加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要
(令和6年11月1日(金曜)11時01分~11時11分)
【質疑応答】
- 問)
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先般の衆院選挙において、野党の中にはトリガー条項の凍結解除を訴えている党もありました。財務大臣として、このトリガー条項の凍結解除というのはどのようにお考えでしょうか。
また、野党の中には所得税の非課税枠を引き上げると訴えていた党もありました。実現可能性や考慮しなければならないポイントなど、財務大臣としてどのようにお考えかお聞かせ願えませんでしょうか。 - 答)
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まずトリガー条項については、発動された場合、国・地方の財政への影響が生じるとともに、販売・流通現場への影響などの実務上の課題が指摘されております。令和4年及び令和6年の自民・公明・国民民主党の3党の検討チームにおける議論においても、実務上の課題について解決策を見いだすに至っていないとされております。実際4年のときは私自身が担当をしておりましたけれども、そういった結論に至ったところであります。
これらのほか、国際エネルギー情勢、脱炭素に向けた国際的な潮流や、我が国における2050年カーボンニュートラル目標なども勘案しながら対応していく必要があると考えております。
非課税枠引上げについてでありますけれども、国・地方において減収が見込まれること、基礎控除などの所得控除については、高所得者ほど減税の影響額が大きくなること、こういった指摘もあります。こうした様々な要素を総合的に検討していく必要があると考えています。
- 問)
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野村證券において、国債の相場操縦の課徴金納付命令が下ったこと、それに加えまして野村證券の元職員が強盗殺人未遂で逮捕されたという事件がありました。
最大手の証券会社で不祥事が相次いでいること、これについて大臣の認識をお聞かせください。 - 答)
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まず野村ホールディングス及び野村證券の相場操縦事案についてでありますけれども、昨日、野村ホールディングス及び野村證券が課徴金を納付するとともに再発防止策などの公表を行ったと承知をしております。
市場のゲートキーパーとして、市場の公正性・透明性の確保に貢献することが求められる証券会社において、こうした相場操縦行為が行われていたことは大変遺憾であります。
金融庁としては、公表された再発防止策も踏まえ、野村ホールディングス及び野村證券における法令遵守態勢などの強化に向けた取組の実施状況、これをしっかりとフォローアップし、適切な対応を図っていきたいと考えております。
また、野村證券の元社員が強盗殺人未遂を行ったという報道でありますけれども、大手証券会社の元社員が強盗殺人未遂などの疑いで逮捕されたことは極めて遺憾ではありますが、それ以上は捜査に関することでもありますのでコメントは控えたいと思います。
- 問)
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先程の質問とも関連するのですが、国民民主党が所得減税を主張しておりまして、これが実施された場合、防衛費の財源に一部所得税を活用することになっていたと思うのですけれども、こうしたことに与える影響というのは何か考えられますでしょうか。
- 答)
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まず国民民主党の訴えられる年収の壁対策を実施した、あるいは非課税枠を75万円引き上げたという場合には、国・地方において一定の仮定をおいて減収額を機械的に計算しますと、国・地方合わせて7兆から8兆円程度の減収と見込まれているところでございます。先程申し上げましたことも含めて、総合的に議論していく必要があると思います。
今おっしゃった防衛の話とこれ、大体税の話はそれぞれ別々に議論していくわけでありますから、もちろんトータルとしての税収に与える効果というのは視点としてあるとは思いますが、基本的にはそれぞれにおいて議論されるべきものと考えています。
- 問)
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重ねて所得税の基礎控除の引上げについて伺います。90年代までは急激なインフレに伴って、課税の最低ラインを引き上げるということを財務省としてもやってきたと思うのですけれども、昨今の物価高の状況などを見て、この最低ラインを物価の上昇に伴ってインフレ調整していくべきだというような議論がありますが、その考え方については大臣どのようにお考えでしょうか。
- 答)
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おっしゃるとおり、昭和41年から59年まで小刻みに基礎控除は引き上げられてきました。そのときには、中小所得者の所得税負担の緩和を図るという観点でそうした議論がなされ、実際されていたと思っております。
また、平成元年においても引上げがなされたところでありまして、そのときにも、昭和52年及び59年を除き見直しが行われていないことから、控除の水準が相対的に低くなっており、有業人口に占める所得税納税者の割合も高くなってきているというようなことが税調答申等に書かれていた、それが当時の認識だと思います。
そうしたことも含めて、先程申し上げた観点も入れて総合的に勘案していくものだと考えています。
- 問)
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先程からご指摘のあるとおり、実際75万円引き上げれば7~8兆円規模の税収減につながるであるとか、あとは恒久的な減税につながってしまう可能性もあって、財政への影響が大きく懸念されるところでありますけれども、今後議論が進むにあたって、財務大臣としてはどういった点を重点的に議論されるべきとお考えでしょうか。
- 答)
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まだ、まずは政党間の中で議論されると思います。その趣旨がどのような趣旨なのかなども含めて、いろいろな議論がなされていくのではないかなというように思っておりますので、そうした議論も踏まえながら、先程も申し上げたように様々な観点に立ちながら、政府は政府として議論、検討を進めていきたいと考えています。
- 問)
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特に財源の部分を重点的に議論するべきであるとか、政策の効果であるとか、加藤大臣として重視する視点というのがもしあればと思ったのですけれども。
- 答)
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どこだけを取り立てて重視するというより、それぞれの、もちろん仮に減税につながるとしたら財源はどうするのか、こういうことをしたらこういう問題はどうするのかなど、様々な論点が出てくると思いますので、それは幅広く議論していく必要があると思います。
- 問)
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今の財源という部分にも関わってくるかと思うのですが、国民民主党の玉木代表が基礎控除などの引上げによる所得税減税などを主張する理由として、取り過ぎた税金は国民に還元するべきだと発言しております。
財務省として、税収というものは取り過ぎているのか否かというご認識を伺います。 - 答)
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個々の党首のご発言にコメント申し上げる立場ではありませんので、それはそういう発言があったのかもしれませんが、それとは別として、先程申し上げた様々な観点に立って議論、あるいは検討を進めていきたいと考えています。
- 問)
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基礎控除の引上げで税収が減りますという一方で、国民民主党の玉木代表がおっしゃるのは、その分だけ手取りが増えます、ひいては所得税も増えるのではないか、法人税も増えるのではないかという、こういうロジックを展開されていますけれども、加藤大臣としてはこのロジック自体には賛成のお考えでしょうか。
- 答)
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ロジックというか、それはむしろ検証されるべき話だと思いますので、まさにデータに基づいた政策分析という観点から議論すべき話だと思います。
(以上)