鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要
(令和6年6月7日(金曜)9時15分~9時34分)
【質疑応答】
- 問)
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先日開かれた経済財政諮問会議で岸田総理は、月内にまとめる今年の骨太の方針で、来年度から6年間の新たな経済財政に関する計画を盛り込む考えを明らかにしました。来年度のプライマリーバランスの黒字化も視野に入っている中で、大臣は6年間の新計画についてどういった目標・計画であるべきとお考えでしょうか。
- 答)
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先日4日、経済財政諮問会議におきまして、岸田総理から、経済あっての財政の考え方の下で2030年度までの6年間を対象期間とする経済・財政新生計画を取りまとめるとの発言がありました。
この計画の具体的な内容や財政健全化目標の取扱いにつきましては、骨太方針の策定に向けて、今まさに政府や与党内において検討・調整が進められている段階でありますので、現時点で私から具体的に申し上げることはできないということでございます。
その上で申し上げますと、金利のある世界へ移行をして、感染症・震災などの有事に対する財政面での備えも必要とされる中で、引き続き、財政に対する市場の信認を確保していく必要があると考えております。
このため、経済成長を着実に実現していく中で、財政健全化目標の旗を降ろすことなく、歳出改革努力を継続していくこと等を通じて、引き続き、適正な経済財政運営に努めていくことが重要であると考えています。
- 問)
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証券取引等監視委員会が三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下の銀行と証券2社に対して、いわゆるファイアーウォール規制であるべき顧客情報を同意を得ずに共有していたことと、銀行側のグループ銀行との取引を条件に取引の緩和をほのめかすなど、法令に違反していたとして金融庁で処分勧告を検討しているという報道がありますが、事実関係についてお願いします。
- 答)
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その報道は承知をしておりますが、証券取引等監視委員会は金融庁から独立した立場で職務を行うということとされておりますので、委員会が行う個別の検査や勧告などの対応について、コメントは控えなければならないと思っております。
- 問)
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事実だとしたら金融担当大臣としてどのように思いますか。
- 答)
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それは仮定の話ですので。仮に報道が事実だとすれば、今後、証券取引等監視委員会でしっかりと対応がされるものだと思っております。その結果についてはいずれ発表があるんだと思います。
- 問)
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定額減税に関してなんですけれども、給与明細への減税実績の記載など、大臣から源泉徴収者、企業に対して理解を求めるコメントを先日いただいたところですけれども、それでも企業からは今年度限りの対応でシステムの改修などで費用がかかって大変だという声が根強く聞かれるんですね、我々の取材からでも。それに関して、改めて大臣からお言葉をいただけますでしょうか。
- 答)
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源泉徴収義務者の皆さん、所得税についていろいろと事務負担が増えて大変だという話は伺っております。それから住民税につきましては、地方自治体の方が大変だという話も、これも併せて聞いているところであります。
これはお願いベースになるわけでありますが、今までも毎年税制改正等があれば、源泉徴収義務者で新たな対応も含め、そこで対応していただいております。今回も何とぞご理解をいただいて、ご協力をいただきたいと、そのように思っているところであります。
私共としても、できる限り相談対応のコールセンターといった電話の窓口も設置をしたりしております。また説明会もしていると思います。そういうことを通じて、理解をいただけますように、引き続き、努力をしていきたいと思います。
- 問)
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本日5月末の外貨準備高が発表されました。前月からの減少幅は特に外貨債券などの証券が大きいですが、4月から5月に実施した為替介入では証券・預金のいずれを活用したのかをご教授ください。
- 答)
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本日、7日でありますが、公表をいたしました令和6年5月末の外貨準備高についてでありますが、前月比で474億ドル減少をいたしまして1兆2,316億ドルになりました。これは先週公表いたしました為替介入による減少が反映されていますが、これに加えて債券利息収入による増加、債券金利の低下による外貨証券の時価評価額の増加などの増加要因もあり、これらの総体的な結果となっていると、そのように思っております。詳細につきましては事務方に聞いていただければと思います。
- 問)
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為替介入も無制限に行えるものではないと思うんですけれども、今後の対応に関してはいかがでしょうか。
- 答)
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まず為替介入というものは、やはり抑制的に行われるべきものであると、そのように考えております。
先般も投機筋の動きというものがある中で、急激な変化があるということに対応した為替介入でありますので、そういうようなことだけではないわけでありますけれども、総合的に考えて急激な対応にはそれをならす行為が必要であると、そういう思いでおります。為替については、しっかりと注視をして、万全な対応をとっていかなければいけないと、そのように思っております。
- 問)
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外貨準備高の関連ですけれども、外貨証券の減りが500億ドルを超える前月からの減少ということで、米国債を売却して為替介入に踏み切ったんじゃないかという見方が出ていますけれども、実際のところ、米国債を売却する形での為替介入だったのかどうかというところのコメントを頂戴できますでしょうか。
- 答)
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それについては従来からお答えしないことになっております。それは、どういうことを原資にしたかということによって、市場にも影響を与えるということになりますので、コメントは控えさせていただきたいと思います。
- 問)
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先程の定額減税に伴う給与所得、源泉徴収事業者に対する減税額の明記の点ですけれども、これが3月末に財務省令で出ていて、そして元々は税制改正大綱に出ているというのは分かるんですけれども、今回減税額を書けというのは異例の対応で、まさに源泉徴収義務者は、その事業者はいつも税制改正に対応して、それで税金を計算して反映させているわけですけれども、こういった形で減税を書けということは通常ないわけですよね。なぜそういう形をとらなきゃいけないのか、これは結局、政権の宣伝なんじゃないかと思うんですけれども、そういう批判にどう答えますか。
- 答)
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ずっとさかのぼりますと、昨年末の与党の税制改正大綱の中にも、額を示すということが書かれております。
そしてそれは、今回の定額減税の目的そのものが、給与の増加が見込まれる時期に合わせて減税を行うことによって賃金が物価を上回る、そういう状況をまず作り出したいと。そして今回の目的の1つは、それによって長年染みついていたデフレマインドを払拭する、そのきっかけにしたいと、そういうことを狙っているわけでありますので、そういった政策目的を、効果を高めるためにそういうことが必要なのではないかと、昨年12月の与党の税制改正大綱が決まった時から、そういう趣旨で示されたと、それを受けて政府もそういう対応をすることにしたと、こういうことだと思います。
- 問)
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与党の税制改正大綱というのは国会答弁でも何度もおっしゃっていて分かるんですけれども、税務当局として、財務大臣として、税制は公正・中立・簡素というのが一番大事なポイントなわけで、それをずっと財務省も言っているわけで、公正・中立といった場合に減税額だけ書くというのはこれまでなかった対応ですし、中立性を欠くと思うんですけれども、この場合、国会でもやりとりがありましたけれども、増税についても今後、今回の減税対応を中立的に公正に行うのであれば、増税についても今後書くというのが普通のやり方だと思いますし、それが財務当局として公正で中立なやり方だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
- 答)
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まず私の記憶では、橋本内閣のときに行った減税、そのときにも書いたはずです。ですから初めてのことではないというところ、そこは訂正をしていただきたいと、そのように思います。
それから増税のときも併せて触れるべきではないかということですが、これは実務的に難しいんだそうであります。対応ができないという実務的な問題があって、必ずしも増税、あるいは社会保険料のことについても国会で質問がありましたけれども、そこでの答弁では実務的な課題で、毎回増税のときにできるかというと、それは難しいというような答弁をさせていただきました。
- 問)
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でも減税を書けるんであれば増税も当然書けるはずなんですけれども。
- 答)
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それがそうじゃないんだそうですよ。実務的に難しいんだそうです。実務的なことはまた事務方に聞いてください。
- 問)
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減税は書けるけれども増税は書けないということですか。
- 答)
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増税のときには何か実務的に難しさがあると。
- 問)
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計算プロセスは同じだと思うんですけれども。
- 答)
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どうなんですかね、ちょっとそこは実務的に。
- 問)
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あと先程、橋本政権の90年代の定率減税の話がありましたけれども、その時も最初は限定的にやるはずだったのが、その後ずるずる長く減税が続いていくわけですけれども、この間国会でも、大臣、定額減税が続くんじゃないかと自民党の木原氏がそういう話をして、それに対して大臣は、今回3.3兆円、全体で言うと5.5兆円の大規模なことをやっているから、これは1回限りだという話ですけれども、今後自民党からどんどんこういう声が出てくると思うんですけれども、その点、必ずこれが1回限りということは明言できるんでしょうか。
- 答)
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税制改正大綱の中に、場合によっては、今後賃金・物価等の状況を勘案し必要があると認めるときは所要の家計支援の措置を検討すると併せて書いております。
私の立場は申し上げているとおりで、今回の措置というのは、額の話もありますけれども、そもそも長年染みついたデフレマインドを払拭するきっかけにしたいと、こういうことでありますから、これは1年限りの措置であると、このように思っております。それは今も変わりません。
そして、与党の税制改正大綱にこう書いてありますので、その解釈を私がする立場ではありませんけれども、私はこの中には幅広くいろいろな政策対応というのがあるんだと思います。所要の家計支援の措置、これはこの定額減税だけを指しているものではないと。定額減税については今年1年限りのものであると、そのように解釈しております。
- 問)
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為替の話を聞きたいんですけれども、先程、為替介入は無制限に行えないという話があったんですけれども、今回10兆円近い規模の為替介入をしたわけで、外貨準備高から考えれば、あと20回これをやったらおしまいになっちゃうわけですけれども、そういう意味では、大臣として、為替介入、先程考え方をおっしゃっていましたけれども、為替介入って通常限定的だというふうにも言われていますし、そういう中では限定的かつ時間稼ぎの要素が強いわけですけれども、大臣として、為替介入の限界とどういうときに使うべきかということは、改めてどういうふうに考えていらっしゃいますか。今回大規模介入を行った直後ということで。
- 答)
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どういうときにやるべきか、どういうときにはやらないべきかということは先程申し上げたとおりだと思っております。
そして限界ということについて言えば、まさに無意味なことをやっても意味がないわけですから、それはそうした状況、どうしても急激な変動をならさなければならないという必要性、そういうことと、やはり効果ということも考えなければいけないんだと、そのように思います。
その制約ということを言えば、外貨準備高が足りなくなるからとか、そういう外貨準備高の制約というのはあまり考えていないというのが実情であります。
- 問)
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制約を考えないけれども限定的に使うということですか。
- 答)
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額よりも、やはり為替介入というのはある意味特異な対応だと思います。
やはり為替というのは、ファンダメンタルズを反映して市場において決定されるものであると、これが原則でございます。それが例えば、投機の動きとか、そういうもので歪められる、そして安定的に推移すべきものがそうではなくて急激に推移するということになれば、これは産業に対しましても家計に対しましても影響を与えるわけでありますから、そういう場合にはそれをならす行為をしなければならないと、それが為替介入なんだと思います。ですから、そういう意味において、何でもかんでもすぐやっていいというものではないと、そのように認識をしています。
(以上)