和田大臣政務官記者会見の概要

(平成23年7月14日(木)18時30分~18時52分 場所:金融庁会見室)

【政務官より発言】

今日皆様方に発表させていただくのは、振り込め詐欺救済法に関して、プロジェクトチームを設けて検討してきたのですが、その結果をご報告しながら、今後の取り組み方針をご説明したいというふうに思います。

まず、この振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺等の犯罪利用口座を凍結もしくは失権させて、その口座から被害者に返金を行うことを規定している法律です。そして、それは(平成)20年6月に施行されていますが、それ以来、約44億円を被害者に返金させていただきました。5月末現在の数字でございます。

そして、その部分はそれでよろしいのですが、他方、被害者から返金申請がございませんために、お返ししたくても出来なかった残りのお金がございます。これが約45億円ございまして、このお金が預金保険機構の方に納付されているということでございます。このお金については、この振り込め詐欺救済法上、「犯罪被害者等の支援の充実のために使用する」というふうに規定されているわけです。

こういった規定・状況を踏まえまして、昨年9月に金融庁・内閣府の中の犯罪被害者施策担当の部門でございますが、そちらと財務省、こうしたところを担当しております政務によるプロジェクトチームを設けて、検討したところでございます。

お手元の資料、「プロジェクトチーム案」というのがございますが、ちょっと厚目の資料になっているものです。それの12ページをご参照いただくと、その経緯が書いてございます。

そして、このプロジェクトチームで計4回のヒアリングを実施させていただきました。その次のページにそれが書いてございます。

そして、この検討課題としてどんなものがあったかということをご紹介したいと思いますが、大きく分けて三つほどございました。

その一番大きな課題として検討したのが、犯罪被害者等の支援の充実のために使用すべき預保納付金の具体的な使途、どういったものに使うべきかという論点でございます。

そして、その論点をこなしていく上での課題として、後の二つがあるというふうに思っておりまして、その最初が被害者への返金率の向上、先ほど申し上げたとおり、元々は被害者の方にお返しするというふうに規定されておりますので、それをできるだけきっちりお返しするというために、どのような努力を払うかということでございます。

そして、もう一つが、そういう返してもらう意向はあったのだけれども、何かの事情があって、その権利を失ってしまった、失権された預金者を救済するために預金保険機構に留保しておくべき金額の割合、つまり、一旦は法律の規定上は、その方は権利を失うのですが、もう一度、預金保険機構の方に納付された後、そうは言え、権利を主張された方については、ちゃんとお返しするような備えが必要であろうと、それをどれぐらい持っておくべきだろうかということでございます。

以上、三つの論点について、色々とプロジェクトチームでヒアリングもさせていただいたということでございます。その議論の推移として、まずは返金率向上のための取り組みを進めつつ、預保納付金の具体的な使途などについて検討をしたということでございます。

返金率の向上につきましては、累計の返金率が今まで49%ということでございましたが、プロジェクトチームが発足して以降、この1年弱の間の足元の返金率は約70%まで上昇いたしておりますので、その中で議論して取り組んでいただいていることが、ある程度功を奏しているのではないかというふうに思っています。

さて、本日のこの会見の進め方ですが、以上、私の方からご紹介しましたが、これからもうしばらく私の方から、先ほどご紹介しました三つの論点のうち、一番大きな論点として登録しました具体的な使途、資金の使途について、どのような検討を行って、今これから対処しようとしているかということをご説明して、それについての質疑をお受けしたいと思います。

そして、私の方はそこまでで、こちらの方を失礼させていただきますが、その後、先ほど申し上げたような、あとの二つの論点について、どのような内容となっているかということをご説明し、質疑を受けさせていただくというふうに進めたいと思っております。

それでは、その具体的な資金使途についてということでございます。ちょっとお手元の資料は色々な種類がございますが、最初の表紙の方をご覧になっていただきながら、またちょっと図解ですが、こういった大きめの資料も用意させていただいておりますので、ご覧になっていただきながらお聞きいただければというふうに思います。

まず今回、色々検討しました結果、この具体的な資金の使途として考えているのは大きく二つでございます。その一つが、一言で言うと「奨学金制度を作らせていただきたい」という点です。もう一つが「被害者支援団体の方を助成したい」ということでございます。この大きな二つの使途をもって臨みたいと思っています。

最初の方の使途の奨学金についてでございますが、これを設けたいと思った趣旨は、先ほど申し上げたとおり、法定してあるのは「犯罪被害者等の支援のために使いなさい」というふうに書いてございます。そこで、できるだけ返金率を高めて、しっかりとそのお金を返すという努力しながらではございますが、そうは言え、残ったお金を「犯罪被害者等」という言葉を見たときに、どのような方々にご支援申し上げるべきだろうかという視点を持って議論したわけでございますが、私自身も実は思いがあって皆様方にご提案していくわけです。犯罪被害者、犯罪の被害者となった方の中でも、そのお子さん、大人の方が被害に遭われて、そして亡くなられるとか、実際に相当な経済的な窮地に陥られるとか、そういったことが生じるわけですが、その中でも、お子さんを育てていらっしゃったところ、そういったところで子どもがそこから先の人生を送る上で、かなり苦境に立たされているという実情があるかと思います。

そして、全体の民主党政権としても、そうした子供への温かい目線というのが必要であろうということもありまして、今回ぜひ、この犯罪被害者のお子さんへの教育機会の確保等を目的に、奨学金制度を設けさせていただきたいと(思っております)。

これを考えるのに、一つの支援材料となるのは、菅総理も就任時以来申し上げてきたことですが、やはり社会的に苦境に立っている方々は、実際に社会全体で包摂して、温かく支えるということが必要であろうというふうに思っていまして、今まで色々お聞きしましたところ、犯罪被害者の子供に対して、具体的にそういったことを手立てとして講じているという政策が見当たらなかったものですから、これをぜひ、この機会に実現したいと思っているわけでございます。

そして、大きなスキーム上の条件として申し上げれば、そういうふうな支援を行っていきたいのですが、奨学金制度の中では無利息貸与としたいというように思っています。ご質問が来る前にお答えしておきますが、なぜ給付でないのかと。本当に困っていらっしゃるのであれば、お金を渡した方がよいのではないかと、将来返してもらうお金にするのではなくて、渡し切りにした方がいいのではないかというようなことも、ご意見としてあろうかと思います。

しかし、その点こそ、私自身が少し思いとして持っているところでございまして、自分自身が、実は中学校から大学を出るまで、ずっと奨学金生活を送ってきた人間でございます。しかも、それは給与ではなくて貸与で、ずっとお金をお借りしてきた方の立場でございます。その実体験をもとに申し上げると、社会に対して自分がどれほど、きっちりとお世話になって育ったかということを自覚し、そして、大人になってから自分が社会に貢献するという意欲を持ってもらうためにも、給与よりは、むしろ貸与の方が自覚を目覚めさせるのによいのではないかというふうに思っている次第です。

また、もう一つは、自分自身も借りた奨学金の出元に対して本当に感謝していますが、それ以上に自分が受けた奨学金のありがたさを、後世代の人に伝えていく。そして、その後世代の人たちにも、しっかりとお金を貸与で受け取っていただいて、社会的にお世話になったという感覚のもとに社会に貢献するという自覚を持っていただく。そのように、世代間でこういった仕組みを受け渡していって、持続的に運営することが非常に大切ではないかというふうに思っています。そういったことから、もろもろ検討いたしましたが、無利息貸与としたいと考えています。

貸与の対象として、犯罪被害者として先ほど申し上げたとおりですが、その中でも義務教育を終えた後、高校生から大学院生まで、つまり、お仕事を持たれるまでの過程で学問を一生懸命頑張りたいと思っていらっしゃるお子さんたちを、支援の対象としたいと思っています。

貸与の上限としては、大体でございますが、大学生では月10万円程度、そして高校生では月数万円程度というふうに考えていまして、これらの金額で行うことによって、年間200人から300人程度の方々を対象にお貸しすることができるというふうに思っています。

実際に、返済としては先ほど申し上げたとおりで、社会的に貢献していただく中で無理なく返済していただく、もっと言うと、実際にありがたみをしっかりと感じていただけるだけ、ゆったりと返済できるように20年から30年間の長期の期間で返済していただくことを考えています。ですから、これらを考えれば、実質金利の部分は給与というふうにも見ることはできると思います。

さて、二つ目の柱です。二つ目の柱の被害者支援団体助成についてでございます。ここのところを柱として設けさせていただきたいと思ったのは、実際にヒアリングで色々な方々にご意見をお伺いしてみましたが、現状は、犯罪被害者への支援を行っていただいている方はたくさんいらっしゃるのですが、本当にその方々の自力で、何とか必死に頑張っていただいているという実情のようですが、やはりそのニーズも高まっていて、また対応も複雑になっていることから、なかなか十分な支援ができていないという実情をヒアリングでお伺いいたしました。

実際に事件について、相談相手になってあげること、そして、何か裁判が、要するに手続上必要であれば、それの手助けもしなければいけない、もっと言うと、犯罪被害に遭った後、何らかの形で障害が残っている場合には、病院などへ付き添いで行かなければいけない、こういったところも、今民間のボランティア団体の方が色々やってくださっていたりするのですが、そうしたところをもっと、今の政権の政策の柱である新しい公共の担い手として登録して、育成・発展を図っていく必要があるのではないかというふうに考えた次第です。

先ほど申し上げたとおり、こういったものを支援の柱に据えて、今までも取り組んできていただいている相談業務や病院つき添い業務など、そういったものにしっかりと当たっていただけることを期待しているということでございます。

こういったことを考えているわけですが、もう一つ申し上げれば、先ほどお金は預金保険機構の方に納付されている状態だということをお話ししました。それを預金保険機構がそのまま、こういった業務の担い手となるということが如何かというように考えたのですが、皆様方ご存じのとおり、預金保険機構には、その本来業務として、大きな使命を担っていただいています。そういったことから、これらの業務については、別途どこか知見のある団体にゆだねたいというふうに考えています。

適切な担い手を透明性の高い手法で選んでお願いするということを担保したいというふうに思っているので、今回、このプロジェクトチーム案としてまとめたものを皆様方に意見募集させていただく中で、この担い手についても募集させていただきたいというふうに考えています。

そして、その意見募集期間として、これから約2週間程度を考えておりまして、他にも色々内容が盛りだくさんでございますが、広く国民の皆様方からご意見を募集したいというふうに思っています。

私からまずお話ししたいことは以上でございますので、あとは質疑応答にお答えしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【質疑応答】

問)

ご自身のご体験も含めてお話になったのですが、この案を検討していく中で一番ポイントとしたところというのは、今もう一度振り返られてどこの点だと思われますか。

答)

先ほど申し上げたとおり、一番の論点は、犯罪被害者等の支援のために使いなさいと。法定されている枠組みを超えることはできませんが、その法定された枠組みの中で、具体的にどういう使い道を考えるかということに尽きています。その中で、色々可能性はあるわけですが、一つ着目したのは、犯罪被害者のお子さんということでございます。

問)

マガジンXの神領と申します。

犯罪被害者への奨学金助成はとてもいいと思うのですけれども、これはもちろん、振り込め詐欺で被害に遭った親御さんのお子さんということでしょうし、それは実際どれぐらいの人数を想定して、その分母が年間2、3百人という数字が出てくるのですか。そんなにいるのでしょうか、被害者のお子さんというのは。

答)

「犯罪被害者」という言葉の定義は、先ほどおっしゃったところでは、「振り込め詐欺に合った犯罪被害者」というふうにおっしゃったかと思うのですが、もう少し、そこは範囲として幅広く考えてよいというふうに我々は考えています。

つまり、お子さんの育っていく過程の方に着目した場合に、本当に親御さんが、社会的に見てお気の毒だと思えるような状態で犯罪被害に遭ったということであれば、振り込め詐欺に限定する必要はないのではないかというふうに思っています。

そうした意味では、母数としては、かなりあるのではないかというふうに思っていて、先ほど申し上げた担い手を探しているということは、まさにその裏返しでもあるわけですが、今、私どもの預金保険機構の監督を担っている金融庁の私を含めて担当者が、どれぐらいの人数がいるのかと聞かれたときに即座にお答えができないのも実情です。しかし、世の中には、相当犯罪被害者のご子弟で困っていらっしゃる方がいるということを、ご存じの方はたくさんいらっしゃるのではないかと思っていまして、そうした方々を担い手となる団体の方々にしっかり機能していただきながら、発掘してお貸しするということだろうと思っています。

問)

補足ですけれども、そうすると、かなり拡大解釈しているのではないかという懸念や、それから犯罪被害者のための救済とか支援であれば、他の分野があるのではないか。ところが、このお金を持ってこなければいけないというのは、ちょっと必然性を感じない気がするのです。そんなことはないのでしょうか。

答)

他にも犯罪被害者に対する支援というのは、色々な切り口で行われているのはよく存じ上げています。私どもが今回着目したのは、そのご子弟ということでございます。そして、その部分について、当然ながら論理的に、そこにくくらなければいけないことを説明することはできないわけですが、我々が眺めてみたときに、社会的ニーズの高いところではないかと思ったので、そこに使わせていただきたいというふうに申し上げたつもりです。

問)

「そこに金があったから使う」というふうに聞こえるのですね。そこに49億(円)あるから、その金を、宙に浮かしても仕方ないと、何かいい手立てがないかというふうに、ちょっと僕からすると、先にお金ありきで、さあこのお金をどう使おうかというふうに聞こえるのですね。そんなことはないのですか。

答)

おっしゃっているところの一部分は、もしかするとそうかも分かりません。実際にお金があるのを、むしろ我々の行政の責務としては、そのまま放置しておいたのでは、犯罪被害者等の支援になっていないわけですので、そこにあるお金を当然先ほど申し上げたとおり、できるだけ被害者の方々にお返しすることをやりつつも、どうしてもご自身で返金を望まない方々には、申請してくださらないとお返しできませんので、そういったことからして、どうしてもその額は、納付されてしまうわけです。

そのお金があるものですから、そのお金の使い道として、「犯罪被害者等の支援に使う」というふうに(法律に)書いてある以上、それをそのまま放置することなく、何とか具体的な使途を考えて、そこに役立てていく責務が、私どもには法律上与えられているというふうに考えているわけです。

問)

今回の助成の対象として、振り込め詐欺の被害者への追加的な返金よりもこちらを優先させた理由について、改めて教えていただけますか。

答)

分かりました。

実は、ヒアリングを通じてということになるのですが、私自身も振り込め詐欺の犯罪被害者方々をかなり存じ上げていまして、そうした方々とも意見交換をしてみたのですが、第一に、それらの方々が、本当にお金が残っているのであれば、ぜひ自分のところに返して欲しいとおっしゃるだろうかということをお聞きしてみました。あくまでサンプリング調査にしかすぎないのですが、むしろ、そこは非常にありがたいお心だというふうに感じましたが、犯罪被害者の方々ご自身も、これ以上、労力をかけて自分たちのところに返金するよりも、ぜひ社会的に役立てる資金に使ってほしいというふうにおっしゃる方がたくさんいらっしゃいました。

そうしたことから、先ほど申し上げたように、返金率を向上させることには取組みますが、そこから先、残ってしまったお金について、先ほどおっしゃっていた趣旨からすれば、見つかっている返金すべき方々に、もう一回重ねてご返金申し上げるということになってまいりますが、その方々もそれをそう望んでいらっしゃらない。そして、もっと言えば、今まで発見できていなくて、返金できていない方々もいらっしゃいますが、そうした方々との間では、逆に上乗せして支給することによって、差は出てきてしまいます。

そうしたこともあって、最終的に使い道として、その返金の上乗せに使うべきか、もしくは、他のところに使うべきかという判断で、後者となったということでございます。

事務方からも色々実情を聞いてみたのですが、実際に返金しようと思ったときに、当然ながら事務コストも相当かかるわけなのです。そうすると、45億円ぐらいあるお金のうち、実際に経済的にお役に立つ資金の額がそれだけ分、目減りします。そうしたことをトータルで考えると、やはり、ここから先は別途、資金使途を考えて、そこにお役立てするのがいいのではないかと判断したわけでございます。

どうもありがとうございました。また是非、よろしくお願いいたします。

(以上)

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