III .保険検査・監督に係る事務処理上の留意点
III -2 保険業法等に係る事務処理
III -2-1 特定保険募集人の登録等事務
特定保険募集人の登録事務にあたっては、以下の点に留意して、行うこととする。
なお、少額短期保険募集人については、「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)」(少額短期保険業者向けの監督指針) III-2-4 (少額短期保険募集人の登録事務)によるものとする。
-
(1)特定保険募集人の登録(法第276条関係)
-
登録の申請 (法第277条関係)
特定保険募集人については、法第277条に規定する登録の申請(以下、「登録申請」という。)を行っているか。
-
所属保険会社を代理人とする登録の申請等(法第284条関係)
特定保険募集人又は法第280条第1項第2号から第7号までに定める者(以下、「特定保険募集人等」という。)については、法第284条の規定により所属保険会社を代理人として登録申請、法第280条第1項第1号に基づく届出(以下、「変更届出」という。)、法第280条第1項第2号から第7号の規定に基づく届出(以下、「廃業等届出」という。)又は法第302条の規定に基づく届出(以下、「使用人届出」という。)をとりまとめのうえ行うことができる。
-
代申会社等の届出・申請
所属保険会社が法第284条の規定に基づき特定保険募集人等の代理人として登録申請等を行う場合は、当該所属保険会社の本社又は支社・支店等(以下、「支社等」という。)において、別紙様式70「代申支社の届出書」(生命保険会社の場合)、別紙様式73「損害保険代理店代理申請書」(損害保険会社の場合)を作成し、当該支社等が管理する特定保険募集人の主たる事務所の所在地を管轄する財務局等に提出させるものとする。
ただし、生命保険会社においては、当該支社等が管理する特定保険募集人の主たる事務所の所在地が東京都の場合は、東京財務事務所に提出させるものとする。(以下、特定保険募集人の主たる事務所の所在地を管轄する財務局等及び東京財務事務所を「管轄財務局等」という。)
特定保険募集人の所属保険会社の支社等を「代申会社」又は「代申支社」(以下、「代申会社等」という。)といい、上記の登録申請等を支社長等の名義によって行わせるものとする。
また、所属保険会社が代理人として登録申請等を行う場合、特定保険募集人が2以上の所属保険会社を有する場合には、所属保険会社のうちの1つの所属保険会社を代理人として行わせるものとする。
なお、登録申請等を行う者が保険代理店の使用人である場合には、当該登録申請等を行う者が所属することとなる保険代理店の登録申請等を行っている所属保険会社に行わせるものとする。
-
登録申請等の書類の受理
-
ア. 代申会社等から登録申請等の書類(以下、「申請書類等」という。)の提出(申請等データによる「電子申請・届出システム」への送信を含む。以下、(2)変更の届出等、(3)廃業等の届出において同じ。)があった場合は、管轄財務局等が受理することとする。
(注)代申会社等から生命保険協会又は損害保険協会を経由して申請書類等の提出があった場合も、管轄財務局等が受理するものとする。
-
イ. 生命保険会社の役員若しくは使用人又は生命保険会社の委託を受けた者の役員若しくは使用人である特定保険募集人について、当該特定保険募集人の管理全般が、生命保険会社又は生命保険会社の委託を受けた者の一の事務所で一括して行われている場合には、当該一の事務所を当該特定保険募集人にとっての令第47条の3第1項に規定する「主たる事務所」とみなすことができるものとする。
-
ウ. 保険代理店の主たる事務所と同じく、独立して損害保険会社と取引を行う従たる事務所については、主たる事務所とは別個に登録することができるものとする。
この場合、登録申請者は、登録をしようとする損害保険代理店の支店長等とせず、損害保険代理店の主たる事務所の代表者とすることができるものとする。
-
エ. 申請等データにより「電子申請・届出システム」へ送信があった場合は、登録免許税又は手数料が電子納付されるときを除き、申請等データを受理した管轄財務局等において別途収入印紙を受理することとする。
-
-
登録申請書の審査基準等
-
ア. 登録を申請する特定保険募集人が法第279条第1項第6号に該当していないか。
-
イ. 登録申請書(規則別紙様式第17号)の記載は、当指針の様式・参考資料編 II.その他報告等様式集 III-2-1(生命保険募集人)、様式III-2-2(損害保険代理店)別紙1及び別紙2の記載要領に基づくものとなっているか。
また、法人である損害保険代理店で代表者が複数いる場合は、筆頭者以外の代表者については、別紙様式65「代表者又は管理人(別表)」(以下、「代表者別表」という。)に記載されたものが、登録申請書に添付されているか。
-
ウ. 所要の収入印紙の貼付又は電子納付の有無
-
(ア) 登録申請者が保険代理店の場合、登録免許税法に規定する額の収入印紙の貼付又は電子納付がされているか。
-
(イ) 登録申請者が生命保険募集人のうち「内勤職員」・「営業職員」・「個人保険代理店使用人」・「法人保険代理店使用人」の場合、令第39条の3に規定する額の収入印紙の貼付又は電子納付がされているか。
-
-
エ. 登録申請書の内容に不備が判明したときは、登録申請書を代申会社等に返戻し、補正させることとする。
なお、生命保険募集人の登録申請にあたっては、職種を以下のとおり区分するものとする。
-
(ア) 内勤職員(記号「内」)
生命保険会社の役員(代表権を有する役員及び監査役、監査委員会の委員を除く。)又は使用人で就業規則等により内勤職員とされる者又はこれに準じる者
-
(イ) 営業職員(記号「営」)
生命保険会社の使用人で主に保険の募集を行い就業規則等により営業職員とされる者又はこれに準じる者
-
(ウ) 個人保険代理店(記号「個」)
生命保険会社の保険募集の委託を受けた個人
-
(エ) 法人保険代理店(記号「法」)
生命保険会社の保険募集の委託を受けた法人
-
(オ) 個人保険代理店使用人(記号「個使」)
(ウ)の使用人
-
(カ) 法人保険代理店使用人(記号「法使」)
(エ)の役員(代表権を有する役員及び監査役、監査委員会の委員を除く。)及び使用人
-
-
-
登録申請書の添付書類
登録申請書の添付書類については、法第277条第2項各号及び規則第214条第1項各号に規定する以下の書類が添付されているか。
なお、添付書類の取扱いについては、法第284条の規定に基づく代理申請にあっては、原則として提示をもって足りることとし、提示後、代申会社等において常に提出できる状態で保管させるものとする。
-
ア. 登録申請の添付書類で必要な官公署が証明する書類は、申請の日前3ヵ月以内に発行されたものでなければならない。
-
イ. 登録申請書の添付書類は、以下のとおりとする。
-
(ア) 登録申請者が個人の場合
-
a.法第277条第2項第1号に規定する書面 (規則別紙様式第17号の2)
-
b.登録申請者が特定保険募集人であることを証する書面 (規則第214条第1項第1号)
-
c.住民票の抄本又はこれに代わる書類 (規則第214条第1項第3号)
-
-
(イ) 登録申請者が法人の場合
-
a.法第277条第2項第1号に規定する書面(規則別紙様式第17号の2)
-
b.法第277条第2項第2号に規定する役員の氏名及び住所を記載した書面(別紙様式66により作成し、提出されるもの。)
なお、役員の氏名及び住所を記載した書面であれば、役員一覧に代えることができる。(保険募集に従事する役員・使用人に係る届出書にて届け出る役員を除いても差し支えない。)
-
c.登録申請者が特定保険募集人であることを証する書面(規則第214条第1項第1号)
-
d.定款若しくは登記事項証明書又はこれらに代わる書類(以下、「定款等」という。) (規則第214条第1項第2号)
(注)登記事項証明書(海外当局が発行するものを除く。)の場合は、法務省の登記情報システムから取得するため、添付を要しない。
-
-
-
ウ. 規則第214条第1項第1号に規定する「特定保険募集人であることを証する書面」とは、保険募集に関する委託契約書又は別紙様式71 「生命保険募集人登録代理申請書(兼)登録事項変更・廃業等代理届出書」、別紙様式73 「損害保険代理店代理申請書」(以下、これらを「代理申請書」という。)とする。
-
エ. 規則第214条第1項第2号に規定する「これらに代わる書類」とは、商業登記簿謄本・抄本等をいう。
-
(注1)定款等は、原則として生命保険募集人の登録にあたっては、生命保険募集に係る業務を営むことができる旨、損害保険代理店の登録にあたっては、損害保険代理業を営むことができる旨の記載があるものでなければならない。
-
(注2)定款等は、原本と相違ない旨の記載があるものであれば、原本の写しで差し支えない。
-
(注3)登録申請書の代表者の氏名に旧氏及び名を括 弧書きで併せて記載する場合は、規則第 214 条第 1 項第 4 号に規定する「当該旧氏及び名を証する書類」を添付するものとする(登録申請を別途行っている代表 者を除く)。
-
-
オ. 規則第214条第1項第3号イに規定する「これに代わる書類」とは以下の書類を、ロに規定する「これらに代わる書類」とは、商業登記簿謄本・抄本等をいう。
-
(ア) 住民票記載事項証明書
-
(イ) 印鑑登録証明書
-
(ウ) 有効期限内の以下の書類の写し
運転免許証、健康保険証、福祉手帳(精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、療育手帳等)、年金手帳、旅券(パスポート)、住民基本台帳カード、在留カード、特別永住者証明書又はマイナンバーカード
(注)定款は、原本と相違ない旨の記載があるものであれば、原本の写しで差し支えない
-
-
カ. 規則第 214 条第 1 項第 4 号に規定する「当該旧氏 及び名を証する書類」とは戸籍謄本、抄本等をいう。
-
-
代理申請書等
代申会社等から申請書類等が提出されたときは、代理申請書が添付されているか確認する。
-
特定保険募集人の登録簿(以下、III-2-1において「登録簿」という。)の取扱い
登録簿は、特定保険募集人を適正に管理できるよう整理保管し、登録申請等が電子データにより「電子申請・届出システム」に送信される場合は、当該システムから出力されるリストを登録簿とすることとする。
-
登録済の通知
特定保険募集人を登録した場合は、法第278条第2項の規定に基づき、その旨を別紙様式67(生命保険会社)、別紙様式68(損害保険会社)により作成し、遅滞なく、代申会社等へ交付することとする。
-
登録の拒否
-
ア. 法第279条第1項から第3項の規定に基づき登録を拒否した場合は、同条第4項の規定に基づき、遅滞なく、別紙様式69 「登録の拒否について」をもって、代申会社等に通知することとする。
-
イ. 登録拒否通知書には、拒否の理由に該当する法第279条第1項各号のうちの該当する号の番号又は登録申請書及び添付書類のうち重要な事項についての虚偽の記載のある箇所若しくは重要な事実の記載の欠けている箇所を具体的に明らかにする。
-
-
-
(2)変更の届出等
-
登録申請書の記載事項の変更届出(法第280条第1項第1号関係)
-
ア. 特定保険募集人は、法第277条第1項各号に掲げる事項に変更があった場合には、変更届出を行っているか。
-
イ. 代申会社等が特定保険募集人の代理人として変更届出を行う場合には、当該特定保険募集人を現に登録している管轄財務局等に届出させることとする。
-
ウ. 変更届出を受理したときは、変更事項を当該特定保険募集人の登録簿に登録する。
-
-
変更届出にあたっては、以下の点に留意するものとする。
-
ア. 住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号)等の法令に基づき、事務所所在地の呼称が変更された場合は、変更届出を省略しても差し支えない。
-
イ. 法人保険代理店が法律上の組織変更を行う場合は、変更届出を行うこと。
-
ウ. 生命保険募集人の職種区分を「内勤職員」・「営業職員」・「個人保険代理店使用人」・「法人保険代理店使用人」から「個人保険代理店」に変更する場合、登録免許税法に規定する額の収入印紙の貼付又は電子納付がされているか。
-
エ. 変更届出の内容が、当該特定保険募集人の主たる事務所の変更で、かつ、他の管轄財務局等の管轄区域への変更である場合は、現に登録している管轄財務局等は、新たに管轄財務局等となる財務局等又は東京財務事務所に登録簿を送付するものとする。
-
オ. 法第280条第2項の所属保険会社への通知は、変更届出を受理し、内容を確認したうえで、代申会社等に行う。
-
-
-
(3)廃業等の届出(法第280条第1項第2号から第7号関係)
-
特定保険募集人等は、同条同項各号のいずれかに該当することとなった場合は、廃業等届出を行っているか。
-
代申会社等が特定保険募集人の代理人として法第280条第1項第3号から7号に定める廃業等届出を行う場合には、代理申請書を作成し、当該特定保険募集人を現に登録している管轄財務局等に提出させることとする。
-
廃業等届出を受理したときは、法第308条第1項第2号の規定により当該特定保険募集人の登録を抹消する。
-
法第308条第2項の所属保険会社への通知は、廃業等届出を受理し、内容を確認のうえで、代申会社等に行う。
-
-
(4)役員又は使用人の届出(法第302条関係)
-
損害保険代理店については、その役員又は使用人に保険募集を行わせようとする場合には、使用人届出を行っているか。
-
保険募集に従事する役員又は使用人を届出する場合には、使用人届出日以降でなければ当該届出の対象となる者を保険募集に従事させることが出来ないことに留意すること。
-
-
(5)特定保険募集人の原簿管理(法第285条関係)
所属保険会社が法第285条第1項の規定に基づき備え置く特定保険募集人に関する原簿については、支社等に所属している特定保険募集人に係るものを当該支社等に備えさせるとともに、特定保険募集人の登録申請書の記載事項の変更又は登録の抹消に伴う原簿管理を適切に行わせるものとする。
-
(6)登録の取消しに伴う抹消通知
法第308条第1項第1号の規定により特定保険募集人の登録を抹消したときは、同条第2項の規定に基づき別紙様式74により当該特定保険募集人の所属保険会社に通知を行う。
-
(7)保険会社が他の保険会社の業務の代理又は事務の代行を行う際に保険代理店となる場合の手続き(法第98条関係)
-
保険会社は、法第98条第2項の規定に基づき金融庁長官の認可を受け、又は同項ただし書に基づき金融庁長官へ届出を行ったうえで、管轄財務局等に対して法第276条に基づく保険代理店としての登録を行うこととする。
-
の場合、登録申請書に添付する法第277条第2項の規定に基づく書類のうち、当該保険代理店となる保険会社の役員の氏名及び住所を記載した書面(同項第2号関係)及び当該保険代理店となる保険会社の定款等(規則第214条第1項第2号関係)の添付を省略することができるものとする。
なお、添付書類のほかに、金融庁長官の認可を受けたことを証する書面、委託契約書が外国語文の場合は、その訳文を添付させることとする。
-
当該保険代理店となる保険会社が損害保険の募集業務の代理又は事務の代行を行う場合においては、当該代理店の支社等の長を法第302条に基づく役員又は使用人として、管轄財務局等の長に対して、登録財務局、登録年月日及び登録済みである旨を届出させることができるものとする。
-
-
(8)保険募集の再委託(法第275条関係)
法第275条第3項の認可を受けて保険募集の再委託を行う場合における所属保険会社、保険募集再委託者及び保険募集再受託者が行う特定保険募集人の登録等の事務については、III-2-1(1)から(7)に準じて扱うものとする。
III -2-2 子会社等
保険会社の子会社等の業務範囲等については、法第100条に規定する他業禁止の観点から以下のとおりとする。
-
(注1)保険会社又はその子会社が、国内の会社(当該保険会社の子会社を除く。)の株式又は持分について、合算して、その基準議決権数(法第107条第1項に規定する基準議決権数をいう。以下同じ。)を超えて所有している場合の当該国内の会社(以下、「特定出資会社」という。)が営むことができる業務は、法第106条第1項第1号から第7号まで、第12号、第14号、第16号及び第17号に掲げる会社(同項第 14 号に掲げる会社にあっては、特別事業再生会社を除く。)、当該保険会社が子会社としている特例持株会社(法第106条第6項第1号に規定する特例持株会社をいう。)並びに特例対象会社(法第107条第8項に規定する特例対象会社をいう。)が行うことができる業務の範囲内であり、かつ、規則、告示、本指針に定める子会社に関する基準等を満たす必要があることに留意する。
-
(注2)子法人等及び関連法人等の判定にあたり、当該保険会社が金融商品取引法に基づき有価証券報告書等の作成等を行うか否かに関わらず、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則、企業会計基準適用指針第22号『連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針』その他の一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従っているかにも留意する。
-
(参考)連結財務諸表を指定国際会計基準等(規則第52条の12の2第3項に規定する特例企業会計基準等適用法人等(連結財務諸表規則第1条第1項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によらずに連結財務諸表規則の定めるところにより連結財務諸表を作成する者をいう。以下同じ。)が採用する企業会計の基準をいう。以下同じ。)に従い作成している場合には、当該基準に基づく判定が行われているかに留意する。
-
(注3)法第106条及び第107条に規定する「会社」には、特別目的会社(例えば、資産の流動化、自己資本の調達を目的とするもの等)、組合、投資法人、パートナーシップ、LLCその他の会社に準ずる事業体(以下、「会社に準ずる事業体」という。)を含まないが、会社に準ずる事業体を通じて子会社等の業務範囲規制、他業禁止の趣旨が潜脱されていないかに留意する。
-
(注4)保険持株会社の子会社等に関する取扱いのうち、保険持株会社が法第271条の22第1項に掲げる会社以外の会社を子会社とする場合に求められている同項の承認については、保険持株会社が同様の会社をその子法人等(子会社を除く)及び関連法人等とする場合については必要ない。ただし、その会社(特定出資会社を含む。)が行い、又は行おうとする業務の内容が以下のいずれかに該当しないよう留意すること。
-
(1)当該業務の内容が、次の又はに該当することから、保険持株会社の子会社である保険会社の社会的信用を失墜させるおそれがあること。
-
当該業務の内容が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあること。
-
当該業務の内容が、国民生活の安定又は国民経済の健全な発展を妨げるおそれがあること。
-
-
(2)当該業務の内容が、その会社の資本金の額、人的構成等に照らして、その会社の経営の健全性を損なう危険性が大きく、かつ、その経営の健全性が損なわれた場合には、保険持株会社の子会社である保険会社の経営の健全性が損なわれることとなるおそれがあること。
また、保険会社の子法人等又は関連法人等とすべきものにつき、保険会社の子会社等の業務範囲規制、他業禁止の趣旨を潜脱する目的で、保険持株会社の子法人等及び関連法人等とすることがないよう留意すること。
-
-
(注5)保険業法改正(令和3年 11 月施行)により、法第 106 条第1項第 15 号が追加されたが、地域活性化事業会社(同号、法第 107 条第8項)における不動産業務の取扱いは改正前と変わらないことに留意する 。
-
(注6) 保険グループが指定国際会計基準等を適用する場合、法第107条で議決権取得制限の例外として許容 されている行為は、その結果としてグループの範囲が広がるものであっても、特段の制限を受けるものではない。
-
(注7) 保険会社が適用する会計基準を変更することのみを原因として、従来は連結の範囲外とされていた会社又は会社に準ずる事業体が当該保険会社の子会社等となる場合、保険会社の子会社等の業務範囲規制、他業禁止の趣旨の潜脱を防止する観点からは相応の期間内(原則として1年以内)に所要の措置を講ずることが望ましい。
III -2-2-1 子会社等の業務の範囲
子会社等の業務の範囲については、以下の点に留意するものとする。
-
(1)保険会社の子会社が営む従属業務(法第106条第2項第1号に規定する従属業務をいう。以下同じ。)については、保険会社の業務に係る事務のうち、その業務の基本に係ることのないものに限定されているか。
-
(2)保険会社の子会社が営む金融関連業務(法第106条第2項第2号に規定する金融関連業務をいう。以下同じ。)については、以下の範囲となっているか。
-
保険会社の保険業に係る業務の代理(規則第56条の2第2項第2号及び第2号の2に掲げる業務に該当するものを除く。)又は事務の代行
- 規則第51条に掲げる業務の範囲内となっているか。
-
信用保証業務
-
ア. 当該保険会社並びに当該保険会社及びその保険持株会社の子会社、子法人等及び関連法人等による事業性ローンに係るものを取り扱っていないか、また、以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
イ. 保証会社の業務運営にあたっては、保証債務の円滑な履行に疎通を欠くことのないよう、保証の特性を踏まえた、適正な保証料率の設定、適切な引当処理の実行などによる、保証業務の専業体制の確立や内部留保の充実その他適正な支払い準備の確保等に十分配意しているか。特に、グループ内の保証については、保証にかかるリスクが外部に移転していないことにかんがみ、当該保証会社の業況が当該保険会社並びに当該保険会社及びその保険持株会社の子会社、子法人等及び関連法人等の健全性の確保に影響を与えることがないよう十分配意しているか。
-
ウ. 保証会社が信用保証を行うにあたって、物的担保以外に不必要な人的担保も徴求していないか。
-
エ. 保険会社が、信用保証を必要とする債務者に対し、自分が子会社として設立した保証会社の保証を強制すること等の行為を行っていないか。
-
オ. 保険会社が、保証会社の保証付住宅ローンの金利について、通常の場合の金利に比較して次のものに相当する部分を低減しているか。
-
(ア) 通常見込まれる貸倒れに伴う損失
-
(イ) 担保等の設定、管理、処分等のために要するコスト
-
(ウ) 信用調査、貸出審査等が簡略化されることにより軽減が見込まれるコスト
-
-
-
コンピューターソフトの販売
- ソフトは主に(50%以上を目安とする)当該保険会社の業務及び企業の財務、年金事務等に関連したものとなっているか。当該保険会社の業務と著しく乖離したソフトの販売が行われていないか(親保険会社が自己のために開発したソフトを他の保険会社、銀行等及び有価証券関連業を行う金融商品取引業者に提供すること(ソフトの一部の加工を含む。)は差し支えない。)。
-
電気通信業務(いわゆるVAN業務)
- 主として(50%以上を目安とする)当該保険会社の業務及び企業の財務、年金事務等に関連したものを取り扱うこととしているか。
-
(注)電気通信事業法第22条第1項による総務省への届出について照会があった場合には、「子会社等が他人の通信を媒介する役務(以下、「媒介役務」という。)の提供を営利の目的とせず(例えば、共同出資の子会社等が、出資金融機関のみを対象として媒介役務を提供する場合等当該子会社等の定める料金、提供条件等から媒介役務について収益をあげることを目的としていないことが明白な場合:100%出資の子会社はこれに含まれる。)に行う場合には必要ない」旨回答すること。
-
- 主として(50%以上を目安とする)当該保険会社の業務及び企業の財務、年金事務等に関連したものを取り扱うこととしているか。
-
健康・福祉関連業務
-
ア. 健康関連業務は、例えば、屋内運動設備等の施設又はコールセンター等の機能を備え、専門指導員、医療専門者等を配置し、会員や相談者に対し健康の維持・向上に寄与する業務がある。
-
イ. 福祉関連業務は、例えば、老人福祉施設等の高齢者福祉関連施設(サービス付き高齢者向け住宅を含む。)の運営及び管理、高齢者福祉関連施設の入居者に対する給食業務・移送業務等、リハビリテーション機関(アスレチッククラブを含む。)の運営及び管理、健康・医療・介護等福祉に関するコンサルティング、取り次ぎ及び調査研究、介護機器の開発・貸付・販売、介護者の研修、高齢者等の訪問看護、在宅関連サービスがある。
-
-
投資助言業務
- 業務の特殊性、投資家保護の観点から以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
ア. 保護預りは当該社では行わず、信託銀行等の扱いとなっているか。
-
イ. 投資助言の範囲は不動産、骨董品等は対象とせず、有価証券、金融商品としているか。
-
- 業務の特殊性、投資家保護の観点から以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
あっせん・紹介業務
あっせん又は紹介の業務の範囲が保険業と関連のない業務に及ぶなど、他業禁止の趣旨を逸脱した取扱いとなっていないか。あっせん・紹介の業務の範囲としては、例えば、主として自動車保険の保険契約者等を対象として行う自動車修理業者等のあっせん・紹介・手配、主として海外旅行傷害保険の保険契約者等を対象として行う医療機関等のあっせん・紹介・手配がある。
-
リース業務
不動産を対象としたリース契約にあたっては、教育・文化施設、社会福祉施設等の公的な施設の整備・運営に係るものを除き、融資と同様の形態(いわゆるファイナンスリース)に限ることとし、一般向け不動産業務等の子会社対象会社が営むことができる業務以外の業務を行っていないか。
(注)優越的地位の濫用及び利益相反取引の防止に係る管理態勢を整備するとともに、保険会社が不動産業務を営むことができないことに鑑み、実質的に不動産の売買及び賃貸の代理及び媒介を営むこととならないよう、法令等遵守の観点から事前に十分な検討・検証を行うこととしているか。
-
投資専門子会社におけるコンサルティング業務等
投資専門子会社による規則第56 条第 16 項第2号の業務の実施にあたっては、優越的地位の濫用及び利益相反取引の防止に係る管理態勢を整備するとともに、法令等遵守の観点から事前に十分な検討・検証を行うこととしているか。
-
-
(3)保険会社の特定子法人等(特定出資会社でない子法人等をいう。以下同じ。)及び特定関連法人等(特定出資会社でない関連法人等をいう。以下同じ。)については、以下のとおりとなっているか。ただし、会社に準ずる事業体については、この限りでない。
-
保険会社の特定子法人等及び特定関連法人等の業務の範囲については、子会社対象会社(法第106条第1項に規定する子会社対象会社をいう。以下同じ。)の営むことができる業務の範囲内であり、かつ、規則、告示、本監督指針に定める子会社に関する基準等を満たしているか。
例えば、銀行専門関連業務(同条第2項第3号に定める銀行専門関連業務をいう。)を営む会社については、保険会社が銀行を子会社としている場合等に限り、保険会社の特定子法人等又は特定関連法人等として保有することができることに留意する。
-
関連会社として届出がなされたもの(当該関連会社がその業務を行わせるために設立した会社及びこれらと同様の業務を営む会社を含み、に該当する会社を除く。)で、金融システム改革のための関係法律の整備に関する法律(以下、「新法」という。)の施行の際、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を現に営む保険会社の特定子法人等及び特定関連法人等が、新法の施行後も引き続きそれらの業務を営む場合には、別に命ずるところにより、当該特定子法人等及び特定関連法人等の名称、業務その他必要な事項について報告がなされたものに限り、当分の間、上記に反しないものとして取り扱って差し支えない。
ただし、当該特定子法人等又は特定関連法人等が当該保険会社の子会社又は特定出資法人となる場合並びに当該特定子法人等及び特定関連法人等が新法の施行前に営んでいた業務以外の業務を新たに営む場合にはこの限りでない。
-
(注1)関連会社とは、保険会社が出資する会社で、その設立経緯、資金的、人的関係等からみて、保険会社と緊密な関係を有する会社をいう。
-
(注2)例えば、以下のような場合については、保険業法の趣旨を逸脱しない限り、上記特定子法人等又は特定関連法人等に準じて取り扱って差し支えない。
-
ア. 保険会社の届出済の関連会社が上記の業務を営む場合に、当該保険会社が他の会社の保有する当該関連会社の株式を取得したことにより、新法の施行の際、当該保険会社の特定出資会社(子法人等又は関連法人等に限る。)となったことについてやむを得ない理由があるとき(新法附則第132条に規定する届出がなされているものに限る。)
-
イ. 新法の施行の際、保険会社の特定子法人等又は特定関連法人等として上記の要件を満たすものが、法第107条第4項第1号の規定により当該保険会社の特定出資者(子法人等又は関連法人等に限る。)となった場合(同号に規定する認可を受けている場合に限る。)
-
ウ. 新法の施行の際、二の保険会社のそれぞれの特定子法人等又は特定関連法人等として上記の要件を満たすものが、合併によりいずれか一の保険会社の特定子法人等又は特定関連法人等(以下、「存続会社」という。)となった場合(存続会社が合併前に営んでいた業務以外の業務を合併後に営むこととなる場合には、当該業務について平成14年3月期末までに必要な見直しが行われているものに限る。)
-
-
-
特定子法人等又は特定関連法人等において一般向け不動産業務、物品販売業務、旅行あっせん業務等、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を行っていないか。
ただし、新法の施行の際、特定子法人等又は特定関連法人等が現にこれらの業務を営んでいる場合には、原則として平成14年3月期末までに必要な見直しが行われているか。
なお、特定子法人等又は特定関連法人等が現に従属業務又は金融関連業務(これらに準ずる業務として別に命ずるところにより報告がなされたものを含む。)を営む場合又はこれらを併せ営む場合においては、平成14年3月期末までに当該従属業務又は金融関連業務以外の業務について必要な見直しが行われているものに限り、当分の間、上記に反しないものとして取り扱って差し支えない。
-
(注1)当該特定子法人等又は特定関連法人等が平成14年3月期末を越えて必要な見直しを終えていない場合には、見直しが終了していない正当な理由について、別に命ずるところにより報告を求めることに留意する。
-
(注2)保険会社の子会社が営む業務に付随し、公共性等の観点から地方公共団体等により義務づけられる業務を当該保険会社の特定子法人等又は特定関連法人等に行わせることにつきやむを得ない理由がある場合には、当該業務が子会社対象会社が営むことのできる業務以外の業務であっても、「これらに準ずる業務」に準じて取り扱って差し支えない。
-
-
III -2-2-2 他の事業者の貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介会社の取扱い
他の事業者の貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介会社の業務は、他の事業者が貸出金等の回収のために担保権を実行する必要がある場合に行う当該貸出金等に係る担保財産(不動産を除く。)の売買の代理・媒介(以下、「代理等」という。)に限られているか。
-
(注1)他業禁止規制の趣旨を踏まえ、担保権の実行以外での売買の代理等は認められないことに留意する。
-
(注2)保険会社が不動産業務を営むことができないことに 鑑み 、不動産の売買の代理等は認められないことに留意する。
-
(注3)担保財産の取得・保有・管理及び売却は、規則第 56 条の 2第 1 項第 24 号に規定する会社以外は認められないことに留意する。
III -2-2-3 保険会社の貸付金等に係る担保財産の保有・管理会社(自己競落会社)の取扱い
保険会社の貸付金等に係る担保財産の保有・管理会社について、以下の点に留意した取扱いとなっているか。
-
(1)当該会社の業務は以下に限られているか。
-
親保険会社が貸付金等の回収のために担保権を実行する必要がある場合(親保険会社に係る担保財産について第三者が担保権を実行する場合も含む。)に行う当該貸付金等に係る担保財産の取得(不動産以外の財産については競落による取得に限らず、いわゆる私的実行による取得も含む。)。
-
取得した財産の保有・管理及び売却(以下、「保有等」という)。
-
-
(2)当該会社の業務遂行にあたって以下の点は遵守されているか。
-
不動産の保有等
-
イ.競落価格は、原則として裁判所が公告した最低売却価格によっているか。
-
ロ.不動産の取得にあたっては、いやしくも社会的批判を浴びることのないよう厳に留意した運営となっているか。
-
ハ.取得した不動産の保有期間中に行う業務は、整地、未完成の建築物の完成、隣接地の購入等当該不動産の円滑な売却を図るため必要不可欠の価値の維持・向上のためのものに限られているか。
-
ニ.取得した不動産の保有期間中に当該不動産を賃貸する場合は、当該不動産の円滑な売却を妨げない範囲の業務となっているか。
-
ホ.当該会社は業務を遂行するにあたって、ホテル業等関連会社が営むことができない業務を営んでいないか。
-
-
動産の保有等
-
イ.動産は多種多様であり、その保有等により想定されるリスクも多岐に亘ることを踏まえ、当該動産の種別、特性に応じ、当該動産の保有等により生じうる管理責任や契約不適合責任等のリスクを適正に把握・分析・管理し、これらのリスクに適切に対応するための態勢を整備しているか。
-
ロ.当該動産の取得に際しては、客観性・合理性のある評価方法による評価をしているか。
-
ハ.取得した動産に関し、当該動産の種別、特性等に応じた適切な管理を行い、当該動産の価値の向上、維持に努めているか。
-
ニ.取得した動産の種別、特性等に応じた適切な売却・換価方法を検討し、その実現に努めているか。
-
ホ.当該会社は、動産の保有等を行うに当たって、関連会社が営むことが適当でない業務を営んでいないか。
-
-
債権の保有等
-
イ.当該債権の取得に際しては、客観性・合理性のある評価方法による評価をしているか。
-
ロ.取得した債権に関し、当該債権の第三債務者(目的債権の債務者)の信用力を判断するために必要となる情報を随時入手し財務状況を継続的にモニタリングするなど、当該債権の価値の維持に努めているか。
-
ハ.取得した債権に関し、適時に適切な回収措置(第三者への譲渡を含む)を講じ、円滑な回収の実現に努めているか。
-
-
その他の財産の保有等
その他の財産についても、上記不動産、動産及び債権の保有等に準じた取扱いがなされているか。
-
-
(3)対象財産は親保険会社の貸付金等に係る担保財産であり、当該財産の購入により、親保険会社に回収が見込まれるか。
-
(注)貸付金等には親保険会社が保証の履行により取得した求償権等の債権で当該財産の被担保債権となっているものを含む。
-
-
(4)その他
-
不動産の保有等を行う当該会社は、宅地建物取引業法の規定により、同法第3条の免許を取得しているか。
-
不動産以外の財産の保有等を行う当該会社は、当該財産の保有等に必要な免許、許可、登録又は承認等を取得しているか。
-
当該会社は取得した財産毎に収支・損益の分別管理を行っているか。
-
親保険会社及び当該会社は当該会社の財務の健全性が確保されるよう必要な措置を講じているか。
-
III -2-2-4 保険会社の海外における子会社等の業務の範囲
-
(1)保険会社の海外における子会社等の業務の範囲についても、国内の子会社等と同様の業務範囲の考え方を適用し、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を営むことのないよう留意する必要がある。
-
(注)海外における貸出債権回収のために担保権を実行する必要がある場合で、現地市場の状況から担保資産の売却が極めて困難であり、かつ、現地法制上、他に適切な処理方法が存在しないときに、管理子会社を設立して担保流れ資産の保有・管理を行うことは、この限りではない。
また、保険業を行う外国の会社が行う業務については、現地監督当局が容認するものは、法の趣旨を逸脱しない限り原則として容認する。
-
-
(2)出資先外国法人として報告がなされたもの(当該出資先外国法人がその業務を行わせるために設立した会社及びこれらと同様の業務を営む会社を含む。)で、新法の施行の際、子会社対象会社の営むことができる業務以外の業務を現に営む子法人等又は関連法人等については、上記III-2-2-1(3)に準じて取り扱う。
-
(注)出資先外国法人とは、保険会社が海外の外国法人に経営支配又は経営参画の形態をもって出資するものをいう。
経営支配とは、保険会社が外国法人における議決権の過半数を実質的に所有(議決権のある株式又は出資の所有の名義が役員等当該保険会社以外の者となっていても、当該保険会社が自己の計算で所有している場合を含む。)している場合(当該保険会社及び当該外国法人が他の外国法人における議決権の過半数を実質的に所有する場合又は当該外国法人が他の外国法人における議決権の過半数を実質的に所有している場合を含む。)をいう。
経営参画とは、保険会社が外国法人における議決権の100分の50以下を実質的に所有し、かつ、人事、資金、取引等の関係を通じて外国法人の財務及び営業の方針に対し重要な影響を与えることができる場合をいう。なお、「重要な影響を与えることができる場合」とは、当該外国における議決権の過半数を実質的に所有している出資者が他にいる場合は原則として該当しない。
-
-
(3)保険会社が、法第106条第6項第1号に規定する子会社対象外国会社又は同号に規定する外国特定金融関連業務会社(以下、総称して「子会社対象外国会社等」という。)を子会社とするため、同条第4項(同上第7項で準用する場合を含む。以下この(3)において同じ。)の認可申請がなされた場合、理由書その他の認可申請書類に以下の事項が明確に記載されている必要があることに留意する。
-
子会社対象外国会社等が、子会社対象会社以外の会社を子会社としているかどうかの別
-
に記載する会社を子会社としている場合には、当該会社の営む業務の内容並びに当該会社の最近の財産及び損益の状況
-
に記載する会社を子会社とした日から10年を経過するまでに、講ずることを予定している所要の措置の内容
具体的には、(a)法第106条第8項の承認を受ける、(b)議決権の売却、会社の清算等により当該会社が保険会社の子会社でなくなるようにする、(c)当該会社の業務のうち子会社対象会社が営むことができない業務の廃止、当該業務に係る事業譲渡等により当該子会社を子会社対象会社とするための措置を講じたうえで、当該子会社対象会社となった会社を子会社とするために必要な認可等を受ける方法が考えられる。
なお、保険会社の財務の健全性に悪影響を与えるおそれがある場合、子会社対象会社以外の会社の業務内容が公の秩序又は善良の風俗を害し、子会社対象外国会社等の社会的信用を失墜させるおそれがある場合、当該子会社対象会社以外の会社が子会社対象会社の営むことができない業務を国内において営んでいる場合など業務範囲規制の潜脱となるおそれがある場合その他子会社対象外国会社等が当該子会社対象会社以外の会社の業務の適正性を確保するよう子会社管理業務を的確かつ公正に遂行できることが確認できない場合は、法第106条第4項の認可をすることができないことに留意すること。
また、外国特定金融関連業務会社には、法第106 条第6項第1号において「主として」という要件があるが、当該要件の充足の適否については、総収入の50%以上を規則第57条の2の3に規定する業務(リース業務、貸金業務等)から生じる収入が占めているか否かで判断することとする。なお、当該要件を維持するために必要な態勢整備が確認できない場合は、法第 106 条第4項の認可をすることができないことに留意すること。
-
-
(4)法第106条第6項の趣旨は、国際競争力の強化を目指す保険会社・保険会社グループによる機動的な買収を実現し、現地において一体として付加価値を創造してきた外国会社・外国会社グループを不合理なかたちで分離・解体することを強いられないようにする観点から、子会社対象外国会社等を子会社とすることにより子会社対象会社以外の会社を子会社とした場合、業務範囲規制にかかわらず、当該会社を10年間子会社とすることができるようにするものである。また、法第106条第8項に基づき子会社対象会社以外の外国の会社を恒久的に子会社とするにあたり、金融庁長官の承認を要することとしているのも同様の趣旨による(以下、同項に基づく承認を「恒久化承認」という。)。
恒久化承認に当たっては、法第106条第9項に基づき、現に子会社としている子会社対象外国会社等の競争力の確保その他の事情に照らして当該会社の継続保有が必要であると認められる場合に該当するかを審査することとなるが、例えば、以下のような事項を考慮することが考えられる 。
-
子会社対象会社以外の外国の会社が実施している業務やリスクの内容
-
現地グループにおける子会社対象外国会社の業務又は外国特定金融関連業務会社の営む金融関連業務とのシナジー、現地当局の要請・指導との整合性等、上記①の業務が現地グループにおいて必要とされている理由
-
現地におけるプラクティスや現地同業他社グループにおける上記①の業務の取扱いの状況
なお、考慮できる事項は必ずしも上記①から③の事項に限定されるものではないことに留意する。
-
-
(5)恒久化承認を得ない場合には、10年の猶予期間内に、子会社対象会社以外の外国の 会社 について 所要の措置を講じる必要があるが、金融庁長官は、同条第10項各号に掲げる事情がある場合には当該猶予期間を1年間延長し、又は再延長することもできる。この場合において、同項各号の「やむを得ない事情」とは、例えば以下の事情が考えられる。
-
同項第1号関係
-
ア.子会社対象会社以外の会社の株式の売却活動に着手しているが、現地の経済情勢や売却先との交渉状況等により売却スケジュールが遅延していること。
-
イ.現地の法制上の理由により、子会社対象会社以外の会社の清算手続きが進捗しないこと。
-
-
同項第2号関係
現地の保険市場の特性に照らして、子会社対象会社以外の会社を子会社として保有継続することが不可欠であり、資本関係のない第三者に業務委託することでは目的が達成できないこと。
同条第10 項の申請を行う場合には、申請の都度、申請時点においてこれらのやむを得ない事情が存在すること、子会社対象会社以外の会社の議決権の保有に関する方針( 1 年以内に やむを得ない事情を取り除くために検討している方策等)等につき、申請書類に具体的に記載する必要があることに留意する。
-
-
(6)III-2-2-4(1)にかかわらず、保険会社が、子会社対象外国会社等を子会社とすることにより、子会社対象会社以外の会社を子法人等(子会社を除く。以下、III-2-2-4(5)において同じ。)又は関連法人等とすることも可能とする。この場合、子会社業務範囲規制の趣旨に鑑み、上記(3)に準じた対応が必要となる点に留意する。
なお、保険会社が子会社対象外国会社等を子法人等又は関連法人等とすることにより、子会社対象会社以外の会社を子法人等又は関連法人等とする場合も同様とする。
III -2-2-5 他業保険業高度化会社
-
(1)基本的な考え方
保険会社は、法第106条第1項第16号に掲げる会社(施行規則第57 条の2の2に規定する会社(以下「一定の保険業高度化等会社」という。)を除く。以下「他業保険業高度化等会社」という。)に対して基準議決権数を超えて出資することが認められている。これは、保険グループにおいて、将来的に様々な展開が予想される中で、認可を条件として、より柔軟な業務展開を可能とするためである。また、保険グループにおける将来の可能性への戦略的な対応として、出資時点においては保険業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資するといえないものであっても、これらが見込まれる業務を営む会社への出資を可能としている。
他方で、他業保険業高度化等会社の認可申請があった場合には、保険グループに他業禁止の規制等が課されていることから、他業リスクの回避、利益相反の禁止及び優越的地位の濫用の防止といった点を踏まえ審査を行う必要がある。
-
(注1)保険業法改正(令和3年11 月施行)により、他業保険業高度化等会社が営むことができる業務として地域活性化等に資する業務が追加されたが、 保険業高度化等会社における不動産業務の取扱いは改正前と変わらないことに留意すること。
-
(注2)他業保険業高度化等会社の設立に向けた準備行為として、保険会社をはじめとした保険グループにおいて実証実験を行う場合には、他業禁止の趣旨及び本指針における実証実験の位置付けを踏まえて、当該実証実験の内容及び規模、予定される実証実験の期間、対象者を必要な範囲に限定するほか、当該実証実験に伴うリスク等を個別具体的に検討し、保険会社や保険グループの健全性及びその業務の適切な運営に影響を与えないよう留意すること。
-
※1 ここで言う「実証実験」とは、他業保険業高度化等会社の設立の適否を経営陣が判断するにあたって、当該他業保険業高度化等会社において実施予定の業務に係る採算性・事業継続性を検証することを目的に、保険会社や当該保険会社のグループ会社等において、当該他業保険業高度化等会社の設立に向けた準備行為の範囲で当該業務と同等の行為を試験的に実施することを指す。なお、保険会社は、実施しようとする実証実験が、当該保険会社や当該保険グループの健全性及びその業務の適切な運営に影響を与えないことを自ら挙証する必要があることに留意すること。
-
※2 一定の保険業高度化等会社の設立に向けた準備行為として、保険会社や保険グループにおいて行う「実証実験」についても同様の取扱いとする。
-
-
-
(2)認可審査にあたっての留意点
他業保険業高度化等会社の認可の審査基準は、施行規則第58条の2第2項において定めているが、各基準の審査にあたっては、以下の点に留意する必要がある。
-
出資額
出資額の適切性については、他業保険業高度化等会社の認可を申請する保険会社(以下(2)から(3)において「申請保険会社」という。)の資本金の額、財産及び損益の状況等に照らして判断を行う。他業保険業高度化等会社に対する出資が全額毀損した場合の影響については、 保険会社グループのソルベンシー・マージン比率への影響等の審査を行う。
-
出資比率等
他業保険 業高度化等会社を子会社等とする場合、他業保険業高度化等会社においても、保険会社グループの一員として、適切な経営管理や内部管理、内部監査等に関する態勢整備が必要となる。
また、他業保険業高度化等会社に対する保険会社の支配力が及ばない場合、他業保険業高度化等会社のガバナンスや業務内容の適切性等について保険会社が管理可能か、他業保険業高度化等会社の業務が、保険業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資さなくなった場合や認可の基準を満たさなくなった場合、基準議決権数を超える出資の解消等を適切に図ることが可能か等の点を審査する。
-
業務の内容
申請保険会社は、認可の申請に際しては、他業保険業高度化等会社の営む業務の内容を明確にする必要がある。
他業保険業高度化等会社の営む業務の内容に関し、他業保険業高度化等会社は、保険業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に資する業務(以下「資する業務」という。)やこれらが見込まれる業務(以下「見込まれる業務」という。)以外の業務を一部で兼営していても、そのこと自体をもって認可の対象外となるものではない。ただし、兼営する業務の内容が保険業務に弊害等を及ぼす場合はもちろん、兼営する業務の規模が「資する業務」や「見込まれる業務」に比して著しく大きい等の場合も、他業禁止の趣旨等に抵触するおそれがあることから、認可をすることができない点に留意する。
また、他業保険業高度化等会社の業務を営むに当たり子会社対象保険会社等の業務を併せ営む場合には、他業保険業高度化等会社の認可のもと、これを営むことは許容される。他方で、他業保険業高度化等会社が施行規則第 58 条に定める子会社対象保険会社等の認可を受けずに子会社対象保険会社等の業務を営むことや、子会社対象保険会社等が他業を営むために他業保険業高度化等会社の認可を受けることは、業務範囲規制の趣旨に反して、子会社対象 保険会社 等の認可制度が潜脱されるおそれがある。このため、他業保険業高度化等会社が子会社対象保険会社等の業務を併せ営む場合には、上記のような潜脱のおそれがないかの観点から審査を行うものとする。
なお、出資時において営むことが想定されない業務であっても、その後営むことが具体的に想定される場合には、上記同様、審査を行う必要があることに留意を要する。
他方、他業保険業高度化等会社の業務については、当庁所管以外の一般事業会社が行う業務であることが多く、また、同会社の認可審査事項に全損規定(施行規則第58 条の2第2項第2号)があることに鑑み、当該業務の実現可能性や実施予定の業務に係るリスク等の詳細を確認することまでは求められていないことに留意すること。
-
申請保険会社の業務への影響等
他業保険業高度化等会社の業務の内容が、保険業の高度化、利用者の利便の向上又は地域活性化等に「資する業務」や「見込まれる業務」といえるものであっても、申請保険会社の業務に支障を来す著しいおそれが認められるときは、出資額の大小にかかわらず、他業保険業高度化等会社の認可をすることができない点に留意する(例えば、他業保険業高度化等会社のコンプライアンス・リスクやレピュテーショナル・リスクの波及により、申請保険会社の固有業務の運営に支障が生じたり、保険会社グループとして重大な損害等が生じたりするおそれのある場合)。
-
申請保険会社のグループとしての他業保険業高度化等会社に係る経営管理
法第106条の2において、保険会社による保険グループの経営管理を行うことが義務付けられていること及び認可の審査基準において、申請保険会社が他業保険業高度化等会社の議決権を、基準議決権数を超えて取得し、又は保有した後も、申請保険会社の業務の健全かつ適切な運営に支障を来す著しいおそれがないと認められることが求められていることに鑑み、申請保険会社が他業保険業高度化等会社の基準議決権数を超える議決権を取得等した後において、当該他業保険業高度化等会社が申請保険会社の保険グループに入ったことによる当該グループ全体の経営管理態勢やリスク管理態勢に追加すべき態勢など、当該態勢について変更することがあるかを確認することに留意すること。
-
-
(3)出資後の管理等
保険会社が、他業保険業高度化等会社の認可を受け、基準議決権数を超えて出資を行った場合、当該保険会社は他業保険業高度化等会社の業務の状況等について、適切にモニタリングを行う。特に、他業保険業高度化等会社の事業や業務の規模の拡大が見込まれる場合、これに伴うリスクや保険会社グループへの影響等についても適切に管理する必要がある。
なお、認可時点において、「資する業務」といえる業務を営んでいたものの、出資後に事業内容について大きな変更が生じた場合や、「見込まれる業務」であったとしても、出資後の状況により、「見込まれる」といえなくなった場合等には、基準議決権数を超える出資の解消等を適切に図る必要がある。
III -2-3 暗号資産に関する留意事項
III -2-3-1 意義
暗号資産の設計・仕様は様々であるところ、移転記録が公開されず、取引の追跡困難な暗号資産が存在する等、テロ資金供与やマネー・ローンダリングに利用されるリスクが高いものも存在する。また、一般的に、暗号資産は、その価値の裏付けとなる資産等がないため本源的な価値を観念し難く、価格の変動が大きいことを踏まえると、保険会社グループが暗号資産を保有する際にはその価格変動リスクについての検討が必要となる。加えて、暗号資産の管理については、システムの誤作動やサイバー攻撃などのシステムリスクも存在する。
以上のほか、これらのリスクが顕在化した場合のレピュテーショナル・リスク等も考慮すれば、保険会社グループによる暗号資産の取得は必要最小限度の範囲とする必要があり、かつ、保険会社グループにおいて、暗号資産の取得、保有又は処分等することとなる業務(暗号資産を実質的な投資対象とすファンドに対する出資等の間接的な方法によるものを含み、以下「暗号資産の取得等」という。)を含む、暗号資産に関連する業務(以下「暗号資産関連業務」という。)を行う場合には、保険会社の固有業務の運営への支障や保険会社グループとして重大な損害等が生じるおそれがないよう、十分な態勢整備が行われている必要がある。
なお、暗号資産交換業を営む会社に対する各種保険の引受けや暗号資産交換業に関連する損害を補償する各種保険の引受けなど、保険会社が暗号資産の取得等を行わない保険の引受けは暗号資産関連業務に該当しないものの、規制を潜脱するものとなっていないか留意する必要がある。
III-2-3-2 主な着眼点
保険会社グループにおける暗号資産関連業務については、上述の態勢整備がなされている必要がある。かかる態勢整備について、具体的には、以下の点 に留意する必要がある。
- (1) 暗号資産の特性等を踏まえたリスクの特定・評価・低減
暗号資産の仕組み(発行者、管理者その他の関係者や当該暗号資産と密接に関連するプロジェクトの内容等を含む。)、想定される用途、流通状況及 び当該暗号資産に使用される技術その他当該暗号資産の特性(以下「暗号資産の特性等」という。)等を踏まえ、暗号資産のリスクの特定・評価につい て十分な検討が行われ、以下の(2)から(4)の措置を含め、当該リスクを適切に低減するための内部管理態勢が整備されているか。また、これらについて定期的な検証及び見直しが実施されているか。
- (2) テロ資金供与及びマネー・ローンダリングへの対応
テロ資金供与及びマネー・ローンダリングに利用されるおそれが高い場合においては、暗号資産関連業務の適否を慎重に判断することとしているか。例えば、移転記録の追跡が著しく困難である暗号資産については、テロ資金供与及びマネー・ローンダリングに利用されるおそれが特に高いことから、暗号資産関連業務を行うことがないよう留意する。
また、暗号資産関連業務の相手方のテロ資金供与及びマネー・ローンダリング対策の状況等にも留意するなど、マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン記載の措置に沿った対策が適切に講じられているか。特に、暗号資産関連業務に関して、海外に居住若しくは所在する者から又はこれらの者への暗号資産の移転を伴う可能性がある場合には、同ガイドラインII-2(4)に準じた対策が適切に講じられているか。 - (3) 財務の健全性確保を図るための措置
保険会社グループの業務において暗号資産の取得が必要となる場合であっても、健全性の確保の観点から、取得する暗号資産の量については当該業務のために必要最小限度の範囲とする等、適切な方針が定められているか。また、暗号資産の保有についても、当該暗号資産の市場リスク、流動性リスク等を考慮の上で、速やかに売却する等により適切な処分を図ることが可能な態勢となっているか。
なお、保険会社グループにおいては、投資の目的をもってする暗号資産の取得等を行わないこととしているか。 - (4) 暗号資産関連業務に係る安全管理措置
① 暗号資産の管理を担当する部署及び責任者を明確にしているか(複数の部署で暗号資産の管理を担当する場合には、部署間の担当と責任が明確になっているか。)。また、取り扱う暗号資産の特性等に関して十分な知識・経験を有する者を配置しているか。
② 暗号資産の管理、流出時の対応その他暗号資産に係る内部規程を適切に整備し、役職員に対する周知、徹底を図っているか。また、当該内部規程について、定期的な検証及び見直しが行われているか。
③ 不正アクセス等による暗号資産の流出の防止のための対策等、取り扱う暗号資産の管理に関するシステムリスク管理態勢が十分に構築されているか。また、当該システムリスク管理態勢について、専門家による定期的な検証及び見直しが行われているか。
III -2-4 アームズ・レングス・ルール
法第100条の3又は第194条ただし書の承認申請があったときは、当該申請をした保険会社が法第100条の3又は第194条各号に掲げる取引又は行為をすることについて規則第54条又は第134条各号に掲げるやむを得ない理由があるかどうかを審査するが、その際留意すべき項目は以下のとおり。
-
(1)規則第54条第3号又は第134条第2号に該当する場合
-
特定関係者(法第100条の3に規定する特定関係者又は法第194条に規定する特殊関係者をいう。以下同じ。)が経営危機に陥り再建支援の必要な状況か。
-
特定関係者が再建支援を受けるにあたり、十分な自助努力及び経営責任の明確化が図られているか。
-
特定関係者を整理・清算した場合に比べ、当該取引又は行為を行うことに経済的合理性があるか。
-
債権放棄や金銭贈与の場合には、経営改善計画の期間中の支援による損失見込額の全額について、当該計画開始前に償却・引当を行うこととしているか。
-
-
(2)規則第54条第4号に該当する場合
- 保険会社が特定関係者との間で当該取引又は行為を行わなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであるか。
III -2-5 契約条件の変更
III -2-5-1 契約条件の変更の申出
-
(1)契約条件の変更の申出の承認
法第240条の2第3項に基づく契約条件の変更の申出の承認にあたっては、以下の点に留意することとする。
-
現時点では保険業の継続が困難である状況にはないこと。
-
将来の業務及び財産の状況を予測した場合に、契約条件の変更を行わなければ、当該保険会社の財産をもって債務を完済することができない等、保険業の継続が困難となりうることが合理的に予測できること。(注1)
なお、このうち、上記の予測にあたっては、
-
ア. (ア)金利、株価、為替レート等、金融経済動向に関わる事項
(イ)新契約伸展率、保険契約継続率、保険事故発生率等、保険契約に関わる事項
(ウ)資産配分等、運用に関わる事項
等について客観的かつ妥当な前提を置くこと(注2)
-
イ. 合併・再編、組織変更、事業費削減、業務の再編成等、保険業の継続のために取りうる経営改善方策の効果を織り込むこと
とする。
-
(注1)分析期間については、現在、日本アクチュアリー会の実務基準により、生命保険会社において10年間に係る将来収支の分析を行う実務が定着しており、これが一つの参考になるが、契約条件の変更の手続が自主的・自治的な手続であることにかんがみ、これ以上の期間の分析を一律に排除するものではない。
-
(注2)これらの分析にあたっての前提の置き方が客観的かつ妥当かどうかの判断にあたっては、日本アクチュアリー会の実務基準に定められている方法が一つの参考になる。
-
-
-
-
(2)申出書の記載内容
法第240条の2第1項の規定による申出を行おうとするときに添付する規則第196条に規定する書類のうち、同条第3号に規定する「その他参考となるべき事項を記載した書類」には、上記(1)に示された方法により作成された将来の業務及び財産の状況の予測、並びに当該予測に織り込まれた経営改善方策の内容に係る事項を含むものとする。
III -2-5-2 保険調査人の選任
法第240条の2第3項の承認をした場合には、契約条件の変更の内容その他の事項を調査させるため、原則として、すみやかに保険調査人を選任することとする。
保険調査人は、原則として、(1)アクチュアリー(法人を含む。)、(2)公認会計士、(3)弁護士のそれぞれから、選任することとする。
III -2-5-3 保険会社の対応
保険会社が、契約条件の変更の手続を進める場合には、以下の点に留意して、適切な対応が取られているか。
-
(1)経営改善の取組み
契約条件の変更にあたっては、契約条件の変更に至った経緯に加え、契約条件の変更後に保険契約の確実な履行が行えるよう、合併・再編、組織変更、事業費削減、業務の再編成等を含め経営改善方策を幅広く検討し、その結果講じることとした方策及びそれを織り込んだ将来の業務及び財産の状況の予測について、株主総会等及び保険契約者に明確かつ平易に説明を行っているか。
-
(2)基金・劣後ローンの取扱い
契約条件の変更の対象となる保険契約者のみに負担を強いることのないよう、基金・劣後ローンの削減、金利減免、あるいは増額その他の方策を検討し、その結果講じることとした方策について、株主総会等及び保険契約者に明確かつ平易に説明を行っているか。
-
(3)経営責任に関する事項
契約条件の変更後における経営体制について、その理由を含め、株主総会 等及び保険契約者に明確かつ平易に説明を行っているか。
-
(4)契約者配当等に関する方針
契約条件の変更に係る保険契約に関する契約者配当、剰余金の分配その他の金銭の支払に関する方針がある場合には、その内容について、株主総会等及び保険契約者に明確かつ平易に説明を行っているか。
III -2-5-4 契約条件の変更に係る承認
-
(1)契約条件の変更の承認
法第240条の11第2項に基づく契約条件の変更の承認にあたっては、以下の点に留意することとする。
-
株主総会等に係る手続きが適正に実施されたか。
-
III-2-4-3で示したそれぞれの事項について、保険契約者に対して明確かつ平易に説明が行われることとなっているか。
-
当該保険会社において、十分な経営改善方策が講じられ、当該方策及び株主総会等において決議された契約条件の変更により、保険業の継続が困難となる蓋然性が解消される見込みとなっているか。
-
契約条件の変更が、特定の保険契約者にとって著しく公平性を欠くことその他保険契約者等の保護の見地から問題がないか。
-
-
(2)申出書の記載内容
法第240条の11第1項による承認を受けようとするときに添付する規則第200条に規定する書類のうち、同条第5号に規定する「その他参考となるべき事項を記載した書類」には、契約条件の変更とあわせて講じられる経営改善方策の内容に係る事項を含むものとする。
III -2-6 資産運用限度
規則第48条の3第2項ただし書並びに同第48条の5第2項ただし書の承認にあたっては、今後の資産運用限度額超過の解消に向けた計画を求めるとともに、速やかに解消する場合を除き、定期的に計画の履行状況を報告させるものとする。
III -2-7 標準責任準備金を積み立てない場合の取扱い
-
(1)責任準備金の積立について、保険会社が規則第69条第4項第4号の規定を適用して保険料積立金及び払戻積立金(以下、「保険料積立金等」という。)の積み立てを行う際は、法第4条第2項第4号に掲げる算出方法書の変更認可(免許時の審査を含む。)申請が必要となるが、当該申請があった場合、以下の点に留意のうえ対応を行うものとする。
-
規則第69条第4項第4号の規定を適用し、標準責任準備金又は平準純保険料式以外の積立方式により保険料積立金等を積み立てることとしている保険会社は、合理的な期間内において標準責任準備金又は平準純保険料方式による積立とするための責任準備金積立計画(以下、「積立計画」という。)を策定しているか。また、その計画は事業計画あるいは業務実績等に基づき妥当なものとなっているか。
-
規則第69条第4項第4号の規定を適用している保険会社においては、当期純利益又は当期純剰余がでると見込まれるなど収益が良好に推移すると見込まれる場合、積立計画の前倒し実施を行うなど、積立計画の着実な実施のための措置を講じているか。
-
積立計画を変更する場合は、回復可能な一時的損失が発生した場合等、真にやむを得ない理由があるか。
-
-
(2)保険料積立金等の積立が、標準責任準備金又は平準純保険料式による積立額に移行した場合、遅滞なく算出方法書を変更しているか。
-
(3)積立計画の実施状況については、毎年度、法第128条に基づく報告を求め、当年度における積立計画における積立率を下回った場合は、その理由及び計画達成のための方策等についてヒアリングを実施することとする。
ヒアリングを実施した上で、対応が不十分と認められる場合は、法第128条に基づき積立計画の着実な実施を行うための対応について報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づく行政処分を行うものとする。
標準責任準備金の達成又は復元に向けた保険会社の対応としては、次のようなものが考えられる。
-
事業費削減や保険料見直しによる収支改善
-
増資等による責任準備金積増財源の確保
-
継続率向上や販売戦略転換による収支改善(既に類似のものを含め実績がある場合に限る。)
なお、財務再保険による改善策については、本件に対する対応策とは認めないものとする。
-
III -2-8 議決権の取得制限
-
(1) 法第107条第2項の承認にあたっては、基準議決権数を超過し、かつ1年を超えて保有しようとする場合には、その都度承認が必要である。
また、法第106条第1項第13号又は第271条の22第1項第13号に規定する、新たな事業分野を開拓する会社として内閣府令で定める会社(いわゆるベンチャービジネス会社)が行う新事業活動とは、新事業分野開拓が可能となるような新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入、技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動を指し、研究開発を前提とした創業を行う業種のみならず、サービス業等の業種も対象となる。なお、その該当性の判断に当たっては、地域や業種が勘案されることとなるが、既に相当程度普及している技術・方式の導入等については含まれない。 -
(2) 法第271条の22第1項第14号の承認の対象となる施行規則第210条の7第5項第2号の会社に該当するかの判断にあたっ ては、財務状態の悪化が顕在するに至っていない段階の会社であっても対象となり得ることに留意する。
III -2-9 保険相互会社における社員配当規制の適用免除
法第55条の2第5項に基づく社員配当規制の適用免除の認可申請に関し、申請会社が経営環境の変化に対応するため資本基盤の充実に努める必要があると認められるときは、同条第4項が規定する「その決算の状況に照らしてやむを得ない事情がある場合」に該当するため、認可するものとする。
III -2-10 責任準備金対応債券
責任準備金対応債券は、日本公認会計士協会業種別監査委員会報告第21号『保険業における「責任準備金対応債券」に関する当面の会計上及び監査上の取扱い』(平成12年11月16日)に従ったものであるか。
III -2-11保険主要株主
III -2-11-1 保険主要株主認可審査において確認すべき事項
-
(1)保険主要株主認可の申請者(以下、「申請者」という。)による、保険会社の議決権に係る取得資金に関する事項、保有の目的、その他議決権の保有に関する事項に照らして、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがないか審査する際には、保険契約者等の保護の観点から、その業務の継続的かつ安定的な運営が重要であり、例えば、以下のような点について十分検証するものとする。
-
保険会社の議決権の保有に係る方針・目的が保険会社の業務の健全性・適切性等を損なうおそれがないか。例えば、短期売買目的による議決権の保有等となっておらず、保険業の特性にかんがみ、ある程度長期保有を継続し、株主としてのガバナンスをもって保険会社の経営を安定・成長させる方針であるか(それがどういう形で担保し得るかを含む。)、また、株式の公開に関してはどのように考えているか。
-
議決権を取得するための資金原資にかんがみ、保険会社の業務の健全性・適切性等を害するおそれがないか。例えば、過度の借入金による議決権の取得等となっていないか。
-
申請者を含めたグループ間における取引の適正確保がなされているか。
-
-
(2)申請者の財産及び収支の状況に照らして、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがないか審査する際には、例えば、以下のような点について十分検証するものとする。
-
申請者の財務の状況、資金調達の状況にかんがみ、保険会社の業務の健全性・適切性等を害するおそれがないか。
-
特に、保険会社の50%超の議決権を保有している者については、保険会社が計画どおりの収益が上げられない場合にも、その経営の健全性確保のための十分なキャッシュフロー等が準備されているか。
-
認可審査に際しては、直近の決算期の財務諸表及び監査報告書等の資料(申請者が外国法人等である場合には、財務状況を示す類似の資料)の提出を求め、監査報告書に当該申請者の継続企業(ゴーイング・コンサーン)の前提に重要な疑義が認められる旨の追記がないか等について確認することとする。
-
-
(3)申請者が、その人的構成等に照らして、保険業の公共性に関し十分な理解を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であるか審査する際には、例えば、以下のような点について十分検証するものとする。
-
申請者の経営体制、当該申請者が主要株主基準値以上の議決権を保有する保険会社に係る経営管理体制等にかんがみ、保険業の公共性について理解を有し、かつ、十分な社会的信用があるか。
-
保険会社の経営の健全性を確保するためには、保険会社の経営の独立性が確保されることが前提となるが、申請者の経営戦略上の要請によって、保険会社の経営の独立性が損なわれることがないよう、例えば、以下のような点について十分検証するものとする。
-
ア. 申請者の役員又は職員が保険会社の役員又は職員を兼任すること等により、保険会社の経営の独立性が損なわれていないか。
-
イ. 申請者が保険会社の業務の一部を受託すること等により、リスク管理上、保険会社の業務の健全かつ適切な運営が損なわれていないか。
-
-
-
(4)保険会社の経営の独立性が確保されたとしても、申請者の経営の悪化等、保険会社が意図しない申請者のリスクが保険会社に及ぶ可能性がある。特に、保険会社と申請者とが営業基盤を共有しているような場合には、申請者の破綻等に伴い、保険会社の営業基盤が一気に失われるおそれ(共倒れリスク)がある。こうしたリスクに対応するためには、例えば、以下のような点について十分検証するものとする。
-
保険会社に対する申請者のリスクを遮断するための方策が十分講じられているか。なお、当該方策には、最低限、以下の項目が含まれている必要がある。
-
イ. 申請者の業況が悪化した場合、保険会社より支援・融資等を受けないこと。
-
ロ. 申請者の業況悪化、保険会社株式の売却等、申請者により保険会社に起因する種々のリスク(シナジー(相乗)効果の消滅、レピュテーショナルリスク(風評リスク)等に伴う保険会社の株価の下落、取引先の離反等)をあらかじめ想定し、それによって保険会社の経営の健全性が損なわれないための方策(収益源及び資金調達源の確保、資本の充実等)を講じること。
-
ハ. 特に、保険会社が申請者の営業基盤を共有しているような場合には、申請者の破綻等に伴い、事業継続が困難とならないような措置を講じること。
-
-
上記のリスク遮断策によっても、保険会社に対する申請者のリスクを完全に遮断することが困難な場合も想定され、申請者の経営リスクに伴う保険会社の経営悪化を早期に把握する観点から、保険主要株主認可に係る審査の過程において、保険会社の経営に影響を及ぼし得る申請者の財務状況や社会的信用等について十分検証する。
-
III -2-11-2 認可後の監督において留意すべき事項
-
(1)保険主要株主に対しては、法第271条の12の規定に基づき当該主要株主の決算期毎に有価証券報告書等のディスクロージャー資料(資金調達の状況を含む。)(ディスクロージャー資料がない場合は経営状況・財務状況を示す資料)及び当該主要株主が主要株主基準値以上の数の議決権を保有する保険会社との取引関係(保険契約、借入等)を記載した書類の提出を求めるものとする。
-
(2)オフサイト・モニタリングや検査結果等に基づき、保険会社の独立性確保及び保険会社に対する事業リスク遮断のための方策等に係る実効性等に疑義が生じた場合は、保険主要株主に対して、必要に応じて法第271条の12の規定に基づく報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第271条の14に基づく措置命令を発出する等の対応を行うものとする。
III -2-12 強化法に関する金融機関の留意事項
強化法に定める事業再編に関する計画及び特定事業再編に関する計画の記載事項については、保険会社の計算書類等の記載方法に則し、以下の点に留意するものとする。
III -2-12-1 事業再編の実施に関する指針-.の事業再編による生産性及び財務内容の健全性の向上に関する目標の設定に関する事項
(1) 生命保険会社
①事業再編の実施に関する指針(以下、「実施指針」という。)-.イ.(1)の「営業利益」は、例えば、基礎利益を指す。
②実施指針-.イ.(2)の「有形固定資産回転率の値」は、例えば、年換算保険料を有形固定資産の帳簿価額で除した値を指す。
③実施指針-.イ.(3)の「従業員一人当たり付加価値額の値」は、例えば、従業員1人当たりの付加価値額(基礎利益、人件費及び原価償却費の和)を指す。
④実施指針-.ロ.(1)の「有利子負債合計額」は、例えば、保険契約準備金を含む負債性の資金調達手段の全てを指し、「運転資金」は、例えば、不良債権を除く貸負債権等を指す。
⑤実施指針-.ロ.(2)の「形状収入」は、例えば、経常収益を指し、「経常支出」は、例えば、経常費用を指す。
(2) 損害保険会社
①実施指針-.イ.(1)の「営業利益」は、例えば、保険引受収益から保険引受費用を引いた額を指す。
②実施指針-.イ.(2)の「有形固定資産回転率の値」は、例えば、正味収入保険料と収入積立保険料の合計額を有形固定資産の帳簿価額で除した値を指す。
③実施指針-.イ.(3)の「従業員一人当たり付加価値額の値」は、例えば、従業員1人当たりの付加価値額(保険引受収益から保険引受費用を引いた額、人件費及び減価償却費の和)を指す。
④実施指針-.ロ.(1)の「有利子負債合計額」は、例えば、保険契約準備金を含む負債性の資金調達手段の全てを指し、「運転資金」は、例えば、不良債権を除く貸付債権等を指す。
⑤実施指針-.ロ.(2)の「経常収入」は、例えば、経常収益を指し、「経常支出」は、例えば、経常費用を指す。
III -2-12-2 実施指針ニ.イの事業再編の定義に関する事項
-
(1)生命保険会社
-
実施指針ニ.イ.(3)の「売上高」は、例えば、年換算保険料を指す。
-
実施指針ニ.イ.(5)の「当該商品又は役務に係る一単位当たり販売費」は、例えば、年換算保険料の1単位当たりの事業費を指す。
-
-
(2)損害保険会社
-
実施指針ニ.イ.(3)に「売上高」は、例えば、正味収入保険料と収入積立保険料の合計額を指す。
-
実施指針ニ.イ.(5)の「当該商品又は役務に係る一単位当たり販売費」は、例えば、正味収入保険料と収入積立保険料の合計額の1単位当たりの経費(損害調査費、諸手数料及び集金費、その他保険引受費用並びに営業費及び一般管理費の合計額)を指す。
-
III -2-12-3 実施指針ニ.ロ.(3)の過剰供給構造にある業種又は事業分野の基準
-
(1)生命保険会社
実施指針ニ.ロ.(3)(ⅱ)の「売上高営業利益率」における「売上高」は、例えば、年換算保険料を指し、「営業利益」は、例えば、基礎利益を指す。 -
(2)損害保険会社
実施指針ニ.ロ.(3)(ⅱ)に「売上高営業利益率」における「売上高」は、例えば、正味収入保険料と収入積立保険料の合計額を指し、「営業利益」は、例えば、保険引受収益から保険引受費用を引いた額を指す。
III -2-12-4 実施指針三.の特定事業再編による生産性及び財務内容の健全性の向上に関する目標の設定に関する事項
-
(1)生命保険会社
実施指針三.イ.(1)から(3)まで並びにロ.(1)及び(2)については、上記Ⅲ-2-11-1(1)①から⑤までを準用する。 -
(2)損害保険会社
実施指針三.イ.(1)から(3)まで並びにロ.(1)及び(2)については、上記Ⅲ-2-11-1(2)①から⑤までを準用する。
III -2-12-5
-
(1)生命保険会社
実施指針四.イ.(4)及び(5)の「売上高」は、例えば、年換算保険料を指す。
-
(2)損害保険会社
実施指針四.イ.(4)及び(5)の「売上高」は、例えば、正味収入保険料と収入積立保険料の合計額を指す。
III -2-13 法第98条第1項の業務の取扱い
III -2-13-1 地域活性化等業務における留意点等
-
(1) 保険会社が行うことができる法第98条第1項第15号の業務(以下「地域活性化等業務」という。)は、施行規則第52条の3の3各号において具体的に類型が列挙されているが、同条柱書括弧書によ って、「 当該保険会社の行う保険業に係る経営資源に加 えて、 当該業務の遂行のために新たに経営資源を取得する場合にあっては、需要の状況によりその相当部分が活用されないときにおいても、当該保険会社の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすおそれがないものに限る。」という要件が付されている。
デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に資するため、地域活性化等業務を保険会社の業務範囲に追加した点に鑑みれば、当該要件について過度に厳格な扱いをすべきではない点に留意する必要がある。
そこで、当該要件については、新規又は追加的に取得しなければならないリソースを最小限度にしなくてはならないわけではなく、仮に当該業務の需要がゼロになった としても、保険会社の固有業務の遂行又は健全性に著しい支障をきたさないことが明らかである限り、当該要件を充足するとみなすことができ、地域活性化等業務として実施可能であることに留意する。 -
(2) 保険会社が行うことができる地域活性化等業務のうち、施行規則第52条の3の3第2号の業務については、取引上の優越的地位を不当に利用することがないよう留意すること。
III -2-13-2 「その他の付随業務」の取扱い
保険会社が法第98条第1項の業務(同項各号に掲げる業務を除く。以下、「その他の付随業務」という。)を行う際には、以下の観点から十分な対応を検証し、態勢整備を図っているか。
(1) 保険会社が行う以下の業務も「その他の付随業務」に該当する。
・ 取引先企業に対して行う人材紹介業務、オペレーティングリース(不動産を対象とするものを除く。)の媒介業務、事務受託業務(取引先企業に対するサービスの充実及び固有業務における専門的知識等の有効活用の観点から、固有業務と切り離してこれらの業務を行う場合も含む。)
(注)人材紹介業務については、職業安定法に基づく許可が必要であることに留意すること。また、その実施に当たっては、取引上の優越的地位を不当に利用することがないよう留意すること。
・ 保険代理店や同一グループ内の企業等に対して行う事務支援業務(当該保険会社が行っている業務に関するもの)
・ 個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務
・ 保険会社の子会社又は保険持株会社の子会社が行う他の事業者の役職員に対する教育・研修業務、経営相談等業務、金融等に関する調査・研究業務及び個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務に関する代理・媒介業務
上記業務の実施に当たっては、顧客保護や法令等遵守の観点から、以下の点について態勢整備が図られている必要があることに留意すること。
-
優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等法令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。
-
(注1)個人(事業を行う場合におけるものを除く。)に対して行う財産形成に関する相談に応ずる業務の実施にあたっては、金融商品取引法に規定する投資助言業務に該当しない等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。
-
(注2)当該業務に係る商品やサービスの内容、対価等が、法第300条第1項第5号に該当する行為又は規則第234条第1項第1号に該当する行為とならないための態勢整備が行われているか。
-
-
提供される商品やサービスの内容、対価等契約内容が書面等により明示されているか。
-
付随業務に関連した顧客の情報管理について、目的外使用も含め具体的な取扱い基準が定められ、それらの役職員等に対する周知徹底について検証態勢が整備されているか(II-4-5-2参照)。
-
(2)上記(1)に定められている業務以外の業務(余剰能力の有効活用を目的として行う業務を含む。)が、「その他の付随業務」の範疇にあるかどうかの判断にあたっては、法第100条において他業が禁止されていることに十分留意し、以下のような観点を総合的に考慮した取扱いとなっているか。
-
当該業務が、法第97条及び第98条第1項各号に掲げる業務に準ずるか。
-
当該業務の規模が、その業務が付随する固有業務の規模に対して過大なものとなっていないか。
-
当該業務について、保険業との機能的な親近性やリスクの同質性が認められるか。
-
保険会社が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力の活用に資するか。
-
III -2-13-3 保険業等の業務の代理又は事務の代行
保険会社が、法第98条第2項ただし書の規定により、子会社又は密接な関係を有する者に係る保険業等の業務の代理又は事務の代行(以下、III-2-13-3において「業務代理等」という。)を行おうとするときは、別紙様式6の3により、あらかじめ金融庁長官に届け出るものとする。
この場合においては、法第100条の3又は第194条及び規則第51条の2第2項各号に掲げる事項の他、以下の点に留意するものとする。
-
(1)業務代理等の契約の相手方が、子会社又は規則第51条の3各号若しくは規則第141条の3各号に掲げる密接な関係を有する者に該当する者であること。
-
(2)当該届出後、業務代理等の契約の相手方が子会社又は密接な関係を有する者に該当しなくなるときは、あらかじめ、法第98条第2項本文による金融庁長官の認可を要すること。
III -2-14 基金の再募集
基金の償却に関する事項に係る定款変更認可(法第126条第2号)及び基金の総額の増額の届出(法第127条第4号)、定款変更の届出(同条第5号)の受理にあたっては、以下の点に留意する。また、基金の増額に関する総代会決議から一定期間経過後に決議において決めた時期(複数の時期を定めることを含む。)に基金募集を行う場合、当該基金の募集が社員の権利保護の観点等、法の趣旨を踏まえたものであるかどうか、特に留意する。なお、保険相互会社の取締役には、基金募集の業務を行う者として、基金拠出契約の締結等にあたり、会社に対する善管注意義務・忠実義務、損害賠償責任等に関する保険業法又は会社法の規定の適用又は準用があることにも留意する。
-
(1)定款に記載した基金の総額の増額(募集の時期ごとに区分した額)、募集の時期(例えば、3ヵ月程度の範囲で特定された時期)、基金利息の水準及び基金償却の方法等、基金の再募集の条件等について、総代会において十分な説明が行われた上で、総代会の意思決定が行われたものであるか。
-
(2)基金の再募集の条件について、当該基金の償却及び基金利息の支払いが、法第55条第1項及び第2項の制限を満たさないおそれがある等、社員の権利保護に欠けるおそれがあるものとなっていないか。
-
(3)総代会後、次期決算期末までに、すべての基金募集を行うこととなっているか。
-
(4)やむを得ない事情により、定款に定める基金の総額の増加額の全額を募集しない場合であっても、次期総代会において、改めて当該定款の規定に関する決議を要することとなっているか。
-
(5)基金の増額に関する総代会決議から一定期間経過後に決議において決めた時期(複数の時期を定めることを含む。)に基金募集を行う場合には、当該基金募集のそれぞれが法第127条第4号に該当するため当局への届出が必要となるが、その際、当該基金募集の条件等が、上記(1)及び(2)の各要件を満たしたものであるか。
III -2-15 説明書類の作成・縦覧等
業務及び財産の状況に関する説明書類の作成・縦覧等については、以下について留意する。特例企業会計基準等適用法人等にあっては、記載されている留意事項について、一部異なる取扱いが存在するので留意すること。III -2-15-1 重要性の原則の適用
-
(1)連結の範囲・持分法の適用範囲に関する重要性の原則については、金融商品取引法に基づいて作成する連結財務諸表等はもとより、法に基づいて作成する保険会社の連結財務諸表(法第110条第2項、規則第59条第3項)、保険持株会社の連結財務諸表(法第271条の24第1項、規則第210条の10第1項)も対象となることに留意する。
-
(注)連結して記載する説明書類については規則上明定されている(規則第59条の3第1項第1号及び第210条の10の2第1項第1号イ)。
-
-
(2)その内容については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第5条第2項及び第10条第2項の規定並びに監査・保証実務委員会実務指針第 52 号『連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い』(日本公認会計士協会)に従っているか。
また、重要性の判断にあたっては、保険会社グループの財政状態及び経営成績を適正に表示させる観点から、量的側面と質的側面の両面で並行的に判断され、金融業を営む個々の子会社等の特性が十分考慮されているか。
(注) 連結財務諸表を指定国際会計基準等に従い作成している場合には、連結の範囲・持分法の適用範囲につ
いても指定国際会計基準等と整合的な取扱いとする。
III -2-15-2 記載項目についての留意事項
-
(1)一般的な留意事項
-
各記載項目については、本監督指針に定めるもののほか、企業内容等の開示に関する内閣府令、連結財務諸表規則等も参考として、適切かつわかりやすい表示がなされているか。
-
各記載項目について自社において該当がない場合、注釈が必要な場合等 には、その旨適切な表示がなされているか。
-
(注)連結して記載する説明書類の記載事項のうち、平成9年度以前に係るものについて、当該保険会社が連結財務諸表を作成していない場合には、その旨を記載することに留意する。
-
-
規則に定められた義務的な開示項目以外の情報を自主的・積極的に開示することは、何ら差し支えないことに留意する。特に、保険会社の業務及び財産の状況を知るために参考となるべき事項のうち、例えばソルベンシー・マージン比率など、特に重要なものについては、四半期ごとの開示に努めるべきであることに留意する。また、利用者や投資家が適切な判断を行えるよう、市場の関心の強い分野に係るエクスポージャー等については、国際的なベストプラクティスを踏まえつつ、積極的に開示することが望ましい。
-
-
(2)個別の記載項目についての留意事項
-
「経営の組織」については、組織図等を用いて系統的に分かりやすい説明がなされているか。
-
「主要な業務の内容」には、保険の引受け及び資産の運用、業務の代理・事務の代行業務、国債等の窓口販売業務等の区分ごとにその内容が記載されているか。
-
「直近の事業年度における事業の概況」には、業況、事業実績、資産運用、損益の状況等についての概括的な説明、自社が対処すべき課題等について説明されているか。
-
「保有契約高」については、個人保険、個人年金保険及び団体保険の合計額について記載し、このほか団体年金保険保有契約高について記載されているか。
-
「資産運用に関する指標(別表)」については、特別勘定以外の勘定について記載する。
-
「リスク管理の体制」には、リスク内容、リスク管理に対する基本方針及び審査体制・検査体制・資産負債の総合的な管理体制等のリスク管理体制等について記載されているか。
-
「法令遵守の体制」には、法令遵守(コンプライアンス)に対する基本方針及び運営体制について記載されているか。
-
手続実施基本契約の相手方となる指定ADR機関の商号又は名称及び連絡先が記載されているか。指定ADR機関が存在しない場合には、苦情処理措置及び紛争解決措置の内容について、実態に即して適切に記載されているか(例えば、外部機関を利用している場合は当該外部機関の名称及び連絡先など)。
-
「保険会社及びその子会社等の主要な事業の内容及び組織の構成」については、保険会社グループにおける主要な事業の内容、当該事業を構成しているグループ会社の当該事業における位置付け等について系統的に分かりやすい説明がなされるとともに、その状況が事業系統図によって示されているか。
-
III -2-15-3 保険業法に基づく債権の額の開示
-
(1)保険業法に基づく債権の開示区分
規則第59 条の 2 第1項第5号 ロ に定める基準に従い、以下のとおり区分する 。ただし、その際には、以下に掲げる基準を機械的・画一的に適用するのではなく、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸付条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュフローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案した上で、区分することが適当である。特に債務者が中小企業である場合は、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払 状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて区分することが適当である。-
破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、「破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権」をいい、破産、清算、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者のほか、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認めら れるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権である。なお、特定調停法の規定による特定調停の申立てについては、申立が行われたことをもって経営破綻に陥っているものとはしないこととし、当該債務者の経営実態を踏まえて判断する。
具体的には、事業を形式的に継続しているが、財務内容において多額の不良債権を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは 、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞(原則として6カ月以上 遅延 しており、一過性の延滞とは認められないものをいう。)している債務者や、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる債務者に対する債権が含まれる。
このほか、経営改善計画等の進捗状況が計画を大幅に下回っており、今後も急激な業績の回復が見込めず、経営改善計画等の見直しが行われていない場合、又は一部の取引金融機関において経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意が得られない場合で、今後、経営破綻に陥る可能性が確実と認められる債務者については、「深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にある」ため、破産更生債権及びこれらに準ずる債権に該当するものと判断して差し支えない。 -
危険債権
-
危険債権とは、「債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権」をいい、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)に対する債権である。
具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調で貸付金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収 について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者に対する債権をいう。
なお、会社更生法、民事再生法等の規定による更生計画等の認可決定が行われた債務者に対する債権については、危険債権と判断して差し支えない。さらに、更生計画等の認可決定が行われている債務者については、以下の要件のいずれかを充たしている場合には、更生計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者に対する債権は 貸付 条件緩和債権 又は正常債権に該当するものと判断して 差し支えない。 -
ア. 更生計画等の認可決定後、当該債務者が、原則として概ね5年以内に、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸付条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計 画であり、かつ、更生計画等が概ね計画どおりに推移すると認められること。
-
イ. 当該債務者が、5年を超え概ね10 年以内に、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸付条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に 注意を要する状態を含む。)となる計画であり、かつ、更生計画等の認可決定後一定期間が経過し、更生計画等の進捗状況が概ね計画以上であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められること。
-
-
三月以上延滞債権、貸付条件緩和債権
-
三月以上延滞債権とは、「 元本又は利息の支払が約定支払日の翌日から三月以上遅延している貸付金 」 を いう。また、貸付条件緩和債権とは、 「 債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる 取 決めを行った貸付金 」 をいう。
ア. 規則第59条の2第1項第5号ロ(4)の「債務者に有利となる取決め」とは、債権者と債務者の合意によるものか法律や判決によるものであるかは問わないことに留意する。また、その具体的な事例としては、例えば、以下のような債権又はその組み合わせが考えられるが、これらに関わらず規則の定義に合致する貸付金は開示の対象となることに留意する。
-
(ア) 金利減免債権:約定条件改定時において、当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利(以下、「基準金利」という。)を下回る水準まで当初約定期間中の金利を引き下げた貸付金
-
(イ) 金利支払猶予債権:金利の支払を猶予した貸付金
-
(ウ) 経営支援先に対する債権:債権放棄などの支援を実施し、今後も再建計画の実施に際し必要となる支援の決定を行う方針を固めている債務者に対する貸付金
-
(エ) 元本返済猶予債権:約定条件改定時において、基準金利を下回る金利で元本の支払を猶予した貸付金
-
(オ) 一部債権放棄を実施した債権:私的整理における関係者の合意や会社更生、民事再生手続における認可決定等に伴い、元本の一部又は利息債権の放棄を行った貸付金の残債
-
(カ) 代物弁済を受けた債権:債務の一部弁済として、不動産や売掛金などの資産を債務者が債権者に引き渡した貸付金(担保権の行使による引き渡しを含む。)の残債
-
(キ) 債務者の株式を受け入れた債権:債務の一部弁済として、債務者の発行した株式を受領した貸付金の残債。ただし、当初の約定に基づき貸付金を債務者の発行した株式に転換した場合は除く。
-
(注) 上記の事例に係る判定にあたっては、例えば、以下の点に留意する。
-
a. 基準金利は経済合理性に従って設定されるべきであること
-
b. 個別債務者に関し、金利以外の手数料、配当等の収入、担保・保証等による信用リスクの減少、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸付金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか否かを判定すること。
-
c. 特に債務者が中小企業である場合は、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて区分すること。
-
d. 条件変更を実施している債権であっても、当該企業が保有する資産の売却等の見通しが確実であり、それにより返済財源が確保されている場合等には、信用リスクそのものが軽減されていること。
-
-
-
イ. 過去において債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として金利減免、金利支払猶予、債権放棄、元本返済猶予、代物弁済や株式の受領等を行った債務者に対する貸付金であっても、金融経済情勢等の変化等により新規貸付実行金利が低下した結果、又は当該債務者の経営状況が改善し信用リスクが減少した結果、当該貸付金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると見込まれる場合には、当該貸付金は貸付条件緩和債権には該当しないことに留意する。
特に、実現可能性の高い(注1)抜本的な(注2)経営再建計画(注3)に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合(注4)には、当該経営再建計画に基づく貸付金は貸付条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。また、債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸付条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき(注5)には、当該債務者に対する貸付金は当該貸付条件の変更を行った日から最長1年間は貸付条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。
-
(注1)「実現可能性の高い」とは、以下の要件を全て満たす計画であることをいう。ただし、債務者が中小企業であって、その進捗状況が概ね1年以上順調に進捗している場合には、その計画は「実現可能性の高い」計画であると判断して差し支えない。
-
(ア) 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。
-
(イ) 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。
-
(ウ) 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること。
-
-
(注2)「抜本的な」とは、概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態となることをいう。なお、債務者が中小企業である場合は、大企業と比較して経営改善に時間がかかることが多いことから、Ⅲ-2-14-3(1)③ウ.における「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」が策定されている場合には、当該計画を実現可能性の高い抜本的な計画とみなして差し支えない。
-
(注3)中小企業再生支援協議会(産業復興相談センターを含む。)又は株式会社整理回収機構が策定支援した再生計画、産業復興相談センターが債権買取支援業務において策定支援した事業計画、事業再生ADR手続(特定認証紛争解決手続(産活法第2条第25項)をいう。)に従って決議された事業再生計画、株式会社地域経済活性化支援機構が買取決定等(株式会社地域経済活性化支援機構法第31条第1項)した事業者の事業再生計画(同法第25条第2項)及び株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が買取決定等(株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法第25条第1項)した事業者の事業再生計画(同法第19条第2項第1号)については、当該計画が(注1)及び(注2)の要件を満たしていると認められる場合に限り、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」であると判断して差し支えない。
-
(注4)既存の計画に基づく経営再建が(注1)及び(注2)の要件をすべて満たすこととなった場合も、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合」と同様とする。例えば、金融機関が債務者に対して貸付条件の変更を行う場合であって、当該債務者が経営改善計画等を策定しているとき(他の金融機関(政府系金融機関等を含む。)が行う貸付条件の変更等に伴って当該債務者が経営改善計画等を策定しているとき及び信用保証協会による既存の保証の条件変更に伴って当該債務者が経営改善計画等を策定しているときを含む。)は、当該計画が(注1)及び(注2)の要件を満たしていると認められるものであれば、金融機関が当該債務者に対して行う貸付条件の変更等に係る貸付金は貸付条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。
なお、(注3)の場合を含め、(注1)及び(注2)の要件を当初すべて満たす計画であっても、その後、これらの要件を欠くこととなり、当該計画に基づく貸付金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、当該計画に基づく貸付金は貸付条件緩和債権に該当することとなることに留意する。なお、(注3)の場合を含め、(注1)及び(注2)の要件を当初すべて満たす計画であっても、その後、これらの要件を欠くこととなり、当該計画に基づく貸付金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、当該計画に基づく貸付金は貸付条件緩和債権に該当することとなることに留意する。
-
(注5)「当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき」とは、保険会社と債務者との間で合意には至っていないが、債務者の経営再建のための資源等(例えば、売却可能な資産、削減可能な経費、新商品の開発計画、販路拡大の見込み)が存在することを確認でき、かつ、債務者に経営再建計画を策定する意思がある場合をいう。
-
-
ウ. 形式上は延滞が発生していないものの、実質的に三月以上 遅延 している債権も、 三月以上延滞債権 に該当する。実質的な延滞債権となっているかどうかは、返済期日近くに実行された貸付金の資金使途が元金又は利息の返済原資となっていないか等により判断する。
金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者に対する債権は 貸付 条件緩和債権 又は正常債権に該当するものと判断して差し支えない(当該計画を「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」という。)。
なお、債務者が中小企業である場合、企業の規模、人員等を勘案すると、大企業の場合と同様な大部で精緻な経営改善計画等を策定できない場合がある。債務者が経営改善計画等を策定していない場合であっても、例えば、今後の資産売却予定、役員報酬や諸経費の削減予定、新商品等の開発計画や収支改善計画等のほか、債務者の実態に即して金融機関が作成・分析した資料を踏まえて債権区分の判断を行うことが必要である。また、債務者が中小企業である場合、必ずしも精緻な経営改善計画等を作成できないことから、景気動向等により、経営改善計画等の進捗状況が計画を下回る(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割に満たない)場合がある。その際には、経営改善計画等の進捗状況のみをもって機械的・画一的に判断するのではなく、計画 を下回った要因について分析するとともに、今後の経営改善の見通し等を検討することが必要である(ただし、経営改善計画の進捗状況が計画を大幅に下回っている場合には、「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」とは取り扱わない)。
なお、経営改善計画等の進捗状況や今後の見通しを検討する際には、バランスシート面についての検討も重要であるが、キャッシュフローの見通しをより重視することが適当である。
このほか、債務者が制度資金を活用して経営改善計画等を策定しており、当該経営改善計画等が国又は都道府県の審査を経て策定されている 場合には、債務者の実態を踏まえ、国又は都道府県の関与の状況等を総合的に勘案して判断する。
本基準は、あくまでも経営改善計画等の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、債権区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用すべきものではない。-
(ア) 経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。ただし、経営改善計画等の計画期間が5年を超え概ね 10 年以内となっている場合で、経営改善計画等の策定後、経営改善計画等の進捗状況が概ね計画どおり(売上高等及び当期 利益が事業計画に比して概ね8割以上確保されていること)であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。
-
(イ) 計画期間終了後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(ただし、計画期間終了後の当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸付条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある状態のほか、業況が低調ないし は不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画であること。
-
(ウ) 全ての取引金融機関等において、経営改善計画等に基づく支援を行うことが合意されていること。
ただし、単独で支援を行うことにより再建が可能な場合又は一部の取引金融機関等が支援を行うことにより再建が可能な場合は、当該支援金融機関等が経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意されていれば足りるものと判断する。 -
(エ) 金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものではないこと。
ただし、経営改善計画等の開始後、既に債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を行い、今後はこれを行わないことが見込まれる場合、及び経営改善計画等に基づき今後債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を計画的に行う必要があるが、既に支援による損失見込額を全額引当金として計上済で、今後は損失の発生が見込まれない場合を含む。なお、制度資金を利用している場合で、当該制度資金に 基づく国が補助する都道府県の利子補給等は債権放棄等には含まれないことに留意する。
-
-
-
正常債権
正常債権とは、「債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、破産更生債権及びこれらに準ずる債権、危険債権、三月以上延滞債権、 貸付 条件緩和債権 以外のものに区分される債権」をいう。
なお、国、地方公共団体及び被管理金融機関に対する債権は正常債権に該当する。
-
-
(2)保険業法に基づく債権の額として開示対象となる債権
保険業法に基づく債権の開示対象は、規制第59条の2第1項第5号ロに定める基準に従う。
規制第59条の2第1項第5号ロ本文において、債権として掲げられている未収利息及び仮払金とは、具体的に以下のものを指すこととする。-
未収利息とは、貸付有価証券又は貸付金に係る未収利息
-
仮払金とは、貸付金に準ずる仮払金(支払承諾に基づき代位弁済を行ったことにより発生する求償権及び貸付金と関連のある仮払金)
-
-
III -2-15-4 説明書類の縦覧場所等について
保険会社が説明書類を公衆の縦覧に供する「営業所又は事務所」については、各社により組織上の呼称は異なるが、次のような場所等に備え置くよう十分配慮されているか。
-
(1)保険会社の職員及び営業職員が保険契約者等に応接できるスペースを有し、かつ、保険会社の営業上の組織とされている店舗等をいうものとする。例えば、生命保険会社における支社、支部、損害保険会社における支社、事務所は含まれることに留意する。
-
(注)コンピューターセンター、福利厚生施設等は含まない。
-
-
(2)公衆の縦覧に供する時間については、当該縦覧場所における営業時間として差し支えない。
-
(3)縦覧場所の組織上の性質から、例えば、職員等が当該場所に不在になる場合においては、縦覧が可能な時間帯を表示する等の措置が講じられているか。
-
(4)居住の用に供している場所と異なる場所において保険契約者等に応接できるスペースを有する主要な代理店においても、保険会社の説明書類を備え置き、公衆の縦覧に供するなど、営業所又は事務所と同程度の開示がなされるよう指導が行われているか。
-
(注)「主要な代理店」について、その範囲及び取扱いに関する社内規定を設けるなどの措置が講じられているか。
-
III -2-15-5 説明書類に関して簡易な補助資料を作成する場合の留意事項
保険会社が、説明書類に関して簡易な補助資料(パンフレット等)を作成する場合には、当該補助資料の内容について、一部の指標を取り出すこと等によって全体が優良であるかのように表示することのないよう配慮されたものとなっているか。
III -2-16 不祥事件等に対する監督上の対応
不祥事件等に対する監督上の対応については、以下のとおり取り扱うこととする。
-
(1)不祥事件等の発覚の第一報
保険会社において不祥事件等が発覚し、第一報があった場合は、以下の点を確認することとする。
なお、保険会社から第一報がなく、不祥事件等届出書の提出があった場合にも、同様の取扱いとする。
-
本部等の事務部門、内部監査部門への迅速な報告及び社内規則等に基づく取締役会等への報告を行っているか。
-
刑罰法令に抵触している恐れのある事実については、警察等関係機関等へ通報しているか。
-
事件とは独立した部署(内部監査部門等)での事件の調査・解明を実施しているか。
-
-
(2)不祥事件等届出書の受理
規則第85条第8項各号(外国保険会社等においては、規則第166条第4項各号。免許特定法人においては、規則第192条第4項各号。以下同じ。)のいずれかに該当する行為を行った者が、保険会社、法第2条第12項に規定する子会社(保険会社の子会社である保険会社及び少額短期保険業者を除く。)若しくは業務の委託先又はそれらの役員若しくは使用人(保険募集人として登録又は届出されている者を除く。)(以下、III-2-15において「保険会社等」という。)か、保険募集人として登録若しくは届出されている者又はそれらの役員若しくは使用人(以下、III-2-15において「保険募集人」という。)かに応じて、以下のとおり取扱うこととする。
-
保険会社等に関する不祥事件等届出書の受理
保険会社等が規則第85条第8項各号のいずれかに該当する行為を行った場合は、当該保険会社等のうち保険会社の代表取締役から金融庁長官宛の不祥事件等届出書を保険課が受理することとする。
-
保険募集人に関する不祥事件等届出書の受理
保険募集人が、規則第85条第8項各号のいずれかに該当する行為を行った場合は、当該保険募集人を管理する保険会社の支社、支店等の長から当該保険募集人の主たる事務所の所在地を管轄する財務局長等宛の不祥事件等届出書を財務局等が受理することとする。
なお、当該不祥事件等届出書を受理した財務局等においては、当該不祥事件等届出書の内容及び受理件数について1ヵ月分を取りまとめのうえ、翌月10日までに保険課宛て報告することとする。
ただし、財務局等において緊急性が認められると判断するときは、随時、保険課宛て報告することとする。
-
不祥事件等届出書の受理にあたっての確認事項は、以下のとおりとする。
-
ア. 規則第85条第1項第27号の規定に基づき、保険会社が不祥事件の発生を知った日から30日以内に不祥事件等届出書が提出されることとなるが、当該不祥事件等届出書の受理時においては、法令の規定に基づき届出が適切に行われているかを確認することとする。
-
イ. 保険契約者等の判断に重要な影響を与えるような場合であるにもかかわらず、保険会社等及び保険募集人が公表していない場合には、公表の検討が適切に行われているかを確認することとする。
-
ウ. 二以上の所属保険会社等(法第2条第24項に定めるもの、免許特定法人及び法附則第4条の2に定める所属認可特定保険業者。以下、III-2-15において同じ。)を有する保険募集人に係る不祥事件等届出書を受理する際は、事件の内容や性質等に照らし、当該事件が他の所属保険会社等においても生じ得るものである場合には、必要に応じて、当該保険募集人に対してヒアリングを行う等により、他の所属保険会社等で同様の事件が発生していないかを確認することとする。ただし、個人情報の保護に関する法律等に配慮する必要があることに留意する。
-
-
-
(3)業務の適切性の検証
不祥事件と業務の適切性の関係については、以下の着眼点に基づき検証することとする。
なお、検証にあたっては、III-4-1なお書きの要因も踏まえたものとする。
-
保険会社等に関する不祥事件等届出書の場合
-
ア. 当該事件に役員は関与していないか、組織的な関与は認められないか。
また、経営者の責任の明確化が図られているか。
-
イ. 事実関係の真相究明、同様の問題が他の部門で生じていないかのチェック及び監督者を含めた責任の追及が厳正に行われているか。
-
ウ. 事実関係を踏まえた原因分析により、実効性のある再発防止への取組みが適時適切に行われているか。
-
エ. 当該事件の内容が保険会社の経営等に与える影響はどうか。
-
オ. 内部牽制機能が適切に発揮されているか。
-
カ. 保険会社等内における、役職員に対する教育・管理・指導は十分か。
-
キ. 当該事件の発覚後の対応が適切か。
-
-
保険募集人に関する不祥事件等届出書の場合
-
ア. 保険募集人の教育・管理・指導を担う保険会社に対する検証の着眼点は、以下のとおりとする。
-
(ア) 事実関係の真相究明、同様の問題が他の部門(保険代理店においては他の事務所等)で生じていないかのチェック及び監督者を含めた責任の追及が厳正に行われているか。
-
(イ) 事実関係を踏まえた原因分析により、実効性のある再発防止への取組みが適時適切に行われているか。
-
(ウ) 当該事件の内容が保険会社の経営等に与える影響はどうか。
-
(エ) 内部牽制機能が適切に発揮されているか。
-
(オ) 保険会社の保険募集人に対する教育・管理・指導は十分か。
-
(カ) 当該事件の発覚後の対応が適切か。
-
-
イ. 保険募集人に対する検証の着眼点は、以下のとおりとする。
なお、保険募集人の規模や業務の特性、不祥事件の内容等を踏まえるものとする。
-
(ア) 当該事件に役員は関与していないか、組織的な関与は認められないか。
また、経営者の責任の明確化が図られているか。
-
(イ) 事実関係の真相究明、同様の問題が他の部門(保険代理店においては他の事務所等)で生じていないかのチェック及び監督者を含めた責任の追及が厳正に行われているか。
-
(ウ) 事実関係を踏まえた原因分析により、実効性のある再発防止への取組みが適時適切に行われているか。
特に、発生原因が保険代理店固有の問題である場合は、保険代理店自身において上記取組みが適時適切に行われているか。
-
(エ) 内部牽制機能が適切に発揮されているか。
-
(オ) 保険代理店内における、保険募集人に対する教育・管理・指導は十分か。
-
(カ) 当該事件の発覚後の対応が適切か。
-
-
-
-
(4)監督上の措置
不祥事件等届出書の提出があった場合には、以下の措置を講じることとする。
-
事実関係、発生原因分析、改善・対応策等について保険会社に対してヒアリングを実施し、当該保険会社における同様の事案の発生状況等も踏まえ、必要に応じて、当該保険会社に対して法第128条に基づき報告を求め、さらに、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うこととする。
なお、財務局等においては、適宜、金融庁との密接な連携に努めるものとする。
-
財務局等においては、事実関係、発生原因分析、改善・対応策等について、上記を踏まえつつ、必要に応じて、規則第85条第8項各号のいずれかに該当する行為を行った保険募集人(又は当該保険募集人が保険代理店の役員又は使用人である場合は当該保険代理店)に対してヒアリングを実施する。
また、その結果を踏まえて、必要に応じて、特定保険募集人に対して法第305条に基づき報告を求め、さらに、重大な問題があると認められる場合には、法第306条又は第307条に基づき行政処分を行うこととする。
なお、財務局等においては、適宜、金融庁との密接な連携に努めるものとする。
-
財務局等においては、規則第85条第8項各号のいずれかに該当する行為を行った保険募集人(又は当該保険募集人が保険代理店の役員又は使用人である場合は当該保険代理店)の業務を行う区域が、他の財務局等の管轄区域に及び、当該他の財務局等の管轄区域内での被害等が想定される等、必要性が認められる場合には、当該他の財務局等に情報提供する等、密接な連携に努めるものとする。また、連携を行った場合には、保険課に対して報告を行うこととする。
-
金融庁においては、規則第85条第8項各号に規定される行為の発生状況等を分析し、同様の事案が全国的に多発している傾向が見られる等、必要性が認められる場合には、財務局等に対して情報提供することとする。
-
-
(5)標準処理期間
不祥事件等届出書に係る法第128条(特定保険募集人にあっては法第305条)に基づく報告徴求や法第132条(特定保険募集人にあっては法第306条)又は第133条(特定保険募集人にあっては法第307条)に基づく行政処分を行う場合は、当該不祥事件等届出書(法第128条又は第305条に基づく報告徴求を行った場合は、当該報告書)の受理の日から原則として概ね1ヵ月(財務局等が金融庁への連携や保険募集人(又は当該保険募集人が保険代理店の役員又は使用人である場合は当該保険代理店)に対して直接ヒアリングを行う場合は概ね2ヵ月)以内を目途に行うこととする。
III -2-17 ソルベンシー・マージン比率の計算
ソルベンシー・マージン比率の正確性等については、規則第86条、第87条、第161条、第162条及び第190条の規定に基づき、保険会社の資本、基金、準備金等及び通常の予測を超える危険に相当する額の計算方法等を定める件(平成8年2月29日大蔵省告示第50号。以下、III-2-16において「告示」という。)の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意してチェックするものとし、問題がある場合にはその内容を通知し、注意を喚起するものとする。
III -2-17-1 届出書の記載内容のチェック
規則第85条第1項第21号(又は同第166条第1項第5号)に規定する劣後特約付金銭消費貸借(以下、「劣後ローン」という。)による借入れ及び劣後特約付社債(以下、「劣後債」という。)の発行の届出があった場合において、これらが保険金等の支払能力の充実に資するものとして適格であるかについて確認するためには、以下の点に留意するものとする。
-
(1)少なくとも破産及び会社更生といった劣後状態が生じた場合には、劣後債権者の支払いの請求権の効力が一旦停止し、上位債権者が全額の支払いを受けることを条件に劣後債権者の支払い請求権の効力を発生する、という条件付債権として法律構成することにより、結果的に上位債権者を優先させる契約内容である旨の記載があるか。
-
(2)上位債権者に不利となる変更、劣後特約に反する支払いを無効とする契約 内容である旨の記載があるか。
-
(3)債務者の任意(オプション)による償還については、当局の事前承認が必要であるとする契約内容である旨の記載があるか。
III -2-17-2 資本の安定性・適格性等のチェック
-
(1)告示第1条第10項に定める「ステップ・アップ金利が過大なものである」かどうかは以下の条件に照らして判断するものとする。
-
契約時から5年を経過する日までの期間において、ステップ・アップ金利を上乗せしていないこと。
-
『「150ベーシス・ポイント」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップ・アップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』ないしは『「当初の信用スプレッドの50%」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップ・アップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』以下となっているか。
ただし、告示第1条第6項に規定する特定負債性資本調達手段においては、上記「150ベーシス・ポイント」を「100ベーシス・ポイント」と読み替えるものとする。
-
スワップ・スプレッドは、届出日ではなく価格決定時における当初参照証券・金利とステップ・アップ後の参照証券・金利との値付けの差により計算されるものであるが、これが確実に上記の範囲内となるよう計画されたものとなっているか。
-
(注)ただし、平成10年6月9日以降に発行、借入れ又は契約更改が行われたものについてチェックすることとする。
-
-
-
(2)資本等の調達を行った保険会社が、劣後ローン等の貸手等に対して迂回融資等により、その原資となる貸付を行っていないか。
III -2-17-3 「意図的な保有」控除のためのチェック
告示第1条の2においてソルベンシー・マージン総額から「控除項目」として控除しなければならない場合を、「他の保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率の向上のため、意図的に当該他の保険会社の株式その他の資本調達手段を保有している」場合(以下、「意図的な保有」という。)と規定している。この「意図的な保有」については、当面、具体的に以下のような場合を指すこととするが、これに該当しているか。
-
(1)生命保険会社
-
平成11年4月1日以降、我が国の生命保険会社が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合、平成12年2月4日以降、我が国の損害保険会社が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合又は平成13年3月31日以降、我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合
-
※この場合については、資本増強協力目的によるものとみなし、すべて「意図的な保有」に該当する。
-
-
平成11年4月1日以降、我が国の生命保険会社の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、平成12年2月4日以降、我が国の損害保険会社の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、又は平成13年3月31日以降、我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、経営再建・支援・資本増強協力目的として、新たに引き受ける場合
-
※なお、前述の経営再建・支援・資本増強協力目的以外の場合で、純投資目的等により流通市場等から調達する発行済の株式その他の資本調達手段の保有及び証券子会社によるマーケット・メイキング等のための一時的保有は、「意図的な保有」には該当しない。
-
-
-
(2)損害保険会社
-
平成11年4月1日以降、我が国の損害保険会社が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合、平成12年2月4日以降、我が国の生命保険会社が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合又は平成13年3月31日以降、我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合
-
※この場合については、資本増強協力目的によるものとみなし、すべて「意図的な保有」に該当する。
-
-
平成11年4月1日以降、我が国の損害保険会社の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、平成12年2月4日以降、我が国の生命保険会社の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、又は平成13年3月31日以降、我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を、経営再建・支援・資本増強協力目的として、新たに引き受ける場合
-
※なお、前述の経営再建・支援・資本増強協力目的以外の場合で、純投資目的等により流通市場等から調達する発行済の株式その他の資本調達手段の保有及び証券子会社によるマーケット・メイキング等のための一時的保有は、「意図的な保有」には該当しない。
-
(注)(1)及び(2)について、「意図的な保有」のうち、「第三者に対する貸付け等を通じて意図的に当該第三者に保有させていると認められる場合」についてのチェックについても、保険会社にあっては、平成11年4月1日以降に資金の払込みが行われた資本等の調達について、銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等の資本調達手段にあっては、平成13年3月31日以降に資金の払込みが行われた資本等の調達について行うものとする。
-
-
III -2-17-4 ソルベンシー・マージン比率の計算に際してのチェック
-
(1)資産の流動化が行われた場合には、法形式上の譲渡に該当する場合であっても、リスクの移転が譲受者に完全に行われている等、実質的な譲渡が行われているか。
-
(2)意図的な保有に該当する場合には、貸手保険会社のソルベンシー・マージン総額から当該保有相当額を控除することとなるが、適正な控除が行われているか。
-
(3)告示第1条第4項第3号における「これに準ずるものの額」とは、基金の償却に充てることを目的として純資産の部に計上される任意積立金の額(その決算期に積み立てる額を含む。)を指すこととするが、これに該当しているか。
-
(4)告示第2条第8項第1号及び第2号における「当該意図的に行っていると認められる取引に係る対象取引残高に相当する額」は、適正に算出されているか。
-
(注)例えば、年度末時点での取引残高が当該年度の各月末時点での取引残高の平均値を大きく上回っている場合や、年度末時点での現物資産の保有残高に対するデリバティブ取引の取引残高の割合(以下、「カバー率」という。)が当該年度の各月末時点でのカバー率の平均値を大きく上回っている場合において、その理由等を聴取することとする。
-
III -2-17-5 期限前償還等の届出受理に際してのチェック
規則第85条第1項第22号(又は同第166条第1項第6号)に規定する劣後ローンの期限前弁済若しくは劣後債の期限前償還に係る届出又は規則第85条第1項第26号に規定する自己の株式の取得に係る届出を受理しようとする時は、告示の趣旨を十分に踏まえるとともに、当該届出保険会社における期限前弁済若しくは期限前償還又は株式取得後のソルベンシー・マージン比率がなお十分な水準を維持しているかどうか、特に留意するものとする。
III -2-17-6 変額年金保険等の最低保証リスクについて
保険金等の額を最低保証する変額年金保険等については、将来にわたって債務の履行に支障を来たさないよう最低保証リスクの適切な管理及び評価を行うとともに、保険数理等に基づき、合理的かつ妥当な保険料積立金及び危険準備金 III の積立並びにソルベンシーの確保を行う必要があるが、その際、以下の点に留意するものとする。
-
(1)標準的方式
告示第2条第4項の規定により、最低保証リスク相当額の評価において標準的方式(保険料積立金と合わせて概ね90%の事象をカバーできる水準に対応する最低保証リスク相当額を定めるもの)を使用する場合に、平成17年3月31日以前に締結した変額年金保険契約等のうち保険金等の額を最低保証している保険契約についても、最低保証リスク相当額を算出するものとなっているか。
-
(2)代替的方式
告示第2条第4項の規定により、最低保証リスク相当額の評価において代替的方式を使用する場合に留意すべき事項は以下のとおり。
-
通常の予測を超えるリスクに対応するものとして、「II-2-1-3-1 保険料積立金の積立(2)から」に留意し、保険料積立金と合わせて概ね90%の事象をカバーできる水準に対応する最低保証リスク相当額を定めるものとなっているか。
-
平成17年3月31日以前に締結した変額年金保険契約等のうち保険金等の額を最低保証している保険契約についても、最低保証リスク相当額を算出するものとなっているか。
-
代替的方式を使用してソルベンシー・マージン基準上の最低保証リスク相当額を算出する旨を、金融庁長官宛に届出する場合は、告示別表第6-2 II 2に定めるからの基準を満たすことを説明する書類を添付することとしているか。また、代替的方式の使用の中断又はリスク計量モデルに重大な変更を加える場合においても、その概要及び中断・変更を加えることの適切性を説明する書類を添付することとしているか。
-
-
(3)ヘッジ・再保険の取扱い
-
ヘッジによるリスク減殺の取扱いが、告示別表第6-2 II 3に定めるところにより取扱われているか。
-
再保険を付している場合の最低保証リスクについては、出再により移転する部分を超えない範囲で控除するものとなっているか。
-
III -2-18 保険契約の移転
-
(1)保険契約の移転の通知及び異議申立て等
-
法第138条が保険契約の移転手続中に移転対象契約を締結する者に一定の事項の通知を義務付けたのは、保険契約の移転が成立した場合に移転先会社の保険契約者になることは、当該保険契約を締結する者にとって重要な事実に該当することから、事前に必要な情報提供を受けた上で保険契約を締結するか否かを判断させる必要があるとの考えによる。したがって、法第138条第1項による当該保険契約を締結する者に対する通知と同人からの承諾の取得は、当該保険契約の締結手続の一環として行われることが合理的である。
なお、通知・承諾の方法は、当該契約の締結の方法と同様とすることが適当であり、書面のほか、電磁的方法を用いることが考えられる。
-
法第137条第1項及び規則第88条の3第4号(外国保険会社等の日本における保険契約の移転については、法第210条第1項において準用する法第137条第1項及び規則第166条の3第4号)並びに法第138条第1項第3号及び規則第89条の3(外国保険会社等の日本における保険契約の移転については、法第210条第1項において準用する法138条第1項第3号及び規則第167条の3)により、移転対象契約を締結する者に対し通知することが求められている「移転対象契約に関するサービスの内容」とは、例えば、移転後における移転対象契約に係る顧客からの苦情・相談、住所変更・給付金請求等各種の保全手続きに対する対応方法(窓口の案内等)や移転対象契約に係る付帯サービスに関する事項(自動車保険のロードサービスや医療相談・医療情報提供サービスの継続の有無等)が考えられる。
-
法第137条第5項が保険契約の移転手続に異議を述べ、かつ保険契約が移転することとなる場合には解約する旨を申し入れた移転対象契約者に対する払戻しを義務付けたのは、契約移転を望まない移転対象契約者について、解約によって不利な取扱いとならないようにする必要があるとの考えによる。したがって、同項に規定する払戻額は、いわゆる解約控除を行わないなど、保険商品の特性に応じて当該移転対象契約者に不利益を与えない金額とするとともに、法第137条第1項並びに規則第88条の3第5号(外国保険会社等の日本における保険契約の移転については、法210条第1項において準用する法第137条第1項及び規則第166条の3第5号)に規定する事項の公告及び通知に際しては、当該解約時に見込まれる払戻額について、当該移転対象契約者が十分に理解できるよう適切に情報提供がなされる必要がある。
-
-
(2)保険契約の移転の認可
法第139条第2項に掲げる認可基準及び規則第90条の2に掲げる配慮事項に照らした保険契約の移転の認可審査の留意点は、下記のとおりとする。
-
法第139条第2項第1号に規定する基準
-
ア.規則第90条の2第1号に規定する配慮事項
例えば、収益性に問題のある契約集団のみを選定して十分な責任準備金の手当がないまま保険契約の移転が行われていないか。
-
イ.規則第90条の2第2号に規定する配慮事項
移転後における移転会社及び移転先会社の保険契約に係る責任準備金が、将来収支分析等を活用し、保険数理に基づき合理的かつ妥当な方法により積み立てられることが見込まれるか。
-
ウ.規則第90条の2第5号に規定する配慮事項
移転会社が相互会社であり、かつ有配当契約を移転する場合には、個々の保険契約に係る配当準備金等以外の剰余について、移転対象契約に係る社員の寄与分や移転会社の健全性等に配慮しつつ、移転対象契約者に適切に分配されるよう手当がなされているか。
-
エ.その他
規則第90条の2第2号から第5号に規定する責任準備金及び配当準備金、保険金等の支払能力の充実の状況、並びに剰余金の分配の計算にあたっては、日本アクチュアリー会の実務基準等を参考にしつつ、保険計理人や移転会社及び移転先会社に属さない規則第78条に規定する要件に該当する者等による確認がなされているか。
-
-
法第139条第2項第2号に規定する基準
例えば、移転対象契約に関するサービスの内容について、移転前後で著しい差異が生じていないか。
-
法第139条第2項第3号に規定する基準
例えば、収益性の好調な契約集団のみが、著しく過大な資産とともに、債権者の利益を不当に害する態様で、移転されていないか。
-
-
(3)会社分割
保険契約の承継を伴う会社分割についても、上記(1)及び(2)に準じて取り扱う。
III -2-19 同一事項に関する保険会社及び保険持株会社の届出の取扱い
-
同一の事項に関して、保険会社及び当該保険会社を子会社とする保険持株会社の両者がそれぞれ次に掲げる届出を行う必要がある場合においては、保険会社及び保険持株会社の連名により、1つの届出書として提出することが可能であることに留意する。
法第127条第1項第2号、法第271条の32第2項第3号
法第127条第1項第3号、法第271条の32第2項第4号
規則第85条第1項第4号、規則第210条の14第2項第5号
規則第85条第1項第6号、規則第210条の14第2項第6号