English新しいウィンドウで開きます

鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和5年7月18日(火曜)18時51分~19時11分)

【冒頭発言】

大臣)

皆さんこんばんは。会議の運営が今日ずっと後ろ倒しになっておりまして、その関係もありまして、お待たせをして申し訳ないと思っております。
インド議長下での3回目のG20について、会議の主な成果をご報告いたします。
まず、ロシアによる侵略戦争が長期化する中で、日本を含め多くの国がウクライナとの連携を改めて表明するとともに、ロシアを最も強い言葉で非難しました。今回の会議の成果文書でも戦争が世界経済に悪影響を与えていることや、ほとんどの国がロシアを非難していることなどが盛り込まれる予定であります。ロシア・中国がこうした文言を盛り込むことに反対したため、成果文書及び議長総括として公表する予定でありますが、それ以外の部分はG20全体の合意であり、幅広い課題について成果が盛り込まれております。
世界経済については、引き続き、下方リスクが大きいとの認識が共有されました。こうした中で財政の持続可能性を維持しつつ、脆弱層への一時的で的を絞った支援を優先すること、金融政策について物価安定に引き続きコミットするとともに、国際的な負のスピルオーバーの抑制に資するよう、政策スタンスを明確に伝達することなどの重要性を確認しました。また、為替についてのコミットメント、これも再確認いたしました。
脆弱国支援についても多岐にわたって議論しました。低所得国・中所得国の債務問題については、ザンビア、ガーナ、スリランカの最近の進展を歓迎し、債務措置の迅速な解決に対する期待を表明しました。
MDBs改革では支援余力拡大に向け、既存資金の効率的な活用のさらなる促進などに合意しました。
SDRチャネリングでは、日本が発表済みの40%のコミットメントをはじめとする各国の努力を通じて、1,000億ドルの野心が達成されました。
国際課税については、BEPS包摂的枠組みが第1の柱の多国間条約の条文を取りまとめたことが歓迎されました。私からはG20諸国が率先して制度の実施に向けて取り組むべきことを強調いたしました。
金融安定の分野では、FSBなどによる最近の銀行部門における混乱からの教訓の棚卸しに関する作業を歓迎し、さらなる進展を求めました。また、暗号資産及びステーブルコインの規制・監督に関するFSBのハイレベル勧告やG20・OECDコーポレートガバナンス原則の改訂版が承認されました。
このほか、IMFのゲオルギエバ専務理事、世界銀行のバンガ総裁、カナダのフリーランド大臣、オーストラリアのチャーマーズ大臣とバイ面会を実施いたしました。
16日のG7から始まり、G20やバイ会談を通じ、極めて有益な議論ができたと考えています。

総裁)

今の鈴木大臣のお話に2点だけ付け加えさせていただきます。
1点目は、まず世界経済に関するセッションですが、世界的な金融環境のタイト化や根強いインフレ圧力を踏まえた経済見通し、あるいはリスク要因などについて議論されました。また、世界的な食料・エネルギー不安、気候変動問題への対応がマクロ経済に与える影響についても議論がありました。私からは、日本の物価動向や日本銀行の政策対応について説明しました。
また、金融セクターに関するセッションですが、今、大臣からもお話がありましたが、暗号資産の金融システムに対する影響等について議論がなされました。私からは、引き続き、これも大臣からお話がありましたが、FSB等における作業をしっかりと進めていくことが重要とお話ししました。

【質疑応答】

問)

鈴木財務大臣にお伺いいたします。今回も債務問題など難しいテーマがある中で、日本は従来から債務再編については透明性の向上とか主張してきましたが、今回のG20でいろいろな国が債務危機に陥っている中で、この取組を一層進める上での進展というのは見られたのでしょうか。まずこちらをお伺います。
それと、また今回ウクライナをめぐる問題での対立が続いた形ですけども、期間中にはウクライナの農産物の輸出の履行が停止になったりとか、世界経済への影響がまだまだ長期化する様相です。これの対応策について、今後G20が果たすべき役割というのはどのようなものになるのか、お考えをお聞かせください。

大臣)

まず債務問題についてですけれども、会議では共通枠組におけるザンビア、ガーナの最近の進展について歓迎をいたしました。あわせて債務措置の迅速な解決に対する期待を表明いたしました。
また、中所得国で共通枠組の対象外でありますスリランカにつきましては、日本が共同議長を務める債権国会合が立ち上がったわけでありまして、それを歓迎するとともに、可能な限り早期の解決を期待する旨、それがこの成果文書にも明記される方向でございます。
さらに今ご指摘があったわけでありますが、日本が重要性を指摘してきたこと、それは債権国による国際金融機関に対する債権データ共有のことでありますが、これに関する取組を含めまして、債務データの透明性の向上に向けた取組も成果文書に盛り込まれます。
これらの点について、全てのG20のメンバーで合意が得られ、一定の成果が得られたと考えております。
それからロシアの食料の輸出に関する合意が破棄をされたということについては、数カ国からそれに対する強い非難がございましたが、そのこと自体に対する議論というものはなかったと思っております。したがいまして、G20としてどのように対応していくかということは、これからということだろうと思います。今回の会合では特にどう対応するかということには言及がなされなかったということです。

問)

鈴木大臣にお伺いいたします。パンデミックへの対応の資金支援のことでお伺いいたします。今回、パンデミック対応ということで、予防・備え対応ということで議論の進展があったかと思いますけれども、今後8月に保健大臣との合同会議をやる、9月にはサミットがありますけれども、これに向けて議論をどのように進めていきたいとお考えでしょうか。

大臣)

ご指摘のように国際保健も議論になりました。1つのアジェンダでありました。ここでは、財務・保健の連携強化を通じて、パンデミックへの予防・備え、対応の強化を進めること、これが確認をされました。
特にパンデミック発生時の対応につきましては、迅速かつ効率的に必要な資金を供給するため、ファイナンスメカニズムをどのように最適化し、よりよく調整し、必要に応じ適切に強化していくべきかを検討することに合意をいたしました。
ご指摘のとおり、8月に財務・保健大臣合同会合がございますので、それに向けて議論を深めていきたいと思っております。

問)

大臣に2問お伺いしたいと思っております。冒頭ご説明がありましたように、今回、改めてウクライナの関係で、ロシアと中国の反対によって議長総括にとどまったということですけれども、9月にはサミットが開かれるというこのタイミングで、引き続きこういった形にとどまったとの受け止めと、あと中国・ロシアに対してどういう働きかけをされたのか、ご紹介できる範囲でお願いします。
あと、国際課税についても議論があって、歓迎されたということですけれども、BEPSの第1の柱については、カナダですとかロシアとか、G7・G20にも入っていない国もいるかと思いますけれども、そこのあたりに関してはどういった議論がされて、どういう働きかけをされたのか、お願いいたします。

大臣)

まず、冒頭で私の方から発言をさせていただきましたけれども、多くの国が、日本ももちろんそうでありますけれども、ロシアのウクライナ侵略、これを最も強い言葉で非難をする、そしてウクライナとの連帯を改めて表明をしたということでございます。
この問題、侵攻が始まってから、G20では大変にこの問題が1つの大きなアンカーになっていると、そのように思いまして、その後なかなか議長総括どまりに終わるというような格好になっていることは事実であります。ただ、今申し上げましたとおり、多くの国の認識は、これは私の考えですけれども、やはり今の世界経済に与える様々な悪影響、その元凶はロシアのウクライナ侵略にあるんだという、そういう思いは多くの国が持っていたのではないかなと、そのように思います。ロシア・中国は、そうしたことに対しては違う立場でありますし、また、それに関わりの深い国々はそういう立場かもしれませんけれども、いずれにいたしましても、この問題についてはなかなか難しい、G20においては大きな課題に引き続きなっているという認識であります。
そして、国際課税でありますけれども、今回のG20では、BEPS包摂的枠組みが第1の柱の多国間条約の条文を取りまとめたこと、それを歓迎するとともに、2023年、今年の後半に多国間条約を署名できるよう準備するため、多国間条約に関する幾つかの懸案事項を速やかに解決するよう、BEPS包摂的枠組みに求めるということが会議で合意をされたところでございます。私も発言をいたしましたけれども、多くの国がこの条約に署名できるようにしなければいけない。やはりこういうことはモメンタムが重要でありますし、今の勢い、流れを逃しますと、せっかくここまで積み重ねてきたものが結果として頓挫してしまうということにもなりかねないという思いがあります。確かに幾つかの課題がまだ、国と国との関係、あるいはこの国の中にあるわけでありますけれども、そうしたことを年末までに向けて調整をして、そして特に私の発言の中では、G20の国々は率先して条約に署名するように期待を表明したところがあります。

問)

大臣と総裁に1問ずつお願いします。ウクライナ侵攻に対する非難の文言についてなんですけれども、今インドの議長国が公表する議長総括とは別のもののようなんですが、その文書の中には2月に議長総括に盛り込まれていたウクライナ侵攻に対する非難の文言がないように見受けられます。これは議長総括の中でも非難の文章自体が落ちるのか、落ちたとするならば、その受け止めは、大臣としてどのように受け止められるのか教えていただきたいのが1点と、総裁については、このようなウクライナを巡る国の意見の相違があったり、また、中国の半導体の材料の禁輸とか経済の分断というのがIMFなどでもかなり懸念を示されているんですけれども、世界の経済の分断について、国際経済に与える影響、どのような懸念があるのか、総裁の考えをお願いします。

大臣)

まずロシアに対して多くの国々が反対をして、強い言葉で非難したということに関する文言ですけれども、これは成果文書に盛り込まれる予定です。おおむね2月のG20の会合の成果文書に載ったラインで盛り込まれるということであります。

総裁)

世界経済の分断の影響という点についてですけれども、ちょっと教科書的な話になって恐縮ですけれども、本来、自由な貿易をしてそれぞれの国が自分の得意なものを作る、それを交換し合うということで世界経済は発展してきましたし、90年代以降それが加速したという中で、良い動きがずっと続いてきたわけですが、それに安全保障というやむを得ない他の目標が出てきたということではありますけれども、ブレーキをかけるということですから、何らかのマイナスの影響というのは避けられないというふうに考えてございます。

問)

まず鈴木大臣に伺います。債務問題に関してなんですけれども、低所得国向けの二国間融資で、MDBsも債務減免に参加するべきではないかというのがこれまでのG20の論点の1つに挙がっていたかと思います。この点について、G20内で合意がとれているのかどうかという点について確認させてください。
続いて、植田総裁に伺います。G20の場ではあるんですけれども、7月の政策決定会合が近いということで、これについて是非お考えをお聞かせください。7月の政策決定会合に向けて、市場でのYCC修正観測によりまして、週明けの東京市場ではイールドカーブに歪みが生じる兆しがありました。総裁は以前からコストとベネフィットを衡量してYCCを修正するかどうか決めるというふうにおっしゃっていましたが、足元の状況を考慮しますと、修正する必要はないとお考えでしょうか。ご見解をお聞かせください。

大臣)

債務問題について、一部の国がMDBsからも参加をして減免等をするようにという主張があるということは、それは聞いて、私も知っておりますけれども、しかし今回そういうことが議論の場で出ているわけでありませんし、何かそういうことについて賛成だ、反対だという合意がなされたということはありません。
 

総裁)

ちょっと長くなるかもしれませんが、これまでの私どもの考え方をもう一度申し上げたいと思いますけれども、まず、基本に、持続的・安定的な2%のインフレの達成というところにまだ距離があるという認識がこれまであって、そういう認識のもとでは、金融仲介機能とか市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロールのもとで粘り強く金融緩和を続けていくということをしてきたわけでございますけれども、そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは毎回の決定会合でチェックするわけですし、見通しが変わるところでも一応、改めてきちんとチェックするわけですが、それの前提が変わらない限り、全体のストーリーは不変であるということは申し上げたいと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る