I. 基本的考え方

I-1 高速取引行為者の監督に関する基本的考え方

金融商品に係る取引の発注や変更、取消し等をアルゴリズムを用いて高速かつ自動的に行う取引(以下本I-1において「アルゴリズム高速取引」という。)については、こうした取引の存在により市場に流動性が供給されているとの指摘や、流動性が厚くなることでスプレッドが縮まり一般投資家にもその恩恵が及んでいるとの指摘がある。他方、このようなアルゴリズム高速取引については、市場の安定性や効率性、投資家間の公平性、中長期的な企業価値に基づく価格形成、システムの脆弱性等について、様々な懸念が指摘されたところである。

 

高速取引行為者の監督の目的は、このような懸念を踏まえ、高速取引行為者によるアルゴリズム高速取引の実態を把握するとともに、高速取引行為者の業務の適切な運営を確保しつつ、その機能を適切に発揮させることで、日本において、多様な投資家が安心して参加できるような厚みのある市場の実現を図っていくことにある。

 

このため、監督部局にとっては、継続的なヒアリング等により高速取引行為者の業務の状況を適切に把握することや、高速取引行為者から提供された各種の情報の蓄積及び分析を行い、業務の適切性の確保等に向けた自主的な取組みを早期に促していくこと等により、高速取引行為者に対して高速取引行為を公正かつ適確に遂行するための業務管理体制の整備をはじめとする法令等遵守の徹底を求めていくことが、重要な役割となる。

 

一方、高速取引行為者については、金融商品取引業者等ではないこと等から、これらの業者等と同等の業務管理体制等の整備を求めることが過度になる可能性もある。監督部局においては、この点を十分に踏まえて対応するものとする。

 

この他、高速取引行為者の監督に関する基本的考え方は、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(以下「総合指針」という。)I-1を参照するものとする。

I-2 監督指針策定の趣旨

日本経済が持続的に発展するためには、間接金融に偏重している日本の金融の流れが直接金融や市場型間接金融にシフトする、いわゆる「貯蓄から投資へ」の動きを加速することが重要な課題である。こうした流れを実現するためには、金融行政として、適切な制度設計と併せて、市場の安定性等に影響を与え得る高速取引行為者が適切なリスク管理等を意識した内部管理態勢を強化するよう、適切に動機付けていくことが必要となる。

 

こうしたことから、高速取引行為者に対する日常の監督事務を遂行するため、監督の考え方や監督上の着眼点と留意点、具体的監督手法等を整備することとした。

 

本監督指針は、高速取引行為者の実態を十分に踏まえ、様々なケースに対応できるように作成したものであり、本監督指針に記載されている監督上の評価項目の全てを各々の高速取引行為者に一律に求めているものではない。

従って、本監督指針の適用に当たっては、各評価項目の字義通りの対応が行われていない場合であっても、公益又は投資者保護等の観点から問題のない限り、不適切とするものではないことに留意し、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮する必要がある。一方、評価項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、公益又は投資者保護等の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。

 

財務局(福岡財務支局及び沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)は本監督指針に基づき、管轄する高速取引行為者の監督事務を実施するものとし、金融庁担当課室にあっても同様の扱いとする。

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