II .保険監督上の評価項目
II -4 業務の適切性
II -4-1 コンプライアンス(法令等遵守)態勢
II -4-1-1 意義
保険会社の業務の公共性を十分に認識し、法令や業務上の諸規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが顧客からの信頼を確立するために重要である。
II -4-1-2 主な着眼点
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(1)代表取締役、取締役及び取締役会は法令等遵守を経営の最重要課題の一つとして位置付け、法令等遵守に取り組んでいるか。(「II -1 経営管理」の項目参照)
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(2)法令等遵守に係る基本方針及び遵守基準が取締役会において策定されているか。
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(3)コンプライアンスを実現するための具体的な手引書(コンプライアンス・マニュアル)を策定しているか。また、役職員及び保険募集人に対して周知徹底されているか。
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(4)コンプライアンスを実現させるための具体的な実践計画(コンプライアンス・プログラム)を適時、合理的なものとして策定しているか。
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(5)コンプライアンス等の法務問題を一元管理する体制として、コンプライアンスに関する統括部門を設置しているか。また、その機能が十分発揮されているか。
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(6)各業務部門及び営業拠点等毎に、適切にコンプライアンス担当者を配置しているか。
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(7)コンプライアンスに対する内部監査態勢は十分整備されているか。
II -4-1-3 監督手法・対応
コンプライアンス態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -4-2 保険募集管理態勢
保険会社及び保険募集人は、保険契約者等の利益を害することがないよう、適正な保険募集管理態勢を確立する必要がある。
このため、以下のような措置等について、適切に実行するとともに、内部監査部門による監査や代理店監査等を通じて、事後的に適切性等を検証し、必要に応じて改善を図ることが求められる。
II -4-2-1 適正な保険募集管理態勢の確立
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(1)保険募集の意義
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法第2条第26項に規定する保険募集とは、以下のア.からエ.の行為をいう。
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ア. 保険契約の締結の勧誘
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イ. 保険契約の締結の勧誘を目的とした保険商品の内容説明
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ウ. 保険契約の申込の受領
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エ. その他の保険契約の締結の代理又は媒介
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なお、上記エ.に該当するか否かについては、一連の行為の中で、当該行為の位置付けを踏まえたうえで、以下のア.及びイ.の要件に照らして、総合的に判断するものとする。
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ア. 保険会社又は保険募集人などからの報酬を受け取る場合や、保険会社又は保険募集人と資本関係等を有する場合など、保険会社又は保険募集人が行う募集行為と一体性・連続性を推測させる事情があること。
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イ. 具体的な保険商品の推奨・説明を行うものであること。
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(2)「募集関連行為」について
契約見込客の発掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集のプロセスのうち上記(1)に照らして保険募集に該当しない行為(以下、「募集関連行為」という。)については、直ちに募集規制が適用されるものではない。
しかし、保険会社又は保険募集人においては、募集関連行為を第三者に委託し、又はそれに準じる関係に基づいて行わせる場合には、当該募集関連行為を受託した第三者(以下、「募集関連行為従事者」という。)が不適切な行為を行わないよう、例えば、以下のからの点に留意しているか。
また、保険会社は、保険募集人が、募集関連行為を第三者に委託し、又はそれに準じる関係に基づいて行わせている場合には、保険募集人がその規模や業務特性に応じた適切な委託先管理等を行うよう指導しているか。
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(注1)募集関連行為とは、例えば、保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報を保険会社又は保険募集人に提供するだけの行為や、比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスのうち保険会社又は保険募集人からの情報を転載するにとどまるものが考えられる。
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(注2)ただし、例えば、以下の行為については、保険募集に該当し得ることに留意する必要がある。
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ア. 業として特定の保険会社の商品(群)のみを見込み客に対して積極的に紹介して、保険会社又は保険募集人などから報酬を得る行為
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イ. 比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスを提供する者が、保険会社又は保険募集人などから報酬を得て、具体的な保険商品の推奨・説明を行う行為
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(注3)例えば、以下の行為のみを行う場合には、上記の要件に照らして、基本的に保険募集・募集関連行為のいずれにも該当しないものと考えられる。
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ア. 保険会社又は保険募集人の指示を受けて行う商品案内チラシの単なる配布
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イ. コールセンターのオペレーターが行う、事務的な連絡の受付や事務手続き等についての説明
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ウ. 金融商品説明会における、一般的な保険商品の仕組み、活用法等についての説明
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エ. 保険会社又は保険募集人の広告を掲載する行為
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(注4)保険募集人が保険募集業務そのものを外部委託することは、法第275 条第3 項に規定する保険募集の再委託に該当するため、原則として許容されないことに留意する。
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募集関連行為従事者において、保険募集行為又は特別利益の提供等の募集規制の潜脱につながる行為が行われていないか。
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募集関連行為従事者が運営する比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスにおいて、誤った商品説明や特定商品の不適切な評価など、保険募集人が募集行為を行う際に顧客の正しい商品理解を妨げるおそれのある行為を行っていないか。
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募集関連行為従事者において、個人情報の第三者への提供に係る顧客同意の取得などの手続が個人情報の保護に関する法律等に基づき、適切に行われているか。
また、募集関連行為従事者への支払手数料の設定について、慎重な対応を行っているか。
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(注)例えば、保険募集人が、高額な紹介料やインセンティブ報酬を払って募集関連行為従事者から見込み客の紹介を受ける場合、一般的にそのような報酬体系は募集関連行為従事者が本来行うことができない具体的な保険商品の推奨・説明を行う蓋然性を高めると考えられることに留意する。
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(3)保険募集人の採用・委託・登録・届出
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保険募集人の採用、保険代理店への委託にあたって、その適格性を審査しているか。
また、その審査にあたっての審査基準が整備されているか。
なお、保険代理店の委託にあたっては、保険募集に関する法令等や保険契約に関する知識、保険募集の業務遂行能力に加えて、本来の事業目的、事業内容等について、以下の点を確認し、審査しているか。
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ア. 保険契約者等の保護及び保険募集の公正を確保するための内部管理態勢及び保険募集管理態勢が整備されていること。
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イ. 法令等により保険募集を行うことができない者ではないこと。
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ウ. 本来の事業目的・事業内容に照らし、保険募集を業務として行うに適した者であること。
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エ. 保険代理店において、保険募集に従事する役員又は使用人については、以下の要件を満たすことに留意する必要がある。
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(ア)保険募集に従事する役員又は使用人とは、保険代理店から保険募集に関し、適切な教育・管理・指導を受けて保険募集を行う者であること。
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(イ)使用人については、上記(ア)に加えて、保険代理店の事務所に勤務し、かつ、保険代理店の指揮監督・命令のもとで保険募集を行う者であること。
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(ウ)法第302条に規定する保険募集に従事する役員又は使用人は、他の保険代理店又は損害保険会社において保険募集に従事する役員又は使用人にはなれないこと。
(注)法第275条第3項に規定する場合を除き、保険募集の再委託は禁止されていることに留意する必要がある。
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保険募集を行う者は、法第276条に規定する特定保険募集人(法第276条に規定する「特定保険募集人」のうち、「少額短期保険募集人」を除いた者をいう。以下同じ。)の登録及び損害保険代理店の役員又は使用人の場合は、法第302条に規定する届出を行っているか。
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生命保険会社においては、法人等に対し、登録を行わずに保険代理店委託を行うなどにより、法令等を潜脱する行為を排除する措置を講じているか。
例えば、法人等に対して、紹介代理店委託を行うなどにより、紹介料等の名目で対価性のない金銭の支払いその他の便宜供与を行っていないか。
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(4)特定保険募集人等(特定保険募集人及び損害保険会社の保険募集を専ら行う従業員をいう。II-4-2-1(4)において同じ)の教育・管理・指導
保険会社においては、保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、特定保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。
損害保険会社の保険募集を専ら行う従業員についても、保険募集に関して適切な教育・管理・指導を行っているか。
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特定保険募集人等の教育について
保険商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるよう、多様化した保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識の付与及び適切な保険募集活動のための十分な教育を行っているか。
また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。 -
特定保険募集人等の管理・指導について
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ア. 保険会社においては、特定保険募集人等の健全かつ適切な業務運営を確保するために、不適切な保険募集の端緒となりうる点等について、その状況を適時把握し、管理・指導するために適正な措置を講じているか。
具体的には、例えば、以下の(ア)から(ウ)のようなことが考えられる。-
(ア)特定保険募集人等の挙績状況、保険契約の継続状況等の常時把握可能な管理を行う。
その際、保険会社の役職員が実質的な保険募集を行い、その保険契約を保険代理店の扱いとする等の行為又は特定保険募集人等の間での成績を付け替える等の行為は、重要事項説明等の募集時の説明が不十分となるなどの不適切な保険募集につながるおそれがあることから、こうした行為が行われないように特に留意する。 -
(イ)保険代理店による契約者からの保険料領収及び保険料の保険会社への精算の適切性を確保するため、保険料の支払いを受けた場合に保険料領収証を発行すること、保険代理店が領収した保険料を自己の財産と明確に区分し、遅滞なく適時に保険会社に精算すること、それら管理の状況が事後で確認できる体制とすることなどを保険会社において管理・指導する体制を構築する。
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(ウ)架空契約や保険金詐取を目的とする契約等の不正な保険契約の発生を防止するため、保険証券を交付する行為又は保険金や満期返戻金を保険契約者等へ給付する行為については、正当な理由なく、保険代理店を介して行わないように適正な措置を講じる。
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イ. 保険代理店と締結する代理店委託契約書において保険代理店が遵守すべき事項を定めているか。
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保険代理店等に対する監査について
営業所等の拠点及び保険代理店の保険募集に関する業務内容について、以下のような点を含めて、監査等を適切に実施し、営業所等の拠点及び保険代理店の保険募集の実態や内部事務管理の状況等を把握しているか。
また、監査等において内部事務管理が不適切な営業所等の拠点及び保険代理店に対し、適切な措置を講じるとともに、改善が図られるよう指導・検証する態勢を整備しているか。
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ア. 営業所等の拠点及び保険代理店に対する監査の周期は、営業所等の拠点及び保険代理店の業務の品質を確保するうえで有効なものとなっているか。
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イ. 監査等を実施する営業所等の拠点及び保険代理店の選定及び監査等の項目は、日常の管理を行う中で把握した情報や管理指標の異常値等に着目し、適時適切に見直しを行っているか。
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ウ. 監査等の手法として、無予告での訪問による監査等を実施できる態勢を整備しているか。
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II -4-2-2 保険契約の募集上の留意点
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(1)法第282条第3項関係(生命保険募集人に係る制限(一社専属制)の例外の適用)
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2以上の所属保険会社を有する生命保険募集人については、所属保険会社間の不当な乗換募集の防止、顧客情報の管理等についての措置を講じているか。
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生命保険会社は、法第282条の規定により、他の生命保険会社の生命保険募集人に対して保険募集の委託をしようとするときは、当該生命保険募集人が令第40条及び告示に定める要件を満たしているか。
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当該要件を潜脱する等、保険契約者等の保護に欠けるおそれを生ぜしめる方法による委託が行われていないか。
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当該要件を満たさない状態が、当面6ヵ月以上続いている場合、適正化措置を講じているか。
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上記要件の適用にあたっては、以下の事項にも留意する必要がある。
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ア. 他の生命保険会社の保険契約の締結の代理(媒介を含む。)を受託する生命保険会社の所属保険会社が、当該他の生命保険会社1社のみである場合についても、令第40条第1号の趣旨を踏まえ、当該受託する生命保険会社が同号の要件を満たす場合は、その役員又は使用人として保険募集を行う者についても、同号の要件を満たしているものであること。
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イ. 令第40条第2号の適用は、生命保険募集人複数名という同条第1号を適用できない場合を想定していること。
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ウ. 令第40条第2号の判定日は、個々の生命保険代理店が乗合登録をする時点で要件を満たしていればよいこと。
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エ. 専業性を判定する「年間総売上高」とは、乗合登録を行う直前1年間若しくは乗合登録を行う日の属する年の前事業年度とする。
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オ. 令第40条第2号の適用でかつ同条第1号の条件を満たしている保険代理店が同条第1号の条件未達となった場合、一定期間のうちに同条第1号の条件を満たし、適正化することが基本であるが、適正化できなかった場合は、同条第2号適用対象の生命保険会社と最先発会社との乗合のみ可とする。
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(2)法第294条、第300条の2関係(情報提供義務)
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保険会社又は保険募集人は、保険契約の締結又は保険募集等に関し、保険契約の種類及び性質等を踏まえ、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を適正に行っているか。
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書面の交付又はこれに代替する電磁的方法により、情報の提供を行うにあたっては、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(以下、「契約概要」という。)と顧客に対して注意喚起すべき情報(以下、「注意喚起情報」という。)について、記載しているか。
なお、「契約概要」と「注意喚起情報」の主な項目は、以下のとおりとする。
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(注1)「契約概要」と「注意喚起情報」について、同一媒体を用いて一体で記載している場合には、以下のア.(ア)及びイ.(ア)について省略したうえで、当該情報を「契約情報」として表示することで足りる。
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(注2)法第300条の2に規定する特定保険契約(以下、「特定保険契約」という。)については、法第294条第1項の規定は適用されず、法第300条の2で準用する金融商品取引法(以下、「準用金融商品取引法」という。)第37条の3第1項に規定する書面(以下、「契約締結前交付書面」という。)を交付又はこれに代替する電磁的方法による提供を行う必要があることに留意すること。
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ア. 「契約概要」の項目
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(ア)当該情報が「契約概要」であること。
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(イ)商品の仕組み
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(ウ)保障(補償)の内容
(注)保険金等の支払事由、支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合について、それぞれ主なものを記載すること。
保険金等を支払わない場合が通例でないときは、特に記載すること。
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(エ)付加できる主な特約及びその概要
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(オ)保険期間
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(カ)引受条件(保険金額等)
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(キ)保険料に関する事項
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(ク)保険料払込みに関する事項(保険料払込方法、保険料払込期間)
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(ケ)配当金に関する事項(配当金の有無、配当方法、配当額の決定方法)
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(コ)解約返戻金等の有無及びそれらに関する事項
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イ. 「注意喚起情報」の項目
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(ア)当該情報が「注意喚起情報」であること。
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(イ)クーリング・オフ(法第309条第1項に規定する保険契約の申込みの撤回等)
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(ウ)告知義務等の内容
(注)危険増加によって保険料を増額しても保険契約が継続できない(保険期間の中途で終了する)場合がある旨の約款の定めがあるときは、それがどのような場合であるか、記載すること。
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(エ)責任開始期
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(オ)支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合のうち主なもの。
(注)通例でないときは、特に記載すること。
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(カ)保険料の払込猶予期間、契約の失効、復活等
(注)保険料の自動振替貸付制度を備えた保険商品については、当該制度の説明を含む。
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(キ)解約と解約返戻金の有無
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(ク)セーフティネット
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(ケ)手続実施基本契約の相手方となる指定ADR機関(法第2条第28項に規定する「指定紛争解決機関」をいう。以下同じ。)の商号又は名称(指定ADR機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容)
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(コ)補償重複に関する以下の事項
(注)補償重複とは、複数の損害保険契約の締結により、同一の被保険利益について同種の補償が複数存在している状態をいう。
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a.補償内容が同種の保険契約が他にある場合は、補償重複となることがあること
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b.補償重複の場合の保険金の支払に係る注意喚起
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c.補償重複の主な事例
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(サ)特に法令等で注意喚起することとされている事項
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準用金融商品取引法第37条の3関係
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ア. 保険会社又は保険募集人は、契約締結前交付書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供を行う場合、特定保険契約の種類及び性質等に応じて適切に行っているか。
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イ. 契約締結前交付書面に関し、「契約概要」と「注意喚起情報」を作成し、交付しているか。
なお、契約締結前交付書面の主な項目は以下のとおりとする。
(注)「契約概要」と「注意喚起情報」について、同一媒体を用いて一体で作成する場合、「契約締結前交付書面の内容を十分に読むべきこと」を契約締結前交付書面の冒頭に記載し、以下の(ア)a.及び(イ)a.を省略することができる。
また、この場合、以下の(ア)b.及び(イ)d.はどちらか一方を省略することができる。
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(ア)「契約概要」の項目(準用金融商品取引法第37条の3第1項第3号等関係)
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a. 当該情報が「契約概要」であり、その内容を十分に読むべきこと。
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b. 保険会社の商号又は名称及び住所
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(注)その連絡方法についても、明示すること。
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c. 商品の仕組み
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d. 保障(補償)の内容
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(注)保険金等の支払事由、支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合について、それぞれ主なものを記載すること。
保険金等を支払わない場合が通例でないときは、特に記載すること。
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e. 付加できる主な特約及びその概要
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f . 保険期間
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g. 引受条件(保険金額等)
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h. 保険料に関する事項
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i . 保険料払込みに関する事項(保険料払込方法、保険料払込期間)
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j . 配当金に関する事項(配当金の有無、配当方法、配当額の決定方法)
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k. 解約返戻金等の水準及びそれらに関する事項
以下に掲げる商品については、各商品ごとに以下の項目も記載するものとする。
(変額保険、変額年金保険)
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l . 特別勘定に属する資産の種類及びその評価方法
-
m. 特別勘定に属する資産の運用方針
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n. 諸費用に関する事項(保険契約関係費、資産運用関係費等)
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o. 特別勘定に属する資産の運用実績により将来における保険金等の額が変動し、不確実であること及び損失が生ずることとなるおそれがあること。
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p. 上記l .からo.の項目のほか、規則第234条の21の2第1項第8号に規定する書面を参照すること。
(外貨建て保険)
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l . 保険金等の支払時における外国為替相場により円に換算した保険金等の額が、保険契約時における外国為替相場による円に換算した保険金等の額を下回る場合があること及び損失が生ずることとなるおそれがあること。
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m. 外国通貨により契約を締結することにより、特別に生じる手数料等の説明
(MVA(Market Value Adjustment)(注)を利用した商品)
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l . 市場金利に応じた運用資産の価格変動を解約返戻金額に反映させる保険であることの説明
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m. 保険契約の締結から一定の期間内に解約された場合、解約返戻金額が市場金利に応じて計算されるため、損失が生ずることとなるおそれがあること。
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n. 解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、解約に伴う運用資産の売却に係る取引費用等に備えるために係数を定める場合、その係数が及ぼす影響(解約時の保険料積立金に対して控除される割合の例示等)
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o . 諸費用に関する事項 (運用期間中の費用等)
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(注)MVA(Market Value Adjustment)とは、保険料積立金(保険法第63条及び第92条に規定する保険料積立金をいう。)に契約時と解約時の金利差によって生じる運用対象資産の時価変動に基づく調整を加えたものを解約返戻金とする仕組みをいう。
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-
(イ)「注意喚起情報」の項目(準用金融商品取引法第37条の3第1項第7号(規則第234条の24)等関係)
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a. 当該情報が「注意喚起情報」であり、その内容を十分に読むべきこと。
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b. 諸費用に関する事項の概要
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c. 損失が生ずるおそれがあること。
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(注1)当該損失の直接の原因となる指標及び当該指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある理由についても明示すること。
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(注2)上記b.及びc.は、「注意喚起情報」の冒頭の枠の中で記載すること。
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d. 保険会社の商号又は名称及び住所
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(注)その連絡方法についても、明示すること。
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e. クーリング・オフ(法第309条第1項に規定する保険契約の申込みの撤回等)
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f . 告知義務等の内容
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(注)危険増加によって保険料を増額しても保険契約が継続できない(保険期間の中途で終了する)場合がある旨の約款の定めがあるときは、それがどのような場合であるか、記載すること。
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g. 責任開始期
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h. 支払事由に該当しない場合及び免責事由等の保険金等を支払わない場合のうち主なもの。
-
(注)通例でないときは、特に記載すること。
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i . 保険料の払込猶予期間、契約の失効、復活等
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(注)保険料の自動振替貸付制度を備えた保険商品については、当該制度の説明を含む。
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j . 解約と解約返戻金の水準
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k . セーフティネット
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l . 租税に関する事項の概要
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m. 対象事業者となっている認定投資者保護団体の有無(対象事業者となっている場合にあっては、その名称を含む。)
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n. 手続実施基本契約の相手方となる指定ADR機関の商号又は名称(指定ADR機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容)
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o. 特に法令等で注意喚起することとされている事項
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ウ. 契約締結前交付書面に関し、法定要件(文字の大きさは8ポイント以上とし、一定の事項について12ポイント以上とすること等)に則して作成し、交付しているか。
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エ. 契約締結前交付書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供を行うことに関し、あらかじめ、顧客の知識・経験・財産の状況及び特定保険契約を締結する目的に照らし、書面の内容が当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によって説明を行っているか。
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オ. 生命保険における法第100条の5第1項に規定する運用実績連動型保険契約に係る契約締結前交付書面の記載事項については、以下の点に留意しているか。
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(ア)規則第234条の24第1項第9号の2ロに規定する「財務又は業務(運用実績連動型保険契約に係るものに限る。)に関する外部監査」には、以下のもの(これらに相当するものを含む。)が該当する。
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a. 金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明に係るもの(以下、「財務諸表監査」という。)及び同条第2項の規定に基づく監査証明に係るもの(以下、「内部統制監査」という。)
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b. 会社法に基づく会計監査人による監査
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c. 監査・保証実務委員会実務指針第86号「受託業務に係る内部統制の保証報告書」(日本公認会計士協会)、Statement on Standards for Attestation Engagements (SSAE) No.16 「Reporting on Controls at a Service Organization」(米国公認会計士協会)、International Standard on Assurance Engagements (ISAE) No.3402 「Assurance Reports on Controls at a Service Organization」(国際監査・保証基準審議会)等の基準に基づく受託企業の内部統制に関する保証業務(以下、「内部統制保証業務」という。)
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d.資産運用業務を行う会社のパフォーマンス開示がグローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)に準拠しているかに関する検証
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(イ)規則第234条の24第1項第15号の規定に基づき、契約締結前交付書面に規則第53条の2第2項各号に掲げる事項を記載する場合、同項第3号の「当該保険会社とファンド関係者との間の資本関係」については、ファンド関係者が保険会社の総株主等の議決権の過半数を保有している者その他の当該保険会社と密接な関係を有する者として令第13条の8第1項各号に掲げる者及び子会社等に該当する場合に、その旨を記載する。
また、規則第53条の2第2項第3号の当該保険会社とファンド関係者との間の「人的関係」については、合理的と認められる一定の時点における役職員の兼職状況を記載する。
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規則第227条の2第3項第9号及び規則第234条の21の2第1項第7号に規定する「被保険者のために積み立てられている額」には、規則第10条第3号に規定する契約者価額の計算の基礎とする額並びに規則第30条の5第1項第1号(社員配当準備金)、規則第70条第1項第1号ロ(未経過保険料)、第3号(払戻積立金)及び第4号(契約者配当準備金等)等が含まれる。
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規則第227条の2第3項第9号及び規則第234条の21の2第1項第7号に規定する「既契約と新契約が対比できる方法」が以下のとおりとなっているか。
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ア. 規則第227条の2第3項第9号イ及び規則第234条の21の2第1項第7号イに規定する事項について、書面又は電磁的記録に既契約及び新契約に関して記載項目毎に対比して記載する。
-
イ. 上記ア.にかかわらず、以下に掲げる場合には、既契約及び新契約に関して規則第227条の2第3項第9号イ及び規則第234条の21の2第1項第7号イに規定する事項が記載されたそれぞれの書面又は電磁的記録を交付して対比することも可能とする。
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(ア)保険種類が異なり、かつ、既契約及び新契約(いずれも特約を含む。)の保障内容又は担保内容が全く異なるもの。
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(イ)複数の既契約を一の新契約にする場合等既契約及び新契約の契約内容やシステム上の問題等により、記載項目毎に対比して記載(上記ア.をいう。)しない合理的な理由があるもの。
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規則第227条の2第3項第9号及び規則第234条の21の2第1項第7号に規定する既契約と新契約の対比について適切に行っているか。
なお、規則第227条の2第3項第9号イに規定する「その他保険契約に関する重要な事項」及び規則第234条の21の2第1項第7号イに規定する「その他特定保険契約に関する重要な事項」とは、以下に掲げる事項をいう。
・保険料の払込方法、契約者配当又は社員に対する剰余金の分配の有無、予定利率の変動によって保険料が引き上げとなる事実、その他保険契約の特性から重要と認められる事項、のうち該当する事項
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規則第227条の2第3項第9号ロ及び規則第234条の21の2第1項第7号ロに規定する保障内容を見直す方法について、交付する書面又は電磁的記録に適切に記載しているか。
なお、規則第227条の2第3項第9号ロ及び規則第234条の21の2第1項第7号ロに規定する「既契約を継続したまま保障内容を見直す方法」とは、以下に掲げる方法をいう。
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ア. 既契約に特約を中途付加する方法
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イ. 既契約に追加して、他の保険契約を締結する方法 等
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規則第227条の2第3項第11号及び規則第234条の21の2第1項第9号に掲げる書面において、予定発生率の合理性を記載するにあたっては、基礎率変更権の設定に伴い、予定発生率を安易に変更して保険料等の変更を行うものではないことを保険契約者に示す観点から、予定発生率が合理的な基礎データに基づいて設定されていることを記載しているか。
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情報提供義務の適用除外(規則第227条の2)
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ア. 規則第227条の2第3項第3号イに規定される場合においても、保険会社又は保険募集人は、顧客が個人事業主であるか、法人であるかを問わず、顧客の保険に係る知識の程度に応じて、適切な説明を行う必要がある。
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イ. 規則第227条の2第3項第3号ロに規定される額については、一契約単位(主契約+特約)の金額(団体保険の場合には被保険者一人当たりの金額)で判断することとする。
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ウ. 規則第227条の2第9項第1号イに規定される保険契約とは、例えば、世帯主が家族に対して保険をかけたうえで、保険料は世帯主が負担する場合や、法人がその被用者を被保険者として保険契約を締結する場合であって保険料を当該法人自身が負担する場合などが考えられる。
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(注)明確に被保険者に保険料負担を求めるものではないが、物品等の通常販売価格及び市場価格との比較並びに保険給付のために必要な保険料の額が物品等の価格に占める割合などから、被保険者が負担する実質的な保険料があると解される場合があることに留意する必要がある。
なお、保険法に基づき被保険者の同意が求められる場合には、被保険者に対して、当該同意の可否を判断するに足りる情報が提供される必要があることに留意する必要がある。
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エ. 規則第 227 条の 2 第 8 項に規定される場合においては、予めいずれの者が保険契約者及び被保険者に対し情報の提供を行うか取決めを行っておくなど、情報の提供が行われるよう措置を講じる必要がある。
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オ. 主たる商品の販売等に係る販売促進目的の保険商品については、被保険者の意思決定を要さず、当該主たる商品の販売等との関連性を有するものとして、保険料等が主たる商品の販売等と比べ、社会通念上、景品(おまけ)程度のものであると考えられるものは、規則第227条の2第9項第1号ハに掲げる保険契約に該当するものとする。
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情報提供義務に係る体制整備関係
保険会社及び保険募集人は、規則第53条第1項第4号及び規則第53条の7、規則第227条の7に規定する措置に関し、「契約概要」及び「注意喚起情報」を記載した書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供を行うために、以下のような体制を整備しているか。
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ア. 当該書面(当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。以下、Ⅱ-4-2-2(2)⑩において同じ。)において、顧客に対して、保険会社における苦情・相談の受付先を明示する措置を講じているか。
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イ. 「注意喚起情報」を記載した書面において、手続実施基本契約の相手方となる指定ADR機関の商号又は名称(指定ADR機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容)を明示する措置を講じているか。
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ウ. 当該書面に記載すべき事項について、以下の点に留意した記載とする措置を講じているか。(「 II -4-10 適切な表示の確保」参照)
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(ア)文字の大きさや記載事項の配列等について、顧客にとって理解しやすい記載とされているか。
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(注)例えば、文字の大きさを8ポイント以上とすること、文字の色、記載事項について重要度の高い事項から配列する、グラフや図表の活用などの工夫(特に、特定保険契約に係る契約締結前交付書面については、法定要件(文字の大きさは8ポイント以上とし、一定の事項について12ポイント以上とすること等)に則して作成する必要があることに留意すること。)。
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(イ)記載する文言の表示にあたっては、その平明性及び明確性が確保されているか。
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(注)例えば、専門用語について顧客が理解しやすい表示や説明とされているか。顧客が商品内容を誤解するおそれがないような明確な表示や説明とされているか。
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(ウ)顧客に対して具体的な数値等を示す必要がある事項(保険期間、保険金額、保険料等)については、その具体的な数値が記載されているか。
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(注)具体的な数値等を記載することが困難な場合は、顧客に誤解を与えないよう配慮のうえ、例えば、代表例、顧客の選択可能な範囲、他の書面の当該数値等を記載した箇所の参照等の記載を行うこと。
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(エ)当該書面に記載する情報量については、顧客が理解しようとする意欲を失わないよう配慮するとともに、保険商品の特性や複雑性にあわせて定められているか。
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(オ)当該書面は他の書面とは分離・独立した書面とする、又は同一の書面とする場合は、他の情報と明確に区別し、重要な情報であることが明確になるように記載されているか。
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エ. 顧客に当該書面の交付又はその他適切な方法(電磁的方法を含む)による提供を行うことに加えて、少なくとも以下のような情報の提供及び説明が口頭により行われる体制が整備されているか。
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(ア)当該書面を読むことが重要であること。
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(イ)主な免責事由など顧客にとって特に不利益な情報が記載された部分を読むことが重要であること。
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(ウ)特に、乗換(法第300条第1項第4号に規定する既契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既に成立している保険契約を消滅させること。)、転換(規則第227条の2第3項第9号及び規則第234条の21の2第1項第7号に規定する既契約を消滅させると同時に、既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額を、新契約の責任準備金又は保険料に充当することによって保険契約を成立させること。)の場合は、これらが顧客に不利益になる可能性があること。
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オ. 当該書面の交付又はその他適切な方法(電磁的方法を含む)による提供にあたって、契約締結に先立ち、顧客が当該書面の内容を理解するための十分な時間が確保される体制が整備されているか。
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(注1)「注意喚起情報」を記載した書面については、顧客に対して効果的な注意喚起を行うため、契約の申込時に説明・交付することでも足りる。
ただし、投資性商品である特定保険契約にあっては、リスク情報を含む「注意喚起情報」を記載した書面についても、「契約概要」を記載した書面と同じ機会に交付することにより、顧客がその内容を理解するための十分な時間が確保されるべきことに留意すること。
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(注2)顧客に対する十分な時間の確保にあたっては、保険商品の特性や販売方法を踏まえる一方、顧客の理解の程度やその利便性が損なわれないかについて考慮するものとする。
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カ. 電話・郵便・インターネット等のような非対面・非接触の方式(テレビ会議システム(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識できる方法をいう。)を含む。以下同じ。)による情報の提供及び説明を行う場合は、上記ア.からオ.に規定する内容と同程度の情報の提供及び説明が行われる体制が整備されているか。
例えば、少なくとも以下のような方法により、顧客に対して適切な情報の提供や説明が行われている必要がある。
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(ア)電話による場合
顧客に対して口頭にて説明すべき事項を定めて、当該書面の内容を適切に説明するとともに、当該書面を読むことが重要であることを口頭にて説明のうえ、郵便等の方法により遅滞なく当該書面を交付又はこれに代替する電磁的方法により提供する方法
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(イ)郵便による場合
当該書面を読むことが重要であることを顧客が十分認識できるような記載を行ったうえで、当該書面を顧客に送付又はこれに代替する電磁的方法により提供する方法
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(ウ)インターネット等による場合
当該書面の記載内容、記載方法等に準じて電磁的方法による表示を行ったうえで、当該書面を読むことが重要であることを顧客が十分認識できるよう電磁的方法による説明を行う方法
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(注1)上記エ.に規定する内容と同程度とは、例えば、郵便の場合は書面への記載、インターネット等の場合は電磁的方法による表示により、口頭による情報の提供及び説明に代えることが考えられる。
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(注2)郵便による場合、当該書面を読むことが重要であることを顧客が十分認識できるような書面を併せて送付することでも足りる。
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(注3)インターネット等による場合、当該書面の郵送等に代えて、印刷や電磁的方法による保存などの手段が考えられる。
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キ. 規則第227条の2第2項に定める団体保険について、保険契約者である団体が被保険者となる者に対して加入勧奨を行う場合は、上記ア.からカ.に規定する内容について、保険会社又は保険募集人が顧客に対して行うのと同程度の情報の提供及び説明が適切に行われることを確保するための措置が講じられているか。
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ク. 規則第227条の2第3項第6号、第7号、第9号及び規則第234条の21の2第1項第4号から第7号までに定める書面の交付(電磁的方法により代替して交付する場合を除く)に関して、保険契約者から書面を受領した旨の確認を得ることについて、保険会社の従業員及び保険募集人に対する教育・管理・指導を行う体制が整備されているか。
また、保険会社の従業員及び保険募集人による受領確認の実施状況を調査・把握する体制が整備されているか。
当該書面を電磁的方法により代替して交付する場合には、保険契約者の承諾を得た上で適切な手段により提供する措置をとる体制が整備されているか。 -
ケ. 既契約及び新契約に関して規則第227条の2第3項第9号イ及び規則第234条の21の2第1項第7号イに規定する事項が記載されたそれぞれの書面を交付又はこれに代替する電磁的方法による提供により対比する場合には、当該書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供にあたって既契約と新契約の対比説明を徹底する等、保険契約者等の保護に欠けることのないよう措置を講じているか。
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コ. 顧客から「契約概要」及び「注意喚起情報」を記載した書面、契約締結前交付書面並びに規則第227条の2第3項第9号及び規則第234条の21の2第1項第7号に定める書面の記載事項を了知した旨を十分に確認し、事後に確認状況を検証できる態勢にあるか。とりわけ、これらの書面をインターネット等の非対面・非接触の方式で電磁的方法により提供する場合であっても、対面の方式で書面を交付して説明する場合と同程度に、顧客が書面の記載事項を了知した旨の確認を適切に行っているか。
(注) インターネット等の非対面・非接触の方式で電磁的方法により提供する場合に顧客が書面の記載事項を了知した旨の確認をする方法としては、例えば、テレビ会議システムを利用したうえで、適宜、書面の記載事項を画面上に表示して説明を行うとともに、顧客とのコミュニケーションを通じて、その了知の有無を確認することが考えられる。
映像によって顧客の了知の確認ができない方式においては、必要に応じて電話等で補足をすること、書面を全て閲覧しないと申込みのページに遷移できない仕組みとすることや、当該書面の内容を読んで了知したことについての質問及びチェックボックスを設けること等の措置を、顧客の特性等に応じて組み合わせることによって、顧客の了知の有無を確認することが考えられる。
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保険募集人が顧客に対して明らかにする氏名に係る態勢整備関係
法第294条第3項及び規則第227条の2第10項第1号に規定する保険募集人が顧客に対して明らかにする氏名について、旧氏(保険業法施行規則第214条第1項第4号に規定する「旧氏」をいう。以下同じ。)を使用する場合は、保険会社において、保険募集人として登録・届出を行っている氏名と顧客に対して明らかにする氏名を適切に管理する態勢を整備した上で、旧氏を使用することができる。
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(3)法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)
保険会社又は保険募集人は、法第294条の2の規定に基づき、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際して、顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行っているか。
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意向把握・確認の方法
意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度等を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図っているか。そのために、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。
具体的には、例えば、以下のア.からエ.のような方法が考えられる。-
ア. 保険金額や保険料を含めた当該顧客向けの個別プランを説明・提案するにあたり、当該顧客の意向を把握する。その上で、当該意向に基づいた個別プランを提案し、当該プランについて当該意向とどのように対応しているかも含めて説明する。
その後、最終的な顧客の意向が確定した段階において、その意向と当初把握した主な顧客の意向を比較し、両者が相違している場合にはその相違点を確認する。
さらに、契約締結前の段階において、当該意向と契約の申込みを行おうとする保険契約の内容が合致しているかどうかを確認(=「意向確認」)する。-
(注1)事前に顧客の意向を把握する場合、例えば、アンケート等により把握することが考えられる。
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(注2)顧客の意向を把握することには、例えば、性別や年齢等の顧客属性や生活環境等に基づき推定するといった方法が含まれる。この場合においては、個別プランの作成・提案を行う都度、設計書等の交付書類の目立つ場所に、推定(把握)した顧客の意向と個別プランの関係性をわかりやすく記載し説明するなど、どのような意向を推定(把握)して当該プランを設計したかの説明を行い、当該プランについて、当該意向とどのように対応しているかも含めて説明することが考えられる。
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(注3)自動車や不動産購入等に伴う補償を望む顧客に係る意向の把握及び説明・提案については、顧客自身が必要とする補償内容を具体的にイメージしやすく、そのため意向も明確となることから、主な意向・情報を把握したうえで、個別プランの作成・提案を行い、主な意向と個別プランの比較を記載するとともに、保険会社又は保険募集人が把握した顧客の意向と個別プランの関係性をわかりやすく説明することが考えられる。
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イ. 規則第227条の2第3項第3号イに規定する事業者の事業活動に伴って生ずる損害をてん補する保険契約については、顧客の保険に係る知識の程度や商品特性に応じて適切な意向把握及び意向確認を行うものとする。
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ウ. 規則第227条の2第3項第3号ロに規定する一年間に支払う保険料の額(保険期間が一年未満であって保険期間の更新をすることができる保険契約にあっては、一年間当たりの額に換算した額)が五千円以下である保険契約における意向把握については、商品内容・特性に応じて適切に行うものとする。
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エ. 規則第227条の2第2項に定める団体保険の加入勧奨については、 II -4-2-2(3)イ.(注)に定める措置を講じるものとする。
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意向把握・確認の対象
例えば、以下のような顧客の意向に関する情報を把握・確認しているか。
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ア. 第一分野の保険商品及び第三分野の保険商品について
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(注)変額保険、変額年金保険、外貨建て保険等の投資性商品を含み、海外旅行傷害保険商品及び保険期間が1年以下の傷害保険商品(契約締結に際し、保険契約者又は被保険者が告知すべき重要な事実又は事項に被保険者の現在又は過去における健康状態その他の心身の状況に関する事実又は事項が含まれないものに限る。)を除く。
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(ア)どのような分野の保障を望んでいるか。
(死亡した場合の遺族保障、医療保障、医療保障のうちガンなどの特定疾病に備えるための保障、傷害に備えるための保障、介護保障、老後生活資金の準備、資産運用など)
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(イ)貯蓄部分を必要としているか。
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(ウ)保障期間、保険料、保険金額に関する範囲の希望、優先する事項がある場合はその旨
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(注)変額保険、変額年金保険、外貨建て保険等の投資性商品については、例えば、収益獲得を目的に投資する資金の用意があるか、預金とは異なる中長期の投資商品を購入する意思があるか、資産価額が運用成果に応じて変動することを承知しているか、市場リスクを許容しているか、最低保証を求めるか等の投資の意向に関する情報を含む。
なお、市場リスクとは、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずるおそれをいう。
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イ. 第二分野の保険商品について
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(注)上記イ.に該当する保険商品は、第二分野の保険商品のほか、海外旅行傷害保険商品及び保険期間が1年以下の傷害保険商品(契約締結に際し、保険契約者又は被保険者が告知すべき重要な事実又は事項に被保険者の現在又は過去における健康状態その他の心身の状況に関する事実又は事項が含まれないものに限る。)を含む。
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(ア)どのような分野の補償を望んでいるか。
(自動車保険、火災保険などの保険の種類)
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(イ)顧客が求める主な補償内容
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(注)意向の把握にあたっては、例えば、以下のような情報が考えられる。
・自動車保険については、若年運転者不担保特約、運転者限定特約、車両保険の有無など
・火災保険については、保険の目的、地震保険の付保の有無など
・海外旅行傷害保険については、補償の内容・範囲、渡航者、渡航先、渡航期間など
・保険期間が1年以下の傷害保険については、補償の内容・範囲など
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(ウ)補償期間、保険料、保険金額に関する範囲の希望、優先する事項がある場合はその旨
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意向把握・確認義務の適用除外(規則第227条の6関係)
既存契約の更新や一部変更の場合において、実質的な変更に該当する場合は、当該変更部分について適切に意向把握・確認を行うものとする。
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意向把握・確認義務に係る体制整備関係
保険会社及び保険募集人においては、法第294条の2に規定する措置に関し、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客の意向に合致した内容であることを顧客が確認する機会を確保し、顧客が保険商品を適切に選択・購入することを可能とするため、そのプロセス等を社内規則等で定めるとともに、所属する保険募集人に対して適切な教育・管理・指導を実施するほか、以下のような体制が整備されているか。
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ア. 意向把握に係る体制整備
保険会社又は保険募集人のいずれか、又は双方において、意向把握に係る業務の適切な遂行を確認できる措置を講じているか。例えば、適切な方法により、保険募集のプロセスに応じて、意向把握に用いた帳票等(例えば、アンケートや設計書等)であって、 II -4-2-2(3)ア.に規定する顧客の最終的な意向と比較した顧客の意向に係るもの及び最終的な意向に係るものを保存するなどの措置を講じているか。
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(注)顧客の意向に関する情報の収集や提供等に際しては、個人情報の保護に関する法律(利用目的の明示や第三者提供に係る同意等)や銀行等の窓口販売における弊害防止措置などの関係法令等を遵守する必要があることに留意する。
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イ. 意向確認に係る体制整備
規則第53条の7第1項及び規則第227条の7に規定する措置に関し、保険会社又は保険募集人において、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客の意向に合致した内容であることを顧客が確認する機会を確保し、顧客が保険商品を適切に選択・購入することを可能とするため、適切な遂行を確認できる措置を講じているか。II -4-2-2(3)ア.からウ. 又はこれと同等の方法を用いる場合においては、以下の措置を講じているか。
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(注)規則第227条の2第2項に定める団体保険について、保険契約者である団体が被保険者となる者に対して加入勧奨を行う場合は、保険商品が被保険者の意向に合致した内容であることを確認する機会を確保するため、以下の(ア)から(サ)までのような体制整備と同程度の措置を講じるものとする。
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(ア)意向確認書面の作成・交付
契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客の意向に合致しているものかどうかを、顧客が契約締結前に最終的に確認する機会を確保するために、顧客の意向に関して情報を収集し、保険商品が顧客の意向に合致することを確認する書面(以下、「意向確認書面」という。)を作成し、顧客に交付するとともに、保険会社等において保存するものとされているか。
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(イ)意向確認書面の記載事項
意向確認書面には、以下の事項が記載されているか。
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a. 顧客の意向に関する情報
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b. 保険契約の内容が当該意向とどのように対応しているか。
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c. その他顧客の意向に関して特に記載すべき事項
例えば、特記事項欄等を設け、以下のような情報を記載することが考えられる。
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(a)当該保険契約の内容では顧客の意向を全部又は一部満たさない場合はその旨
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(b)特に顧客から強く要望する意向があった場合や個別性の強い意向を顧客が有する場合はその意向に関する情報
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(c)当該保険契約の内容が顧客の意向に合致することを確認するために最低限必要な情報が提供されなかった場合はその旨
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d. 保険募集人の氏名・名称
顧客に対して当該書面の作成責任者を明らかにするために記載されているか。
なお、保険募集人が旧氏を使用する場合には、保険会社において、保険募集人として登録・届出を行っている氏名と顧客に対して明らかにする氏名を適切に管理する態勢を整備する必要がある。
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(ウ)意向確認書面の記載方法
意向確認書面は顧客にとって分かりやすい記載とされているか。
なお、顧客の意向に関する情報については、例えば、当該書面に予め想定される顧客の意向に関する情報の項目を列挙するといった方法も認められるが、その場合は、予め想定できない顧客の意向に関する情報(上記(イ)c.)を記載するため、特記事項欄等を設けるものとする。
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(エ)意向確認書面の確認・交付時期
意向確認書面により、保険契約を締結するまでに、顧客が申込みを行おうとしている保険契約の内容が顧客の意向と合致しているか否かの確認を行う措置を講じているか。
また、顧客が確認した意向確認書面は、顧客の確認後、遅滞なく顧客へ交付する措置を講じているか。
なお、顧客が即時の契約締結を求めている場合や電話による募集の場合など当該書面の即時の交付が困難な場合は、顧客の利便性を考慮し、意向確認書面に記載すべき内容を口頭にて確認のうえ、意向確認書面を事後に遅滞なく交付することでも足りる。
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(オ)意向確認書面の記載内容の確認・修正
意向確認書面の記載内容のうち、特に顧客の意向に関する情報(上記(イ)a.及びc.)については、顧客に対して事実に反する記載がないかを確認するとともに、顧客から当該部分の記載の修正を求められた場合には速やかに対応を行うこととされているか。
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(カ)保険契約の内容に関する意向の確認
顧客が申込みを行おうとする保険契約の内容のうち、顧客が自らの意向に合致しているかの確認を特に必要とする事項(主契約や特約ごとの具体的な保障(補償)内容、保険料(保険料払込方法、保険料払込期間を含む。)及び保険金額、保障(補償)期間、配当の有無など)については、意向確認書面に確認のための設問を設ける等の方法により、顧客に対して再確認を促すような工夫がなされているか。
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(キ)意向確認書面の媒体等
意向確認書面については、顧客における保存の必要性を考慮し、書面(これに代替する電磁的方法を含む。以下、 Ⅱ-4-2-2(3)④ (キ)において同じ。)により交付することとされているか。
なお、必ずしも独立した書面とする必要はないが(申込書と一体で作成することも可能と考えられる。)、他の書面と同一の書面とする場合には、意向確認書面に該当する部分を明確に区別して記載する必要があることに留意すること。
また、当該書面は保険会社又は保険募集人と顧客の双方が確認するために交付される書面であることから、保険会社又は保険募集人においても書面等を事後的に確認できる方法により保存することとされているか。
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(注)電子メール等の電磁的方法による交付を行う場合は、顧客の了解を得ていること及び印刷又は電磁的方法による保存が可能であることが必要である。
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(ク)顧客が意向確認書面の作成及び交付を希望しない場合の対応
顧客が当該書面の作成及び交付を希望しない場合は、顧客に対して、当該書面の役割(契約の申込みを行おうとする保険契約の内容が顧客の意向に合致するか否かを保険会社又は保険募集人及び顧客の双方が確認するための書面であること等)を書面等により説明するとともに、事後に顧客が意向確認書面の作成及び交付を希望しなかったことが検証できる態勢にあるか。
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(ケ)意向確認書面の記載事項等の検証等
意向確認書面の作成及び交付については、保険商品の特性や販売方法の状況の変化に応じて、また顧客等からの苦情・相談の内容を踏まえながら、その記載事項や記載方法、収集すべき顧客の意向に関する情報及びその収集方法等について検証のうえ、必要に応じ見直しを行うこと等の適切な措置が講じられているか。
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(コ)顧客が保険契約の内容等を誤解していること等が明らかな場合の対応
顧客が保険契約の内容等について、理解していない又は誤解していることが明らかである場合は、より分かりやすい説明及び誤解の解消に努めることとされているか。
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(サ)取り扱える保険会社の範囲の説明等
保険募集人が取り扱える保険会社の範囲(例えば、専属か乗合か、乗合の場合には取り扱える保険会社の数等の情報等)を説明するとともに、顧客が告知を行おうとする際には、告知受領権の有無についてその説明が行われることとされているか。
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(4)規則第227条の2第2項に該当しない団体保険の加入勧奨に係る体制整備関係
カード会社や金融機関等が契約者となり、その会員や預金者等が被保険者となる団体等、保険契約者と被保険者との間の密接性、両者の当該団体保険に係る利害関係及び団体の構成員となるための要件等に照らし、保険契約者と被保険者との間に一定程度の密接な関係が認められない団体を被保険者団体とする保険については、規則第227条の2第2項の規定に該当しないことから、当該団体保険を締結した又は取扱った保険会社又は保険募集人(自ら団体保険を取扱った団体を含む。)が加入勧奨における情報提供及び意向把握・確認等を行う場合においては、以下のような体制が整備されているか。
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加入勧奨にあたっては、例えば、法第300条第1項に規定する禁止行為の防止など、募集規制に準じた取扱いが求められ、募集規制の潜脱が行われないような適切な措置が講じられているか。
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カード会社や金融機関等が契約者となり、その会員や預金者等が被保険者となるような団体等においては、当該団体保険の被保険者のクレジットカードや預金口座の解約等により保障(補償)が喪失する場合は、その旨を「注意喚起情報」を記載した書面に記載し、被保険者に適切に説明する体制を整備し、対応しているか。
また、クレジットカードや預金口座を解約等した場合、当該解約により、保障(補償)が喪失する場合は、その旨を適切に説明する体制を整備し、対応しているか。
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保険募集を行う銀行等が契約者となり、その預金者が被保険者となる団体保険の加入勧奨にあたっては、 II -4-2-6-2から II -4-2-6-10を踏まえた適切な措置が講じられているか。
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電話による加入勧奨を行う場合には、 II -4-4-1-1(5)を踏まえた適切な措置が講じられているか。
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(5)顧客の意向に基づかない補償重複に係る対応
保険会社又は保険募集人は、補償重複のうち、顧客の意向に基づかないものについて、その発生防止や解消を図る観点から、新規契約や契約の更新・更改(以下、「新規契約等」という。)にあたって、顧客に対し、補償重複に係る説明等が十分かつ適切に行われることを確保するため、以下の取組みを行っているか。
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社内規則等において、補償重複に係る説明の確実な実施方法等、補償重複に係る対応を実施するための必要事項を適切に定めているか。
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保険募集人に対して、補償重複に関する適切な教育・管理・指導を行っているか。
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自社で取り扱う保険商品(特約を含む。)のうち、組み合わせて契約した場合に補償重複となる保険商品の組合せの一覧を作成しているか。
また、新たな保険商品の販売開始時等、必要に応じて一覧の見直しを行っているか。
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新規契約等における商品説明にあたっては、顧客に対し、当該保険商品と組み合わせて契約した場合に、補償重複となる保険に既に加入していないかを確認することとしているか。
また、補償重複に該当する保険に既に加入している場合には、保険料と保険金の関係について明示的に説明したうえで、顧客の意向の有無を確認し、当該顧客の意向を踏まえた適切な内容の補償を提供しているか。
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補償重複に係る顧客に対する確認・説明の実態を把握・検証できる態勢を構築しているか。
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(6)法第295条関係(損害保険代理店に係る自己契約の禁止)
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自己契約
以下に留意しつつ、代申会社(法第284条に基づき代理人として登録の申請等を行う所属保険会社をいう。以下同じ。)において損害保険代理店の自己契約の状況を把握し、厳正に管理・指導をしているか。
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ア. 自己契約の計算対象から除外する保険契約は、以下のとおりとする。
ただし、いずれの契約にあっても実質的な保険料負担は損害保険代理店以外の被保険利益を有する者が行うものに限る。
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(ア)第三者の所有物につき輸送、保管などの受託業務を行う者が、当該受託貨物につき委託者のために締結する保険契約
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(イ)輸出CIF又はC&I売買契約に係る貨物海上保険契約
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(ウ)輸入FOB又はC&F売買契約における本船積込み後のリスク担保の貨物海上保険契約のうち、第三者から委託を受けて輸入する貨物に係る貨物海上保険契約
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(エ)上記(イ)、(ウ)に準ずる国内売買契約に基づき国内相互間を輸送させる貨物に係る貨物海上及び運送保険契約
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(オ)自動車製造業者、販売業者又は陸送業者から最終需要者に引き渡されるまでの過程にある販売用自動車(販売の目的をもって製造若しくは整備された自動車)につき、当該自動車の製造業者、販売業者又は陸送業者が締結する自動車に関する保険契約
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(カ)旅行業者が旅行業法に基づき締結する主催旅行に係る保険契約
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(キ)割賦販売業者又はリース業者が販売物件又はリース物件につき締結する保険契約
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イ. 自己契約に係る保険料の計算にあたっては、以下のとおり取り扱う。
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(ア)自己物件と他人物件が混同する保険契約の場合で、自己契約に該当する保険料が明確に区分されないときは、その全額を自己契約に該当するものとみなす。
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(イ)保険期間の途中で、自己物件が他人物件に、他人物件が自己物件に変更になった場合には、自己契約に係る保険料は期間按分して算定することができる。
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特定契約
損害保険代理店が、自らと人的又は資本的に密接な関係を有する者を保険契約者又は被保険者とする保険契約(以下、「特定契約」という。)の保険募集を主たる目的(取扱保険料に占める特定契約の保険料の割合が5割を超えること)とすることは、法第295条の趣旨に照らし問題があるため、以下に留意しつつ、自己契約と同様に状況を把握し、厳正に管理・指導を行い、もって保険募集の公正を確保し、損害保険代理店の自立化の促進に努めているか。
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ア. 以下に掲げる者(以下、「特定者」という。)を保険契約者又は被保険者とする保険契約を特定契約として把握しているか。
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(ア)損害保険代理店本人と生計を共にする親族(姻族を含む。)及び生計を共にしない2 親等以内の親族(姻族を含まず。)
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(イ)損害保険代理店本人又は配偶者若しくは2親等以内の親族(姻族を含まず。)が常勤役員である法人(法人でない社団若しくは財団を含む。以下、II-4-2-2(6)ア.において同じ。)
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(ウ)法人である損害保険代理店と役職員の兼務関係(非常勤、出向及び出身者を含む。)がある法人。なお、ここでいう「出身者」とは、当該法人を退職した時点を起算点として、退職後3年未満の者をいう。
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(エ)法人である損害保険代理店への出資比率が30%を超えるもの
(注)出資比率の算定方法
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a.出資者が法人の場合は、当該法人に所属する役職員個人及びその者と生計を共にする親族(姻族を含まず。)の出資額を合算した額で算定して、30%を超えたときの当該法人
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b.出資者が個人の場合は、当該個人と生計を共にする親族(姻族を含まず。)の出資額を合算した額で算出して30%を超えたときの当該個人
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イ. 特定契約の保険募集を主たる目的とする損害保険代理店(以下、「特定契約取扱代理店」という。)の判定を、損害保険代理店の事業年度ごとに行っているか。その他の計算方法については、自己契約と同様に取り扱っているか。
また、特定契約としない保険契約は、自己契約に準じて取り扱っているか。
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ウ. 損害保険代理店が特定契約取扱代理店であることが判明した場合には、至った事由及び是正計画を付して、判定を行った月の翌月末日までに財務局又は福岡財務支局(沖縄総合事務局を含む。以下、「財務局等」という。)へ報告がなされているか。
(注)既存の損害保険代理店に対する措置として、平成8年3月31日以前に登録した損害保険代理店で、かつ、同年4月1日以降平成13年3月31日までの間に損害保険代理店制度に基づく種別変更を行わなかった損害保険代理店については、当分の間、以下の計算で行う。
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(ア)対象保険契約は、火災保険、自動車保険及び傷害保険契約(医療費用保険及び介護費用保険を含む。)とする。
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(イ)特定契約の割合は、各特定者個々で特定契約の割合を計算し、そのうち最も高い割合を特定契約の割合とする。
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自己契約又は特定契約に係る収入保険料の割合が30%を超えた場合には、速やかに改善するよう損害保険代理店を指導しているか。
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(7)法第300条第1項第4号関係
一定金額の金銭をいわゆる解約控除等として保険契約者が負担することとなる場合があること、特別配当請求権その他の一定期間の契約継続を条件に発生する配当に係る請求権を失うこととなる場合があること、被保険者の健康状態の悪化等のため新たな保険契約を締結できないこととなる場合があることなど、不利益となる事実を告げているか。
また、顧客が不利益となる事実を了知した旨を十分確認しているか。
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(8)法第300条第1項第5号関係
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保険会社又は保険募集人が、保険契約の締結又は保険募集に関し、保険契約者又は被保険者に対して、各種のサービスや物品を提供する場合においては、以下のような点に留意して、「特別利益の提供」に該当しないものとなっているか。
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ア. 当該サービス等の経済的価値及び内容が、社会相当性を超えるものとなっていないか。
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イ. 当該サービス等が、換金性の程度と使途の範囲等に照らして、実質的に保険料の割引・割戻しに該当するものとなっていないか。
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ウ. 当該サービス等の提供が、保険契約者間の公平性を著しく阻害するものとなっていないか。
なお、保険会社は、当該サービス等の提供を通じ、他業禁止に反する行為を行っていないかについても留意する。
(注)保険会社又は保険募集人が、保険契約者又は被保険者に対し、保険契約の締結によりポイントを付与し、当該ポイントに応じた生活関連の割引サービス等を提供している例があるが、その際、ポイントに応じてキャッシュバックを行うことは、保険料の割引・割戻しに該当し、法第4 条第2 項各号に掲げる書類に基づいて行う場合を除き、禁止されていることに留意する。
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団体扱や集団扱での契約、傷害保険・所得補償保険等の団体契約及び自動車保険(フリート契約)の募集にあたり、以下に掲げる事項について確認を行っているか。
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ア. 対象となる団体や集団が、事業方法書に定める要件に該当していること。
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イ. 団体や集団の定足数を満たしていること。
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ウ. 契約者又は被保険者が、事業方法書に定める要件に該当していること。
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エ. 団体割引率、損害率に応じた割引率、フリート優良割引率等の割引率の適用が適正なものであること。
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規則第234条第1項第1号(特定保険契約の場合は、規則第234条の27第1項第1号)について、以下の点に留意しているか。
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ア. 生命保険会社は、生命保険募集人、保険仲立人及び金融サービス仲介業者(金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下「金融サービス提供法」という。)第 11 条第 6 項に規定する金融サービス仲介業者 をいい、保険媒介業務 (同条第3項に規定する保険媒介業務をいう。以下同じ。) を行う者に限る。以下同じ。)(以下、II-4-2-2(8)において「生命保険募集人等」という。)に対し、保険料の割引、割戻し等を目的とした自己契約等の保険募集及び保険媒介業務を行うことがないよう指導及び管理等の措置を講じているか。
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イ. 生命保険会社は、法人である生命保険募集人等に対し、自己又は当該生命保険募集人等と密接な関係を有する法人を保険契約者とする場合には、手数料支払等による保険料の割引、割戻し等を目的とした保険募集を行うことがないよう指導及び管理等の措置を講じているか。
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ウ. 密接な関係を有する法人とは、以下の者を含む。
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(ア)資本的関係に照らし、当該生命保険募集人等と密接な関係を有する以下に掲げる法人
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a.当該生命保険募集人等の特定関係法人
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b.当該生命保険募集人等を特定関係法人とする法人
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c.a.に掲げる法人の特定関係法人
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d.a.又はb.に掲げる法人を特定関係法人とする法人
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(イ)(ア)に規定する特定関係法人とは、一の法人に係る次のa.からf.に掲げる者(b.からf.までに掲げる者については、当該法人の議決権を有しない者を含む。)に該当するもので、合計して当該法人の総株主、総社員又は総出資者の議決権の25%以上を保有する場合に、そのいずれかの者(法人に限る。)とする。
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a.当該生命保険募集人等の議決権の全部又は一部を保有する一の者
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b.a.に掲げる者の総株主、総社員又は総出資者の議決権の50%超を保有する者
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c.b.に掲げる者の総株主、総社員又は総出資者の議決権の50%超を保有する者
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d.a.に掲げる者により総株主、総社員又は総出資者の議決権の50%超を保有される法人
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e.d.に掲げる者により総株主、総社員又は総出資者の議決権の50%超を保有される法人
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f.b.に掲げる者により総株主、総社員又は総出資者の議決権の50%超を保有される法人
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(ウ)当該生命保険募集人等との間で、役員(非常勤を除く。)又は使用人の兼職、出向、転籍等の人事交流が行われている法人
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(エ)その他設立経緯や取引関係からみて当該生命保険募集人等と密接な関係を有すると認められる法人
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(オ)(エ)に定める「密接な関係を有する」とは、一方の法人が他方の法人の財務若しくは営業又は事業の方針に対して重要な影響を与えることができる状態にあることをいう。
なお、(エ)に掲げる法人に該当するか否かは実態に則して判断するものとし、以下に掲げる法人の判定については(エ)の適用の潜脱にならないよう十分留意するものとする。
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a.生命保険募集人等の役員及び使用人の過半数が特定の法人の出身者で占められている場合の当該特定の法人
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b.生命保険募集人等の設立に際して特定の法人が中心となって関与した場合の当該特定の法人
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(9)法第300条第1項第6号関係
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保険契約に関する表示(告げることを含む。以下同じ。)に関し、顧客の十分な理解が得られるような措置が講じられているか。商品の特性に応じた表示となっているか。
なお、表示には以下に掲げる方法により行われるものを含むものとする(以下、II-4-2-2(10)において同じ。)。
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ア. パンフレット、ご契約のしおり等募集のために使用される文書及び図面
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イ. ポスター、看板その他これらに類似するものによる広告
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ウ. 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送、映写、演劇又は電光による広告
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エ. インターネット等による広告
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オ. その他情報を提供するための媒体
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比較表示に関し、法第300条第1項第6号に抵触する行為には以下の事項が考えられる。
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ア. 客観的事実に基づかない事項又は数値を表示すること。
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イ. 保険契約の契約内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示さず一部のみを表示すること。
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(注1)「契約概要」を用いた比較表示(それぞれの「契約概要」を並べる方法により行う場合や、「契約概要」の記載内容の全部を表形式にまとめ表示する場合等)を行う場合は、保険契約の契約内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示したものと考えられる。
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(注2)比較表示(その記載内容を表形式にまとめ表示する場合を含む。)を行うに際し、以下の各要件が全て充足されている場合には、保険契約の契約内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示したものと考えられる。
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(ア)比較表示の対象とした全ての保険商品について、比較表示を受けた顧客が「契約概要」を入手したいと希望したときに、その「契約概要」を速やかに入手できるような措置が講じられていること。
例えば、a.比較表示の対象とした全ての保険商品について、比較表示と同時に「契約概要」が提供されること、又は、b.比較表示の対象とした全ての保険商品について、インターネットのホームページ上に「契約概要」を表示できるようにすること、あるいは顧客からの要望があれば遅滞なく郵送等で要望のあった「契約概要」を交付できるようにすること等の体制を整備したうえで、これを顧客に周知すること等が考えられる。
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(イ)比較表示に関し、以下のような注意喚起文言が記載されていること。
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a.比較表には、保険商品の内容の全てが記載されているものではなく、あくまで参考情報として利用する必要があること。
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b.比較表に記載された保険商品の内容については、必ず「契約概要」やパンフレットにおいて全般的に確認する必要があること。
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ウ. 保険契約の契約内容について、長所のみをことさらに強調したり、長所を示す際にそれと不離一体の関係にあるものを併せて示さないことにより、あたかも全体が優良であるかのように表示すること。
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エ. 社会通念上又は取引通念上同等の保険種類として認識されない保険契約間の比較について、あたかも同等の保険種類との比較であるかのように表示すること。
(注)例えば、保険期間の相違がある保険商品の比較を行う場合、有配当保険と無配当保険の比較を行う場合等には、商品内容の相違を明確に記載する等、顧客が同等の保険商品と誤解することがないよう配慮した記載を行うことが求められる。
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オ. 現に提供されていない保険契約の契約内容と比較して表示すること。
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カ. 他の保険契約の契約内容に関して、具体的な情報を提供する目的ではなく、当該保険契約を誹謗・中傷する目的で、その短所を不当に強調して表示すること。
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他の保険会社の商品等との比較表示を行う場合には、( I )書面等を用いて、以下の事項を含めた表示が行われ、かつ、( II )他社商品の特性等について不正確なものとならないための措置が講じられているか。
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(注1)上記( I )については、上記イ.(注1)又は(注2)の要件を充足した場合には、当該要件を充足したものと考えられる。
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(注2)保障(補償)内容や特約の内容に関して、比較する全商品にほぼ共通して存在すると認められる事由や、比較の対象とした保険種類であれば通常支払われるものと認められる事由については、記載内容から省略したことをもって直ちに「誤解させるおそれ」を生ぜしめるものではない。
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(ア)保険期間
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(イ)保障(補償)内容(保険金を支払う場合、主な免責事由等)
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(ウ)引受条件(保険金額等)
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(エ)各種特約の有無及びその内容
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(オ)保険料率・保険料(なるべく同一の条件での事例設定を行い、算出条件を併記する。)
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(カ)保険料払込方法
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(キ)払込保険料と満期返戻金との関係
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(ク)その他保険契約者等の保護の観点から重要と認められるもの
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保険料に関する比較表示を行う場合は、保険料に関して顧客が過度に注目するよう誘導したり、保障(補償)内容等の他の重要な要素を看過させるような表示を行うことがないよう配慮されているか。
また、顧客が保険料のみに注目することを防ぐため、保険料だけではなく保障(補償)内容等の他の要素も考慮に入れたうえで比較・検討することが必要である旨の注意喚起を促す文言を併せて記載すること等、比較表の構成や記載方法等について、顧客の誤解を招かないよう工夫がされているか。
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(注1)契約条件や保障(補償)内容の概要等、保険料に影響を与えるような前提条件を併せて記載することが適切な表示として最低限必要と考えられる。
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(注2)顧客の年齢や性別等の前提条件に応じ、適用される保険料の相違が顕著である場合には、前提条件の相違により保険料が異なる場合があるので、実際に適用される保険料について保険会社に問い合わせたうえで商品選択を行うことが必要である旨の注意喚起を促す文言を併せて記載することが適当と考えられる。
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比較表示を行う主体がどのような者か(保険会社、保険募集人)、比較の対象となった保険商品を提供する保険会社や保険募集人との間に、提供する比較情報の中立性・公正性を損ない得るような特別の利害関係(例えば、強い資本関係が存在する等)を有していないか、どのような情報を根拠として比較情報を提供するのか等について、比較表示を行う際に顧客に対して明示することが望ましい。
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(10)法第300条第1項第7号関係
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法第300条第1項第7号に抵触する行為を排除する措置が講じられているか。
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予想配当表示について
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ア. 予想配当表示に関し、法第300条第1項第7号に抵触する行為には、以下のような行為が考えられる。
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(ア)実際の配当額は、表示された予想配当額から変動し、0(ゼロ)となる年度もあり得る旨を予想配当と併記して表示しないこと。
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(イ)表示された予想配当額が将来の受領額の目安として一定の条件のもとでの計算例を示すものであるにもかかわらず、その旨及び当該一定の条件の内容を表示しないこと。
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(ウ)配当の仕組み(配当は支払時期の前年度決算により確定する旨等)、支払方法(積立配当方式、保険料相殺方式、保険金買増方式、現金支払方式等の別)及び予想配当の前提又は条件となる事項について表示しないこと。
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(エ)損害保険契約に係る予想配当については、その前提又は条件の異なった複数の予想配当額を表示しないこと。
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(オ)合理的かつ客観的な推測の範囲を明らかに超える高額の予想配当額を表示すること。
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(カ)特別配当(ミュー配当)を表示する場合に、普通配当と区別しないで表示すること。
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イ. 生命保険契約について、予想配当表示を行い、又は、生命保険募集人に予想配当表示を行わせる場合には配当率が直近決算の実績配当率(確定するまでの間は、その直前の実績配当率又は合理的かつ客観的なもので、保守的に算出された配当率とする。以下同じ。)で推移すると仮定して算定した配当額を表示し、さらに、少なくとも合理的な一時点においては、利差配当(ラムダ配当を含む。)率(配当を積み立てる場合は、積立配当利率も含む。)が、直近決算の実績配当の利差配当率から上方には1%以内、下方には上方への幅以上(ただし、実績配当率を下回る利差配当率の下限は0%)の範囲内で推移すると仮定して算定した配当額も併せて表示しているか。
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ウ. イ.の場合において、予想配当についてア.の要件を満たした書面等が保険契約者等に提示されているか。
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変額保険や特別勘定を使用する損害保険商品に係る募集上の遵守事項
変額保険や特別勘定を使用する損害保険商品の募集に際しては、満期返戻金や保険金額が資産運用実績によって変動するというこれらの保険の仕組みの特殊性等にかんがみ、保険契約者との無用のトラブルや募集秩序の混乱を防止する観点から、法第300条第1項第7号(規則第233条を含む。)の規定に特に留意のうえ、遵守の徹底を行っているか。
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外貨建て保険に係る募集上の留意事項
外貨建て保険(規則第83条第3号に規定する保険契約のうち、事業者を保険契約者とするものを除く。)の募集に際しては、保険契約者等の保護を図る観点から、法第300条第1項第7号関係(規則第233条を含む。)の規定に特に留意のうえ、募集時に為替リスクの存在について十分説明を行うとともに、保険契約者が為替リスク等について了知した旨の確認書等の取付けを徹底しているか。
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(11)法第300条第1項第9号及び規則第234条第1項第2号(特定保険契約の場合は、準用金融商品取引法第38条第7号及び規則第234条の27第1項第1号)関係
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「業務上の地位等を不当に利用」とは、例えば、職務上の上下関係等に基づいて有する影響力をもって、顧客の意思を拘束する目的で利益又は不利益を与えることを明示することをいうが、このような行為を行っていないか。
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損害保険会社又は損害保険募集人については、規則第234条第1項第2号の規定の趣旨を踏まえ、以下に掲げる行為等を行っていないか。
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ア. 顧客に対し、威圧的な態度や乱暴な言葉等をもって著しく困惑させること。
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イ. 勧誘に対する拒絶の意思を明らかにした顧客に対し、その業務若しくは生活の平穏を害するような時間帯に執拗に訪問し又は電話をかける等の社会的批判を招くような方法により保険募集を行うこと。
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(12)規則第234条第1項第4号(特定保険契約の場合は、規則第234条の27第1項第1号)関係
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保険会社の信用又は支払能力等を表示する場合の適正な措置が講じられているか。
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保険会社の信用又は支払能力等の表示に関し、規則第234条第1項第4号に抵触する行為としては、以下のような行為が考えられる。
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ア. 法第110条に規定する業務報告書及び中間業務報告書に記載された数値、若しくは法第111条に規定する業務及び財産の状況に関する説明書類に記載された数値又は信用ある格付業者の格付(以下、「客観的数値等」という。)以外のものを用いて、保険会社の資力、信用又は支払能力等に関する事項を表示すること。
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イ. 使用した客観的数値等の出所、付された時点、手法等を示さず、また、その意味について、十分な説明を行わず又は虚偽の説明を行うこと。
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ウ. 表示された客観的数値等が優良であることをもって、当該保険会社の保険契約の支払いが保証されていると誤認させること。
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エ. 一部の数値のみを取り出して全体が優良であるかのように表示すること。
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オ. 他の保険会社を誹謗・中傷する目的で、当該保険会社の信用又は支払能力等に関してその劣後性を不当に強調して表示すること。
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カ. 保険契約者保護機構(以下、「機構」という。)の行う資金援助等事業に参加していることの表示を行う場合において、機構の行う資金援助が、一定の条件、限度において実施されるものであり、保険契約が完全に保証されるものではないことを表示しないこと。
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(13)規則第234条第1項第5号(特定保険契約の場合は、規則第234条の27第1項第1号)関係
共同保険契約や保険会社間の保険商品の提携販売等一の契約者が複数の保険会社との間で一又は複数の保険契約を同時に締結(契約の更改及び更新を含む。)する場合などにおいて、保険契約者が保険の種類や引受保険会社について誤解しないよう、契約当事者たるそれぞれの保険会社と保険契約者との間の契約関係が明確となることをはじめ、保険募集及び保険契約の締結の業務に関して適切な措置が講じられているか。
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(14)規則第227条の9関係
規則第227条の9に規定する「必要かつ適切な措置」とは、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(以下、「金融分野ガイドライン」という。)第8条、第9条及び第10条並びに金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針(以下、「実務指針」という。)I、II、III及び別添2の規定に基づく措置とする。
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(15)規則第227条の10関係
規則第227条の10に規定する「その他の特別の非公開情報」とは、次に掲げる①から⑦までの情報をいい、「当該業務の適切な運営の確保その他必要と認められる目的」とは、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合をいう。
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労働組合への加盟に関する情報
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民族に関する情報
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性生活に関する情報
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個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報
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個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報
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犯罪により害を被った事実に関する情報
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社会的身分に関する情報
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(16)法第307条第1項第3号関係
法第307条第1項第3号で規定する「その他保険募集に関し著しく不適当な行為」に抵触する行為を排除する措置が講じられているか。
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(17)その他
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告知事項・告知書
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ア. 保険法において、告知義務が自発的申告義務から質問応答義務となったことの趣旨を踏まえ、保険契約者等に求める告知事項は、保険契約者等が告知すべき具体的内容を明確に理解し告知できるものとなっているか。
例えば、「その他、健康状態や病歴など告知すべき事項はないか。」といったような告知すべき具体的内容を保険契約者等の判断に委ねるようなものとなっていないか。
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イ. 告知書の様式は、保険契約者等に分かりやすく、必要事項を明確にしたものとなっているか。
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自動車保険関係
自動車保険に係る業務において、以下の運営が行われているか。
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ア. 対人賠償責任保険及び自社の契約の更改及び更新にあって、真に危険が特に大きいと認められる場合を除き、保険契約の締結(契約の更改及び更新を含む。)に応じるような対応及び運営が行われているか。
また、対物賠償責任保険についても、個々のリスク実態も踏まえつつ、できる限り保険契約の締結(契約の更改及び更新を含む。)に応じるような対応及び運営が行われているか。
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イ. 地域、年齢、性別等を基準に特定の保険契約のみ締結するといった業務を行わないような対応及び運営が行われているか。
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その他
保険契約の締結(名義変更等による契約の変更を含む。)又は保険募集に関して、以下の措置が講じられているか。
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ア. 挙績を指向するあまり、金融機関への過度の預金協力による見込み客の獲得、保険料ローンを不正に利用した募集、特定の保険募集人に対する過度の便宜供与等の過当競争の弊害を招きかねない行為のほか、作成契約、超過保険契約等の不適正な行為の防止
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イ. 第一分野及び第三分野の保険契約並びに法第3条第5項第3号に掲げる保険契約にあっては、架空契約や保険金詐取を目的とする契約等の不正な保険契約の発生を防止するための以下の措置
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(ア)保険契約者(法人、個人事業主を含む。)について、運転免許証やパスポート等の本人を特定し得る書類による確認、企業等の法人(個人事業主を含む。)の存在が確認できる書類による確認、保険証券を郵送し、当該郵便物が返戻されなかったことをもってする確認、本人確認を行った保険料収納機関からの確認、保険募集人の訪問や保険会社が電話等の通信機器・情報処理機器を利用し保険契約者と交信することによる確認その他適切な方法による、本人確認若しくは実在の確認又は法人の事業活動の有無の確認
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(イ)保険契約申込みや契約変更時の健康診査において、医師による運転免許証やパスポート等の本人を特定し得る書類による確認、保険募集人の同行や保険会社が直接面接することによる確認その他適切な方法による被保険者の本人確認
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(ウ)法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わせないなど、保険商品のそれぞれの商品特性に応じ、その本来の目的に沿った利用が行われるための適切な募集活動に対する措置
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ウ. 保険商品の募集地域を合理的な理由なく制限するなど、差別的取扱いを防止する措置
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エ. 保険契約締結の申込みがあったにも関わらず、締結しないこととする場合は、可能な限り合理的な理由を説明するなど、顧客の理解が得られるような措置
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II -4-2-3 団体扱契約等関係について
団体扱契約及び集団扱契約監督事務にあたっての留意点は、保険会社の経営の健全性の確保及び保険契約者等の保護の観点から、以下のとおりとする。
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(1)団体扱契約
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団体扱契約の目的・趣旨
「IV-1-16 団体扱・集団扱の取扱い」に定める団体扱契約について、その目的・趣旨に沿って契約が適正に行われているか。
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団体扱契約の適用団体及び適用料率
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ア. 保険会社は保険契約者の所属する団体の適正な代表者との間で、保険料の取次ぎ又は集金事務等に関する契約の締結を行っているか。
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イ. 適用料率は、料率区分に応じて、適正に算出され適用されているか。
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ウ. 保険契約者又は被保険者の状況が変化し、当該保険契約者等に係る保険契約が団体扱契約の対象でなくなった場合には、当該保険契約に適用する保険料率の見直しを行っているか。
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集金手数料
団体の代表者に支払う集金手数料については、経営の健全性、契約者間の公平性の確保、公正な競争の促進等及び実費相当額を勘案した適正な水準になっているか。
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(2)集団扱契約
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集団扱契約の目的・趣旨
「IV-1-16 団体扱・集団扱の取扱い」に定める集団扱契約について、その目的・趣旨に沿って契約が適正に行われているか。
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集団扱契約の適用団体及び適用料率
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ア. 保険会社は保険契約者の所属する集団の適正な代表者との間で、保険料の取り次ぎ又は集金事務等に関する契約の締結を行っているか。
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イ. 適用料率は、料率区分に応じて、適正に算出され適用されているか。
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ウ. 保険契約者又は被保険者の状況が変化し、当該保険契約者等に係る保険契約が集団扱契約の対象でなくなった場合には、当該保険契約に適用する保険料率の見直しを行っているか。
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集金手数料
集団代表者に支払う集金手数料については、経営の健全性、契約者間の公平性の確保、公正な競争の促進等及び実費相当額を勘案した適正な水準になっているか。
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II -4-2-4 他人の生命の保険契約について
他人の生命の保険契約(保険契約者以外の者を被保険者とする死亡保険契約及び傷害疾病による死亡を給付事由とする保険契約者以外の者を被保険者とする傷害疾病定額保険契約(保険金受取人の変更を含む。また、傷害疾病定額保険契約については、保険金受取人が被保険者又はその相続人であるもので、かつ、給付事由が傷害疾病による死亡のみではないものを除く。))の締結に関して、保険会社の監督にあたっての留意点は、被保険者等の保護及び保険会社の業務の健全かつ適切な運営の確保の観点から、以下のとおりとする。
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(1)目的・趣旨
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企業(個人事業主を含む。以下同じ。)が保険契約者及び保険金受取人になり、従業員等を被保険者とする保険契約(以下、「事業保険」という。)については、以下のア.又はイ.の目的・趣旨に沿った業務運営が行われているか。
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ア. 遺族及び従業員の生活補償のための企業の就業規則、労働協約、その他これに準ずる規則に基づく災害補償、遺族補償及び業務外の傷病扶助に関する規定又はこれに準ずる規定(以下、「災害・遺族補償規定等」という。)により定められた弔慰金・死亡退職金等(以下、「弔慰金等」という。)の支払い財源確保
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イ. 従業員等の死亡に伴い企業が負担する代替雇用者採用・育成費用、事業継承・一時的な信用不安に備える資金等の財源確保
(注)被保険者となるべき者の同意の取得に際しては、例えば、以下の方法によって被保険者が保険金受取人や保険金額等の契約の内容を確実に認識できるような措置を講じているか。
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(ア)被保険者に対して加入申込書の写しや契約の内容を記載した書面の交付などを保険会社から行う。
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(イ)被保険者がどのように契約の内容を認識できるようになっているかを保険会社が保険契約者から確認する。確認の結果は、検証可能な具体的な記録として残す。
さらに、被保険者に対して交付する契約の内容を記載した書面等に、被保険者が家族に当該保険への加入を説明することを促す文言を記載するなど、保険会社は被保険者本人がその家族等、必要と考える者に対し情報提供を容易に行い得る措置を講じているか。
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全員加入団体定期保険(全員加入団体を対象とする団体定期保険をいう。以下同じ。)の契約は、当該保険の目的・趣旨が遺族及び従業員の生活補償にあることを明確にし、弔慰金等の支払い財源を保障する部分を「主契約」、従業員死亡に伴い企業が負担する代替雇用者採用・育成費用等の諸費用(企業の経済的損失)を保障する部分を「特約」として区分するなど、当該保険契約の目的・趣旨に沿った業務運営が行われているか。
(注)被保険者となるべき者の同意の取得に際しては、例えば、以下の方法によって被保険者が保険金受取人や保険金額等の契約の内容を確実に認識できるような措置を講ずること。
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(ア)被保険者に対して契約の内容を記載した書面の交付などを生命保険会社から行う。
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(イ)被保険者がどのように契約の内容を認識できるようになっているかを生命保険会社が保険契約者から確認する。確認の結果は、検証可能な具体的な記録として残す。
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(2)団体保険又は団体契約における団体の範囲等の確認態勢
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被保険者が被保険団体に含まれるか確認できる態勢が整備されているか。
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団体定期保険等の適用条件等が事業方法書に定められている方法により、適切に運用されていることを確認できる態勢が整備されているか。
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(3)保険金額の定め方
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事業保険における保険金額の設定については、保険契約の目的・趣旨を踏まえ、保険金額の引受基準等、モラルリスクの排除の観点から措置が適切に運用されているか。
なお、従業員等の死亡に伴い企業が負担する代替雇用者採用・育成費用、事業継承・一時的な信用不安に備える資金等の財源確保を保険契約の目的・趣旨に含める場合の保険金額は、過大とならないよう保険契約締結時において、年収、勤続年数、職位や企業の年商や規模などの基準により設定した上限により適切に運営されているか。
また、従業員に係る保険金額の設定については、下記にも留意しつつ適切に運営されているか。
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全員加入団体定期保険の保険金額の設定については、主契約部分は災害・遺族補償規定等に基づく支給金額を上限とし、特約部分は主契約の保険金額を上限(ただし、2,000万円を上限)とするなど、この保険の目的・趣旨(上記(1))に沿った利用が行われるよう措置が講じられているか。
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(4)災害・遺族補償規定等にリンクした保険金支払いの確保
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事業保険であって災害・遺族補償規定等に基づき被保険者である従業員に対し、保険金の全部又はその相当部分が、弔慰金等の支払いに充当することが確認されている場合においては、業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、保険金請求時に保険契約者から、ア.被保険者又は労働基準法施行規則第42 条等に定める遺族補償を受けるべき者(以下、「受給者」という。)の保険金請求内容の了知を確認する書類の取り付け(なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金額等の契約の内容が記載されているか。)、あるいは、イ.被保険者又は受給者が金銭を受領したことが分かる書類、被保険者又は受給者への支払記録等の取り付け、など、被保険者又は受給者に対する情報提供、保険契約の目的に沿って保険金が弔慰金等の福利厚生に活用されることの確認の措置が講じられているか。
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全員加入団体定期保険における保険金の支払いにあっては、主契約部分については、全額従業員の遺族に支払うこととし、企業が一旦受取ったうえで遺族に支払う場合は、遺族の了知を確認のうえ支払うこととしているか。
なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金額等の契約の内容が記載されているか。
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全員加入団体定期保険において「ヒューマン・ヴァリュー特約」分の保険金支払いは、弔慰金等の受給者の了知を確認のうえ支払うこととしているか。
なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金額等の契約の内容が記載されているか。
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II -4-2-5 自動車損害賠償責任保険について
自動車損害賠償責任保険は、自動車の登録・車検制度とリンクしており、契約者に対して速やかに自動車損害賠償責任保険証明書を交付する必要があるため、損害保険会社は、特に資力、信用及び業務遂行能力等を備えた損害保険代理店に証明書の発行権限を付与しているか。
これらの損害保険代理店に対して、保険料の精算を迅速・確実に行うなど適正な業務運営を行うよう指導しているか。
II -4-2-6 銀行等に対する保険募集の委託
II -4-2-6-1 銀行等に対する保険募集の委託・管理
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(1)銀行等に対して保険募集の委託を行うにあたり、保険会社において、その業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保する観点から、以下の措置が講じられているか。
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銀行等への委託に関して、以下の内容を含む方針を定め、これを踏まえて委託の内容を定めること。
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ア. 銀行等への委託の考え方及び委託する銀行等の選定の考え方
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イ. 委託する保険種目及び想定される販売量(その達成を委託の条件とするものではないことに留意すること。)
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ウ. 銀行等に対する販売支援(研修等)に関し保険会社が行う業務の内容
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保険募集手数料について、保険会社の経営の健全性の確保及び銀行等による保険募集の公正の確保の見地からみて妥当な設定を行うこと。
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(2)銀行等に対する保険募集の委託を行っている保険会社は、自らの経営管理の一環として、その業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、以下の措置を講じているか。
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銀行等による保険募集の状況を的確に把握すること。
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銀行等による保険募集が保険会社のリスク管理能力を超えて著しく増大した場合又は特定の銀行等に対する保険募集の依存の水準が当初の委託方針に比して著しく高くなった場合には、その原因について検討し、必要に応じて適切な対応を行うための態勢を整備していること。
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(3)保険契約締結後に行うことが必要となる業務(注)について、銀行等と保険会社との間の委託契約等において、その業務分担が明確に定められ、顧客に明示されているか。
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(注)例えば、契約内容に関する照会への対応、顧客からの苦情・相談への対応、保険金等の支払手続きに関する照会等を含む各種手続き方法に関する案内等といった業務をいう。
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(4)保険会社においては、保険契約締結後の業務の健全かつ適切な運営を確保するために、例えば、銀行等が契約の締結の代理又は媒介を行った契約量に応じた当該業務を行うための十分な要員の確保に努める等、必要な態勢を構築しているか。
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(5)銀行等においては、保険契約締結後の業務の健全かつ適切な運営を確保するために、例えば、委託契約等に基づき銀行等が行う保険契約締結後の業務の性質及び量に応じた当該業務を行うための十分な要員の確保に努める等、必要な態勢を構築しているか。
II -4-2-6-2 非公開金融情報・非公開保険情報の取扱い
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(1)特定保険募集人又は保険仲立人である銀行等が、非公開金融情報(規則第212条第2項第1号イに規定する非公開金融情報をいう。以下同じ。)を保険募集に係る業務に利用する場合には、非公開金融情報の利用について顧客の同意を取得する際に、当該同意の有効期間及びその撤回の方法、非公開金融情報を利用する保険募集の方式(対面、郵便等の別)、利用する非公開金融情報の範囲(定期預金の満期日、預金口座への入出金に係る情報、その他金融資産の運用に係る情報等)を顧客に具体的に明示するとともに、例えば、以下の方法のような適切な方法により事前に顧客の同意を得なければ保険契約の締結の代理又は媒介ができないようにするための必要な措置(注)を講じているか。
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(注)例えば、非公開金融情報を利用しようとする場合には事前に同意をとらなければ商品説明を行えない、さらに書面による同意がなければ契約申込み・締結を行えないような事務手続きを整備することが考えられる。
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対面の場合
非公開金融情報の保険募集に係る業務への利用について、当該業務に先立って書面による説明を行い、同意を得た旨を記録し、契約申込みまでに書面による同意を得る方法
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郵便による場合
非公開金融情報の保険募集に係る業務への利用について、当該業務に先立って説明した書面を送付し、保険申込書の送付等保険募集の前に、同意した旨の返信を得る方法
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電話による場合
非公開金融情報の保険募集に係る業務への利用について、当該業務に先立って口頭による説明を行い、同意を得た旨を記録し、その後速やかに当該利用について説明した書面を送付(電話での同意取得後対面にて顧客と応接する場合には交付でも可とする。)し、契約申込みまでに書面による同意を得る方法
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インターネット等による場合
非公開金融情報の保険募集に係る業務への利用について、当該業務に先立って電磁的方法による説明を行い、電磁的方法による同意を得る方法
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(注)顧客の属性に関する情報(氏名、住所、電話番号、性別、生年月日及び職業)は非公開金融情報又は非公開保険情報に含まれない。
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(2)特定保険募集人又は保険仲立人である銀行等が、非公開保険情報(規則第212条第2項第1号ロに規定する非公開保険情報をいう。以下同じ。)を資金の貸付け等の保険募集に係る業務以外の業務に利用する場合には、非公開保険情報の利用について顧客の同意を取得する際に、当該同意の有効期間及びその撤回の方法、非公開保険情報を利用する業務の方式(対面、郵便等の別)、利用する非公開保険情報の範囲(保険募集に係る業務において知り得た家族構成等の情報)を顧客に具体的に明示するとともに、例えば、(1)からまでに掲げる方法に準じた適切な方法により事前に顧客の同意を得るための措置を講じているか。
II -4-2-6-3 銀行等の保険募集指針
保険募集の公正を確保するために銀行等が定める保険募集指針には、以下の事項が定められているか。
また、保険募集指針の内容について、顧客に周知するため、保険募集指針の書面による交付又は説明、店頭掲示、インターネットホームページの活用等の必要な措置が講じられているか。
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(1)顧客に対し、募集を行う保険契約の引受保険会社の商号や名称を明示するとともに、保険契約を引き受けるのは保険会社であること、保険金等の支払いは保険会社が行うことその他の保険契約に係るリスクの所在について適切な説明を行うこと。
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(2)複数の保険契約の中から顧客の自主的な判断による選択を可能とするための情報の提供を行うこと。
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(3)銀行等が法令に違反して保険募集につき顧客に損害を与えた場合には、当該銀行等に特定保険募集人としての販売責任があることを明示すること。
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(4)銀行等における苦情・相談の受付先及び銀行等と保険会社の間の委託契約等に基づき保険契約締結後に銀行等が行う業務内容を顧客に明示するとともに、募集を行った保険契約に係る顧客からの、例えば、委託契約等に則して、保険金等の支払手続きに関する照会等を含む苦情・相談に適切に対応する等契約締結後においても必要に応じて適切な顧客対応を行うこと。
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(5)上記(1)から(4)までに掲げる顧客に対する保険募集時の説明や苦情・相談に係る顧客対応等について、顧客との面談内容等を記録するなど顧客対応等の適切な履行を管理する体制を整備するとともに、保険募集時の説明に係る記録等については、保険期間が終了するまで保存すること。
II -4-2-6-4 銀行等保険募集制限先の確認等
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(1)銀行等は、銀行等保険募集制限先等(規則第212条第3項第1号柱書に規定する銀行等生命保険募集制限先、規則第212条の2第3項第1号柱書に規定する銀行等損害保険募集制限先又は規則第212条の5第3項第1号柱書に規定する銀行等保険募集制限先をいう。以下同じ。)を保険契約者又は被保険者とする保険契約(規則第212条第1項第1号から第5号まで又は規則第212条の2第1項第1号から第5号の4までに掲げるもの及び既に締結されている保険契約(その締結の代理又は媒介を当該銀行等が手数料その他の報酬を得て行ったものに限る。)の更新又は更改(保険金額その他の給付の内容の拡充(当該保険契約の目的物の価値の増加その他これに準ずる事情に基づくものを除く。)又は保険期間の延長を含むものを除き、再更改を含む。)を除く。)の締結の代理又は媒介を手数料その他の報酬を得て行わないことを確保するため、以下の措置を講じているか。
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保険募集に際して、あらかじめ、顧客に対し、銀行等保険募集制限先等に該当するかどうかを確認する業務に関する説明を書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供により行った上で、当該顧客が銀行等保険募集制限先等に該当するかどうかを顧客の申告により確認するための措置
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募集を行った保険契約に係る契約申込書その他の書類を引受保険会社に送付する時までに、保険募集の過程で顧客から得た当該顧客の勤務先等の情報を当該銀行等の貸付先に関する情報と照合し、当該顧客が銀行等保険募集制限先等に該当しないことを確認するための措置
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上記の措置によって、顧客が銀行等保険募集制限先等に該当することが確認された場合に、当該保険契約に係る保険募集手数料その他の報酬について、所属保険会社から受領せず、又は事後的に返還するための態勢の整備
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(注1)及びの措置については、顧客に勤務先等の情報提供等を強制することのないよう留意すること。
なお、及びの措置による確認によっても当該顧客が銀行等保険募集制限先等に該当するかどうかを確認できなかった場合は、特段の事情のない限り、該当しないものとみなす。
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(注2)上記の銀行等の貸付先に関する情報との照合による確認については、貸付先に関するデータベース(少なくとも年1回の更新が必要。既存のものが存在する場合はそれを活用することも可。)と照合する方法や、本部等で融資情報を一元管理して各支店からの照合依頼を受ける方法その他の銀行等の規模や特性を踏まえた方法によることもできる。
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(注3)銀行等が事業に必要な資金の貸付けを行っている法人等の役員又は常時使用する従業員を主たる構成員とする団体を設立させ、これに対し保険募集をする行為は、特段の事情のない限り、実質的に当該法人等に対する保険募集とみなされる。
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(2)銀行等は、保険会社から保険募集の委託を受けるにあたっては、当該銀行等のその他の業務(他の保険会社から受託した業務を含む。)の健全かつ適切な運営に支障を及ぼさないよう、例えば、当該保険会社の業務又は財務の健全性や特定保険募集人である銀行等に対する販売管理態勢の整備状況、当該銀行等が募集を行うこととなる保険商品の内容に十分留意して当該業務の受託の可否を決定しているか。
II -4-2-6-5 規則第212条の2第3項第1号関係
規則第212条の2第3項第1号に規定する「保険の目的物の価値の増加その他これに類する事情」には、例えば、次に掲げるものが含まれる。
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(1)保険の目的物の価値の増加(建物の増改築による火災保険の保険金額の増額等)
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(2)保険の目的物の入替(車両入替による自動車保険の保険金額の増額等)
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(3)被保険範囲の拡大(年齢条件の変更による自動車保険の保障範囲の拡大等)
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(4)団体契約の被保険者数の増加
II -4-2-6-6 規則第234条第1項第8号関係
住宅ローンの申込みを受け付けている顧客に対して、住宅関連火災保険、住宅関連債務返済支援保険又は住宅関連信用生命保険の募集を行う際には、当該保険契約の締結が当該住宅ローンの貸付けの条件ではない旨の説明を書面の交付又はこれに代替する電磁的方法による提供により行う必要があることに留意すること。
II -4-2-6-7 規則第234条第1項第10号(特定保険契約の場合は、規則第234条の27第1項第1号)関係
顧客に資金需要があるにもかかわらず、保険募集を行うために意図的に貸付申込みをさせない場合については、「顧客が当該銀行等に対し資金の貸付けの申込みを行っている場合」とみなされる。
II -4-2-6-8 銀行等の保険募集に係る法令等遵守責任者等
銀行等は、規則第212条第2項第3号に規定する保険募集に係る法令等の遵守を確保する業務が確実に実施されるよう、同号に規定する法令等の遵守を確保する業務に係る責任者(当該責任者を指揮し保険募集に係る法令等の遵守を確保する業務を統括管理する統括責任者を含む。)について、保険募集に関する法令や保険契約に関する知識等を有する人材を配置しているか。
II -4-2-6-9 銀行等の保険募集に係る内部監査
銀行等は、保険募集に係る業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、当該銀行等の内部監査が確実に実施されるよう、当該部門に保険募集に関する法令や保険契約に関する知識等を有する人材を配置しているか。
II -4-2-6-10 公正取引委員会ガイドライン関係
銀行等は、「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日 公正取引委員会)における「第2部第2.2銀行等の保険募集業務に係る不公正な取引方法」に十分留意した業務運営を行っているか。
II -4-2-7 保険募集の再委託
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(1)管理態勢
保険募集再委託者及び所属保険会社が、法第275条第5項第2号に規定する「再委託に係る保険募集の的確、公正かつ効率的な遂行を確保するために必要な体制の整備その他の措置」を講じているかどうかは、以下の点に着目して審査し、認可後においてもその取り組み状況等を確認する必要がある。
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所属保険会社における態勢整備
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ア. 再委託に係る保険募集の的確、公正かつ効率的な遂行を確保するために、以下に掲げる事項を含む適切な再委託に係る方針を策定しているか。
- 再委託に係る保険募集において取り扱う保険契約の種類
- 再委託に係る保険募集の遂行に求められる資格・知識・能力・経験等
- 再委託に係る保険募集の実施手続のフロー
- 再委託に係る保険募集における個人情報の取扱い
- 保険契約締結後に行うことが必要となる業務(注)について、保険募集再受託者、保険募集再委託者及び所属保険会社の間の業務分担並びにその顧客への明示方法
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(注)例えば、契約内容に関する照会への対応、顧客からの苦情・相談への対応、保険金等の支払手続きに関する照会等を含む各種手続き方法に関する案内等といった業務をいう。
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- 再委託契約書に記載すべき事項
- その他再委託に係る保険募集の的確、公正かつ効率的な遂行を確保するために必要な事項
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イ. 上記ア.の方針に沿って再委託の許諾を与える態勢が構築されているか。
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ウ. 保険募集再受託者による再委託に係る保険募集の実施状況や保険募集再委託者が行う保険募集再受託者に対する教育・管理・指導の実施状況が、上記ア.の方針に沿ったものとなっているかについて、所属保険会社と保険募集再委託者との間の委託契約書や保険募集再委託者と保険募集再受託者との間の再委託契約書等に基づき、定期的にかつ必要に応じて確認し、必要に応じて当該実施状況の改善を求めることができる態勢が構築されているか。
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エ. 保険募集再受託者が再委託に係る保険募集を行う者として不適当と認められる場合には、所属保険会社と保険募集再委託者との間の委託契約書や保険募集再委託者と保険募集再受託者との間の再委託契約書等に基づき、再委託契約の変更又は解除を求めることが可能となっているか。
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保険募集再委託者における態勢整備
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ア. II-4-2-1(3)(保険募集人の採用・委託・登録・届出)や「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)」(少額短期保険業者向けの監督指針)II-3-3-1(3)(少額短期保険募集人の採用・委託・登録(届出))に加え、上記ア.の方針に沿って、保険募集再受託者の選定を行う態勢が構築されているか。
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イ. 保険募集再受託者による再委託に係る保険募集について、II-4-2-1(4)(特定保険募集人等の教育・管理・指導)や「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)」(少額短期保険業者向けの監督指針)II-3-3-1(4)(少額短期保険募集人の教育・管理・指導)に加え、上記ア.の方針に沿って、適切に教育・管理・指導する態勢が構築されているか。
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(2)再委託に係る重要な事項の変更
法第275条第3項が「再委託に係る事項の定めを含む委託に係る契約の締結」を認可対象としている趣旨を踏まえ、例えば、認可申請書に記載された保険契約の種類とは異なる種類の保険商品を取り扱う場合等、再委託に係る事項に重要な変更があった場合には、その都度認可申請が必要となることに留意する。
II -4-2-8 直接支払いサービス
保険会社又は保険募集人は、保険募集等を行うにあたって、保険金を受け取るべき者の選択により、直接支払いサービスが受けられる旨を表示し、かつ、提携事業者が提供する財・サービスの内容・水準に言及する場合には、以下のような点に留意し、規則第53条の12の2に規定する措置が講じられているかどうか及び規則第227条の2第3項第5号及び規則第234条の21の2第1項第3号に規定する情報の提供が行われているかどうかを確認するものとする。
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(1)保険募集時に保険契約者又は被保険者に対して以下に掲げる事項の情報提供が行われているか。
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保険金を受け取ることができること(提携事業者からの財・サービスの購入や直接支払いサービスの利用が義務づけられないこと)
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提携事業者の選定基準(提携事業者が決定している場合には、提携事業者の名称も表示する。)
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直接支払いサービスを受ける場合において、保険金が財・サービスの対価に満たないときは、顧客が不足分を支払う必要があること(余剰が生じた場合には、余剰分を保険金として受け取ることができること)
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当初想定していた財・サービスを提供可能な提携事業者の紹介が困難となる場合として想定されるケース
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(2)保険契約者、被保険者、保険金を受け取るべき者又は提携事業者から紹介手数料その他の報酬を得ていないか。
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(3)提携事業者との同意のもとで提供する財・サービスの内容・水準や保険金を受け取るべき者が直接支払いサービスを利用した場合の連絡・支払方法などの手続きを定めているか。
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(4)提携事業者が提供する財・サービスの質の確認や、問題が発見された場合の提携事業者の入れ替えなど、保険募集時に保険契約者又は被保険者に説明した内容・水準の財・サービスを提供できる提携事業者を紹介できる状態を維持するための措置を講じているか。
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(5)保険事故発生時に、提携事業者からの財・サービスの購入や直接支払いサービスを受けることが義務づけられるものではない(保険金を受け取ることができる)旨を、改めて、保険金を受け取るべき者に説明しているか。
II -4-2-9 保険募集人の体制整備義務(法第294条の3関係)
保険募集人においては、保険募集に関する業務について、業務の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じているか。また、監査等を通じて実態等を把握し、不適切と認められる場合には、適切な措置を講じるとともに改善に向けた態勢整備を図っているか。
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(注)保険会社の役員又は使用人及び保険代理店の役員又は使用人については、当該保険会社や保険代理店が募集の適切性を確保する観点から適切な研修・指導などの体制整備をしている場合には、当該指導に従い研修に参加することで基本的に足りるものと考えられる。
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(1)保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、保険募集に従事する役員又は使用人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。
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(2)顧客情報管理(外部委託先を含む。)については、保険募集人の規模や業務特性に応じて、基本的に II -4-5に準じるものとする。
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(3)保険募集人が募集関連行為を募集関連行為従事者に行わせるにあたっての留意点については、 II -4-2-1(2)を参照するものとする。
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(4)保険会社のために保険契約の締結の代理・媒介を行う立場を誤解させるような表示を行っていないか。
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(注)単に「公平・中立」との表示を行った場合には、「保険会社と顧客との間で中立である」と顧客が誤解するおそれがある点に留意する。
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(5)二以上の所属保険会社等を有する保険募集人(規則第227条の2第3項第4号及び規則第234条の21の2第1項第2号に規定する二以上の所属保険会社等を有する保険募集人をいう。以下、II -4-2-9(5)において同じ。)においては、以下の点に留意しつつ、規則第227条の2第3項第4号及び規則第234条の21の2第1項第2号に規定する保険契約への加入の提案を行う理由の説明その他二以上の所属保険会社等を有する保険募集人の業務の健全かつ適切な運営を確保するための措置が講じられているかどうかを確認するものとする。
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二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が取り扱う商品の中から、顧客の意向に沿った比較可能な商品(保険募集人の把握した顧客の意向に基づき、保険の種別や保障(補償)内容などの商品特性等により、商品の絞込みを行った場合には、当該絞込み後の商品)の概要を明示し、顧客の求めに応じて商品内容を説明しているか。
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顧客に対し、特定の商品を提示・推奨する際には、当該提示・推奨理由を分かりやすく説明することとしているか。特に、自らの取扱商品のうち顧客の意向に合致している商品の中から、二以上の所属保険会社等を有する保険募集人の判断により、さらに絞込みを行った上で、商品を提示・推奨する場合には、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等について、説明を行っているか。
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(注1)形式的には商品の推奨理由を客観的に説明しているように装いながら、実質的には、例えば保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する。
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(注2)例えば、自らが勧める商品の優位性を示すために他の商品との比較を行う場合には、当該他の商品についても、その全体像や特性について正確に顧客に示すとともに自らが勧める商品の優位性の根拠を説明するなど、顧客が保険契約の契約内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示す必要がある点に留意する(法第300条第1項第6号、 II -4-2-2(9)参照)。
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上記、にかかわらず、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等に基づくことなく、商品を絞込み又は特定の商品を顧客に提示・推奨する場合には、その基準や理由等(特定の保険会社との資本関係やその他の事務手続・経営方針上の理由を含む。)を説明しているか。
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(注)各保険会社間における「公平・中立」を掲げる場合には、商品の絞込みや提示・推奨の基準や理由等として、特定の保険会社との資本関係や手数料の水準その他の事務手続・経営方針などの事情を考慮することのないよう留意する。
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上記からに基づき、商品の提示・推奨や保険代理店の立場の表示等を適切に行うための措置について、社内規則等において定めたうえで、定期的かつ必要に応じて、その実施状況を確認・検証する態勢が構築されているか。
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(6)保険募集人が他人(他の保険募集人を含む。)に対して商号等の使用を許諾している場合には、両者が異なる主体であることや、両者が取り扱う保険商品の品揃えが顧客に宣伝しているものと異なる場合における品揃えの相違点を説明するなど、当該他人が当該保険募集人と同一の事業を行うものと顧客が誤認することを防止するための適切な措置を講じているか。
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(7)保険募集人指導事業を行う保険募集人においては、以下のような点に留意しつつ、保険募集の業務の指導に関する基本となるべき事項を定めた実施方針を策定し、保険募集人指導事業の的確な遂行を確保するための措置を講じているか。
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(注)保険募集人における保険募集の業務のあり方を規定しないコンサルティング等の業務については、保険募集人指導事業に該当しない点に留意する。
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指導対象保険募集人における保険募集の業務について、適切に教育・管理・指導を行う態勢を構築し、必要に応じて改善等を求めるなど、規則第227条の15第1項に規定する措置を講じているか。
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(注1)保険募集人指導事業を行う場合、例えば、一定の知識・経験を有する者を配置するなど、教育・管理・指導を行う態勢を構築しているか。
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(注2)保険募集人指導事業を行う保険募集人が指導対象保険募集人を指導することにより、保険会社による指導対象保険募集人の教育・管理・指導( II -4-2-1(4)参照)の責任が免除されるものではない。
従って、保険会社においては、自らが指導対象保険募集人に対して行う教育・管理・指導とあいまって適切な保険募集を行わせる態勢を構築する必要があることに留意する。
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指導対象保険募集人の指導の実施方針において、規則第227条の15第2項に規定する事項が記載されているか。
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(8)上記のほか、保険募集人による保険募集管理態勢については、保険募集人の規模や業務特性に応じて、 II -4-2-1から II -4-2-7に準じて扱うものとする。
-
(9)保険募集人の体制整備の状況に問題があると認められるときは、必要に応じて法第305条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第306条又は第307条第1項に基づき行政処分を行うものとする。
II -4-2-10 帳簿書類
法第303条に規定する特定保険募集人(以下、 II -4-2-11において「特定保険募集人」という。)は、社内規則等に、規則第237条の2第1項に規定する書類の作成及び保存の方法を具体的に定めるものとする。
II -4-2-11 事業報告書
特定保険募集人の事業報告書の記載要領等は、以下のとおりとし、Excelファイルを用いて提出するものとする。
なお、外国法人の場合は、日本における業務に係るものについて作成するものとする。
-
(1)別紙様式第25号の2
生命保険、損害保険、少額短期保険いずれかの業態のみ特定保険募集人に該当する場合において、該当していない業態についても、報告の対象となることに留意する。また、「1. 事業概要」の記載に当たっては、以下に留意する。
- 「(1)保険代理店登録年月日」欄は、法第276条に規定する金融庁長官の登録を受けた日を記載する。取
- 扱いがないものについては、空欄とする。
- 「(2)代理申請会社(業者)名」欄において、取扱いがないものについては、空欄とする。
- 「(6)役員及び使用人の状況」欄は、期末の状況を記載する。取扱いがないものについては、空欄とす
- る。
- 「(10)保険募集人指導事業の実施状況等」「イ.加盟店数の推移の状況(直近3 ヵ年度)」欄は、全て
- の加盟店数について、各期末の状況を記載する。
- 「(14)委託を受けている保険会社数の推移(直近3ヵ年度)」欄は、各期末の状況を記載する。
- 「(20)保険募集にかかる苦情管理体制「イ.苦情の発生件数(直近3 ヵ年度)」欄は、各保険会社等に
- 報告した数について各期末の状況を記載する。
-
(2)別紙様式第25号の3
上記(1)に準じて取り扱う。
-
(3)事業報告書の提出先は、管轄財務局長等とする。
II -4-3 苦情等への対処(金融ADR制度への対応も含む。)
II -4-3-1 意義
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(1)相談・苦情・紛争等(苦情等)対処の必要性
顧客からの相談、苦情、紛争等(苦情等)に迅速かつ適切に対応し、顧客の理解を得ようとすることは、顧客に対する説明責任を事後的に補完する意味合いを持つ重要な活動の一つである。
近年、顧客の保護を図り保険商品・サービスへの顧客の信頼性を確保する観点から、苦情等への事後的な対処の重要性はさらに高まっている。
このような観点を踏まえ、簡易・迅速に保険商品・サービスに関する苦情処理・紛争解決を行うための枠組みとして金融ADR制度(ADRについて(注)参照)が導入されており、保険会社においては、金融ADR制度も踏まえつつ、適切に苦情等に対処していく必要がある。
-
(注)ADR(Alternative Dispute Resolution)
訴訟に代わる、あっせん・調停・仲裁等の当事者の合意に基づく紛争の解決方法であり、事案の性質や当事者の事情等に応じた迅速・簡便・柔軟な紛争解決が期待される。
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-
(2)対象範囲
保険会社の業務に関する申出としては、相談のほか、いわゆる苦情・紛争などの顧客からの不満の表明など、様々な態様のものがありうる。保険会社には、これらの様々な態様の申出に対して適切に対処していくことが重要であり、かかる対処を可能とするための適切な内部管理態勢を整備することが求められる。
加えて、保険会社には、金融ADR制度において、苦情と紛争のそれぞれについて適切な態勢を整備することが求められている。
もっとも、これら苦情・紛争の区別は相対的で相互に連続性を有するものである。特に、金融ADR制度においては、指定ADR機関において苦情処理手続と紛争解決手続の連携の確保が求められていることを踏まえ、保険会社においては、顧客からの申出を形式的に「苦情」「紛争」に切り分けて個別事案に対処するのではなく、両者の相対性・連続性を勘案し、適切に対処していくことが重要である。
II -4-3-2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立
II -4-3-2-1 意義
保険会社は、金融ADR制度において求められる措置・対応を含め、顧客から申出があった苦情等に対し、自ら迅速・公平かつ適切に対処すべく内部管理態勢を整備する必要がある。
II -4-3-2-2 主な着眼点
保険会社が、苦情等対処に関する内部管理態勢を整備するに当たり、業務の規模・特性に応じて、適切かつ実効性ある態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。
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(1)経営陣の役割
取締役会は、苦情等対処機能に関する全社的な内部管理態勢の確立について、適切に機能を発揮しているか。
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(2)社内規則等
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社内規則等において、苦情等に対し迅速・公平かつ適切な対応・処理を可能とするよう、苦情等に係る担当部署、その責任・権限及び苦情等の処理手続(事務処理ミスがあった場合等の対応も含む。)を定めるとともに、顧客の意見等を業務運営に反映するよう、業務改善に関する手続を定めているか。
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苦情等対処に関し社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)により、社内規則等を社内に周知・徹底をする等の態勢を整備しているか。
特に顧客からの苦情等が多発している場合には、まず社内規則等(苦情等対処に関するものに限らない。)の営業店に対する周知・徹底状況を確認し、実施態勢面の原因と問題点を検証することとしているか。
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(3)苦情等対処の実施態勢
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苦情等への対処に関し、適切に担当者を配置しているか。
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顧客からの苦情等について、関係部署が連携のうえ、速やかに処理を行う態勢を整備しているか。特に、苦情等対処における主管部署及び担当者が、個々の職員が抱える顧客からの苦情等の把握に努め、速やかに関係部署に報告を行う態勢を整備しているか。
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特に、保険金等の不払いに関する苦情等については、当該不払いを決定した支払担当部門のみで対処するのではなく、最終的にはコンプライアンス担当部門などの他の部門で適切に対処されたかどうかを検証する態勢となっているか。
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苦情等の解決に向けた進捗管理を適切に行い、長期未済案件の発生を防止するとともに、未済案件の速やかな解消を行う態勢を整備しているか。
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苦情等の発生状況に応じ、受付窓口における対応の充実を図るとともに、顧客利便に配慮したアクセス時間・アクセス手段(例えば、電話、手紙、FAX、eメール等)を設定する等、広く苦情等を受け付ける態勢を整備しているか。また、これら受付窓口、申出の方式等について広く公開するとともに、顧客の多様性に配慮しつつ分かりやすく周知する態勢を整備しているか。
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苦情等対処にあたっては、個人情報について、個人情報の保護に関する法律その他の法令、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、同ガイドライン(外国にある第三者への提供編)、同ガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)及び同ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)(以下、合わせて「保護法ガイドライン」という。)、金融分野ガイドライン等に沿った適切な取扱いを確保するための態勢を整備しているか(「II-4-5 顧客等に関する情報管理態勢」参照)。
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保険代理店及び金融サービス仲介業者を含め、業務の外部委託先が行う委託業務に関する苦情等について、顧客から保険会社への直接の連絡体制を設けるなど、迅速かつ適切に対処するための態勢を整備しているか。
また、当該苦情等について、顧客から外部委託先に申出があった場合には、外部委託先から保険会社へ漏れなく報告される態勢を整備しているか。
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反社会的勢力による苦情等を装った圧力に対しては、通常の苦情等と区別し、断固たる対応をとるため関係部署に速やかに連絡し、必要に応じ警察等関係機関との連携を取った上で、適切に対処する態勢を整備しているか。
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(4)顧客への対応
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苦情等への対処について、単に処理の手続の問題と捉えるにとどまらず事後的な説明態勢の問題として位置付け、苦情等の内容に応じ顧客から事情を十分にヒアリングしつつ、可能な限り顧客の理解と納得を得て解決することを目指しているか。
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苦情等を申し出た顧客に対し、申出時から処理後まで、顧客特性にも配慮しつつ、必要に応じて、苦情等対処の手続の進行に応じた適切な説明(例えば、苦情等対処手続の説明、申出を受理した旨の通知、進捗状況の説明、結果の説明等)を行う態勢を整備しているか。
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申出のあった苦情等について、自ら対処するばかりでなく、苦情等の内容や顧客の要望等に応じて適切な外部機関等を顧客に紹介するとともに、その標準的な手続の概要等の情報を提供する態勢を整備しているか。
なお、複数ある苦情処理・紛争解決の手段(金融ADR制度を含む。)は任意に選択しうるものであり、外部機関等の紹介に当たっては、顧客の選択を不当に制約していないか留意することとする。
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外部機関等において苦情等対処に関する手続が係属している間にあっても、当該手続の他方当事者である顧客に対し、必要に応じ、適切な対応(一般的な資料の提供や説明など顧客に対して通常行う対応等)を行う態勢を整備しているか。
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(5)情報共有・業務改善等
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苦情等及びその対処結果等が類型化の上で内部管理部門や営業部署に報告されるとともに、重要案件は速やかに監査部門や経営陣に報告されるなど、事案に応じ必要な関係者間で情報共有が図られる態勢を整備しているか。
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苦情等の内容及び対処結果について、自ら対処したものに加え、外部機関が介在して対処したものを含め、適切かつ正確に記録・保存しているか。また、これらの苦情等の内容及び対処結果について、指定ADR機関より提供された情報等も活用しつつ、分析し、その分析結果を継続的に顧客対応・事務処理についての態勢の改善や苦情等の再発防止策・未然防止策に活用する態勢を整備しているか。
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苦情等対処機能の実効性を確保するため、検査・監査等の内部けん制機能が十分発揮されるよう態勢を整備しているか。
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苦情等対処の結果を業務運営に反映させる際、業務改善・再発防止等必要な措置を講じることの判断並びに苦情等対処態勢の在り方についての検討及び継続的な見直しについて、経営陣が指揮する態勢を整備しているか。
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(6)外部機関等との関係
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苦情等の迅速な解決を図るべく、外部機関等に対し適切に協力する態勢を整備しているか。
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外部機関等に対して、自ら紛争解決手続の申立てを行う際、自らの手続を十分に尽くさずに安易に申立てを行うのではなく、顧客からの苦情等の申出に対し、十分な対応を行い、かつ申立ての必要性につき社内で適切な検討を経る態勢を整備しているか。
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II -4-3-3 金融ADR制度への対応
II -4-3-3-1 指定紛争解決機関(指定ADR機関)が存在する場合
II -4-3-3-1-1 意義
顧客保護の充実及び保険商品・サービスへの顧客の信頼性の向上を図るためには、保険会社と顧客との実質的な平等を確保し、中立・公正かつ実効的に苦情等の解決を図ることが重要である。そこで、金融ADR制度において、指定ADR機関によって、専門家等関与のもと、第三者的立場からの苦情処理・紛争解決が行われることとされている。
なお、金融ADR制度においては、苦情処理・紛争解決への対応について、主に保険会社と指定ADR機関との間の手続実施基本契約(法第2条第42項)によって規律されているところである。
保険会社においては、指定ADR機関において苦情処理・紛争解決を行う趣旨を踏まえつつ、手続実施基本契約で規定される義務等に関し、適切に対応する必要がある。
II -4-3-3-1-2 主な着眼点
保険会社が、上記意義を踏まえ、金融ADR制度への対応に当たり、業務の規模・特性に応じて、適切かつ実効性ある態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。
なお、「II-4-4-2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立」における留意点も参照すること。
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(1)総論
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手続実施基本契約
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ア. 業務(生命保険業務、損害保険業務、外国生命保険業務、外国損害保険業務等)の種別に応じた指定ADR機関との間で、速やかに手続実施基本契約を締結しているか。
また、例えば、指定ADR機関の指定取消しや新たな指定ADR機関の設立などの変動があった場合であっても、顧客利便の観点から最善の策を選択し、速やかに必要な措置(新たな苦情処理措置・紛争解決措置の実施、手続実施基本契約の締結等)を講じるとともに、顧客へ周知する等の適切な対応を行っているか。
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イ. 指定ADR機関と締結した手続実施基本契約の内容を誠実に履行する態勢を整備しているか。
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公表・周知・顧客への対応
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ア. 手続実施基本契約を締結した相手方である指定ADR機関の商号又は名称及び連絡先を適切に公表しているか。
公表の方法について、例えば、ホームページへの掲載、ポスターの店頭掲示、パンフレットの作成・配布又はマスメディアを通じての広報活動等、業務の規模・特性に応じた措置をとっているか。仮に、ホームページに掲載したとしても、これを閲覧できない顧客も想定される場合には、そのような顧客にも配慮することとしているか。
公表する際は、顧客にとって分かりやすいように表示しているか(例えば、ホームページで公表する場合において、顧客が容易に金融ADR制度の利用に関するページにアクセスできるような表示が望ましい。)。
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イ. 手続実施基本契約も踏まえつつ、顧客に対し、指定ADR機関による標準的な手続のフローや指定ADR機関の利用の効果(時効の完成猶予等)等必要な情報の周知を行う態勢を整備しているか。
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ウ. 金融商品取引業者が組成した金融商品を保険会社が販売する場合、当該商品を組成した金融商品取引業者や、当該商品を販売した保険会社といった、業態の異なる複数の業者が関係することになるため、顧客の問題意識を把握した上で、問題の発生原因に応じた適切な指定ADR機関を紹介するなど、丁寧な対応を行っているか。
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(2)苦情処理手続・紛争解決手続についての留意事項
保険会社が手続実施基本契約により手続応諾・資料提出・特別調停案尊重等の各義務を負担することを踏まえ、検証に当たっては、例えば、以下の点に留意することとする。
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共通事項
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ア. 指定ADR機関から手続応諾・資料提出等の求めがあった場合、正当な理由がない限り、速やかにこれに応じる態勢を整備しているか。
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イ. 指定ADR機関からの手続応諾・資料提出等の求めに対し拒絶する場合、苦情・紛争の原因となった部署のみが安易に判断し拒絶するのではなく、組織として適切に検討を実施する態勢を整備しているか。また、可能な限り、その判断の理由(正当な理由)について説明する態勢を整備しているか。
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紛争解決手続への対応
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ア. 紛争解決委員から和解案の受諾勧告又は特別調停案の提示がされた場合、速やかに受諾の可否を判断する態勢を整備しているか。
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イ. 和解案又は特別調停案を受諾した場合、担当部署において速やかに対応するとともに、その履行状況等を検査・監査部門等が事後検証する態勢を整備しているか。
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ウ. 和解案又は特別調停案の受諾を拒絶する場合、業務規程(法第308条の7第1項)等を踏まえ、速やかにその理由を説明するとともに、訴訟提起等の必要な対応を行う態勢を整備しているか。
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II -4-3-3-2 指定ADR機関が存在しない場合
II -4-3-3-2-1 意義
金融ADR制度においては、指定ADR機関が存在しない場合においても、代わりに苦情処理措置・紛争解決措置を講ずることが法令上求められている。保険会社においては、これらの措置を適切に実施し、保険商品・サービスに関する苦情・紛争を簡易・迅速に解決することにより、顧客保護の充実を確保し、保険商品・サービスへの顧客の信頼性の向上に努める必要がある。
II -4-3-3-2-2 主な着眼点
保険会社が、苦情処理措置・紛争解決措置を講じる場合、金融ADR制度の趣旨を踏まえ、顧客からの苦情・紛争の申出に関し、業務の規模・特性に応じ、適切に対応する態勢を整備しているかを検証する。その際、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮しつつ、例えば、以下の点に留意することとする。
なお、「II-4-3-2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立」における留意点も参照すること。
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(1)総論
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苦情処理措置・紛争解決措置の選択
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ア. 業務(生命保険業務、損害保険業務、外国生命保険業務、外国損害保険業務等)の内容、苦情等の発生状況及び営業地域等を踏まえて、法令で規定されている以下の各事項のうちの一つ又は複数を苦情処理措置・紛争解決措置として適切に選択しているか。なお、その際は、例えば、顧客が苦情・紛争を申し出るに当たり、顧客にとって地理的にアクセスしやすい環境を整備するなど、顧客の利便の向上に資するような取組みを行うことが望ましい。
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(ア)苦情処理措置
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a. 苦情処理に従事する従業員への助言・指導を一定の経験を有する消費生活専門相談員等に行わせること
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b. 自社で業務運営体制・社内規則を整備し、公表等すること
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c. 金融商品取引業協会、認定投資者保護団体を利用すること
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d. 国民生活センター、消費生活センターを利用すること
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e. 他の業態の指定ADR機関を利用すること
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f. 苦情処理業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用すること
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(イ)紛争解決措置
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a. 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に定める認証紛争解決手続を利用すること
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b. 金融商品取引業協会、認定投資者保護団体を利用すること
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c. 弁護士会を利用すること
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d. 国民生活センター、消費生活センターを利用すること
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e. 他の業態の指定ADR機関を利用すること
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f. 紛争解決業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用すること
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イ. 苦情・紛争の処理状況等のモニタリング等を継続的に行い、必要に応じ、苦情処理措置・紛争解決措置について検討及び見直しを行う態勢を整備しているか。
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ウ. 苦情処理業務・紛争解決業務を公正かつ的確に遂行できる法人を利用する場合、当該法人が苦情処理業務・紛争解決業務を公正かつ的確に遂行するに足りる経理的基礎及び人的構成を有する法人であること(規則第55条の2第1項第5号、同条第2項第5号)について、相当の資料等に基づいて、合理的に判断しているか。
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エ. 外部機関を利用する場合、必ずしも当該外部機関との間において業務委託契約等の締結までは求められていないが、標準的な手続のフローや、費用負担に関する事項等について予め取決めを行っておくことが望ましい。
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オ. 外部機関の手続を利用する際に費用が発生する場合について、顧客の費用負担が過大とならないような措置を講じる等、苦情処理・紛争解決の申立ての障害とならないような措置を講じているか。
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運用
苦情処理措置・紛争解決措置の適用範囲を過度に限定的なものとするなど、不適切な運用を行っていないか。なお、苦情処理措置と紛争解決措置との間で適切な連携を確保しているかについても留意する(「II-4-3-1(2)対象範囲」参照)。
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(2)苦情処理措置(自社で態勢整備を行う場合)についての留意事項
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消費生活専門相談員等による従業員への助言・指導態勢を整備する場合
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ア. 定期的に消費生活専門相談員等による研修を実施する等、苦情処理に従事する従業員のスキルを向上させる態勢を整備しているか。
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イ. 消費生活専門相談員等との連絡体制を築く等、個別事案の処理に関し、必要に応じ、消費生活専門相談員等の専門知識・経験を活用する態勢を整備しているか。
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自社で業務運営体制・社内規則を整備する場合
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ア. 苦情の発生状況に応じ、業務運営体制及び社内規則を適切に整備するとともに、当該体制・規則に基づき公正かつ的確に苦情処理を行う態勢を整備しているか。
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イ. 苦情の申出先を顧客に適切に周知するとともに、苦情処理にかかる業務運営体制及び社内規則を適切に公表しているか。
周知・公表の内容として、必ずしも社内規則の全文を公表する必要はないものの、顧客が、苦情処理が適切な手続に則って行われているかどうか自ら確認できるようにするため、苦情処理における連絡先及び標準的な業務フロー等を明確に示すことが重要であることから、それに関連する部分を公表しているかに留意する必要がある。
なお、周知・公表の方法について、II-4-3-3-1-2(1)を参照のこと。
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(3)苦情処理措置(外部機関を利用する場合)及び紛争解決措置の留意事項
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周知・公表等
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ア. 保険会社が外部機関を利用している場合、顧客保護の観点から、例えば、顧客が苦情・紛争を申し出るに当たり、外部機関を利用できることや、外部機関の名称及び連絡先、その利用方法等、外部機関に関する情報について、顧客にとって分かりやすいように、周知・公表を行うことが望ましい。
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イ. 苦情処理・紛争解決の申立てが、地理又は苦情・紛争内容その他の事由により、顧客に紹介した外部機関の取扱範囲外のものであるとき又は他の外部機関等(苦情処理措置・紛争解決措置として保険会社が利用している外部機関に限らない。)による取扱いがふさわしいときは、他の外部機関等を顧客に紹介する態勢を整備しているか。
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ウ. 金融商品取引業者が組成した金融商品を保険会社が販売する場合については、II-4-3-3-1-2(1)ウ.を参照すること。
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手続への対応
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ア. 外部機関から苦情処理・紛争解決の手続への応諾、事実関係の調査又は関係資料の提出等を要請された場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかにこれに応じる態勢を整備しているか。
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イ. 苦情処理・紛争解決の手続への応諾、事実関係の調査又は関係資料の提供等の要請を拒絶する場合、苦情・紛争の原因となった部署のみが安易に判断し拒絶するのではなく、苦情・紛争内容、事実・資料の性質及び外部機関の規則等を踏まえて、組織として適切に検討を実施する態勢を整備しているか。
また、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、可能な限り拒絶の理由について説明する態勢を整備しているか。
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ウ. 紛争解決の手続を開始した外部機関から和解案、あっせん案等の解決案(以下、「解決案」という。)が提示された場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかに受諾の可否を判断する態勢を整備しているか。
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エ. 解決案を受諾した場合、担当部署において速やかに対応するとともに、その履行状況等を検査・監査部門等が事後検証する態勢を整備しているか。
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オ. 解決案の受諾を拒絶する場合、当該外部機関の規則等も踏まえつつ、速やかにその理由を説明するとともに、必要な対応を行う態勢を整備しているか。
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II -4-3-4 各種書面への記載
保険会社は、各種書面において金融ADR制度への対応内容を記載することが求められている(注意喚起情報等)。それら書面には、指定ADR機関が存在しない場合は苦情処理措置・紛争解決措置の内容を記載する必要があるが、例えば、保険会社が外部機関を利用している場合、当該外部機関(苦情処理・紛争解決にかかる業務の一部を他の機関に委託等している場合、当該他の機関も含む。)の名称及び連絡先など、実態に即して適切な事項を記載するべきことに留意する。
II -4-3-5 監督手法・対応
苦情等への対処について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づく行政処分を行うものとする。
この点、指定ADR機関が存在する場合において、保険会社に手続応諾義務等への違反・懈怠等の問題が認められた場合であっても、一義的には保険会社と指定ADR機関との手続実施基本契約にかかる不履行であるため、直ちに行政処分の対象となるものではなく、当局としては、保険会社の対応を全体的・継続的にみて判断を行うものとする。
なお、一般に顧客と保険会社との間で生じる個別の紛争は、私法上の契約に係る問題であり、基本的にADRや司法の場を含め当事者間で解決されるべき事柄であることに留意する必要がある。
II -4-4 顧客保護等
II -4-4-1 顧客の最善の利益を勘案した誠実公正義務(金融サービス提供法第2条)
(1)主な着眼点保険会社が、その業務を通じて、社会に付加価値をもたらし、同時に自身の経営の持続可能性を確保していくためには、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客に対して誠実かつ公正にその業務を行うことが求められる。そこで、保険会社が、必ずしも短期的・形式的な意味での利益に限らない「顧客の最善の利益」をどのように考え、これを実現するために自らの規模・特性等に鑑み、組織運営や商品・サービス提供も含め、顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行しているかを検証する。また、保険募集人及び保険仲立人についても上記に準じて検証することとする。
(2)監督手法・対応
日常の監督事務や、不祥事件届出書等を通じて把握された保険会社の誠実公正義務上の課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて法第128 条の規定に基づく報告を求めることを通じて、保険会社における自主的な業務改善状況を把握することとする。保険会社の業務の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、法第132 条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、法第133 条の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。また、保険募集人及び保険仲立人についても上記に準じて必要な対応を検討するものとする。
II -4-4-2 顧客に対する説明責任、適合性原則
保険会社は、顧客保護を図るため、その業務に関し、業務の的確な遂行その他の健全かつ適切な運営を確保する必要がある。
このため、以下のような措置等について、適切に実行するとともに、内部監査部門による監査や代理店監査等を通じて、事後的に適切性等を検証し、必要に応じて改善を図ることが求められる。
II -4-4-2-1 顧客保護を図るための留意点
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(1)顧客に対して公正な事務処理を行っているか。
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(2)保険契約者との取引にあたっては、取引の内容等を保険契約者に対し、適切かつ十分な説明を行っているか。
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(3)変額保険及び外貨建て保険等、保険契約者がリスクを負っている商品の販売を行うにあたっては、保険契約者に対し適切かつ十分な説明を行い、かつ必ず保険契約者から説明を受けた旨の確認を行うための方策を講じているか。
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(4)高齢者に対する保険募集は、適切かつ十分な説明を行うことが重要であることにかんがみ、社内規則等に高齢者の定義を規定するとともに、高齢者や商品の特性等を勘案したうえで、きめ細やかな取組みやトラブルの未然防止・早期発見に資する取組みを含めた保険募集方法を具体的に定め、実行しているか。
その際の取組みとしては、例えば、以下のような方策を行うなどの適切な取組みがなされているか。
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保険募集時に親族等の同席を求める方法。
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保険募集時に複数の保険募集人による保険募集を行う方法。
-
保険契約の申込みの検討に必要な時間的余裕を確保するため、複数回の保険募集機会を設ける方法。
-
保険募集を行った者以外の者が保険契約申込の受付後に高齢者へ電話等を行うことにより、高齢者の意向に沿った商品内容等であることを確認する方法。
また、高齢者や商品の特性等を勘案したうえで保険募集内容の記録(録音・報告書への記録等)・保存や契約締結後に契約内容に係るフォローアップを行うといった適切な取組みがなされているか。
これらの高齢者に対する保険募集に係る取組みについて、取組みの適切性等の検証等を行っているか。
-
-
(5)保険会社又は保険募集人が行う電話による新規の保険募集等(転換及び自らが締結した又は保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為を含む。)は、非対面で、顧客の予期しないタイミングで行われること等から、特に苦情等が発生しやすいといった特性等にかんがみ、当該行為を反復継続的に行う保険会社又は保険募集人は、トラブルの未然防止・早期発見に資する取組みを含めた保険募集方法を具体的に定め、実行するとともに、保険募集人に対して、適切な教育・管理・指導を行っているか。
また、これらの取組みについて、適切性の検証等を行い、必要に応じて見直しを行っているか。
その際の取組みとしては、以下の措置を含めた適切な取組みがなされ ているか。
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説明すべき内容を定めたトークスクリプト等を整備のうえ、徹底していること。
-
顧客から、今後の電話を拒否する旨の意向があった場合、今後の電話を行わないよう徹底していること。
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通話内容を記録・保存していること。
-
苦情等の原因分析及び再発防止策の策定及び周知を行っていること。
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保険募集等を行った者以外の者による通話内容の確認(成約に至らなかったものを含む。)及びその結果を踏まえた対応を行っていること。
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(6)顧客情報は法的に許される場合及び顧客自身の同意がある場合を除き、第三者に開示していないか。
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(7)貸付先の財務情報など、個別企業に関わる情報についても、厳重かつ慎重に取り扱っているか。
II -4-4-2-2 法第100条の2に規定する業務運営に関する措置等
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(1)規則第53条から第53条の10までに規定する措置などが適正に実施されているか。
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(2)規則第53条、第53条の4、第53条の6及び第53条の8から第53条の10までに規定する措置について、保険会社の従業員及び特定保険募集人に対する教育・管理・指導を行う体制が整備されているか。
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(3)当該措置について、保険会社の従業員及び特定保険募集人の実施状況を調査・把握する体制が整備されているか。
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(4)運用報告書の作成に当たっては、以下の点に留意することとする。
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規則第74条第1号に掲げる保険契約に係る運用報告書
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ア. 規則第54条の4第1項第5号に規定する「財務又は業務(運用実績連動型保険契約に係るものに限る。)に関する外部監査」には、以下のもの(これらに相当するものを含む。)が該当する。
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(ア) 財務諸表監査及び内部統制監査
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(イ) 会社法に基づく会計監査人による会計監査
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(ウ) 内部統制保証業務
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(エ) 資産運用業務を行う会社のパフォーマンス開示がグローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)に準拠しているかに関する検証
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イ. 規則第54条の4第2項第3号に規定する「当該保険会社とファンド関係者との間の資本関係」については、ファンド関係者が保険会社の総株主等の議決権の過半数を保有している者その他の当該保険会社と密接な関係を有する者として令第13 条の8 第1 項各号に掲げる者及び子会社等に該当する場合に、その旨を記載する。
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ウ. 規則第54条の4第2項第3号に規定する当該保険会社とファンド関係者との間の「人的関係」については、合理的と認められる一定の時点における役職員の兼職状況を記載する。
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規則第74条第3号に掲げる保険契約に係る運用状況報告書
運用状況報告書に、以下の事項が記載されているか。
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ア. 当期の運用実績の推移
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(注)当期の諸費用に関する事項を反映した運用実績を記載した書面を交付する等の、当該顧客ごとの費用控除後の運用実績を顧客に対し明示する措置を講ずること。
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イ. 当期の運用方針及び当該運用方針に従った投資行動が行われたかについての分析
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ウ. 今後の運用方針
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(5)規則第53条第1項第2号に掲げる書面の作成にあたっては、以下のことに留意しているか。
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同号ロに掲げる「基礎率変更権行使基準に規定する予定発生率に対する実績発生率の状況を示す指標の推移」については、当該指標の水準が概ね把握できるような、適切な区分により記載してもよいこととする。
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同号ハに掲げる「その他基礎率変更権行使基準に該当するかどうか参考となる事項」については、基礎率変更権行使基準に該当しても、当該行使基準を行使しない理由(経営判断の理由)その他参考となる事項を記載するものとする。
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(6)存続厚生年金基金(公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成25年法律第63号)附則第3条第11号(定義)に規定する存続厚生年金基金をいう。)を保険契約者とする保険契約の引受けに関し、以下の点に留意した態勢が整備されているか。
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保険会社が規則第53条第1項第6号イに規定する通知を行ったにもかかわらず、なお公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(平成26年政令第74号)第3条第2項(存続厚生年金基金に関する読替え等)の規定によりなおその効力を有するものとされる公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成26年政令第73号)第1条(厚生年金基金令の廃止)の規定による廃止前の厚生年金基金令(昭和41年政令第324号)第39条の15第1項の規定に違反するおそれが解消しない場合において、例えば、運用指針の変更の検討を求める等、保険契約者と協議を行っているか。さらに、当該協議を経てもなお同項の規定に違反するおそれが解消しない場合においては、当該保険契約者に対し、最終的に保険契約の解約を慫慂することを含めて検討する等、当該保険契約者が同項の規定を遵守することを確保するための必要な方策を講じているか。
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保険契約者の知識、経験、財産の状況及び保険契約を締結する目的等について把握し、当該保険契約者から運用指針が示された際、これらの事情に照らして必要と認められる場合には、当該保険契約者に対し、当該運用指針に基づき運用を行った場合に発生する可能性のあるリスクの説明を行うための適切な態勢が整備されているか。
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規則第54条の4第2項第2号に規定するファンド資産及びその運用に係る重要な業務を行う者に係るデューディリジェンス及び継続的なモニタリングを行うに当たり、その具体的な基準及び手法を定めた社内規則等を整備するとともに、コンプライアンス部門やリスク管理部門が当該デューディリジェンス及びモニタリングの実施状況につき検証を行う等、必要に応じた適切な態勢が整備されているか。
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(7)規則第53条に規定する措置に関して、当該書面等に記載又は説明すべき事項及び保険契約申込書等における当該書面の受領確認に関する文言の表示にあっては、文字の大きさ等に留意して、その平明性及び明確性が確保されているか。
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(8)規則第53条の4に掲げる書面には、適正な保険募集を確保する観点から、以下の内容についての記載が含まれる必要がある。
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当該保険会社とその特定関係者に該当する金融機関とは別法人であること。
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当該保険会社が引き受ける保険は、当該金融機関が受け入れる預金ではなく、また預金保険制度の対象となるものではないこと。
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当該金融機関の役職員は、保険会社が提供する保険商品若しくは役務に関する自己の評価、意見等を表明し、又はその保険商品若しくは利点を強調すること等によって、当該保険会社と保険契約者との間の契約の締結を補助するときは、法第275条の規定に違反するおそれがあるので、これを行うことはできないこと。
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保険募集人が、保険会社との間で保険契約を締結することを条件として当該保険会社の特定関係者(法第100条の3に規定する特定関係者及び法第194条に規定する特殊関係者をいう。)が当該保険契約に係る保険契約者又は被保険者に対して信用を供与し又は信用の供与を約していることを知りながら、当該保険契約者に対して当該保険契約の申込みをさせる行為は、法第300条により禁止されていること。
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当該保険会社は、当該金融機関の顧客に関する非公開情報が当該保険会社が引き受ける保険に係る保険募集に利用されないことを確保するための措置を講じなければならない(当該非公開情報が保険募集に利用されることにつき事前に当該顧客の書面による同意がある場合を除く。)とされていること。
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(9)規則第53条の7第1項に規定する措置に関し、第一分野の保険(年金保険及び生存保険を除く。)及び法第3条第4項第2号に掲げる保険(損害を填補することを約した保険を除く。)の契約について、
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保険契約の引受基準が社内規則等に定められ、会社が知り得た他の生命保険契約又は損害保険契約(以下、II -4-4-1-2(9)において「他の保険契約」という。)を含む保険金額が当該引受基準に比し過大である場合には、より慎重な引受判断を行うなどモラルリスク排除・抑制のための十分な体制が整備されているか。
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保険契約者又は被保険者の収入、資産、逸失利益等の計数に基づき算定した額と保険金額(会社が知り得た他の保険契約に係る保険金額を含む。)との比較などにより、保険金額の妥当性(過大でないこと)を判断・確認する方法を含む社内規則等が適切に定められ、それに基づき業務が運営されるための十分な体制が整備されているか。
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(注)社内規則等を定めるにあたって、次の点に留意しているか。
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ア. 会社の定める一定金額(以下、「保険金の限度額」という。)を超える保険契約の引受審査を行う場合には、保険契約者又は被保険者の収入、資産、逸失利益等の計数を客観的かつ合理的な方法により確認する等、適切な審査を行う旨を定めているか。
また、客観的かつ合理的な方法により確認できない場合には、モラルリスク排除・抑制の観点から、より慎重な対応を要する旨を定めているか。
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イ. 死亡保険(規則第53条の7第2項に規定する死亡保険をいう。)の引受けについて
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(ア)保険の不正な利用を防止することにより被保険者を保護するため、死亡保険に係る保険金の限度額を具体的に定め、これを超える保険金額による保険の引受けを行わないものと定めているか。また、この限度額は、生命保険協会の「契約内容登録制度・契約内容照会制度」又は損害保険協会の「契約内容登録制度」等(以下、「契約内容登録制度等」と総称する。)への照会結果を踏まえ、同一被保険者の他の死亡保険に係る保険金額と通算する旨を定めているか。
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(イ)その他、保険の不正な利用を防止することにより被保険者を保護するため、顧客ニーズの確認等を通じ、適切な引受審査を行う旨を定めているか。
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(注)規則第53条の7第2項に規定する「不正な利用のおそれが少ないと認められるもの」とは、例えば一時払終身保険、一時払養老保険のほか、既払込保険料相当額に運用益等を加えた金額程度の保険金を被保険者の死亡時に支払う個人年金保険や学資保険、遊園地などにおいて不特定の入場者が、事故等によって死亡した場合の見舞金の支払いを行うための団体保険、等の不正な利用が発生するおそれが少ないことを合理的に説明可能なものをいう。
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保険金の限度額を社内規則等で定めている場合には、当該限度額以内で保険が引き受けられているかを検証するシステムを構築しているか。また、保険の不正な利用を防止することにより被保険者を保護するため、適切な引受審査が行われていることを検証する体制を構築しているか。
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保険金額(保険会社が知り得た他の保険契約に係る保険金額を含む。)の妥当性を判断・確認する方法等について、保険募集人に対して適正な教育・管理・指導を行うための体制が整備されているか。
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保険金額の決定に際し、契約内容登録制度等を利用する等モラルリスク排除・抑制のため効果がある方法を採用する体制が整備され、当該制度の利用その他の方法で知り得た他の保険契約に係る保険金額を勘案した結果が適切に記録されているか。
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(10)規則第53条の7第1項に規定する措置に関し、生命保険及び損害保険の契約について、保険契約者又は被保険者本人に対 し、当該契約内容への同意の記録を求める措置を確保するための方法を含む社内規則等が適切に定められ、それに基づき業務が運営されるための十分な体制が整備されているか。
なお、本人以外の者に上記記録を行わせる場合には、社内規則等に本人以外の者が当該記録を行える場合を限定して規定するとともに、その場合における取扱いを規定しているか。
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(11)規則第53条の7第1項に規定する措置に関し、保険契約の申込みを受けるにあたり、顧客に対して契約内容の確認を求めるとともに、例えば、申込書の写しや申込内容を記載した書面等を顧客に交付する等の体制が整備されているか。
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(注)非対面の方式により保険契約の申込みを受ける場合は、以下のような点に留意すること。
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例えば、電話の場合は口頭、郵便の場合は書面への記載、インターネット等の場合は電磁的方法による表示により、顧客に対して契約内容の確認を求めること。
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申込書の写しや申込内容を記載した書面等を顧客に交付することが困難な場合は、申込み後遅滞なく郵送等の方法により交付すること。
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(12)規則第53条の7第1項に規定する措置に関し、トンチン性の高い商品については、保険会社又は保険募集人が顧客に対して、その商品特性について十分説明を行うための体制が整備されているか。
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(注)トンチン性とは、死亡者の持分が生存者に移ることにより、生存者により多くの給付が与えられる割合のこと。
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(13)個人である顧客に関する情報については、規則第53条の8に基づき、その安全管理、従業者の監督及び当該情報の取扱いを委託する場合にはその委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。
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金融分野ガイドライン第8条、第9条及び第10条の規定に基づく措置
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実務指針 I、II、III 及び別添2の規定に基づく措置
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(注)保険募集人が、個人情報を乗合他社の保険募集や兼業部門での営業活動等に利用する場合、目的外利用が行われることのないよう、法令等に基づく適切な取扱いが行われなければならない点に十分に留意する必要がある。
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(14)個人である顧客に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(注)を、規則第53条の10に基づき、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。
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(注)その他の特別の非公開情報とは、以下の情報をいう。
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労働組合への加盟に関する情報
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民族に関する情報
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性生活に関する情報
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個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報
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個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報
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犯罪により害を被った事実に関する情報
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社会的身分に関する情報
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(15)相互会社の社員の権利義務に関する説明
相互会社である保険会社は、保険募集人に対して、保険募集にあたって、保険契約者に総代会制度の仕組みや少数社員権等の社員としての権利義務に関する的確な説明を行わせるための措置を講じているか。
II -4-4-2-3 特定保険契約における適合性原則
保険会社及び保険募集人は、準用金融商品取引法第40条第1号及び規則第234条の27第1項第3号の規定に基づき、特定保険契約の販売・勧誘にあたっては、顧客の知識、経験、財産の状況及び特定保険契約を締結する目的を的確に把握のうえ、顧客属性等に則した適正な販売・勧誘の履行を確保する必要がある。
そのため、保険会社及び保険募集人は、特定保険契約を販売・勧誘する前提として、特定保険契約の内容を適切に把握するための体制を確立する必要がある。また、顧客の属性等を的確に把握し得る顧客管理体制を確立することが重要である。さらに、特定保険契約の内容が顧客の属性等に適合することの合理的根拠があるかどうかの検討・評価を行うことが必要である。その上で、顧客に対してこのような合理的根拠を欠く販売・勧誘や、不適当な販売・勧誘が行われないように注意する必要がある。
以上を踏まえ、例えば、以下のような点に留意して検証することとする。なお、販売・勧誘の方法としては、営業店に来訪した顧客への勧誘、電話による顧客への勧誘、インターネットを利用した勧誘等の様々な方法が考えられるところであるが、それぞれの特性に応じた適切な販売・勧誘の方法を検討する必要があることもあわせて留意する。
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(注1)団体保険又は団体契約、財形保険について、保険契約者である団体に対して行うものは本項目の対象としない。ただし、当該団体に対して準用金融商品取引法第40条第1号の規定に従った販売・勧誘を行う必要があることに留意すること。
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(注2)顧客の意向を把握・確認することは適合性原則の遵守にあたっても重要となるため、Ⅱ-4-2-2(3)「法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)」も適宜参照すること。
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(1)特定保険契約の内容の適切な把握
保険会社及び保険募集人が販売・勧誘する個別の特定保険契約について、そのリスク、リターン、コスト等の顧客が特定保険契約の締結を行う上で必要な情報を十分に分析・特定しているか。その上で、当該特定保険契約の特性等に応じ、研修の実施、顧客への説明書類の整備などを通じ、販売・勧誘に携わる保険募集人が当該情報を正確に理解し、適切に顧客に説明できる体制を整備しているか。
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(2)顧客の属性等の的確な把握、効果的活用及びその管理の徹底
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保険会社及び保険募集人は、特定保険契約の販売・勧誘にあたり、例えば以下の情報を顧客から収集しているか。また、保険会社及び保険募集人は、既契約者に対する新たな特定保険契約の販売・勧誘に際して、当該情報(アを除く。)が変化したことを把握した場合には、顧客に確認を取ったうえで、登録情報の変更を行うなど適切な顧客情報の管理をおこなっているか。
- ア.生年月日(顧客が自然人の場合に限る。)
- イ.職業(顧客が自然人の場合に限る。)
- ウ.資産、収入等の財産の状況
- エ.過去の金融商品取引契約(金融商品取引法第34条に規定する「金融商品取引契約」をいう。)の締結及びその他投資性金融商品の購入経験の有無及びその種類
- オ.既に締結されている金融商品の満期金又は解約返戻金を特定保険契約の保険料に充てる場合は、当該金融商品の種類
- カ.特定保険契約を締結する動機・目的、その他顧客のニーズに関する情報
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保険会社及び保険募集人は、特定保険契約の販売・勧誘にあたり、顧客から収集した①の情報の内容に則して適切な勧誘を行っており、当該顧客の保護に欠けることとなっていないか。
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保険会社及び保険募集人は、準用金融商品取引法第37条の3の契約 締結前交付書面(契約概要、注意喚起情報)の交付に関し、あらかじめ、顧客に対し、書面の内容について①の情報の内容に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によって説明を行っているか。
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保険会社は、保険会社又は保険募集人が、事後的に販売・勧誘の適切性を検証できるようにするため、顧客から収集した①の情報について、以下のような体制を整備しているか。
- ア 顧客から保険会社又は保険募集人が収集した①の情報を適切に保管するための体制
- イ 保険募集人が事後的に販売・勧誘の適切性を検証するため、アの情報を活用できるための体制
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保険会社は、特定保険契約の引受けを判断するにあたり、顧客から収集した①の情報及び必要に応じて④により既に保管している①の情報を効果的に活用しているか。
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(3)特定保険契約の販売・勧誘に際しての合理的根拠についての検討・評価
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保険会社及び保険募集人は、顧客に対する特定保険契約の販売・勧誘に先立ち、その対象となる個別の特定保険契約や当該顧客との一連の取引の頻度・金額が、把握した顧客属性等に適うものであることの合理的根拠があるかについて検討・評価を行っているか。
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その検討・評価を確保する観点から、保険会社及び保険募集人は、特定保険契約の特性等に応じ、あらかじめ、どのような考慮要素や手続をもって行うかの方法を定めているか。
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(4)不適当な販売・勧誘行為
顧客に対する不適当な販売・勧誘行為として、例えば、以下のような特定保険契約の販売・勧誘が行われていないか。
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保険会社又は保険募集人が、元本の安全性を重視するとしている顧客に対して、元本の棄損リスクがある商品を販売・勧誘する行為
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①のような行為において、保険会社又は保険募集人が、当該特定保険契約に適合するような取引目的への変更を、当該顧客にその変更の意味や理由を正確に理解させることなく求める行為
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(5)保険会社及び保険募集人の内部監査部門等においては、本項目の遵守状況等についてモニタリングのうえ適切に検証がなされているか。また、その検証結果を踏まえ、必要に応じ体制の見直しを行う等、その実効性を確保するための体制構築に努めているか。
II -4-4-3 保険金等支払管理態勢
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(1)意義
近年、保険商品には、わが国における社会の構造的変化・経済活動の多様化等に伴い、保険契約者ニーズに対応して多様化が求められている。このような中にあって、生命保険会社における保険金・給付金の不適切な不払いや損害保険会社における付随的な保険金の支払漏れといった問題が発生し、保険契約者、利用者の保険事業全般に対する信頼が大きく損なわれた事例も認められている。
適時・適切な保険金等の支払いを行っていくことは、保険会社として保険事業を行っていく上で必要不可欠な基本的かつ最も重要な機能であり、自己責任原則に基づく適切な経営管理機能の発揮のもとで、以下のような自主ガイドラインも踏まえつつ、適切な支払管理態勢の構築が求められている。
保険金等支払管理態勢に係る主な着眼点等の見直しにあたり、保険金・給付金の不適切な不払いや付随的な保険金の支払漏れといった重大な問題を招いた原因の分析等を踏まえつつ、保険金等支払全般に関して、迅速かつ適切な支払管理態勢の確立のために、特に重点とした事項は以下のとおりである。
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「保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン」
(平成18年1月27日:生命保険協会)
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「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」
(平成17年6月30日:生命保険協会)
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「告知義務違反に詐欺無効を適用するにあたっての留意点」
(平成17年6月30日:生命保険協会)
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(2)主な着眼点
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保険金等支払いに係る取締役等の認識及び取締役会等の役割
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ア. 取締役会は、適切な保険金等支払管理態勢の構築に係る方針を明確に定めているか。
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イ. 取締役は、適時・適切な保険金等の支払いが健全かつ適切な業務運営の確保に重大な影響を与えることを十分認識しているか。
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ウ. 取締役会は、保険金等の支払いに係る業務全般を管理する部門(以下、「支払管理部門」という。)を設置するなど、保険金等支払管理を統合的に管理できる体制を整備しているか。また、上記の体制においては、例えば、保険金等支払管理に関連する各部門の間で相互牽制等の機能が十分発揮されるものとなっているか。
なお、組織体制については、必要に応じ随時見直し、支払管理態勢の構築に係る方針の変更や支払管理手法の発達などにあわせて改善を図っているか。
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エ. 取締役会等は、保険金等の支払査定基準の改廃などの保険契約者等の保護に重大な影響を与えるものについて、十分な検討を行っているか。
また、上記以外の支払管理のための規程についても取締役会等へ報告が行われた上で整備しているか。
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オ. 取締役会等は、点検・内部監査等を適切に活用し、支払いに係る苦情情報や訴訟事案など保険契約者等の利益に重大な影響を与える事案を含めた保険金等の支払及び不払状況(件数、内容等を含む。)について定期的に報告を受け、原因分析に基づいた必要な意思決定や指示を行うなど、把握された支払関係情報を業務の執行及び管理態勢の整備等に活用しているか。
また、取締役会等又は取締役会から権限を授権されている取締役等は、顧客からの支払関係の苦情への対応について、支払管理部門任せとするのではなく、適時・適切に報告を受けることなどにより実態把握を行い、必要な意思決定や指示によって対策を講じることとしているか。
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カ. 取締役会等又は取締役会から権限を授権されている取締役等は、適切な保険金等の支払管理態勢を構築するため、業務に精通した人材を所要の部署に確保するための人事及び人材育成並びにシステムの構築、規程・マニュアル・帳票類等の支払事務に係る手続き・書式の整備等についての全社的な方針を明確に定めているか。
特に、支払査定要員については、人材育成に関して長期的な展望が求められることを十分認識しているか。
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キ. 取締役会等は、保険金等の支払いに係る適切な業務運営が行われるよう、経営資源の配分を適切に行っているか。また、保険金等の支払管理が適切に行われているかどうか確認しているか。
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保険金等支払管理に関与する管理者の認識及び役割
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ア. 支払管理部門の長及び支払管理に責任を有する取締役等(以下、「保険金等支払管理者」という。)は、適切な支払管理態勢の構築の重要性を理解、認識しているか。
また、保険金等支払管理者は、部門の担当者に適切な支払管理態勢の構築の重要性を理解、認識させるための適切な方策を講じているか。
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イ. 支払管理部門は、商品開発部門、募集部門やシステム部門等の関連する部門(以下、「関連部門」という。)や営業拠点等に対して適切な支払管理態勢を構築するために必要な管理・指導を行っているか。
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ウ. 保険金等支払管理者は、支払管理に係る規程・マニュアル・帳票類、支払査定基準等の支払事務に係る手続き・書式について、例えば、商品内容、内部監査の結果、不祥事件、苦情・問い合わせ、判例動向、医学事情の変化等を通じて把握した課題を踏まえ、見直し・改善するよう、適切な方策を講じているか。
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エ. 保険金等支払管理者は、支払管理を行う組織が機能を有効に発揮できるよう、専門性も考慮しつつ適切に人員の配置を行っているか。また、人員の配置にあたっては、実務経験者等、専門性を持った人材を配置しているか。
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オ. 保険金等支払管理者は、職員を長期間にわたり同一部署の同一業務に従事させることのないよう、人事ローテーションを確保しているか。やむを得ない理由により、長期間にわたり同一部署の同一業務に従事している場合は、事故防止のためその他の適切な方策を講じているか。
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カ. 支払管理部門は、保険金等支払いに係る問題を把握した場合、関連部門と連携し、十分な原因分析を踏まえた適切な改善策を講じているか。また、状況について取締役会等に報告しているか。
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支払査定担当者の人材育成及び査定能力の維持・向上
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ア. 保険金等支払管理者は、専門性を持った支払査定担当者の確保のための長期的な展望に基づく人材育成策を策定しているか。
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イ. 保険金等支払管理者は、支払査定能力を維持・向上させるための方法・体制を整備しているか。
特に、支払査定担当者が適切な支払査定を行えるよう、例えば、医学的知識の習得、約款・特約条項や判例の理解の向上を不断に図ることを確保するために、一定の研修及び効果測定等の義務付けその他の方策を講じているか。
また、医学の進歩や医療の変化等に対応して、教育・研修内容の見直しを適時・適切に行っているか。
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関連部門との連携
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ア. 支払管理部門と関連部門は密接な連携を図ることによって、支払時のみならず、保険商品の販売・勧誘や苦情・紛争処理への適切な対応が行われるような態勢となっているか。
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イ. 保険商品の開発・改定にあたっては、商品開発部門をはじめとする関連部門は、支払管理部門と適切なスケジュール管理のもと、検討事項を十分に確認した上で、遺漏を防止するためのチェックシート等を活用し、検討を行っているか。特に、約款解釈について、商品開発部門、支払管理部門、コンプライアンス担当部門等において十分な検討が行われているか。また、その結果が、支払い査定基準、査定マニュアル、パンフレット等に適切に反映されているか。
なお、検討内容等について、取締役会等及び保険金等支払管理者に対して、直接、必要に応じ随時報告を行っているか。
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ウ. 支払管理部門は、支払査定を行う過程において把握したコンプライアンス上の問題について、コンプライアンス担当部門に報告する態勢となっているか。
また、支払管理部門は、必要に応じて、コンプライアンス担当部門及び関連部門から募集時の説明状況等について情報を取得する態勢となっているか。
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エ. 約款所定の支払事由に該当しないケース、例えば、支払対象外の手術や1回の入院についての支払日数の限度超過等の請求に関する苦情に対しては、支払管理部門と関連部門は相互連携して、苦情の発生原因を分析した上で防止するような対応策を検討しているか。
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オ. 保険金等支払に係るシステム構築においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。
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(ア)支払管理部門及びシステム部門をはじめとする関連部門は、連携の上、取締役会等で定められた全社的な方針に基づき、適切な保険金等支払管理態勢の確立に向けてのシステム構築を行っているか。
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(イ)保険商品の開発・改定時において、支払管理部門及び関連部門は相互連携して、適切に支払いが行えるようシステム設計、プログラム設計及びテストを実施しているか。また、システム開発後において、当該システムが問題なく機能しているか確認する態勢となっているか。
上記のほか、保険商品の開発等に係る支払システム開発時のチェック及びシステム開発後のチェック・管理については、「II-3-13-2 システムリスク管理態勢」も参照のこと。
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カ. 支払管理部門及び商品開発部門をはじめとする関連部門は、取締役会等及び保険金等支払管理者に対して、支払管理に係わる経営に重大な影響を与える情報を網羅し、分かりやすくかつ正確に報告しているか。
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支払管理部門における態勢整備
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ア. 支払管理部門の職員は、保険金等の支払いが保険会社の基幹業務であることを理解、認識し、適切な保険金等支払管理態勢の構築及び確立に向けた取組みを不断に行う態勢となっているか。
また、支払業務のみならず、例えば、保険商品の販売・勧誘、事故連絡受付及び請求手続き並びに事後の苦情・相談への対応などを含むすべての顧客及び消費者対応を踏まえた取組みが必要であることに留意しているか。
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イ. 支払管理部門においては、支払査定の最終的な判断や査定結果の妥当性の事後検証にあたって、必要に応じて外部の専門家の意見を反映させているか。また、顧客からの苦情について、顧客の視点に立った分析を行うことなどにより、適切な支払管理態勢の構築及び確立に役立てているか。
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ウ. 支払管理部門の職員のそれぞれの役割及び権限は明確となっているか。例えば、決裁権限規定においては、保険金等の決裁金額や支払いと不払いの間などで合理的な差異が設けられているか。
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エ. 保険金等の支払事由が発生した場合には、利用者保護、利用者利便の視点に立った迅速かつ適切な保険金等請求手続の説明、保険金等請求書類の交付、損害調査、事実の確認や顧客対応等が行われるような態勢が整備されているか。
特に、損害調査に際しては、関係当事者及び第三者の名誉、信用、プライバシー等の権利が不当に損なわれることのないような態勢が整備されているか。
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オ. 反社会的勢力などからの不当な請求等に対しては、ゆるぎない対応に遺漏ないようにしているか。
また、「契約内容登録制度」、「契約内容照会制度」「支払査定時照会制度」や「不正請求等防止制度」等の適切な共同利用などにより、契約審査及び支払審査態勢の強化を図っているか。
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カ. 保険金等の請求及び支払いにあたっては、センシティブ情報を取り扱うことを踏まえ、顧客に関する情報の管理について、具体的な取扱い基準を定めた上で役職員に周知徹底しているか。
特に、個人である顧客に関する情報の管理について、規則、個人情報の保護に関する法律、保護法ガイドライン、金融分野ガイドライン及び実務指針の規定に基づく適切な取扱いが確保されているか。
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キ. 保険商品の販売・勧誘、事故連絡受付、請求時においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。
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(ア)支払管理部門は関連部門と連携して、保険商品の販売・勧誘や事故連絡受付などのそれぞれの顧客対応時において、保険金等の請求手続き等に関して、十分かつ分かりやすい説明や請求漏れを未然防止するための方策を講じているか。例えば、「ご契約のしおり」やホームページへの掲載のほか、保険金等の支払いに関する説明資料を作成し、消費者や保険契約者へ配布するなどによる情報提供の充実を図っているか。
なお、当該説明資料の記載内容については、少なくとも顧客からの照会に対応する窓口が明記される必要があるほか、支払いとなる場合や不払いとなる場合の具体的事例などが記載されることが望ましい。
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(イ)保険契約者等に対して支払われる保険金等の種類等について、送付する書面等で分かりやすく案内が行われているか。また、満期返戻金、失効返戻金及び解約返戻金等に関する保険契約者等への適切な通知が行われているか。
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(ウ)請求書等の帳票類については、保険商品が多様化していることなどを踏まえ、請求漏れを未然防止するとともに、分かりやすい内容となるよう見直しを適時・適切に行っているか。例えば、苦情等が発生している帳票類の点検や顧客の視点に立った分析等を行っているか。
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(エ)受取人が保険金等の請求を行えない場合、受取人に代わる代理人等が請求することができるような手続きを整備しているか。
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ク. 総損害額が確定する前に保険金の一部を支払う、いわゆる内払いを行う場合の保険会社の対応について、被保険者間や被害者間の公平性確保の観点から、マニュアル・規程等に、内払いに係る手続きを定め、内払いを行う場合を例示するなど、被保険者のニーズのみならず被害者のニーズにも留意し、適切に対応する態勢整備を図っているか。
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ケ. 支払査定時においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。
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(ア)保険金等の支払可否の判断にあたっては、立証責任が保険会社側にあるか、請求者側にあるかにかかわらず、事実関係の調査・確認を十分に行う態勢となっているか。
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(イ)高度な法的判断又は医的判断を要するものについては、支払管理部門の担当者のみで判断せずに、法務部門・医師等の意見を聞く態勢となっているか。さらに、必要に応じて外部の専門家の見解を求める態勢となっているか。
また、社外の法律専門家や学識経験者等もメンバーに加え、外部による支払査定の適切性をチェックする仕組みを整備することが望ましい。
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(ウ)支払査定基準や支払事務に係る手続等を規定したマニュアル・規程等に基づいて、適切な支払査定が行われる態勢となっているか。
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(エ)示談交渉サービスを行う場合には、保険契約者保護のみならず被害者保護にも留意し、特に交渉相手が個人である場合には、相手方の主張をよく聞くとともに、丁寧かつ分かりやすい説明を行う等、十分に配慮して交渉を行うような態勢となっているか。
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(オ)同一の保険事故において、支払事務を異なる職員が担当する場合に職員間の相互連携は図られる態勢となっているか。
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(カ)保険金等支払可否の判断に影響を与える判例等の動向を遺漏なく把握すべく態勢を整備しているか。
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(キ)支払査定マニュアルの内容は体系的・網羅的なものとなっているか。
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(ク)管理者等が行う二次的なチェック態勢は十分なものとなっているか。
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(ケ)支払漏れ等をチェック・防止したり、支払いを促すようなシステム対応は十分なものとなっているか。
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(コ)保険契約者等保護の観点から、例えば、遅延利息の起算日や解除 期限日などの期限の管理は適切に行われているか。
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(サ)支払管理部門は、保険金等の支払漏れが無く迅速な保険金等の支払いが行われるよう、適切に進捗管理を行っているか。また、支払査定に際して確認を要する事項に関する調査を適切かつ遅滞なく行う等、顧客から請求を受けて支払い(支払わないこととなる場合にはその旨の通知)に至るまでの所要日数の短縮を図るための方策を講じているか。
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(シ)支払管理部門は、保険金等を請求した顧客に対して、支払い(支払わないこととなる場合にはその旨の通知)までに時間を要する場合には、日数を要する理由、支払の目途等について分かりやすく説明するなどの方策を講じているか。
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コ. 支払査定後においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。
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(ア)支払いに関する照会や不払時の苦情申し出に対して、迅速かつ正確な対応を行う観点から、受付窓口での専門スタッフによる適切な対応が行われるための方策を講じているか。
また、保険金を被保険者や損害賠償請求権者等ではなく、物損に対して修理を行った事業者や、傷害に対して治療を行った医療機関等に直接支払う場合、これらの者からの照会や苦情に対しても、適切な対応が行われる態勢となっているか。
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(イ)顧客から支払査定の結果に関し苦情申し出があった場合等については、支払可否の判断の根拠となった事実関係等について再度の事実確認を実施する態勢となっているか。
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(ウ)例えば支払査定基準に基づき保険金等の算定を行っている場合に支払査定基準の内容に則して説明する等、顧客の問い合わせに応じて保険金等の算定根拠を丁寧かつ分かりやすく説明しているか。また、算定根拠が明確なものとなっているか。
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(エ)不払いとなる場合については、約款等の根拠条文の記載を含め不払いの理由となる説明が、顧客に対して丁寧かつ分かりやすいものとなっているか。
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(オ)保険金を被保険者や損害賠償請求権者等ではなく修理業者や医療機関等に直接支払うこととしたが、保険会社の支払査定額と当該修理業者や医療機関等の請求額との間に差がある場合において、被保険者や損害賠償請求権者等の保護のために必要がある場合には、被保険者や損害賠償請求権者等にその事実を説明しているか。
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(カ)苦情等の受付とその解決に向けた簡易で迅速な手続きを規定した紛争処理規程を整備しているか。
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(キ)生命保険及び損害保険の各々の協会レベルの紛争処理機能のみならず、各保険会社において、支払管理態勢の一層の強化の観点から、例えば、再査定の仕組み等を整備していることが望ましい。
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サ. 支払管理部門においては、以下のような事後的なチェック態勢が整備されているか。
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(ア)保険金等支払管理者から権限委任されている事項について、適切な権限行使が行われているかを定期的に点検・監査するなどの管理が行われているか。
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(イ)複数の支払部門にまたがるような保険金等の支払いについて、支払漏れ防止の観点から、例えば、支払漏れ等の可能性のある案件について抽出の上、各支払部門が相互に確認する仕組みを整備するなど、定期的にチェックを行う態勢となっているか。
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(ウ)支払保険金等について、顧客からの申し出により請求放棄等の処理がなされた事案については、真に適正な事務処理が行われたかどうかを事後的に検証できる態勢を整備しているか。
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(エ)不払いの理由を顧客に対して説明するためのモデル文書については、苦情・問い合わせ等を通じて把握した課題を踏まえ、顧客の視点に立って見直し・改善するような態勢となっているか。なお、見直し・改善にあたっては、例えば、消費者問題に見識のある社外の専門家等を活用しているか。
また、実際に顧客に送付された不払通知について、当該内容が適切であったかどうかを検証する態勢となっているか。
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(オ)不払いとなった事例について内容を分析し、分析結果を保険金等の支払いを適切に行うための対応策や態勢整備等に役立てているか。
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(カ)不払いに関する苦情については、当該不払いを決定した支払担当部門のみで処理するのではなく、最終的にはコンプライアンス担当部門などの他の部門で当該苦情処理が適切に処理されたかどうかを検証する態勢となっているか。
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(キ)支払管理態勢の一層の強化の観点から、例えば、外部専門家による支払査定の妥当性の事後検証の仕組み等を整備していることが望ましい。
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シ. 支払査定基準の改廃や支払査定等の保険金等の支払いに関する業務については、法第97条に規定される業務に付随する業務であることから、外部委託するにあたっては、法第98条及び規則第51条の規定に基づいた取扱いとなっているか。
また、保険金等の支払いに関する業務に付随する事務(例えば、請求書の発送・受理や契約確認等)を外部委託する場合には、「II-5-1 保険会社の事務の外部委託」の内容に留意したものとなっているか。
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ス. 保険契約者その他の利用者が、保険会社の業務状況を適切に判断できるように、保険金等の不払いの件数・内容や苦情等に関する情報等の積極的な情報開示に取り組むことが望ましい。
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セ. 約款に定めた重大事由による解除を行う場合には、当該重大事由を知り、又は知り得るに至った後は、合理的な期間内に保険契約者に通知が行われるような態勢が支払管理部門又は関連部門において整備されているか。
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内部監査
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ア. 代表取締役及び取締役会は、内部監査が適切な保険金等支払管理態勢を確立することに重大な影響を与えることを十分認識しているか。
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イ. 内部監査部門は、支払管理部門をはじめとする被監査部門等に対して十分牽制機能が働く独立した体制となっているか。
また、被監査部門等から不当な制約を受けることなく監査を実施しているか。
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ウ. 取締役会等は、支払管理態勢に対する内部監査が有効に機能するよう、内部監査部門において支払実務に精通した人材を適切な規模で配置しているか。
また、内部監査部門は、適切な支払管理態勢の検証を行うような十分な権能を付与されているか。
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エ. 支払管理部門の役職員は、内部監査が適切な支払管理態勢を確立することに重要な役割を果たすことを十分認識しているか。
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オ. 内部監査部門は、適切な支払管理態勢を検証するための内部監査業務の実施要領等を作成し、取締役会等による承認を受けているか。また、内部監査部門の長は、実施要領等の適切性・有効性を確認しているか。
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カ. 内部監査部門は、適切な支払管理態勢を検証するため、頻度・深度等に配慮した効率的かつ実効性のある監査計画を策定しているか。
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キ. 内部監査部門は、内部監査業務の実施要領等に基づき、支払管理部門及び関連部門の全ての業務に対する監査を定期的に実施しているか。
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ク. 内部監査部門は、取締役会に対して、支払管理態勢に係る内部監査の結果、その他重要な事項を適時・適切に報告しているか。特に経営に重大な影響を与える問題点については、速やかに報告しているか。
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ケ. 内部監査部門は、検査の結果を分析し、これを的確に支払管理部門をはじめとする被監査部門等へ遅滞なく通知しているか。さらに、内部監査部門は、支払管理部門における改善状況を適切に管理し、その後の内部監査に反映させているか。
また、保険金等支払管理者は、内部監査の結果等を適切な保険金等支払管理態勢の確立に役立てているか。
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監査役監査
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ア. 保険金等支払いに関する監査役監査については、業務執行体制の適否を監査する視点で実施しているか。例えば、募集管理関係からみた問題等と顧客からの苦情の状況等から窺える顧客サービスの問題等を関連づけて総合的に監査することとしているか。
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イ. 保険金等支払実務に関する体系的な監査手法を確立しているか。
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ウ. 監査役は、保険金等支払管理者等に対するヒアリングや支払管理部門に対する往査など、保険金等の支払実務そのものに対する直接的な監査を実施しているか。
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エ. 監査役は、取締役会及び監査役会に対して、保険金等の支払いに関する監査結果、その他重要な事項を適時・適切に報告しているか。
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(3)監督手法・対応
保険金等支払管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -4-5 顧客等に関する情報管理態勢
II -4-5-1 意義
顧客に関する情報は、保険契約取引の基礎をなすものであり、その適切な管理が確保されることが極めて重要である。
特に、個人である顧客に関する情報については、規則、個人情報の保護に関する法律、保護法ガイドライン、金融分野ガイドライン及び実務指針の規定に基づく適切な取扱いが確保される必要がある。
また、クレジットカード情報(カード番号、有効期限等)を含む個人情報(以下、「クレジットカード情報等」という。)は、情報が漏えいした場合、不正使用によるなりすまし購入など二次被害が発生する可能性が高いことから、厳格な管理が求められる。
さらに、保険会社は、法人関係情報(金融商品取引業等に関する内閣府令第1 条第4項第14号)を入手し得る立場であることから、その厳格な管理と、インサイダー取引等の不公正な取引の防止が求められる。
以上を踏まえ、保険会社は、顧客に関する情報及び法人関係情報(以下、「顧客等に関する情報」という。)を適切に管理し得る態勢を確立することが重要である。
II -4-5-2 主な着眼点
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(1)顧客等に関する情報管理態勢
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経営陣は、顧客等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、適切性を確保するための組織体制の確立(部門間における適切な牽制の確保を含む。)、社内規程の策定等、内部管理態勢の整備を図っているか。
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顧客等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱基準を定めた上で、研修等により役職員に周知徹底しているか。特に、当該情報の他者への伝達については、コンプライアンス(顧客に対する守秘義務、説明責任)及びレピュテーションの観点から検討を行った上で取扱基準を定めているか。
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顧客等に関する情報へのアクセス管理の徹底(アクセス権限を付与された本人以外が使用することの防止等)、内部関係者による顧客等に関する情報の持出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化などの対策を含め、顧客等に関する情報の管理が適切に行われているかを検証できる体制となっているか。
また、特定職員に集中する権限等の分散や、幅広い権限等を有する職員への管理・牽制の強化を図る等、顧客等に関する情報を利用した不正行為を防止するための適切な措置を図っているか。
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顧客等に関する情報の取扱いを委託(注)する場合は、以下の措置を講じているか。
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(注)「委託」とは、契約の形態や種類を問わず、保険会社が保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む他の者に顧客等に関する情報の取扱いの全部又は一部を行わせることを内容とする契約の一切を含む(以下、II-4-5-2において同じ。)。
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ア. 保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか。
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イ. 保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先において漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。
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ウ. 保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先による顧客等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。
その上で、保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先においてアクセス権限が付与される役職員及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。
さらに、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先において定期的又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と実際の利用者との突合を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。
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エ. 二段階以上の委託が行われた場合には、保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先が再委託先等の事業者に対して十分な監督を行っているかについて確認しているか。また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して自社による直接の監督を行っているか。
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顧客等に関する情報の漏えい等が発生した場合に、適切に責任部署へ報告され、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった顧客等への説明、当局への報告及び必要に応じた公表が迅速かつ適切に行われる体制が整備されているか。
また、情報漏えい等が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策が講じられているか。さらには、他社における漏えい事故等を踏まえ、類似事例の再発防止のために必要な措置の検討を行っているか。
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独立した内部監査部門において、定期的又は随時に、顧客等に関する情報管理に係る幅広い業務を対象にした監査を行っているか。
また、顧客等に関する情報管理に係る監査に従事する職員の専門性を高めるため、研修の実施等の方策を適切に講じているか。
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(2)個人情報管理
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個人である顧客に関する情報については、規則第53条の8に基づき、その安全管理、従業者の監督及び当該情報の取扱いを委託する場合にはその委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。
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ア. 金融分野ガイドライン第8条、第9条及び第10条の規定に基づく措置
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イ. 実務指針 I、II、III 及び別添2の規定に基づく措置
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(注)保険募集人が、個人情報を乗合他社の保険募集や兼業部門での営業活動等に利用する場合、目的外利用が行われることのないよう、法令等に基づく適切な取扱いが行われなければならない点に十分に留意する必要がある。
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個人である顧客に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報(注)を、規則第53条の10に基づき、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。
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(注)その他特別の非公開情報とは、以下の情報をいう。
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ア. 労働組合への加盟に関する情報
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イ. 民族に関する情報
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ウ. 性生活に関する情報
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エ. 個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報
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オ. 個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報
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カ. 犯罪により害を被った事実に関する情報
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キ. 社会的身分に関する情報
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クレジットカード情報等については、以下の措置が講じられているか。
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ア. クレジットカード情報等について、利用目的その他の事情を勘案した適切な保存期間を設定し、保存場所を限定し、保存期間経過後適切かつ速やかに廃棄しているか。
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イ. 業務上必要とする場合を除き、クレジットカード情報等をコンピューター画面に表示する際には、カード番号を全て表示させない等の適切な措置を講じているか。
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ウ. クレジットカード情報等の取扱いを第三者に委託する場合は、保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先において、クレジットカード情報等を保護するためのルール及びシステムが有効に機能しているかについて、定期的又は随時に、点検又は立入検査を行っているか。
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エ. クレジットカード情報等について、二段階以上の委託が行われた場合には、保険代理店及び金融サービス仲介業者を含む外部委託先が再委託先等の事業者を十分に監督していると認められる場合を除き、定期的又は随時に、点検又は立入検査を行う等、再委託先等の事業者に対して自社による直接の監督を行っているか。
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個人データの第三者提供に関して、金融分野ガイドライン第12条等を遵守するための措置が講じられているか。特に、その業務の性質や方法に応じて、以下の点にも留意しつつ、個人である顧客から適切な同意の取得が図られているか。
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ア. 金融分野ガイドライン第3条を踏まえ、個人である顧客からPC・スマートフォン等の非対面による方法で第三者提供の同意を取得する場合、同意文言や文字の大きさ、画面仕様その他同意の取得方法を工夫することにより、第三者提供先、当該提供先に提供される情報の内容及び当該提供先における利用目的について、個人である顧客が明確に認識できるような仕様としているか。
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イ. 過去に個人である顧客から第三者提供の同意を取得している場合であっても、第三者提供先や情報の内容が異なる場合、又はあらかじめ特定された第三者提供先における利用目的の達成に必要な範囲を超えた提供となる場合には、改めて個人である顧客の同意を取得しているか。
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ウ. 第三者提供先が複数に及ぶ場合や、第三者提供先により情報の利用目的が異なる場合、個人である顧客において個人データの提供先が複数に及ぶことや各提供先における利用目的が認識できるよう、同意の対象となる第三者提供先の範囲や同意の取得方法、時機等を適切に検討しているか。
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エ. 第三者提供の同意の取得にあたって、優越的地位の濫用や個人である顧客との利益相反等の弊害が生じるおそれがないよう留意しているか。例えば、個人である顧客が、第三者提供先や第三者提供先における利用目的、提供される情報の内容について、過剰な範囲の同意を強いられる等していないか。
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(3)法人関係情報を利用したインサイダー取引等の不公正な取引の防止
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役職員による有価証券の売買その他の取引等に係る社内規則を整備し、必要に応じて見直しを行う等、適切な内部管理態勢を構築しているか。
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役職員によるインサイダー取引等の不公正な取引の防止に向け、職業倫理の強化、関係法令や社内規則の周知徹底等、法令等遵守意識の強化に向けた取組みを行っているか。
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法人関係情報を入手し得る立場にある役職員が当該法人関係情報に関連する有価証券の売買その他の取引等を行った際には報告を義務付ける等、不公正な取引を防止するための適切な措置を講じているか。
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II -4-5-3 監督手法・対応
顧客等に関する情報管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -4-6 顧客の利益の保護のための体制整備
II -4-6-1 意義
利益相反の弊害は、保険会社の部門間又は同一金融グループ内の親会社・子会社・兄弟会社・関連会社(以下、II -4-6-1において「保険会社等」という。)のいずれとの間でも起こりうる問題である。また、情報管理体制が整備されていること等一定の条件の下で、非公開情報をその親法人等・子法人等と授受することが認められていることを踏まえれば、従前以上に利益相反管理の重要性を認識し、適切な経営管理態勢を構築する必要がある。
したがって、より広範な業務を展開する金融グループにあっては、グループ内における利益相反による弊害を防止するため、自己責任に基づく規律付けをもって内部統制を行う必要がある。なお、利益相反を管理するためのルール等は、金融機関が自主的な努力により適切な経営管理態勢やコンプライアンス態勢を構築することによって、有効に機能するものであることに留意する必要がある。
また、利益相反管理態勢を整備するにあたっては、金融グループ内会社等の営む業務内容や規模、特性等を勘案するとともに、保険会社又は同一金融グループにおけるレピュテーショナル・リスクの観点についても配慮する必要がある。
一方、保険会社等のグループ会社の中には、当該保険会社等の顧客とは無関係の業務を行っているものがあり得ることも踏まえれば、保険会社等が行う利益相反管理の水準・深度は、必ずしも同一である必要はないと考えられる。このように、保険会社等がグループ内で利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合には、対外的に十分な説明が求められることに留意する必要がある。
II -4-6-2 主な着眼点
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(1)利益相反のおそれがある取引の特定等
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利益相反のおそれがある取引をあらかじめ特定・類型化するとともに、継続的に評価する態勢を整備しているか。
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利益相反を特定するプロセスは、保険会社や金融グループ内会社等の業務活動の内容、規模・特性を反映したものとなっているか。
また、新規の業務活動や、法規制・業務慣行の変更等に的確に対応し得るものとなっているか。
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(2)利益相反管理の方法
利益相反の特性に応じ、例えば以下のような管理方法を選択し、又は組み合わせることができる体制が整備され、定期的に管理方法の検証が行われているか。
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部門の分離(情報共有先の制限)
情報共有先の制限を行うにあたっては、利益相反を発生させる可能性のある部門間において、システム上のアクセス制限や物理上の遮断を行う等、業務内容や実態を踏まえた適切な情報遮断措置が講じられているか。
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取引条件又は方法の変更、一方の取引の中止
取引条件又は方法の変更、若しくは一方の取引の中止を行うにあたり、親金融機関等又は子金融機関等の役員等が当該変更又は中止の判断に関与する場合を含め、当該判断に関する権限及び責任が明確にされているか。
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利益相反事実の顧客への開示
顧客に利益相反の事実を開示する場合には、利益相反の内容、開示する方法を選択した理由(他の管理方法を選択しなかった理由を含む)等を明確かつ公正に書面等の方法により開示した上で顧客の同意を得るなど、顧客の公正な取扱いを確保する態勢となっているか。また、開示内容の水準は対象となる顧客の属性に十分に適合したものとなっているか。
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(3)利益相反管理態勢等
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利益相反を管理・統括する者(以下、「利益相反管理統括者」という。)を設置するなど、利益相反を一元的に管理する態勢となっているか。
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利益相反管理統括者等は、営業部門からの独立性が確保され、十分な牽制が働く態勢となっているか。また、利益相反管理態勢の構築や役職員の意識向上に努める等の役割を果たし、定期的に利益相反管理態勢の検証を行っているか。
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利益相反管理統括者等は、その親金融機関等又は子金融機関等の取引を含め、利益相反管理に必要な情報を集約し、適切な利益相反管理を行う態勢を整備しているか。
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利益相反管理方針を踏まえた業務運営の手続を定めた社内規則を整備しているか。また、研修・教育等により、利益相反管理について役職員及び子金融機関等に周知徹底させる態勢を確保しているか。
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(4)利益相反管理方針の策定及びその概要の公表
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利益相反管理方針には、利益相反の特定方法、類型、管理体制(役職員の責任・役割等を含む。)や管理方法(利益相反管理の水準・深度に差異を設ける場合は、その内容及び理由を含む。)、管理対象の範囲等が明確化されているか。また、当該管理方針は、金融グループ内会社等の営む業務活動の内容や規模等が十分に反映されているか。
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利益相反管理方針の概要を公表するに際しては、利益相反管理方針の趣旨が明確に現れているものとなっているか。また、公表方法は、例えば、店頭でのポスター掲示やホームページへの掲載など、顧客等に対して十分に伝わる方法となっているか。
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II -4-6-3 監督手法・対応
利益相反管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -4-7 顧客の誤認防止等
II -4-7-1 意義
顧客に対する利便性の向上や事務の合理化の観点から、当該保険会社が、その営業所を他者の店舗と同一の建物内に設置するなどの場合があるが、その際、顧客に対する弊害防止措置が講じられていることが重要である。
II -4-7-2 主な着眼点
保険会社が、その営業所を他者の本支店等と同一建物、同一フロアに設置する場合には、顧客の誤認防止、顧客情報の保護及び防犯上の観点から、適切な措置が講じられているか。また、コンピュータ設備を共用する場合に保険会社自らの情報管理規定が遵守できるよう体制が整備されているか。
II -4-8 取引時確認等の措置
II -4-8-1 意義
公共性を有し、経済的に重要な機能を営む保険会社が、テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されることを防止することが重要である。
保険会社が犯罪組織に利用され犯罪収益の拡大に貢献すること等を防ぐには、全社的に高度で強固な法令等遵守態勢を構築する必要があるが、特に、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、「犯収法」という。)に基づく取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置(以下、「取引時確認等の措置」という。)に関する内部管理態勢を構築することが求められる。また、FATF勧告に基づく国際的なテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策を実効性あるものとするためには、国内のみならず、海外営業拠点における業務についても、これらの対策につき適切な対応を行うための態勢を整備することが求められている。
II -4-8-2 主な着眼点
犯収法に基づく取引時確認等の措置及びリスクベース・アプローチを含む「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下「マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン」という。)記載の措置の的確な実施については、以下のような点に留意して検証することとする。
(注1)取引時確認等の措置の的確な実施に当たっては、「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」(平成24年10月金融庁)を参考にすること。
(注2)リスクベース・アプローチとは、自己のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与リスクを特定・評価し、これを実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。
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(1)保険会社の業務に関して、取引ごとのリスクに応じて、犯収法に基づく取引時確認及び取引記録等の作成・保存が的確に実施されているか。
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取引時確認を行うに当たって、顧客の属性を適切に把握するとともに、本人確認書類の提出等により、その信憑性・妥当性の確認が行われているか。顧客に関して特に問題等が認められた場合、適正に対応・管理を行っているか。
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法人顧客との取引においては、本人特定事項、取引を行う目的、事業の内容と併せて、実質的支配者の本人特定事項の確認を行っているか。
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犯収法第4条第2項前段及び犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(以下、「犯収法施行令」という。)第12条各項に定める下記ア.からエ.を含む厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引を行う場合には、顧客の本人特定事項について、通常と同様の方法に加え、追加で本人確認書類又は補完書類の提示を受ける等、通常の取引よりも厳格な方法で確認するなど、適正に(再)取引時確認を行っているか。また、資産及び収入の状況の確認が義務づけられている場合において、適正に当該確認を行っているか。
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ア. 取引の相手方が関連取引時確認に係る顧客等又は代表者等になりすましている疑いがある場合における当該取引
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イ. 関連取引時確認が行われた際に当該関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引
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ウ. 犯収法施行令第12条第2項に定める、犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域に居住し又は所在する顧客等との特定取引等
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エ. 外国PEPs(注)に該当する顧客等との特定取引
(注)犯収法施行令第12条第3項各号及び犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(以下、「犯収法施行規則」という。)第15条各号に掲げる外国の元首及び外国政府等において重要な地位を占める者等(Politically Exposed Persons)をいう。
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顧客の取引時確認に当たって、取引形態(例えば、インターネットによる非対面取引等)を考慮した措置が講じられているか。
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(2)犯収法に基づく疑わしい取引の届出が的確に実施されているか。
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疑わしい取引に該当すると判断された場合には、統括部署において、速やかに当局へ届出を行うこととされているか。
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疑わしい取引の届出に該当するか否かの判断を行うに当たって、取引時確認情報、顧客属性、取引態様、取引時の状況その他の保険会社が取得・保有している具体的な情報及び犯収法第3条第3項に基づき国家公安委員会が作成・公表する犯罪収益移転危険度調査書(以下、「犯罪収益移転危険度調査書」という。)を総合的に勘案し、犯収法第8条第2項並びに犯収法施行規則第26条及び第27条に基づき適切に検討の上、届出の必要性の判断が行われているか。また、その取引等に関して特に問題等が認められた場合、適正に対応・管理を行っているか。
(注)考慮すべき顧客属性及び取引態様としては、国籍(例えば、FATFが公表するマネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域)、外国PEPsへの該当性、顧客が行っている事業等、取引金額・回数等の取引態様、国内外の取引の別が考えられる。
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保険会社の行っている業務内容・業容に応じて、システム、マニュアル等により、疑わしい顧客や取引等を検出・監視・分析しているか。
(注)疑わしい取引の届出に該当する可能性がある事例や保険会社が過去に届出を行った事例等については、「疑わしい取引の参考事例」(金融庁ホームページ参照)も参考にすること。
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(3)犯収法に基づく取引時確認等の措置を的確に実施するため、下記からの措置を講じているか。さらに、取引時確認と疑わしい取引の届出が相互に関連性を有していることを十分に認識し、取引時確認の的確な実施により顧客の基礎的な情報を把握し、その上で当該情報及び顧客の取引態様等を総合的に勘案のうえ判断し、疑わしい取引の届出が行われるような社内態勢等が構築されているか。
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顧客から取得した取引時確認情報については、顧客取引の継続的なモニタリング等を通じて、その属性の把握に常時努め、最新のものとすることが確保されているか。
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社内規則等において、取引時確認等の措置を行うための社内体制や手続きが明確に定められているか。役職員に対して、その内容について周知徹底を行い、その理解が十分に図られているか。
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従業員に対して、取引時確認等の措置に関する研修・教育が定期的かつ継続的に実施されているか。また、研修等を受けた従業員の理解状況について、日常業務における実践も踏まえ、評価及びフォローアップが適宜行われているか。
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管理職レベルのテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策のコンプライアンス担当者など、統括管理者(犯収法第11条第3号に定める統括管理者をいう。以下同じ。)として適切な者を選任・配置しているか。
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犯収法に基づき、テロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されるリスクについて調査・分析し、その結果を勘案した措置を的確に実施しているか。
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ア. 犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し、取引・商品特性や取引形態、取引に関係する国・地域、顧客属性等の観点から、自らが行う取引がテロ資金供与やマネー・ローンダリング等に悪用されるリスクについて適切に調査・分析した上で、その結果を記載した書面等(以下、「特定事業者作成書面等」という。)を作成し、定期的に見直しを行っているか。
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イ. 特定事業者作成書面等の内容を勘案し、必要な情報を収集・分析するとともに、保存している確認記録及び取引記録等について継続的に精査しているか。
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ウ. 犯収法第4条第2項前段に定める厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引若しくは犯収法施行規則第5条に定める顧客管理を行う上で特別の注意を要する取引又はこれら以外の取引で犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案してテロ資金供与やマネー・ローンダリング等の危険性の程度が高いと認められる取引(以下、「高リスク取引」という。)を行う際には、統括管理者が承認を行い、また、情報の収集・分析を行った結果を記載した書面等を作成し、確認記録又は取引記録等と併せて保存しているか。
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従業員の採用に当たって、テロ資金供与やマネー・ローンダリング対策の適切な実施の観点も含めて選考が行われているか。
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取引時確認等の措置の実施に関して、社内における定期的な点検や内部監査を通じ、その実施状況を把握・検証し、実施方法の見直しを行う等、その実効性が確保されているか。
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(4)海外営業拠点(支店、現地法人等)のテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策を的確に実施するための態勢が整備されているか。
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海外営業拠点においても、適用される現地の法令等が認める限度において、国内におけるのと同水準で、テロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策を適切に行っているか。
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(注)特に、FATF勧告を適用していない又は適用が不十分である国・地域に所在する海外営業拠点においても、国内におけるのと同水準の態勢の整備が求められることに留意する必要がある。
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現地のテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策のために求められる義務の基準が、国内よりも高い基準である場合、海外営業拠点は現地のより高い基準に即した対応を行っているか。
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適用される現地の法令等で禁止されているため、海外営業拠点が国内におけるのと同水準の適切なテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策を講じることができない場合には、以下のような事項を速やかに金融庁又は本店所在地を管轄する財務局に情報提供しているか。
- 当該国・地域
- テロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策を講じることができない具体的な理由
- テロ資金供与及びマネー・ローンダリングに利用されることを防止するための代替措置を取っている場合には、その内容
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II -4-8-3 監督手法・対応
検査結果、不祥事件届出書等により、取引時確認等の措置の確実な履行又はマネロン・テロ資金供与対策ガイドライン記載の措置を適切に実施するための内部管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。その際、内部管理態勢が極めて脆弱であり、テロ資金供与及びマネー・ローンダリング等に利用されるおそれがあると認められるときは、法第132条に基づき、業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令を発出するものとする。
また、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為などに対しては、法第133条に基づく厳正な処分について検討するものとする。
II -4-9 反社会的勢力による被害の防止
II -4-9-1 意義
反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要な課題であり、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進していくことは、企業にとって社会的責任を果たす観点から必要かつ重要なことである。特に、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む保険会社においては、保険会社自身や役職員のみならず、顧客等の様々なステークホルダーが被害を受けることを防止するため、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められる。
もとより保険会社として公共の信頼を維持し、業務の適切性及び健全性を確保するためには、反社会的勢力に対して屈することなく法令等に則して対応することが不可欠であり、保険会社においては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた態勢整備に取り組む必要がある。
特に、近時反社会的勢力の資金獲得活動が巧妙化しており、関係企業を使い通常の経済取引を装って巧みに取引関係を構築し、後々トラブルとなる事例も見られる。こうしたケースにおいては経営陣の断固たる対応、具体的な対応が必要である。
なお、役職員の安全が脅かされる等不測の事態が危惧されることを口実に問題解決に向けた具体的な取組みを遅らせることは、かえって保険会社や役職員自身等への最終的な被害を大きくし得ることに留意する必要がある。
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(参考)「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)
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(1)反社会的勢力による被害を防止するための基本原則
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○組織としての対応
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○外部専門機関との連携
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○取引を含めた一切の関係遮断
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○有事における民事と刑事の法的対応
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○裏取引や資金提供の禁止
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(2)反社会的勢力のとらえ方
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である(平成23年12月22日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」参照)。
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II -4-9-2 主な着眼点
反社会的勢力とは一切の関係をもたず、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消するための態勢整備及び反社会的勢力による不当要求に適切に対応するための態勢整備の検証については、被害者救済の観点を含め個々の取引状況等を考慮しつつ、例えば以下のような点に留意することとする。
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(1)組織としての対応
反社会的勢力との関係の遮断に組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署だけに任せることなく取締役等の経営陣が適切に関与し、組織として対応することとしているか。また、保険会社単体のみならず、グループ一体となって、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。さらに、グループ外の他社(信販会社等)との提携による金融サービスの提供などの取引を行う場合においても、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。
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(2)反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築
反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下、「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。
特に、一元的な管理態勢の構築に当たっては、以下の点に十分留意しているか。
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反社会的勢力対応部署において反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新(情報の追加、削除、変更等)する体制となっているか。また、当該情報の収集・分析等に際しては、グループ内で情報の共有に努め、業界団体等から提供された情報を積極的に活用しているか。さらに、当該情報を取引先の審査や当該保険会社における株主の属性判断等を行う際に、適切に活用する体制となっているか。
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反社会的勢力対応部署において対応マニュアルの整備や継続的な研修活動、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関との平素からの緊密な連携体制の構築を行うなど、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制となっているか。特に、平素より警察とのパイプを強化し、組織的な連絡体制と問題発生時の協力体制を構築することにより、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報する体制となっているか。
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反社会的勢力との取引が判明した場合及び反社会的勢力による不当要求がなされた場合等において、当該情報を反社会的勢力対応部署へ迅速かつ適切に報告・相談する体制となっているか。また、反社会的勢力対応部署は、当該情報を迅速かつ適切に経営陣に対し報告する体制となっているか。さらに、反社会的勢力対応部署において実際に反社会的勢力に対応する担当者の安全を確保し担当部署を支援する体制となっているか。
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(3)適切な事前審査の実施
反社会的勢力との取引を未然に防止するため、反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査を実施するとともに、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を徹底するなど、反社会的勢力が取引先となることを防止しているか。
提携ローン(4者型)(注)については、暴力団排除条項の導入を徹底の上、保険会社が自ら事前審査を実施する体制を整備し、かつ、提携先の信販会社における暴力団排除条項の導入状況や反社会的勢力に関するデータベースの整備状況等を検証する態勢となっているか。
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(注)提携ローン(4者型)とは、加盟店を通じて顧客からの申込みを受けた信販会社が審査・承諾し、信販会社による保証を条件に金融機関が当該顧客に対して資金を貸付けるローンをいう。
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(4)適切な事後検証の実施
反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の債権や契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか。
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(5)保険金等の支払審査の実施
反社会的勢力からの不当な請求等を防止する観点から、保険金等の支払審査を適切に行うための態勢が整備されているか。
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(6)反社会的勢力との取引解消に向けた取組み
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反社会的勢力との取引が判明した旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。
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平素から警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関と緊密に連携しつつ、株式会社整理回収機構のサービサー機能を活用する等して、反社会的勢力との取引の解消を推進しているか。
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事後検証の実施等により、取引開始後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、可能な限り契約の解除を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配意しているか。
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いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢が整備されているか。
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(7)反社会的勢力による不当要求への対処
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反社会的勢力により不当要求がなされた旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に取締役等の経営陣に報告され、経営陣の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。
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反社会的勢力からの不当要求があった場合には積極的に警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関に相談するとともに、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等を踏まえた対応を行うこととしているか。特に、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報を行うこととしているか。
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反社会的勢力からの不当要求に対しては、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、積極的に被害届を提出するなど、刑事事件化も躊躇しない対応を行うこととしているか。
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反社会的勢力からの不当要求が、事業活動上の不祥事や役職員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査することとしているか。
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(8)株主情報の管理
定期的に自社株の取引状況や株主の属性情報等を確認するなど、株主情報の管理を適切に行っているか。
II -4-9-3 監督手法・対応
検査結果、不祥事件届出書等により、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第132条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。その際、反社会的勢力への資金提供や反社会的勢力との不適切な取引関係を認識しているにもかかわらず関係解消に向けた適切な対応が図られないなど、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、法第132条に基づく業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。
また、反社会的勢力であることを認識しながら組織的に資金提供や不適切な取引関係を反復・継続するなど、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為などに対しては、法第133条に基づく厳正な処分について検討するものとする。
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(注)なお、反社会的勢力への対応に関しては、II-1-2(1)(代表取締役)、II-1-2(2)(取締役及び取締役会)、II -4-2-2(16)イ(保険契約の募集上の留意点)、II -4-4-2(2)オ(保険金等支払管理態勢)の事項にも留意する必要がある。
II -4-10 適切な表示の確保
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(1)情報開示の趣旨を十分踏まえて適切に開示を行う体制を確立しているか。
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(2)募集用の資料等(広告も含む。)について、表示媒体や商品の特性に応じた適正な表示を確保するための措置が講じられているか。
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(3)適正な表示を確保するための社内規則等が適切に策定されているか。
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(注)社内規則等は、以下の事項等を踏まえ、保険期間、保障内容、引受条件及び保険料率・保険料等が適切に表示されるよう留意して策定されているか。
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保険商品の保障内容に関する優良性を示す際に、それと不離一体の関係にあるものを併せてわかりやすく示さないことなどにより、契約者等に著しく優良との誤解を与える表示となっていないか。
例えば、保険商品の保障内容に以下の例示のような一定の制限条件があるにもかかわらず、当該条件が表示されていない場合又は著しく小さな文字で表示されている、著しく短い時間で表示されている、参照先を明瞭にすることなく保障内容を強調した表示から離れたところに表示されている等により当該条件表示を契約者等が見落とすような表示方法となっている場合には、当該保険商品の内容が、実際のものよりも著しく優良であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
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ア.給付事由の全部又は一部について、契約後一定の不担保期間がある場合
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イ.保険金(給付金)額等が被保険者の年齢、契約後の年数、入院日数、対象疾病等の条件により減額又は消滅する場合
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ウ.先進医療による治療を給付事由とすることにより、医療行為、医療機関及び適応症等によっては、給付対象とならないことがある場合
また、保険商品の保障内容に関する優良性と直接関係のない情報を表示し、あたかも優良であるかのごとき表示をなしている場合には、実際のものよりも著しく優良であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
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保険商品の取引条件の有利性を示す際に、制限条件等を併せてわかりやすく示さないことなどにより、契約者等に著しく有利との誤解を与える表示となっていないか。
例えば、保険料の表示に関して、主たる契約者層とは考えられない若年層等の保険料を用例とし、その適用年齢等の条件表示を著しく小さく表示しているため、契約者等が見落とすような表示となっている場合には、他の年齢層等の契約者等についても当該保険料が適用され、実際のものよりも著しく安いとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
また、保険商品の取引条件に関する有利性と直接関係のない情報を表示し、あたかも有利であるかのごとき表示をなしている場合には、実際のものよりも著しく有利であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。
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保険商品・サービス等に関する表示が客観的事実に基づくものとなっているか。
例えば、業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語、唯一性を直接に意味する用語又は相対的な優位性があることを意味する用語を使用する場合は、その主張する内容が客観的に実証されているか。
また、客観的な事実について表示する際に、その一部のみを表示あるいは強調することにより、以下の例示のような契約者等に誤った事実認識をさせるおそれのある表示となっていないか。
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ア.医療費の自己負担額について、高額療養費制度に基づく給付を反映していない額を表示することにより、過大に認識させるおそれのあるものとなっていないか。
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イ.テレビCM等において、十分な視認性を確保せずに重要な事項を画面上に注記して表示したものになっていないか。
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保険商品・サービス等に関する表示に業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語、唯一性を直接に意味する用語又は相対的な優位性があることを意味する用語を使用する場合は、その主張する内容の根拠についても明確に表示しているか。
例えば、「最高」「最低」「日本一」「ナンバーワン」、「当社だけ」「業界初」「他社にない」、「ワイド」「最低水準」「割安」等の用語を使用する場合は、その用語の根拠となった調査方法、出典又は前提条件を表示する必要がある。
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銀行等で販売する保険商品について表示を行う場合(銀行等が行う表示を含む。)には、例えば、定期預金など銀行等の商品であるかのような誤解を招かないように、当該商品が保険会社の保険商品であることを適切に表示しているか。
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(4)表示媒体や表示内容に応じ、「契約概要」、「注意喚起情報」を記載した書面を読むことの重要性を喚起するための表示を行うための措置を講じているか。
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(5)適正な表示がなされるよう、コンプライアンス担当部門によるリーガルチェック等を含めた十分な審査体制が整備されているか。
なお、審査については、以下の点に留意したものとなっているか。
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募集用の資料等について、本社で集中管理するなどの方法により、表示内容に係る審査を漏れなく行っているか。
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約款、「契約概要」、「注意喚起情報」、パンフレット、ご契約のしおり等について、それぞれの表示内容の整合性を確保するためのチェックを行っているか。
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募集用の資料等における積立利率等の表示については、公然性や客観性を高めるなどの観点からチェックを行っているか。
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契約者等からの苦情等において表示上の問題等が指摘されている場合には、その内容について分析し、問題が認められた場合には、改善のための適切な対応を行っているか。
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(6)商品性の説明(比較広告等を含む。)に係る法第300条第1項第6号及び同第7号については、以下の点に留意するものとする。
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保険契約に関する表示については、「II-4-2-2(9)」に準じて取り扱うものとする。
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予想配当表示については、「II-4-2-2(10)」に準じて取り扱うものとする。
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(7)特定保険契約については、上記各項目に留意しつつ準用金融商品取引法第37条の広告等の規制を遵守すること。
II -4-11 障がい者等への対応
II -4-11-1 意義
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)により、事業者には、障害者に対する不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の義務が課せられており、保険会社及び保険募集人はこれを遵守する必要がある。
また、保険会社及び保険募集人は、成年後見制度等の対象でなく意思表示を行う能力がありながら、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために保険取引における事務手続き等を単独で行うことが困難な者(以下、「障がい者等」という。)に対しても、視覚や聴覚に障がいのない者等と同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある。
II -4-11-2 主な着眼点
- (1) 総論
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「金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(平成28年告示第3号)の各規定に基づき、適切に対応しているか。
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保険会社の取引に係る手続きにおいて、障がい者等の保険取引の利便性を向上させるよう努めているか。
また、保険会社の新しい手続きの導入の場合に、必要に応じて、障がい者等に配慮した仕様を検討しているか。 -
保険会社が、障がい者等に配慮した取組みを推進するにあたっては、国及び地方自治体などにおける障がい者支援に係る施策を確認し、必要に応じて、保険会社のサービスにおいても利用するなどしているか。
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障がい者等から保険会社又は保険募集人に対し、意見(相談、苦情を含む。)があった場合、それらを踏まえた取組みを行うよう努めているか。また、障がい者等からの意見を完全に実現できない場合であっても、代替策を検討するなどしているか。
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- (2) 業務運営態勢等
障がい者等への対応状況を把握・検証の上、例えば、下記➀~⑥のような方策を行うなどの取組みがなされているか。
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自筆が困難な障がい者等への代筆について
障がい者等のうち自筆が困難な者(以下、「自筆困難者」という。)から、口頭で保険取引の申込みがあった場合、保険会社の職員又は保険募集人(以下、Ⅱ-4-11-2において「職員等」という。)が代筆したときは、例えば、複数の職員等が確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すなど、自筆困難者の保護を図ったうえで、代筆を可能とする旨の社内規則を整備し、十分な対応をしているか。
なお、自筆困難者からの当該申込みは「口頭による意思表示」に当たると考えられるため、取引関係書類への代筆は、当該申込みに係る意思表示の範囲内に限られることに留意する必要がある。
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視覚に障がいがある者への代読について
視覚に障がいがある者から要請がある場合は、例えば、職員等が、当該者に係る取引関係書類を代読する規定を整備しているか。その際、個人情報の漏洩を防ぐとともに、複数の職員等が代読内容を確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すこととしているか。
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本人特定事項の確認について
本人確認書類として障がい者手帳が利用されている場合は、本指針「II-4-5 顧客等に関する情報管理態勢」を参照する。
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情報発信について
障がい者等に配慮した取組み等の内容について、例えば、保険会社が、障がい者等の視覚・聴覚等で認識されるよう、情報発信に努めているか。
また、障がい者等に配慮した取組みを行っている場合、その事例をCSR(本指針「II -5-2 企業の社会的責任(CSR)についての情報開示等」を参照のこと)事例として積極的に公表することが望ましい。
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相談・苦情対応について
本監督指針「II-4-3 苦情等への対処(金融ADR制度への対応も含む。)」を参照することとする。
特に、障がい者等から、自立した日常生活及び社会生活を確保することに係る業務に関わる相談・苦情等を受けた場合、その改善に向けた検討や取組みを行うよう努めているか。
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研修等について
保険会社として、障がい者等に配慮した取組みのために整備した態勢の実効性を確保するため、顧客対応を行う全役職員及び保険募集人に対し、障がい者等に配慮した態勢について研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)により周知しているか。
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II -4-11-3 監督手法・対応
日常の監督事務や、障がい者等からの苦情等を通じて把握された保険会社における障がい者等への対応に係る課題については、深度あるヒアリングを行うことにより内部管理態勢の整備状況を確認することとする。
また、保険会社の内部管理態勢の整備状況に疑義が生じた場合には、必要に応じ、報告(法第128条に基づく報告を含む。)を求めて検証することとする。当該整備状況に問題が認められる場合には改善を促すこととする。