鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁共同記者会見の概要

(令和6年5月25日(土曜)14時37分~14時52分)

【冒頭発言】

大臣)

先程G7財務大臣・中央銀行総裁会議が終了しました。今回の成果をまとめた声明が採択されましたが、これは追って公表されます。
今回の会議の成果について以下ご報告をいたします。
今回の会合では、合計11のセッションにおいて、非常に多岐にわたるテーマについて有意義な議論が行われました。
本日の議論について、まず国際課税のセッションでは日本から2本の柱の解決策に関して、第1の柱の多数国間条約について6月末までの署名実施に向けて残された時間はわずかであり、早急に議論をまとめるべきであることなどについて発言をいたしました。
対ロシア制裁、ロシアの凍結資産に関するセッションでは、日本から、我が国が第三国の団体を含め、ロシアによる北朝鮮からの武器調達に関与した個人・団体に対する資産凍結等の措置を昨日実施したことを説明するとともに、凍結資産の活用についてはしっかりとした国際法上の根拠に基づく形で、6月のプーリアサミットに向けて検討を進めていくべきといった発言を行いました。
ウクライナ支援のセッションにはマルチェンコ財務大臣も対面で参加されました。私からは日本による2024年の追加財政支援として、20億ドルの信用補完を行う予定であることなどを発言いたしました。
こうした議論を踏まえて大変有意義な合意がなされました。その成果をまとめた声明の概要は後程事務方より説明させますが、主な合意内容は次のとおりとなる見込みです。多国間主義の将来、非市場的政策・慣行については、より強靱で信頼性が高く、多様で持続可能なサプライチェーンを構築する必要性を確認、中国の非市場的政策及び慣行の包括的な利用について懸念を表明、世界的に公平な競争条件を確保するため、非市場的政策・慣行や過剰生産能力につながる歪曲的政策に対処するための協力を強化することで一致、また為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得るとの認識を含む為替に関するコミットを採択、昨年日本議長下で立ち上げたクリーンエネルギー関連製品のサプライチェーン強化に向けたパートナーシップ(RISE)についてはその進展を奨励、またウクライナに対する揺るぎない支援を再確認するとともに、ロシア制裁を継続し、制裁の回避に対抗していくことを確認、ロシアの凍結資産については来月のG7サミットに先立ち、首脳に選択肢を示すことを視野に入れて、凍結されたロシアの国家資産に起因する特別な利益をウクライナのために解放する方策について議論を続けることを確認、国際課税については2本の柱の解決策の実施が最優先事項であり、第1の柱の多数国間条約について本年6月末までの署名へのコミットメントを再確認、最後に本日イタリアのジョルジェッティ大臣とのバイ会談も実施をいたしました。

総裁)

G7における議論の内容については、今、鈴木大臣からご説明があったとおりでございます。
私から若干補足しますと、まず世界経済についてですが、ロシアによる戦争の影響や世界的なインフレ動向等を踏まえた経済見通しと、そのもとでの財政・金融政策等について議論が行われ、物価と金融の安定が持続可能でバランスのとれた経済成長の前提条件であるという認識が共有されました。私からは、日本銀行の3月の政策変更等について簡単に説明しました。
また、クロスボーダー送金に関しまして、国際通貨・決済システムの分断化を回避することが重要との認識が共有され、その観点から、決済システム間の相互運用性を向上させる取組について議論がなされました。私からは、その1つとして、例えば、複数国が参加する共通プラットフォームの構築を考える場合には、オープンであること、透明であること、セキュアであること、そして更に分権的であることが大事であるというふうに申し上げました。
最後に金融セクターについては、G7のサイバー専門家グループというのがございますが、それが4月にG7金融当局間で実施したクロスボーダーの協調演習が成功裏に終わったことを歓迎するという旨を述べたところでございます。

 

【質疑応答】

問)

鈴木大臣にお伺いしたいんですけれども、今回のG7でイエレン長官とバイ会談があったのかどうか、もしあった場合はどんなお話をされたのか、教えていただければと思います。あと、これはお二人にお伺いしたいんですけれども、ちょっとG7から外れてしまうんですが、長期金利が12年ぶりの水準ということで市場の注目が集まっています。これについて鈴木大臣、植田総裁、どういうふうに御覧になっているか、お願いいたします。

大臣)

イエレン長官とのバイ会談はいたしておりません。
それから長期金利、11年ぶりに1%に戻したということでありますが、背景についてはその時々の経済情勢や金融政策の動向に加えまして、投資家の見通しやセンチメントなど様々な要素が背景にあるものと考えています。
その上で、まず財務大臣の立場から財政について申し上げれば、金利の上昇は利払費の増加を招き、財政を圧迫するおそれがあると考えております。実際、令和7年度の金利が1%上昇した場合、9年後、令和15年度ですけれども、9年後には利払費が現在の公共事業や文教科学関係予算を上回る規模で増加するとの試算もあります。
低金利のもとで国債発行を消化することができたこれまでとは異なる金利のある世界が到来したこと、これを強く認識する必要があると考えております。
こういうような中で、利払費がどのように動こうとも災害対応、あるいは社会保障など必要な公共サービスはしっかりと提供できますように、財政の強靱化を高めることが重要であって、これまで以上に気を引き締めて財政健全化の取組を進めてまいりたいと考えています。

総裁)

長期金利ですけれども、私からは、日々の短期的な金利の動向やその水準について具体的なコメントは差し控えさせていただきます。
その上で申し上げますが、国債の買入れについては3月の決定会合で、それまでと概ね同程度の金額で継続するということを決定したわけですが、そのもとで長期金利は金融市場において形成されることが基本となるというふうに考えております。いずれにしても市場の動向を今後とも丁寧にモニタリングしていくつもりでございます。

問)

鈴木大臣に伺いたいと思います。冒頭のご発言の中で、まずウクライナの凍結資産の活用の部分について、特別な利益を解放する方向を模索して議論を続けるということで前進があったとのことですが、大臣、これまで日本での記者会見でも国際法と整合性を持つことが重要だとご発言をされてきました。現状ここの結論に至るまでの各国の議論の経緯と今大臣がこれまで主張されてきた国際法との整合性が担保されているのかどうか、現状を教えてください。

大臣)

我が国はロシアのウクライナ侵攻というものを非難しております。会議でも最高の言葉を使って非難をしているわけでありますが、それはロシアの行動が国際法に違反をしていると、従ってけしからんと、こう言っているわけでありますから、今回のこの凍結資産の活用も国際法に整合しないものであれば二重規律になってしまうわけでありますから、こうした国際法に整合する形で進めなければならないというのは日本の原則的な立場であります。
したがいまして、今回もそのことは私の方から発言をいたしました。いろいろ議論がございましたが、他国の発言は控えるということでありますが、先程申し上げましたとおり、6月のプーリアサミットに向けて首脳に判断材料を与えることができるように、これから事務方で作業を進めていく、こういうような状況になると思います。

問)

いわゆる中国の過剰生産の問題のところですけれども、このテーマについて日本がどういった主張をされてきて、先程おっしゃられたような主な合意の部分ですね、ここにどう反映されたのかというところのご見解をいただければと思います。

大臣)

先程申し上げましたけれども、中国の非市場的政策及び慣行の包括的な利用について、G7として懸念を表明したところであります。
世界的に公平な競争条件を確保するため、これは重要なことでありますので、非市場的政策・慣行や過剰生産能力につながる歪曲的な政策に対して協力を強化することで一致いたしました。
細かくは申し上げませんが、我が国の立場もまさにそういう立場でいるわけでありまして、そのことがこうした取りまとめにつながっているということでご理解いただければと思います。

問)

今のウクライナの凍結資産のところで確認ですが、利子の活用だったり、利子を担保にして、さらに融資を増大する、融資を再確保するという案に対して、それは国際法に整合的であると大臣としてはお考えか、その点確認させてください。

大臣)

まさに6月のサミットに向けて、そのサミットの場で各国首脳が判断できるような材料を提供しようという、そういう作業をするということで合意をしたわけであります。
まさにそういう作業の中で、国際法と整合するものができて提供されるのではないかと、そう思っております。それは当然のことではないかと思います。

(以上)

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