III  主要行等監督上の評価項目

III -6 利用者ニーズに応じた多様で良質な金融商品・サービスの提供

III -6-1 総論

  • (1)規模が大きく我が国経済に大きな影響力を有し、かつ国際的な金融活動を展開している主要行等においては、利用者のニーズに応じた多様で良質な金融商品・サービスを提供し、我が国経済の発展と国民生活の向上に寄与することが求められる。

  • (2)どのような金融商品・サービスを提供するかについては、様々な商品・サービスの中から、各銀行が自らのビジネスモデルを踏まえて、自主的な経営判断により選択すべきものであるが、具体的な例としては以下のような取組みが期待されている。

    • マル1市場型間接金融への取組み

      例えば、

      • プロジェクトファイナンス
      • ノンリコースローン
      • シンジケートローン
      • 貸出債権の証券化
      • 顧客企業の債券発行支援 等
    • マル2新しい中小企業金融への取組み

      例えば、

      • キャッシュフローを重視し、担保・保証(特に第三者保証)に過度に依存しない融資への取組み
      • 財務諸表の精度が相対的に高い中小企業に対する融資プログラムの整備
      • 信用リスクデータベースの整備・充実及びその活用(審査の高度化、適正な貸出金利の設定、ポートフォリオの適正化等) 等
    • マル3個人向け(リテール)金融への取組み

      例えば、

      • 個人のリスク選好やライフサイクルに応じたニーズの高い金融商品・サービスの提供
      • 住宅ローンや、スコアリングシステムを活用した個人向け信用供与 等
    • (参考)

      • マル1「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン」(平成14年9月30日:金融審議会)

      • マル2「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」(平成15年3月27日:金融審議会)

      • マル3「地域密着型金融の取組みについての評価と今後の対応について-地域の情報集積を活用した持続可能なビジネスモデルの確立を-」(平成19年4月5日:金融審議会)

    • マル4将来の成長可能性を重視した取組み

      各銀行に期待される取組みについては、III-6-2を参照。

  • (3)監督手法・対応

    決算ヒアリング、リスク管理ヒアリング、内部監査ヒアリング( II -1-1-2参照)等を通じて、取組み態勢・取組み状況について確認する。これらを踏まえ、必要に応じて、監督上の対応を検討する。

    また、これらの取組みに当たって、商品・サービスのリスク・リターン特性や、融資に関する金利や収入の変動等に伴うリスク等について、適切な説明責任を果たすことが必要であるが、こうした説明責任については、「 III -3-3 利用者保護のための情報提供等」を参照すること。

III -6-2 将来の成長可能性を重視した融資等に向けた取組み

III -6-2-1 意義

金融が実体経済、企業のバックアップ役としてそのサポートを行うとともに、金融自身が成長産業として経済をリードするためには、金融機関が、支援対象の特性等に適した成長資金を供給する取組みを行っていくことが重要である。こうした取組みを更に促進させる観点から、考え方を整理し、明確化した。

(参考)「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」(平成22年6月18日:閣議決定)

III -6-2-2 成長可能性を重視した融資等の取組みに係る基本的考え方

銀行による成長可能性を重視した融資等の取組みについては、各銀行の自主的な経営判断により実施されるべきものであるが、例えば、以下に例示される取組みを行うなど、企業の技術力・販売力・成長性等、事業そのものの採算性・将来性又は事業分野の将来見通し(以下「企業の成長性等」という。)を重視した融資態勢の整備が図られていることが期待されている。

(参考)具体的な態勢整備の例

(なお、以下の態勢整備はあくまで例示であり、成長可能性を重視した融資等の取組みについては、各銀行が自主的な経営判断により行うべきものであることに留意する。)

  • マル1経営陣が、企業の成長性等を重視した融資等への取組みについて、融資に係る方針等に位置付けていること。

  • マル2企業の成長性等を重視した融資等の取組みを推進する担当部署又は担当者の指定又は配置等、銀行内における体制が整備されていること。

  • マル3企業の成長性等、事業分野別の業況等又は取引先企業の顧客に関する情報(ニーズの動向)等について、十分に調査・分析・議論した上で、営業店と本部との適切な連携により組織全体でこうした情報等を共有し、営業(取引先企業に対する経営相談等を含む。)及び融資審査の過程で適切に活用していること。

    また、必要に応じて、営業(取引先企業に対する経営相談等を含む。)及び融資審査の過程で、外部専門家・外部機関等との連携を通じて、企業の成長性等を客観的・合理的に評価していること。

  • マル4融資審査の過程で企業の成長性等を適切かつ十分に評価することが、融資審査に関する内部規程等に盛り込まれていること。

  • マル5企業の成長性等を重視した融資等への取組みの重要性について、融資担当者や審査担当者に周知徹底を図るとともに、研修・教育等を通じ、成長性等を適切に評価する能力の向上に努めていること。

III -6-2-3 監督手法・対応

銀行による成長可能性を重視した融資等の取組み状況について、ヒアリング及び通常の監督事務等を通じて把握する。

III -6-3 消費者向け貸付けを行う際の留意事項

III -6-3-1 意義

我が国における消費者金融市場を、中長期的に健全な市場として形成する観点から、同市場における個人向け貸付け(住宅ローンを除く。以下「消費者向け貸付け」という。)について、銀行による社会的責任も踏まえた積極的な参加が望まれる。

一方、銀行が消費者向け貸付けを行う場合、適切な審査や厳しい取立ての防止など、改正貸金業法(平成22年6月施行)における多重債務の発生抑制の趣旨や利用者保護等の観点を踏まえ、所要の態勢が整備されることが重要である。

また、貸金業者による保証を付した銀行による貸付けには、改正貸金業法第13条の2に規定するいわゆる総量規制等、同法の適用はないが、顧客保護やリスク管理の観点から、本項に規定している所要の態勢整備を図ることが重要である。

III -6-3-2 主な着眼点

  • (1)改正貸金業法の趣旨を踏まえた適切な審査態勢等の構築

    • イ.借入状況や返済計画、返済実績、年収や資産の状況などを踏まえ、顧客が借入申込額に対して返済能力を有していることを確認する仕組みを審査過程に設けるなど、銀行による貸付けが顧客にとって過剰な借入れとならないよう顧客の実態を踏まえた適切な審査態勢が構築されているか。

    • ロ.消費者向け貸付けは、信用情報機関の情報を利用した審査や債権管理・回収など特有の手法が存在する。この貸付け手法に伴うリスクを把握し、適切に管理し、経営陣がその状況を理解して必要な指示を行っているか。

  • (2)審査等における第三者が保有する信用情報の利用

    消費者向け貸付けの審査や債権管理(以下この項において「審査等」という。)に当たり、借り手消費者の返済能力等に関する信用情報が自行に乏しい場合、これを補う手段として信用情報機関の情報を入手したり、信用保証会社の保証審査を受けたりする場合がある。

    その際、次の点に留意したリスク管理態勢が構築されているか。

    • イ.審査等に当たっては、信用保証会社の保証諾否の結果や信用情報機関の情報のみに依存することなく、自ら保有する情報と共に活用することで、債務者の状況を銀行として適切に判断する態勢が整備されているか。

    • ロ.貸倒実績率や信用保証会社による代位弁済率の推移等を把握し、信用情報としての保証諾否等の結果の適切性を継続的に検証できる態勢が整備されているか。

    • ハ.特に信用保証会社を利用する場合には、当該信用保証会社の財務状況や保証能力を確認する態勢が整備されているか。

    • ニ.上記ロ.及びハ.の態勢整備を行うとともに、必要に応じ、信用保証会社や信用情報機関と保証審査や情報処理の適切性について協議しているか。

    • ホ.当該信用保証会社や信用情報機関において、適切な保証審査や情報処理の手続きが規定され、かつ、当該規定に基づき業務が適正に運営される態勢が整備されていることを確認しているか。

  • (3)法令遵守等

    • マル1改正貸金業法の趣旨を踏まえた対応

      銀行が消費者向け貸付けを扱う際にあっても改正貸金業法の規制の趣旨を踏まえたうえで、顧客保護等の観点から、例えば下記のような態勢が整備されているか。

      • イ.回収・取立てに関する事項

        消費者向け貸付けの回収や取立ての際、人を威迫し、又は人の私生 活若しくは業務の平穏を害するような言動をしない態勢を整備しているか。また、代位弁済後の求償権実行の際、信用保証会社による過度の督促や強引な回収が行われないよう、予め信用保証会社の回収手続きを確認するなどの態勢を整備しているか。

      • ロ.苦情処理態勢

        苦情等対処に関する内部管理態勢を確立する際には、債務者のみならず信用保証会社が代位弁済を行った場合の元債務者への対処も踏まえた態勢が整備されているか。

        なお、相談・苦情の内容に応じ、顧客保護や顧客の生活再建の観点から、外部機関や地方公共団体等の相談センターや弁護士会等を適切に紹介するなどの取組みを行うことが望ましい。 

    • マル2反社会的勢力との関係遮断

      資金使途を問わない消費者向け貸付けの場合であっても、反社会的勢力との関係を遮断する態勢を整備しているか。また、ヤミ金融からの借入が判明した顧客に対しては、関係機関に相談するよう指導する態勢が整備されているか。

    • マル3その他

      子会社等(銀行及びその銀行持株会社の子会社、子法人等、関連法人等)の信用保証会社の保証を付した融資に取り組む場合、当該子会社等の信用保証会社との取引が実質的に同社への支援となっており、銀行法第13条の2(いわゆるアームズ・レングス・ルール)に違反していないか。

III -6-3-3 監督手法・対応

各種ヒアリング及び検査結果等により、消費者向け貸付けの業務運営体制に問題があると認められる場合には、法第24条に基づき報告を求めて検証し、検証の結果、業務運営の適切性や顧客保護に重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

また、検証の結果、経営として、法第12条の2第2項及び施行規則第13条の7に規定する「健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置に関する社内規則等(中略)を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備」することを怠っていたことにより、貸付けの回収若しくは取立ての際に人を威迫し、又は人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動を反復・継続するなど、重大な法令違反又は公益を害する行為が認められるときは、法第27条に基づく業務停止命令を検討する必要があることに留意する。

なお、行政上の判断に当たっては、本監督指針における「銀行に関する苦情・相談」、「信用リスク管理」、「反社会的勢力による被害の防止」、「利用者保護のための情報提供・相談機能等」、「顧客等に関する情報管理態勢」、「外部委託」、「苦情等への対処(金融ADR制度への対応も含む)」、「子会社等の業務範囲」、「銀行代理業」など消費者向け貸付け以外の業務等に関する監督の着眼点や手法・対応も十分に踏まえる必要がある。

III -6-4 障がい者等に配慮した金融サービスの提供

III-6-4-1 意義

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)により、事業者には、障害者に対する不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の努力義務が課せられており、これを遵守する必要がある。

また、銀行は、成年後見制度等の対象でなく意思表示を行う能力がありながら、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために銀行取引における事務手続き等を単独で行うことが困難な者(以下「障がい者等」という。)に対しても、視覚や聴覚に障がいのない者等と同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある。

このため、各銀行においては、障がい者等に関する法令等を遵守するとともに、平成22年8月26日付で金融庁監督局長が金融機関業界団体等に対して発出した要請文「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進について」に示された「視覚障がい者対応ATMの増設」や「複数の行員の立会いによる視覚障がい者への代筆及び代読の規定化並びに円滑な実施」など、視覚障がい者からの要望等を踏まえた取組みを積極的に推進するよう努めることが重要と考えられる。

III-6-4-2 主な着眼点

  • (1)総論

    • マル1「金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(平成28年告示第3号。以下「障害者差別解消対応指針告示」という。)の各規定に基づき、適切に対応しているか。

    • マル2自行の店舗若しくは設備又は取引に係る手続きにおいて、障がい者等の金融取引の利便性を向上させるよう努めているか。

      また、銀行の店舗若しくは設備の新設又は新しい手続きの導入の場合に、必要に応じて、障がい者等に配慮した仕様を検討しているか。

    • マル3銀行が、障がい者等に配慮した取組みを推進するにあたっては、国及び地方自治体などにおける障がい者支援に係る施策を確認し、必要に応じて、銀行のサービスにおいても利用するなどしているか。

    • マル4障がい者等から銀行に対し、意見(相談、苦情を含む。)があった場合、それらを踏まえた取組みを行うよう努めているか。また、障がい者等からの意見を完全に実現できない場合であっても、代替策を検討するなどしているか。

  • (2)業務運営態勢等

    • マル1自筆が困難な障がい者等への代筆について

      障がい者等のうち自筆が困難な者(以下、「自筆困難者」という。)から、口頭で預金口座開設等の預金取引や融資取引の申込みがあった場合、以下に示す自筆困難者の保護を図ったうえで、代筆を可能とする旨の社内規則を整備し、十分な対応をしているか。

      なお、自筆困難者からの当該申込みは「口頭による意思表示」に当たると考えられるため、取引関係書類への代筆は、当該申込みに係る意思表示の範囲内に限られることに留意する必要がある。

      • イ.預金取引の場合

        • a.自筆困難者が、預金取引に関して意思表示した内容を次に掲げる者に代筆を依頼した場合、依頼を受けた者による代筆が可能であることを定めているか。

          • i)自筆困難者と同行した者(注1、注2、注3)

          • ii)銀行の職員(複数の職員が確認するものとする。)

        • (注1)自筆困難者が来行せず、当該者からの依頼を受けたとする者のみが銀行に訪れた場合、自筆困難者本人に対して、当該来行者への代理権授与の意思や取引意思を確認することとしているか。

        • (注2)自筆困難者が単独で銀行に訪れた場合は、上記 i )の者との再度来行を求めるのではなく、銀行の職員が代筆することとしているか。

        • (注3)自筆困難者が、例えばヘルパー等の同行者に、代筆を依頼する意思がない場合、当該同行者へ代筆を依頼するよう求めるのではなく、銀行の職員が代筆することとしているか。

        • b.上記a.の社内規則等に、少なくとも以下のことを代筆の際の手続きとして定められているか。

          • i)自筆困難者の意思表示の内容を記録として残すこと。

          • ii)親族や同行者が代筆した場合は、銀行の職員が複数で代筆内容を確認し、確認した事実を記録として残すこと。

          • iii)銀行の職員が代筆した場合は、複数の職員が確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すこと。

      • ロ.融資取引の場合

        自筆困難者が、融資取引に関して意思表示した内容について、推定相続人や第三者保証提供者など返済義務を承継する可能性のある者(自筆困難者と同行した者に限る。以下「同行推定相続人等」という。)に代筆を依頼した場合、当該依頼を受けた者による代筆が可能とすることを定めているか。

        その際、少なくとも以下のことを社内規則に定めているか。

        • i)自筆困難者の意思表示の内容を記録として残すこと。

        • ii)同行推定相続人等が代筆した場合は、銀行の職員が複数で代筆内容を確認し、確認した事実を記録として残すこと。

        • iii)同行推定相続人等以外の者による代筆を認める場合、複数の職員が立ち会い確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すこと(注)。

          (注)同行推定相続人等がいない場合であっても、そのことのみをもって融資を謝絶すると、自筆困難者の自立した日常生活及び社会生活の確保を困難にさせるおそれがある。

          このため、銀行は、自筆困難者の日常生活や社会生活を確保する観点から、公証人制度の利用や弁護士の立会いを求めるなどの解決策を検討することが重要と考えられる。また、当該対応策による融資の際は、銀行の本部や地域本部等の権限のある役席者が確認する態勢を設けるなど、後において、債務の存否を争うようなトラブルが発生しないよう留意する必要があると考えられる。

    • マル2視覚に障がいがある者への代読について

      視覚に障がいがある者から要請がある場合は、銀行の職員が、当該者に係る取引関係書類を代読する規定を整備しているか。その際、個人情報の漏洩を防ぐとともに、複数の職員が代読内容を確認し、その確認をしたという事実を記録として残すこととしているか。

    • マル3本人特定事項の確認について

      本人確認書類として障がい者手帳が利用されている場合は、本監督指針「III-3-3-3顧客等に関する情報管理態勢」を参照する。

    • マル4情報発信について

      障がい者等に配慮した取組みを行っている店舗や全盲の利用者も単独で利用できる機能を付加したATM(以下「対応ATM」という。)等の場所や内容(音声誘導システムの有無などを含む。)について、銀行が、障がい者等の視覚・聴覚等で認識されるよう、情報発信に努めているか。

      また、障がい者等に配慮した取組みを行っている場合、その事例をCSR(本監督指針「III-7企業の社会的責任(CSR)についての情報開示等」を参照のこと)事例として積極的に公表することが望ましい。

    • マル5相談苦情対応について

      本監督指針「III-3-5-2苦情等対処に関する内部管理態勢の確立」を参照することとする。

      特に、障がい者等から、自立した日常生活及び社会生活を確保することに係る業務に関わる相談苦情等を受けた場合、その改善に向けた検討や取組みを行うよう努めているか。

    • マル6研修等について

      銀行として、障がい者等に配慮した取組みのために整備した態勢の実効性を確保するため、顧客対応を行う全職員に対し、障がい者等に配慮した態勢について研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)により周知しているか。

  • (3)店舗・設備等

    • マル1銀行の店舗や設備が、障がい者等に利用されやすい仕様となるように配慮しているか。なお、当該店舗が建物賃借や借地関係にある物件である場合も、障がい者等から要望がある場合は、当該物件の賃貸人や地権者にも協力を仰ぐよう努めているか。

    • マル2個々の営業店においても、必要に応じて、障がい者等の金融取引の利便性を向上させるよう努めているか。

    • マル3特に、視覚障がい者への対応については、例えば、以下のことに努めているか。

      • イ.対応ATM(振込みが可能なものや暗証番号の変更が可能なものが望ましい。)並びに画面のコントラスト及び文字が拡大できるもの(大きな画面で、タッチパネルでないものが望ましい。)の設置に配慮しているか。

      • ロ.店舗入口から当該対応ATMまで、視覚障がい者を誘導するブロック(以下「点字ブロック」という。)を敷くなどの配慮を行っているか(当該店舗が建物賃借や借地関係にある物件である場合は、視覚障がい者からの要望に応じ、所有者等にも配慮を求めるよう努めているか。)。

        なお、点字ブロックの設置が、車椅子等の移動の障害になる場合も想定して、点字ブロックの敷設方法や通路の確保、銀行の職員等による誘導などを工夫する配慮が必要である。

      • ハ.いわゆるコンビニエンスストアなど預金取扱金融機関でない者が設置、保有するATMを、銀行が利用する場合に、対応ATMが設置されているかを、定期的に情報入手しているか。特に、視覚障がい者からの要望がある場合は、対応ATMの設置を当該設置または保有する者に、適宜、情報提供するよう努めているか。

      • ニ.店舗前の道路に敷設された点字ブロックから店舗入口まで、点字ブロックを敷くなどの配慮を行っているか。敷設できない場合は、音声誘導システムの設置を推進するなど、視覚障がい者が一人で来店できるよう配慮しているか。また、道路管理者に銀行店舗へ誘導するための点字ブロック敷設を働きかけるよう努めているか。

        なお、点字ブロックの設置が、車椅子等の移動の障害になる場合も想定して、点字ブロックの敷設方法や通路の確保、銀行の職員等による誘導などを工夫する配慮が必要である。

      • ホ.インターネットバンキングやテレフォンバンキング等を行う場合、視覚障がい者が利用できるようなシステムを構築するなどの配慮を行っているか。

      • ヘ.キャッシュカードや預金通帳、取引記録を視覚障がい者にも認識できるように提供するよう努めているか。

III-6-4-3 監督手法・対応

障害者差別解消対応指針告示に基づく取組み及び障がい者等に配慮した取組み並びにこれらの取組みを補完する相談苦情処理機能が構築され機能しているかどうかは、顧客保護及び利用者利便の観点も含め、銀行の健全かつ適切な業務運営の基本に関わることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。

当局としては、障がい者等から銀行に対する意見が寄せられた場合、当該銀行に伝え、内部管理態勢の整備状況を確認する。

また、銀行の内部管理態勢の整備状況に疑義が生じた場合には、必要に応じ、報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証する。当該整備状況に問題が認められる場合には改善を促す。

III -7 企業の社会的責任(CSR)についての情報開示等

III -7-1 意義

  • (1)CSRは、一般的に、企業が多様な利害関係者(ステークホルダー)との関係の中で認識する経済・環境・社会面の責任と、それに基づく取組みと解されており、それを通じて企業の持続可能性を高めることにその意義があると考えられている。

  • (2)銀行のCSRについては、その取組みはもとより、情報開示についても、本来、私企業である銀行が自己責任原則に則った経営判断に基づき行うものであり、その評価も市場規律の下、利用者を含む多様なステークホルダーに委ねられているものである。

  • (3)しかしながら、CSRについての情報開示が分かりやすい形で適時適切に行われることは、利用者が銀行を選択する際、その銀行及び提供されている金融商品・サービスの持続可能性等を判断する上での有用な情報を得やすくなることにつながると考えられる。そのような観点から、銀行がCSRについての情報開示を行う場合の着眼点を明らかにし、最低限の枠組みを示すことで、利用者にとって有益かつ適切な情報開示を促すこととする。

III -7-2 主な着眼点

銀行のCSRについて、利用者を含む多様なステークホルダーが適切に評価でき、銀行の利用者の利便性の向上に資するよう、以下のような点から適切な情報開示がなされているか。

  • (1)目的適合性

    CSR報告が、経済・環境・社会の各分野にわたる包括的なものであり、記述内容についても網羅的かつ社会的背景等を反映しているなど、利用者を含む多様なステークホルダーのニーズに的確に対応するという目的に適合したものとなっているか。また、適切なタイミングで効果的な開示がなされているか。

  • (2)信頼性

    CSR報告が、透明性が高いプロセスを通じて作成され、データや情報が正確かつ中立的で検証可能なものとなっているなど、多くのステークホルダーに受け入れられる信頼性の高いものとなっているか。

  • (3)分かりやすさ

    CSR報告が、利用者を含む多様なステークホルダーに理解されるよう、可能な限り分かりやすいものとなっているか。また、内容の一貫性が維持されるなど、当該銀行の過去の報告との比較可能性に十分留意したものとなっているか。

III -7-3 監督手法・対応

銀行によるCSRを重視した取組みやその情報開示は、銀行が自己責任原則に則った経営判断に基づき任意に行うものであり、上記着眼点を踏まえた報告がなされていない場合においても、監督上の措置を講ずることはない。

ただし、利用者の誤解を招きかねないような、不正確かつ不適切な情報開示を行っている場合については、業務の適切性の観点から検証することとする。

III -8 業務継続体制(BCM)

III -8-1 意義

近年、銀行が抱えるリスクは多様化・複雑化しており、情報化の進展など銀行を取り巻く経営環境の変化も相俟って、通常のリスク管理だけでは対処できないような危機が発生する可能性は否定できず、危機管理の重要性が高まっている。特に、一部地域に集中して立地し、かつ、我が国の金融システムにおいて根幹的な役割を果たしている主要行等においては、危機発生時において、迅速な復旧対策を講じ、必要最低限の業務の継続を確保する等適切な対応を行うことが国民生活・経済にとっても極めて重要であることから、平時より業務継続体制(Business Continuity Management; BCM)を構築し、危機管理(Crisis Management ; CM)マニュアル、及び業務継続計画(Business Continuity Plan; BCP)の策定等を行っておくことが必要である。

なお、風評及びシステムリスク等に係る危機管理については、銀行の資金繰りや社会に対して特に大きな影響を与える可能性があることから、別途、監督上の留意点を定めることとする。

III -8-2 平時における対応

  • (1)対応

    危機管理は平時における未然防止に向けた取組みが重要との認識の下、早期警戒制度等のオフサイト・モニタリングや不祥事件等届出書のヒアリングを行う中で、又は銀行に関する苦情・情報提供等を受けた場合などにおいて、銀行における危機管理体制に重大な問題がないか検証する。また、業務継続計画についても、ヒアリングを通じて、その適切性を検証する。その際、特に以下の点に留意する。

  • (2)主な着眼点

    • マル1何が危機であるかを認識し、可能な限りその回避に努める(不可避なものは予防策を講じる。)よう、平時より、定期的な点検・訓練を行うなど未然防止に向けた取組みに努めているか。

    • マル2危機管理マニュアルを策定しているか。また、危機管理マニュアルは、自らの業務の実態やリスク管理の状況等に応じ、不断の見直しが行われているか。なお、危機管理マニュアルの策定に当たっては、客観的な水準が判定されるものを根拠として設計されていることが望ましい。

      • (参考)想定される危機の事例

        • イ.自然災害(地震、風水害、異常気象、伝染病等)

        • ロ.テロ・戦争(国外において遭遇する場合を含む。)

        • ハ.事故(大規模停電、コンピュータ事故等)

        • 二.風評(口コミ、インターネット、電子メール、憶測記事等)

        • ホ.対企業犯罪(脅迫、反社会的勢力の介入、データ盗難、役職員の誘拐等)

        • へ.営業上のトラブル(苦情・相談対応、データ入力ミス等)

        • ト.人事上のトラブル(役職員の事故・犯罪、内紛、セクシャルハラスメント等)

        • チ.労務上のトラブル(内部告発、過労死、職業病、人材流出等)

    • マル3危機管理マニュアルには、危機発生の初期段階における的確な状況把握や客観的な状況判断を行うことの重要性や情報発信の重要性など、初期対応の重要性が盛り込まれているか。

    • マル4危機発生時における責任体制が明確化され、危機発生時の組織内及び関係者(関係当局を含む。)への連絡体制等が整備されているか。また、海外への影響可能性及び危機のレベル・類型に応じた海外当局への連絡体制が整備されているか。危機発生時の体制整備は、危機のレベル・類型に応じて、組織全体を統括する対策本部の下、部門別・営業店別に想定していることが望ましい。

    • マル5業務継続計画(BCP)においては、テロや大規模な災害等の事態においても早期に被害の復旧を図り、金融システムの機能の維持にとって必要最低限の業務の継続が可能となっているか。その際、全国銀行協会及び他の主要行等と連携し対応する体制が整備されているか。また、業務の実態等に応じ、国際的な広がりを持つ業務中断に対応する計画となっているか。

      例えば、

      • イ.災害等に備えた顧客データ等の安全対策(紙情報の電子化、電子化されたデータファイルやプログラムのバックアップ等)は講じられているか。

      • ロ.コンピュータシステムセンター等の安全対策(バックアップセンターの配置、要員・通信回線確保等)は講じられているか。

      • ハ.これらのバックアップ体制は、地理的集中を避けているか。

      • ニ.個人に対する現金払出や送金依頼の受付、インターバンク市場や銀行間決済システムを通じた大口・大量の決済の処理等の金融機能の維持の観点から重要な業務を、暫定的な手段(手作業、バックアップセンターにおける処理等)により再開(リカバリー)するまでの目標時間は具体的に計画されているか。インターバンク市場や銀行間決済システムを通じた大口・大量の決済の処理等、特に重要な金融決済機能に係る業務については、当日中に再開する計画とされているか。

      • ホ.業務継続計画の策定及び重要な見直しを行うに当たっては、取締役会による承認を受けているか。また、業務継続体制が、内部監査、外部監査など独立した主体による検証を受けているか。

      • (参考) 「金融機関における業務継続体制の整備について」(日本銀行、2003年7月)

      • 「業務継続のための基本原則」(ジョイント・フォーラム、2006 年8月)

    • マル6日頃からきめ細かな情報発信及び情報の収集に努めているか。また、危機発生時においては、危機のレベル・類型に応じて、情報発信体制・収集体制が十分なものとなっているか。

III -8-3 危機発生時における対応

III -8-3-1 総論

危機的状況の発生又はその可能性が認められる場合には、事態が沈静化するまでの間、当該銀行における危機対応の状況(危機管理体制の整備状況、被害の復旧状況、業務の継続状況、関係者への連絡状況、情報発信の状況等)が危機のレベル・類型に応じて十分なものになっているかについて、定期的にヒアリング又は現地の状況等を確認するなど実態把握に努めるとともに、必要に応じ、法第24条に基づき報告徴求することとする。

III -8-3-2 災害における金融に関する措置(災害対策基本法等関係)

  • (1)災害地に対する金融上の措置

    災害対策基本法第36条第1項に基づく金融庁防災業務計画並びに武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下「国民保護法」という。)第33条第1項及び第182条第2項に基づく金融庁国民保護計画において、金融に関する措置が規定されている。こうしたことから、災害(災害対策基本法第2条第1号に規定する災害又は国民保護法第2条第4項に規定する武力攻撃災害若しくは国民保護法第183条に規定する緊急対処事態における災害をいう。以下同じ。)が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、現地における災害の実情、資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、銀行に対し、機を逸せず必要と認められる範囲内で、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1災害関係の融資に関する措置

      銀行において、災害の状況、応急資金の需要等を勘案して、融資相談所の開設、審査手続きの簡便化、貸出の迅速化、貸出金の返済猶予等災害被災者の便宜を考慮した適時、的確な措置を講ずることを要請する。

    • マル2預金の払戻及び中途解約に関する措置

      • イ.銀行において、預金通帳、届出印鑑等を焼失又は流失した預金者については、り災証明書の呈示あるいはその他実情に即する簡易な確認方法をもって災害被災者の預金払戻の利便を図ることを要請する。

      • ロ.銀行において、事情やむを得ないと認められる災害被災者等に対して、定期預金、定期積金等の中途解約又は当該預金等を担保とする貸出に応じる等の適宜の措置を講ずることを要請する。

    • マル3手形交換、休日営業等に関する措置

      銀行において、災害時における手形交換又は不渡処分、銀行の休日営業又は平常時間外の営業についても適宜配慮することを要請する。

      また、窓口における営業ができない場合であっても、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で、現金自動預払機等において預金の払戻しを行う等、災害被災者の便宜を考慮した措置を講ずることを要請する。

    • マル4営業停止等における対応に関する措置

      銀行において、窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等並びに継続して現金自動預払機等を稼動させる営業店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、取引者に周知徹底するよう要請する。

  • (2)東海地震の地震防災対策強化地域内外における金融上の諸措置

    大規模地震対策特別措置法により、地震防災対策強化地域の指定が行われると、指定行政機関は、事前に地震災害及び2次災害の発生を防止し災害の拡大を防ぐための措置を定めなければならないこととされている。

    しかし、銀行業務の事務処理については、機械化とその無人サービス網の普及等により、地域的に分断して対応することが困難であることから、東海地震への対応については、現地における資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、銀行に対し、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1東海地震の地震防災対策強化地域内に本店及び支店等の営業所を置く銀行の警戒宣言時の対応について

      • イ.営業時間中に警戒宣言が発せられた場合には、銀行において、営業所等の窓口における営業は普通預金(総合口座を含む。以下同じ。)の払戻業務以外の業務は停止するとともに、その後、店頭の顧客の輻輳状況等を的確に把握し、平穏裡に窓口における普通預金の払戻業務も停止し、併せて、窓口営業停止の措置を講じた旨を取引者に周知徹底するよう要請する。ただし、この場合であっても、同地の日銀支店長や警察等と緊密な連絡をとりながら、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等において預金の払戻しを継続する等、居住者等の日常生活に極力支障をきたさないような措置を講ずることを要請する。

      • ロ.営業停止等又は継続して現金自動預払機等を稼動させる営業店舗名等を取引者に周知徹底させる方法については、銀行において、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載するよう要請する。

      • ハ.休日、開店前又は閉店後に警戒宣言が発せられた場合には、発災後の金融業務の円滑な遂行の確保を期すため、銀行において窓口営業の開始又は再開は行わないよう要請する。ただし、この場合であっても、同地の日銀支店長や警察等と緊密な連絡をとりながら、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等の運転は継続する等、居住者等の日常生活に極力支障をきたさないような措置を講ずることを要請する。

      • ニ.その他

        • a.警戒宣言が解除された場合には、銀行において、可及的速かに平常の営業を行うよう要請する。

        • b.発災後の銀行の応急措置については、上記「(1)災害地に対する金融上の措置」に基づき、適時、的確な措置を講ずることを要請する。

    • マル2当該強化地域外に営業所を置く銀行の警戒宣言時の対応について

      • イ.営業時間中に警戒宣言が発せられた場合には、銀行において、地震防災対策強化地域内にある銀行の本店及び支店等向けの手形取立等の手形交換業務については、その取扱いを停止させるよう要請し、併せて当該業務の取扱いを停止することを店頭に掲示し、顧客の協力を求めるよう要請する。

      • ロ.銀行において、地震防災対策強化地域内の本店及び支店等が営業停止の措置をとった場合であっても、当該営業停止の措置をとった当該強化地域外の本店及び支店等の営業所については、平常どおり営業を行うよう要請する。

III -8-4 事態の沈静化後における対応

危機的状況が沈静化した後、危機発生時の対応状況を検証する必要があると認められる場合には、当該銀行に対して、法第24条に基づき、事案の概要と銀行側の対応状況、発生原因分析及び再発防止に向けた取組みについて報告徴求することとする。

III -8-5 風評に関する危機管理体制

  • (1)風評リスクへの対応に係る体制が整備されているか。また、風評発生時における本部各部及び営業店の対応方法に関する規程を設けているか。なお、他行や取引先等に関する風評が発生した場合の対応方法についても、検討しておくことが望ましい。

  • (2)風評が伝達される媒体(例えば、インターネット、憶測記事等)に応じて、定期的に風評のチェックを行っているか。

  • (3)風評が預金の払い出しに結びついた場合の対応方法について、営業店及び店舗外現金自動設備の状況把握、顧客対応、現金輸送、対外説明等、初動対応に関する規定を設けているか。

  • (4)上記(3)のような状況になった場合、当局、日本銀行、他行、提携先、警備会社等へ、速やかに連絡を行う体制になっているか。

    なお、必要に応じて、自治体・警察にも連絡を行うものとなっているか。

  • (5)上記(4)の連絡を受けた場合、事態の沈静化が認められるまでの間、定期的にヒアリング及び現地の状況を確認するものとする。

III-9 「経営者保証に関するガイドライン」の融資慣行としての浸透・定着等

III-9-1 意義

中小企業・小規模事業者等(以下「中小企業」という。)の経営者による個人保証(以下「経営者保証」という。)には、中小企業の経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や創業を志す者の起業への取組み、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もあり、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が存在する。

こうした状況に鑑み、中小企業の経営者保証に関する中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的自律的な準則として「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月5日「経営者保証に関するガイドライン研究会」により公表。以下「ガイドライン」という。)が定められた。

このガイドラインは、経営者保証における合理的な保証契約の在り方等を示すとともに主たる債務の整理局面における保証債務の整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、中小企業団体及び金融機関団体の関係者が中立公平な学識経験者、専門家等と共に協議を重ねて策定したものであって、主債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され、遵守されることが期待されている。

金融機関においては、経営者保証に関し、ガイドラインの趣旨や内容を十分に踏まえた適切な対応を行うことにより、ガイドラインを融資慣行として浸透・定着させていくことが求められている。

III-9-2 主な着眼点

  • (1)経営陣は、ガイドラインを尊重・遵守する重要性を認識し、主導性を十分に発揮して、経営者保証への対応方針を明確化に定めているか。

    また、ガイドラインに示された経営者保証の準則を始めとして、以下のような事項について職員への周知徹底を図っているか。

    • マル1経営者保証に依存しない融資の一層の促進(法人と経営者との関係の明確な区分・分離が図られている等の場合における、経営者保証を求めない可能性等の検討を含む。)

    • マル2経営者保証の契約時の対応(適切な保証金額の設定を含む。)

    • マル3既存保証契約の適切な見直し(事業承継時の対応を含む。)

    • マル4保証債務の整理に関する対応(経営者の経営責任の在り方、残存資産の範囲及び保証債務の一部履行後に残存する保証債務の取扱いを含む。)

    • マル5その他(ガイドラインにより債務整理を行った保証人に関する情報の取扱いを含む。)

  • (2)ガイドラインに基づく対応を適切に行うための社内規程やマニュアル、契約書の整備、本部による営業店支援態勢の整備等、必要な態勢の整備に努めているか。

  • (3)主債務者、保証人からの経営者保証に関する相談に対して、適切に対応できる態勢が整備されているか。

  • (4)停止条件又は解除条件付保証契約、ABL等の経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実及び顧客への周知に努めているか。

  • (5)主債務者たる中小企業等から資金調達の要請を受けた場合には、当該企業の経営状況等を分析した上で、法人個人の一体性の解消等が図られているか、あるいは、解消を図ろうとしているかを検証するとともに、検証の結果、一体性の解消が図られている等と認められる場合は、経営者保証を求めない可能性等を債務者の意向も踏まえた上で検討する態勢が整備されているか。

  • (6)保証債務の整理に当たっては、ガイドラインの趣旨を尊重し、関係する他の金融機関、外部専門家(公認会計士、税理士、弁護士等)及び外部機関(中小企業再生支援協議会等)と十分連携・協力するよう努めているか。

  • (7)定期的かつ必要に応じ、内部監査等を実施することにより、ガイドラインに基づく対応が適切に行われていることを確認しているか。また、当該監査等の結果を踏まえ、必要に応じて態勢の改善・充実を図るなど、監査等を有効に活用する態勢が整備されているか。

III-9―3 監督手法・対応

金融機関による上記の取組みについては、「主債務者、保証人及び対象債権者がガイドラインに基づく対応に誠実に協力することによって継続的かつ良好な信頼関係が構築・強化されるとともに、各ライフステージにおける中小企業や創業を志す者の取組意欲の増進が図られ、ひいては中小企業金融の実務の円滑化を通じて中小企業等の活力が一層引き出され、日本経済の活性化に資するよう、金融機関等による積極的な活用を通じて、本ガイドラインが融資慣行として浸透・定着していくことが重要」との政策趣旨に鑑み、適切に取り組む必要がある。

こうした取組態勢や取組状況を踏まえ、監督上の対応を検討することとし、内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合には、必要に応じ、報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証し、業務運営の適切性、健全性に問題があると認められれば、法第24条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

III-10 経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立等

III-10-1 意義

一般に、多くの中小企業(個人事業主を含む。)においては、家計と経営が未分離であることや、財務諸表の信頼性が必ずしも十分でないなどの指摘があることから、こうした中小企業に対する融資においては、企業の信用補完や経営に対する規律付けの観点から、経営者に対する個人保証を求める場合がある。他方、経営者以外の第三者の個人保証については、副次的な信用補完や経営者のモラル確保のための機能がある一方、直接的な経営責任がない第三者に債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという指摘がある。

また、保証履行時における保証人に対する対応如何によっては、経営者としての再起を図るチャンスを失わせたり、社会生活を営む基盤すら失わせるという問題を生じさせているのではないかとの指摘があることに鑑み、金融機関には、保証履行時において、保証人の資産・収入を踏まえたきめ細かな対応が求められる。

こうした状況に鑑み、「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」(平成22年12月24日公表)において、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進」することとしたところであり、金融機関においては、こうした趣旨を十分に踏まえた対応を行う必要がある。

III-10-2 主な着眼点

  • (1)経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立

    個人連帯保証契約については、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針を定めているか。また、方針を定める際や例外的に経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する際には、必要に応じ、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」における考え方を踏まえているか。特に、経営者以外の第三者が、経営に実質的に関与していないにもかかわらず、例外的に個人連帯保証契約を締結する場合には、当該契約は契約者本人による自発的な意思に基づく申し出によるものであって、金融機関から要求されたものではないことが確保されているか。

    • (参考)信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について(抄、平成18年3月31日中小企業庁ウェブサイト)
      (前略)中小企業庁では、信用保証協会が行う保証制度(略)について、平成18年度に入ってから保証協会に対して保証申込を行った案件については、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを、原則禁止とします。

      ただし、下記のような特別な事情がある場合については、例外とします。(中略)

      • 1.実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者本人の配偶者(当該経営者本人と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が連帯保証人となる場合

      • 2.経営者本人の健康上の理由のため、事業承継予定者が連帯保証人となる場合

      • 3.財務内容その他の経営の状況を総合的に判断して、通常考えられる保証のリスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援者から積極的に連帯保証の申し出があった場合(ただし、協力者等が自発的に連帯保証の申し出を行ったことが客観的に認められる場合に限る。)

  • (2)保証履行時における保証人の履行能力等を踏まえた対応の促進

    保証人(個人事業主たる主債務者を含む。)に保証債務(当該主債務者の債務を含む。)の履行を求める場合には、上記意義にある指摘に鑑み、保証債務弁済の履行状況及び保証債務を負うに至った経緯などその責任の度合いに留意し、保証人の生活実態を十分に踏まえて判断される各保証人の履行能力に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細かな対応を行う態勢となっているか。

    また、第三者の個人連帯保証の保証履行時等においても、「経営者保証に関するガイドライン」は適用され得るとの点に留意し、必要に応じ、ガイドラインの活用を検討し、ガイドラインに基づく対応を行う態勢となっているか(III-9-2参照)。

    • (注)III-3-3-1-2(1)、(2)、(3)、(6)、(7)も参照のこと。

III-10-3 監督手法・対応

金融機関による上記取組みについては、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進する」という政策趣旨に鑑み、適切に取り組む必要がある。また、これらの取組みに当たって、適切な説明責任を果たすことも必要である(III-3-3-1参照)。

こうした取組み態勢・取組み状況を踏まえ、監督上の対応を検討することとし、内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合には、必要に応じ、報告(法第24条に基づく報告を含む。)を求めて検証し、業務運営の適切性、健全性に問題があると認められれば、法第24条に基づき報告を求め、又は、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

III-11 秩序ある処理等の円滑な実施の確保

III-11-1 意義

先般発生した世界的な金融危機への反省を踏まえ、グローバルなシステム上重要な金融機関を迅速かつ秩序立って処理するための枠組みを整備する取組みが、国際的に行われてきた。

かかる枠組みは、世界規模で活動している巨大金融機関が無秩序に破綻すれば、各国の金融・経済システムに極めて深刻な悪影響(システミック・リスク)が生じることが予想されるために、これらを破綻させることができず、公的資金の注入によってかかる金融機関を救済せざるを得ないという、いわゆる「大きすぎて潰せない問題」(too big to fail)を解決することを目的としている。

まず、2011 年11 月、G20 カンヌ・サミットにおいて、金融安定理事会から報告された「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」が、破綻処理制度の新たな国際基準として了承された。これは、破綻した場合にシステム上重要な影響を及ぼす可能性がある金融機関に対して、再建計画の策定や一定の要件を満たす破綻処理制度の適用を求めるものである。さらに、2015 年11 月、G20 アンタルヤ・サミットにおいて、金融安定理事会から報告された、「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収及び資本再構築に係る原則」(以下、2017 年7月に金融安定理事会から追加的に公表された「グローバルなシステム上重要な銀行の内部総損失吸収力に係る指導原則」と総称し、「TLAC 合意文書」という。)が了承された。

これを踏まえ、主要各国においては、金融機関の秩序ある処理に対応するための制度整備等が行われてきた。本邦では、2013 年6月に、預金保険法の改正(2014 年3月施行)により「金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理の枠組み」が導入された。さらに、国内のシステム上重要な金融機関を対象とした本邦TLAC 規制の枠組み整備の方針を公表(「金融システムの安定に資する総損失吸収力(TLAC)に係る枠組み整備の方針」2016 年4月初版公表、2018 年4月改訂)したうえ、「銀行法第五十二条の二十五の規定に基づき銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社等の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力等に係る健全性を判断するための基準であって銀行の経営の健全性の判断のために参考となるべきもの」(以下、「TLAC1柱告示」という。)等の新設等により、2019 年3月、本邦におけるTLAC規制の適用を開始した。

しかしながら、「大きすぎて潰せない問題」の解決のためには、制度上の対応のみならず、金融機関による平時の対応が必要不可欠である。かかる平時の対応には、そもそも危機から破綻に至ることを防ぐための計画の策定のほか、破綻に至った場合の破綻処理可能性(resolvability)(注1)を高めるための態勢(以下、「破綻処理準備態勢」という。)の整備等が含まれる。

この点、上記「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」は、各国当局が金融機関の破綻処理可能性を評価し、必要な場合には当該金融機関に対して破綻処理可能性を向上させるための対応を求める権限を持つべき旨を規定している。本邦では、2013 年6月の預金保険法改正で導入された規定において「内閣総理大臣(中略)は、金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理が必要となつた場合におけるその円滑な実施の確保を図るために必要な措置が講じられていないと認めるときは、金融機関等に対し、その必要の限度において、期限を付して当該措置を講ずるよう命ずることができる」こととされた(第137 条の4)。

上記の趣旨を踏まえ、金融機関においては、秩序ある処理等(注2)の円滑な実施の確保に向けた対応を行うことが求められる。当局は、金融機関に求められる破綻処理準備態勢等の優先順位やその態勢整備の時間軸は当該金融機関のシステム上の重要性に応じて異なることに留意しつつ、金融機関の取組みを監督していく。また、秩序ある処理等の円滑な実施の確保のために必要な場合には、国際的な議論等を踏まえつつ、以下に掲げる事項以外にも対応を求めていくものとする。

  • (注1)金融機関が破綻処理可能(resolvable)であるとは、金融システムの著しい混乱を回避しつつ、金融システム上重要な業務を保護し、納税者を損失の危険にさらすことなく、当該金融機関の破綻処理を行うことが実現可能であり、その信頼性が高い状態を指す。

  • (注2)Ⅲ-11において、「秩序ある処理等」は、預金保険法第126 条の2第1項第2号に規定する特定第二号措置を用いた破綻処理を含むが、これに限られない。

III-11-2 再建・処理計画の策定等

III-11-2-1 意義

主要行等のうち、特に大規模で複雑な業務を行う金融機関については、当該金融機関が危機に直面した場合、その影響が当該金融機関のみならず、金融システム全体にも及びかねないことから、監督上、危機管理の一環として、これをできる限り未然に防止していくことが重要である。

国際的にも、こうした観点から、金融安定理事会における合意(注)の下、グローバルなシステム上重要な金融機関(Global Systemically Important Financial Institutions; G-SIFIs)及び破綻時に金融システムの安定性に影響を及ぼす可能性があると母国当局によって判断された金融機関に対して、堅牢かつ信頼性のある「再建・処理計画(Recovery and Resolution Plans; RRPs)」を策定することが求められている。

我が国でも、このような国際的な動向を勘案しつつ、RRPsの策定に向けた取り組みを引き続き進めていく必要がある。

  • (注)金融安定理事会「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」(2011年11月)

III-11-2-2 着眼点と監督手法・対応

  • (1)金融安定理事会における合意等を踏まえ、告示に指定されたG-SIBs及び必要に応じてその他のシステム上重要な銀行等に対して法第24条又は法第52条の31に基づき、年1回又は事業やグループ構造等に重要な変更があった場合に、再建計画の策定・提出を求めるものとする。再建計画の内容は、各銀行等のグループ構造やビジネスモデルの実態に応じて異なるものとなるが、金融安定理事会の議論等を踏まえ、最低限、以下の項目が含まれているか確認するものとする。

    • マル1再建計画の概要

      • イ.当該銀行等における再建計画の位置付け

      • ロ.再建計画の策定体制

    • マル2再建計画策定に当たって前提となるべき事項

      • イ.事業概要及びグループ構造の概要

      • ロ.財務の健全性及び流動性に係る平時におけるリスク管理態勢

    • マル3再建計画発動に係るトリガー

      • イ.危機時の対応が手遅れとならないような十分に早い段階のトリガー(財務の健全性及び流動性それぞれに係る定量的・定性的トリガーを含む。)

      • ロ.通常よりも高いストレスを想定したストレステスト及びリバース・ストレステスト(市場全体のストレスシナリオ及び当該銀行等固有のストレスシナリオの双方を含む。)

      • ハ.トリガー抵触についての判断及びトリガー抵触時の対応策の検討における内部意思決定プロセス

      • ニ.通常時における危機の程度に応じたリスク管理運営と再建計画発動時のリスク管理運営との関係

    • マル4グループの子法人等、海外拠点及び各事業部門の概要

      • イ.各子法人等及び海外拠点のプロファイル

        • a.事業概要・財務情報・金融システム上の重要性(市場シェア等を踏まえたビジネスや子法人等のグループにとっての重要性(コア度)及び金融システム上の重要性(クリティカリティ)の分析)

        • b.海外子法人等や海外拠点の経営戦略上の位置付け

      • ロ.主な子法人等、海外拠点及び事業部門相互の連関性

        グループ内の資本関係・グループ内の資金取引関係・グループ内の保証関係・ITシステムの相互依存性・クリティカルな機能を有する部門等へサービスを提供する子法人等の特定・人事上の関係

    • マル5リカバリー・オプションの分析

      • イ.ストレスシナリオごとの各リカバリー・オプション(流動性対策、財務の健全性対策)の有効性・適切性・十分性(定量的評価を含む。)

      • ロ.各リカバリー・オプション実行に当たっての留意点と実行可能性の評価

    • マル6その他

      • イ.経営情報システム

        再建計画の策定及びリカバリー・オプションの実行の検討に必要な情報の一覧並びに当該情報の入手に要する期間

  • (2)金融安定理事会における合意等を踏まえ、告示に指定されたG-SIBs及び必要に応じてその他のシステム上重要な銀行等について、当局にて処理計画を策定することとなるが、当該計画の見直し及びこれらの処理の実行可能性の評価を、年1回又は当該銀行等の事業・グループ構造等に重要な変更があった場合に、当局にて実施するものとする。

III-11-3 外国法準拠の契約に対してステイの決定の効力等を確保するための対応

III-11-3-1 意義

2013年6月の預金保険法改正により、内閣総理大臣は、預金保険法第137条の3第1項に規定する関連措置等が講じられたことを理由とする契約の特定解除等(同条第2項に規定する特定解除等をいう。)を定めた条項(以下、「特定解除等の条項」という。)について、同条第1項に規定する措置実施期間中は、その効力を有しないこととする決定(以下、「ステイの決定」という。)を行うことができるようになった。併せて、事業譲渡等における債権者保護手続の特例等に係る同法第131条の規定が改正された。我が国の金融システムの著しい混乱が生ずるおそれを回避するためには、同法第102条第1項に規定する認定の対象となる金融機関又は同法第126条の2第1項に規定する特定認定の対象となる金融機関等は、外国法準拠の契約に対しても、ステイの決定の効力及び同法第131条に規定する債権者保護手続の特例等(以下、「ステイの決定の効力等」という。)を及ぼすための適切な管理態勢を整備する必要がある。

III-11-3-2 主な着眼点

外国法準拠の契約における早期解約条項等の一時停止の効力の確保に向けた国際的な動向を踏まえ、外国法準拠の契約の管理態勢(注)に係る検証において、個々の取引状況等を考慮しつつ、以下の点に留意することとする。

  • (注)銀行グループで管理態勢を整備する必要がある。

  • (1)契約締結等に係る留意事項

    預金保険法施行規則第35条の18に規定する「取引所の相場その他の市場の相場がある商品に係る取引又はこれに準ずる取引」のうち、店頭デリバティブ取引、金融等デリバティブ取引、有価証券の買戻又は売戻条件付売買、有価証券の貸借、選択権付き債券売買取引、先物外国為替取引、店頭商品デリバティブ取引及びこれらの取引に類似する取引(これらの取引の担保の目的で行われる取引を含む。以下、総称して「対象取引」という。)に関して、中央清算機関を除く取引の相手方との間で、特定解除等の条項を含む外国法準拠の契約を締結する場合(既存の契約内容を実質的に変更する場合を含む。)及び既存の契約に係る新規の取引を行う場合、取引の相手方が所在する法域にかかわらず、ステイの決定の効力等が当該契約に及ぶことを可能とするために必要な対応(注)を行っているか。

    • (注)以下のような対応が考えられる。

      • マル1ステイの決定の効力等が外国法準拠の契約に及ぶことを目的とする国際的に共通のプロトコルを採択するとともに取引の相手方が当該プロトコルを採択していることを確認する対応

      • マル2対象取引にステイの決定の効力等が及ぶことを契約書に明記する対応

  • (2)既存の契約に係る留意事項

    対象取引に係る特定解除等の条項を含む外国法準拠の既存の契約(当該契約に係る新規の取引を行う場合を除く。)についても、ステイの決定の効力等が当該契約に及ばない場合の影響の重要性を勘案した上で、必要に応じ、上記(1)の対応を行うことが望ましい。

III-11-3-3 監督手法・対応

上記の監督上の着眼点に基づき、銀行グループの管理態勢について深度あるヒアリングを行い、必要な場合には法第24条又は法第52条の31及び預金保険法第136条の規定に基づき報告を求めることとする。

また、報告徴求の結果、秩序ある処理の円滑な実施の確保の観点から重大な問題があると認められる場合には、法第26条又は法第52条の33の規定に基づく業務改善命令及び預金保険法第137条の4の規定に基づく命令の発出を検討するものとする。

Ⅲ-11-4 秩序ある処理等において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための対応

Ⅲ-11-4-1 意義

金融機関の破綻処理において、当該金融機関が行う金融システム上重要な業務の継続性を確保することは、システミック・リスクを回避しつつ破綻処理を行うための必要条件であり、国際的にもこの点を重視した議論がなされてきた。我が国でも、2013年6月の預金保険法改正によって特定第二号措置が導入され、金融システム上重要な業務の廃止による我が国の金融システムの著しい混乱を防ぐ観点から、かかる業務を承継機関等に引き継ぎ、継続性を確保することを可能とする仕組みが設けられている。

しかしながら、金融機関の行う業務がグループ内外から提供される各種サービスと連関している状況を踏まえると、破綻処理の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するためには、当該業務の維持に不可欠なITインフラ等のサービス及び清算機関等の金融市場インフラへのアクセスが、秩序ある処理等の過程においても維持されることが必要である。

金融機関においては、これらの趣旨及び金融安定理事会におけるガイダンス(注)を踏まえ、秩序ある処理等の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための対応を行うことが求められる。

  • (注)金融安定理事会「破綻処理時の業務継続の支援に向けた取極めに係るガイダンス」(2016年8月)、「金融機関の破綻処理時における金融市場インフラへのアクセスの継続に係るガイダンス」(2017年7月)等

Ⅲ-11-4-2 主な着眼点及び監督手法・対応

告示に指定されたG-SIBs 及び必要に応じてその他のシステム上重要な銀行等に対して、当該銀行等の金融システム上の重要性等を考慮しつつ、秩序ある処理等の過程において金融システム上重要な業務の継続性を確保するための以下の対応を求めるものとする。また、監督手法・対応については、Ⅲ-11-3-3と同様とする。

  • (1)クリティカル・ファンクションの特定

    金融安定理事会によるガイダンス(注)及びⅢ-11-2-2(1)④イ.に基づき再建計画の策定の一部として行う子法人等についての分析を踏まえ、グループ内の法人が提供するクリティカル・ファンクション(グループ外の第三者に提供される業務であって、その停止が金融システムの著しい混乱を生じさせるおそれのある業務を指す。)を特定すること。

    • (注)金融安定理事会「クリティカル・ファンクションの特定に関するガイダンス」(2013年7月)

  • (2)クリティカル・シェアード・サービス(CSS)の継続性の確保

    秩序ある処理等の過程におけるクリティカル・ファンクションの継続性を、それを支えるサービスの面から確保するための対応として、以下の事項を求めるものとする。

    • ① 上記(1)で特定された各クリティカル・ファンクションについての深度ある分析に基づき、また、Ⅲ-11-2-2(1)④ロ.に基づき再建計画の策定の一部として行うクリティカルな機能を有する部門等へサービスを提供する子法人等の特定を踏まえ、クリティカル・シェアード・サービス(クリティカル・ファンクションを提供する金融機関又はそのグループ内の法人に対して提供されるサービスであって、その停止により当該クリティカル・ファンクションの提供が不可能となる又はそれを提供する能力に重大な支障が生じることが想定されるサービス。グループ外の法人により提供されるサービスを含む。以下、「CSS」という。)を特定すること。

    • ② 上記①で特定された各CSSについて、その提供者との間で締結されている当該CSSの提供に係る契約上、CSSの受領者又はそのグループ内の法人に秩序ある処理等に係る措置又はそれに伴う親会社の変更等の関連する措置が講ぜられたことをもって当該CSSの提供が停止されるおそれがある場合は、これらの措置が講ぜられた場合であっても当該CSSの提供が継続されることを確保するための契約上の対応を講ずること。

      かかる対応としては、契約に基づく支払義務についての不履行がない限り、これらの措置が講ぜられたことをもって当該CSSの提供に係る契約上の解除事由、解約事由その他の終了事由に基づき当該契約を終了させることができない旨を当該契約又は別途の覚書等に定めることが考えられる。

    • ③ CSSの提供の継続性を確保するための財務上の措置を講ずること。かかる措置としては、以下の点を財務上確保するための態勢の整備が考えられる。

      • イ.グループ内の法人により提供されるCSS 秩序ある処理等の過程を通じてCSSの提供者が当該CSSの提供を継続できること

      • ロ.グループ外の法人により提供されるCSS 秩序ある処理等の過程を通じてCSSの提供者への対価の支払義務を履行できること

  • (3)クリティカルFMIサービスへのアクセスの継続性の確保

    秩序ある処理等の過程におけるクリティカル・ファンクションの継続性を、それを支える金融市場インフラへのアクセスの面から確保するための対応として、以下の事項を求めるものとする。

    • ① 上記(1)で特定された各クリティカル・ファンクションについての深度ある分析に基づき、クリティカルFMIサービス(清算機関、資金決済機関、証券決済機関、振替機関、カストディアン等の金融市場インフラが提供する清算、資金決済、証券決済、カストディ業務等のサービスであって、そのサービスへのアクセスの停止によりクリティカル・ファンクションの提供が不可能となる又はそれを提供する能力に重大な支障が生じることが想定されるサービス。グループ内外の直接参加者を通じて間接参加するサービスを含む。)を特定すること。

    • ② 上記①で特定された各クリティカルFMIサービスについて、当該クリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するために必要な財務上その他の要件(間接参加の場合に直接参加者との関係において生じる要件を含む。)並びに当該クリティカルFMIサービスに関連して提供される信用供与(間接参加の場合に直接参加者から提供される信用供与を含む。)の有無及びその内容を把握すること。

    • ③ クリティカルFMIサービスの提供者と協議の上、グループ内の当該クリティカルFMIサービスへの参加者又はその他のグループ内の法人に秩序ある処理等に係る措置又はそれに伴う親会社の変更等の関連する措置が適用された場合に当該クリティカルFMIサービスの提供者が当該参加者に対して講ずると想定される措置(アクセスの継続・停止に係る措置、及び証拠金の追加拠出等の追加的要件がある場合にはその内容を含む。)を把握すること。

    • ④ 秩序ある処理等の過程においてクリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するための計画(コンティンジェンシープラン)を策定すること。コンティンジェンシープランには、最低限以下の内容が含まれていることを確認するものとする。

      • イ.上記①、②及び③で把握した情報

      • ロ.上記③においてクリティカルFMIサービスの提供者が求めると想定される追加的な要件がある場合には、それに対する対応策

      • ハ.クリティカルFMIサービスへのアクセスを維持するために求められる財務上の要件への対応策

      • ニ.コンティンジェンシープランにおける対応策を実行する際の意思決定プロセス

      • ホ.上記ロ.及びハ.の対応策にも関わらずクリティカルFMIサービスへのアクセスが停止した場合に生じ得るクリティカル・ファンクションの継続性に対する影響の分析、及びその影響を軽減するために講じ得る代替措置等の対応策が想定される場合にはその内容

Ⅲ-11-5 秩序ある処理等の円滑な実施の確保に向けた流動性モニタリング・報告態勢の整備

Ⅲ-11-5-1 意義

秩序ある処理等の円滑な実施のためには、その一連の過程において必要となる流動性所要額やその所要額を充足するために利用可能な流動性資産の把握など、粒度の細かい流動性モニタリングを行うことが重要である。例えば、秩序ある処理等の過程においてクリティカル・ファンクションの継続性を確保するためには、CSSの提供者に対する支払債務の履行やクリティカルFMIサービスの提供者に対する証拠金等の拠出のために利用可能な流動性資産を把握することが重要となる。また、当局等が金融機関の実質破綻状態の認定等を行うにあたっては、金融機関が流動性の枯渇状況を当局等に対して適時に報告できることが重要である。

金融機関においては、これらの趣旨及び金融安定理事会によるガイダンス(注)を踏まえ、秩序ある処理等の円滑な実施の確保に向けた流動性モニタリング・報告態勢の整備を進めていく必要がある。

  • (注)金融安定理事会「グローバルなシステム上重要な銀行の秩序ある破綻処理の支援に必要な一時的資金調達に係るガイダンス」(2016年8月)、「実行可能な破綻処理計画の資金調達戦略に関する要素」(2018年6月)

Ⅲ-11-5-2 主な着眼点及び監督手法・対応

告示に指定されたG-SIBs 及び必要に応じてその他のシステム上重要な銀行等に対して、当該銀行等の金融システム上の重要性等を考慮しつつ、秩序ある処理等の際に利用可能な流動性資産を適時に把握するための流動性モニタリング・報告態勢の整備を求めるものとする。

かかる対応の例としては、各法域での規制及び内部管理上の制約を加味した上での、法人及び法域間を自由移動可能な適格流動資産(流動性カバレッジ比率告示第1条第14 号等で定義する「適格流動資産」を指す。)をグループ内の主要法人・主要拠点別及び主要通貨別に適時に把握し、当局等に報告できる態勢の整備が考えられる。

また、監督手法・対応については、Ⅲ-11-3-3と同様とする。

Ⅲ-11-6 損失吸収力等の充実

Ⅲ-11-6-1 損失吸収力等の適切性・十分性・正確性

Ⅲ-11-6-1-1 意義

TLAC 合意文書は、G-SIBs に対して予め十分な総損失吸収力( TotalLoss-absorbing Capacity)の確保を求めている。これは、万一G-SIB が危機に陥った場合に、当該G-SIB の株主・債権者に損失を負担させ、かつ資本の再構築を行うことにより、当該G-SIB の重要な機能を維持したまま、納税者負担によらずにシステミック・リスクを回避する秩序ある処理を行うことを目的としている。

具体的には、当該G-SIB グループにおいて、当局が破綻処理権限を行使する対象となる会社(以下、「破綻処理対象会社」という。)が外部から調達した損失吸収力・資本再構築力(以下、「損失吸収力等」という。)を予めグループ内部の主要な子会社に配賦しておき、当該子会社が破綻の危機に瀕していると関連当局が判断した際は、生じた損失を破綻処理対象会社に集約して処理する一方、当該子会社は通常どおり営業を継続することが想定されている。この場合、クロスボーダーでの処理が行われるときには、損失が生じた子会社が所在する国の当局(現地当局)と、損失の集約先である破綻処理対象会社が所在する国の当局(母国当局)との連携が重要である。

以下では、主に母国当局としての金融庁のTLAC 規制への対応を記載する。

Ⅲ-11-6-1-2 主な着眼点と監督手法・対応

  • ① TLAC 規制の適用対象となる金融機関

    TLAC 合意文書を踏まえ、告示に指定されたG-SIBs は本邦TLAC 規制の対象とする。さらに、国際的に活動する金融機関グループに関しては、海外の子会社について破綻処理が開始された場合、当該子会社に生じた損失が母国である本邦の親会社に集約され、グループ全体の破綻につながるケースが考えられる。その際、本邦金融システムに特に重要な影響を与えることが想定される金融機関については、いわゆる「大きすぎて潰せない問題」(too big to fail)への対応の必要性が高いため、G-SIBs であるか否かに関わらず、破綻時の十分な損失吸収力等の確保を求めるべきと考えられる。

    したがって、我が国においては、告示に指定されたG-SIBsに加え、告示に指定されたD-SIBsのうち、国際的な破綻処理の枠組みに対応する必要性が高く、かつ破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関(以下、告示に指定されたG-SIBsと総称して「本邦TLAC対象SIBs」という。)をTLAC規制の適用対象とする。

    本邦TLAC対象SIBsとして選定した金融機関グループについては、後述する望ましい処理戦略に従って、国内における破綻処理対象グループ(以下、「国内処理対象グループ」という。)及び処理時における損失の集約が必要な先である国内における破綻処理対象会社(以下、「国内処理対象会社」という。)をTLAC1柱告示に基づき指定し、外部TLACの調達・維持及び内部TLACの分配を求めることとする。

    新規の選定・指定にあたっては、当該対象金融機関グループの自己資本の充実状況や資金調達構造等を踏まえ、あらかじめ十分な期間をかけて検討するものとする。さらに、所要水準の達成に必要な外部TLACを市中から調達するために要する期間を考慮し、本邦TLAC規制の適用対象とする旨を、当該金融機関グループの望ましい処理戦略と併せて、事前に公表するものとする。

    • (注)MPEアプローチを望ましい処理戦略とする海外G-SIBグループに関し、海外の関連当局と協議の上、本邦の銀行持株会社や子銀行等を一の破綻処理対象会社とすることが合意されたような場合にあっては、上記①を準用し、その国内処理対象会社及び国内処理対象グループをTLAC1柱告示に基づき指定することを検討することが想定される

  • ② 望ましい処理戦略の選択

    システム上重要な金融機関の処理戦略としては、(ⅰ)単一の当局が、金融機関グループの最上位に位置する持株会社等に対して破綻処理権限を行使することで、当該金融グループを一体として処理する方法(SPE(Single Point of Entry)アプローチ)と、(ⅱ)複数の当局が、金融機関グループの各法人に対してそれぞれ破綻処理権限を行使することで、当該金融グループを構成する法人を個別に処理する方法(MPE(Multiple Point of Entry)アプローチ)が挙げられる(FSB「再建・破綻処理計画の策定に関するガイダンス」(2013年7月)等)。

    本邦TLAC対象SIBsの望ましい処理戦略を決定するに当たっては、当該金融機関グループの組織構造(グループ内の相互連関性や相互依存性を含む。)を踏まえた処理可能性を考慮し、SPEアプローチとMPEアプローチのいずれかを選択するものとする。SPEアプローチを選択した場合、通常、国内処理対象会社は当該金融機関グループの最上位の持株会社となり、国内処理対象グループは当該金融機関グループと一致することとなる。

    なお、望ましい処理戦略としていずれを選択した場合であっても、実際にどのような処理を行うかについては、個別の事案毎に当該本邦TLAC対象SIBの実態を考慮のうえで決定すべきことに留意する。

  • ③ 外部TLACの充実

    望ましい処理戦略を実効的に実現するためには、破綻処理対象会社及びそのグループ会社は、子会社に生じた損失を破綻処理対象会社が吸収した後、最終的に破綻処理対象会社の株主・債権者によって当該損失が吸収されることを可能とする資金調達・分配構造を、予め構築しておくことが必要である。

    これを踏まえ、TLAC1柱告示においては、本邦TLAC対象SIBsの国内処理対象会社に対し、外部TLACとして、損失吸収力等を有すると認められる資本・負債の最低所要水準を満たすよう求めている。

    • イ.所要水準

      • a.適用のタイミング

        2019年4月1日以降に「告示に指定されたG-SIBs」となった場合における当該金融機関グループの国内処理対象会社については、告示においてG-SIBsとして指定してから3年後を目処にTLAC規制の適用を開始するものとする。この場合、適用開始時における国内処理対象グループ連結の最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は18%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6.75%とする(TLAC完全適用)。

        また、2019年4月1日以降に「告示に指定されたD-SIBs」が新たに本邦TLAC対象SIBsとなった場合における当該金融機関グループの国内処理対象会社については、適用開始時における国内処理対象グループ連結の最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は16%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6%とした上(TLAC段階適用)、3年後を目処に最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率は18%、最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率は6.75%とする(TLAC完全適用)。

        ただし、これらの適用については、機械的・画一的に運用するものではなく、当該金融機関グループがTLAC規制対応に要する期間、外部TLAC比率の最低水準を達成するために当該国内処理対象会社が採る対応策の内容やその効果及びその対応策が金融システムに与える影響等に留意する必要がある。

      • b.外部TLACの充実度の評価

        • (ⅰ)本邦TLAC対象SIBsは、外部TLACの充実度を評価するに当たって、外部TLACの量のみならず、少なくとも以下の点を含む外部TLACの質について分析を行うことが必要である。

          • その他外部TLAC調達手段が、TLAC1柱告示に規定する要件を全て満たしており、TLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえた内容となっていること。
          • 国内処理対象会社がその他外部TLAC調達手段の保有者に対して取得に必要な資金を直接又は間接に融通しておらず、また、当該資本調達手段を当該国内処理対象会社の子法人等又は関連法人等が取得していないこと。
          • 2022年3月30日までの間、その他Tier1資本調達手段及びTier2資本調達手段のうち、海外に設立された子会社等から発行されたものである場合又は主要子会社から発行されたものであって、所定の場合に普通株式への転換が行われる特約その他これに類する特約が定められているものについては、当該資本調達手段を外部TLACに算入することにつき関係当局が同意していること。
        • (ⅱ)外部TLACはあくまで破綻時における損失吸収・資本再構築力であって、金融機関の健全性の観点からは平常時の自己資本が充実していることこそが重要であるため、外部TLACの充実を優先し、自己資本の質・量の低下を招くような事態は本末転倒であり、避けなければならない。

          もっとも、本邦TLAC対象SIBsが万一破綻まで至った場合には、普通株式等Tier1資本及びその他Tier1資本調達手段(以下、「ゴーイング・コンサーン資本」という。)による損失吸収・資本再構築力には期待できない状況となっていることが想定されることから、本邦TLAC対象SIBsにおいては、かかるゴーイング・コンサーン資本のみに依存することなく、十分な額のTier2資本調達手段及びその他外部TLAC調達手段(以下、総称して「ゴーン・コンサーン資本等」という。)が維持されていることが望ましい。

          また、金融機関の破綻時においてその株主が被る損失は、株主有限責任の原則の下、自らの出資額が上限となり、特に危機時にはモラル・ハザードを招く可能性があるため、債権者による監視を通じて金融機関の意思決定に影響力を及ぼす必要がある。さらに、負債は発行体が危機に近づくにつれて利払い等のコストが増大するため、平常時から負債を発行することによって、自らが危機に陥らないようにするためのインセンティブを強めることも期待されている。

          したがって、外部TLACの充実度については、かかるゴーン・コンサーン資本等の十分性を踏まえて評価することとする。

          具体的には、TLAC合意文書の記載も踏まえ、例えばゴーン・コンサーン資本等が外部TLAC所要水準の概ね33%を上回っている場合には、平常時から金融機関が危機に陥らないようにするためのリスクを減少させるインセンティブを維持しており、危機時における損失吸収・資本再構築力も有しているものと評価するが、下回っている場合には、ゴーン・コンサーン資本等の外部調達の計画の立案・実施及びモラル・ハザードが起きないようなガバナンスの枠組みの構築を含め、危機時における損失吸収・資本再構築力を高めるための方策を十分に講じているか継続的にモニタリングしていくこととする。

      • c.十分な外部TLAC維持のための方策

        • 国内処理対象会社は、上記の外部TLACの充実度の評価を踏まえて、質・量ともに十分な外部TLACを維持するための適切な方策を講じていることが必要となる。
        • 国内処理対象会社は、仮に資本市場へのアクセスが一時的に阻害された場合であっても十分な外部TLACを維持できるよう、特定の時期に満期の到来が集中しないようにする等、外部TLAC調達手段の構成を適切に管理することが必要となる。
        • 国内処理対象会社は、仮にその他外部TLACが不足した場合のその他外部TLAC調達手段と調達可能額について、資本市場における自行の評価、予想外の損失が発生し業績が悪化する局面等において通常よりも調達が困難になる可能性等も踏まえた上での評価・検討をあらかじめ行うことが必要となる。
      • d.監督上の措置

        外部TLAC比率が最低所要総エクスポージャーベース外部TLAC比率を下回った場合には、その理由や外部TLAC比率の向上に係る改善策について、法第52条の31に基づき速やかに報告を求めるものとする。さらに確実な改善が必要と認められる場合には、法第52条の33第1項に基づき業務改善命令を発出することとする。

        なお、最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率の計算においては、外部TLACが不足する場合にはまず資本バッファーが外部TLACに充当されることから、外部TLAC比率が最低所要リスク・アセットベース外部TLAC比率を下回った場合には、既に資本バッファーはゼロとなっており、社外流出制限措置(所要自己資本を下回っている場合には早期是正措置命令も併用)に従い健全性を回復することが期待される。

        これらの監督上の対応については、機械的・画一的に運用するものではなく、TLAC規制対応に要する期間、外部TLAC比率の最低水準やゴーン・コンサーン資本等の額を維持するために銀行がとる対応策の内容やその効果及びその対応策が金融システムに与える影響等に留意する必要がある。

    • ロ.外部TLAC調達手段の適格性の確認

      外部TLACの充実度の評価に関連して、その他外部TLAC調達手段について、法第52条の31に基づく報告徴求命令に応じて借入れ又は社債の発行に関する報告があった場合等において、これが規制上のその他外部TLAC調達手段として適格であるかについて、TLAC1柱告示及びTLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意して確認するものとする。

      • a.TLAC1柱告示第4条第3項第2号ただし書に従った無担保シニア債としてのその他外部TLAC調達手段については、以下の点に留意するものとする。

        • 発行者たる国内処理対象会社の債権者が当該国内処理対象会社グループの他の会社の債権者よりも構造的に劣後している状態である(以下、「構造劣後性を有する」という。)と認められるためには、発行者単体での既存の外部TLACの総額(発行者の貸借対照表における純資産の部に計上される額に、発行者のTLAC適格その他Tier1資本調達手段に係る負債の額、TLAC適格Tier2資本調達手段に係る負債の額及びその他外部TLAC調達手段の額を加えた額とする。)に占める、無担保シニア債と法的若しくは経済的に同順位である又はこれに劣後する除外債務の総額の割合(以下、「除外債務比率」という。)が、原則として5パーセントを超えていないことが必要である。
        • 除外債務比率は以下の除外債務比率によるものとする。
          • (ⅰ)決算状況表(中間期にあっては中間決算状況表)により報告された除外債務比率

          • (ⅱ)業務報告書(中間期にあっては中間業務報告書)により報告された除外債務比率

          • (ⅲ)法令又は金融商品取引所の規則に基づき除外債務比率を公表している場合には、これにより報告された除外債務比率

          • (ⅳ)上記(ⅰ)から(ⅲ)までの報告がされた時期以外に、当局の検査結果等を踏まえ臨時に当該国内処理対象会社から報告された除外債務比率

        • 国内処理対象会社についていったん構造劣後性を有すると認められた後、除外債務比率が5%を超えるおそれがある場合には、その理由や除外債務比率の低下に係る改善策について、法第52条の31に基づき速やかに報告を求めるものとする。さらに除外債務比率が5%を超えた場合には、国内処理対象会社が構造劣後性の維持を引続き求めるか確認の上、法第52条の33第1項に基づき業務改善命令を発出することとする。
        • 秩序ある処理を円滑に実施するため、国内処理対象会社においては、除外債務比率が5%以下であっても、除外債務に該当せず、かつ、外部TLAC適格性を有しない無担保シニア債務を負担することは可及的に避けるべきことに留意する。その上で、国内処理対象会社に対しては、決算状況表(中間期にあっては中間決算状況表)において、外部TLAC適格性を有しない、グループ外の第三者に対して負っている負債の総額につき報告を求めるものとする。
        • Ⅲ-11-6-2-2①ハに記載の通り、無担保シニア債としてのその他外部TLAC調達手段は、秩序ある処理において、倒産処理手続を通じてその全部又は一部の支払を受けることができないリスクがある。発行者においては、かかるリスクを保有者が十分に認識した上で購入するよう、契約書・発行要項又はその附属書類(目論見書等)においてかかるリスクについて適切に記載を行うのみならず、必要に応じて販売者をして購入予定者の理解度等に応じた十分な説明をさせることが求められる。
      • b.TLAC1柱告示第4条第3項第8号に従い償還等に関する契約内容が定められている場合、かかる国内処理対象会社の任意(オプション)による償還等についての事前確認に当たっては、TLAC1柱告示の規定に留意するほか、本監督指針Ⅲ-2-1-1-3(3)の自己資本に係る記載をその他外部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。

      • c.TLAC1柱告示第4条第3項第9号に従い外国の法令に準拠する旨の定めがある場合には、必要に応じて、発行者たる国内処理対象会社の損失吸収又は資本再構築のために有効に用いることができることについての法律専門家の法律意見書及び関連する資料の提出を求めることとする。

    • ハ.意図的に保有している他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段についての該当性判断

      金融システム内で外部TLAC比率向上のためにその他外部TLAC調達手段(これに相当するものを含む。このハにおいて同じ。)を相互に意図的に保有することは、銀行及び他の金融機関等の双方において実体の伴わない総損失吸収力等が計上されることとなり、金融システムを脆弱なものにすることから、バーゼル合意に従い、自己資本比率告示第8条第6項等において、本邦TLAC対象SIBs及び他の金融機関等との間で相互に外部TLAC比率を向上させるため、意図的に当該他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段を保有していると認められ、かつ、当該他の金融機関等が意図的に当該本邦TLAC対象SIBsのその他外部TLAC調達手段を保有していると認められる場合(以下、「意図的持合」という。)、銀行又は連結子法人等が保有するその他外部TLAC調達手段については、その全額を自己資本の調整項目として自己資本(Tier2資本)から控除しなければならないものとしている。この意図的持合については、資本調達手段の意図的持合に係るⅢ―2-1-2-2(2)も踏まえ、具体的に以下のような場合を指すこととする。

      • 本邦TLAC対象SIBsが、他の金融機関等(我が国の預金取扱金融機関に限られない。)との間で、相互に総損失吸収力等の増強に協力することを主たる目的の一つとして互いにその他外部TLAC調達手段を保有することを約し、これに従い、本邦TLAC対象SIBsが当該他の金融機関等のその他外部TLAC調達手段を保有し、かつ、当該他の金融機関等が本邦TLAC対象SIBsのその他外部TLAC調達手段を保有している場合
  • ④ 内部TLACの充実

    国内処理対象会社においては、外部TLACで確保した損失吸収力等を、当該国内処理対象会社グループにおける主要子会社(子会社グループを含む。)に対し、その規模等に応じて内部TLACとして分配することが求められる。

    • イ.内部TLACの分配先となる主要子会社の選定

      内部TLACの趣旨は、処理対象グループにおける主要な子会社(子会社グループを含む。以下本④において同じ。)の損失を持株会社等に集約し、当該子会社が担う金融システム上重要な業務が破綻処理時にも継続することを確保する点にある。これを踏まえると、本邦でも、国内処理対象会社グループ全体を危機に陥れる程度の損失を発生させ得る一定規模以上の子会社であって、かつ金融システム上重要な業務を提供する国内子会社については、主要子会社として内部TLACによる損失集約力の確保を求めることが必要である。

      具体的には、TLAC合意文書を踏まえ、対象先の選定に当たっては、以下の基準①を基本とし、基準②を補完的に用いることとする。

      • 基準①:リスク・アセット、総エクスポージャー、又は経常収益がグループ全体の5%超であること

        • (注)採用している会計基準等において経常収益の科目が存在しない場合にあっては、採用している会計基準等において用いられる収益の総額を示す科目を用いることとする。

      • 基準②:当該子会社の行う業務の本邦金融システム上の重要性及び本邦金融システム上重要な業務の継続に支障を生ずる程度の損失が発生する蓋然性

      選定した国内の主要子会社については、TLAC1柱告示に基づき、国内処理対象会社による内部TLACの分配先として指定する。

      選定先は毎年1回見直すこととし、法第52条の31に基づき、原則として毎年3月末時点でのデータ提出を報告徴求することとする。また、グループ構造の変更等がある場合には、可能な限り事前に変更後の予想計数の提出を求めることとする。

      なお、海外における主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が選定することとなるため、必要に応じて海外の関連当局と協議するものとする。

    • ロ.所要水準

      • a.2019年4月1日以降に本邦TLAC対象SIBsに指定された金融機関に対する適用のタイミング

        2019年4月1日以降に「告示に指定されたG-SIBs」となった又は「告示に指定されたD-SIBs」が新たに本邦TLAC対象SIBsとなった金融機関グループの国内における主要子会社については、当該金融機関グループの国内処理対象会社について外部TLACの最低水準の適用が開始された日と同日に適用を開始するものとする。

        また、2019年4月1日以降に新たに指定された国内における主要子会社については、指定から3年後を目処に内部TLACの所要額の適用を開始するものとする。

      • b.内部TLAC水準調整係数

        国内における主要子会社については、当該主要子会社に適用される自己資本規制をベースとして、仮に当該主要子会社が国内処理対象会社であったと仮定した場合の所要外部TLAC水準を算出し、さらに75%以上90%以下の範囲で当庁が設定した内部TLAC水準調整係数を乗じて内部TLACの所要額を求める。

        内部TLAC水準調整係数を決定するに当たっては、国内における主要子会社については、その処理が原則として国内で完結すること、平時よりグループとして本邦当局による一体的な監督が可能であることから、その損失吸収力等を事前配賦する要請は高くないため、国内における主要子会社の内部TLAC水準調整係数については、原則として75%としたうえ、①当該金融機関グループの望ましい処理戦略、②当該主要子会社のシステム上の重要性・資本構成・ビジネスモデル等を踏まえ、事前配賦の必要性に応じた調整を行うものとする。

        決定した内部TLAC水準調整係数については、TLAC1柱告示に規定したうえ、必要に応じて見直すものとする。

        なお、海外における主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が主導して内部TLAC水準調整係数を決定することとなるため、本邦当局は必要に応じて海外の関連当局と協議することが想定される。仮に、本邦当局の事前の関与なくして現地当局が所要内部TLAC額を設定・適用した場合においては、当該金融機関の危機管理グループ(CMG)における海外関連当局との協議を行い合意が形成されるまでの間は、当該基準はTLAC1柱告示第2条第3項に規定する「最低所要内部TLAC額に係る基準に準ずる基準」に該当しないものとする。

      • c.内部TLACの充実度の評価及び十分な内部TLAC維持のための方策

        • 内部TLACの充実度の評価及び十分な内部TLAC維持のための方策については、(1)③イb(ⅰ)及びcの外部TLACに係る記載を内部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。
        • グループ外部の第三者が保有するバーゼル3適格その他Tier1調達手段及びTier2資本調達手段が存在する場合、当該商品の株式転換の結果、主要子会社の支配権構造が変更されることにより、経営管理等に影響が生じる可能性があることから、そのような資本調達手段はトリガー時に株式転換されるのではなく、元本削減がなされるようになっていることが望ましい。
        • 国内処理対象会社が主要子会社に対して直接内部TLACの配賦をせず、他の子会社を通じた間接的な配賦を行っている場合には、主要子会社についてその実質破綻認定時における内部TLACの元本削減等(以下、「内部TLACのトリガリング」という。)が行われた際に、最終的に国内処理対象会社にその損失が確実に移転されるようになっていることが必要である。主要子会社の親法人等ではない者を通じた配賦は、内部TLACのトリガリングによる支配関係の変更が生じないと考えられるような場合を除き、原則として認められないものとする。
        • 主要子会社が国内処理対象会社に対して発行する負債性の規制資本については、内部TLAC適格資本としての適格性を有するためには、主要子会社の実質破綻認定時においてその元本の削減等が行われる旨の特約が定められていることが必要であることに留意する。また、債権のヒエラルキーを維持する観点から、国内処理対象会社がTLAC規制の適用前から保有している主要子会社の負債性の規制資本については、必要に応じて契約内容を変更し、主要子会社の残余財産の分配又は倒産処理手続における債務の弁済若しくは内容の変更について、その他内部TLAC調達手段に該当する債務に対して劣後的内容を有する旨を規定することが必要であることに留意する。
      • d.余剰TLAC

        国内処理対象会社が調達した外部TLACについては、必ずしも全額を内部TLACとして分配する必要はないため、国内処理対象会社には余剰分が生じることも想定される。かかる余剰分(いわゆる「余剰TLAC」)が生じた場合の取扱いに関しては、国際的な議論の進展及び各国での実施状況を踏まえて検討を続けていくこととする。

      • e.監督上の措置

        内部TLACの所要額を満たしているか否かも踏まえ、当該主要子会社が存続不能に陥った場合の損失吸収力等が不足するおそれがあると認められるときには速やかに報告を求めた上、さらなる改善が必要と認められる場合には国内処理対象会社に対する業務改善命令等を発し、内部TLACの追加配賦を求めるものとする。

    • ハ.内部TLAC調達手段の適格性の確認

      内部TLACの充実度の評価に関連して、その他内部TLAC調達手段が規制上のその他内部TLAC調達手段として適格であるかについて、TLAC1柱告示及びTLAC合意文書の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意して確認するものとする。

      • TLAC1柱告示第7条第3項第9号に従い償還等に関する契約内容が定められている場合、かかる主要子会社の任意(オプション)による償還等についての事前確認に当たっては、TLAC1柱告示の規定に留意するほか、本監督指針Ⅲ-2-1-1-3(3)の自己資本に係る記載をその他内部TLACに係る記載に適宜読み替えて対応するものとする。

Ⅲ-11-6-2 TLACを利用した秩序ある処理等

Ⅲ-11-6-2-1 意義

TLAC規制の適用を受ける金融機関グループの主要子会社が、経営悪化等により金融システム上有する重要な機能の継続が困難となった場合で、資産の売却・親会社による資本増強その他の代替的手段を採り得ないと当局が判断したときには、最終的な手段として、当該主要子会社に係る内部TLACのトリガリングにより、その健全性を回復させることが想定される。

内部TLACのトリガリングにより破綻処理対象会社に損失が集約された結果、金融機関グループとしての破綻処理が必要と当局が判断した場合には、主要子会社自体の営業は継続させつつ、破綻処理対象会社の株主や債権者にその損失を負担させることとなる。

以下では、母国当局としての金融庁の対応として、本邦でのTLACを利用した秩序ある処理の手続の具体例を記載する。

Ⅲ-11-6-2-2 手続の具体例

  • ① 本邦TLAC対象SIBsの国内主要子会社に危機が生じた場合

    SPEアプローチを前提としたTLACを用いた場合の処理としては、例えば以下のイ~ニのような流れが考えられる。イ~ハについては、市場の混乱を避けるため、休業日である週末にかけて迅速に実施し、主要子会社は通常どおり営業を継続することを想定している。

    • (注)市場参加者に対する透明性を高め、破綻処理制度の信頼性を向上させるとともに、適時の破綻処理を可能とするためには、当局の望ましい破綻処理戦略を予め公表しておくことが有用である一方、実際にどのような処理を行うかについては、個別の事案毎に関係する当局が当該本邦TLAC対象SIBの実態を考慮のうえで決定すべき問題である。したがって、以下のようにSPEアプローチに基づき国内処理対象会社について特定第二号措置を講じる以外の処理として、内閣総理大臣が、預金保険法に基づき、国内処理対象会社について特定第一号措置に係る特定認定(預金保険法第126条の2第1項第1号)を行うことや、国内の主要子会社について特定第一号措置に係る特定認定又は第一号措置に係る認定(同法第102条第1項第1号)等を行うことがあり得ることに留意する。

    • イ.国内主要子会社の内部TLACによる損失吸収

      そもそも、内部TLACのトリガリングは当該金融グループ全体に大きな影響を与えうることを踏まえ、国内主要子会社について内部TLACのトリガリングを行うべき場面は、監督当局が当該主要子会社に対して法第26条等に基づく業務改善命令を発出してもなお財務状況の改善が見込めず、かつ、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない等適切な代替手段もないような場合や、その財務状況の急激な悪化により業務改善命令や他の代替手段を実行する時間的余裕がなく緊急性が高いような場合に限られることに留意する。

      やむを得ず内部TLACのトリガリングを選択する場合においては、損失が発生した国内の主要子会社に分配されている内部TLACについて、国内処理対象会社に当該主要子会社の損失を移転するための措置を講じることとなる。

      具体的には、当庁が、国内の主要子会社の債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあると認めた場合(破綻処理対象会社及び主要子会社から当庁に対し、当該主要子会社に債務超過若しくは支払停止又はそれらのおそれがあるとの申出があった場合を含む。)に、前述のような代替手段の有無及び緊急性等を考慮したうえで、法第52条の33第1項に基づく命令のうち、内部TLACを用いた主要子会社の資本増強及び流動性回復を含む健全性の回復に係る命令を国内処理対象会社に対して発したとき(「主要子会社の実質破綻認定時」)は、内部TLACの条件(ローン契約等)に従い元本の削減又は株式への転換が行われることとなる(注1)。

      命令発出に当たっては、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が困難又は期待できない状況であるか否かを考慮するものとする。また、当該命令を発出した際はその旨を公表する。

      なお、仮に内部TLACのトリガリングが行われた場合であっても、持株会社及びグループ全体の財務状況等によっては、ロ以降に規定するグループ全体の破綻処理を行わないことも考えられる(注2)。かかる場合には、グループ全体の破綻処理が開始されるとの誤解を防ぐため、市場とのコミュニケーションに十分留意するものとする。

      • (注1)「主要子会社の実質破綻認定時」について、当庁が銀行法第52条の33第1項に基づき発出する命令においては、特定の国内主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨を記載したうえで、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言を含めることとする(したがって、銀行法第52条の33第1項に基づく命令であっても、当庁が特定の国内主要子会社につき財務危機事由が存在すると認めた旨が記載されていない場合や、「内部TLACを用いた主要子会社の健全性の回復に係る命令」との文言が含まれていない場合には、「主要子会社の実質破綻認定時」には該当しないこととなる。)。

      • (注2)例えば、国内処理対象会社と主要子会社のいずれについてもこれ以上の預金保険法上の措置を講じない場合のほか、国内処理対象会社について特定第一号措置に係る特定認定(預金保険法第126条の2第1項第1号)を行う場合や、国内の主要子会社について特定第一号措置に係る特定認定又は第一号措置に係る認定(同法第102条第1項第1号)等を行う場合もあり得る。

    • ロ.内閣総理大臣による特定認定

      内部TLACのトリガリングが行われた場合において、主要子会社から損失を吸収した国内処理対象会社が預金保険法に規定する特定第二号措置の適用要件を満たす場合には、当該国内処理対象会社に対して、金融危機対応会議の議を経て、内閣総理大臣が、預金保険法に定める特定第二号措置に係る特定認定(同法第126条の2第1項第2号)及び特定管理を命ずる処分(同法第126条の5)を行う(以下、かかる特定管理を命ずる処分を受けた国内処理対象会社を「破綻持株会社」という。)。

      特定認定等が行われた場合、破綻持株会社が発行済みのその他Tier1資本調達手段・Tier2資本調達手段(いずれもバーゼルⅢ適格であるものに限る。)について、当該資本調達手段の条件(社債要項等)に従い、破綻持株会社の他の負債(外部TLAC適格性を有する社債等を含む。)に先立ち、元本の削減等(元本の削減又は普通株式への転換をいう。以下同じ。)が行われる。

      また、破綻持株会社の業務に係る動産又は債権のうち、下記ハにおいて特定承継金融機関等に対して譲渡されるもの(内閣総理大臣が指定するものに限る。)は差押えが禁止される(預金保険法第126条の16)。

      • (注)本邦TLAC対象SIBsが2013年3月31日以降に国内処理対象会社から発行した負債性のその他Tier1資本調達手段については、告示に従って算出される国内処理対象会社の連結普通株式等Tier1比率が5.125%を下回った場合にも、元本の全部又は一部について元本の削減等が実施される。

    • ハ.事業等の譲渡

      特定認定を受けた破綻持株会社は、内閣総理大臣による特定事業譲受け等を行うべき旨の決定(預金保険法第126条の34第1項第2号)の下、株主総会の特別決議に代わる許可を裁判所から得たうえで(預金保険法第126条の13第1項第3号)、預金保険機構が設立した特定承継金融機関等(同法第126条の34第3項)に対し、そのシステム上重要な取引に係る事業等(破綻持株会社が保有する主要子会社の株式を含む。以下同じ。)の譲渡を行う。

      このとき、外部TLAC適格性を有する社債等(残存期間が1年未満のものを含む。)に係る債務は、特定承継金融機関等が引き受けることなく、破綻持株会社が引き続き負担することが想定される。

      • (注)特定承継金融機関等は、国内処理対象会社に対する特定第二号措置に係る特定認定から原則として2年以内に、受皿となる金融機関等に対し、その事業等の譲渡を行うことが想定されている(預金保険法第126条の37、第96条第1項、第126条の3)。

    • ニ.破綻持株会社の法的倒産手続

      事業等の譲渡を行った破綻持株会社について、預金保険機構が法的倒産手続開始の申立てを行う。破綻持株会社は、再生型の法的倒産手続ではなく、清算型の法的倒産手続(具体的には破産手続)によって処理されることが想定される。

      この場合、破綻持株会社の債権者(外部TLAC適格性を有する社債等の債権者を含む。)は、破産法等に従い破産財団の範囲で配当を受けるため、当該破産手続において損失を吸収することとなる。

  • ② 本邦TLAC対象SIBsの海外主要子会社に危機が生じた場合

    本邦TLAC対象SIBsの海外主要子会社については、当該子会社が設立された現地の当局が内部TLACのトリガリングの実施を判断することとなる。かかる判断に際しては、TLAC合意文書に従い、一定期間を定めて本邦当局の同意の有無の確認を求められる場合があることが想定される。かかる場合においては、グループ会社からの支援等による当該主要子会社の健全性の回復が可能か否かを考慮の上、同意の有無を決定するものとする。

    なお、仮に海外主要子会社について内部TLACのトリガリングが行われた場合であっても、持株会社及びグループ全体の財務状況等によっては、①ロ以降に規定するグループ全体の破綻処理を行わないことも考えられる。かかる場合には、グループ全体の破綻処理が開始されるとの誤解を防ぐため、市場とのコミュニケーションに十分留意するものとする。

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