English新しいウィンドウで開きます

鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和5年4月13日(木曜)21時00分~21時51分)

【冒頭発言】

大臣)

皆さんこんばんは。昨晩から今日にかけまして、インド議長の下で2回目となるG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されました。今回の会議では、世界経済・金融市場の動向を議論したほか、債務問題をはじめ、2月のG20で合意した取組みの進捗状況を報告しました。また、スリランカの債務に関連したイベントを開催したほか、バイの面会を行いました。
私から2点申し上げます。
第1に、G20における世界経済の議論では、ロシアの侵略戦争によって世界経済が引き続き困難に直面していることを指摘し、ロシアを最も強い言葉で非難するとともに、一刻も早い侵略停止を求めました。これは私の発言です。
また、金融システムの安定について、ノンバンク・セクターや国境を越えた波及効果も含め、一層警戒感を持って注視することや、SNSによる情報の急速な拡散など、金融市場を取り巻く環境変化も踏まえ、金融システムのさらなる強化に向けた議論が必要であること等を私から指摘をしたところであります。
第2に、2月のG20で緊急性を共有した債務問題です。本日、私が、インドのシタラマン財務大臣、フランスのムーラン経済・財政省国庫総局長と共に、スリランカのウィクラマシンハ大統領兼財務大臣のオンライン参加とIMFのゲオルギエバ専務理事らの同席も得まして、スリランカの債権国会合の立ち上げ合意を発表いたしました。
スリランカが危機から脱却するには、広範な債権国間の協調が必要です。G20の「共通枠組」の対象ではない中所得国のスリランカで、新興国を含む債権国会合の立ち上げに至ったことは歴史的な快挙であります。会合の立ち上げ合意を受けて、私から、財務官に対し迅速に交渉を開始するよう指示をしたところであります。
昨日来、G7・G20やIMF・世銀の関連会議を通じて極めて有益な議論ができたと考えています。このほか、インド、ウクライナ、世界銀行とのバイ面会を行いました。インドとは、G20、G7の議長国としての連携を改めて確認しました。一連の会議の成果を踏まえ、5月に予定をされております新潟でのG7に向けて準備を加速させたいと思います。冒頭、私からの発言は以上です。

総裁)

私から若干申し上げますと、世界経済等に関するセッションでは、世界的な食料・エネルギー不安の影響、それから最近の一部の金融機関を巡る動きなどを踏まえて、世界経済の見通しとリスク要因などについて議論がなされました。私からは、日本の物価動向や日本銀行の政策対応等について説明いたしました。
次に、金融セクター等に関するセッションでは、暗号資産の金融システムに対する影響等について議論がなされました。私からは、引き続きFSBにおける作業をしっかりと進めていくことが重要というふうに申し上げました。

【質疑応答】

問)

鈴木大臣と植田総裁にそれぞれ質問ですが、鈴木大臣には、今日、G20では議長国声明やコミュニケ等を発出されなかったんですけれども、議論の詳細についてはお話になれないかもしれないんですが、なぜ議長総括すら発出できなかったのか、そのあたりお話になれる範囲でお願いいたします。
植田総裁には、世界経済についてIMFは、やはり金融システム不安がリセッションにつながりかねないとかなり強いトーンで警戒感を出しました。そうした世界経済を巡るリスクを踏まえて、日本経済、回復のシナリオは維持できるのか、賃金ようやく上がってきたところに悪影響を及ぼしかねない可能性もあると思うんですが、そのあたりについてお考えをお聞かせください。

大臣)

今回のG20では成果文書が出なかったわけでありますけれども、成果文書を出すかどうかということは、一義的には議長国のインドの判断だと、そのように思っております。
つい2か月前にG20を開いたばかりでもありますし、その2月のG20で合意した取組みの進捗状況を確認するということが主な目的であって、議長国のインドも、もともと共同声明の発出を予定していなかったということを聞いております。

総裁)

IMFの見通しでも、金融システムの問題がかなり厳しくなって世界経済が大幅に減速ないし不調になるというようなリスク・シナリオとして捉えられているんだと思います。
その上で、日本経済にとってはということであれば、日本銀行としても、世界経済がある程度減速するということは念頭に置いて見通しを立てていますけれども、厳しい不況になるというところまでがベースラインの見通しではない、むしろある程度下がっていった後、インフレ率が落ち着くとともに、また世界経済も回復していくであろうというあたりをベースの見通しに置いておりまして、そのもとでは、賃金も引き続き上がっていく可能性があるというようなふうに考えております。

問)

大臣にお伺いします。先程、2月の時点で議長総括があるとおっしゃったんですけれども、今、植田総裁も言及されたとおり、その後3月に金融不安というのが起こっていまして、それに対してのリスクというのがIMFでも分析されたわけです。その中で経済危機に対して立ち上がるための組織であるG20が何も言及をしない、姿勢を示さないということに関して、大臣としてはどのようにお考えなのかというのが1点と、他国のことなんですけれども、議長国として総括を出さなかった背景というのはどのようにお考えになるんでしょうか。

大臣)

事実として、今回、成果文書が出なかったわけですけれども、インドはもともと共同声明を発出するつもりはなかったという話でありますけれども、これについてはインドの考えですから、私が十分相談を受けたわけでもございませんし、分からないということでございます。ただ、議長国という役目は大きいわけですから、メンバーとしては、議長国の判断にお任せをするということであります。
ただ、G20、G7もそうかもしれませんけれども、成果文書を出すということが目的ではないのでありまして、やっぱり重要なのは、関係者が一堂に会して十分な、有意義な議論をするということがそもそも求められていることであります。
したがいまして、今回の3月に起こった一連の金融危機等についても十分な議論が行われて、今回の会合の意義というのは、そうした新たな問題についてのアップデートも含めて有意義に行われたと、私はそのように理解しております。

問)

大臣にお伺いします。今日発表されたスリランカの債権国会合の関係なんですけれども、中国に対しても呼びかけが行われたというふうに伺ったんですが、その後、中国から何か反応があったのかということと、また今後も中国が仮に参加をしない状態が続いた場合に、スリランカの債務の再編に向けてどのような障害が起こり得るのかということについてお伺いしたいと思います。
もう1点は、今回G20の共同声明がまた出されなかったというところで、ロシアのウクライナ侵攻以降、共同声明が出せない状態がずっと続いていると思うんですけれども、改めてG20が結束して経済の問題についてメッセージを発するという、その機能が今どういう状態にあるというふうにご認識されていますでしょうか、お伺いします。

大臣)

まず1問目ですけれども、先程冒頭で発言をさせていただきましたけれども、日本は、スリランカから債務再編のプロセスを主導してほしいと、そういう要請を受けていたところでございまして、そうしたことを踏まえまして、フランス、インドと共に立ち上げたところでございます。
それで冒頭の発言でもさせていただきましたけれども、やはりスリランカが債務の問題で危機に陥っているわけでありますけれども、そこから脱却するためにはパリクラブ及び非パリクラブの多くの債権国が集まって、透明かつ公平に債務再編を協議すること、これが必要であるわけであります。そういうことから、全ての債権国に会合への参加の呼びかけをしているところでありまして、もちろんその中には中国も含まれているわけでありまして、中国もこれに参加をして、建設的に協議に臨むことを現時点では期待をしているということでございます。
中国が入らなければ、どういったような障害があるのかということでありますが、やはり大きな債権国でありますので、ぜひ参加をしていただいて、それで同等性の立場で、しかもいろいろな債権債務データを透明化して協議をして決めていくということ、これが本当にあるべき姿だと思いますので、現時点では、今日立ち上げの合意を発表したばかりですから、ほかの国についてもそうでありますけれども、中国からはまだ参加表明はないわけでありますが、ぜひ参加して協議に加わってほしいと、そう思っています。
2問目は先程お答えしたとおりです。成果文書が発表されなかったからG20が何か機能不全に陥っているというような議論がございますけれども、先程申し上げたとおり、成果文書を発出するということ自体が目的ではなくて、やはり関係国がG7のメンバー、招待される国もあるわけで、そういう国々が一堂に集まって現下の様々な困難を含む課題について、有意義に議論をするということ、それが大切なことでありますので、そういう意味ではG20の存在意義はありますし、決してそういう意味において機能不全に陥っているとは考えていません。

問)

植田総裁にお聞きします。一連の会合の前に、今回の会合では、海外の中銀のトップとの関係づくりの第一歩としたいということをおっしゃっておりました。昨今、ロシアの問題ですとか、米銀の破綻など、中銀同士の連携、非常に求められるケース多いかと思うんですけれども、今回の会合を振り返って、各国との連携どのような形でできたのか、関係づくりに当たり手応えがあったのか、お伺いします。
また、初めての国際会議を終えまして、今月はいよいよ初めての決定会合にも臨むことになると思います。どのように臨んでいくのか、そのあたりもお願いします。

総裁)

前半ですけれども、大臣もおっしゃいましたように、G7もそうでしたが、G20でも参加者が非常に率直かつ有益な議論をしていたというのが私の印象でございます。そのベースに参加者の間の個人的な信頼みたいなものがあって、それがゆえに、様々な議論が有益に行われている、素直に行われているということを感じました。
したがって、ここで上手く私としても動くためには、そういう信頼の輪の中に入っていかないといけないということを感じたわけです。ですので、全体の議論に出ているだけでなくて、それぞれの参加者と、バイであったり数人であったり、立ち話も含めて、個人的な関係を強く築いていく第一歩にできればという気持ちで何日か過ごしましたし、ある程度の成果は得られたというふうに思っております。
4月のMPMについては、まだ就任して1週間にもなっておりませんので、出張中ですし、帰りましてからゆっくり考えて臨みたいと思っております。

問)

大臣と総裁に手短にお伺いいたします。大臣には、まず債務の方なんですけれども、スリランカに限らず、ほかの国の債務問題にどのように当たっていくか、それをしっかり回していくことが日本にとってどのような国益になるのかという、そこのあたりをお話しいただきたいなというふうに思います。あと、ウクライナについての議論、今日はどのように行われたのかというのも教えていただければと思います。
総裁にお伺いしたいのは、金融政策について、今回G20の中ではどのように説明されたのか、教えていただければと思います。

大臣)

債務問題は本当に待ったなしの問題だと思っておりまして、ここに来てかなり、G20、G7もそうでありますけれども、国際機関に債務問題の重要性というのがぐっと高まっていると思います。
そういう中で低所得国については、G20のコモンフレーム、「共通枠組」というものがあって、例えば、動いたのはチャドとかありますけれども、そのほかにもそうした数か国において、ザンビアもそうですけれども、まさに動き出そうとしている、そういう枠組みがあります。一方で、スリランカというのは中等国でありまして、「共通枠組」の外側にある国であって、今までそうしたこういう枠組みで進めようというのが何もなかった状況にありました。
そういう中で今回スリランカについての債権国会合というのが立ち上がるわけでありまして、これが1つのモデルになるんだと期待をしているところであります。私としては、やはり1つでも2つでも早く成功例を出していくということが、ほかの国々の事情は微妙に違うわけですから、それぞれ各国で債務問題を解決する1つの力になっていくんだと、そのように思います。
何が国益にかかるかということですけれども、グローバル経済、本当に世界一体の部分がありますから、やはり南の国がそうした債務問題等で破綻してしまうということになれば、これは大変様々な面で影響を全世界に及ぼすことは間違いないことであると、そのように思います。そうしたような混乱の芽をつむためにも、この際日本でもしっかりやっていくと、それが日本の国益にもなる、世界の利益にもなる、こういう判断でございます。
ウクライナについては、私からはウクライナの支援に対する揺るぎない日本の立場、しっかりとこれからもやっていきますということを表明して、それから50億ドルの世銀に対する拠出について、先週、国会で法律改正も通ったわけでございますし、これから復旧・復興ということになりますと、民間資金を投入するということも重要でありますので、同じく法律改正をして、日本のJBICがそうしたウクライナの復旧に関わる会社に、これをしっかりと保証、裏支えをするということを可能にするという法改正もいたしました。そういったような日本の貢献をお話ししました。世界銀行からもそういう点については高く評価をされましたし、また、ほかの国からも日本のそうした貢献に対する評価というものがあったということです。

総裁)

金融政策についてどういう説明をしたのかというご質問だったと思いますが、基本的には次のような説明をいたしました。現状は、消費者物価指数のインフレ率が、除く生鮮で見て3%程度であるわけですけれども、今年度の後半に向けて2%以下に下がる見通しであると。下がっていく理由としては、輸入物価のインフレ率が落ち着いていくことが大きいわけですけれども、その見通しを前提としますと、2%のインフレ目標を持続的・安定的に達成するためには、現在の金融緩和を維持するという姿勢であるというふうに説明いたしました。

問)

昨日のG7で出されましたサプライチェーンに関する論文文書に関しては、今回のG20ではどのような話があったのでしょうか。もう1点、金融システムの安定に関しましては、昨日のG7でも話し合われたと思うんですけれども、それと比べてどの程度踏み込んだ議論がされたのかというのをお願いします。

大臣)

サプライチェーンについては特に全体の話の中で触れられたかな、触れられないかなというような程度で、昨日みたいにきちっと1つの論点として議論されたことはありませんでした。

総裁)

G7に比べて、特に目新しい、あるいは突っ込んでということはなかったように思っております。

問)

鈴木大臣にお伺いします。1点目は、今の質問にも関連するんですけれども、先程、金融システムの安定の面で、SNS時代の急速な拡散などの環境変化も踏まえて、システム強化に向けた議論が必要とご指摘されたということだったと思うんですけれども、これに対して、参加国のメンバーからどういった指摘があったのか、どういった金融システム安定に向けた議論があったのか、もうちょっと詳しくお聞かせください。2点目は、今日発足されたスリランカの債権国会議の件なんですけれども、2月にインドがグローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブルを立ち上げたと思うんですけれども、そことの違いというのは具体的にどういうことを想定していらっしゃるのか教えてください。

大臣)

1問目は私から答えますが、2問目は、この後財務官から答えます。1問目については、今日はまさにどうしてそういう、シリコンバレーバンクをはじめ、シグネチャーバンクもそうですし、クレディ・スイスもそうですけれども、いずれにしても、どういう状況でこういう事態に至ったのかというような分析的な話があったという中で出てきたものでありまして、1つはやはりSNSが発達して、こういう信用不安というのが瞬く間に広がるということ、そのスピードの速さ、それから取り付けについても昔は営業時間しか引き出せないわけですね、銀行の前に列になって。ところが今やネットバンキングで24時間、場所・時間を限らず一斉に引き出すという、そういうようなスピードが出てきた、これが変化で、それに対応しなくちゃいけないということでありました。ただ、評価するには、そういうスピードにも負けず、各国の当局がしっかりと流動性の確保等について手を打ったと、むしろそういったような大変厳しい環境が生まれてきたわけでありますけれども、そういうものにしっかり手を打てたという、そういう評価の面もありました。
いずれにしても、そういうことが現実に起こったわけですから、今後、具体的にどうということは、答えはないんですけれども、十分に対応を考えてやらなければいけないんじゃないかと思います。

問)

大臣にお伺いいたします。スリランカの関係で、今回決まった債権国会合なんですが、歴史的であるとか画期的であるというふうに先程のイベントでもいろいろな方から発言がありました。大臣に改めまして、この債権国会議がどう画期的なのかというのを一言いただきたいのと、もう1つは最近特に報道されておりますが、債務の問題で債務超過などに陥る可能性が高い61か国の債務8,120億ドルについて、そのうちの70兆円に当たるような金額について減免が必要だというふうに指摘するアメリカの大学の研究なんかもあったりして、実際に債務再編というのを進めようとすると、事実上の棒引きみたいな、借金をまけてあげるというか、そういうような厳しい議論も必要になってくるんだと思うんですが、借り手側のモラルハザードの問題であるとか、そういった面、減免の議論がスリランカでも今後必要になるのかなどについて教えてください。

大臣)

画期的と申し上げましたのは、やはり先程の繰り返しになってしまいますけれども、低所得国においては1つの枠組みがあったわけでありますけれども、中所得国、スリランカなんかはそうなわけですけれども、そこには債務再編に対する何の枠組みもなかったわけです。そういうものを今後しっかりとつくっていく、1つの形をこれからつくっていくということで、これが中進国の債務の問題を解決する1つの枠組みになっていくと思うんです。したがって、そういう意味を含めて歴史的と、こういう言葉を使わせていただいたということです。
それから、モラルハザードになるんじゃないかということでありますけれども、いずれにしても、債務再編というのは債権国が集まって、そしてデータを透明性をもって、そして関係国が同等性、国じゃなくて民間セクターになると思うんですが、同等性をもって、その中でこれで行こうということでありますから、ある程度債務再編ということは、少し債務を諦めるといいますか、そうしなければまとめられないんだと、こういうふうに基本的には思います。しかし、そういうことは関係者、関係国の納得の中で行っていく、また債務国だって納得しなければならないわけですから、そういうことの中でしっかりと協議をする、透明性をもって協議をするという中で結論を得ていくということであって、必ずしもモラルハザード、アメリカの学者の方がそう言っていることが、債務国がはなから何かこれだけしか弁済しませんというふうにならないように、関係方面みんなが納得するという形で透明性をもって議論していくということだと思います。ですから、必ずしもそういうようなご意見があったとしても、それが直ちに何かモラルハザードにつながるということにはならないんじゃないかなと、そのように感じます。

問)

総裁にお伺いしたいんですけれども、先程の総括の話にまた戻ってしまうんですけれども、大臣が総括で文書を取りまとめることが目的じゃないとおっしゃったんですけれども、金融不安に対しては一定程度鎮静化するためのメッセージというのも必要ではないかと思います。流動性の供給等はされていますけれども、今、流動性を供給した上でもまだ不安が残っているということに対して、それを鎮静化するためのメッセージが必要ではないかとも考えるんですけれども、G20がメッセージを打ち出さないことについて、市場に対する影響というものを、総裁、どのようにお考えになりますでしょうか。

総裁)

現在、一旦荒れた市場が沈静化しているという状態であるという認識は皆さん持たれていたと思います。その中で、先程大臣からもお話があったように、SNS等による情報拡散の問題とか、あるいはバーゼル3が完全にインプリメントされていたのかどうか、そういうことは少し時間をかけて検証して、次の動きを考えていこうという段階にあるというふうに私は感じました。

財務官)

先ほどの大臣の説明に加えて、補足説明します。まず、今回皆さんにもご苦労があったと思うんですけれども、通常の世銀IMFの春会合で、毎回のようにあるのはG7、G20、IMFC、開発委員会などですが、非常にサイドイベントが増えてきていまして、今回のMDBsエボリューション、最貧国支援、それからさっきご下問があったグローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブルやスリランカ債権国のイベント、ウクライナ支援のラウンドテーブル、他にもいろんなものがあって、さらに無数のバイですね。先程、植田総裁もおっしゃっていましたけれども、コリドートークを含めたら何十、どんどん密度が高くなっているのが私の率直な印象で、先程からずっとコミュニケが出ていないんじゃないかというのはあるんですが、私が長年やってきた実感からすると、非常に本当に有意義で、少なからず成果があっただけじゃなくて、対面でみんなで一堂に会して議論して、いろんなアジェンダが進んでいっているという実感があります。
繰り返しご質問があったので、正直、成果文書といえば一つ分かりやすい文字どおり成果ではあるんですけれども、私どもはそれだけを目指してやっているわけではなくて、日常的にやっている、先程から質問が何度も出ている金融の問題なんていうのは、正直言うと、表にはできませんけれども、我々本当に大事なときには、もう毎晩のようにビデコン、テレコン、バイでもマルチでもやっているんですね。むしろそっちの方が大事だと思っています。
その結果として、通常FEDを中心に主要国が金利を急速に引上げた場合には、過去には金融危機が起こっており、ご存じのとおり、リーマンショックからアジア金融危機から、いろんなことが起きていますけれども、今回いろんなことがあって、1つは先程から話にある金融規制、2008年以後のものが機能していること、それからいろんなセーフティーネットができていて、それが一種の安心感につながっている、IMFだけじゃなくてASEAN+3、チェンマイの枠組みも即機動性が高まっていて、それがバックストップになっていること。何よりも今、申し上げたような非常に分厚い、親密な当局同士の連携がある、それを踏まえて、例えば今回一部のエマージング、過去であれば、これだけ金利が急に上がったら債務問題だけじゃなくて、大きな資本流出が起こって、大混乱になってきましたが、それが今回止まっているのは適切な金利の引上げを、一部を中心にやったということもあると思います。特にブラジルとか。
1つちょっと誤解がないように私の方から申し上げようと思ったのは、どちらかというとステートメントが出る方が少ないんです、G7もG20も。これはちょっと誤解があるといけないので、あえて申し上げます。その理由というのはいくつかあるんですけれども、1つは正直言って、成果文書を出すってものすごい大変なんです。もう毎晩徹夜です。私というより、私も時々そうなりますけど、私の仲間たちがもう毎日毎日やらなきゃいけなくて、そんなにしょっちゅうできるものじゃないというのと、それから成果文書だったら何か、インプレッシブに新しい成果がなければできないですよね。ところが、やっぱり数カ月しかないと、まだ新しい弾込めをやっていたり、あるいは今回で言うと、新潟があって広島があります。そうすると、そこに向けて最後の調整をしているような段階のものも多いわけでありまして、むしろ我々の方もG7でこの4月に出したことというのは極めて異例です。4月の春会合に合わせて、G7声明を出した、去年は特別ウクライナ、2月24日にプーチンが侵略したこともあって、そこで出していますけれども、それ以前は本当に、少なくとも過去10年春会合で出したことは一度もないと思います。
G20の方でも、私が知る限り2017年以降は、むしろ出さない方が普通です。春会合で出さなかった2017、2018、それから日本がやった2019、2022と出していません。2020と2021の春はちょうどコロナがすごかったので、オンライン会合してちゃんと対応していますよというメッセージが必要でステートメントを出しているんですけれども、それも除くと2017年以降は、春会合では出していないんです。だから、今回は別に、例えば一部の記者さんがおっしゃったように、ロシアが問題だから出さなかったというよりは、もともとインドは今回はちょっと見送って、7月のガンディーナガルに向けて成果文書の取りまとめを集中していこうという意図があったのかもしれませんけれども、これは議長国が決めることですし、大臣おっしゃったように、私たちは何で出さなかったのまで聞いていないんですね。申し上げたのは、背景としては、そんなに驚くことでもないのかなと。むしろG7の方で我々が出した方が、本当は異例の努力だと言ってもいいかもしれません。
あと、直接ご質問があったので、それはちゃんと答えないとアンフェアだと思ったので、大臣に代わってお答えしますけれども、グローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブルとスリランカの関係なんですけど、ラウンドテーブルは、まず、インドというよりは、先程、IMF、世銀、G20議長のインドが協働して始めて、恐らく意図としては本音ではなかなか協力してくれていない国をインボルブすることができたらなということもあったんだと思うんですけど、基本的に債権国会合の一番の違いは、債権国会合というのは、本当にどうやって債務再編するか決めていく場なんですね。もちろん、その一回一回は情報交換とかして交渉していくんですけど、目的は最後債務の再編を決める、あるいはモラトリアムを決めるということなんですけども、ラウンドテーブルの方は何か決めるというよりは、どちらかというと、みんなで集まって、集まるところの肝は、これまであまり入ってこなかった債権国ではない債務者側が一緒にいて、また民間の代表の方々も何人かいて、関係者がみんなそろって、腹を割って、胸襟を開いて、どうしたら債務問題の克服ができるのであろうかと。一番やろうとしていることは、どちらかというと情報の共有だと思います。既に今日一部発表があったと聞いていますけれども、例えばデット・サステナビリティ・アナリシス(DSA)ですね。債務の持続可能性の分析というのを国際機関が出しているんですが、これが出てくるのが遅いものだから、債務再編交渉が始められないということが言われていて、それに対して、なるべく早くDSAを共有できるようにすると。そのためのスタッフもガイダンスを出せないかというようなことを決めたり、どちらかというと、いろんな債務問題に共通する問題をみんなで議論して、解きほぐしていく。しかし何か決めるということではなくて、何かまず認識を共有するということと、それから今申し上げた、どちらかというと触媒的なことをやっていくというのが中心になるのかもしれません。ただ、これが発展して新しい最後のレベルをつくることになる可能性もゼロではありませんけれども、今のところはそうではないと思います。
さらに申し上げると、昔は債権者というと、基本的には日本とかヨーロッパとか、そういった先進国で、それを決める場は先進国の債権者が集まるパリクラブだったわけですね。ところが時間がたつのにつれて、例えば二国間の債権者でも圧倒的に中国がプレゼンスを出していく。それから民間の債権者も列をなしていて、パリクラブだけではなかなか決めにくくなって来ている中で、最貧国向けで初めてそういった新しいエマージング・ドナーというのを取り込んだ枠組みとして設けたのが、我々も頑張りましたけど、G20の下でつくられたコモンフレームワークなわけです。コモンフレームワークは最貧国しか相手になっていないので、今回大臣からも申し上げましたように、中進国のリスクに対応する枠組みがない中で、日本が主導して初めて、そういったところを対象にすることを始める。もちろん中進国になれば、もっと複雑だし大きな債務ですので、恐らく国によってケース・バイ・ケースのアプローチになるんだと思いますけれども。つまり、例えばどういう国が共同議長をやるかとか、それは国によって変わってくるんだと思いますけれども、ただこのモデルケースが成功すれば、文字どおり画期的なことで、一番抜け落ちている部分というものを救うことができるということで、これから、本当にこれからなんです。立ち上げることが決まっただけなので、なるべく早く第1回を開いてやっていこうということであります。
それから、債務のヘアカットの話が出ました。大臣のおっしゃったとおりなんですけど、1つだけ補足しますと、もちろんモラルハザードということは我々も強く認識していますし、また借金が貯まっているのは、もちろんパンデミックで、いろんな財政が苦しくなったのもあれば、ロシアの不法で不当な戦争の結果、エネルギー価格、食料価格が上昇して、それがやはり国家財政に悪影響を及ぼした部分があるから、かわいそうなところもあるんですけど、他方で放漫財政によって、あるいはもっと言えば腐敗によって、無駄な債務が積み上がってくるのがあるわけで、それを放ったらかしたまま債務を再編したって、また同じことが起こりますよね。従って、当然我々の方も債権者として改革を求めます。通常はIMFプログラムがなければ動きません。実際、今回その前段階でスリランカのIMFプログラムを入れる、IMFプログラムをこしらえる、そのプロセスで既にいろんな議論をしておりますし、今後そのプログラムができるようなプロセスで、しっかりとリフォームをやってもらうことになるわけです。
またもう一つ申し上げると、国の債務状況によるんですけど、ものによってはモラトリアムだけで、一時的な債務状況の悪化であれば、少し待ってあげれば何とか泳げる国もあるでしょうし、あるいは名目では切らずに、ネットプレゼントバリューベースだけで何とかもつような場合は債権者の負担感が少ないわけですけれども、そういった場合もある一方で、いわゆるヘアカットまでやらなければどうにもならない重症な国もある。それを救うときも、減免とそれから国際機関、MDBsのニューマネー等、それから、あるいはグラントで助ける国もあるでしょうし、そういうものの組合せの中で、まさに債権国とそれから債務国、関係の国際機関、みんなで議論しながらパッケージでやっていくことが事実ですので、債務削減のオール・オア・ナッシング、債務削減のときは、もう単に譲許してやるという話でだけは全くないようなのが、通常の議論の在り方だと思います。
長くなりましたけど、私からの返答は以上でございます。

問)

先程、できるだけ早く第1回目をということでしたが、そこをもう少し具体的なアイデアをお持ちなのか。それとあと、いつまでにというのがあるのかどうか、アイデアでも結構ですので、イメージを教えていただけたらと思います。

財務官)

それはもうもちろん、始めるのも、それから、おさめるのもできるだけ早くですけれども、フィージビリティーがあって、準備の方は随分前からしているんですけれども、物理的に集まれるかというのが、いつも一番の問題なんですね。今回はポリティカルモメンタムを維持するためにも、第1回は我々、バイスミニスターレベルでやることになっているので、最低でもインドのセトゥー次官と、それから今日出ていたフランスのエマニュエル・モーリン、フランス・トレゾールのヘッドですね、ディレクター・ジェネラルとかが集まれる日をまず探すことが最大の問題で、私自身も今回はこれがありますけど、大体月二、三回海外出張していて、海外出張中でもオンライン参加ができないことはないんですけれども、めちゃめちゃになっちゃって、5月だとご存じのとおりASEAN+3、ADB総会もありますし、その後、皆さんに関係するんだったら、新潟、広島もあってというので、当然ほかの人たちもすごく忙しいので、まず日程調整ですね。2極だったらいいんですけど、3極になると、つまりアメリカ大陸も入ってくるとなると、結局日本は必ず夜で、時間帯も限られてくるから、さらに調整が難しい。逆に言うと、調整がつき次第その日でやります。おさまるかというのは、それはもうみんなで努力しますけれども、当然これもほかにもたくさん仕事あるし、債務も当然コモンフレームワークの問題を取っても、まず引き続きザンビア、エチオピアとかガーナがやらなきゃいけないし、だから、今ウォッチしなきゃいけない国がありますし、続いている問題を抱えている国もあるので容易ではないんですけれども、やはりこういうのはモメンタムが必要なので、できるだけ早く処理してあげたいということと、長ければ長くなるほど、やはり相手国の最もバルナラブルな人たちが苦しむわけですから、どうせ解決するんだったら早ければ早い方がいいに決まっているという姿勢で頑張っていくつもりでございます。

問)

スリランカの債務問題で、中国の参加が肝になると思うんですけれども、もちろん今日打ち上げたばかりなので、他の国も含めて参加表明する国はまだだと思うんですが、実際のところ中国が参加してくれる見込みがどれぐらいありそうなのか、既にある程度そういう公算があるから立ち上げたのか。お話になれる範囲でお答えをお願いします。

財務官)

ようやく債権国会合ができるようになったのがつい最近、つい最近というか、もう本当に直前みたいなものなので、当然第1回債権国会合を含めて、中国を含めて全ての2国間公的債権者に招待状を出します。全ての2国間債権者に招待状を出しますので、大臣からもありましたように、参加していただくことを強く期待していますけれども、だからといって、もうこれ以上遅らせることはできないので、とにかく参加してくれた国々で議論を始めていこうということであります。
中国の方も、もちろん以前からいろいろ、非協力的だと言われていたりするところはあるんですけども、彼らからするといろんな支障というか難しさであるものの1つが、公的機関といっても幾つかあって、そこに対して全体を取りまとめた意思決定をする仕組みがまだあまりないんですね。それを分かりやすく言えば、彼らにとって初めてのことなんですね。要するに、急に大きな債権者になっちゃって、これまで実は、そういったマルチの債務削減交渉に参加した経験が恐らく一度もないんだと思うんですね。従って、ラーニングプロセスとして、デット・ラウンドテーブルとか、あるいは、パリクラブでオブザーバーで参加していただいていることとかはいいんですけれども、ただ、出てきているのは、過去ならば限られていたりすることもあって、ただ、いずれにしても、我々は全ての債権者が参加して、コンパラブルに平等に処理していく、なるべく債権国の間では透明にやっていくという原則を守りたいので、本当に来てほしいなと思っております。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る