English新しいウィンドウで開きます

鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(令和6年10月1日(火曜)10時02分~10時32分)

【質疑応答】

問)

まず自民党総務会長のご就任、おめでとうございます。2021年10月に財務・金融担当大臣に就任されてから3年間の在任期間中を振り返られて、率直なご感想をお聞かせください。

答)

岸田内閣が誕生したのは3年前の10月4日でありまして、今日先程の閣議で総辞職をしてまいりましたので、丸々3年ということについては2日、3日足りないというんですか、10月4日でしたから。そういう感でありますが、日数にしますと1,094日、財務大臣と内閣府特命担当大臣金融担当ということをさせていただいてきたところでございます。
就任したときのことを思い出しますと、全く予想もしていなかったことでありますし、前の大臣の存在感があまりにも大きかったものですから、率直に言って引き受けていいのかなという思いも正直あったところです。そのとき申し上げたのは、前大臣のようには振る舞えませんし、同じような流儀ではできないので、地味かもしれないけれども堅実に仕事をしたいと、そういったことを申し上げたのを覚えております。地味な方はお約束どおり十分地味だったと思いますけれども、堅実に仕事ができたかどうかということは自らが申し述べるよりも、皆様方をはじめ、評価をしていただければいいと思っております。しかし、私自身としては、いろいろな課題がありましたけれども、どれ1つにも手を抜くことなく、私のできる範囲で全力で取り組んで職務を遂行して今日の日を迎えたと、そのようなつもりでございます。  
その中で多くの人に支えられたなと思っておりますが、この記者会見もやはり私にとっては大変に真剣に臨ませていただきました。ぶら下がりなどを入れますと、おそらく300数十回になったのではないかと思っておりますけれども、記者会見で皆さんからいろいろな質問をいただくという中で、財務あるいは金融関係のその時々の課題、それについての情報といいますか、どのようになっているのか、そういったことを常に週2回アップデートさせていただいたということで、この記者会見というのは私としてもとても大切な場でありましたし、そういった意味で、お集まりの財研の皆さん、またジャーナリストの皆さんに感謝を申し上げたいと思っております。  
1つ1つの課題について申し上げれば切りはないのですが、やはり1つは為替の問題があったと思っております。私が就任した頃は1ドル110円程度でしたけれども、その後、今年7月でしょうか、161円くらいになりました。もちろん円安というのは一概に悪い円安、良い円安とは言えない。プラスマイナス両面がもちろんあるわけですけれども、やはり物価高騰との戦いということを考えますと、日本はエネルギーも食料も海外からの輸入に頼るわけでありますし、その決済方法は多くがドル建てですから、円安ということがもろに輸入物価の上昇につながるということで、プラスマイナスはあるけれども、どちらかと言うとマイナスのことをずっと懸念しておりました。2年前に為替介入をしたところでございますし、本年も為替介入、ゴールデンウィークの辺りなどにさせていただいたところでございます。やはり為替介入をするという決断はなかなか重いものでありますが、唐突に日本がやるということになりますとほかの国の影響がある、対ドルでやるとなればまさにドルの国でありますアメリカもこれは無関心ではいられないということでありますので、そういったところも含めて、神田財務官をはじめ国際局の皆さんに、日頃から十分に情報収集やコミュニケーションをとっていただくということもあって、初めて為替介入が行われたと思っております。いずれにせよ為替レートというのは市場を通じて決定されるべきものでありまして、為替介入を行うというのはある意味まれでなければならないということでありますが、振り返ってみますと投機筋の動きもあって一方的に円安に振れているという中でありましたので、そういった意味では意味のある為替介入だったと思いますし、それによってやはり為替の状況が投機筋で一気に動いていたものが沈静化してきたと、普通の市場によって決定されるというような環境ができてきたのではないかなと、そのようにも思っております。  
それから、財政健全化の話だと思います。総裁選挙でもそうでしたけれども、自分は積極財政派だとか、要するに経済成長が第一なので、今ここで財政出動をしなければ日本の経済は大きなチャンスを失ってしまうという発言もございました。また財政再建が重要だという候補者の方もおられました。私はそもそも、財政再建かそれとも積極財政かという二者択一の話ではなくて、経済成長と財政再建を両立させるということが重要な観点だと、このように思っております。率直に言いまして、コロナ禍があり当初は全く未知の病気でございますから、当初はワクチンをどうやって確保するか、そういった健康面に対することで相当支出をしなければならなかった。5類に変わった後においてもまだコロナによって傷んだ中小・小規模企業者をはじめとする方々に対するいろいろな手当というものも必要であった。加えて自然災害等も起こっているような状況の中で、このところ補正予算が非常に大きく伸びてしまったということはあったわけでありますが、しかしこれも一気にとはいかないかもしれませんけれども、徐々に平時の規模に戻していくこと、かつて遡って言えば、今までは数兆といった規模であったと理解しておりますが、私のときは残念ながら2桁の規模というようなことになってしまいました。これも早く元の姿に戻さなければいけないと思っています。そのような中で、令和6年、今年度の当初予算につきましては令和5年度の当初予算に比べると減額をされております。今まで一方的に財政規模が膨らんでいった中で、当初予算と言えども令和6年度は令和5年度のそれよりも圧縮した形での予算を組むことができたということ、これは十数年ぶりでありまして、今まで一方的な方向だったのをマイナスの方に持っていくというのはなかなか重要な点であったと思っております。もっとドヤ顔をしてもよかったのかなと思っておりますけれども、そういった努力は今後も続けていただきたいと、そのように思っております。  
また国際関係で言えばG7・G20の会合がありました。会合に出てみてつくづく思いますのは、やはりグローバルサウスの台頭ですね。特にG20ではいろいろな意見がありまして、まとめるということがなかなか難しい状況であります。G7については一定の政治的な、あるいは様々な共通の価値観がありますけれども、それでもやはり内部は様々です。ましてやG20の方にいきますと、これからなかなか難しい時代に世界は突入したのだと思います。やはりグローバルサウスが経済的にも力をつけてきた中で、昔のように何か先進国が多くの枠組みを決めて、その他の国はそれについてこいというようなこと、これはなかなか通らなくなってきているのだと思います。したがいまして、世界のいろいろな対立や分断、そのようなことが財務トラックにおいても起こらないようにする努力というのは、これからなかなか厳しくなってきたのだと思います。その中において、G7では昨年G7の議長国を日本が務めることになりました。これも国際局の皆さんの大変な事前の積み重ねの中で、私としては何とか無事に議長国の議長としての取りまとめをすることができたと、このように自負をいたしておりますけれども、それもこれも多くの関係の皆様方がその場限りでなく日頃からの各国との連携、コミュニケーション、そういった努力があってできたものだと感謝をしているところでございます。  
金融関係でも、日本の家計の資産が2,000兆円を超える、最近もっと増えていますよね。そういった中で貯蓄から投資へという流れをつくっていくということで、新しいNISAを始めたところでございますけれども、やはりその過程で強く感じましたのは、投資をするということはリターンも期待できるけれども、また一方においてリスクもあるわけですから、そういったことをしっかりと認識していただくということが基本になければならないわけでありまして、金融経済教育推進機構というものもつくってスタートということでありますけれども、いろいろなことで国民の皆さんに金融に関するリテラシーというものを高めていただく、そして、ただただお金を積んでおいてもしようがないわけでありますので、それを有効に活用する。それが企業の新たな活性化にもつながり、それがまた家計にも戻ってくるというような、そういった好循環というものも今後つくっていかなければいけないのではないかと、このように思っております。  
このほかにもたくさんいろいろな出来事があったと思いまして、今この場でつらつら思い返してみましても、ほかにもお話しするべきことはたくさんあったと思います。ただ、繰り返しになりますけれども、大過なく3年務めることができたということは、皆様方も含めて、本当に多くの方に支えていただいたその結果です。特に秘書官の人たちを前にしてあれですけれども、国会答弁というのがなかなか大変でして、国会答弁をするにあたって、早いときは朝5時半から、本当に秘書官の皆さんに前もって事前通告の答弁をきちんとまとめていただき、私も答弁書を見てから随分直してもらったところもあります。朝にまた、ここをこのように直した方がいいのではないかと言うわけですから、そこでまた新たな作業が加わって、多くの方にも大変な思いをさせたと思いますけれども、しかし本当によく支えていただきました。
今は3年間務めることができたという安堵の気持ちと感謝の気持ちでいっぱいだというところです。

問)

大臣はデフレ脱却担当大臣も務められましたが、大臣のご実感としてデフレ完全脱却を10合目とするのであれば、大体何合目から何合目までこの3年間で歩みを進めたと思われますか。

答)

やはりデフレとの戦いは30年続いていると思います。アベノミクスは、1つの政策というのは光が当たる部分と影の部分があるのだと思いますが、影の部分だけが強調されてもしようがないわけで、光の方の1つの成果として、デフレではないという状況はつくり上げることができたと思っております。しかしここでまたデフレの状況に後戻りする心配が全くなくなっているかというと、そこの懸念はまだ注意深く見ていかなくてはいけないと思っておりますので、政府としてもいわゆるデフレ脱却宣言というものはしていないわけです。
ただ、新しい経済の流れ、潮目、そういったものは明らかに出ていると思います。数字で言っても岸田内閣は初めから賃金というものにすごく力を入れてまいりましたけれども、岸田内閣ができたときの春闘は1.78%の賃上げ率、今年の春闘は5.10ですね。最低賃金も全国加重平均で当時は930円、今は1,055円ということになっておりまして、6月、7月でしたか、実質賃金もようやくプラスに転じたということでありますし、それから経済のパイ自体も550兆から600兆に増えました。また設備投資も今後100兆円規模が見込まれているということで、ここに来て大きな潮目の変化というのはあるのだと思います。この潮目の変化というものを着実にとらまえて、本当に今までの30年続いたデフレ型の経済から転換するチャンスを迎えている。このチャンスを生かすということになれば、デフレからの脱却が宣言できるのだと思います。
何合目かというと少し難しいのですが、少なくとも半分以上は登り切ってきているんじゃないかなと思っております。

問)

デフレからの完全脱却を達成するために残されている課題について伺います。大臣は総務会長として石破執行部の一員になられるわけですけれども、一方で与党から政府に対していろいろ注文をつけていくという立場でもあるかと思います。石破政権の課題、与党から政府へどのような注文をこれからしていきたいといったことをお聞かせください。

答)

新しい政権が今日午後誕生して、それで組閣がされるということですから、総裁選挙ではいろいろなご意見がありましたけれども、実際に政府として、石破政権としてどのような経済財政運営を目指していくかというのは、それは見極めないと分からないと思います。しかし今回新しい政権ができますけれども、いわゆる政権交代ではなくて、自民党の中で政権が代わるということでありますので、基本的な価値は自民党という中で政策的なものは一定の幅にあるのだと思います。もちろん総理が代われば政策の優先順位が変わる、同じ政策でもポイントの置き方など、そういったものは変わると思いますけれども、幅においてはそんなに変わらないと思っておりますので、先程申し上げたような潮目を着実に捉えてデフレ脱却に結びつけていくという、そういった太い方針は変わらないと思っております。
また、10月に政権が変更されるということですから、これまでの閣議決定や骨太の方針2024などで結構先のことを縛っていると言ったら少しおかしいのですが、これから先の方針もきちんともう既に決まっているところもありますので、そういった方針に沿って着実にやっていただけるのではないかと思っています。

問)

先程振り返っていただいたように、鈴木大臣の任期中には為替介入であるとかメリハリのある予算編成であるとか、難しい局面での舵取りを迫られる場面も多かったと思います。
振り返ってみて、もう少し大臣ご自身としてやりたかった、もう少しこうしたかったというようなことであるとか、次の大臣により引き継いでほしいこと、期待するようなことについて、もしあれば教えてください。

答)

もう少しやりたかったというのは、強いて言えばやはり財政再建の色合いをもう少し出せればと、このような思いをしておりました。2025年度のPBの黒字化ということ、ようやく手を差し伸べればつかめるという段階まで来たわけでありますが、それを自らが見届けることなく次の方にバトンタッチするというのはちょっと残念だなと、そのような思いです。

問)

財務省からの発信の在り方についてお伺いします。
ここ最近といいますか、ここしばらく財務省に対する一方的な批判ですとか、例えば財務省は増税をしたがっているなど、そういった誤った意見というのもSNSなどで多く見られるようになっています。
今回の総裁選でもそれに呼応するような意見というのも見受けられたかと思いますけれども、改めて財政のあるべき姿や税の在り方について国民の皆さんに正しく理解してもらうために、今後財務省、あるいは次の大臣、職員の皆さんにどのような発信をしていってほしいと思われていますでしょうか。

答)

最終的には民主国家ですから、国民の皆さんが選挙などを通じて判断されるということでありますが、まずは正しい状況をしっかりとお伝えをした上で、国民の皆さんにいろいろ考えていただくということだと思います。
確かに財務省が黒幕のように、日本の国を操っているかのごとくの、そのような論を言う方もいるわけでありますけれども、そのようなことはないので、私自身ももちろん財務省の皆さんとよく話をしながら仕事をしてまいりましたけれども、決して操られているとは思っていませんし、ましてや時の政権が一省庁に操られるなんていうことはないのだと思います。そういった意味においても、正しい情報をしっかりとお伝えをするということ、そのような中においていろいろ考えていただくということ、これが基本中の基本なんだと思います。何か財務省がこれをやりたいからというのでキャンペーンを張るとかそういうことではなくて、自然体の中で正しいことを正確にお伝えするということが大切なのではないでしょうか。

問)

改めて後任の財務大臣だったり新政権に期待されることというのを伺いたいのですが、先程のお話の中でも大臣は経済成長と財政再建を両立させることが重要な観点だというお話であったり、これまでにできなかったこととして財政再建の色合いをもっと出せればという思いもあるというお話をされていましたが、後任の財務大臣や新政権にどういった財政運営を期待されるのかというのを改めて伺います。

答)

これから内閣が発足するわけですけれども、新聞ではもう加藤勝信さんになるということでございます。加藤さんについては何と言ったって大蔵省にいた方ですから、この方面の土地勘は十分おありでありますし、それだけにご自身のいろいろな強い思い入れもあるのだと、そのように思います。しかし今までの付き合いの中でも極めて常識的な方でいらっしゃいますので、先程私が期待したこと、そのうちの多くは骨太の方針などで書かれて閣議決定もされているようなこともあるわけですけれども、そういったものをしっかりと受け止めて考えていただけると思います。次の後任の方のことまで私がここで言うのはちょっと僭越ですので、この辺にさせていただければと思います。

問)

国際社会の中での日本の財務省の存在感をどのように感じられたかというところを伺いたいんですけれども、大臣が就任されてから中東情勢やウクライナ戦争ということもあって、いろいろな制裁、財政支援を求められて、いろいろな国と協議する場があったと思います。
それから日本の国債を海外を含めて買ってもらうためにも、時には日本の財政運営に厳しい目を向けられることもあったと思うのですけれども、そういった中で、財務トラックでの日本の立場、存在感をどのように感じられて、どういった役割を果たしていくべきと思われたか、そのためにはどういった課題があるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

答)

G7の中で言えば、財務トラックのそれぞれの問題も大まかではなっているんですけれども、例えば各論にいきますと、例えば国際課税の問題などですと、やはり各国で利害得失が反するということで、これは粘り強く時間をかけてやっていくしかないという課題があちらこちらにあります。
そういった中で私が議長国をしたときで言いますと、急に中東の問題が発生いたしまして、事前にはコミュニケはまとまったのですが、そこにイスラエルの問題をどのように扱うかというようなことで、相当その場でバタバタしたこともございます。いろいろなこと1つ1つを見れば、政策的にも国際課税の問題の話をいたしましたけれども、また地政学的なところで、日本とアメリカや欧州とは全然立場が違うというのはありますけれども、そういった中でも、今までもそうだったと思いますし、これからも日頃のコミュニケーションというものをしっかりと取って、人との繋がりもしっかり構築してやっていくということに尽きるのではないかなと、このように思います。
先輩方の努力によりまして、私も3年間だけですけれどもG7の会合などに出させていただいていますけれども、そのG7の会合の中における日本のプレゼンスといいますか、日本の評価といいますか、日本に寄せられている信頼など、そういったものは大変厚いものがあるなと、そのように感じました。これからもG7の一員として、その中で堂々と日本の意見というものをしっかりと述べていくということ、それが大切だと思います。それぞれの各国の国益というものはあるわけですから、それに沿った発言をすることはもちろんですが、一方において協調も図っていくということではないでしょうか。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る