鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣臨時閣議後記者会見の概要

(令和5年11月2日(木曜)17時32分~17時55分)
 

【質疑応答】

問)

先程閣議決定された経済対策についてお伺いいたします。政府は骨太の方針の中で、新型コロナ対応で膨らんだ歳出構造を平時に戻す方針を示しております。さらに政権としても2025年度にプライマリーバランスを黒字化する目標を堅持し、財政健全化を進める中で、今回の経済対策の規模は、20年度、22年度に比べれば低いものの、コロナ以前の水準からはまだ開きがあります。この規模になった理由や狙い、政権の方針に照らして適切かどうか、大臣のご所見をお聞かせください。
また今回の対策は、税収増の還元策である定額減税と給付措置も含めたものとなっておりますが、それぞれの財源がどのような裏付けとなっているか、考え方を含めて内容をお聞かせください。

答)

まず今般の経済対策については、足元の物価高から国民生活と事業活動を守るとともに、長年続いてきたコストカット型の経済からの脱却を図り、構造的な賃上げと攻めの投資によって、消費と投資の力強い循環につなげるため、真に必要で効果的な政策を積み上げたものであります。
その積み上げの結果として、対策の規模については、令和5年度補正予算における一般会計追加額は13.1兆円になるとともに、定額減税による還元策とその関連経費とを合わせますと17兆円台前半程度になると見込んでおります。これは真に必要で、かつそれによってこの規模になったものと考えております。
その上で、ご指摘の平時に戻すとの方針につきましては、日本経済がコロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつあることを踏まえまして、従来の新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費、これを賃上げ促進の環境整備にも活用できるよう、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費に見直すなど、物価高騰対策と供給力の強化に重点を置いた対策を取りまとめることができたものと考えております。
足元で緊急に必要な対応を行いつつも、中長期的な財政健全化に取り組むこと、これも重要な課題であります。ただいま申し上げたとおり、緊急時の財政支出のうち役割を終えたものについては、平時の水準に戻していくことに加えまして、潜在成長率の引上げや社会課題の解決に重点を置いたメリハリの効いた予算編成を行うなど、引き続き、2025年度のプライマリーバランプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて、政府一丸となって、歳出・歳入両面の改革に取り組んでまいります。
最後に、重点支援地方交付金による低所得者世帯向けの支援につきましては、迅速に支援を届けるため、今般の総合経済対策の裏付けとなる補正予算を速やかに編成するとともに、定額減税による還元策とその関連経費については、年末に向けて成案を得るべく検討を進めつつ、その財源については、令和6年度予算の予算編成過程において検討をしてまいりたいと思っております。

問)

今回の経済対策のお題って、デフレ完全脱却という言葉を使っていると思うんですね。この対策そのものが成功した場合、デフレ脱却を宣言できる経済環境になるのかというのがまず1点です。そうなった場合、政府と日銀のアコード、この扱いはどうなっていくのか、これについてもお願いします。

答)

デフレからの完全脱却というのは、非常に重要な意味のあることであると思っております。今、足元では30年ぶりの、春闘においてですけれども、3.58%という高い賃上げが実現できた。それから名目で100兆円を超える旺盛な設備投資等も行われている。そういうこともありまして、非常に、今、経済の転換に向けて重要な局面に至っていると思っております。
今回のこの経済対策におきましては、まずこうした今のいい状況を来年にもつなげていかなければならない、そのための供給力強化のための予算、施策、そういうものもこの経済対策の中には取り込まれているところでございます。こうしたことを通じてデフレからの脱却を図っていく、これが1つの柱であります。併せまして、今、足元において国民の皆さんが物価高騰ということに大変に悩んでいるところでございますので、それに対する万全な対応をしていくと、こういうことで2本柱でやっていくということでございます。
そして、日銀との共同声明のお話がございましたが、デフレからの脱却については、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないことと解しておりまして、現状を総合的に考慮すれば、現時点では逆戻りする見込みがないと、そのように判断できる段階ではないという認識を持っておりまして、先程申し上げたようなこの経済対策をしているところでございます。
逆戻りする見込みがないという判断でありますが、こうした点について日銀の植田総裁も、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、粘り強く金融緩和を継続する必要があるという旨を発言されていると承知をしているところでございます。
政府としては、引き続き、政府・日銀の共同声明に沿って、政府・日銀一体となって、物価安定の下での持続的な経済成長に向け取り組んでいくことが重要であると、そう考えておりまして、現在の共同声明に沿って対応をしていくと、これが今現在の考えでございます。

問)

経済対策について2点お願いします。まず1点目なんですが、この経済対策で消費者物価を1%抑制するという効果を見込んでいるんですけれども、逆に補助金だとか国土強靱化の公共事業で物価上昇を助長しかねないこともあるんじゃないかと思います。それで低所得層への給付に絞った方がいいんじゃないかという意見もありますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
もう1点目が、先程減税の財源について来年度の予算編成過程で検討していくとおっしゃっていましたけれども、今のところ何か財源に当てがあるのかというところと、その減税が財政に与える影響というところ、今現在どのように見ているか教えてください。

答)

いろいろなご質問がございましたが、1つは先程内閣府の方で取りまとめられたものがございまして、内閣府による総合経済対策の経済効果試算では、今般の対策によりまして、消費者物価を前年比で1.0パーセンテージポイント程度抑制するとともに、実質GDPを19兆円程度押し上げる効果が見込まれるといった結果が示されたものと承知をいたしております。政府といたしましては、今般の経済対策によって生み出されるこれらの経済効果、これを起爆剤として、足元の国民生活や事業活動をしっかりと守りつつ、力強い消費と投資を伴う持続的な経済成長につなげてまいりたいと思っております。これは内閣府の試算でありますので、この中身については内閣府の方にお尋ねをいただきたいと思います。
その上で、今、GDPギャップが若干プラスに転じているという中で、この財政出動をすることによって、これがインフレの方に向かうのではないかということについてのお話でございますが、確かに一般論として、マクロ的な需要と供給の関係の観点からは、財政出動には物価を押し上げる効果があると、そのように認識をしております。しかし今般の総合経済対策は単なる需要の追加ではなく、ガソリン・電気・ガス料金の激変緩和措置など、物価そのものを抑制する施策でありますとか、国内投資のさらなる拡大やイノベーションを牽引するスタートアップ支援など、将来の成長に資する供給力の強化のこの2つを車の両輪として策定したものでありまして、政府として、インフレが加速することがないよう適切に対応したと思っております。
それから財源については、まさにこれからそうした作業に入るものですから、年末に向けて、予算編成過程の中で決まっていくということで、今の時点で決め打ち的にこれというようなことを申し上げる段階ではないと思っております。

問)

冒頭にも質問がありましたけれども予算の規模についてです。コロナ禍前から比べると、30兆になっていたコロナ禍に比べると今回少し減ってはいると思うんですが、規模が完全に戻すことはできていないと思うんですけれども、平時に戻るペースについて財務大臣として率直にご感想をお願いします。
もう1点ありまして、今回、宇宙とか当初予算に盛り込んでもいいような緊急と思えないような予算もたくさんついているのかなと思ったんですけれども、全て緊急で補正予算として必要な予算がついているというふうにお考えかどうかもお願いいたします。

答)

規模については、やはりコロナ禍からの脱却に合わせて、それによって膨れ上がった従来の予算規模、それを平時に戻していくこと、これは原則だと思っております。コロナ禍が収まってきているということは事実でありますが、一方において物価高というものが、今、大変大きくなってしまっているわけでありまして、それによって国民生活への影響、事業活動への影響というものがあるわけでありますので、こうしたものに対してはやはり手を打っていかなければならない。したがって、その分必要な財政出動もあるということであります。
私の立場としては、できる限り必要なものを積み上げていく、真に必要なものを積み上げていくという基本的な考え方の中で行っているわけでありますが、先程申し上げました燃料油等の激変緩和措置、電気・ガスの対応等で、やはり必要なものには必要な財政出動があったということであると思います。
それから基金のお話がございました。確かに基金の要望というのはありましたが、かなり、私としては要望の額よりも圧縮したもので整理することができたと、このように思っております。基金も幾つか設置されることになるわけですけれども、中身において圧縮することができたと思っております。

問)

改めてなんですけれども、定額減税ですね、所得税減税に踏み込むのは97年の橋本政権以来だと思うんですが、このタイミングで、これまでと少し毛色の違う所得税減税、家計に届く景気対策ではあると思うんですけれども、いろいろな形で反対論が、党内も含めて、自民党内も含めて出ていますけれども、このタイミングでこの減税という景気対策に踏み込む狙いをまず教えていただけないでしょうか。

答)

今、岸田政権におきましては賃上げが大切だと、こういう方針で発足以来、賃上げ税制の深掘りとか様々やってまいりました。しかし現実は物価高騰の勢いが勝っておって、賃上げが物価高騰に追いつかないという、そういう状況の中で、この2年間の税収増部分をこうした国民の皆さんの可処分所得の向上につなげていくということの1つの方法として、こうした減税の方がより実感していただけるという、そういう思いもあったと私は理解をしております。
いずれにしましても、給付の形ですべきだという野党のご意見もございますが、今回の経済対策では税金を払っておられる一定所得以上の方については減税、それから税金を払っていない非課税世帯の方には給付金、それから4万円を引き切れない狭間にある方々についても、制度設計はこれからでありますけれども、公平な対応ができるような措置をすると、こういうことにしたわけであります。
そしてタイミングの話でありますけれども、減税については来年の6月になるだろうと、国会でもそのように答弁がなされているところでございます。6月というのは、我々としては賃金を来年も頑張って何とか上げていくということでやって、実現を図っていきますが、そうした賃上げと減税ということがタイミングを一にすることによって、より賃上げを実感いただけると、そういうような意味合いがそこにはあると思っています。

問)

この13.1兆円で、減税も入れると17兆円台という話でしたけれども、一方で財源は年末に考えるという言い方をしていて、マーケットから見れば国債なんだろうというふうに見られているわけですが、こうなってくると結局、こうやって景気対策をしても財政に対する信認が下がっていって、それによって円安が進む、その悪循環に今陥っていて、仮に円安が1%もし進めば、日本の家計の資産は2,000兆円超と言われていますから、20兆円とか、それぐらい計算上は目減りしてしまうわけですね。こういう一種悪循環に陥っていて、いくら景気対策をやっても財源がはっきりしないままで、国債発行に頼ればどんどん財政の信認が落ちていって、結局景気対策の効果が相殺されて、むしろマイナスになってしまうという悪循環に陥っていると思うんですけれども、その点はどう考えるのか。
それに関連して、ドイツと日本のGDPがまさに円安の影響で2023年のIMFの予測で逆転すると。ドイツは人口、日本の3分の2なわけですけれども、にもかかわらず逆転する、これはこの間ずっと政権が国債に頼った財政出動を繰り返してきた結果でもあると思うんですけれども、その2点をお答えいただけないでしょうか。

答)

いろいろご指摘が各方面からなされておりまして、今のご指摘というのも耳にするご指摘であると、このように思います。
今回のこの経済対策は、先程申し上げたとおり足元の経済の状況ですね、そういうものが以前に比べれば明るい兆しが見えてきた、まさに今までの経済を変えて新たなステージに乗せる絶好のチャンスであると思います。これを見送ってしまいますと、またデフレに陥ってしまうということで、まさにデフレからの完全脱却ということを狙うというのが、これが大変重要な視点であると思います。デフレからの脱却ができることによって、経済が前に膨らんでいって、そしてそこから税収も期待できるということでありまして、いろいろな経路が目的にはあると思いますが、我々としてはまずそういう経路をたどって日本の経済を立て直し、また財政にも、それによってプラスを反映させたいと、そのように思っているところでございます。
そしてドイツのGDPがIMF予想で3位になるという、こういう予測でございますが、これは2023年において、物価変動の影響を除いた実質経済成長率は日本の方が高いものの、ドイツの方がインフレ率が高い上に、ドルに対する為替レートも円は減価する一方、ユーロは増価すると見込まれているためで、ドルベースの名目GDPで見ればドイツと日本が逆転する見通しになっていると承知をいたしております。ドルベースの名目GDPの国際比較は、インフレ動向でありますとか為替動向に大きく左右される性質のものであること、ここは考えなければいけない、考えておくべきことであると思っております。一方で、1990年代のバブル崩壊以降、消費や投資が停滞し、デフレを脱却できないという悪循環が生じたことで相対的に低い成長率が続いてきたこと、これも事実、そのとおりであるわけでありまして、このような状況を打開しなければならないわけでありまして、政府としては、まずは目の前の物価高騰という難局を乗り越えるとともに、構造的な賃上げ、活発な投資、こういうものを通じて持続的な経済成長を実現していく、それによってGDPを押し上げていく、こういうことに取り組んでまいりたいと思っております。

(以上)

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