II 認可特定保険業者の監督にあたっての評価項目
II -1 経営管理
II -1-1 意義
認可特定保険業者の経営の健全性の維持及びその一層の向上を図るためには、経営に対する規律付けが有効に機能し、適切な経営管理(ガバナンス)が行われることが重要である。
II -1-2 主な着眼点
経営管理が有効に機能するためには、代表理事、理事、監事及びすべての職階における職員が自らの役割を理解しそのプロセスに十分関与することが必要となるが、その中でも代表理事、理事・理事会、監事及び内部監査部門が果たす責務が重大であることから、経営管理のモニタリングにあたっては、例えば、以下のような着眼点に基づき、その機能が適切に発揮されているかどうかを検証することとする。
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(1)代表理事
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代表理事は、法令等遵守を経営上の重要課題の一つとして位置付け、率先して法令等遵守態勢の構築に取り組んでいるか。
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代表理事は、リスク管理部門を軽視することが事業に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。
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代表理事は、内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその機能状況を確認しているか。また、内部監査の結果等については適切な措置を講じているか。
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代表理事は、断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断し排除していくことが、認可特定保険業者に対する公共の信頼を維持し、認可特定保険業者の業務の適切性及び健全性の確保のため不可欠であることを十分認識し、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ。以下、II -1-2及び II -3-7において「政府指針」という。)の内容を踏まえて理事会で決定された基本方針を明確に示し、組織内外に宣言しているか。
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(2)理事及び理事会
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理事は、業務執行にあたる代表理事等の独断専行を牽制・抑止し、理事会における業務執行の意思決定及び理事の業務執行の監督に積極的に参加しているか。
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理事会は、認可特定保険業者が目指すべき全体像等に基づいた業務執行方針を明確に定め、それを組織全体に周知しているか。また、その達成度合いを定期的に検証し必要に応じ見直しを行っているか。
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理事及び理事会は、法令等遵守に関し、誠実かつ率先垂範して取組み、組織全体における内部管理態勢の確立のため適切に機能を発揮しているか。また、政府指針を踏まえた基本方針を決定し、それを実現するための体制を整備するとともに、定期的にその有効性を検証する等、法令等遵守・リスク管理事項として、反社会的勢力による被害の防止を明確に位置付けているか。
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理事会は、リスク管理部門を軽視することが事業に重大な影響を与えることを十分認識し、リスク管理部門を重視しているか。特に担当理事はリスクの所在及びリスクの種類を理解した上で、各種リスクの測定・モニタリング・管理等の手法について深い認識と理解を有しているか。
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理事は、適時・適切な保険金等(保険金、年金、給付金、満期返戻金、失効返戻金、解約返戻金等支払いに関する全てのものを含む。以下同じ。)の支払いが健全かつ適切な業務運営の確保に重大な影響を与えることを十分認識しているか。
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理事会は、事業目標を踏まえたリスク管理の方針を明確に定め、組織内に周知しているか。また、リスク管理の方針は、定期的又は必要に応じ随時見直しているか。
更に、定期的にリスクの状況の報告を受け、必要な意思決定を行う等、把握したリスク情報を業務の執行及び管理体制の整備等に活用しているか。
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理事会は、保険金等の支払いに係る適切な業務運営が行われるよう、経営資源の配分を適切に行っているか。また、保険金等の支払管理が適切に行われているかどうか確認しているか。
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理事会は、あらゆる職階における職員に対し経営管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成するとともに、適切かつ有効な経営管理を検証し、その構築を図っているか。
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理事会は、内部監査の重要性を認識し、内部監査の目的を適切に設定するとともに、内部監査部門の機能が十分発揮できる態勢を構築(内部監査部門の独立性の確保を含む。)し、定期的にその機能状況を確認しているか。また、被監査部門等におけるリスク管理の状況等を踏まえた上で、監査方針、重点項目等の内部監査計画の基本事項を承認しているか。
更に、内部監査の結果等については適切な措置を講じているか。
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理事会において選任することを要する保険計理人については、当該保険計理人(選任しようとする者を含む。)が、認可特定保険業者等に関する命令(平成23年内閣府・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第1号。以下、「命令」という。)第51条各号に該当する者であることを確認しているか。
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理事会において選任する保険計理人については、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する保険業法(以下、「法」という。)第121条に定める保険計理人の職務が適切に遂行されるよう、社団法人日本アクチュアリー会において実施する研修の履修を達成している等、正会員又は準会員としての資質の継続的維持・向上に努めているかを定期的に確認しているか。
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理事会は、各関連部門との連携等により、保険計理人に対し必要な情報を提供する等保険計理人がその職務を十分に果たすことができる態勢を構築し、定期的にその機能状況を確認しているか。
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(3)監事
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監事は、監査制度の趣旨に則り、その独立性が確保されているか。
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監事は、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え業務監査を実施しているか。
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保険金等支払実務に関する体系的な監査手法を確立しているか。
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(4)内部監査部門
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内部監査部門は、被監査部門に対して十分牽制機能が働くよう独立し、かつ、実効性ある内部監査が実施できる体制となっているか。
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内部監査部門は、被監査部門におけるリスク管理状況等を把握した上、リスクの種類・程度に応じて、頻度・深度に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査計画を立案するとともに、内部監査計画に基づき効率的・実効性ある内部監査を実施しているか。
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内部監査部門は、内部監査業務の実施要領等に基づき、すべての部門の業務に対する内部監査を実施しているか。
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内部監査部門は、内部監査で指摘した重要な事項について遅滞なく代表理事及び理事会に報告しているか。
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内部監査部門は、内部監査報告書で指摘された問題点に対する被監査部門等の改善への取組状況を適切に管理しているか。
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(参考)
経営管理(ガバナンス)態勢に関する監督に当たっての着眼点については、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が参考となる。
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(5)保険計理人(選任が義務付けられている場合に限る。)
認可特定保険業者の財務の健全性を確保し維持していくためには、理事会において選任された保険計理人が自らの役割を理解し、保険数理に関する事項について十分に関与することが必要となるが、その際の留意点は以下のとおり。
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保険計理人は、職務遂行上必要な権限を理事会から付与されているか。また、制度の趣旨にかんがみ、保険計理人が事業推進部門、予算管理部門から独立していること等により相互牽制機能が確保されているか。
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保険計理人は、保険料の算出方法等の保険数理に関する事項について、法令等に則り適切に関与しているか。また、そのために必要な情報について、関連する会議への出席等により各関連部門より報告を受けるとともに、必要に応じて意見を述べる等保険計理人としての職務を十分に果たしているか。
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保険計理人は、責任準備金が健全な保険数理に基づいて積立てられているかについて、法令等に則り適切に確認しているか。
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契約者配当が公正かつ衡平に行われているかについて、法令等に則り適切に確認しているか。
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保険計理人は、法令で定められた保険数理に係る事項に関して、保険契約者の衡平な取扱い及び財務の健全性等の観点から関与しているか。
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保険計理人は、法令等に則り将来収支分析を行っているか。特に新契約伸展率や事業費、財産運用状況等の将来推計に必要な前提について、過去の実績や妥当な将来見込みに基づいたものとなっているか。
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保険計理人は、理事会へ意見書を提出しているか。また、意見書に法令等に定められた事項を記載しているか。
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保険計理人は、命令第46条第1項第2号に掲げる金額が健全な保険数理に基づき積立てられているかについて、法令等に則り適切に確認しているか。
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改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第121条第1項第1号に掲げる事項の確認をする場合は、異常危険準備金が命令第43条に定めるところにより、適切に積立てられているかの確認を含むものとする。
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(6)保険計理関連業務の実施(保険計理人の選任が義務付けられていない場合)
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保険料及び責任準備金の算定等の計理関連業務を実施するための体制がとられているか。
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計理担当者を配置しているか。担当者は専門能力を有する者を配置しているか。
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(7)審査管理体制の充実強化
資産運用にあたって、自己責任原則に基づく責任体制を確立するための措置が講じられているか。リスク管理の向上を図るための措置が講じられているか。
II -1-3 監督手法・対応
下記のヒアリング及び通常の監督事務等を通じて、経営管理態勢について検証することとする。
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(1)オフサイト・モニタリング
継続的に財務会計情報及びリスク情報等について報告を求め、認可特定保険業者の経営の健全性の状況を常時把握することとする。また、認可特定保険業者から徴求した各種の情報の蓄積及び分析を迅速かつ効率的に行うこととする。
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(2)経営管理の状況等に関するヒアリング
経営上の課題、事業目標及びその諸リスク、理事会、監事の機能発揮の状況等に関しヒアリングを行うこととする。
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(3)内部監査に関するヒアリング等
内部監査の機能発揮状況等を把握する観点から、必要に応じ、認可特定保険業者の内部監査部門に対し、内部監査の体制、内部監査の実施状況及び問題点の是正状況等についてヒアリングを実施することとする。
また、特に必要があると認められる場合には、認可特定保険業者の監事に対してもヒアリングを実施することとする。
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(4)通常の監督事務を通じた経営管理態勢の検証
経営管理態勢については上記(1)から(3)のヒアリング等に加え、例えば、認可審査、検査結果通知のフォローアップ、不祥事件届、早期警戒制度等の通常の監督事務を通じても、経営管理態勢の有効性について検証することとする。
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(5)モニタリング結果の記録
モニタリングの結果、事務年度途中において特筆すべき事項が生じた場合は、都度記録を更新することとする。
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(6)監督上の対応
経営管理の有効性等に疑義が生じた場合には、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。また、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2 財務の健全性
II -2-1 責任準備金等の積立ての適切性
II -2-1-1 意義
認可特定保険業者は、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるための責任準備金等を積立てなければならないことになっている。行政庁としては、自己責任原則の下で行われる責任準備金等の積立てを補完する役割を果たすものとして、オフサイト・モニタリングや適切な経理処理等の指針を通じ、財務の健全性の確保のための自主的な取組みを促していく必要がある。
II -2-1-2 積立方式
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(1)保険期間が長期にわたる保険契約(又は保険給付)に係る保険料積立金
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保険期間が長期にわたる保険契約(又は保険給付)に係る保険料積立金については、例えば、将来法によって算出された責任準備金(=将来における保険給付の給付現価-将来における純保険料の収入現価)等、平準純保険料式により計算した金額を積立てるものとなっているか。
この場合、貸借対照表の純資産額が負値になる等最低純資産額の基準を満たさない状況が生じたときには、最低純資産額の回復に向けた計画的な積増しを行うこととなっているか。
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第一分野及び第三分野において、認可特定保険業者の業務又は財産の状況及び保険契約の特性に照らし特別な事情がある場合に、保険数理に基づき、合理的かつ妥当なものとして、いわゆるチルメル式責任準備金の積立てを行っている場合には、新契約費水準に照らしチルメル歩合が妥当なものとなっているか。
この場合には、平準純保険料式責任準備金の積立てに向け、計画的な積増しを行うこととなっているか。
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(2)保険料の払い込みが免除された保険契約の責任準備金
特定の疾病による所定の状態、所定の身体障害の状態、所定の要介護状態その他の保険料払込の免除事由に該当し、以後の保険料払込が免除されることとなった保険契約のうち、自動更新可能な保険契約に係る責任準備金については、最終の保険期間満了日まで全ての自動更新が行われるものとして計算した金額を積立てることとなっているか。
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(3)異常危険準備金の積立て
異常危険準備金における「保険リスク」に係る積立額及び積立限度額を、改正法附則第2条第3項第4号に掲げる書類において定めている場合には、それらがリスクに応じた適正なものとなっているか。
II -2-1-3 経理処理
責任準備金等の積立てに関し、認可特定保険業者が適切な経理処理を行うにあたり留意すべき事項は次のとおりとする。
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(1)保険計理人を選任している認可特定保険業者の特定保険業に係る将来収支分析及び保険計理人意見書
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将来収支分析
保険計理人が、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第121条第1項の規定に基づく下記の確認業務の中で、将来収支分析を行うに際して、平成12年6月23日金融監督庁・大蔵省告示第22号第2条に定める法第122条の2第1項の規定により指定された法人が作成し、金融庁長官が認定した基準(以下、「実務基準」という。)に準じた基本シナリオと異なるシナリオを使用した場合は、どのようなシナリオを用いたのか、またそれが合理的である根拠等を適切に開示していること。
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ア.改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第121条第1項第1号に定める責任準備金の積立ての適切性の確認
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イ.改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第121条第1項第3号に定める将来の収支を保険数理に基づき合理的に予測した結果に照らし、特定保険業の継続が困難であるかどうかの確認
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保険計理人意見書
将来収支分析は、責任準備金が、将来にわたって不足が生じないよう健全な保険数理に基づいて適切に積立てられているかどうかを確認するものであり、認可特定保険業者の将来収支分析に係る意見書に関して保険計理人から説明を求める場合、並びに役員から同意見書に対する見解及び対応についての説明を求める場合の着眼点として、以下の点が考えられる。
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ア.保険計理人が、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第121条第1項の規定に基づく確認業務において、実務基準等に則って適切に確認しているか。
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イ.実務基準に準じた基本シナリオと異なるシナリオを使用する場合、認可特定保険業者の経営実態を踏まえた合理的なものとなっているか。
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ウ.将来収支分析により、現在の責任準備金が将来の債務の履行に支障を来たすおそれがあると認められない水準であると判断されない場合であって、経営政策の変更により当該責任準備金不足相当額の一部又は全部を積立てなくてもよい旨意見書に記載されている場合、当該経営政策の変更が、直ちに行われるものであるかどうかの根拠(計画等)が示されているかどうか。この場合、翌年度以降の意見書において、当該経営政策の変更が実現されている旨示されているかどうか。
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エ.将来収支分析により、現在の責任準備金が将来の債務の履行に支障を来たすおそれがあると認められない水準であると判断されない場合であって経営政策の変更によっても当該責任準備金不足額が解消できず、命令第43条第3項の規定に基づき追加して責任準備金を積立てる必要がある場合、認可特定保険業者の経営実態を踏まえた合理的な責任準備金の積立計画を策定し、改正法附則第2条第3項第4号に掲げる書類を変更することにより積立てる等適切な措置がとられているか。
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(2)再保険を付した認可特定保険業者の経営の健全性を損なうおそれがない外国保険業者
命令第44条第1項第4号に定める「認可特定保険業者の経営の健全性を損なうおそれがない者」とは、例えば、次に該当する場合の外国保険業者をいう。
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保険契約を再保険に付した認可特定保険業者(以下、「出再業者」という。)の総資産に占める割合で、外国保険業者が当該出再業者から引き受けた一の再保険契約に係る一の保険事故により当該外国保険業者が出再業者に支払う再保険金の限度額の割合が1%未満である場合の、当該外国保険業者(当該外国保険業者が、再保険金の支払いを停止するおそれがあること又は再保険金の支払いを停止したことが明らかな場合を除く。)
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出再業者が再保険に付した部分に相当する責任準備金を積立てなかったことがある場合の当該再保険を引き受けた外国保険業者(当該外国保険業者が、再保険金の支払いを停止するおそれがあること又は再保険金の支払いを停止したことが明らかな場合を除く。)
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II -2-2 早期警戒制度
II -2-2-1 意義
認可特定保険業者は、その事業運営の適正を確保し、保険契約者等の保護を図る観点から、内部留保の確保を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することが極めて重要である。財務内容の改善が必要とされる場合には、自己責任原則に基づき主体的に改善を図ることが求められている。
したがって、当局としても、それを補完する役割を果たすものとして、以下による行政上の予防的・総合的な措置(早期警戒制度)を講ずることにより、認可特定保険業者の早め早めの経営改善を促していくものとする。
なお、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条第2項及び改正法附則第4条第10項において、ソルベンシー・マージン比率を用いた「早期是正措置」に関する基準を規定しているところであるが、認可特定保険業者の行う特定保険業の事業特性を踏まえ、当面はその多様な業務の実態把握を優先することとしている。
II -2-2-2 監督手法・対応
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(1)収益性改善措置
収支目標やその見通しを基準として、収支の改善が必要と認められる認可特定保険業者に関しては、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(2)安定性改善措置
有価証券の価格変動等による影響を基準として、市場リスク等の管理態勢について改善が必要と認められる認可特定保険業者に関しては、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(3)資金繰り改善措置
契約動向や資産の保有状況等を基準として、流動性リスクの管理態勢について改善が必要と認められる認可特定保険業者に関しては、契約動向や資産の保有状況等について、頻度の高い報告を求めるとともに、原因及び改善策等について、深度あるヒアリングを行い、必要な場合には改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
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(4)業務改善命令
以上の措置に関し、改善計画を確実に実行させる必要があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づき業務改善命令を発出するものとする。
II -2-3 区分勘定の設定
II -2-3-1 意義
認可特定保険業者においては、利益還元の公平性・透明性の確保、保険種類相互間の内部補助の遮断、事業運営の効率化等を図る観点から、一般勘定の中に保険商品の特性に応じた区分勘定を設定することができる。この場合、各認可特定保険業者において自己責任原則のもと、保険経理の透明性、保険契約者間の公平性確保等の観点から、適切な区分勘定が行われる必要があり、資産・負債・純資産の区分、損益の配賦等について、合理的で適切な配分方法が定められていることが重要である。
II -2-3-2 主な着眼点
各認可特定保険業者においては、合理的で適切な区分勘定を行うため、例えば、以下のような考えに基づく「区分勘定に関する管理方針」を策定しているか。また、区分勘定の状況が、理事会その他これに準ずる機関に対して報告されているか。
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(1)商品区分
商品区分においては、損益及び負債・純資産の管理を行うものとする。商品区分は、各認可特定保険業者における商品の特性や保有状況に照らして、損益を把握する単位として適切なものとなっている必要があり、保険の性質の相違等により理論的・合理的な区分とする必要がある。
商品区分には、必要に応じて一つ又は複数の商品区分と、業者全体で共有する資産・共通する経費等の管理機能を有する全体区分を設定する。
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(2)資産区分
資産区分は、商品区分に対応した資産を管理・運用するためのものであり、その目的に沿った適切な区分を設定する。
商品区分、資産区分で構成される区分勘定としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
商品区分 資産区分 個人年金保険商品区分 個人年金保険資産区分 個人保険商品区分 個人保険資産区分 全体区分 全体資産区分 -
(3)負債・純資産の配賦方法
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商品区分への配賦
責任準備金、支払備金、再保険借等は各商品区分に直課する。直課できないものは、区分勘定に関する管理方針に基づいて配賦する。
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全体区分への配賦
全体区分には、純資産の部、価格変動準備金その他各商品区分に配賦されない負債を配賦する。
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(4)資産の配賦方法及び管理基準
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運用資産の配賦方法
運用資産は、原則として、資産の購入時に、配賦する資産区分を決定する。
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運用資産の管理
運用資産は、資産区分ごとに、資産分別管理方式、資産単位別持分管理方式等、資産の特性に応じた適切な方式により区分して管理する。
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運用資産以外の配賦方法
再保険貸等、各資産区分に直課できるものは直課し、直課できないものは、区分勘定に関する管理方針に基づいて配賦する。
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全体資産区分の資産
全体資産区分には、事業用不動産その他全体区分に配賦することが相応しい資産の全部又は一部を配賦するものとする。
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(5)損益の配賦
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保険関係損益
保険料等収入、保険金等支払金、責任準備金繰入額等は各商品区分に直課する。
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運用資産関係損益
資産が帰属する資産区分に配賦し、更に対応する商品区分・全体区分に直課又は持分に応じて配賦する。なお、一つの資産区分で複数の商品区分を管理している場合は、区分勘定に関する管理方針に基づいて配賦する。
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II -2-3-3 監督手法・対応
区分勘定の状況について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2-4 再保険に関するリスク管理
II -2-4-1 保有・出再に関するリスク管理
認可特定保険業者が元受保険契約において引き受けるリスクの保有・出再については、以下の点に留意する必要がある。
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(1)保有するリスクの規模・集中度を出再を通じて適正に管理するため、理事会その他これに準ずる機関において、適確な出再政策が策定されているか。
(注)「その他これに準ずる機関」とは、理事会の下部に属し出再に関して管理を行う権限を有する機関を指す。
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(2)出再政策には、出再先の健全性、一再保険者への集中の管理に関する基準が含まれているか。
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(3)出再政策の遵守状況を確認する体制はとられているか。
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(4)再保険金の回収状況及び将来の回収可能性並びに出再保険の成績が確認されているか。
II -2-4-2 再保険に係る方針の開示
命令第34条第1項第4号イに掲げるリスク管理の体制を開示するにあたっては、以下に掲げる事項についても分かりやすく開示しているか。
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(1)出再先会社名
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(2)再保険を付す際の方針
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(3)再保険カバーの入手方法
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(4)主要な集積リスクである地震災害リスク及び台風災害リスクについて、当該リスクが発生した場合に適用される再保険の種類、再保険スキーム上の上限額設定にあたっての考え方等具体的な再保険の内容
II -2-4-3 監督手法・対応
再保険に関するリスク管理について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2-5 保険引受リスク管理態勢
II -2-5-1 意義
保険引受リスクとは、経済情勢や保険事故の発生率等が保険料設定時の予測に反して変動することにより、認可特定保険業者が損失を被るリスクをいう。認可特定保険業者においては、このような保険引受リスクを適切に管理するための態勢整備が重要である。
II -2-5-2 主な着眼点
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(1)リスク管理のための態勢整備
保険引受リスク管理部門は、
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保険事故の発生予測、金利・為替予測、リスク把握、出再保険の締結、責任準備金等及び支払備金の積立て、保険募集、保険契約の引受審査等を実施する関連部門での取引内容、分析結果
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保険計理人の意見書
等を検討データとして有効に活用しているか。
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(2)リスク管理
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保険種類ごとに、現在の収支状況の把握・分析及び将来の収支予測等の方法により、定期的(少なくとも半年に一度)にリスクを把握しているか。また、将来の収支予測は、現在の金利動向や経済情勢、保険事故の発生状況等から見て妥当なシナリオによっているか。
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引受基準が商品開発時に前提とした保険募集条件と比して同じ又はリスクが少ないことを確認する方策を講じているか。
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把握したリスクを分析し、リスク管理方針等に則った適切なリスク・コントロールを行っているか。
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保険募集に際し、引受基準等を遵守するよう保険募集人(改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第275条第1項第2号に掲げる認可特定保険業者のために保険募集を行う者をいう。以下同じ。)を指導・管理しているか。また、実際に遵守していることを確認する方策を講じているか。引受基準に反した保険契約を締結できないようなシステムを構築することが望ましい。
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II -2-5-3 監督手法・対応
保険引受リスク管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2-6 資産運用リスク管理態勢
II -2-6-1 意義
認可特定保険業者の資産運用については、財務の健全性の観点から、安全かつ効率的な運用が求められることから、一定の有価証券の取得、預貯金、金銭信託等に制限しているところである。これら資産運用に係るリスクを認識した上で、適切な資産運用リスク管理態勢の整備が必要である。
II -2-6-2 主な着眼点
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(1)全般的事項
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資産運用の方法、資産の取得、保有及び処分に関する法令等を遵守するための措置が講じられているか。
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内部規則等が適正に策定されているか。また、策定された内部規則等に従って運用が行われているか。
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運用全般に係るリスク量が把握できる体制となっているか。
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資産運用での責任体制は明確になっているか。
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(2)市場関連リスク管理のあり方
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市場関連リスク管理のための体制が構築されているか。
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事業計画に応じたリスク管理の基本方針が明確に決定されているか。基本方針には、管理すべきリスクの所在、リスク量の限度設定の基本的な考え方、リスク管理のための組織、権限規程、リスク管理手続が定められているか。また、定期的な見直しが制度化されているか。
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資産運用を担当する理事等は、市場関連リスクに関し、個々の資産のリスクの所在、日々のリスク量を把握しているか。また、それらが理事会等の意思決定機関に定期的に報告されているか。報告の内容がその後の資産運用に適切に活用されているか。
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相互牽制機能が発揮されるよう取引実施を担当する者と後方事務を担当する者の分離等が行われているか。
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リスク管理手続の設定、運営について検証するための内部監査が行われているか。
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認可特定保険業者が保有する各種の資産運用リスクを定期的に測定し、定期的に理事会等へ報告されているか。リスクの測定方法は取引の特性、業務の手法及び規模に応じ、管理すべきリスク要因を把握できる精緻さとなっているか。また、報告内容は、各種リスク要因を総合的に把握した上で経営判断に利用し得るものとなっているか。
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リスク限度額の設定について、財産的基礎を勘案したものとなっているか。限度額遵守のためのマニュアルの策定等が行われているか。
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(3)命令第22条第1項第5号に定める行政庁の承認を受けた方法により資産運用を行う認可特定保険業者については、ヒアリング等を通じ、運用状況やリスク管理態勢の適切性等に係るフォローアップを重点的に行うこととする。
II -2-6-3 監督手法・対応
資産運用リスク管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。
II -2-7 流動性リスク管理態勢
II -2-7-1 意義
保険料収入等の状況により資金繰りに支障を来した場合、経営に重大な影響を及ぼす可能性があることから、日頃から資金繰り状況に注視し、適切にリスク管理していくことが重要である。
II -2-7-2 主な着眼点
保険金等に対する支払準備の変動が経営に与える影響についての分析が行われ、適切な対応策が講じられているか。
II -2-7-3 監督手法・対応
流動性リスク管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づく行政処分を行うものとする。