I. 基本的考え方

I-1 金融商品取引業者等の監督に関する基本的考え方

(1)金融商品市場において、投資者が積極的に資産運用を行うとともに、企業が円滑に資金調達を図るためには、金融商品市場が公正かつ効率的なものであることが大前提であり、金融商品取引業者等(金融商品取引業者又は登録金融機関をいう。以下同じ。)は、このような金融商品市場の仲介者として、重要な役割を果たしている。
 金融商品取引業者等の監督の目的は、金融商品取引業を行う者の業務の健全かつ適切な運営を確保し、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、市場仲介機能等の適切な発揮を通じ、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することにある。

(2)金融庁としては、発足当初より、明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を確立することを基本としている。このため、監督をはじめ検査・監視を含む各分野において、行政の効率性・実効性の向上を図り、更なるルールの明確化や行政手続き面での整備等を行うこととしている。

(3)行政の透明性や公正性は、今後も行政運営の基本である。しかしながら、ルールを明確化しようとするばかり過度に詳細なチェックリスト等を策定し、問題の根本原因やこれが広がりをもって他の問題として生じる可能性を踏まえた実質的な検証等を行うことなく、網羅的な検証項目に基づいた事後的かつ一律の検証を機械的に反復・継続するに止まれば、かえって、金融商品取引業者等において、経営全体や問題の根本原因を踏まえた真に重要な課題の把握、再発防止に向けた根本原因の解決、将来に向けた早め早めの対応、より良い実務に向けた創意工夫の発揮が進まない等の弊害を惹起しかねない。
 金融庁としては、各金融商品取引業者等の規模・特性やコンプライアンス等に係る重大な問題が発生する蓋然性等に応じて、金融商品取引業者等の検査を行う証券取引等監視委員会等(以下「検査部局」という。)と連携しながら、実態把握や対話等によるオン・オフ一体のモニタリングを継続的に行い、必要に応じて監督上の措置を発動すること等により、重大な問題の発生を事前に予防し、併せて、必要に応じて、対話等を通じ金融商品取引業者等によるより良い実務に向けた様々な取組みを促していく。

(参考)「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(平成30年6月29日)

(4)金融商品取引業者等の監督に携わる職員は、(1)から(3)の基本的考え方を踏まえつつ、業務遂行に当たって、以下の事項を行動規範とし、監督行政の信認の確保に努めることとする。

マル1国民からの負託と職務倫理の保持
 自らの業務が国民から負託された職責に基づくものであって、その遂行に当たってはI-1(1)における金融商品取引業者等の監督の目的を最優先の課題として行う必要があることを意識するとともに、職務に係る倫理の保持に努め、金融行政に対する国民の信頼を確保することを目指す。

マル2綱紀・品位、秘密の保持
 金融行政の遂行に当たり、綱紀・品位及び秘密の保持を徹底し、穏健冷静な態度で臨む。

マル3大局的かつ中長期的な視点
 金融サービスを利用する国民や企業の目線に立って、局所的・短期的な問題設定・解決のみに甘んじるのではなく、根本原因を把握し、大局的かつ中長期的な視点から、早め早めに問題解決に取り組む。

マル4公正性・公平性
 法令等に基づく適正な手続きに則り、各金融商品取引業者等の状況を踏まえて、公正・公平に業務を遂行する。また、国内の金融商品取引業者等と、日本において営業を行っている外国法人の金融商品取引業者等の支店又は外国法人の子会社である金融商品取引業者等との間で、法令等に基づく合理的な理由なく、異なる取扱いを行わない。

マル5金融商品取引業者等の自主的努力の尊重
 I-1(1)における監督の目的を達成するためには、金融商品取引業者等による自主的な取組みと創意工夫が不可欠であることを自覚し、私企業である金融商品取引業者等の業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮する。

マル6自己研鑽
 諸外国を含む金融に関する法令・諸規制や金融商品取引業者等の動向等のほか、金融という経済インフラを取り巻く幅広い社会・経済事象について、基本的知見を養う。また、対話等を行う自らの業務遂行に当たっては、各金融商品取引業者等固有の実情に係る深い知見はもとより、経営分析、ガバナンス、リスク管理等課題に応じた高い専門性に基づいた分析等が必要であり、これらの能力の習得に向けた自己研鑽に日々努める。

マル7適切かつ密接な組織内外の関係者との連携
実効性の高い監督を実現するためには、自らの所管に限らない広い視野が重要であり、庁内外の様々な主体と適切かつ密接に連携する。

I-2 監督指針策定の趣旨

I-2-1 監督指針策定の趣旨

我が国経済が持続的に発展するためには、間接金融に偏重している我が国の金融の流れが直接金融や市場型間接金融にシフトする、いわゆる「貯蓄から投資へ」の動きを加速することが重要な課題である。これは、主に以下の四つの効果を通じ、我が国金融システムの安定と内外の市場参加者にとって魅力ある市場の実現、企業の成長、及び経済発展に資すると考えられる。

  • マル1多数の市場参加者がその能力に応じてリスクを広く負担する構造へと変化することにより、強靭で高度なリスクシェアリング能力を有する金融システムを実現すること(間接金融にリスクが集中することによって生じる金融システムの脆弱性の回避)。

  • マル2リスクマネーの円滑な供給を実現し、企業のイノベーションを促進すること。

  • マル3貯蓄金融から投資金融への資金のシフトによる、経営者を監視する厚みのある市場の実現により、資本の効率性を高め、我が国企業の収益性の向上を図ること。

  • マル4少子高齢社会において、投資者に多様な運用手段を提供することで、多彩で豊かな社会を実現すること。

こうした流れを実現するためには、仲介者たる金融商品取引業者等が国民からの信頼を得ることに加え、金融行政として、適切な制度設計と併せて、金融商品取引業者等が投資者保護や適切なリスク管理などを意識したガバナンスを強化するよう適切に動機付けていくことが必要となる。

我が国における金融・資本市場の改革を振り返ると、フリー・フェア・グローバルを掲げた平成10年の金融システム改革以降、証券会社の参入容易化や業務の自由化、証券業の担い手の多様化などの、証券市場の活性化のための諸施策が講じられた。その成果は、金融商品や販売チャネルの多様化などのかたちで現れ始め、証券業等を巡る環境の変化や金融・資本市場の国際化が進展した。

そうした中にあっても、利用者保護、利用者利便の向上と、我が国市場の信頼性確保は、依然として大きな課題であった。例えば、これまで規制対象となっていない金融商品についての詐欺的な販売等により、一般顧客に被害が生じるような事例に対しては、金融先物取引法改正による外国為替証拠金取引への規制の導入(平成17年7月施行)など、個別に投資者保護策を拡充する形で制度的な手当てを行ってきた。

このような中、証券取引法の金商法への改組(平成19年9月30日施行)は、これまでの改革の成果を更に進める観点から金融イノベーションを促進するとともに、横断的かつ包括的な投資者保護ルールの整備等により、適切な利用者保護を図っていくためのものである。

今後は、こうした横断的法制の下で、これまでの改革の成果を活かしつつ、「貯蓄から投資へ」の流れを更に加速させていくため、多様化している金融商品取引業者等に対し、監督上の対応を的確に行うことが求められている。

このような状況の下、日常の監督事務を遂行するため、従来、業態ごとに策定されていた監督指針や事務ガイドラインの内容を体系的に整理し、金融商品取引業者等に対し、包括的かつ横断的に、監督の考え方や監督上の着眼点と留意点、具体的監督手法等を整備することとした。

本監督指針は、金融商品取引業者等の実態を十分に踏まえ、様々なケースに対応できるように作成したものであり、本監督指針に記載されている監督上の評価項目の全てを各々の金融商品取引業者等に一律に求めているものではない。

従って、本監督指針の適用に当たっては、各評価項目の字義通りの対応が行われていない場合であっても、公益又は投資者保護等の観点から問題のない限り、不適切とするものではないことに留意し、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮する必要がある。一方、評価項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、公益又は投資者保護等の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。

財務局(福岡財務支局及び沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)は本監督指針に基づき、管轄金融商品取引業者等の監督事務を実施するものとし、金融庁担当課室にあっても同様の扱いとする。なお、本監督指針の策定に伴い、「証券会社向けの総合的な監督指針」、「金融先物取引業者向けの総合的な監督指針」、「事務ガイドライン(投資信託委託業者及び投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について)」、「信託会社等に関する総合的な監督指針」のうち「10 信託受益権販売業」、「金融監督等にあたっての留意事項について(事務ガイドライン)第三分冊:金融会社関係」のうち「6.商品ファンド業関係」は廃止することとする。

I-2-2 本監督指針の構成

(1) 本監督指針は、多様な金融商品取引業者等の監督に利用可能な包括的なもので、かつ、重複する記述を少なくするという意図で策定されている。
 そのため、「I .基本的考え方」、「II .金融商品取引業者等の監督に係る事務処理上の留意点」は、基本的には金融商品取引業者(第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業又は投資助言・代理業を行う者)又は登録金融機関を対象としつつ、適格機関投資家等特例業務を行う者、外国証券業者、金融商品仲介業者、証券金融会社、投資法人及び商品投資販売業者も念頭に置いた記述となっている。
 また、それに続く「監督上の評価項目と諸手続」には、まず「III .共通編」として、金融商品取引業者に共通する監督上の留意事項等を記し、続く「IV」から「VII」までの部分では、各業態に特有の、追加的な留意事項等について記している。
 従って、これら金融商品取引業者等を監督する者は、以下の表も参考にしつつ、まずは「III 共通編」を参照するとともに、対象となる業者の業務の属性に応じ、その業者に特有の留意事項が記されている「IV」から「VII」までの部分を参照することとする。
 また、「VIII」以降においては、登録金融機関、適格機関投資家等特例業務を行う者、外国証券業者、金融商品仲介業者及び証券金融会社それぞれの監督上の評価項目と諸手続が、それまでの部分を適宜準用するかたち等で記されているので、これも参照することとする。
 なお、金融商品取引業者、登録金融機関又は取引所取引許可業者(X-2-1(1)に規定する取引所取引許可業者をいう。)がそれぞれの業務として行う高速取引行為については、本監督指針の別冊として策定された高速取引行為者向けの監督指針の着眼点等を準用することにより、監督上の対応を行うこととする。

(2) 金融庁は、監督に関する方針として、監督指針のほかに、分野別の「考え方と進め方」や各種原則(プリンシプル)、年度単位の方針、業界団体等への要請等の様々な文書を示しているが、監督を行うに当たっては、各文書の趣旨・目的を踏まえた用い方をするとともに、金融商品取引業者等に対し当該趣旨を丁寧に説明することとする。

(参考)金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針 適用表(PDF:15K)

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