V 銀行グループに対する連結ベースの監督等
V -1 基本的な考え方
-
(1)銀行グループのリスク管理
銀行グループが晒されるリスクについては、銀行グループが全体として晒されるリスクと、銀行グループ内で銀行が晒されるリスクとに分けて考えることができる。こうしたリスク管理のあり方については、最終的な目標が預金者及び決済システムの保護であることを前提とした上で、いずれのリスクを重視すべきかを整理する必要がある。この点については、銀行グループの境界を明確にしつつ銀行グループ全体としてリスク管理を行っていく方法と、グループの境界は開放的なものとしつつ銀行単体をグループの他社のリスクから遮断する方法とが考えられる。リスク管理を監視・けん制するための個別の制度については、規制対応の実行可能性等に応じて両者の考え方をそれぞれ取り入れる必要はあるものの、リスク管理の実態やステークホルダーによる銀行グループの監視状況、グループ展開による利用者利便と国際的な競争力の向上の促進という諸点を勘案すれば、グループの境界を明確にしつつグループ全体としてのリスク管理を念頭においたものとしていくことが適当である。
-
(2)銀行グループの範囲
銀行持株会社、兄弟会社、子会社、関連会社のいずれを問わず、その会社の行う取引のリスクが銀行へ波及していくことに着目すれば、銀行グループのリスク管理という事前予防的な行為の性格から、リスクの波及を保守的にとらえ、実質的な関係に着目してグループの範囲を定めることが適当である。こうした考え方に立って、銀行グループの範囲は、銀行持株会社又は銀行の企業会計上の連結基準(注)と整合的な取扱いとすることとされている。
(注)連結財務諸表を指定国際会計基準等(施行規則第14 条の7第3項に規定する特例企業会計基準等適用法人等が採用する企業会計の基準をいう。以下同じ。)に従い作成している場合には、銀行グループの範囲についても指定国際会計基準等と整合的な取扱いとする。 -
(3)連結ベースの監督の概要
企業会計上の連結財務諸表はもとより、銀行法上のリスク管理債権の開示も連結ベースで行われるほか、自己資本比率規制、流動性比率規制、大口信用供与規制、アームズ・レングス・ルール等についても、連結ベースでの適用となっていることに留意する。
-
(参考) 金融制度調査会「銀行グループのリスク管理等に関する懇談会報告書」(平成10年1月)
V -2 アームズ・レングス・ルール
アームズ・レングス・ルールは、銀行と銀行グループ内会社等との利益相反取引を通じて銀行経営の健全性が損なわれること等を防止するための規定であり、以下の点に留意する。
-
(1)銀行グループ内において業務委託、その他の取引を行う場合に、アームズ・レングス・ルールに違反していないかにつき銀行において適切に検証が行われているか。
例えば、以下のような取引又は行為は、施行規則第14条の10又は第14条の11に規定する取引又は行為に該当する可能性があることから、かかる取引又は行為を行うにあたっては、法第13条の2ただし書及び施行規則第14条の8に基づく内閣総理大臣の承認の必要性を検討しているか。
-
賃料・手数料減免
-
金利減免、金利支払猶予
-
債権放棄、DES(デット・エクイティ・スワップ)
-
特定関係者が債務超過である場合等における増資等の引受け
-
-
(2)法第13条の2ただし書の承認の申請があったときは、当該申請をした銀行が法第13条の2各号に掲げる取引又は行為をすることについて施行規則第14条の8第1項各号に掲げるやむを得ない理由があるかどうか又は同条第2項に掲げる要件に該当するかどうかを審査するが、その際留意すべき項目は以下のとおり。
-
施行規則第14条の8第1項第3号に該当する場合
-
イ.特定関係者が経営危機に陥り再建支援の必要な状況か。
-
ロ.特定関係者が再建支援を受けるに当たり、十分な自助努力及び経営責任の明確化が図られているか。
-
ハ.特定関係者を整理・清算した場合に比べ、当該取引又は行為を行うことに経済的合理性があるか。
-
ニ.債権放棄や金銭贈与の場合には、経営改善計画の期間中の支援による損失見込額の全額について、当該計画開始前に償却・引当を行うこととしているか。
-
なお、承認に当たっては、特定関係者の経営改善計画の確実な履行を図る観点から、必要に応じ、以下の条件を付すものとする。
-
a.特定関係者の経営改善計画を確実に履行させるよう図ること。
-
b.特定関係者の経営改善計画の履行状況、履行状況に対する銀行の認識、当該特定関係者に対する銀行の経営管理方針について、経営改善計画の期間中、事業年度毎に報告すること。
-
c.特定関係者の経営改善計画の履行状況が不十分である場合、特定関係者の業務の見直しを含め、経営改善計画の抜本的な見直しを検討すること。
-
-
-
施行規則第14条の8第1項第4号に該当する場合
銀行が特定関係者との間で当該取引又は行為を行わなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであるか。
-
V -3 銀行及びグループ会社の業務範囲等
V -3-1 基本的考え方
-
(1)銀行の他業禁止規制の趣旨
銀行には、銀行法上他業禁止規制が課されているが、その趣旨は、銀行が銀行業以外の業務を営むことによる異種のリスクの混入を阻止する等(注)の点にある。
(注) この他に、銀行業務に専念することによる効率性の発揮、利益相反取引の防止が他業禁止の趣旨として指摘されている。
-
(2)銀行グループの業務範囲規制についても、銀行の他業禁止の趣旨をグループ全体に及ぼし、グループ全体として銀行に対する規制に準じた取扱いとする。
(注1)銀行グループが指定国際会計基準等を適用する場合、法第16条の4で議決権取得制限(いわゆる5%ルール)の例外として許容されている行為(例えば、中小企業等経営強化法に関連したベンチャー投資、DES(デット・エクイティ・スワップ)、担保権の実行)は、その結果としてグループの範囲が広がるものであっても、特段の制限を受けるものではない。
(注2)銀行が適用する会計基準を変更することのみを原因として、従来は銀行グループ外とされていた会社又は会社に準ずる事業体が当該銀行の子会社等となる場合、銀行の他業禁止の趣旨の潜脱を防止する観点からは相応の期間内(原則として1年以内)に所要の措置を講ずることが望ましい。
V -3-2 法第10条第2項の業務の取扱い
V -3-2-1 地域活性化等業務における留意点等
-
(1)銀行が行うことができる法第10条第2項第21号の業務(以下「地域活性化等業務」という。)は、施行規則第13条の2の5各号において具体的に類型が列挙されているが、同条柱書括弧書によって、「当該銀行の営む銀行業に係る経営資源に加えて、当該業務の遂行のために新たに経営資源を取得する場合にあっては、需要の状況によりその相当部分が活用されないときにおいても、当該銀行の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすおそれがないものに限る。」という要件が付されている。
デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に資するため、地域活性化等業務を銀行の業務範囲に追加した点に鑑みれば、当該要件について過度に厳格な扱いをすべきではない点に留意する必要がある。
そこで、当該要件については、新規又は追加的に取得しなければならないリソースを最小限度にしなくてはならないわけではなく、仮に当該業務の需要がゼロになったとしても、銀行の固有業務の遂行又は健全性に著しい支障をきたさないことが明らかである限り、当該要件を充足するとみなすことができ、地域活性化等業務として実施可能であることに留意する。
-
(2)銀行が行うことができる地域活性化等業務のうち、施行規則第13条の2の5第2号の業務については、取引上の優越的地位を不当に利用することがないよう留意すること。
V -3-2-2 「その他の付随業務」等の取扱い
銀行が法第10条第2項の業務(同項各号に掲げる業務を除く。以下「その他の付随業務」という。)等を行う際には、以下の観点から十分な対応を検証し、態勢整備を図っているか。
-
(1)銀行が、取引先企業に対して行う人材紹介業務、オペレーティングリース(不動産を対象とするものを除く。)の媒介業務、M&Aに関する業務、事務受託業務については、取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化の観点から、固有業務と切り離してこれらの業務を行う場合も「その他の付随業務」に該当する。
また、個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務も「その他の付随業務」に含まれる。
-
(注)人材紹介業務については、職業安定法に基づく許可が必要であることに留意すること。また、その実施に当たっては、取引上の優越的地位を不当に利用することがないよう留意すること。
-
-
なお、実施に当たっては、顧客保護や法令等遵守の観点から、以下の点について態勢整備が図られている必要があることに留意すること。
-
優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等法令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。
(注) 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務の実施に当たっては、金融商品取引法に規定する投資助言業務に該当しない等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。
-
提供される商品やサービスの内容、対価等契約内容が書面等により明示されているか。
-
付随業務に関連した顧客の情報管理について、目的外使用も含め具体的な取扱い基準が定められ、それらの行員等に対する周知徹底について検証態勢が整備されているか(Ⅲ-3-3-3-2参照)。
-
-
(2)銀行が、従来から実施することを認められてきた電子マネー(オフラインデビットにおける電子カードを含む。)の発行に係る業務については、発行見合資金の管理等、利用者保護に十分配慮した対応となっていることについて、銀行自らが十分挙証できるよう態勢整備を図る必要があることに留意すること。
-
(3)資金の貸付け等と同様の経済的効果を有する取引
-
銀行が、顧客又はその関係者の宗教を考慮して、商品(取引所において売買することができる物品をいう。以下この(3)において同じ。)の売買(取引所外での売買を含む。以下この(3)において同じ。)、物件の賃貸借又は顧客の営む事業に係る権利の取得が含まれる資金の貸付けと同様の経済的効果を有する取引(法第10条第1項第2号又は同条第2項第18号に該当するものを含む。)を行う場合には、以下の点に留意する。
-
イ.当該取引に商品の売買が含まれる場合には、当該商品の売買代金に係る信用リスク以外に商品に関するリスク(当該取引に必要となる商品の売買ができないリスクを含む。以下この(3)において同じ。)を銀行が負担していないこと。
-
ロ.当該取引に物件の賃貸が含まれる場合(銀行が当該物件の取得前に取得の対価を支払う場合を含む。)には、当該物件の賃料に係る信用リスク以外に当該物件に関するリスクを銀行が負担していないこと。また、法第10条第2項第18号の要件を満たすこと、銀行が物件の建設等、銀行が行うことのできない業務を行うこととなっていないこと。
-
ハ.当該取引に顧客の行う事業に係る権利の取得が含まれる場合には、当該権利から生じるキャッシュフローが資金の貸付けと同様であり、当該事業に関するリスクのうち当該顧客に対する信用リスクと評価できないものを銀行が負担していないこと。
-
-
銀行が、顧客又はその関係者の宗教を考慮して、商品の売買が含まれる預金の受入れと同様の経済的効果を有する取引(法第10条第1項第1号に該当するものを含む。)を行う場合には、商品に関するリスクを負担していないことに留意する。
-
銀行が、顧客又はその関係者の宗教を考慮して、商品の売買が含まれる金利・通貨スワップ取引と同様の経済的効果を有する取引を行う場合には、商品に関するリスクを負担していないことに留意する。
-
-
(4)上記(1)から(3)までに定められている業務以外の業務(余剰能力の有効活用を目的として行う業務を含む。)が、「その他の付随業務」の範疇にあるかどうかの判断に当たっては、法第12条において他業が禁止されていることに十分留意し、以下のような観点を総合的に考慮した取扱いとなっているか。
-
当該業務が法第10条第1項各号及び第2項各号に掲げる業務に準ずるか。
-
当該業務の規模が、その業務が付随する固有業務の規模に比して過大なものとなっていないか。
-
当該業務について、銀行業務との機能的な親近性やリスクの同質性が認められるか。
-
銀行が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力の活用に資するか。
-
(注1)銀行グループの効率的かつ合理的な業務運営を目的として、事業用不動産の賃貸等をグループ会社に対して行う場合(当該グループ会社自身が使用する場合に限る。)は、「その他の付随業務」の範疇にあると考えられる。
なお、上記目的に照らし、銀行グループの範囲は、V-1(2)に規定する範囲に限定され、銀行持株会社又は銀行の企業会計上の連結基準と整合的な取扱いとなっている必要があることに留意すること。 -
(注2) 上記規定を総合的に考慮するに当たり、例えば、グループ会社以外の者に対し事業用不動産の賃貸等を行わざるを得なくなった場合においては、以下のような要件が満たされていることについて、銀行自らが十分挙証できるよう態勢整備を図る必要があることに留意すること。なお、国や地方自治体のほか、地域のニーズや実情等を踏まえ公共的な役割を有していると考えられる主体からの要請に伴い賃貸等を行う場合は、地方創生や中心市街地活性化の観点から、二.については要請内容等を踏まえて判断しても差し支えない。
-
イ.行内的に業務としての積極的な推進態勢がとられていないこと。
-
ロ.全行的な規模での実施や特定の管理業者との間における組織的な実施が行われていないこと。
-
ハ.当該不動産に対する経費支出が必要最低限の改装や修繕程度にとどまること。ただし、公的な再開発事業や地方自治体等からの要請に伴う建替え及び新設等の場合においては、必要最低限の経費支出にとどまっていること
-
二.賃貸等の規模が、当該不動産を利用して行われる固有業務の規模に比較して過大なものとなっていないこと。
-
※ 賃貸等の規模については、賃料収入、経費支出及び賃貸面積等を総合的に勘案して判断する(一の項目の状況のみをもって機械的に判断する必要はないものとする。)。
-
-
-
(注3) リストラにより、事業用不動産であったものが業務の用に供されなくなったことに伴い、短期の売却等処分が困難なことから、将来の売却等を想定して一時的に賃貸等を行わざるを得なくなった場合においては、上記(注2)を準用すること(ただし、ハ.のただし書及び二.を除く。)。
なお、国や地方自治体のほか、地域のニーズや実情等を踏まえ公共的な役割を有していると考えられる主体からの要請に伴い賃貸等を行う場合は、地方創生や中心市街地活性化の観点から、賃貸等の期間については、要請内容等を踏まえて判断しても差し支えない。 -
(注4) 「その他の付随業務」の範疇にあるかどうかを判断する際の参考として、一般的な法令解釈に係る書面照会手続及びノーアクションレター制度における回答を参照すること(金融庁HP 「法令解釈に係る照会手続(ノーアクションレター制度ほか)」)。
-
-
V -3-3 子会社等の業務範囲
銀行の子会社(法第2条第8項に規定する子会社(同項の規定により子会社とみなされる会社を含む。)をいう。以下同じ。)、子法人等(施行令第4条の2第2項に規定する子法人等(子会社を除く。)をいう。以下同じ。)、及び関連法人等(同条第3項に規定する関連法人等をいう。以下同じ。)(以下「子会社等」という。)の業務範囲等については、法第12条に規定する他業禁止の観点から以下のとおりとする。
なお、銀行持株会社の子会社等についても、これに準じた取扱いを行うものとする。
-
(注1) 銀行又はその子会社が、国内の会社(当該銀行の子会社を除く。)の株式等について、合算して、その基準議決権数(法第16条の4第1項に規定する基準議決権数をいう。以下同じ。)を超えて所有している場合の当該国内の会社(以下「特定出資会社」という。)が営むことができる業務は、法第16条の2第1項第1号から第6号まで、第11号、第13号、第15号及び第16号に掲げる会社(同項第13号に掲げる会社にあっては、特別事業再生会社を除く。)、当該銀行が子会社としている特例持株会社(法第16条の2第6項第1号に規定する特例持株会社をいう。)並びに特例対象会社(法第16条の4第8項に規定する特例対象会社をいう。)が行うことができる業務の範囲内であり、かつ、施行規則、告示、本監督指針に定める子会社に関する基準等を満たす必要があることに留意する。
なお、法第16条の2第4項に規定する認可に関して、当該認可審査項目では、申請銀行及び当該認可の対象となる会社(以下この項において「認可対象会社」という。)の収支が良好であり、当該認可後においても申請銀行及び当該認可対象会社の収支が良好に推移することが見込まれることが求められているが、当該認可審査項目には、収支予想期間までは定められていないことに鑑み、当該認可の申請に係る収支予想期間については、3年以上とすることは差し支えない。
また、子会社等に関する届出(子会社については法第53条第1項第2号の届出、子法人等又は関連法人等については施行規則第35条第1項第15号の届出、特定出資会社については同項第17号の届出をいう。)の受理に当たっては、当該子会社等の定款又は当該銀行と当該子会社等が締結した業務協定書等により、当該子会社等が営むことができる業務を営んでいることを確認する。
-
(注2) 子法人等及び関連法人等の判定に当たり、当該銀行が金融商品取引法に基づき有価証券報告書等の作成等を行うか否かにかかわらず、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則、企業会計
基準適用指針第22 号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(平成20 年5月13 日付)その他の一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従っているかにも留意する。
(参考)連結財務諸表を指定国際会計基準等に従い作成している場合には、当該基準に基づく判定が行われているかに留意する。 -
(注3) 法第16条の2及び法第16条の4に規定する「会社」には、特別目的会社(例えば、資産の流動化、自己資本の調達を目的とするもの等)、組合、証券投資法人、パートナーシップその他の会社に準ずる事業体(以下「会社に準ずる事業体」という。)を含まないが、会社に準ずる事業体を通じて子会社等の業務範囲規制、他業禁止の趣旨が潜脱されていないかに留意する。
-
(注4)地域活性化事業会社(法第16条の2第1項第14号及び法第16条の4第8項)について、銀行からの事業内容の可否に係る事前相談においては、施行規則第17条の7の3第1項第2号に規定している「地域経済の活性化に資する事業活動を行うことを目的とした会社」に、単に合致しているかにより判断して差し支えない。
-
(注5)銀行法改正(令和3年11月施行)により、法第16条の2第1項第14号が追加されたが、地域活性化事業会社(同号、法第16条の4第8項)における不動産業務の取扱いは改正前と変わらないことに留意する。
V -3-3-1 子会社等の業務の範囲
-
(1)銀行の子会社が営む従属業務(法第16条の2第2項第1号に規定する従属業務をいう。以下同じ。)については、本監督指針 III -3-3-4等に沿って適切な対応を行っているか。
-
(2)銀行の子会社が営む金融関連業務(法第16条の2第2項第2号に規定する金融関連業務をいう。以下同じ。)等については、以下の範囲となっているか。
-
信用保証業務
当該銀行並びに当該銀行及びその銀行持株会社の子会社、子法人等及び関連法人等による事業性ローンに係るものを取り扱っていないか、また、以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
イ.保証会社の業務運営に当たっては、保証債務の円滑な履行に疎通を欠くことのないよう、保証の特性を踏まえた、適正な保証料率の設定、適切な引当処理の実行などによる、保証業務の専業体制の確立や内部留保の充実その他適正な支払い準備の確保等に十分配意しているか。
特に、グループ内の保証については、保証にかかるリスクが外部に移転していないことにかんがみ、当該保証会社の業況が当該銀行等の健全性の確保に影響を与えることがないよう十分配意しているか。
-
ロ.保証会社が信用保証を行うに当たって、物的担保以外に不必要な人的担保も徴求していないか。
-
ハ.銀行が、信用保証を必要とする債務者に対し、自行が子会社として設立した保証会社の保証を強制すること等の行為を行っていないか。
-
ニ.銀行が、保証会社の保証付ローンの金利について、通常の場合の金利に比較して次のものに相当する部分を低減しているか。
-
a.通常見込まれる貸倒れに伴う損失
-
b.担保等の設定、管理、処分等のために要するコスト
-
c.信用調査、貸出審査等が簡略化されることにより軽減が見込まれるコスト
-
-
-
リース業務
不動産を対象としたリース契約に当たっては、教育・文化施設、社会福祉施設等の公的な施設の整備・運営に係るものを除き、融資と同様の形態(いわゆるファイナンスリース)に限ることとし、一般向け不動産業務等の子会社対象会社が営むことができる業務以外の業務を行っていないか。
(注)優越的地位の濫用及び利益相反取引の防止に係る管理態勢を整備するとともに、銀行が不動産業務を営むことができないことに鑑み、実質的に不動産の売買及び賃貸の代理及び媒介を営むこととならないよう、法令等遵守の観点から事前に十分な検討・検証を行うこととしているか。 -
投資顧問業務
業務の特殊性、投資家保護の観点から以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
イ.保護預りは当該社では扱わず、銀行本体、信託銀行等の扱いとなっているか。
-
ロ.投資助言の範囲は不動産、骨董品等は対象とせず、有価証券、金融商品としているか。
-
-
電気通信業務(いわゆるVAN業務)
主として(概ね5割以上)銀行の業務及び企業の資金、経理に関連したもの(受・発注業務、売掛・買掛債権管理業務等資金決済に関するもののほか、会計、税務、資金運用等に関するデータ処理等)を取り扱うこととしているか。
-
(注) 電気通信事業法第16条第1項による総務省への届出について照会があった場合には、「子会社等が他人の通信を媒介する役務(以下「媒介役務」という。)の提供を営利の目的とせず(例えば、共同出資の子会社等が、出資金融機関のみを対象として媒介役務を提供する場合等当該子会社等の定める料金、提供条件等から媒介役務について収益をあげることを目的としていないことが明白な場合: 100%出資の子会社はこれに含まれる。)に行う場合には必要ない」旨回答すること。
-
-
信託受益権の販売に係る業務
不動産を信託財産とする信託の受益権の売買の代理及び媒介を行うに当たっては、銀行が不動産業務を営むことができないことにかんがみ、実質的に不動産の売買及び貸借の代理及び媒介を営むこととならないよう、法令等遵守の観点から事前に十分な検討・検証を行うこととしているか。
-
投資専門子会社におけるコンサルティング業務等
投資専門子会社による施行規則第17条の2第14項第2号の業務の実施にあたっては、優越的地位の濫用及び利益相反取引の防止に係る管理態勢を整備するとともに、法令等遵守の観点から事前に十分な検討・検証を行うこととしているか。
-
-
(3)銀行の特定子法人等(特定出資会社でない子法人等をいう。以下同じ。)及び特定関連法人等(特定出資会社でない関連法人等をいう。以下同じ。)については、以下のとおりとなっているか。ただし、会社に準ずる事業体については、この限りでない。
-
銀行の特定子法人等及び特定関連法人等の業務の範囲については、子会社対象会社(法第16条の2第1項に規定する子会社対象会社をいう。以下同じ。)の営むことができる業務の範囲内であり、かつ、施行規則、告示、本監督指針に定める子会社に関する基準等を満たしているか。
例えば、保険専門関連業務(同条第2項第4号に定める保険専門関連業務をいう。)を営む会社については、銀行が保険会社を子会社としている場合等に限り、銀行の特定子法人等又は特定関連法人等として保有することができることに留意する。
なお、金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(以下「金融システム改革法」という。)の施行の際、信託業務を営む銀行(本体で不動産業務を営む者に限る。)の特定子法人等又は特定関連法人等で現に一般向け不動産業務を営むもの(以下において「特定法人」という。)の当該業務については、銀行の特定子法人等及び特定関連法人等が営むことができる業務に含まれることに留意する。
-
関連会社として届出がなされたもの(当該関連会社がその業務を行わせるために設立した会社及びこれらと同様の業務を営む会社を含み、(3)に該当する会社及び特定法人を除く。)で、金融システム改革法の施行の際、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を現に営む銀行の特定子法人等又は特定関連法人等が、金融システム改革法の施行後も引き続きそれらの業務を営む場合には、別に命ずるところにより、当該特定子法人等又は特定関連法人等の名称、業務その他必要な事項について報告がなされたものに限り、当分の間、上記に反しないものとして取り扱って差し支えない。
ただし、当該特定子法人等又は特定関連法人等が当該銀行の子会社又は特定出資会社となる場合並びに当該特定子法人等又は特定関連法人等が金融システム改革法の施行前に営んでいた業務以外の業務を新たに営む場合はこの限りでない。
-
(注1) 関連会社とは、銀行が出資する会社で、その設立経緯、資金的、人的関係等からみて、銀行と緊密な関係を有する会社をいう。
-
(注2) 例えば、以下のような場合については、銀行法の趣旨を逸脱しない限り、上記特定子法人等又は特定関連法人等に準じて取り扱って差し支えない。
-
イ.銀行の届出済の関連会社が上記の業務を営む場合に、当該銀行が他の会社の保有する当該関連会社の株式を取得したことにより、金融システム改革法の施行の際、当該銀行の特定出資会社(子法人等又は関連法人等に限る。)となったことについてやむを得ない理由があるとき(金融システム改革法附則第 104条に規定する届出がなされているものに限る。)
-
ロ.金融システム改革法の施行の際、銀行の特定子法人等又は特定関連法人等として上記の要件を満たすものが、法第16条の4第4項第1号の規定により当該銀行の特定出資会社(子法人等又は関連法人等に限る。)となった場合(同号に規定する認可を受けている場合に限る。)
-
ハ.金融システム改革法の施行の際、二の銀行のそれぞれの特定子法人等又は特定関連法人等として上記の要件を満たすものが、合併によりいずれか一の銀行の特定子法人等又は特定関連法人等(以下「存続会社」という。)となった場合(存続会社が合併前に営んでいた業務以外の業務を合併後に営むこととなる場合には、当該業務について平成14年3月期末までに必要な見直しが行われているものに限る。)
-
-
特定子法人等又は特定関連法人等において一般向け不動産業務、物品販売業務、旅行あっせん業務等、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を行っていないか。ただし、金融システム改革法の施行の際、特定子法人等又は特定関連法人等が現にこれらの業務を営んでいる場合には、平成14年3月期末までに必要な見直しが行われているか。
なお、金融システム改革法の施行の際、特定子法人等又は特定関連法人等が現に従属業務又は金融関連業務(これらに準ずる業務として、別に命ずるところにより報告がなされたものを含む。)を営む場合又はこれらを併せ営む場合においては、平成14年3月期末までに当該従属業務又は金融関連業務以外の業務について必要な見直しが行われているものに限り、当分の間、上記に反しないものとして取り扱って差し支えない。
-
(注) 当該特定子法人等又は特定関連法人等が平成14年3月期末を超えて必要な見直しを終えていない場合には、見直しが終了していない正当な理由について、別に命ずるところにより報告を求めることに留意する。
-
-
V -3-3-2 他の事業者の貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介会社の取扱い
他の事業者の貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介会社の業務は、他の事業者が貸出金等の回収のために担保権を実行する必要がある場合に行う当該貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介(以下「代理等」という。)に限られているか。
-
(注1)他業禁止規制の趣旨を踏まえ、担保権の実行以外での売買の代理等は認められないことに留意する。
-
(注2)銀行が不動産業務を営むことができないことに鑑み、不動産の売買の代理等は認められないことに留意する。
-
(注3)担保財産の取得・保有・管理及び売却は、施行規則第17条の3第1項第24号に規定する会社以外は認められないことに留意する。
V -3-3-3 金融機関の貸出金等に係る担保財産の保有・管理会社の取扱い
金融機関の貸出金等に係る担保財産の保有・管理会社については、以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
(1)当該会社の業務は以下に限られているか。
-
親銀行等が貸出金等の回収のために担保権を実行する必要がある場合(親銀行等に係る担保財産について第三者が担保権を実行する場合も含む。)に行う当該貸出金等に係る担保財産の取得(不動産以外の財産については競落による取得に限らず、いわゆる私的実行による取得も含む。)。
-
取得した財産の保有・管理及び売却(以下、「保有等」という)。
-
-
(2)当該会社の業務遂行に当たって以下の点は遵守されているか。
-
不動産の保有等
-
イ.取得した不動産に関し、必要に応じ、財団法人民間都市開発推進機構、不動産特定共同事業者、宅地建物取引業者等との連携を図りつつ、整地、当該土地に適切な建築物の建設、隣接地の購入等を行い、当該不動産の価値の向上のための有効活用に努めているか。
-
ロ.資産の流動化に関する法律に規定する特定目的会社の活用による流動化を検討するなど、取得した不動産の円滑な売却の実現に努めているか。
-
ハ.当該会社は、不動産の保有等を行うに当たって、ホテル業等関連会社が営むことが適当でない業務を営んでいないか。
-
-
動産の保有等
-
イ.動産は多種多様であり、その保有等により想定されるリスクも多岐に亘ることを踏まえ、当該動産の種別、特性に応じ、当該動産の保有等により生じうる管理責任や契約不適合責任等のリスクを適正に把握・分析・管理し、これらのリスクに適切に対応するための態勢を整備しているか。
-
ロ.当該動産の取得に際しては、客観性・合理性のある評価方法による評価をしているか。
-
ハ.取得した動産に関し、当該動産の種別、特性等に応じた適切な管理を行い、当該動産の価値の向上、維持に努めているか。
-
ニ.取得した動産の種別、特性等に応じた適切な売却・換価方法を検討し、その実現に努めているか。
-
ホ.当該会社は、動産の保有等を行うに当たって、関連会社が営むことが適当でない業務を営んでいないか。
-
-
債権の保有等
-
イ.当該債権の取得に際しては、客観性・合理性のある評価方法による評価をしているか。
-
ロ.取得した債権に関し、当該債権の第三債務者(目的債権の債務者)の信用力を判断するために必要となる情報を随時入手し財務状況を継続的にモニタリングするなど、当該債権の価値の維持に努めているか。
-
ハ.取得した債権に関し、適時に適切な回収措置(第三者への譲渡を含む)を講じ、円滑な回収の実現に努めているか。
-
-
その他の財産の保有等
その他の財産についても、上記不動産、動産および債権の保有等に準じた取扱いがなされているか。
-
-
(3)対象財産は親銀行等の貸出金等に係る担保財産であり、当該財産の購入により、親銀行等に回収が見込まれるか。
-
(注) 貸出金等には親銀行等が保証の履行により取得した求償権等の債権で当該財産の被担保債権となっているものを含む。
-
-
(4)その他
-
不動産の保有等を行う当該会社は、宅地建物取引業法の規定により、同法第3条の免許を取得しているか。
-
不動産以外の財産の保有等を行う当該会社は、当該財産の保有等に必要な免許、許可、登録又は承認等を取得しているか。
-
当該会社は取得した財産毎に収支・損益の分別管理を行っているか。
-
親銀行等及び当該会社は当該会社の財務の健全性が確保されるよう必要な措置を講じているか。
-
V -3-3-4 他業銀行業高度化等会社
-
(1)基本的な考え方
銀行は、法第16条の2第1項第15号に掲げる会社(施行規則第17条の4の3に規定する会社(以下「一定の銀行業高度化等会社」という。)を除く。以下「他業銀行業高度化等会社」という。)に対して基準議決権数を超えて出資することが認められている。これは、銀行グループにおいて、将来的に様々な展開が予想される中で、認可を条件として、より柔軟な業務展開を可能とするためである。また、銀行グループにおける将来の可能性への戦略的な対応として、出資時点においては銀行業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資するといえないものであっても、これらが見込まれる業務を営む会社への出資を可能としている。
他方で、他業銀行業高度化等会社の認可申請があった場合には、銀行グループに他業禁止の規制が課されている趣旨である、他業リスクの回避、利益相反の禁止及び優越的地位の濫用の防止といった要請を踏まえ審査を行う必要がある。
-
(注1)銀行法改正(令和3年11月施行)施行前よりすでに銀行業高度化等会社としての認可を受けた会社については、同改正の施行後においては、認可時の業務に関わらず、他業銀行業高度化等会社の取扱いとなることに留意するとともに、認可当時の条件に従い、新規に業務等を行う場合は当局へ報告することに留意すること。
(注2)銀行法改正(令和3年11月施行)により、他業銀行業高度化等会社が営むことができる業務として地域活性化等に資する業務が追加されたが、他業銀行業高度化等会社における不動産業務の取扱いは改正前と変わらないことに留意すること。
(注3)他業銀行業高度化等会社の設立に向けた準備行為として、銀行本体をはじめとした銀行グループにおいて実証実験を行う場合には、他業禁止の趣旨及び本指針における実証実験の位置付けを踏まえて、当該実証実験の内容及び規模、予定される実証実験の期間、対象者を必要な範囲に限定するほか、当該実証実験に伴うリスク等を個別具体的に検討し、銀行や銀行グループの健全性及びその業務の適切な運営に影響を与えないよう留意すること。
※1 ここで言う「実証実験」とは、他業銀行業高度化等会社の設立の適否を経営陣が判断するにあたって、当該他業銀行業高度化等会社において実施予定の業務に係る採算性・事業継続性を検証することを目的に、銀行本体や当該銀行のグループ会社等において、当該他業銀行業高度化等会社の設立に向けた準備行為の範囲で当該業務と同等の行為を試験的に実施することを指す。なお、銀行は、実施しようとする実証実験が、当該銀行や当該銀行グループの健全性及びその業務の適切な運営に影響を与えないことを自ら挙証する必要があることに留意すること。
※2 一定の銀行業高度化等会社の設立に向けた準備行為として、銀行本体をはじめとした銀行グループにおいて行う「実証実験」についても同様の取扱いとする。
-
-
(2)認可審査にあたっての留意点
他業銀行業高度化等会社の認可の審査基準は、施行規則第17条の5の2第2項において定めているが、各基準の審査にあたっては、以下の点に留意する必要がある。
-
出資額
出資額の適切性については、他業銀行業高度化等会社の認可を申請する銀行(以下(2)から(3)において「申請銀行」という。)の資本金の額、財産及び損益の状況等に照らして判断を行う。他業銀行業高度化等会社に対する出資が全額毀損した場合の影響については、銀行グループへの自己資本比率への影響等の審査を行う。
-
出資比率等
他業銀行業高度化等会社を子会社等とする場合、他業銀行業高度化等会社においても、銀行グループの一員として、適切な経営管理や内部管理、内部監査等に関する態勢整備が必要となる。
また、他業銀行業高度化等会社に対する銀行の支配力が及ばない場合、他業銀行業高度化等会社のガバナンスや業務内容の適切性等について銀行が管理可能か、他業銀行業高度化等会社の業務が、銀行業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資さなくなった場合や認可の基準を満たさなくなった場合、基準議決権数を超える出資の解消等を適切に図ることが可能か等の点を審査する。
-
業務の内容
申請銀行は、認可の申請に際しては、他業銀行業高度化等会社の営む業務の内容を明確にする必要がある。
他業銀行業高度化等会社の営む業務の内容に関し、他業銀行業高度化等会社は、銀行業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資する業務(以下「資する業務」という。)やこれらが見込まれる業務(以下「見込まれる業務」という。)以外の業務を一部で兼営していても、そのこと自体をもって認可の対象外となるものではない。ただし、兼営する業務の内容が銀行業務に弊害等を及ぼす場合はもちろん、兼営する業務の規模が「資する業務」や「見込まれる業務」に比して著しく大きい等の場合も、他業禁止の趣旨等に抵触するおそれがあることから、認可をすることができない点に留意する。
また、他業銀行業高度化等会社の業務を営むに当たり、子会社対象銀行等の業務を併せ営む場合には、他業銀行業高度化等会社の認可のもと、これを営むことは許容される。他方で、他業銀行業高度化等会社が施行規則第17条の5に定める子会社対象銀行等の認可を受けずに子会社対象銀行等の業務を営むことや、子会社対象銀行等が他業を営むために他業銀行業高度化等会社の認可を受けることは、業務範囲規制の趣旨に反して、子会社対象銀行等の認可制度が潜脱されるおそれがある。このため、他業銀行業高度化等会社が子会社対象銀行等の業務を併せ営む場合には、上記のような潜脱のおそれがないかの観点から審査を行うものとする。
なお、出資時において営むことが想定されない業務であっても、その後営むことが具体的に想定される場合には、上記同様、審査を行う必要があることに留意を要する。
他方、他業銀行業高度化等会社の業務については、当庁所管以外の一般事業会社が行う業務であることが多く、また、同会社の認可審査事項に全損規定(施行規則第17条の5の2第2項第2号)があることに鑑み、当該業務の実現可能性や実施予定の業務に係るリスク等の詳細を確認することまでは求められていないことに留意すること。
-
申請銀行の業務への影響等
他業銀行業高度化等会社の業務の内容が、銀行業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に「資する業務」や「見込まれる業務」といえるものであっても、申請銀行の業務に支障を来す著しいおそれが認められるときは、出資額の大小にかかわらず、他業銀行業高度化等会社の認可をすることができない点に留意する(例えば、他業銀行業高度化等会社のコンプライアンス・リスクやレピュテーショナル・リスクの波及により、申請銀行の固有業務の運営に支障が生じたり、銀行グループとして重大な損害等が生じたりするおそれのある場合)。
-
申請銀行のグループとしての他業銀行業高度化等会社に係る経営管理
法第16条の3において、銀行による銀行グループの経営管理を行うことが義務付けられていること及び認可の審査基準において、申請銀行が他業銀行業高度化等会社の議決権を、基準議決権数を超えて取得し、又は保有した後も、申請銀行の業務の健全かつ適切な運営に支障を来す著しいおそれがないと認められることが求められていることに鑑み、申請銀行が他業銀行業高度化等会社の基準議決権数を超える議決権を取得等の後において、当該他業銀行業高度化等会社が申請銀行グループに入ったことによる申請銀行グループ全体の経営管理態勢やリスク管理態勢に追加すべき態勢など、当該態勢について変更することがあるかを確認することに留意すること。
-
-
(3)出資後の管理等
銀行が、他業銀行業高度化等会社の認可を受け、基準議決権数を超えて出資を行った場合、当該銀行は他業銀行業高度化等会社の業務の状況等について、適切にモニタリングを行う。特に、他業銀行業高度化等会社の事業や業務の規模の拡大が見込まれる場合、これに伴うリスクや銀行グループへの影響等についても適切に管理する必要がある。
なお、認可時点において、「資する業務」といえる業務を営んでいたものの、出資後に事業内容について大きな変更が生じた場合や、「見込まれる業務」であったとしても、出資後の状況により、「見込まれる」といえなくなった場合等には、基準議決権数を超える出資の解消等を適切に図る必要がある。
V -3-3-5 銀行の海外における子会社等の業務の範囲
-
(1)銀行の海外における子会社等の業務の範囲についても、国内の子会社等と同様の業務範囲の考え方を適用し、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を営むことのないよう留意する必要がある。
-
(注) 海外における貸出債権回収のために担保権を実行する必要がある場合で、現地市場の状況から担保資産の売却が極めて困難であり、かつ、現地法制上、他に適切な処理方法が存在しないときに、管理子会社を設立して担保流れ資産の保有・管理を行うことは、この限りではない。
また、銀行業を営む外国の会社(以下「銀行現法」という。)が行う業務については、バーゼルコンコルダット(「銀行の海外拠点監督上の原則」1975年バーゼル委員会(1983年改訂))の趣旨にかんがみ、現地監督当局が容認するものは、銀行法の趣旨を逸脱しない限り原則として容認するものとする。
-
-
(2)銀行の海外における子会社(銀行現法を除く。)が金融システム改革法の施行の際現に行う子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務で、現地法制等に照らして問題がなく、かつ、当該業務を1年以内に廃止することにより重大な支障が生ずるおそれのあるものについて金融システム改革法附則第104条に規定する届出がなされた場合には、銀行法の趣旨を逸脱しない限り、当分の間、当該業務を子会社対象会社の営むことができる業務と認めて差し支えない。ただし、当該業務の見直しができる限り速やかに行われるよう、所要の措置が講じられているかどうかに留意する。
-
(3)出資先外国法人として報告がなされたもの(当該出資先外国法人がその業務を行わせるために設立した会社及びこれらと同様の業務を営む会社を含み、上記(2)の子会社を除く。)で、金融システム改革法の施行の際、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を現に営む子法人等又は関連法人等については、上記 V -3-3-1に準じて取り扱う。
-
(注) 出資先外国法人とは、銀行が海外の外国法人に経営支配又は経営参画の形態をもって出資するものをいう。
経営支配とは、銀行が外国法人における議決権の過半数を実質的に所有(議決権のある株式又は出資の所有の名義が役員等当該金融機関以外の者となっていても、当該銀行が自己の計算で所有している場合を含む。)している場合(当該銀行及び当該外国法人が他の外国法人における議決権の過半数を実質的に所有する場合又は当該外国法人が他の外国法人における議決権の過半数を実質的に所有している場合を含む。)をいう。
経営参画とは、銀行が外国法人における議決権の100分の50以下を実質的に所有し、かつ、人事、資金、取引等の関係を通じて外国法人の財務及び営業の方針に対し重要な影響を与えることができる場合をいう。
なお、「重要な影響を与えることができる場合」とは、当該外国における議決権の過半数を実質的に所有している出資者が他にいる場合は原則として該当しない。
-
-
(4)銀行が、法第16条の2第6項第1号に規定する子会社対象外国会社又は同号に規定する外国特定金融関連業務会社(以下、総称して「子会社対象外国会社等」という。)を子会社とするため、同条第4項(同条第7項で準用する場合を含む。以下この(4)において同じ。)の認可申請がなされた場合、理由書その他の認可申請書類に以下の事項が明確に記載されている必要があることに留意する。
-
子会社対象外国会社等が、子会社対象会社以外の会社を子会社としているかどうかの別
-
に記載する会社を子会社としている場合には、当該会社の営む業務の内容並びに当該会社の最近の財産及び損益の状況
-
に記載する会社を子会社とした日から10年が経過するまでに、講ずることを予定している所要の措置の内容
具体的には、(a)法第16条の2第8項の承認を受ける、(b)議決権の売却、会社の清算等により当該会社が銀行の子会社でなくなるようにする、(c)当該会社の業務のうち子会社対象会社が営むことができない業務の廃止、当該業務に係る事業譲渡等により当該子会社を子会社対象会社とするための措置を講じたうえで、当該子会社対象会社となった会社を子会社とするために必要な認可等を受ける方法が考えられる。
なお、銀行の財務の健全性に悪影響を与えるおそれがある場合、子会社対象会社以外の会社の業務内容が公の秩序又は善良の風俗を害し、子会社対象外国会社等の社会的信用を失墜させるおそれがある場合、当該子会社対象会社以外の会社が国内において子会社対象会社の営むことができない業務を営んでいる場合など業務範囲規制の潜脱となるおそれがある場合その他子会社対象外国会社等が当該子会社対象会社以外の会社の業務の適正性を確保するよう子会社管理業務を的確かつ公正に遂行できることが確認できない場合は、法第16条の2第4項の認可をすることができないことに留意すること。
また、外国特定金融関連業務会社には、法第16条の2第6項第1号において「主として」という要件があるが、当該要件の充足の適否については、総収入の50%以上を施行規則第17条の4の4に規定する業務(リース業務、貸金業務等)から生じる収入が占めているか否かで判断することとする。なお、当該要件を維持するために必要な態勢整備が確認できない場合は、法第16条の2第4項の認可をすることができないことに留意すること。
-
※上記の取扱いは、銀行持株会社が、法第52条の23第5項第1号に規定する子会社対象外国会社又は同号に規定する外国特定金融関連業務会社を子会社とするため、同条第3項(同条第6項で準用する場合を含む。)の認可申請がなされた場合にも準用することとする。
-
-
(5)法第16条の2第6項の趣旨は、国際競争力の強化を目指す銀行・銀行グループによる機動的な買収を実現し、現地において一体として付加価値を創造してきた外国会社・外国会社グループを不合理なかたちで分離・解体することを強いられないようにする観点から、子会社対象外国会社等を子会社とすることにより子会社対象会社以外の会社を子会社とした場合、業務範囲規制にかかわらず、当該会社を10年間子会社とすることができるようにするものである。
また、法第16条の2第8項において、金融庁長官の承認を得て、子会社対象会社以外の外国の会社を恒久的に子会社とすることができる旨が定められているのも同様の趣旨による(以下、同項に基づく承認を「恒久化承認」という。)。
恒久化承認に当たっては、法第16条の2第9項に基づき、現に子会社としている子会社対象外国会社等の競争力の確保その他の事情に照らして当該会社の継続保有が必要であると認められる場合に該当するかを審査することとなるが、例えば、以下のような事項を考慮することが考えられる。
-
子会社対象会社以外の外国の会社が実施している業務やリスクの内容
-
現地グループにおける子会社対象外国会社の業務又は外国特定金融関連業務会社の営む金融関連業務とのシナジー、現地当局の要請・指導との整合性等、上記の業務が現地グループにおいて必要とされている理由
-
現地におけるプラクティスや現地同業他社グループにおける上記の業務の取扱いの状況
なお、考慮できる事項は必ずしも上記からの事項に限定されるものではないことに留意する。
-
-
(6)恒久化承認を得ない場合には、10年の猶予期間内に、子会社対象会社以外の外国の会社について所要の措置を講じる必要があるが、金融庁長官は、法第16条の2第10項各号に掲げる事情がある場合には当該猶予期間を1年間延長し、又は再延長することもできる。この場合において、同項各号の「やむを得ない事情」とは、例えば以下の事情が考えられる。
-
同項第1号関係
-
イ.子会社対象会社以外の会社の株式の売却活動に着手しているが、現地の経済情勢や売却先との交渉状況等により売却スケジュールが遅延していること。
-
ロ.現地の法制上の理由により、子会社対象会社以外の会社の清算手続きが進捗しないこと。
-
-
同項第2号関係
現地の金融市場の特性に照らして、子会社対象会社以外の会社を子会社として保有継続することが不可欠であり、資本関係のない第三者に業務委託することでは目的が達成できないこと。
同条第10項の申請を行う場合には、申請の都度、申請時点においてこれらのやむを得ない事情が存在すること、子会社対象会社以外の会社の議決権の保有に関する方針(1年以内にやむを得ない事情を取り除くために検討している方策等)等につき、申請書類に具体的に記載する必要があることに留意する。
-
※上記の取扱いは、法第52条の23第7項から第9項までにも準用することとする。
-
-
(7)V-3-3-5(1)にかかわらず、銀行が、子会社対象外国会社等を子会社とすることにより、子会社対象会社以外の外国の会社を子法人等(子会社を除く。以下この(7)において同じ。)又は関連法人等とすることも可能とする。この場合、子会社業務範囲規制の趣旨に鑑み、上記(4)に準じた対応が必要となる点に留意する。
なお、銀行が子会社対象外国会社等(特例持株会社を除く。)を子法人等又は関連法人等とすることにより、子会社対象会社以外の外国の会社を子法人等又は関連法人等とする場合も同様とする。
-
※なお、銀行持株会社の子会社等(子会社を除く。)についても、上記に準じた取扱いを行うものとする。
-
V -3-3-6 銀行とその証券子会社等の関係
-
(1)金融商品取引法等において、銀行とその証券子会社との間等における弊害防止措置が設けられている趣旨及び施行規則第17条の5第2項第5号(子会社対象銀行等を子会社とすることについての認可審査基準)における「子会社対象銀行等の業務の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講ずる」との趣旨にかんがみ、出資関係等を有する金融商品取引業者との間の行為については、以下の点に留意する必要がある。
- 銀行等は、その関係金融商品取引業者(当該銀行等が金融商品取引業者の親銀行等(金融商品取引法第31条の4第3項に規定する親銀行等をいう。)又は子銀行等(金融商品取引法第31条の4第4項に規定する子銀行等をいう。)に該当する場合における当該金融商品取引業者をいう。)との間において、金融商品取引法第44条の3の規定により禁止されている行為に関与していないか。
-
(2)銀行等がその関係金融商品取引業者との間で、法令等遵守管理に関する業務、損失の危険の管理に関する業務、内部監査及び内部検査に関する業務、財務に関する業務、経理に関する業務、税務に関する業務、子法人等の経営管理に関する業務、又は有価証券の売買、デリバティブ取引その他の取引に係る決済及びこれに関連する業務(以下本項において「内部の管理及び運営に関する業務」という。)について金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号に規定する行為を行う場合には、登録金融機関である銀行及び当該関係金融商品取引業者において、内部の管理及び運営に関する業務を行う部門から非公開情報が漏えいしない措置を的確に講じていること等、情報管理体制について業務方法書に記載することが求められている。一方、銀行監督の観点からは、内部の管理及び運営に関する業務の統合によって、銀行等の当該業務遂行の高度化や効率化を図ることが可能となる反面、関係金融商品取引業者との関係で統合された内部の管理及び運営に関する業務についての責任の範囲や所在が不明確になるリスク、さらに当該銀行等の内部の管理及び運営に関する業務の責任者が実質的に当該内部の管理及び運営に関する業務の管理・監督を行わないまま関係金融商品取引業者にその遂行を任せる状態になることによる当該銀行等の実質的な内部の管理及び運営に関する機能が働かないリスク等、業務の健全かつ適切な運営が阻害されるリスクも発生することから、以下の点に特に留意する必要がある。
-
統合する内部の管理及び運営に関する業務について、銀行等が実質的な管理・監督を行わないまま関係金融商品取引業者へその遂行を任せる状態を防止するため、当該内部の管理及び運営に関する業務に係る銀行等と関係金融商品取引業者との間の権限及び責任の分担、並びに、銀行等における当該内部の管理及び運営に関する業務を担当する取締役等(外国銀行支店にあっては支店長、及び副支店長、管理本部長等、当該内部の管理及び運営に関する業務の責任者として相応しい者。以下「担当取締役等」という。)及び当該業務の担当者(関係金融商品取引業者の当該業務の従業員を兼職している者を含む。)の権限・責任の範囲が、職務規定や組織規定等において明確になっているか。
-
銀行等が内部の管理及び運営に関する業務についての管理責任を果たすための組織及び人的構成に関して、以下のような管理態勢の整備が図られているか。
-
イ.担当取締役等は、銀行等における内部の管理及び運営に関する業務の担当者に対する監督等を通じて、業務の状況を的確に把握し、その適切な遂行を確保する責務と権限を有するとともに、当該銀行等の取締役会等(外国銀行支店にあっては本店における自己の職務関係上の上位者又は当該内部の管理及び運営に関する業務の責任者を含む。以下「取締役会等」という。)や監督当局に対して適切な報告・説明を行う権限及び責任を有しているか。
-
ロ.担当取締役等による営業部門に対するけん制機能が機能しない可能性がある場合には、けん制機能の実効性を確保するための措置が取られているか。例えば、外国銀行支店長が個別の営業部門の役職を兼ね又は実質的に従事している場合に、支店長とは別に管理業務を統括する責任者を営業部門から独立して設置し、当該責任者が支店長に対する報告に加えて取締役会等に対しても直接報告する態勢をとっているか。
-
ハ.けん制機能の実効性の確保を目的として関係金融商品取引業者との合議機関等を設置することが選択されている場合については、当該合議機関における意思決定についての担当取締役等の職責や銀行等の関与が形骸化していないか、合議機関が営業推進の目的に利用されるなどけん制機能の実効性が損なわれていないか、に特に留意する必要がある。例えば、その防止のための措置として、当該合議機関の目的及び手続(決議方法、議事録の作成を含む。)、各構成員の権限と責任が明確になっているか。
-
-
また、監督上必要な場合には、法第24条第1項又は法第52条の31第1項に基づいて当該銀行等に対して以下の点について報告及び資料提出を求めるほか、必要があると認めるときには、法第24条第2項又は法第52条の31第2項に基づき、当該銀行等の子会社たる金融商品取引業者に対しても報告徴求を行うこととする(外国銀行支店に係る関係金融商品取引業者を除く。ただし、外国銀行支店に係る外国銀行と特殊の関係(施行令第14条)のある金融商品取引業者については、法第48条に基づき、当該外国銀行支店に対して報告徴求できることに留意する。)。
-
イ.当該内部の管理及び運営に関する業務等の実施についての方針及び手続
-
ロ.担当取締役等当該内部の管理及び運営に関する業務に従事する者の権限・事務分掌
-
ハ.その他各種規定の整備状況
-
ニ.当該内部の管理及び運営に関する業務実施に係る人員・組織の状況等
-
(注) 銀行等とは、普通銀行、外国銀行支店、銀行持株会社をいう。
-
-
-
(3)銀証ファイアーウォール規制の緩和に伴う優越的地位の濫用の防止について
-
意義
金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号等に定める銀行と証券会社間の情報授受規制(いわゆる銀証ファイアーウォール規制)は、優越的地位の濫用防止、利益相反取引の防止、顧客情報の適切な保護等を確保する観点から、主に顧客の非公開情報等の共有禁止等を定めた規制である。銀証ファイアーウォール規制は、1993年に銀行・証券の相互参入を解禁した際に措置されたものであるが、その後、累次にわたり、見直しが行われており、2022年には、我が国資本市場の一層の機能発揮、顧客に対するより高度な金融サービスの提供の必要性、国際競争力強化、顧客の利便性向上等の観点から、上場会社等の一定の法人に係る非公開情報等を共有するに当たり、当該法人の同意を不要(ただし、当該法人から共有の停止の求めには応じる必要がある。)とするなどの緩和が行われた。
他方で、規制緩和により、優越的地位の濫用に繋がる可能性がある不適切な行為(注)が増大するおそれもあるとの指摘もあるところであり、こうした不適切な行為についても留意しつつ、銀行及びグループ会社の業務の内容・特性・規模等に応じた実効的な防止態勢が確保されることが重要である。
-
(参考)「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 第二次報告―コロナ後を見据えた魅力ある資本市場の構築に向けて―」(2021年6月18日)
-
(注) 銀証連携の場面における優越的地位の濫用又はこれに繋がる可能性がある不適切な行為としては、例えば、以下のようなものが考えられるが、これらに限られるものではなく、銀行のビジネスモデルの実態や、銀行が属するグループ内の他の金融機関の業態等に応じて異なり得ることに留意するものとする。
・有価証券の引受等の金融取引において、グループ証券会社を利用し又はグループ証券会社のシェアを増加させなければ、今後の融資取引に影響がある旨に言及するなど、口頭・書面等あるいは明示・黙示を問わず、銀行の役職員が顧客に対して不利益な取扱いの可能性を示唆してグループ証券会社との取引を要請する場合。
-
-
着眼点
顧客に対する優越的地位の濫用については、Ⅲ-3-3-1-2(7)に加え、例えば、以下の点について、銀行及びグループ会社の業務の内容・特性・規模等に応じた実効的な防止態勢が構築されているか。
-
イ.経営陣が銀行の優越的地位の濫用防止の重要性を認識し、グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)との連携等により、その実践に誠実にかつ率先垂範して取り組んでいるか。また、優越的地位の不当な利用が疑われる事案のうち、顧客に重大な影響を及ぼす可能性があるなど、経営上重要なものについては、経営陣に適時適切に報告がなされる態勢となっており、優越的地位の濫用の防止態勢の構築については、経営陣が適切に関与しているか。
-
ロ.役職員の業績評価等について、優越的な地位の濫用を誘発するインセンティブを与えるようなものになっていないか。また、グループ証券会社との取引を前提としなければ成り立たないような金利での貸出等が横行するなど、銀行業務における採算管理が著しく合理性を欠くといった、優越的な地位の濫用を誘発しやすい収益上の構造がないか。
-
ハ.銀行や銀行のグループ内会社等の業務内容や市場における地位も踏まえ、取引先の規模・信用状況や銀行に対する取引依存度等に基づき、取引先及び取引形態ごとに優越的地位の濫用が発生するリスクを評価しているか。また、このリスクに応じて、優越的地位の濫用を実効的に防止するための手続・遵守事項等が明確化されているか。なお、当該手続・遵守事項等は、業務内容や顧客との取引実態に応じて異なり得るが、例えば、以下のような措置が考えられる。
・銀行が顧客に対して、グループ証券会社の提供する商品又はサービス等に関する情報提供等を行う場合には、事前に、グループ証券会社との取引に応じなくとも、今後の銀行との取引に影響を与えるものではない旨を明確に説明する措置。
・優越的地位の濫用に関する事後的な検証が可能となるよう、顧客との応接録を適切に作成・保存する措置。
-
ニ.役職員に対する研修・教育の実施等により、上記ハについての周知徹底が図られているか。
-
ホ.優越的地位の濫用の防止について、そのための措置を講じる責任を有する部署を営業部門から独立させて設置するなど、十分にけん制機能が発揮されるような体制が整備されているか。また、当該部署は、案件の重要性に応じて、上記ハの手続・遵守事項等が適切に遵守されているかの検証といった点について、適切な関与・管理をしているか。
-
ヘ.上記について、内部監査部門の体制は十分か。また、グループ間の監査が連携されているなど、グループベースでの一体的な管理がなされているか。
-
-
監督手法・対応
優越的地位の濫用防止に係る情報収集窓口に対して寄せられた情報、融資先企業ヒアリングの結果など、様々なチャネルを活用して収集した金融サービス利用者の声のほか、メディア報道や外部からの照会等を含めた外部情報を分析し、重点的にモニタリングを実施することとする。これらのモニタリング、検査結果及び不祥事件等届出書等により、優越的地位の濫用に係る問題があると認められる場合には、必要に応じ、法第24条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。
なお、証券会社においても金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第10号に基づき、親銀行等又は子銀行等の取引上の優越的な地位を不当に利用して金融商品取引契約の締結又はその勧誘を行うことが禁止されており、これは施行規則第14条の11の3第3号と同趣旨であることから、同様の目線や着眼点で検査・監督を行う必要があるため、証券課及び証券取引等監視委員会と十分に連携する必要があることに留意する。また、独占禁止法に規定される優越的地位の濫用の禁止を踏まえ、公正取引委員会と定期的な意見交換を実施する。
-
V -3-3-7 金融機関等とその関係保険会社の関係
保険業法施行規則等において、保険業法第100条の3若しくは同法施行規則第53条の4第2項に規定する特定関係者又は同法第194条に規定する特殊関係者に金融機関等(同法施行規則第53条の4第3項各号に掲げる金融機関及び銀行持株会社をいう。以下同じ。)が該当する場合における当該金融機関等と保険会社等との間等に弊害防止措置が設けられている趣旨にかんがみ、出資関係等を有する保険会社等との間の行為については、以下の点に留意する必要がある。
-
(1)金融機関等は、その関係保険会社(当該金融機関等が保険会社の特定関係者(保険業法施行規則第53条の4第2項に規定する特定関係者)に該当する場合における当該保険会社をいう。)との間において、同法第100条の2に基づく同法施行規則第53条の4及び第53条の6に規定する講ずるべき措置に反する行為に関与していないか。
-
(2)金融機関等は、その関係保険会社(当該金融機関等が保険会社の特定関係者等(保険業法第 100条の3に規定する特定関係者及び同法第194 条に規定する特殊関係者)に該当する場合における当該保険会社をいう。以下同じ。)及び関係保険会社を所属保険会社とする保険募集人等との間において同法第 300条の規定により禁止されている行為に関与していないか。
-
(注) 関係保険会社を所属保険会社とする保険募集人等とは、関係保険会社の役員、関係保険会社を所属保険会社とする生命保険募集人、関係保険会社を所属保険会社とする損害保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人をいう。
-
V -3-3-8 子会社等に係るその他の留意事項
-
(1)グループ全体のシナジー効果を発揮するための経営戦略は明確になっているか。合併等の経緯等から、不必要なあるいは重複する子会社等の体制となっていないか。
-
(2)カード会社や住宅ローンの保証子会社等の金融関連子会社について、財務の健全性は確保されているか。
-
(3)事務請負、人材派遣等の従属業務子会社については、グループ全体のコスト競争力等の向上を目指しているか。
-
(4)関連又はいわゆる「緊密先」と言われる不動産管理会社の財務の健全性は確保されているか。
V -3-4 議決権の取得等の制限
-
(1)法第16条の4第2項ただし書又は法第52条の24第2項ただし書の承認を行うに際しては、以下の点に留意する必要がある。
なお、株式の保有に関するリスク管理については、III-2-3-2-1-2(7)を参照すること。
-
銀行等から、施行規則第17条の7第1項又は第34条の21第1項による申請があった場合には、基準議決権数を超えて保有する議決権を期間内に処分できないことがやむを得ない理由によるものであるかどうかを審査するものとする。
「やむを得ない理由」とは、例えば、以下のようなものが考えられる。
-
イ.事業再生の途上にある会社の再建や事業の安定的な運用を支援するために、再生計画期間中は、当該議決権を保有し続ける必要があること。
-
ロ.事業再生計画に基づき議決権を取得した場合、当該計画による手続きが完了するまでは配当が支払われないこと等により、売却等による処分が困難であること。
-
ハ.当該会社における未公表の重要事実を知ることとなり、議決権を売却することが金融商品取引法第166条のインサイダー取引に関する規定に抵触するおそれがあるため、売却等による処分が困難であること。
-
-
以下の場合における法第16条の4第3項又は第52条の24第3項に定める承認の条件である当該議決権のうち基準議決権数を超える部分の議決権を「速やかに処分すること」とは「遅くとも当該会社の経営改善等のための計画終了(注)後速やかに処分すること」との趣旨であることに留意する。
-
イ.DES(デット・エクイティ・スワップ。施行規則第17条の6第1項第3号又は第34条の20第1項第3号)により議決権を取得した場合。
-
ロ.法第16条の2第1項第13号又は法第52条の23第1項第12号に規定する会社(いわゆる事業再生を行う会社)の議決権について、やむを得ないと認められる理由により当該議決権を譲渡することが著しく困難であって当該議決権を処分することができないため、施行規則第17条の2第13項各号に定める期間(3年(原則)又は10年(中小企業者))を超えて保有する場合。
-
-
(注)「計画終了」とは、当該計画期間を満了した場合、当該計画を計画期間よりも早期に達成した場合、当該会社が破綻又は実質的に破綻した場合及び当該計画を見直した場合をいう。
-
-
(2)その他の注意事項
-
銀行の子会社である投資運用業を行う金融商品取引業者が、投資一任契約に基づき顧客のために議決権を行使し又は議決権の行使について指図を行う株式等に係る議決権は、法第16条の4において銀行の子会社が取得し又は保有する議決権に含まれるものではないことに留意する。
-
法第16条の2第1項第12号又は第52条の23第1項第11号に規定する「新たな事業分野を開拓する会社として内閣府令で定める会社」(いわゆるベンチャービジネス会社)が行う新事業活動とは、新事業分野開拓が可能となるような新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入、技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動を指し、研究開発を前提とした創業を行う業種のみならず、サービス業等の業種も対象となる。なお、その該当性の判断に当たっては、地域や業種が勘案されることとなるが、既に相当程度普及している技術・方式の導入等については含まれないことに留意する。
-
法第16条の4第7項又は法第52条の24第7項に定める議決権の保有制限の例外の対象となる会社として、施行規則第17条の2第6項各号に掲げる会社の議決権を、基準議決権数を超えて保有することが認められるのは、当該会社の事業再生に係る計画に盛り込まれている資本調達計画に基づき保有した場合であることに留意する。
-
施行規則第17条の2第6項第9号の会社に該当するかの判断にあたっては、財務状態の悪化が顕在するに至っていない段階の会社であっても対象となり得ることに留意する。
-
V -4 銀行主要株主
V -4-1 意義及び着眼点
銀行の経営の健全性を確保するため、銀行の相当程度の議決権を取得して銀行経営に関与しようとする株主については、法人であれ個人であれ、取得時及び取得後を通じた行政による適切なチェックの仕組みを整えることが必要であるという考え方に基づき、主要株主に対する届出、認可制度等が設けられている。
また、主要株主の経営状況が銀行に影響を与えるリスクを遮断するため、銀行が主要株主に対して行う融資などの取引については、既存の大口信用供与規制やアームズ・レングス・ルールなどを基本としつつ、主要株主が不当な影響力を行使することによる「機関銀行化」の弊害を防止する等の観点から、主要株主に対する信用供与等について適正な量的規制を設定するなどの追加的な措置が講じられている。
また、50%超保有の主要株主の場合には、単独で銀行の支配力を有しているのであるから、銀行持株会社とほぼ同様に、銀行の経営が悪化した時に支援を求めることが想定されている。
こうした主要株主制度は、銀行グループ内におけるリスクが銀行に波及することを回避しようという連結監督の考え方と共通の考え方に立っていること、銀行持株会社と同様の制度設計がなされている点に留意する必要がある。
-
(参考) 「銀行業等における主要株主に関するルール整備及び新たなビジネス・モデルと規制緩和等について」(平成12年12月21日:金融審議会第一部会報告)
V -4-2 監督手法・対応
相当程度の銀行議決権の取得時及び取得後の対応等は、 VII を参照。
V -5 顧客の利益の保護のための体制整備
V -5-1 意義
金融機関の提供するサービスの多様化や、業態を跨ぐ形での国際的なグループ化の進展に伴い、金融機関内又は金融グループ内において、競合・対立する複数の利益が存在し、利益相反が発生するおそれが高まっている。こうした状況を踏まえ、銀行においても、顧客の利益が不当に害されることのないよう、銀行及びグループ会社の業務の内容・特性・規模等に応じ、利益相反のおそれのある取引を管理することが求められている。
こうしたことから、銀行法第13条の3の2第1項に基づき、銀行が自行及びその子金融機関等における適切な利益相反管理体制を整備することが重要である。
利益相反の弊害は、銀行・証券会社間だけに生じる問題ではなく、銀行(グループ)内の部門間、又は同一金融グループ内の親会社・子会社・兄弟会社・関連会社のいずれとの間でも起こりうる問題であり、金融グループ内において行う全ての業務に関して生じ得る利益相反に留意した経営管理を行うことが望ましい。また、情報管理体制が整備されていること等一定の条件の下で、非公開情報をその親法人等・子法人等と授受することが認められていることを踏まえれば、従前以上に利益相反管理の重要性を認識し、適切な経営管理態勢を構築する必要がある。
したがって、より広範な業務を展開する金融グループにあっては、銀行・証券会社間に限らず、グループ内における利益相反による弊害を防止するため、自己責任に基づく規律付けをもって内部統制を行なう必要がある。なお、利益相反を管理するためのルール等は、金融機関が自主的な努力により適切な経営管理態勢やコンプライアンス態勢を構築することで、有効に機能するものであることに留意する必要がある。
また、利益相反管理態勢を整備するにあたっては、金融グループ内会社等の営む業務内容や規模、特性等を勘案するとともに、銀行又は同一金融グループにおけるレピュテーショナル・リスクについても配慮する必要がある。
一方、銀行等のグループ会社の中には、当該銀行等の顧客とは無関係の業務を行っているものがあり得ることも踏まえれば、銀行等が行う利益相反管理の水準・深度は、必ずしも同一である必要はないと考えられる。このように、銀行等がグループ内で利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合には、対外的に十分な説明が求められることに留意する必要がある。
V -5-2 主な着眼点
-
(1)利益相反のおそれのある取引の特定等
-
利益相反を管理・統括する部署(以下「利益相反管理統括部署」という。)の関与のもと、利益相反のおそれのある取引(注)をあらかじめ特定・類型化するとともに、継続的に評価する態勢を整備しているか。
-
(注)2022年に、銀証ファイアーウォール規制の緩和が行われたことに伴い、利益相反管理を適切かつ厳格に行う必要があるところ、「利益相反のおそれのある取引」の具体的な例は、各銀行のビジネスモデルの実態や、銀行が属するグループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)の業態等に応じて適切に特定されるべきことに留意する。また、「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の「Ⅳ-1-3 利益相反管理体制の整備(2)①」等も参照のうえ、金融グループ内の証券会社において特定・類型化されている利益相反のおそれのある取引と整合的な取り扱いとすることに留意する。
-
-
利益相反を特定するプロセスは、銀行や銀行のグループ内会社等の業務内容、規模・特性を反映したものとなっているか。
また、特定された利益相反のおそれのある取引について、新規の業務活動や、法規制・業務慣行の変更等に的確に対応し得るものとなっているか。
-
-
(2)利益相反管理の方法
-
利益相反のおそれのある取引については、当該取引の遂行前に適切に特定することができる態勢となっているか。また、当該取引の特性に応じ、例えば以下のような管理方法を選択し、又は組み合わせることができる態勢となっているか。なお、これらの管理方法の選択に際しては、利益相反管理統括部署の確認を受けるなど適切な管理方法を選択することができる態勢となっているか。
-
イ.部門の分離(情報共有先の制限)
情報共有先の制限を行うにあたっては、利益相反を発生させる可能性のある部門間において、チャイニーズウォール(Ⅲ-3-3-3-2(3)①参照)を構築する等、業務内容や実態を踏まえた適切な情報遮断措置が講じられているか。
ロ.取引条件又は方法の変更、一方の取引の中止
取引条件又は方法の変更、若しくは一方の取引の中止を行うにあたり、親金融機関等又は子金融機関等の役員等が当該変更又は中止の判断に関与する場合を含め、当該判断に関する権限及び責任が明確にされているか。
ハ.利益相反事実の顧客への開示
顧客に利益相反の事実を開示する場合には、利益相反の内容、開示する方法を選択した理由(他の管理方法を選択しなかった理由を含む)等について、当該取引に係る契約を締結するまでに、明確かつ公正に、例えば書面等の方法により開示した上で顧客の同意を得るなど、顧客の公正な取扱いを確保する態勢となっているか。また、開示内容の水準は対象となる顧客の属性に十分に適合したものとなっているか。
ニ.情報を共有する者の監視
情報を共有する者を監視する方法による管理を行う場合には、独立した部署等において、当該者の行う取引を適切に監視しているか。
-
-
自行及び子金融機関等が新規の取引を行う際には、当該取引との間で利益相反が生じることとなる取引の有無について、利益相反管理統括部署の関与のもと、必要な確認が図られる態勢となっているか。
-
利益相反管理の方法について、その有効性を確保する観点から、定期的な検証が行われる態勢となっているか。また、利益相反のおそれのある取引の特定並びに利益相反管理の方法の選択及び実施が適切に行われていることについて、事後的な検証が可能になるよう、適切に記録を作成・保存しているか。
-
-
(3)利益相反管理態勢等
-
銀行及びその子金融機関等の経営陣は、利益相反管理の重要性を認識し、金融グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)とも連携する等して、その実践に誠実にかつ率先垂範して取り組んでいるか。また、顧客に重大な影響を及ぼす可能性があるなど、経営上重要なものについては、適切な利益相反管理の方法の選択といった対応方法の意思決定に経営陣が適切に関与しているか。
-
利益相反管理方針(規則第14条の11の3の3第1項第3号に規定する方針をいう。以下同じ。)を踏まえた業務運営の手続が書面等(社内規則を含む。)において明確化されているか。また、銀行及びその子金融機関等の役職員に対し、利益相反管理方針及び当該手続きに関する研修・教育の実施等により、利益相反管理についての周知徹底が図られているか。
-
利益相反管理統括部署を設置するなど、利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理を一元的に行う態勢となっているか。
-
利益相反管理統括部署は、利益相反管理方針に沿って、利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理を的確に実施するとともに、その有効性を適切に検証しているか。
-
利益相反管理統括部署は、営業部門からの独立性を確保し、営業部門に対し十分なけん制を働かせているか。営業部門が利益相反管理業務に関与する場合であっても、利益相反のおそれのある取引への該当性の判断や利益相反管理の方法の決定にあたって利益相反管理統括部署が主体的に意思決定を行うことができる体制となっているか。
-
利益相反管理統括部署は、その親金融機関等又は子金融機関等の取引を含め、利益相反管理に必要な情報を集約し、適切な利益相反管理を行う態勢を整備しているか。
-
独立した内部監査部門において、利益相反管理に係る人的構成及び業務運営体制について、定期的に検証する態勢となっているか。金融グループ全体で統一的な利益相反管理が行われている場合、グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)の内部監査部門等との連携が図られているか。
-
銀行が海外営業拠点を有している場合や国際的に活動する金融グループに属している場合、利益相反管理について、例えば国内だけでなく、グローバルのグループベースで組織的・一元的な方針、手続き、システム等による管理を行うなど、各国法規制を遵守しつつ、グローバルに提供される業務の内容・規模等にふさわしい水準で、利益相反のおそれのある取引の特定や適切な管理を行う態勢が確立されているか。
-
-
(4)利益相反管理方針の策定及びその概要の公表
-
利益相反管理方針には、利益相反のおそれのある取引の類型、主な取引例及び当該取引の特定のプロセス、利益相反管理の方法(利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合は、その内容及び理由を含む)、利益相反管理体制(利益相反管理統括部署の職責及びその独立性並びに利益相反のおそれのある取引の特定及び利益相反管理の方法についての検証体制)並びに利益相反管理の対象となる会社の範囲等が明確化されているか。この場合において、利益相反のおそれのある取引の類型、取引例及び利益相反管理の方法は、対応して記載されているか。また、当該管理方針は、金融グループ内会社等の営む業務内容や規模等が十分に反映されているか。
-
利益相反管理方針の概要を公表するに際しては、利益相反のおそれのある取引の類型、利益相反管理の方法、利益相反管理体制及び利益相反管理の対象となる会社の範囲を分かりやすく記載したものとなっているか。また、公表方法は、例えば、店頭でのポスター掲示やホームページへの掲載など、顧客等に対して十分に伝わる方法となっているか。
-
V -5-3 監督手法・対応
検査結果、不祥事件等届出書等により、顧客の利益の保護のための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて法第24条に基づき報告を求めるものとする。その結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第26条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。
その際、利益相反による弊害の発生を認識しているにもかかわらず、その解消に向けた具体的な取組みを行わないなど、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、法第26条に基づく(業務改善に要する一定期間に限った)業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。
V -6 暗号資産に関する留意事項
V -6-1 意義
暗号資産の設計・仕様は様々であるところ、移転記録が公開されず、取引の追跡困難な暗号資産が存在する等、テロ資金供与やマネー・ローンダリングに利用されるリスクが高いものも存在する。また、一般的に、暗号資産は、その価値の裏付けとなる資産等がないため本源的な価値を観念し難く、価格の変動が大きいことを踏まえると、銀行グループが暗号資産を保有する際にはその価格変動リスクについての検討が必要となる。加えて、暗号資産の管理については、システムの誤作動やサイバー攻撃などのシステムリスクも存在する。
以上のほか、これらのリスクが顕在化した場合のレピュテーショナル・リスク等も考慮すれば、銀行グループによる暗号資産の取得は必要最小限度の範囲とする必要があり、かつ、銀行グループの業務において、暗号資産の取得、保有又は処分等(暗号資産を実質的な投資対象とするファンドに対する出資等の間接的な方法によるものを含む。以下「暗号資産の取得等」という。)が生じる場合には、銀行の固有業務の運営への支障や銀行グループとして重大な損害等が生じるおそれがないよう、十分な態勢整備が行われている必要がある。
V -6-2 主な着眼点
銀行グループにおける暗号資産の取得等については、上述のとおり、施行規則第13条の6の9及び第13条の6の10に基づく態勢整備がなされている必要がある。かかる態勢整備について、具体的には、以下の点に留意する必要がある。
-
暗号資産の特性等を踏まえたリスクの特定・評価・低減
-
暗号資産の仕組み(発行者、管理者その他の関係者や当該暗号資産と密接に関連するプロジェクトの内容等を含む。)、想定される用途、流通状況及び当該暗号資産に使用される技術その他当該暗号資産の特性(以下「暗号資産の特性等」という。)等を踏まえ、暗号資産のリスクの特定・評価について十分な検討が行われ、以下のからの措置を含め、当該リスクを適切に低減するための内部管理態勢が整備されているか。また、これらについて定期的な検証及び見直しが実施されているか。
-
-
テロ資金供与及びマネー・ローンダリングへの対応
テロ資金供与及びマネー・ローンダリングに利用されるおそれが高い場合においては、暗号資産の取得等の適否を慎重に判断することとしているか。例えば、移転記録の追跡が著しく困難である暗号資産については、テロ資金供与及びマネー・ローンダリングに利用されるおそれが特に高いことから、暗号資産の取得等を行うことがないよう留意する。
また、暗号資産の取得等の相手方のテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策の状況等にも留意するなど、マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン記載の措置に沿った対策が適切に講じられているか。特に、暗号資産の取得等に関して、海外に居住若しくは所在する者から又はこれらの者への暗号資産の移転を伴う可能性がある場合には、Ⅲ-3-1-3-1-2(4)に準じた対策が適切に講じられているか。
-
財務の健全性確保を図るための措置
-
銀行グループの業務において暗号資産の取得が必要となる場合であっても、健全性の確保の観点から、取得する暗号資産の量については当該業務のために必要最小限度の範囲とする等、適切な方針が定められているか。また、暗号資産の保有についても、当該暗号資産の市場リスク、流動性リスク等を考慮の上で、速やかに売却する等により適切な処分を図ることが可能な態勢となっているか。
-
なお、銀行グループにおいては、投資の目的をもってする暗号資産の取得等を行わないこととしているか。
-
-
暗号資産の取得等に係る安全管理措置
-
-
暗号資産の管理を担当する部署及び責任者を明確にしているか(複数の部署で暗号資産の管理を担当する場合には、部署間の担当と責任が明確になっているか。)。また、取り扱う暗号資産の特性等に関して十分な知識・経験を有する者を配置しているか。
-
暗号資産の管理、流出時の対応その他暗号資産に係る内部規程を適切に整備し、役職員に対する周知、徹底を図っているか。また、当該内部規程について、定期的な検証及び見直しが行われているか。
-
不正アクセス等による暗号資産の流出の防止のための対策等、取り扱う暗号資産の管理に関するシステムリスク管理態勢が十分に構築されているか。また、当該システムリスク管理態勢について、専門家による定期的な検証及び見直しが行われているか。
-
-