加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁共同記者会見の概要
(令和6年10月24日(木曜)14時20分~14時38分)
【冒頭発言】
- 大臣)
-
ブラジルの議長の下で4回目のG20財務大臣・中央銀行総裁会議が行われ、その成果についてお話をいたします。昨日の議論に続きまして本日は、G20財務トラックの立ち上げから25年目になることも踏まえ、G20の役割や世界経済などに関する幅広い議論が行われました。
私からは、G20の歴史に立ち返れば、世界経済・金融が抱える脆弱性への警戒を絶えず怠ることなく、金融システムの安定を図り、次の危機に備えることは引き続きG20財務トラックの最大の役割であること、また、足元では為替市場等の金融市場の変動が引き続き高い状況が続いており、G20として、各国のマクロ政策のスピルオーバーや、投機がもたらす為替市場での過度な変動に注意を払う必要があること、ロシアによるウクライナへの不法な侵略はG20の基本的精神と全くそぐわず、世界経済の不確実性を高めている大きな要因であり、改めて最も強い言葉で非難することなどの発言を行いました。
また、併せて、今後のG20財務トラックで取組を強化すべき事項として、まず債務に関し、G20の共通枠組みなどによる債務再編プロセスの迅速化や債務透明性の一層の確保、国際課税の「2本の柱」に関し、第1の柱の多数国間条約の一刻も早い条文採択と迅速な実施などの重要性について述べました。
会合の最後にはG20の合意に基づく成果文書としてコミュニケが採択されました。声明では、戦争や激化する紛争が世界経済のリスクである点、スリランカの債務措置に関わる合意の歓迎、債務透明性の向上の重要性、国際課税の「2本の柱」の解決策の迅速な実施のコミットメントといった日本が重視する点が盛り込まれたところであります。
また為替についても、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得るとのG20における既存のコミットメントが再確認されました。
今回のG20を通じて、世界経済・金融をはじめとした現下の諸課題について日本の立場をしっかりと主張するとともに、議論への貢献を通じて日本のプレゼンスをお示しすることができたと感じております。私からは以上でございます。 - 総裁)
-
私から若干付け加えますと、世界経済等に関するセッションですが、G20発足以来の世界経済の長期的な構造変化を振り返り、今後の課題等を議論いたしました。その上で、従来と同様、世界経済の見通しやリスクについて、率直な意見交換を行ったところです。
私からは、中央銀行の立場から、近年の世界的な貿易活動や直接投資の構造変化が、経済・物価情勢にどのような影響を与えるかを議論するフォーラムとしてG20は引き続き重要な役割を果たしていくというふうに発言いたしました。
それから、金融セクター等に関するセッションですが、ここではクロスボーダー決済や資産のトークン化等について議論いたしました。私からは、引き続きFSBや基準設定主体における作業をしっかり進めていくことが重要というふうに申し上げました。
【質疑応答】
- 問)
-
植田総裁に伺いたいんですけれども、総裁は最近の講演や会見で、今後の利上げの判断に当たって、米国をはじめとする海外経済を注視するという姿勢を繰り返し述べられています。特に、米国経済の先行きについては依然不透明だという認識も示されてきましたが、今回G20などの会議に参加されてですね、この辺の認識がどのように変わったか、それから特に、直前に迫っているアメリカの大統領選のですね、不確実性についてどういうふうにお考えになっているかというのを伺えますか。
- 総裁)
-
まず大統領選については、皆さん、選ばれた大統領はどういう政策をするか、そしてどちらが選ばれるか分からないということで不確実性が高いなということは気にされていたところですが、どっちに転ぶかは分かりませんし、私も特別な情報を持っていないので、それ以上のことはちょっと申し上げられないというふうに思います。
それから、米国経済を中心として、何か今回の会合で追加的な情報ないし認識が得られたかという点ですけれども、素直に申し上げまして、ごく最近のデータがそこそこいい、ということから、雇用統計等ですね、多少アメリカ経済の先行きについて楽観論も少し広がりつつあるかな、という気もいたしました。
ただ冷静に考えてみますと、その前は少し暗いデータが出ていたわけで、その後はちょっといいデータが出ているということですので、もう少しこのいいデータが長く続くのか、あるいは一時的な振れにすぎないのかということについて分析を深めないといけないな、というふうに思ったところです。
- 問)
-
植田総裁と加藤大臣に1問ずつお伺いいたします。まず植田総裁に、足元で為替の円安が進行しています。物価の上振れリスクに対するご認識と政策判断の時間的余裕があると言えるのかどうかについてお願いいたします。
加藤大臣には、米国が大統領選挙を控える中で米国第一主義の保護主義の台頭に対する危機感が見られます。日本として同盟国のアメリカにどのように働きかけて国際協調の機運を維持していくのか、G20で発言された内容も可能な範囲で教えていただけましたら幸いです。 - 総裁)
-
足元の円安傾向の日本のインフレ率への影響というご質問だと思うんですけれども、これは先程申し上げましたような米国経済に関する見方の振れ、それが特に足元はちょっと楽観的な方に振れてる可能性があるというような背景のもとで起こってる現象、ほかの要因もありますが、というふうに思いますので、円安だけではなくて、その背後にあるアメリカ経済動向に対する見方、その他大統領選も関係しているかもしれませんが、この全体を見た上で、それが日本の物価にどういう影響をするかということを、丹念に分析して見極めていくということかなと思っております。
- 問)
-
時間的余裕は。
- 総裁)
-
一応、時間的な余裕はあるというように考えております。
- 大臣)
-
2つ目の質問ですけど、まずアメリカ大統領選挙そのものについては、G20の場所で議論されているわけではありません。その上で、日本というか私の所見をということでありましたが、米国は我が国にとって大変重要な貿易相手国でもありますし、基本的な価値を有するパートナーであり、同盟国の関係にあります。したがって、この行方というものが日本経済に及ぼし得る影響を含めて、しっかりと注視をしていく必要があると考えております。
- 問)
-
加藤大臣に伺います。今、米国の大統領選の話もありましたけれども、IMFの世界経済見通しでも保護主義的な政策が経済に与えるリスクなどについても触れられています。その辺り、今日の世界経済の話の中で、各国で何か共有した認識があったのかということですとか、保護主義的な政策が与えるリスクについてはどのようにお考えでしょうか。
- 大臣)
-
コミュニケの2ページですか、5の中に「世界経済は強靱さを保つ一方で、高い不確実性の中でいくつかの下振れリスクが高まっている。下振れリスクには、戦争と激化する紛争」に加えて「経済的な分断」という言葉が使われております。保護主義という言葉というよりは、むしろ経済的な分断がやはり今の経済の中で表れている、こういった主張はそれぞれあったというように記憶をしています。
- 問)
-
植田総裁にご質問ですが、マーケットは最近、8月初旬の大きな混乱からは安定してきたように思いますが、マーケットの不安定な状態というのは解消されたのか、まだいろいろリスクが残っているのかという点をお願いしたいです。マーケットやアメリカ経済の動向全体を踏まえて、世界経済について、総裁ご自身は以前に比べて若干リスクは後退したというご認識なのか、改めての確認をお願いします。
- 総裁)
-
マーケット動向ですけれども、一応、引き続き不安定な状況にある、あるいは例えばインプライド・ボラティリティ等を見ても、一部のマーケットではかなり高い状態が続いているというふうに考えております。
今後については先程申し上げましたように、これを生み出している背後にある経済に関する認識がどういうふうにいくかということも含めて考えたいと思います。それも含めて、世界経済全体ということですけれども、全体としてはソフトランディングが実現していくという認識は引き続き皆さんの中にあると思いますけれども、国ごとにある程度のばらつき、かなりのばらつきがあるというところに皆さん注意を払っているという点はあったかな、というふうに今回の会合を通じて見ておりました。
- 問)
-
まず植田総裁にお聞きしたいんですけれども、コミュニケの中でもですね、今回の世界経済のソフトランディングについていい見通しを持っている一方で、複数の課題が残っているという形で書かれています。前回はソフトランディングに向けて可能性が高まっているということがありましたけれども、ここについては幾分前回のときよりも下方リスクが高まってきているという認識なのか、この辺りの微妙な議論の内容ですね、もう少し具体的に伺いたいなという点があります。
もう1点、これは加藤大臣に伺いたいと思います。貿易に関連したところですけれども、この下方リスクというところに関して、先程も貿易的な部分、経済的な分断が広がってくるということが影響してくるという話がありましたけれども、改めてここについてのリスク、もう少し分析いただけたらなと思います。 - 総裁)
-
世界経済のリスクの方ですけれども、下方リスクとしては、やはり多くの方が指摘していたのは地政学的リスクですね。具体的には中東情勢であったり、引き続いているロシア、ウクライナの戦争の話、それからインフレは大分収まってきたんですけれども、ひょっとしてインフレ予想が高止まりするっていうリスクはあるかないかという点も多少議論されたかと思います。
それから、今ここまで出ましたような金融市場のボラティリティの高さ等が指摘されました。一方で、上方リスクとして、AI等の技術進歩が思った以上にうまく生産性を向上させていくという点もあり得るかなと、いうことだったかと思います。 - 大臣)
-
2点目でありますけれども、まさに自由貿易が、我が国経済であり世界経済の成長を促してきていると、そうした認識の中で最近の世界経済全体の伸びと貿易量を見ると世界経済の伸びほど伸びていないというところもあると思います。いろんな要因があると思いますが、その1つにはやっぱり経済的な分断の要素がある、したがってこれがさらに広がっていくということになれば、そのこと自体がまさに指摘されているような下振れに対するリスクになりかねないということで、その辺は我々もよく注視していく必要があると思いますし、日本の国益というのはやっぱり自由な貿易が展開されている中でできたという経緯、また得ていくということがありますから、そういう観点に立って対応していくことが必要だと考えています。
- 問)
-
大臣にお伺いしたいんですが、今回のバイ会談について、いろんな方とお会いしたと思うのですけれども、どういった方にお会いしたのか、中国のカウンターパートの方やアメリカのイエレン長官など、お会いする時間はあったのか、教えていただければと思います。
- 大臣)
-
まずバイをやらせていただいたのは、ウクライナの財務大臣と時間をとってバイをさせていただきました。あと、韓国のチェ長官とは、立ち話みたいな形ではありますけれども議論をさせていただきました。ウクライナに対しては、日本のウクライナに対する支援というものを引き続き継続していくという話、チェ長官との間では日韓の関係が非常によくなってきている中で、来年には日韓の国交正常化60周年ということも踏まえて日韓財務対話がありますので、これは日本で開かれますので、そういった中においてこれまでの議論を踏まえて、より議論を、あるいは両国の関係を深めていきたいといったお話をさせていただきました。あとIMFのゲオルギエバ専務理事ともお話をさせていただきました。
(以上)