II .保険監督上の評価項目
II -2 財務の健全性
II -2-1 責任準備金等の積立の適切性
II -2-1-1 意義
保険会社は、保険契約者に将来支払うこととなる保険金等に対して保険業法に基づく責任準備金等の積立の確保に努めなければならないことになっている。当局としては、自己責任原則の下で行われる責任準備金等の積立の確保を補完する役割を果たすものとして、オフサイト・モニタリングや適切な経理処理等の指針を通じ、保険財務の健全性の確保のための自主的な取組みを促していく必要がある。
II -2-1-2 積立方式
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(1)法第3条第4項第1号に掲げる保険(以下、「第一分野」という。)及び同条同項第2号又は同条第5項第2号に掲げる保険(以下、「第三分野」という。)において、標準責任準備金対象契約については標準責任準備金を、標準責任準備金対象外契約(平成13年3月30日金融庁告示第24号第2号に規定する保険期間10年以下の積立傷害保険等を除く。)については平準純保険料式責任準備金を積み立てるものとなっているか。
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(2)第一分野及び第三分野において、保険会社の業務又は財産の状況及び保険契約の特性等に照らし特別な事情がある場合に、保険数理に基づき、合理的かつ妥当なものとして、いわゆるチルメル式責任準備金の積立てを行っている場合には、新契約費水準に照らしチルメル歩合が妥当なものとなっているか。
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(3)上記(2)の場合には、標準責任準備金・平準純保険料式責任準備金の積み立てに向け、計画的な積み増しを行うこととなっているか。
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(4)特定の疾病による所定の状態、所定の身体障害の状態、所定の要介護状態その他の保険料払込の免除事由に該当し、以後の保険料払込が免除されることとなった保険契約のうち、自動更新可能な保険契約に係る責任準備金については、最終の保険期間満了日まで全ての自動更新が行われるものとして計算した金額を積み立てることとなっているか。
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(5)危険準備金 I 及び IV における「その他のリスク」に係る積立基準並びに積立限度の設定については、手術給付、介護給付その他の保険給付のリスクに応じたものとなっているか。
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(6)第三分野保険のストレステストを使用しての危険準備金の算出にあたっては、平成10年6月8日大蔵省告示第231号の規定に基づき算出を行うものとし、危険準備金算出部門とは別の内部監査部その他の適切な部門と相互牽制機能を確保する態勢が、社内規程等において明確になっているか。
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(7)ストレステスト及び負債十分性テストについては、その実施にあたり以下に留意するものとする。
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保険事故発生率が悪化する不確実性を適切に考慮したものとなっているか。
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原則として基礎率を同じくする契約区分ごとに実施することとするが、次のア.、イ.の条件を満たす場合は、まとめて実施してよいこととする。
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ア. 当該保険契約において、支払事由として規定される給付内容が給付事由及びリスク特性の観点から同等と考えられ、過去のデータ又は統計資料により同等性が確認されていること。
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イ. 予定発生率の算出に用いた統計資料が同じであること。
なお、一契約(この際、主契約、特約があり、それぞれを選択して契約できる場合は、それぞれを一契約とする。)において、複数の給付事由を合わせて給付しているケースにおいては給付事由ごとア.、イ.の条件を満たす必要がある。ただし、発生率が十分小さく、債務の履行に支障を来たすおそれが極めて低い保険給付においては、この限りではない。
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被保険者数が少なく、統計的な取り扱いが困難なケースにおいては、以下の取り扱いも可とする。
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ア. 発売後十分な期間が経過しておらず、ストレステスト又は負債十分性テストにおいて統計的な取り扱いが困難なケースにおいては、予定発生率の算出に用いた過去の実績又は統計資料を活用することにより、データの不足等を補うための適切な保険数理の方法を用いてよい。ただし、この場合にあっても実績データが予定発生率の算出に用いたデータとの間に大きな乖離がないか検証し、実績データを踏まえた適切な対応を行う必要がある。
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イ. 新契約の募集を停止し、かつ被保険者数が少なくなったことにより、大数の法則が機能せず、結果として収支相等の原則の適用が困難なときは、当該契約集団の給付額(対象保険金を必ず支払うものとして算出した額)を、負債十分性テストにおける支出見込額として使用することができる。この場合においては、ストレステスト(危険準備金 IV の算出)は適用しないこととする。
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ストレステスト及び負債十分性テストの基礎率を同じくする契約区分は同一のものを使用することとする。
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II -2-1-3 変額年金保険等の最低保証リスクについて
保険金等の額を最低保証する変額年金保険等については、将来にわたって債務の履行に支障を来たさないよう最低保証リスクの適切な管理及び評価を行うとともに、保険数理等に基づき、合理的かつ妥当な保険料積立金及び危険準備金 III の積立並びにソルベンシーの確保を行う必要があるが、その際、以下の点に留意するものとする。
II -2-1-3-1 保険料積立金の積立
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(1)標準的方式
標準責任準備金の積立方式及び計算基礎率を定める件(平成8年2月29日大蔵省告示第48号。以下、II -2-1-3において「責任準備金告示」という。)第14項第1号の規定により、最低保証に係る保険料積立金(以下、II -2-1-3において「保険料積立金」という。)の積立方式として標準的方式を使用する場合に留意すべき事項は以下のとおり。
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通常予測されるリスクに対応するものとして、標準的な計算式(「一般勘定における最低保証に係る保険金等の支出現価」から「一般勘定における最低保証に係る純保険料の収入現価」を控除する形式の計算式)によって、概ね50%の事象をカバーできる水準に対応する額を算出するものとなっているか。
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最低死亡保険金保証が付された保険契約については、標準死亡率(責任準備金告示第1項第2号に規定する指定法人が作成し、金融庁長官が検証した標準死亡率をいう。(2)において同じ。)のうち死亡保険用のものを、最低年金原資保証(又は最低年金年額保証)が付された保険契約については、標準死亡率のうち年金開始後用のものを使用しているか。また、死亡保険金保証及び最低年金原資保証(又は最低年金年額保証)の両方が付された保険契約については、死亡保険用の標準死亡率又は年金開始後用の標準死亡率のうち、保険料積立金の積立が保守的となる方の標準死亡率を使用しているか。
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割引率として、標準利率(責任準備金告示に規定する予定利率。(2)において同じ。)を使用しているか。
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期待収益率及びボラティリティとして、責任準備金告示第14項第1号ニに規定する率を使用しているか。また、同号ニ列記以外の資産種類の場合は、当該ボラティリティが過去の実績等から合理的に定められたものとなっているか。
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予定解約率を使用する場合は、当該予定解約率が過去の実績や商品性等から、合理的に定められたものとなっているか。例えば、以下の事例等に留意しているか。
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ア. 特別勘定の残高が最低保証額を下回る状態にあるときの解約率が、特別勘定の残高が最低保証額を超える状態にあるときの解約率より低い率となっているか。
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イ. 解約控除期間における解約率が、解約控除期間終了後の解約率と比べ、低い率となっているか。
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ウ. 最低年金原資保証が付された保険契約で、年金開始前における特別勘定の残高が最低保証額を下回る状態にある場合において解約率を保守的に設定しているか。
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エ. 設定された予定解約率について、解約実績との比較などにより、検証を行うこととなっているか。
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その他の計算基礎率を使用する場合は、当該計算基礎率が過去の実績や商品性等から合理的に定められたものとなっているか。
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商品の仕組上、やむを得ずの標準的な計算式を使用することができないときは、当該計算式との差異が軽微である場合に限り、近似的な計算式を使用することを可能とする。
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(2)代替的方式
保険料積立金の積立方式として代替的方式を使用する場合に留意すべき事項は以下のとおり。
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通常予測されるリスクに対応するものとして、標準的方式により計算される保険料積立金の債務履行を担保する水準と同等であることが認められる代替的方式によって、概ね50%の事象をカバーできる水準に対応する額を算出するものとなっているか。
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最低死亡保険金保証が付された保険契約については、標準死亡率のうち死亡保険用のものを、最低年金原資保証(又は最低年金年額保証)が付された保険契約については、標準死亡率のうち年金開始後用のものを使用しているか。また、死亡保険金保証及び最低年金原資保証(又は最低年金年額保証)の両方が付された保険契約については、死亡保険用の標準死亡率又は年金開始後用の標準死亡率のうち、保険料積立金の積立が保守的となる方の標準死亡率を使用しているか。
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割引率として、標準利率を使用しているか。
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期待収益率及びボラティリティ(責任準備金告示第14項第1号ニに列記するものに限る。以下、この④において同じ。)は、同号ニに定めるものを使用する場合を除き、標準的方式により計算される責任準備金の債務履行を担保する水準と同等となるものとして、次のア.からウ.までの条件(邦貨建保険契約以外の保険契約については、その特性に応じ、次のア.からウ.までの条件に準じた条件)を満たすものとなっているか。同号ニ列記以外の資産種類の場合は、当該ボラティリティが過去の実績等から合理的に定められたものとなっているか。
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ア. 期待収益率及びボラティリティは、過去の実績や将来の資産運用環境の見通し、リスク中立の観点等から、合理的かつ客観的根拠に基づき定められたものであること。
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イ. 期待収益率及びボラティリティを決定する際の前提となる観測期間が適切に設定されていること。例えば、株価や金利が長期にわたって高水準で続いたような昭和30年から昭和48年までの期間を含めないこと。
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ウ. 代替的方式によって計算される保険料積立金の額が、代替的方式において使用することとした計算基礎率(期待収益率及びボラティリティを除く。以下このウ.において同じ。)を基に標準的方式によって計算される保険料積立金の額と10%以上乖離しないこと。ただし、代替的方式で使用することとした計算基礎率を標準的方式の計算式に反映できない等、代替的方式による計算結果と標準的方式による計算結果を単純に比較できない場合は、標準的方式に反映できない計算基礎率を除外して比較するなど、比較可能なレベルまで計算基礎率を絞り込んで比較して差し支えない。
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予定解約率を使用する場合は、当該予定解約率が過去の実績や商品性等から、合理的に定められたものとなっているか。例えば、以下の事例等に留意しているか。
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ア. 特別勘定の残高が最低保証額を下回る状態にあるときの解約率が、特別勘定の残高が最低保証額を超える状態にあるときの解約率より低い率となっているか。
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イ. 解約控除期間における解約率が、解約控除期間終了後の解約率と比べ、低い率となっているか。
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ウ. 最低年金原資保証が付された保険契約で、年金開始前における特別勘定の残高が最低保証額を下回る状態にある場合において解約率を保守的に設定しているか。
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エ. 設定された予定解約率について、解約実績との比較などにより、検証を行うこととなっているか。
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その他の計算基礎率を使用する場合は、当該計算基礎率が過去の実績や商品性等から合理的に定められたものとなっているか。
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(3)平成17年3月31日以前に締結された保険契約に関する取扱い
平成17年3月31日以前に締結された変額年金保険契約等であって、標準責任準備金の対象契約とならないものについては、(1)及び(2)が適用されないが、このうち保険金等の額を最低保証している保険契約については、平成17年度以降、毎決算期において将来収支分析を行い、保険料積立金に不足を生ずることが見込まれる場合には必要な積立を行うことによって、保険契約者保護に努めるものとする。
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(4)ヘッジ・再保険の取扱い
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ヘッジ適用の有無に関わらず、標準的方式又は代替的方式により算出した保険料積立金を積み立てるものとなっているか。
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最低保証する保険金等を再保険の対象とし、当該保険金等に係る危険保険金額をベースとして保有・出再額が決定される方式の再保険に付した場合においては、標準的方式又は代替的方式により算出した保険料積立金を積み立てるものとなっているか。
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II -2-1-3-2 危険準備金 III
危険準備金 III の積立にあたり、留意すべき事項は次のとおり。
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(1)平成17年3月31日以前に締結した変額年金保険契約等のうち保険金等の額を最低保証している保険契約についても、危険準備金 III の積立を行うものとしているか。
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(2)ヘッジ適用の有無に関わらず、規則第69条第7項などの規定に基づき金融庁長官が定める積立て及び取崩しに関する基準(平成10年6月8日大蔵省告示第231号)第3条の2に定めるところにより危険準備金 III の積立を行うものとしているか。
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(3)再保険を付している場合の危険準備金 III の積立にあたっては、出再により移転する部分を超えない範囲で控除するものとなっているか。
II -2-1-4 経理処理
責任準備金等の積立に関し、保険会社が適正な経理処理を行うにあたり留意すべき事項は次のとおり。
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(1)将来収支分析について
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保険計理人が、平成12年6月23日金融監督庁・大蔵省告示第22号第2条に規定する認定基準に基づいて法第121条第1項第1号及び同項第3号(法第199条において準用する場合を含む。)に掲げる事項の確認に関する将来収支分析を行うに際して、当該認定基準に定める基本シナリオと異なるシナリオを使用した場合は、どのようなシナリオを用いたのか、またそれが合理的である根拠等を適切に開示していること。
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規則第59条の2第1項第4号ハに掲げる事項を開示するにあたっては、少なくとも以下に掲げる事項を分かりやすく開示すること。
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ア. 第三分野における責任準備金の積立の適切性を確保するための考え方
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イ. 負債十分性テスト・ストレステストにおける危険発生率等の設定水準の合理性及び妥当性
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ウ. テストの結果(追加責任準備金(保険料積立金・未経過保険料)、危険準備金の額)
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(2)保険計理人意見書
将来収支分析は、責任準備金が、将来にわたって不足が生じないよう健全な保険数理に基づいて適切に積み立てられているかどうかを確認するものであり、保険会社の将来収支分析に係る意見書に関して保険計理人から説明を求める場合、並びに経営者から同意見書に対する見解及び対応についての説明を求める場合の着眼点として以下の点が考えられる。
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保険計理人が、法第121条の規定に基づく確認業務において金融庁長官が認定した基準(以下、「実務基準」という。)に則って適切に確認しているか。
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実務基準に定める基本シナリオと異なるシナリオを使用する場合、保険会社の経営実態を踏まえた合理的なものか。
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将来収支分析により、現在の責任準備金が将来の債務の履行に支障を来たすおそれがあると認められない水準であると判断されない場合であって、経営政策の変更により当該責任準備金不足相当額の一部又は全部を積み立てなくともよい旨意見書に記載されている場合、当該経営政策の変更が、ただちに行われるものであるかどうかの根拠(計画等)が示されているかどうか。この場合、翌年度以降の意見書において、当該経営政策の変更が実現されている旨示されているかどうか。
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将来収支分析により、現在の責任準備金が将来の債務の履行に支障を来たすおそれがあると認められない水準であると判断されない場合であって経営政策の変更によっても当該責任準備金不足額が解消できず、規則第69条第5項又は規則第70条第3項の規定に基づき追加して責任準備金を積み立てる必要がある場合、保険会社の経営実態を踏まえた合理的な責任準備金の積立計画を策定し、法第4条第2項第4号に掲げる書類を変更することにより積み立てるなど適切な措置がとられているか。
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(3)再保険料又は再保険金の額が事後的に調整される再保険の取扱い
保険会社が保険契約を再保険料又は再保険金の額が事後的に調整される再保険に付した場合において、再保険料の追加支払又は再保険金の返戻(以下、「再保険料の追加支払等」という。)が確定した場合、再保険料の追加支払等に相当する負債が当該決算期において全額計上(将来における再保険料の追加支払等の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に、所要の引当が行われていることを含む。)されているか(当該再保険契約において、事後的な調整が重要な要素でない場合を除く。)。
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(4)保険料積立金
以下の又はに該当する保険契約又はその部分に係る責任準備金の計算にあたっては、当分の間、規則第69条第1項第1号、第70条第1項第1号イ、第150条第1項第1号及び第151条第1項第1号イに規定する「保険料積立金」には区分せず、規則第69条第1項第2号、第70条第1項第1号ロ、第150条第1項第2号及び第151条第1項第1号ロに規定する未経過保険料として区分するものとする。
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平準的に収入する保険料を基準に残存期間に依存する係数を乗じて得られる金額を責任準備金として積み立てる保険契約で、契約消滅時に同様の方法で計算される金額を払い戻す保険契約
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法第3条第5項第1号に掲げる保険に係る保険契約(法第3条第5項第2号及び第3号に掲げる保険との組み合わせによる保険契約で保険料を区分できないものを除く。)
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(5)収益等の計上
損害保険会社の収益等の計上については、下記のとおり取り扱うこと。
ア. 元受保険料の計上
決算締切日までに入金報告書及び申込書その他保険料計上に必要な書類が到着している契約については、すべて当該事業年度の収入に計上すること。
ただし、上記書類が決算締切日までに到着したもので、内容不備のため保険料率の審査決定、保険責任の有無の確認ができなかったものについてはこの限りでないこと。
なお、決算処理にあたっては、上記書類の遅延ないし内容の不備の解消に特に留意し、計上保険料の翌年度へのずれ込み、又は計上洩れを極力防止するよう努めること。
イ. 回払保険料の計上
船舶保険等に係る回払保険料の計上については、初回保険料はア.に準じて取扱うものとし、次回以後保険料については、決算締切日までに当該契約の約款に定める保険料支払期日応当月が到来しているものは当該事業年度の収入として計上すること。
ウ. 受再保険料の計上
受再保険料の計上については、旧事務ガイドライン発出前に各社が定めた計上基準に基づき統一的かつ継続的に処理する場合は、当該基準に定めるところにより計上して差し支えない。
なお、旧事務ガイドライン発出後に設立した会社にあっては、当該会社の計上基準が従前の例に照らして合理的なものとなっているかどうかについて留意することとする。
エ. 求償権及び残存物の経理
保険金の支払いにより契約者から取得した求償権又は残存物については、当該求償権の行使(裁判の判決又は当事者間の合意がないものは除く。)又は残存物の売却によって回収が見込まれる金額を当該事業年度の支払備金から控除して経理すること。
連結財務諸表の作成において、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に基づき、国際会計基準(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第93条に規定する国際会計基準をいう。)に準拠して作成された在外子会社の財務諸表を連結決算手続上利用した場合であっても、保険会社及びその子会社等の連結財務諸表の保険料等の計上にあたっては、規則別紙様式に定める勘定科目の名称に従い、収入の金額を表示するとともに、適切に表示の組替を行うことに留意すること。
(6)価格変動準備金の取崩し
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保険会社における価格変動準備金の取崩額については、当該取崩額が、法第115条第2項に規定する株式等の売買等による損失の額(以下、「株式売買等損失額」という。)から同項に規定する株式等の売買等による利益の額(以下、「株式売買等利益額」という。)を控除した額(負数のときは零とする。)を超えるときは、法第115条第2項ただし書に基づき金融庁長官の認可を受けて取り崩すものとなっていること。
なお、損害保険会社における価格変動準備金の取崩額については、次に掲げる額の合計額を取り崩すものとなっていること。
また、保険会社における価格変動準備金の取崩額は、前期末残高を超え ないものとなっていること。
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ア. 株式売買等損失額から株式売買等利益額を控除した額と、契約者(社員)配当準備金等に繰り入れる額のうち下記に定める額(損害保険会社にあっては(ア)に定める額、損害保険相互会社にあっては(イ)に定める額)との合計額。ただし、負数のときは零とする。
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(ア)規則第63条において準用する規則第30条の3第1項に規定する積立勘定を設けている場合における、当該勘定内の価格変動準備金対象資産について、当該勘定において把握される法第115条第2項に規定する株式等の売買等による利益の額から同項に規定する株式等の売買等による損失の額を控除した額
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(イ)社員配当準備金繰入額を限度とする額
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イ. 価格変動準備金の前期末残高から上記ア.の額を控除した額が、規則第66条後段において規定する限度額を超えるときの当該超える額
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ウ. 上記のほか、やむを得ない相当の理由がある額
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価格変動準備金の株式売買等損失額及び株式売買等利益額の計算には、次の額を含めるものとする。
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ア. 価格変動準備金対象資産に係る金融商品取引法第156条の24第1項に規定する信用取引及び規則第47条第9号(又は規則第139条)から第12号までに掲げる取引その他これらに準ずる取引(金利関連の金融派生商品取引を除く。)により生じた売却(損)益、評価(損)益及び為替差(損)益の額
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イ. 信託設定時に計上される退職給付信託設定益(損)の額
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法第115条第1項ただし書に基づく認可の申請を受けようとする場合は、以下のいずれかに該当するかどうかに留意する。
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ア. 上記のア.からウ.までの合計額が価格変動準備金の前期末残高を超えるときの当該超える額
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イ. 損害保険会社においては、地震保険について、その責任準備金等に対応する資産を他の資産と区分して経理している場合における当該責任準備金等に対応する資産に係る積立相当額(この場合において、当該責任準備金等に対応する資産に係る株式売買等損失額及び株式売買等利益額は、上記の取崩額の計算から除くものとし、また、当該責任準備金等に対応する資産は、規則第66条後段において規定する限度額の計算から除くものとする。)
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ウ. 上記のほか、やむを得ない相当の理由がある額
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(7)地震保険の危険準備金の取扱い
損害保険会社における広告・宣伝の費用のための危険準備金の取り崩しは、適切に行われていること。
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(8)保険契約を再保険に付した場合の責任準備金の不積立てについて
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保険契約を再保険に付した場合に、当該再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができるとされているが、この取扱いの可否は、当該再保険契約がリスクを将来にわたって確実に移転する性質のものであるかどうかや、当該再保険契約に係る再保険金等の回収の蓋然性が高いかどうかに着目して判断すべきであること。
なお、回収の蓋然性の評価にあたっては、少なくとも再保険契約を引き受けた保険会社又は外国保険業者(法第2条第6項に規定する「外国保険業者」をいう。以下同じ。)の財務状況について、できる限り詳細に把握する必要があること。
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規則第71条第1項第4号に規定する「保険会社の経営の健全性を損なうおそれがない者」とは、例えば、次に該当する外国保険業者をいうものであること。
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ア. 保険契約を再保険に付した保険会社(以下、「出再会社」という。)の総資産に占める外国保険業者が当該出再会社から引き受けた一の再保険契約に係る一の保険事故により当該外国保険業者が支払う再保険金の限度額の割合が1%未満である当該外国保険業者(当該外国保険業者が再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが明らかな場合を除く。)
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イ. 出再会社が再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てなかったことがある場合の当該再保険を引き受けた外国保険業者(当該外国保険業者が、再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが明らかな場合を除く。)
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(9)外国からの受再特約保険に係る支払備金
外国からの受再特約保険に係る支払備金については、当該出再国等の会計制度との相違その他の事情により、出再保険者等から事故報告が得られない場合にあっても、最近の実績値を勘案し合理的な方法により算出することが可能な場合は、その金額を、普通支払備金として積み立てるものとなっていること。
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(10)税効果会計導入に伴う有税の責任準備金の取扱い
税効果会計を適用する損害保険会社においては、その適用の最初の事業年度における責任準備金の取扱いについて以下の点に留意すること。
また、税効果会計を適用しない損害保険会社においても以下の及びの点に留意すること。
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自動車損害賠償責任保険の有税の各準備金の事業年度開始の時の金額については、前事業年度末における当該準備金の金額に、前事業年度末における当該準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっていること。
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地震保険の危険準備金の事業年度開始の時の金額については、前事業年度末における危険準備金の金額に、前事業年度末における有税の危険準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっていること。
ただし、保険会社が地震保険に関する法律第3条第1項(政府の再保険)に規定する再保険契約を政府との間で締結している場合には、当該会社についてはこの限りではない。
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異常危険準備金及び契約者配当準備金の事業年度開始の時の金額は前事業年度末における当該準備金の金額に、前事業年度末における有税の当該準備金の金額を基礎に計算した法人税等相当額を調整項目として加算した金額となっていること。
ただし、調整項目として加算する金額の合計は、次のア.の金額からイ.及びウ.の金額を控除した金額(負数のときは零とする。)を限度とすること。
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ア. 税効果会計を適用する最初の事業年度において計上する過年度一時差異に基づく繰延税金資産の金額
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イ. 自動車損害賠償責任保険における上記の調整項目として加算した法人税等相当額
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ウ. 地震保険における上記の調整項目として加算した法人税等相当額
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(11)税効果会計導入に伴う責任準備金算出方法書等の取扱い
税効果会計を適用する損害保険会社においては、その適用の最初の事業年度末までに責任準備金算出方法書等に以下のような措置を実施していること。
また、税効果会計を適用しない損害保険会社においても以下の及びの措置を実施していること。
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自動車損害賠償責任保険の責任準備金算出方法書において、各準備金の積立て及び取崩しに係る法人税等相当額控除の規定を削除していること。また、税率変更時の積立て及び取崩しの規定を新たに設けていること。
なお、上記措置を実施している保険会社は、自動車損害賠償保障法第28条の3第1項に規定する準備金の積立て等に関する命令第2条第2号において、税効果会計を適用しているものとみなす。
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地震保険の責任準備金算出方法書において、税率変更時の積立て及び取崩しの規定を新たに設けていること。
ただし、保険会社が地震保険に関する法律第3条第1項(政府の再保険)に規定する再保険契約を政府との間で締結している場合には、当該保険会社についてはこの限りではない。
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契約者配当準備金を積み立てる種目の責任準備金算出方法書及び事業方法書の別紙積立勘定運用細則において、積立て及び取崩しに係る法人税等相当額控除の規定を削除していること。
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各種目の責任準備金算出方法書において異常危険準備金の繰入率及び上限割合を見直していること。なお、見直し後の当該繰入率及び上限割合は、次の算式により得られる率を原則とすること。
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ア. 見直し後の繰入率
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= 見直し前の繰入率(除く有税部分)+見直し前の繰入率(有税部分)÷(100%-実効税率)
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(注)小数点以下二位を切上げ、小数点以下第一位までの比率(百分率)とする。
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イ. 見直し後の上限割合
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= 見直し前の上限割合÷(100%-実効税率)
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(注)一の位を切上げ、十の倍数となる比率(百分率)とする。
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(12)出再責任準備金の開示
規則別紙様式第7号、第7号の2、第12号及び第12号の2に規定する出再責任準備金の金額の注記にあたっては、保険料積立金及び未経過保険料並びに払戻積立金の計算上差し引かれた再保険に付した部分(以下、「出再部分」という。)に相当する金額を注記するものとすること。
この場合において、出再部分を控除した計数を基に未経過保険料を計算しており、かつ、出再部分に相当する未経過保険料(以下、「出再未経過保険料」という。)の把握が困難な場合は、次の算式により計算した金額を出再未経過保険料の金額として注記することができること。
出再未経過保険料=出再正味保険料×未経過保険料/正味収入保険料
ただし、一般に公正妥当と認められる会計基準に照らし、より合理的かつ妥当な計算方法がある場合には、上記算式にかかわらず、当該計算方法により計算した金額を出再未経過保険料の金額として注記することができること。
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(13)出再支払備金の開示
規則別紙様式第7号、第7号の2、第12号及び第12号の2に規定する出再支払備金の金額の注記にあたって、まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認める保険金等の金額(以下、「既発生未報告損害支払備金」という。)を平成10年6月8日大蔵省告示第234号(以下、(13)において「告示」という。)第2条第3項により出再部分を控除した計数を基に計算しており、かつ、出再部分に相当する既発生未報告損害支払備金の金額の把握が困難な場合は、以下により計算した額を出再既発生未報告損害支払備金として注記することができること。
ただし、一般に公正妥当と認められる会計基準に照らし、より合理的かつ妥当な計算方法がある場合には、以下の算式にかかわらず、当該計算方法により計算した金額を出再既発生未報告損害支払備金の金額として注記することができること。
出再既発生未報告損害支払備金
=正味既発生未報告損害支払備金×出再普通支払備金/正味普通支払備金
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(14)大規模自然災害ファンドの計算
平成10年6月8日大蔵省告示第232号第1条の2に規定する大規模自然災害ファンドの計算にあたって留意すべき事項は以下のとおりとすること。
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損害保険料率算出機構が元受契約に係る大規模自然災害リスクに対応するリスクカーブを算出するモデル(以下、「大規模自然災害モデル」という。)を用いる等合理的なリスクモデルを用いて計算されていること。
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再保険に付した部分を控除するにあたっては、リスクの実態に応じて、例えば、以下のいずれかに該当するような合理的な手法により計算されていること。その際、再保険に付した部分の中に保険引受リスクの移転を伴わない部分がある場合は、実質的な再保険回収効果に対応した控除額としていること。
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ア. 大規模自然災害モデルのリスクカーブに再保険効果を反映させて、推定正味支払保険金に対応するリスクカーブを算出し、これを用いて大規模自然災害ファンドの計算を行う。
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イ. 出再保険料を基礎として再保険に付した部分の割合を計算し、これを控除する。
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(15)大規模自然災害リスクに対応する未経過保険料等の計算
平成10年6月8日大蔵省告示第232号(以下、(15)において「告示」という。)第1条の2に規定する未経過保険料及び第2条に規定する異常危険準備金の計算にあたって留意すべき事項は以下のとおり。
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告示第1条の2及び第2条第2項に規定する火災保険には、火災相互保険、建物更新保険、満期戻長期保険が含まれること。
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計算にあたり必要となる計算単位の細分化又は集約化が合理的なものとなっていること。
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告示第1条の2に規定する収入保険料が予定利率により割り引かれている場合は、下式により計算した予定利息相当額を加えて当該事業年度に対応する保険料を計算していること。
予定利息相当額
=予定利息相当額加算前の未経過保険料×予定利率/(1+予定利率)
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告示第1条の2に規定する大規模自然災害ファンド以外の既経過保険料の額は、過去の発生保険金実績(告示第1条の2に規定する大規模自然災害リスクに係る発生保険金を除く。)と事業費実績を基礎として、合理的に計算した金額となっていること(計算期間が短いため、一時的に事業費又は発生保険金の額が高いと認められる場合等において、他の合理的な方法により計算する場合を除く。)。また、当該金額は、収入保険料を基礎として計算した当該事業年度に対応する保険料の額以下となっていること。
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(16)保険契約に関する指標等の開示
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規則別表(第59条の2第1項第3号関係(損害保険会社))に規定する「発生損害額及び損害調査費の合計額の既経過保険料に対する割合」等を計算する際に必要となる出再控除前の責任準備金及び出再控除前の支払備金の計算にあたっては、(12)及び(13)で定めるところによるものとする。
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外国損害保険会社等(法第2条第9項に規定する「外国損害保険会社等」、法第219条第2項に規定する特定損害保険業免許を受けた特定法人及びその引受社員をいう。以下同じ。)において、当該外国損害保険会社等の再保険契約が当該外国損害保険会社等を含むグループ単位で手配されており、当該外国損害保険会社等に係る再保険を区分することが困難な場合には、規則第59条の2第1項第4号イに規定するリスク管理体制の開示(再保険に関するものに限る)及び同別表(第59条の2第1項第3号関係(損害保険会社))に規定する保険契約に関する指標等の開示を当該グループ単位の指標として開示することができる。
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(17)開示の際の保険種目の区分
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規則別表(第59条の2第1項第3号ハ関係(損害保険会社))に規定する「保険種目の区分」は、火災保険、海上保険、傷害保険、自動車保険、自動車損害賠償責任保険、賠償責任保険、信用・保証保険及びその他の保険とする。ただし、賠償責任保険及び信用・保証保険をその他の保険の内訳として取り扱うこと、並びに正味収入保険料の割合が保険種目計の正味収入保険料の割合の5%未満となる保険種目については、その他の保険に合わせて区分することができる。
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※当該別表の保険契約に関する指標等の項第3号に規定する損害率の第三分野保険の開示区分については、傷害保険の区分等を少なくとも、医療、がん、介護、その他の商品に区分するものとする。
ただし、販売量が極めて少ないため有意な情報が得られない場合については、その旨注記したうえで、適切な区分に含める取扱いを行ってもよい。
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規則第59条の2第1項第3号ホに規定する「平均的な支払期間が長い保険契約の種類」は、傷害保険、自動車保険及び賠償責任保険とする。
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規則別表(第59条の2第1項第3号ハ関係(生命保険会社))・保険契約に関する指標等の項第10号に規定する「給付事由又は保険種類の区分」は、少なくとも医療(疾病)、がん、介護、その他に区分するものとする。
ただし、販売量が極めて少ないため有意な情報が得られない場合については、その旨注記したうえで、適切な区分に含める取扱いを行ってもよい。
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(18)船主責任相互保険組合関係
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再保険契約の責任準備金
船主相互保険組合法施行規則第51条第4号に規定する「組合の経営の健全性を損なうおそれがない者」とは、たとえば、次に該当する外国保険業者をいう。
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ア. 船主責任相互保険組合と同種類の外国に所在する組合(以下、「同種組合」という。)間で一保険事故につき支払う保険金のうち、一定額を超える保険金を一定の割合で分担するために締結された協定(以下、「国際PIグループのプール協定」という。)に加盟している同種組合
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イ. 保険契約を再保険に付した出再組合(以下、「出再組合」という。)の総資産に占める外国保険業者が当該出再組合から引き受けた一の再保険契約に係る一の保険事故により当該外国保険業者が支払う再保険金の限度額の割合が3%未満である当該外国保険業者(当該外国保険業者が再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが明らかな場合を除く。)。
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ウ. 出再組合が再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てなかったことがある場合の当該再保険を引き受けた外国保険業者(当該外国保険業者が、再保険金の支払を停止するおそれがあること又は再保険金の支払を停止したことが明らかな場合を除く。)
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支払備金の積み立て
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ア. 外国受再特約保険に係る支払備金
外国受再特約保険に係る支払備金については、当該出再国等の会計制度との相違その他の事情により、出再保険者等から事故報告が得られない場合にあっても、最近の実績値を勘案し合理的な方法により算出した金額を、普通支払備金として積み立てるものとなっているか。
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イ. 既発生未報告損害支払備金
既発生未報告損害支払備金については、国際PIグループのプール協定加盟同種組合から事故報告が速やかに得られない場合のプール再保険の保険金等に係る金額について、合理的な方法により算出した金額を積み立てるものとなっているか。
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(19)生命保険会社等の既発生未報告支払備金計算時の留意事項
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平成10年6月8日大蔵省告示第234号(以下、Ⅱ-2-1-4(19)及び(20)において「告示」という。)第1条第1項のただし書に規定する「通常の予測を超える事象が発生した場合において、当該事象の発生に関する特別の事情があるとき」に該当するかの判断にあたっては、生命保険会社個社の事情だけでなく、生命保険業界全体に与える影響の程度を踏まえることとし、適切な積立を行うことによって、保険契約者保護に努めること。
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生命保険業界全体に与える影響の評価、告示第1条第1項のただし書を適用する場合の計算方法の検討にあたっては、一般社団法人生命保険協会(明治41年12月7日に社団法人生命保険協会という名称で設立された法人をいう。以下、「生命保険協会」という。)と適切に連携すること。
(注) 当局と生命保険協会において生命保険業界全体に与える影響等に関して適宜意見交換を行うものとする。
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告示第1条第1項のただし書を適用する場合、特別の事情が既発生未報告支払備金の計算に重要な影響を与える期間において毎期継続的に適用することとし、みだりに計算方法を変更してはならない点に留意すること。
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告示第1条第1項のただし書を適用する場合、その旨、理由及び適用した計算方法の概要を開示すること。
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(20)損害保険会社等の既発生未報告損害支払備金計算時の留意事項
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告示第2条第1項に規定する既発生未報告損害支払備金に係る計算単位の設定及び同条同項各号の分類にあたっては、以下の点に留意すること。
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ア. 告示第2条第1項に定める計算単位は、保険種類ごとに、国内元受契約、海外元受契約、国内受再契約及び海外受再契約の引受区分ごととする。なお、保険金支払等の特性により合理的な理由がある場合は、計算単位をさらに細分化することができるものとする。
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イ. 告示第2条第1項第1号に規定する「保険契約に基づいて支払義務が発生した保険金等の支払が長期間に及ぶと認められる計算単位」は、対象事業年度の前事業年度までの直近3事業年度における当該事業年度の支払保険金に対する当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度に発生した保険事故に係る支払保険金の占める割合の平均値が90%未満となる場合等における計算単位を指すものとする。この場合において、国内受再契約については、国内元受契約の結果を準用できることとし、国内受再契約のうち国内元受契約の結果が準用できない場合及び海外契約については、保険事故発生年度に代えて保険引受年度を用いて計算することができるものとする。なお、支払保険金の計算においては再保険による回収額を控除しない。
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ウ. 告示第2条第1項第2号に規定する「重要性がないと認められる計算単位」は、次の算式により計算した割合の対象事業年度の前事業年度までの直近3事業年度の平均値が1%未満となる場合等を指すものとする。ただし、国内元受契約以外は保険事故発生年度に代えて保険引受年度を用いて計算することができるものとする。なお、支払保険金の計算においては再保険による回収額を控除しない。
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(計算単位における当該事業年度の支払保険金のうち、当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度に発生した保険事故に係る支払保険金を除いた額)/(当該事業年度における支払保険金の合計額(自動車損害賠償責任保険及び地震保険に係る支払保険金を除く。)のうち、当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度に発生した保険事故に係る支払保険金を除いた額)
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既発生未報告損害支払備金の計算にあたっては、以下の点に留意すること。
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ア. 保険金の支払特性により合理的な理由がある場合は、計算単位を通算することができるものとする。
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イ. 国内元受契約以外の保険契約について、保険事故発生年度別の支払保険金等の把握が困難な場合にあっては、保険事故発生年度別の支払保険金等に代えて保険引受年度別の支払保険金等を用いて計算することができるものとする。
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II -2-2 ソルベンシー・マージン比率の適切性(早期是正措置)
II -2-2-1 意義
保険会社は、保険契約者等の信認を確保するため、資本の充実や内部留保の確保を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することは極めて重要である。財務内容の改善が必要とされる保険会社にあっては、自己責任原則に基づき主体的に改善を図ることが求められている。当局としても、それを補完する役割を果たすものとして、保険会社の経営の健全性を確保するため、「保険金等の支払能力の充実を示す比率」という客観的な基準を用い、必要な是正措置命令を迅速かつ適切に発動していくことで、保険会社の経営の早期是正を促していく必要がある。
II -2-2-2 監督手法・対応
保険会社の経営の健全性を確保していくための監督手法である早期是正措置については、「保険業法第百三十二条第二項に規定する区分等を定める命令」(平成12年6月29日総理府令・大蔵省令第45号。以下、II -2-2において、「区分等を定める命令」という。)において、具体的な措置内容等を規定しているところであるが、その運用基準については下記のとおりとする。
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(1)命令発動の前提となるソルベンシー・マージン比率
「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係る「保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率」(以下、「ソルベンシー・マージン比率」という。)は、次のソルベンシー・マージン比率によるものとする。
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決算状況表(中間期にあっては中間(決算)状況表)により報告されたソルベンシー・マージン比率(ただし、業務報告書(中間期にあっては中間業務報告書)の提出後は、これにより報告されたソルベンシー・マージン比率)
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上記が報告された時期以外に、当局の検査結果等を踏まえた保険会社と監査法人等との協議の後、当該保険会社から報告されたソルベンシー・マージン比率
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(2)「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に基づく命令
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第1区分の命令及び第2区分の命令の相違
第1区分の「経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画の提出の求め及びその実行の命令」は、経営の健全性が確保されている基準としてソルベンシー・マージン比率200%以上の水準の達成を着実に図るためのものである。したがって、計画全体として経営の健全性が確保されるものであることを重視し、その実行にあたっては、基本的に保険会社の自主性を尊重することとする。
第2区分の「次の各号に掲げる保険金等の支払能力の充実に資する措置に係る命令」は、ソルベンシー・マージン比率が、経営の健全性を確保する水準をかなり下回っており、これを早期に改善するためのものである。したがって、個々の措置は、当該保険会社の経営実態を踏まえたものにする必要があることから当該保険会社の意見は踏まえるものの、当局の判断によって措置内容を定めることとする。なお、保険会社が当該措置を実行するにあたっては、基本的に個々の措置毎に命令を達成する必要がある。
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第1区分に係る改善計画の内容
「経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画」とは、当該改善計画を実行することにより、原則として1年以内にソルベンシー・マージン比率が200%以上の水準を達成する内容の計画とする。
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第2区分に係る改善計画の内容
「保険金等の支払能力の充実に資する措置」とは、ソルベンシー・マージン比率が、原則として1年以内に少なくとも100%以上の水準を達成するための措置とする。
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改善までの期間
ソルベンシー・マージン比率を改善するための所要期間については上記及びを目処とするが、保険会社が策定する経営改善のための計画等が、当該保険会社に対する保険契約者、投資家、市場の信認を維持・回復するために十分なものでなければならないことは言うまでもない。したがって、当該保険会社の市場との関係の程度等によっては、市場の信認を早急に回復する必要があるため、上記の期間を大幅に縮減する必要がある。
なお、保険会社が、「区分等を定める命令」第3条第1項の規定により、そのソルベンシー・マージン比率を当該保険会社が該当する「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を提出した場合であって、当該保険会社に対し、当該保険会社が該当する同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えるソルベンシー・マージン比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出するときは、上記及びのソルベンシー・マージン比率を改善するための所要期間には、下記 II -2-2-3のソルベンシー・マージン比率が当該保険会社が該当する同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善するための期間は含まないものとする。
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II -2-2-3 「区分等を定める命令」第3条第1項に規定する合理性の判断基準
「区分等を定める命令」第3条第1項の「保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画」の合理性の判断基準は、次のとおりとする。
保険会社の業務の健全かつ適切な運営を図り当該保険会社に対する保険契約者等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等を含み、ソルベンシー・マージン比率が、原則として3ヵ月以内に当該保険会社が該当する「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善する内容の計画であること。
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(注)増資等の場合は、出資予定者等の意思が明確であることが必要である。
II -2-2-4 命令区分の根拠となるソルベンシー・マージン比率
「区分等を定める命令」第3条第1項の適用にあたり「実施後に見込まれる当該保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率以下の保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率に係る同表の区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令」は、原則として3ヵ月後に確実に見込まれるソルベンシー・マージン比率の水準に係る区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令とする。
II -2-2-5 計画の進捗状況の報告等
計画の進捗状況は、毎期(中間期を含む。)報告させることとし、その後の実行 状況が計画と大幅に乖離していない場合は、原則として計画期間中新たな命令は行わないものとする。ただし、第2区分の命令を行った保険会社にあっては、その後ソルベンシー・マージン比率が100%以上200%未満の範囲に達したときは、当該時点において第1区分の命令を行うことができるものとする。
また、保険会社が、「区分等を定める命令」第3条第1項の規定により、そのソルベンシー・マージン比率を当該保険会社が該当する「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を提出し、当該保険会社に対し、当該保険会社が該当する同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えるソルベンシー・マージン比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出した場合においては、原則として増資等の手続に要する期間の経過後直ちに、当該保険会社のソルベンシー・マージン比率が、当該保険会社が発出を受けた命令が掲げられた同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率以上の水準を達成していないときは、当該時点におけるソルベンシー・マージン比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出するものとする。
II -2-2-6 「区分等を定める命令」第3条第3項及び第5項の運用について
「区分等を定める命令」第3条第3項又は第5項に該当する場合に、保険会社に対して行う命令には第3区分の命令を含むこととされているが、実質資産負債差額から、満期保有目的債券及び責任準備金対応債券の時価評価額と帳簿価額の差額を除いた額が正の値となり、かつ、流動性資産(注)が確保されている場合には、原則として同区分の命令は発出しないものとする。
ただし、解約の状況や流動性資産の確保の状況等を総合的に勘案し、必要があると認める場合には、契約管理の徹底、流動性の補完、資本の増強等につき業務改善命令を発出することがあることに留意するものとする。
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(注)流動性資産:現預金、コールローン、売買目的有価証券、その他有価証券(市場性がないもの及び保有目的等から直ちに売却等が困難なものを除く。)
II -2-2-7 その他
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(1)「区分等を定める命令」第2条から第5条の規定に係る命令を行う場合は、行政手続法等の規定に従うこととし、同法第13条第1項第2号に基づく弁明の機会の付与等の適正な手続きを取る必要があることに留意する。
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(2)ソルベンシー・マージン比率が100%未満の保険会社に対しては、原則として「区分等を定める命令」第3条第2項各号に掲げる資産について当該各号に定める方法により算出し、これにより修正した貸借対照表(様式は任意で可)を提出させるものとする。
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(3)早期是正措置は、ソルベンシー・マージン比率が保険会社の財務状況を適切に表していることを前提に発動されるものであることから、早期是正措置の発動を免れるための意図的なソルベンシー・マージン比率の操作を行うといったことがないよう保険会社に十分留意させることとする。
II -2-3 早期警戒制度
II -2-3-1 意義
保険会社の経営の健全性を確保していくための手法としては、法第132条第2項に基づき、ソルベンシー・マージン比率による「早期是正措置」が定められているところであるが、本措置の対象とはならない保険会社であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要がある。
このため、以下により、行政上の予防的・総合的な措置を講ずることにより、保険会社の早め早めの経営改善を促していくものとする。
II -2-3-2 監督手法・対応
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(1)収益性改善措置
基本的な収益指標やその見通しを基準として、収益性の改善が必要と認められる保険会社に関しては、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には法第128条に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(2)信用リスク改善措置
大口与信の集中状況等を基準として、信用リスクの管理態勢について改善が必要と認められる保険会社に関しては、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には法第128条に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(3)安定性改善措置
有価証券の価格変動等による影響を基準として、市場リスク等の管理態勢について改善が必要と認められる保険会社に関しては、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には法第128条に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(4)資金繰り改善措置
契約動向や資産の保有状況等を基準として、流動性リスクの管理態勢について改善が必要と認められる保険会社に関しては、契約動向や資産の保有状況等について、頻度の高い報告を求めるとともに、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には法第128条に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(5)業務改善命令
以上の措置に関し、改善計画を確実に実行させる必要があると認められる場合には、法第132条に基づき業務改善命令を発出するものとする。
II -2-4 生命保険会社の区分経理の明確化
II -2-4-1 意義
生命保険会社においては、利益還元の公平性・透明性の確保、保険種類相互間の内部補助の遮断、事業運営の効率化、商品設計や価格設定面での創意工夫などを図る観点から、一般勘定について保険商品の特性に応じた区分経理を行うことが重要である。各生命保険会社において自己責任原則のもと、保険経理の透明性、保険契約者間の公平性確保等の観点から、適切な区分経理が行われる必要がある。また、区分経理を導入するにあたっては、資産の配分方法、含み損益の配賦方法等について、アセットシェア等に基づき適切に配分方法が定められていることが重要である。
II -2-4-2 主な着眼点
各生命保険会社においては、適切な区分経理を行うため、例えば、以下のような考えに基づく区分経理に関する管理方針を策定しているか。また、区分経理の状況が、取締役会その他これに準ずる機関に対して報告されているか。
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(1)商品区分
商品区分においては、損益及び負債の管理を行うものとする。商品区分は、各生命保険会社における商品の特性や保有状況に照らして、損益を把握する単位として適切なものとなっている必要があり、保険の性質の相違等により理論的・合理的な区分とする必要がある。従って、新商品の発売による当該保有契約の増大やある商品区分の中の一部の保険種類の契約の増大など、会社全体の収支に重大な影響を与えるような場合等は、新たな商品区分を設定して管理することが望ましい。また、設定した商品区分については、保有契約が減少し、商品区分の存在意義がなくなった場合等、合理的な理由がある場合を除き、その変更は行わないものとする。
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(2)全社区分
例えば、次の機能を受け持つものとして、全社区分を設定する。
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死亡保障リスク等のリスクバッファー機能
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新商品開発に係る事業運営資金提供機能
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会社全体で共有する資産・共通する経費等の管理機能
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現預金等の管理機能
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(3)資産区分
資産区分は、商品区分に対応した適切な区分を設定する。また、資産区分の資産が減少し、資産区分の存在意義がなくなった場合は、当該資産区分は廃止し、他の資産区分に統合する。この場合、いずれの契約にも帰属しない残余財産は全社区分に統合する。
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(4)負債・純資産の配賦方法
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商品区分への配賦
保険契約準備金(危険準備金を除く。)、再保険借等は各商品区分に直課する。直課できないものは、区分経理に関する管理方針に基づいて配賦する。
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全社区分への配賦
純資産の部(繰越利益剰余金・未処分剰余金、評価・換算差額等を除く。)、価格変動準備金、危険準備金、その他商品区分に配賦されない負債を配賦する。
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(5)資産の配賦方法及び管理基準
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運用資産の配賦方法
運用資産は、原則として、資産の購入時に配賦する資産区分を決める。
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運用資産の管理
運用資産は、資産区分ごとに、次に掲げる方式の中から適切な方式を選択し管理する。
ア. 資産分別管理方式……
個々の資産を銘柄ごとに、資産区分に直接帰属させる方式
イ. 資産単位別持分管理方式……
取引単位(例えば、不動産では物件ごと)ごとに、資産区分の持分で管理する方式
ウ. 資産持分管理方式……
投資対象資産ごとのマザーファンドを設定し、各資産のマザーファンドに対する持分を管理する方式
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(注)資産持分管理方式を用いる場合は、一般勘定資産(無配当保険に対応する資産を除く。)全体を一個のマザーファンドとして扱わない。
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運用資産以外の配賦方法
再保険貸等、各資産区分に直課できるものは直課し、直課できないものは、区分経理に関する管理方針に基づいて配賦する。
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全社区分の資産
営業用不動産、子会社・関連会社株式、現預金(現預金等の管理機能を持つ場合)、その他全社区分に配賦することが相応しい資産の全部又は一部を配賦するものとする。
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(6)損益の配賦
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保険関係損益
保険料等収入、保険金等支払金、責任準備金繰入額等は各商品区分に直課する。
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運用資産関係損益
資産が帰属する資産区分に配賦し、さらに対応する商品区分・全社区分に直課又は持分に応じて配賦する。なお、一つの資産区分で複数の商品区分を管理している場合は、区分経理に関する管理方針に基づいて配賦する。
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(7)各区分間の取引等
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資産区分間の取引
資金移動(流入・流出)管理、流動性確保、ポートフォリオの改善等、必要な取引とし、市場価格等の適正な価格をもって適切に管理する。
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商品区分と全社区分との取引
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ア. 現預金等の貸借
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(ア)商品区分又は全社区分毎に区別して管理する。
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(イ)借越しが継続しないよう限度額等を設ける。
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イ. 現預金等以外の貸借
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(ア)全社区分から商品区分への貸付は、異常な保険金の支払い、新商品の販売に伴う事業運営資金、その他やむを得ない事情がある場合に限る。
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(イ)商品区分から全社区分への貸付は、全社区分の規模が小さいために、その機能を十分に果たすことができない場合に限る。
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(ウ)上記の貸借は、金額、利率(貸付期間に応じた市中金利等を基に設定すること)、期限その他の返済条件をあらかじめ定める。
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(エ)貸付条件の緩和や債務免除は、回収が不可能な損失が発生している場合等、やむを得ない事情がある場合を除き、行わない。なお、貸付条件の緩和等を行った後に利益が生じた場合は、当該利益を返済に充てるものとする。
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ウ. 出資
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(ア)全社区分から商品区分への出資は、異常な保険金の支払い、新商品の販売に伴う事業運営資金、その他やむを得ない事情がある場合に限る。
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(イ)商品区分から全社区分への出資は、全社区分の規模が小さいために、その機能を十分に果たすことができない場合に限る。
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(ウ)出資を受けた商品区分又は全社区分において、剰余金が発生した場合は、出資に対応する金額を出資した商品区分又は全社区分に配分する。
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(エ)出資は返済することができる。
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エ. その他の取引
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(ア)全社区分において、資本又は危険準備金等を積み増す際に、各商品区分からその負担する積み増し額を受け入れる取引
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(イ)資本又は危険準備金等を取崩し、その取崩し事由の発生した商品区分に、その対応する金額を支払う取引
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(ウ)転換等により、責任準備金等を転換等を行った後の商品区分に支払う取引
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(エ)新契約費を全社区分から支払う場合に、商品区分から全社区分に新契約費相当分を支払う取引
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(オ)全社区分における共有資産等に対する対価として、各商品区分が使用料等を支払う取引
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(カ)商品区分における特定のリスク発生による損失実現時に、全社区分から当該商品区分に当該損失実現額を支払う取引(あらかじめ保険数理的に定められた対価を支払ったものに限る。)
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(キ)商品区分において、将来回復が見込めない重大な損害が発生し、全社区分からその損害のてん補を受ける取引(全社区分が他の商品区分から当該損害のてん補のためにてん補を受ける場合を含む。)。ただし、この取引によりてん補を受けた場合は、受け入れた商品区分に係る商品についての新規募集停止や保険料の適正化等所要の措置を講じる。
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(ク)全社区分において、将来回復が見込めない重大な損害が発生し、商品区分からその損害のてん補を受ける取引
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II -2-4-3 監督手法・対応
区分経理の状況について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2-5 商品開発に係る内部管理態勢
II -2-5-1 意義
保険商品の内容は「普通保険約款」及び「事業方法書」に、料率については「保険料及び責任準備金の算出方法書」(以下、「算出方法書」という。)に記載されており、新商品の開発、商品内容の変更は、これらの変更を通じて行われている。
保険会社より商品の認可申請が行われた場合、監督当局としては、契約内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれがないか、不当な差別的取扱いをするものでないか、契約内容が公序良俗を害するものではないか等の保険業法に定める基準に適合するものであるか審査を行い、適当と認められたものについて、これを認可することとしている。
近年、保険商品には、わが国における社会の構造的変化・経済活動の多様化等に伴い、国民の生活保障ニーズの高まり、新たなリスクの発生など、保険契約者ニーズに対応すべく多様化が求められている。
こうしたニーズに応え、保険会社が商品開発を行うにあたっては、保険業法等の法令等を踏まえ、自己責任原則に基づき、リスク面、財務面、募集面、法制面等あらゆる観点から検討する内部管理態勢の整備が求められているところである。
また、保険商品に係る規制としては認可制の枠組みを維持しつつ、保険契約者等の保護の面で問題が少ないとされる商品分野については、順次届出制へ移行しており、さらに、法第3条第5項第1号及び第3号に掲げる保険(以下、「第二分野」という。)の企業保険については、届出をしないで特約を新設又は変更することができる特約自由方式が導入されるなど、従来にもまして、保険会社における商品開発に係る内部管理態勢の充実が重要となっている。
II -2-5-2 主な着眼点
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(1)商品開発に係る取締役の認識及び取締役会等の役割
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取締役会において、保険会社の経営計画・経営方針に沿った商品開発に係る方針を明確に定めているか。
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取締役は、商品開発に係る内部管理が健全性維持や適切な業務運営の確保に重大な影響を与えることを十分認識しているか。
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取締役会は、商品開発に係る内部管理について統合的に管理できる体制を整備しているか。また、上記の体制においては、例えば、商品開発に関連する各部門の間で相互牽制等の機能が十分発揮されるものとなっているか。なお、組織体制については、必要に応じ随時見直し、商品開発方針や内部管理手法の変更にあわせて改善を図っているか。
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適切な商品開発に係る内部管理を行うため、業務に精通した人材を所要の部署に確保するための人事及び人材育成等についての全社的な方針を、取締役会等又は取締役会から権限を授権されている取締役等(執行役員等の役員を含む。以下同じ。)が明確に定めているか。
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経営上の観点から重要なものについては、商品内容の概略決定にあたり、収支予測、保険引受リスク、コンプライアンス、販売計画、システム開発、保険商品特有の道徳的危険等についての課題及び検討内容等を取締役会等において議論することが確保されているか。
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保険計理人は、保険料及び責任準備金の算出方法その他の保険数理に関する事項について、関連する部門と連携を密にした上で、必要な場合には取締役会等に対して、問題点等を適確に報告しているか。
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(2)商品開発に関与する管理者の認識及び役割
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商品開発に関連する部門の長及び商品開発に責任を有する取締役等(以下、「商品開発関連管理者」という。)は、自ら及び各部門の担当者が、商品開発に係る適切な内部管理を阻害することとならないよう、内部管理についての理解・認識の徹底を図っているか。
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商品開発に際し、とりまとめ部門を設置している場合においては、適切な商品開発態勢を構築するために必要な管理・指導を関連する部門に行っているか。また、とりまとめ部門を設定していない場合においては、商品開発の全般について取締役等が内部管理の状況を統合的に管理しているか。
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健全性維持や適切な業務運営が確保されるような商品開発がなされるよう、商品開発のための規程を取締役会等で議論した上で整備しているか。また、商品開発に係る規程を充実・改善するよう、適切な方策を講じているか。
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商品開発関連管理者は、商品開発を行うための組織が機能を有効に発揮できるよう、専門性も考慮しつつ適切に人員の配置を行っているか。
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(3)取締役会等への付議体制
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経営に重大な影響を与える新保険商品の開発又は既存保険商品の改廃に際し、当局への申請が必要なものについては、当局への申請前に取締役会等の付議を要することとしているか。また、取締役会等への付議基準は明確となっているか。
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支店形態等で進出している場合など、当局への申請に際して本社等と現地組織との責任関係が明確となっているか。当局への申請前における本社等の承認が必要な場合にあたっては、法令等遵守状況の確認については現地組織において実施するものとなっているか。また、当該確認は現地組織の独立性が確保された上で、自己の責任に基づき実施されているか。
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(4)商品開発能力の向上のための措置
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人材育成及び商品開発能力を向上させるための方法・体制を整備し、専門性を持った人材の育成を行っているか。
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保険契約の内容が保険契約者等の需要や利便に適合した内容となるよう、例えば、一般消費者に対する市場調査を適宜実施し、活用しているか。
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(5)関連部門との連携
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商品開発案件の洗い出しは、適切なプロセスにより行われているか。例えば、顧客ニーズ・営業対策面からの開発要請、保険引受リスク・収益改善等からの要請、コンプライアンス上の必要性等の観点から検討されているか。
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取締役会において定めた商品開発に関する方針に沿っているか、開発負荷はどの程度かといった点等を勘案して、開発案件の選定を適切に実施しているか。
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商品内容の概略決定にあたり、収支予測、保険引受リスク、コンプライアンス、販売計画、システム開発、保険商品特有の道徳的危険等についての課題及び検討内容等を各関連部門において議論しているか。
なお、収支予測については、商品ごとに保険会社の経営実態を踏まえた実現可能性の高い保険事故発生率並びに事業費その他のシナリオに基づき問題ないものとなっていることを確認しているか。
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社内規定等に定める付加保険料の算出方法が合理的かつ妥当なものであり、かつ、その算出された付加保険料が不当に差別的なものとなっていないことが確保されているか。特に、付加保険料の割増引きを設定する場合には、契約方法、保険料の払込方法等に基づいたものとなっており、事実上の特別利益の提供(法第300条第1項第5号)になっていないことに留意する。
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関連部門は、販売量拡大や収益追及を重視する、例えば、営業推進部門や収益部門から不当な影響を受けることなく、商品に伴うリスク、販売上の留意点等の商品の課題に対する検討を行っているか。また、検討内容等について、取締役会等又はとりまとめ部門等(商品開発の全般を管理する取締役等を含む。)に対し、直接、必要に応じ随時報告を行っているか。
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関連部門は、取締役会等又はとりまとめ部門等に対して分かりやすく、かつ、商品開発に係わる経営に重大な影響を与える情報を網羅し、正確に報告しているか。
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商品開発の全般を管理する取締役等や商品開発部門の長に権限が委ねられている商品開発上の事項について、適切な権限行使がなされているかを定期的に点検・監査するなどの管理が行われているか。
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商品内容については、既存の各種規程等との整合性がとれているか、表現は適当か、使用データに誤りはないか等、健全性維持や適切な業務運営の確保に対するチェックの観点は明確となっているか。
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社内態勢の整備にあたっては、募集時のみならず、保険金支払いに至るまで、保険契約者・被保険者・被害者等に対し、適切な対応が図られるよう検討を行っているか。
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保険約款の作成については、契約者の視点に立って、分かりやすい内容となるよう努めているか。なお、専門用語や法律用語の安易な使用が保険契約者の保険約款に対する理解を困難なものにすることに留意しているか。
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保険契約の内容に影響を与える法令等の改正履歴及び改正予定について、遺漏なく把握すべく態勢を整備しているか。
また、保険法においては、介入権、被保険者による解除請求、危険の増減、保険料の未経過期間に対応した合理的かつ適切な金額の返還など保険契約に係る制度が改正及び新設されており、当該制度に適切に対応できる態勢を整備しているか。
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保険商品の開発等に係るシステム開発時のチェック及びシステム開発後のチェック・管理については、「II -3-13-2 システムリスク管理態勢」も参照のこと。
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(6)申請手続きのための検討体制
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申請関係書類(当局の審査に必要と認められる資料を含む。)を作成する場合に、事前に十分な検討を行っているか。また、充分な募集体制整備が図られるよう、できるだけ早期に計画的に準備し、時間的余裕をもって申請を行うことができるよう努めているか。
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各関連部門のチェックの後に全般的なチェックを実施しているか。また、チェックを統括する責任者は明確となっているか。
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(7)当局審査における指摘事項等に対する対応
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主な指摘事項に対する検討状況や検討結果を事後的に確認可能であるように記録しているか。
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取締役会等で議論の前提となっていた収支予測、保険引受リスク、コンプライアンス、販売計画、システム開発等へ影響を及ぼすなど、特に重要な指摘事項については取締役会等において議論しているか。
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(8)書類全体に係る正確性確保のための体制
書類の作成に際して、申請書類作成担当者以外の職員(メンバー)による読み合わせの励行等、複層的チェックを行う態勢の確立などにより、記載内容に係る正確性確保のための措置を講じているか。
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(9)商品販売開始前の態勢
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販売商品に係る業務規程の整備、販売資料の作成・確認、契約データ管理、必要なシステム対応等の態勢が整備されるよう準備期間をとっているか。
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本店のみならず、営業店(保険代理店(「生命保険代理店」(法第2条第19項に規定する「生命保険募集人」のうち、生命保険会社の委託を受けた者、若しくは、その者(法第275条第3項に基づく認可を受けた者に限る。)の再委託を受けた者で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者をいう。以下同じ。)及び「損害保険代理店」(法第2条第21項に規定する者をいう。以下同じ。))を含む。)に対し、業務規程の内容、顧客への説明方法等の募集時の留意事項について充分に周知が図られるよう準備期間をとっているか。
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(10)商品販売開始後のフォローアップ
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リスク管理を適切に行うために、商品開発プロセスの中にフォローアップが組み込まれているか。
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販売後のフォローアップについて、その視点、担当部署、時期、手法、結果の利用方法は明確に定められているか。
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フォローアップを販売開始後の適切な時点で実施しているか。
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フォローアップ結果は取締役会等に対して直接、必要に応じ随時報告されているか。また、報告の内容は分かりやすく、かつ、正確なものとなっているか。
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保険契約の引受けが業務規程に則って行われていることのチェックを実施しているか。
特に、本店以外の部署に保険契約の引受けに係る裁量権があるものについて、その裁量権の内容を理解した引受けが行われていることのチェックを実施しているか。
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保険種類別などの適切な単位ごとに収支分析や保険料及び責任準備金の計算基礎率の妥当性の検証を実施しているか。
特に、特約自由方式が可能な契約を主たる対象とする集団とそれ以外の集団が混在する保険種類にあっては、その集団別に検証を実施しているか。
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上記の検証結果等を踏まえ、必要に応じて基礎率の改定を実施しているか。
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想定外の収支の悪化やリスクの増大を防ぐために、少なくとも基礎率を同じくする保険契約の区分ごとに発生率の変動要因を分析・検証し、悪化の場合にはその原因を特定できるよう定期的なモニタリングを行い、販売方針の変更、商品内容や価格の改定、売り止め等の対応を適時に検討するための管理態勢を整備しているか。
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商品に対する顧客、保険代理店からの意見収集などによるフォローアップの結果を、今後の商品開発に反映させるための体制を整備しているか。
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II -2-5-3 監督手法・対応
商品開発に係る内部管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づき行政処分を行うものとする。