体化を検討していきます。低中所得国への支援やパートナーシップの強化は、5月の新潟でのG7で主要な議題として取り上げます。
日本は、本日のG7等の会議で、SDRチャネリングのプレッジを20%から40%に引き上げ、低所得国支援を一層強化することを表明いたしました。
第3に、マルチェンコ財務大臣にも対面で参加をいただき、ウクライナ情勢について議論しました。ドイツから議長国を引き継いだ際、最大の課題はウクライナ支援であり、日本としても最優先に取り組んでまいりました。本日の会議では、G7のウクライナに対する揺るぎない支援を再確認するとともに、IMF支援プログラムが承認されたことを歓迎し、今後、プログラムの円滑なレビュー完了が重要である点で一致しました。
また、私から、日本の支援について、信用補完によって世銀を通じた50億ドルの財政支援ローンを可能とするための法律改正が、先週、国会で成立したことを報告いたしました。
対ロシア制裁については、引き続き制裁の効果を検証し、必要に応じて制裁を強化するとともに、制裁の迂回対応を強化していくことでも合意をいたしました。
以上がG7の会合のことでございますが、そのほかにも本日開催されました世界銀行・IMF合同開発委員会では、気候変動やパンデミックといった地球規模課題への対応を強化するため、世銀の組織・業務改革について議論し、既存資本の有効活用策などについても話し合われました。今後さらに具体化を進め、秋の会合で野心的かつ包括的な合意を目指す予定です。私からの冒頭の発言は以上です。

総裁)

私からは、今の鈴木大臣のお話の中の金融面のところについて少し補足させていただきます。
最近の一部の金融機関をめぐる動きに対して、関係当局による迅速かつ適切な対応がなされた結果、金融システムの安定性は維持されているという認識が共有されました。その一方で、SNS等を通じた情報拡散の速さといった新たな要素には留意が必要だという見方も示されました。また、先行きを見た場合に、依然として不確実性が高いので留意が必要であるという指摘もございました。
その上で、私からは日本の消費者物価の動きについて若干コメントいたしました。日本の消費者物価指数は、コスト高を背景に3%程度の上昇率となっていますけれども、今年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していくと見ているというふうに説明いたしました。そうしたことですので、日本銀行は物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融緩和を継続するというふうに申し上げたところでございます。とりあえず私からは以上です。

【質疑応答】

問)

鈴木大臣と植田総裁にお伺いしたいと思います。
まず金融システム不安の関係なんですけれども、共同声明の中で金融システムの安定を維持するために適切な行動をとる用意があるというふうに言及されていますが、具体的にどのようなことを想定していらっしゃるかというのをまずお伺いしたいのが一問です。
もう1点なんですけれども、同じく金融システム不安の関係で、先日、IMFの経済見通しでも、これが世界経済に与える影響などを言及されていますけれども、今後、この件が世界経済の下振れリスクについてどのように影響していくかというふうにご覧になっていらっしゃるのか、ひいては日本の経済への影響についてもどのように見ていらっしゃるのかというところについてお伺いしたいと思います。

大臣)

今日の会合では、やはりシリコンバレー銀行が破綻し、クレディ・スイスなどにも波及したわけでありますけれども、そうしたことについての意見が交換され、先程も申し上げましたが、G7の声明でも確認をされたとおり、関係当局の迅速な対応と、それから2008年の金融危機後に実施された金融規制改革、これに支えられて金融システムは強靱であると、そういう認識で一致をしたところでございます。
そうは言っても、引き続き金融セクターの動向を注意深く監視する必要があるということでありまして、必要に応じて適切な行動をとる用意があるということを確認したところでございます。
具体的に適切な行動はどういうようなことなのかということでありますが、今は落ち着いているという、そういう認識でありますので、注視をし、やはりリスクというものに対する注意はしつつも、当面は落ち着いた状況であると、こういう判断であります。
したがいまして、何かまた波及等が万が一起きた場合には、各国の当局において連携しながら、今回もやったような流動性の確保でありますとか、そういうような対応がとられるんだろうと、それが基本だと思っております。

総裁)

それでは、多少付け加えさせていただきますと、大臣がおっしゃったことに加えまして、バーゼル3以降は、バーゼル3に含まれるような様々な規制について、必ずしも完璧にインプリメントがされていない部分もあるということですので、これがもう少しきちんとインプリメントされていくというようなことを中期的に準備していかないといけない、あるいは努力していかないといけないということが1つあるかなと思います。
それから、今後のリスクということでは、IMFのワールド・エコノミック・アウトルックにもありますように、クレジット周りがどれぐらいということを、定量的にIMFが1つのシナリオを出しているわけですが、縮小していくかというのは難しいですが、その可能性について目配りをずっと続けていかないといけないということだと思います。

問)

サプライチェーンの関連で、G7のコミュニケーションがファーストステップということになるんでしょうか、G7が共通の政策ツールを採用すると、つまりフレンドショアリングのファーストステップということになるんでしょうか。もしこれがファーストステップということになるならば、共通のアプローチをグリーン補助金にもとるということでしょうか。つまり、1つの国の補助金がほかのフレンドリー国から投資を奪うということにも適用されるということでしょうか。
そして、輸出関連に関して、共通のG7のアプローチが今後出てくるということでしょうか。これまで合意されたこと以上に、ロシアに関しては合意がありますけれども、それ以上に出てくるということでしょうか。つまりアドホックで、これまで日本とアメリカの間で半導体に関して、あるいはオランダとの間で半導体に関して合意がありますけれども、それ以外のものにも今後つながっていくということでしょうか。

大臣)

今日の会議で付属書としてつけた「ハイレベル政策ガイダンス」でありますけれども、これはあくまで経済の強靱性と効率性の両立を長期的に実現するとの目的意識を持って策定されたものであります。したがいまして、何かグループごとにフレンドシップショアリングというようなことで、何か経済が分断をされるとか、そういうことにつながるようなことは全く考えていないわけでありまして、ルールに基づく開放的なグローバル経済システムを堅持するということもその中に明記をされているわけでありまして、開かれた枠組みということで、分断を招くというようなことは誰もが考えていないわけであります。今、いろいろ例をとられて、ほかの政策との中でご質問がございましたが、基本的にはそうした心配に当たるものではないと、そのように認識しています。

問)

鈴木大臣と植田総裁にお伺いします。
まず鈴木大臣ですけれども、明日夕方にスリランカの債権者会合の発足について発表されると思いますが、この会合の意義と、今回最大の債権国である中国が会合のメンバーに加わっていないようですけれども、中国の参加についてどのようにお考えなのか、また今回のG7でスリランカ問題についてどのような議論があったのか教えてください。
植田総裁にお伺いします。先程、消費者物価についてのご説明がありましたけれども、欧米がビハインド・ザ・カーブに陥った結果、足元のインフレとか金融不安を招いたという指摘があります。足元、先程ご紹介いただいたとおり、日本でも3%の物価の伸びが記録されて基調的な物価も上昇する中で、日本も金融引締めに遅れてビハインド・ザ・カーブに陥るというリスクをどの程度見ていらっしゃるのか、お聞かせください。

大臣)

まず明日、ご指摘のスリランカ債権国会合の立ち上げというものを発表させていただきたいと思います。これは我が国もそうでありますし、またインド、フランスも大変努力をされまして、1つのこういう枠組みができ上がったということであります。
中国との関係で言いますと、立ち上げて多くの関係する国に参加していただくということ、これが基本のことでありますので、もちろん中国にも入っていただければふさわしいわけであります。
いずれにしましても、「共通枠組」の外にありますこうした中進国であるスリランカの問題については、どこかの国がバイで交渉して、先んじて自分の利益を獲得するということになっては、これは不公平なわけでありますから、そういう同等性ということも1つの基本的な考え方でありますので、まずは債務のデータ、そういうものを共有する、透明性を持つ、そういうことが基本だと思っております。
まさにそういうようなことを基本にして、こうした会合の枠組みができたわけでありますので、明日これを発表して、債権国、多くの関係国にも入っていただきたいと、そういう意味での発表をさせていただく、そういう趣旨であります。

総裁)

インフレ率が2%を上回ってビハインド・ザ・カーブというふうにおっしゃいましたが、そういうことになるリスクをどう見ているかというご質問だったと思いますが、もちろん将来は不確実ですので、そういうことが絶対起こらないというふうに言い切れるとは思っておりません。ただ、現在の経済情勢を前提としますと、2%をインフレ率がずっと上回って、それが大きな問題を引き起こすというリスクと2%を下回ってしまって物価目標の達成が遠のいてしまう、それによるいろいろなコスト、両方を比較した場合にやはり後者の問題に焦点を当てた金融政策を行うのが適切であるというふうに、今のところ考えています。

問)

大臣と総裁にお伺いいたします。
大臣にまずお伺いいたします。再生可能エネルギーのサプライチェーンの強化についてお伺いいたします。こちら私が自分で国際エネルギー機関の資料などを調べたところ、やはり上流から下流に向かうに従って再生可能エネルギー関連では、もともと、例えば上流では希少な鉱物のマイニングなどは中低所得国がサプライチェーンのシェアを占めているけれども、下流に行くに従って中国のシェアが高まるというところがあります。実際、今回のサプライチェーンのサブガイダンスでどれほど中国を意識したものなのか、そのあたりのご解説をお願いしたいなというふうに思います。
それから、総裁にお伺いしたいんですけれども、今回金融政策の基本的な考え方をご説明されたということでした。総裁が今回金融政策の基本的な考え方を説明されたのは、ほかの中央銀行の、あるいはほかのG7の国々がどういうふうに日本を見ているからだというふうにお考えでしょうか。あと、今朝のぶら下がりの際に、ほかの中央銀行の首脳との連携を強化したいということをおっしゃいましたけれども、実際何か、例えばパウエルさんですとか、そうした出席された方々とどういう交流があったのか、そちらのご披露もお願いしたいなというふうに思います。

大臣)

私のほうからまずお答えしますが、経済安全保障を考えたときに、過度にサプライチェーンが1つの国に集中するということは必ずしも望ましくない、そのように思っております。これは新型コロナウイルスのパンデミックのときにまさに経験をしたことでありまして、改めて経済安全保障上の問題点というものが明らかになったわけであります。
それで、例えばクリーンエネルギーに不可欠な製品技術のサプライチェーンにおいて、どこに集中しているかといえば、これは中国というのは現実の姿でありますけれども、この「ハイレベル政策ガイダンス」というものについていえば、これは何か特定国を意識して、特定国に何か対抗というか、そういうことを意識してつくったというようなものではなくて、やはり純粋に経済安全保障の観点から、サプライチェーンが一国に集中をする、高度な集中があるということは望ましくないということでございます。現実はありますけれども、何かそういう国を、特定国を意識した上でのものではないというふうにご理解をいただきたいと思います。

総裁)

それでは私から。申し上げましたように、日本のインフレ動向及び関連して金融政策についてコメントしたわけですけれども、その意図ないし背景はどういうことだったのかという趣旨のご質問だったと思いますが、毎回そうだと思いますが、今回も出席されたG7の多くの国の代表が、自国のインフレ・経済動向及び自国の金融政策を含む経済政策動向についてご発言される予定、ないし、されていましたので、私からもインフレ動向及び金融政策についてお話ししたということでございます。
あえて申し上げれば、ほかの多くの国ではインフレ率は非常に高い、そして下がってきているにしても満足のいくところまではまだなかなか下がってこないというのが大きな問題意識だったわけですが、それと日本が大分違う状態にあるというコントラストが重要かと思いますので、日本からもお話ししたということでございます。
それに対する反応も含めて、ほかのG7の代表の人たちとどういう話を個別にしたのかというご質問が後半だったと思いますけれども、これは非常に多くのG7の参加国の首脳と個別に、あるいは立ち話的にお話しすることが昨日今日できました。ただ、どなたとどういうお話をしたかということについては申し上げられないことになっていますので、とりあえずそこでとめさせていただけたらと思います。

問)

鈴木大臣に伺います。クリーンエネルギーのサプライチェーンの強化ですけれども、EVとか太陽光パネルの普及拡大を急ごうと思ったらそんなに時間的な余裕もないと思うんですけれども、どのようなタイムスケジュール、時間軸でサプライチェーンを強化していこうと考えていらっしゃるのか、その辺の見解を伺いたいのと、あと先程ちょっと質問にも出たと思うんですけれども、対中国の半導体規制ですけれども、アメリカと日本、オランダなんかも言っていると思うんですけれども、この辺について今日議題になったかどうかというところをお願いします。

大臣)

まずクリーンエネルギーに関わるいろいろな製品等、あるいは半導体のサプライチェーンの問題ですが、いずれにしましても、財務省の直接的な所管ではないので、経済産業省を中心にいろいろ考えていると思います。したがいまして、初めのご質問のどういうようなスケジュール感といいますか、時間軸といいますか、そういうのを持っているかということは、私は十分承知をしていないわけでありまして、恐らく経産省の方はいろいろな考えがあると思いますが、私の承知をするところではありません。そして、後半の今日のG7の会合で半導体のサプライチェーンに関する何か議論が出たかということについては、今日はそういう議論は出ませんでした。

問)

伺いたかったのはサプライチェーン・ガイダンスの話です。今日、G7がまとめたものですけれども、その中で途上国に呼びかけると、そして途上国にも参加してもらうんだという話が書いてあります。特に重要鉱物、気候関連の物品に関するサプライチェーンに参加してもらうんだということですけれども、どの国に入ってもらう、入ってもらわないという適格性についてはどう判断なさるんでしょうか。そして、強靭でセキュリティの高いサプライチェーンについては、マーケット主導型の経済が重要ということですけれども、民主主義国家を見ていらっしゃるんでしょうか。参加国は何をベースに決められるんでしょうか。

大臣)

それはこれからになるんだと思いますが、よく我々が話をする中で出てくるのは、SDGsの考え、環境配慮、そういうものをしっかりしている低中所得国が、ご自身もより大きな役割を果たそうという、そういう意欲がある、そういう国々に対して支援をしていく、それが結果として我々にとってもサプライチェーンの多様化に資するということからメリットがあると、こういう考えであります。ですから今のご質問は、民主主義国とかそういうようなお話がございましたが、具体的にどういう国に対して今後支援をし、サプライチェーンの一翼を担ってもらうのかというのは、これは個別具体に判断をせざるを得ないんだと、そのように思います。今のところ何か明確な基準というものはないということであります。

(以上)

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