II  認可特定保険業者の監督にあたっての評価項目

II -3 業務の適切性

II -3-1 法令等遵守(コンプライアンス)態勢

II -3-1-1 意義

認可特定保険業者の業務の公共性を十分に認識し、法令や業務上の諸規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが利用者からの信頼を確立するために重要である。

II -3-1-2 主な着眼点

  • (1)理事会は法令等遵守を経営の最重要課題の一つとして位置付け、法令等遵守に取り組んでいるか。( II -1-2(2)を参照)

  • (2)法令等遵守に係る基本方針及び遵守基準が理事会において策定されているか。

  • (3)コンプライアンスを実現するための具体的な手引書(コンプライアンス・マニュアル)を策定しているか。また、役職員及び保険代理店(改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第275条第1項第2号に定める保険代理店をいう。以下同じ。)における保険募集従事者に対して周知徹底されているか。

  • (4)コンプライアンスを実現させるための具体的な実践計画(コンプライアンス・プログラム)を適時、合理的なものとして策定しているか。

  • (5)コンプライアンス等の法務問題を一元管理する体制として、コンプライアンスに関する統括部門を設置しているか。また、その機能が十分発揮されているか。

  • (6)各業務部門及び事務所等ごとに、適切にコンプライアンス担当者を配置しているか。

  • (7)コンプライアンスに対する内部監査態勢は十分整備されているか。

II -3-1-3 監督手法・対応

法令等遵守態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。

II -3-2 削除

II -3-3 保険募集管理態勢

II -3-3-1 適正な保険募集管理態勢の確立

保険募集人が保険契約者の利益を害することがないよう、認可特定保険業者は適正な保険募集管理態勢を確立する必要がある。このため、以下のような点について、認可特定保険業者の取組状況等を確認する必要がある。

  • (1)保険募集の意義

    • マル1改正法附則第4条の2に規定する保険募集とは、以下のア.からエ.の行為をいう。

      • ア. 保険契約の締結の勧誘

      • イ. 保険契約の締結の勧誘を目的とした保険商品の内容説明

      • ウ. 保険契約の申込の受領

      • エ. 上記のほか、当該認可特定保険業者のために行う保険契約の締結の代理又は媒介

    • マル2なお、上記エ.に該当するか否かについては、一連の行為の中で、当該行為の位置付けを踏まえたうえで、以下のア.及びイ.の要件に照らして、総合的に判断するものとする。

      • ア. 認可特定保険業者又は保険募集人などからの報酬を受け取る場合や、認可特定保険業者又は保険募集人と資本関係等を有する場合など、認可特定保険業者又は保険募集人が行う募集行為と一体性・連続性を推測させる事情があること。

      • イ. 具体的な保険商品の推奨・説明を行うものであること。

  • (2)「募集関連行為」について

    契約見込客の発掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集のプロセスのうち上記(1)に照らして保険募集に該当しない行為(以下、「募集関連行為」という。)については、直ちに募集規制が適用されるものではない。

    しかし、認可特定保険業者又は保険募集人においては、募集関連行為を第三者に委託し、又はそれに準じる関係に基づいて行わせる場合には、当該募集関連行為を受託した第三者(以下、「募集関連行為従事者」という。)が不適切な行為を行わないよう、例えば、以下のマル1からマル3の点に留意しているか。

    また、認可特定保険業者は、保険募集人が、募集関連行為を第三者に委託し、又はそれに準じる関係に基づいて行わせている場合には、保険募集人がその規模や業務特性に応じた適切な委託先管理等を行うよう指導しているか。

    • (注1)募集関連行為とは、例えば、保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報を認可特定保険業者又は保険募集人に提供するだけの行為や、比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスのうち認可特定保険業者又は保険募集人からの情報を転載するにとどまるものが考えられる。

    • (注2)ただし、例えば、以下の行為については、保険募集に該当し得ることに留意する必要がある。

      • ア. 業として特定の認可特定保険業者の商品(群)のみを見込み客に対して積極的に紹介して、認可特定保険業者又は保険募集人などから報酬を得る行為

      • イ. 比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスを提供する者が、認可特定保険業者又は保険募集人などから報酬を得て、具体的な保険商品の推奨・説明を行う行為

    • (注3)例えば、以下の行為のみを行う場合には、上記の要件に照らして、基本的に保険募集・募集関連行為のいずれにも該当しないものと考えられる。

      • ア. 認可特定保険業者又は保険募集人の指示を受けて行う商品案内のチラシの単なる配布

      • イ. コールセンターのオペレーターが行う、事務的な連絡の受付や事務手続き等についての説明

      • ウ. 金融商品説明会における、一般的な保険商品の仕組み、活用法等についての説明

      • エ. 認可特定保険業者又は保険募集人の広告を掲載する行為

    • (注4)保険募集人が保険募集業務そのものを外部委託することは、原則として許容されないことに留意する。

    • マル1募集関連行為従事者において、保険募集行為又は特別利益の提供等の募集規制の潜脱につながる行為が行われていないか。

    • マル2募集関連行為従事者が運営する比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスにおいて、誤った商品説明や特定商品の不適切な評価など、保険募集人が募集行為を行う際に顧客の正しい商品理解を妨げるおそれのある行為を行っていないか。

    • マル3募集関連行為従事者において、個人情報の第三者への提供に係る顧客同意の取得などの手続が個人情報の保護に関する法律等に基づき、適切に行われているか。

      また、募集関連行為従事者への支払手数料の設定について、慎重な対応を行っているか。

    • (注)例えば、保険募集人が、高額な紹介料やインセンティブ報酬を払って募集関連行為従事者から見込み客の紹介を受ける場合、一般的にそのような報酬体系は募集関連行為従事者が本来行うことができない具体的な保険商品の推奨・説明を行う蓋然性を高めると考えられることに留意する。

  • (3)保険募集人の採用・委託・届出

    • マル1保険募集を専ら行う職員の採用、保険代理店への委託にあたって、その適格性が審査されているか。また、審査基準が整備されているか。

    • マル2保険代理店への委託にあたって、保険契約の締結の代理又は媒介に関する法令等や保険契約に関する知識、保険契約の締結の代理又は媒介に関する業務遂行能力、本来業務の事業内容、事業目的等が審査されているか。

  • (4)保険募集人の教育、管理、指導

    認可特定保険業者においては、保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。

    • マル1保険募集人の教育について

      保険商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるよう、保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識の付与及び適切な保険募集活動のための十分な教育を行っているか。

    • マル2保険募集人の管理・指導について

      • ア. 認可特定保険業者においては、保険募集人の健全かつ適切な業務運営を確保するために、不適切な保険募集の端緒となりうる点等について、その状況を適時把握し、管理・指導するために適正な措置を講じているか。

        具体的には、例えば、以下の(ア)から(ウ)のようなことが考えられる。

        • (ア)保険募集人の挙績状況、保険契約の継続状況等の常時把握可能な管理を行う。その際、認可特定保険業者の役職員が実質的な保険募集を行い、その保険契約を保険代理店の扱いとする等の行為又は保険募集人の間での成績を付け替える等の行為は、重要事項説明等の募集時の説明が不十分となるなどの不適切な保険募集につながるおそれがあることから、こうした行為が行われないように特に留意する。

        • (イ)保険代理店による契約者からの保険料領収及び保険料の認可特定保険業者への精算の適切性を確保するため、保険料の支払いを受けた場合に保険料領収証を発行すること、保険代理店が領収した保険料を自己の財産と明確に区分し、遅滞なく適時に保険会社に精算すること、それら管理の状況が事後で確認できる体制とすることなどを認可特定保険業者において管理・指導する体制を構築する。

        • (ウ)架空契約や保険金詐取を目的とする契約等の不正な保険契約の発生を防止するため、保険証券を交付する行為又は保険金や満期返戻金を保険契約者等へ給付する行為については、正当な理由なく、保険代理店を介して行わないように適正な措置を講じる。

      • イ. 保険代理店と締結する代理店委託契約書において保険代理店が遵守すべき事項を定めているか。

    • マル3事務所及び保険代理店等への監査等を適時適切に実施し、保険代理店等の保険募集の実態や保険料の収受等の事務管理体制を把握し、適切な管理・指導等が行われているか。

      また、監査等において内部事務管理が不適切な保険代理店等に対し、改善に向けた厳正な対処がなされているか。

II -3-3-2 保険契約の締結及び保険募集

  • (1)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第1号関係

    保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げる場合は、保険契約の種類及び性質等に応じて適正に行われているか。また、利用者から重要な事項を了知した旨を十分に確認し、事後に確認状況を検証できる態勢にあるか。

  • (2)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第4号関係

    一定金額の金銭をいわゆる解約控除等として保険契約者が負担することとなる場合があること、一定期間の契約継続を条件に発生する配当に係る請求権を失う場合があること、被保険者の健康状態の悪化等のため新たな保険契約を締結できないこととなる場合があること等、不利益となる事実を告げているか。また、利用者が不利益となる事実を了知した旨を十分確認しているか。

  • (3)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第5号関係

    • マル1特別利益の提供について

      認可特定保険業者及び保険募集人が、保険契約の締結又は保険募集に関し、保険契約者又は被保険者に対して、各種のサービスや物品を提供する場合においては、以下のような点に留意して、「特別利益の提供」に該当しないものとなっているか。

      • ア.当該サービス等の経済的価値及び内容が、社会相当性を超えるものとなっていないか。

      • イ.当該サービス等が、換金性の程度と使途の範囲等に照らして、実質的に保険料の割引・割戻しに該当するものとなっていないか。

      • ウ.当該サービス等の提供が、保険契約者間の公平性を著しく阻害するものとなっていないか。

        なお、認可特定保険業者は、当該サービス等の提供を通じ、他業禁止に反する行為を行っていないかについても留意する。

        • (注)認可特定保険業者が、保険契約者又は被保険者に対し、保険契約の締結によりポイント等を付与し、当該ポイント等に応じた生活関連の割引サービス等を提供する場合には、その際、ポイント等に応じてキャッシュバックを行うことは、保険料の割引・割戻しに該当し、改正法附則第2条第3項各号に掲げる書類に基づいて行う場合を除き、禁止されていることに留意する。

    • マル2命令第96条第1項第1号関係

      認可特定保険業者は、保険募集人に対し、保険料の割引・割戻し等を目的とした保険募集を行うことがないよう指導及び管理等の措置を講じているか。また、実行しているか。

  • (4)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第6号関係

    • マル1保険契約に関する表示(告げることを含む。以下同じ。)に関し、保険契約者の十分な理解が得られるような措置が講じられているか。保険商品の特性に応じた表示となっているか。なお、表示には次に掲げる方法により行われるものを含むものとする。(以下、 II -3-3-2(5)において同じ。)

      • ア.パンフレット、契約のしおり等保険契約の募集のために使用される文書及び図面

      • イ.ポスター、看板その他これらに類似する物による広告

      • ウ.新聞紙、雑誌その他の出版物、放送、映写、演劇又は電光による広告

      • エ.インターネット等による広告

      • オ.その他情報を提供するための媒体

    • マル2次に掲げるような比較表示を行っていないかどうか。

      • ア.客観的事実に基づかない事項又は数値を表示すること。

      • イ.保険契約の内容について正確な判断を行うに必要な事項の一部のみを表示すること。

      • ウ.保険契約の内容について、長所のみをこと更に強調したり、長所を示す際にそれと不離一体の関係にあるものを併せて示さないことにより、あたかも全体が優良であるかのように表示すること。

      • エ.社会通念上又は取引通念上同等の保険種類として認識されない保険契約間の比較について、あたかも同等の保険種類との比較であるかのように表示すること。

      • オ.現に提供されていない保険契約の契約内容と比較して表示すること。

      • カ.他の保険契約等の内容に関して、具体的な情報を提供する目的ではなく、当該保険契約等を誹謗・中傷する目的で、その短所を不当に強調して表示すること。

    • マル3他の保険商品等と自己の保険商品との比較表示を行う場合には、書面等を用いて次の事項を含めた表示が行われ、かつ、他の保険商品等の特性等について不正確なものとならないための措置が講じられているか。

      • ア.保険期間

      • イ.保障内容(保険金を支払う場合、主な免責事由等)

      • ウ.引受条件(保険金額等)

      • エ.各種特約の有無及びその内容

      • オ.保険料率・保険料(なるべく同一の条件での事例設定を行い、算出条件を併記する。)

      • カ.保険料払込方法

      • キ.払込保険料と満期返戻金との関係

      • ク.その他保険契約者等の保護の観点から重要と認められるもの

  • (5)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第7号関係

    • マル1改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第7号に抵触する次に掲げるような行為を行っていないかどうか。

      • ア.実際の配当額が、表示された予想配当額から変動し、ゼロとなる年度もあり得る旨を予想配当と併記して表示しないこと。

      • イ.表示された予想配当額が、将来の受領額の目安として一定の条件の下での計算例を示すものであるにもかかわらず、その旨及び当該一定の条件の内容を表示しないこと。

      • ウ.配当の仕組み(配当は支払時期の前年度決算により確定する旨等)、支払方法(積立配当方式、保険料相殺方式、保険金買増方式、現金支払方式等の別)その他予想配当の前提又は条件となる事項について表示しないこと。

      • エ.特別配当(ミュー配当)を表示する場合に、普通配当と区別しないで表示すること。

    • マル2予想配当の表示を行う場合には、配当率が直近決算の実績配当率(確定するまでの間は、その直前の実績配当率又は合理的かつ客観的なもので、保守的に算出された配当率とする。以下同じ。)で推移すると仮定して算定した配当額を表示し、更に、少なくとも合理的な一時点においては、利差配当(ラムダ配当を含む。)率(配当を積立てる場合は、積立配当利率も含む。)が、直近決算の実績配当の利差配当率から上方には1%以内、下方には上方への幅以上(ただし、実績配当率を下回る利差配当率の下限は0%)の範囲内で推移すると仮定して算定した配当額も併せて表示しているか。

    • マル3マル2の場合において、予想配当及びマル1の要件を満たした書面等が保険契約者等に提示されているか。

  • (6)改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第9号関係

    • マル1命令第96条第1項第2号関係

      • ア.保険募集人は、保険契約者又は被保険者を威迫する行為その他これに類似する行為として以下に掲げる行為等を行っていないかどうか。

        • (ア)利用者に対し、威圧的な態度や乱暴な言葉等をもって著しく困惑させること。

        • (イ)勧誘に対する拒絶の意思を明らかにした利用者に対し、その業務若しくは生活の平穏を害するような時間帯に執拗に訪問し又は電話をかける等社会的批判を招くような方法により保険募集を行うこと。

      • イ.「業務上の地位等を不当に利用」とは、例えば、職務上の上下関係等に基づいて有する影響力をもって、利用者の意思を拘束する目的で利益又は不利益を与えることを明示することをいうが、このような行為を行っていないか。

    • マル2命令第96条第1項第4号関係

      • ア.認可特定保険業者の信用又は支払能力等を表示する場合の適正な措置が講じられているか。

      • イ.認可特定保険業者の信用又は支払能力等の表示に関し、命令第96条第1項第4号に抵触する行為には次のような行為が考えられる。

        • (ア)改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第110条に定める業務報告書に記載された数値若しくは改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第111条に定める業務及び財産の状況に関する説明書類に記載された数値又は信用ある格付機関の格付(以下、「客観的数値等」という。)以外のものを用いて、認可特定保険業者の資力、信用又は支払能力等に関する事項を表示すること。

        • (イ)使用した客観的数値等の出所、付された時点、手法等を示さずその意味について、十分な説明を行わず又は虚偽の説明を行うこと。

        • (ウ)表示された客観的数値等が優良であることをもって、当該認可特定保険業者の保険契約の支払いが保証されていると誤認させること。

        • (エ)一部の数値のみを取り出して全体が優良であるかのように表示すること。

        • (オ)他の保険会社等を誹謗・中傷する目的で、当該他の保険会社等の信用又は支払能力等に関してその劣後性を不当に強調して表示すること。

        • (カ)法第2編第10章第4節第2款の規定による保険契約者保護機構の行う資金援助等の措置がないこと及び法第270条の3第2項第1号に規定する補償対象契約に該当しないことを記載した書面の交付により、説明を行わないこと。

    • マル3命令第96条第1項第5号関係

      共同保険契約や認可特定保険業者間あるいは認可特定保険業者間の保険商品の提携販売等一の契約者が複数の保険・共済の提供者との間で一又は複数の保険契約を同時に締結(契約の更改及び更新を含む。)する場合等において、保険契約者が保険の種類や、引受けを行う業者について誤解しないよう、契約当事者たるそれぞれの業者と保険契約者との間の契約関係が明確となることをはじめ、保険募集及び保険契約の締結の業務に関して適切な措置が講じられているか。

    • マル4命令第96条第1項第6号関係

      命令第96条第1項第6号に定める「必要かつ適切な措置」とは、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(以下、「金融分野ガイドライン」という。)第8条、第9条及び第10条並びに金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針(以下、「実務指針」という。) I 、 II 、 III 及び別添2の規定に基づく措置とする。

    • マル5命令第96条第1項第7号関係

      命令第96条第1項第7号に定める「その他の特別の非公開情報」とは、次に掲げるアからキまでの情報をいい、「当該業務の適切な運営の確保その他必要と認められる目的」とは、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合をいう。

                ア.労働組合への加盟に関する情報
        
                イ.民族に関する情報

          ウ.性生活に関する情報

                エ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報

          オ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報

                カ.犯罪により害を被った事実に関する情報

          キ.社会的身分に関する情報
         

  • (7)告知事項・告知書

    • マル1保険法において、告知義務が自発的申告義務から質問応答義務となったことの趣旨を踏まえ、保険契約者等に求める告知事項は、保険契約者等が告知すべき具体的内容を明確に理解し告知できるものとなっているか。例えば、「その他、健康状態や病歴等告知すべき事項はないか。」といったような告知すべき具体的内容を保険契約者等の判断に委ねるようなものとなっていないか。

    • マル2告知書の様式は、保険契約者等に分かりやすく、必要事項を明確にしたものとなっているか。

  • (8)その他

    • マル1保険契約の締結(名義変更等による契約の変更を含む。)又は保険募集に関して、架空契約や保険金詐取を目的とする契約等の不正な保険契約の発生を防止するために、

      • ア.保険契約者(法人、個人事業主を含む。)について、運転免許証やパスポート等の本人を特定し得る書類による確認、企業等の法人(個人事業主を含む。)の存在が確認できる書類による確認、保険証券を郵送し、当該郵便物が返戻されなかったことをもってする確認、本人確認を行った保険料収納機関からの確認、保険募集人の訪問や認可特定保険業者の役職員が電話等の通信機器・情報処理機器を利用し保険契約者と交信することによる確認その他適切な方法により、本人確認若しくは実在の確認、又は法人の事業活動の有無の把握の措置が講じられているか。

      • イ.また、保険契約申込みや契約変更時の健康診査において、医師による運転免許証やパスポート等の本人を特定し得る書類による確認、認可特定保険業者の役職員や保険募集人が訪問し、又は直接面接することによる確認その他適切な方法による被保険者の本人確認、の措置が講じられているか。

        例えば、当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わせない等、保険商品のそれぞれの商品特性に応じ、その本来の目的に沿った利用が行われるための適切な募集活動に対する措置が講じられているか。

    • マル2保険契約締結の申し込みがあったにも関わらず、締結しないこととする場合は、可能な限り合理的な理由を説明する等、利用者の理解が得られるよう努めているか。

  • (9)監督手法・対応

    保険募集管理態勢について問題があると認められる場合には、認可特定保険業者に対し、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求めるとともに、認可特定保険業者の態勢の検証( II -3-5-1-2を参照)を行い、重大な問題があると認められる場合には改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。

II -3-3-3 団体扱契約等

  • (1)団体扱契約及び集団扱契約監督事務にあたっての留意点は、認可特定保険業者の経営の健全性の確保及び保険契約者等の保護の観点から、以下のとおりとする。

    • マル1認可特定保険業者は保険契約者の所属する団体の適正な代表者との間で、保険料取り次ぎに関する団体扱・集団扱契約の締結を行っているか。

    • マル2団体の代表者に支払う集金手数料については、経営の健全性及び契約者間の公平性の確保並びに公正な競争の促進等並びに実費相当額を勘案した合理的かつ妥当である適正な水準になっているか。

    • マル3保険契約者又は被保険者の状況が変化し、当該保険契約者等に係る保険契約が団体扱等契約の対象でなくなった場合には、当該保険契約に適用する保険料の見直しを行っているか。

  • (2)団体の範囲等の確認態勢

    • マル1被保険者が被保険団体に含まれるか確認できる態勢が整備されているか。

    • マル2団体定期保険(会社、事業所、互助会等の団体を対象とする団体保険で、団体の所属員等を被保険者とし、これらの者の遺族及び所属員等の生活保障を目的とするものであって、被保険者が死亡した場合に死亡保険金が支払われる仕組みの保険をいう。以下同じ。)等の適用条件等が内部規則等で明確かつ適切に定められているか。例えば、団体及び被保険者団体の範囲等が明確となっているか。

    • マル3団体定期保険等の適用条件等が適切に運用されていることを確認できる態勢が整備されているか。

II -3-3-4 他人の生命の保険契約

保険契約者以外の者を被保険者とする死亡保険契約及び傷害疾病による死亡を給付事由とする保険契約者以外の者を被保険者とする傷害疾病定額保険契約(保険金受取人の変更を含む。また、傷害疾病定額保険契約については保険金受取人が被保険者又はその相続人であるもので、かつ、給付事由が傷害疾病による死亡のみではないものを除く。以下、「他人の生命の保険契約」という。)の契約締結に関して、認可特定保険業者の監督にあたっての留意点は、被保険者等の保護及び認可特定保険業者の業務の健全かつ適切な運営の確保の観点から、以下のとおりとする。

  • (1)目的・趣旨

    • マル1企業(個人事業主を含む。以下同じ。)が保険契約者及び保険金受取人になり、従業員等を被保険者とする個人保険契約(以下、「事業保険」という。)については、以下のア.又はイ.の目的・趣旨に沿った業務運営が行われているか。

      • ア.遺族及び従業員の生活補償のための企業の就業規則、労働協約その他これに準ずる規則(以下、「遺族補償規定等」という。)により定められた弔慰金・死亡退職金等(以下、「弔慰金等」という。)の支払い財源確保

      • イ.従業員等の死亡に伴い企業が負担する代替雇用者採用・育成費用、事業継承・一時的な信用不安に備える資金等の財源確保

        • (注)被保険者となるべき者の同意の取得に際しては、例えば、被保険者に対して加入申込書の写しや契約の内容を記載した書面の交付を行うことによって、認可特定保険業者が被保険者に保険金受取人や保険金の額等の契約の内容を確実に認識できるような措置を講じているか。

          更に、被保険者に対して交付する契約の内容を記載した書面等に、被保険者が家族に当該保険への加入を説明することを促す文言を記載する等、認可特定保険業者は被保険者本人がその家族やその他必要と考える者に対し情報提供を容易に行い得る措置を講じているか。

    • マル2全員加入団体定期保険(全員加入団体を対象とする団体定期保険をいう。以下同じ。)の契約は、当該保険の目的・趣旨が遺族及び従業員の生活補償にあることを明確にし、弔慰金等の支払い財源を保障する部分を「主契約」、従業員死亡に伴い企業が負担する代替雇用者採用・育成費用等の諸費用(企業の経済的損失)を保障する部分を「ヒューマン・ヴァリュー特約」として区分する等、当該保険契約の目的・趣旨に沿った業務運営が行われているか。

      • (注)被保険者となるべき者の同意の取得に際しては、例えば、以下の方法によって被保険者が保険金受取人や保険金の額等の契約の内容を確実に認識できるような措置を講ずること。

        • ア.被保険者に対して契約の内容を記載した書面の交付等を認可特定保険業者から行う。

        • イ.被保険者がどのように契約の内容を認識できるようになっているかを認可特定保険業者が保険契約者から確認する。確認の結果は、検証可能な具体的な記録として残す。

  • (2)保険金額の定め方

    • マル1事業保険における保険金額の設定については、保険契約の目的・趣旨を踏まえ、保険金額の引受基準等、モラルリスクの排除の観点から措置が適切に運用されているか。

      なお、「ヒューマン・ヴァリュー特約」の保険金額は、過大とならないよう保険契約締結時において、年収、勤続年数、職位や企業の年商や規模等の基準により設定した上限により適切に運営されているか。

      また、従業員に係る保険金額の設定については、下記マル2にも留意しつつ適切に運営されているか。

    • マル2全員加入団体定期保険の保険金額の設定については、主契約部分は遺族補償規定等に基づく支給金額を上限とし、特約部分は主契約の保険金額を上限とする等、この保険の目的・趣旨(上記(1))に沿った利用が行われるよう措置が講じられているか。

  • (3)遺族補償規定等にリンクした保険金支払いの確保

    • マル1事業保険であって遺族補償規定等に基づき被保険者である従業員に対し、保険金の全部又はその相当部分が、弔慰金等の支払いに充当することが確認されている場合においては、業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、保険金請求時に保険契約者から、

      •  

        • ア.被保険者又は労働基準法施行規則第42条等に定める遺族補償を受けるべき者(以下、「受給者」という。)の保険金請求内容の了知を確認する書類の取付け(なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金の額等の契約の内容が記載されているか。)、

        • あるいは、

        • イ.被保険者又は受給者が金銭を受領したことが分かる書類、被保険者又は受給者への支払記録等の取付け、

        • 等被保険者又は受給者に対する情報提供、保険契約の目的に沿って保険金が弔慰金等の福利厚生に活用されることの確認の措置が講じられているか。

    • マル2全員加入団体定期保険における保険金の支払いにあっては、主契約部分については、全額従業員の遺族に支払うこととし、企業が一旦受取りその上で遺族に支払う場合は、遺族の了知を確認の上で支払うこととしているか。

      なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金の額等の契約の内容が記載されているか。

    • マル3全員加入団体定期保険において、いわゆる「ヒューマン・ヴァリュー特約」分の保険金支払いは、弔慰金等の受給者の了知を確認の上で支払うこととしているか。

      なお、この了知を確認する書類には保険金受取人や保険金の額等の契約の内容が記載されているか。

  • (4)他人の生命の保険契約に係る被保険者同意の確認

    他人の生命の保険契約に係る被保険者の同意の確認については、例えば、以下のような方法により行っているか。

    • マル1個人又は企業が保険契約者及び保険金受取人になり、保険契約者以外の者あるいは役員や従業員を被保険者とする保険契約の場合は、被保険者本人が同意を記録することによる確認

    • マル2企業が保険契約者及び保険金受取人になり、従業員等全員を被保険者とする保険契約(被保険者となることに同意しなかった者を除く保険契約をいう。)のうち個人生命保険及び全員加入団体定期を除く保険契約で、上記マル1によることが困難な場合は、以下のいずれかによる確認

      •  

        • ア.保険契約の目的となる災害補償規定等の書類、及び被保険者となる者全員による同意の記録

        • イ.保険契約の目的となる災害補償規定等の書類、保険契約者となるべき者が被保険者となるべき者全員に保険契約の内容を通知した旨の確認の記録(保険契約者となるべき者本人及び被保険者となるべき者の代表者本人による確認の記録があるものに限る。)、及び被保険者となることに同意しなかった者の名簿

        • ウ.企業が死亡保険金受取人とする保険契約の内容が記載された災害補償規定等の書類、災害補償規定等が労働基準法第89条の規定に基づき行政官庁に届け出たものであること、及び同法第106条第1項の規定に基づき被保険者となるべき者に対し、災害補償規定等を周知した旨が記載された確認の記録(保険契約者となるべき者本人による確認の記録があるものに限る。)、並びに被保険者となることを同意しなかった者の名簿

    • マル3全員加入団体定期保険の場合は、保険契約者となるべき者からの以下のいずれかによる確認

      •  

        • ア.保険契約の目的となる遺族補償規定等の書類、及び被保険者となる者全員による同意の記録

        • イ.保険契約の目的となる遺族補償規定等の書類、保険契約者となるべき者が被保険者となるべき者全員に保険契約の内容を通知した旨の確認の記録(保険契約者となるべき者本人及び被保険者となるべき者の代表者本人による確認の記録があるものに限る。)、及び被保険者となることに同意しなかった者の名簿

    • マル4全員加入団体定期保険のうち「ヒューマン・ヴァリュー特約」を付帯した保険契約の場合は、被保険者による個別の同意を記録することによる確認、又は上記マル3ア.による確認

II -3-4 苦情処理態勢

II -3-4-1 意義

利用者からの苦情等への対応は、単に処理の手続きの問題と捉えるに留まらず、苦情等の内容に応じ、紛争処理段階における説明態勢の問題として位置付け、可能な限り利用者の理解と納得を得て解決することを目指したものとなっていることが必要である。

II -3-4-2 主な着眼点

利用者への説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理態勢が構築され機能しているかどうかは、利用者保護及び利用者利便の観点も含め、認可特定保険業者の健全かつ適切な業務運営の基本に関わることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。特に、

  • (1)認可特定保険業者の相談・苦情処理態勢が確立されているか。

  • (2)担当者の配置等が適正なものとなっているか。

  • (3)窓口の充実、強化を図るための措置が講じられているか。

  • (4)利用者からの苦情等(不祥事件につながるおそれのある問合せ等も含む。)については、その処理の手続きを定めているか。

  • (5)利用者からの苦情等(不祥事件につながるおそれのある問合せ等も含む。)は、処理の手続きに従い事務部門及び関係業務部門と連携の上で、速やかに処理を行っているか。特に、保険金等の不払いに関する苦情については、当該不払いを決定した支払担当部門のみで処理するのではなく、最終的にはコンプライアンス担当部門等の他の部門で当該苦情処理が適切に処理されたかどうかを検証する態勢となっているか。

  • (6)利用者からの苦情等(不祥事件につながるおそれのある問合せ等も含む。)の内容は、処理結果を含めて、記録簿等により記録・保存するとともに、定期的に事務部門、内部監査部門に報告しているか。

  • (7)経営に重大な影響を与えるような問題については、速やかに事務部門、内部監査部門へ報告するとともに、理事会に報告しているか。

  • (8)苦情内容について分析し、苦情発生原因を把握し、必要な改善を行っているか。

  • (9)「利用者からの苦情」の定義は明確に定められているか。

II -3-4-3 監督手法・対応

苦情処理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づく行政処分を行うものとする。

II -3-5 利用者の保護等

II -3-5-1 利用者に対する説明責任、適合性原則

II -3-5-1-1 利用者保護を図るための留意点

認可特定保険業者は保険募集にあたって利用者保護を図るため、以下の項目に留意する必要がある。

  • (1)利用者に対して公正な事務処理を行っているか。

  • (2)保険契約者との取引にあたっては、取引の内容等を保険契約者に対し、適切かつ十分な説明を行っているか。

  • (3)変額保険及び外貨建保険等、保険契約者がリスクを負っている商品の販売を行うにあたっては、保険契約者に対し適切かつ十分な説明を行い、かつ保険契約者から説明を受けた旨の確認を行うための方策を講じているか。

  • (4)利用者情報は法的に許される場合及び利用者自身の同意がある場合を除き、第三者に開示していないか。

  • (5)個別企業に関わる情報についても、厳重かつ慎重に取り扱っているか。

II -3-5-1-2 改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第100条の2に規定する業務運営に関する措置等
  • (1)命令第23条から第32条までに規定する措置等が適正に実施されているか。

  • (2)命令第23条及び第27条から第29条までに規定する措置について、職員及び保険代理店に対する教育、指導を行う体制が整備されているか。

  • (3)当該措置について、職員及び保険代理店の実施状況を調査・把握する体制が整備されているか。

  • (4)命令第23条第1項第5号に定める「被保険者のために積立てられている額」には、命令第9条第3号に定める契約者価額の計算の基礎とする額並びに、命令第43条第1項第2号(未経過保険料)及び第4号(契約者配当準備金等)等が含まれることに留意する。

  • (5)命令第23条第1項第5号に定める「既契約と新契約が対比できる方法」が次の取扱いとなっているか。

    • マル1命令第23条第1項第5号イに定める事項について、書面に既契約及び新契約に関して記載項目ごとに対比して記載する。

    • マル2上記マル1にかかわらず、次に掲げる場合には、既契約及び新契約に関して命令第23条第1項第5号イに定める事項が記載されたそれぞれの書面を交付して対比することも可能とする。

       

      • ア.保険種類が異なり、かつ、既契約及び新契約(いずれも特約を含む。)の保障内容又は担保内容が全く異なるもの。

      • イ.複数の既契約を一の新契約にする場合等既契約及び新契約の契約内容やシステム上の問題等により、記載項目ごとに対比して記載(上記マル1をいう。)しない合理的な理由があるもの。

    • マル3上記マル2の書面により代替する場合には、当該書面の交付にあたって既契約と新契約の対比説明を徹底する等、保険契約者等の保護に欠けることのないよう措置を講じる。

  • (6)命令第23条第1項第5号イに定める既契約と新契約の対比が適切に行われているか。

    なお、同号に定める「その他保険契約に関して重要な事項」とは、保険料の払込方法、契約者配当の有無その他保険契約の特性から重要と認められる事項のうち該当する事項をいう。

  • (7)命令第23条第1項第5号ロに定める「保障内容を見直す方法」が交付する書面に適切に記載されているか。

    なお、同号に定める「既契約を継続したまま保障内容を見直す方法」とは、次に掲げる方法をいう。

    • マル1既契約に特約を中途付加する方法

    • マル2既契約に追加して、他の保険契約を締結する方法 等

  • (8)命令第23条第1項第1号から第5号までに定める書面の交付に関して、保険契約者から書面を受領した旨の確認を得ることについて、職員及び保険代理店に対する教育、指導を行う体制が整備されているか。

    また、職員及び保険代理店による受領確認の実施状況を調査・把握する体制が整備されているか。

    当該書面を電磁的方法により代替して交付する場合には、保険契約者の承諾を得た上で適切な手段により提供する措置をとる体制が整備されているか。

  • (9)命令第23条に規定する措置に関して、当該書面等に記載又は説明すべき事項及び保険契約申込書等における当該書面の受領確認に関する文言の表示にあっては、文字の大きさ等に留意して、その平明性及び明確性が確保されているか。

  • (10)法第294条の3の規定(二以上の所属保険会社等を有する場合における当該所属保険会社等が引き受ける保険に係る一の保険契約の契約内容につき当該保険に係る他の保険契約の契約内容と比較した事項の提供に係る措置)は、認可特定保険業者のために行う保険募集に直接適用されるものではない。ただし、命令第23条第1項第7号ニ及び第24条に規定する措置を適切に講じて利用者保護を図る観点から留意が必要となる。

  • (11)命令第26条に規定する措置に関し、法第3条第4項第1号に規定する保険(年金保険及び生存保険を除く。)及び同項第2号に規定する保険(損害を填補することを約した保険を除く。)の契約について

     

    • マル1保険契約の引受基準が内部規則等に定められ、認可特定保険業者が知り得た他の生命保険契約及び損害保険契約(以下、(10)において「他の保険契約」という。)を含む保険金額が当該引受基準に比し過大である場合には、より慎重な引受判断を行う等モラルリスク排除・抑制のための十分な体制が整備されているか。

    • マル2保険契約者又は被保険者の収入、資産、逸失利益等の計数に基づき算定した額と保険金額(認可特定保険業者が知り得た他の保険契約に係る保険金額を含む。)との比較等により、保険金額の妥当性(過分でないこと)を判断・確認する方法を含む内部規則等が適切に定められ、それに基づき業務が運営されるための十分な体制が整備されているか。

      (注)内部規則等を定めるにあたって、次の点に留意しているか。

      • ア.認可特定保険業者の定める一定金額を超える保険契約の引受審査を行う場合には、保険契約者又は被保険者の収入、資産、逸失利益等の計数を客観的かつ合理的な方法により確認する等、適切な審査を行う旨を定めているか。また、客観的かつ合理的な方法により確認できない場合には、モラルリスク排除・抑制の観点から、より慎重な対応を要する旨を定めているか。

      • イ.死亡保険(命令第26条第2項に規定する死亡保険をいう。)の引受けについて

        • (ア) 保険の不正な利用を防止することにより被保険者を保護するため、死亡保険に係る保険金の限度額を具体的に定め、これを超える保険金額による保険の引受けを行わないものと定めているか。また、この限度額は、同一被保険者の他の死亡保険に係る保険金額と通算する旨を定めているか。

        • (イ) その他、保険の不正な利用を防止することにより被保険者を保護するため、利用者ニーズの確認等を通じ、適切な引受審査を行う旨を定めているか。

          • (注)命令第26条第2項に規定する「不正な利用のおそれが少ないと認められるもの」とは、例えば一時払終身保険、一時払養老保険のほか、既払込保険料相当額に運用益等を加えた金額程度の保険金を被保険者の死亡時に支払う個人年金保険等の不正な利用が発生するおそれが少ないことを合理的に説明可能なものをいう。

  • (12)命令第26条に規定する措置に関し、保険契約について、保険契約者又は被保険者本人に対し、当該契約内容への同意の記録を求める措置を確保するための方法を含む内部規則等が適切に定められ、それに基づき業務が運営されるための十分な体制が整備されているか。

    なお、本人以外の者に上記記録を行わせる場合には、内部規則等に本人以外の者が当該記録を行える場合を限定して規定するとともに、その場合における取扱を規定しているか。

  • (13)命令第26条に規定する措置に関し、契約の申込みを行おうとする保険商品の仕組みが利用者のニーズに合致した内容であることを利用者が確認する機会を確保し、利用者が保険商品を適切に選択することを可能とするための措置がとられているか。

    なお、保険契約者が団体である場合において、保険契約者である団体が被保険者となる者に対して加入勧奨を行う場合には、保険商品の仕組みが被保険者のニーズに合致した内容であることを確認する機会等を確保するための措置を講じるものとする。

  • (14)命令第26条に規定する措置に関し、保険契約の申込みを受けるにあたり、利用者に対して契約内容の確認を求めるとともに、例えば、申込書の写しや申込内容を記載した書面等を利用者に交付する等の体制が整備されているか。

    (注)非対面の方式により保険契約の申込みを受ける場合は、以下のような点に留意すること。

    • マル1例えば、電話の場合は口頭、郵便の場合は書面への記載、インターネット等の場合は電磁的方法による表示により、利用者に対して契約内容の確認を求めること。

    • マル2申込書の写しや申込内容を記載した書面等を利用者に交付することが困難な場合は、申込後遅滞なく郵送等の方法により交付すること。

  • (15)命令第26条に規定する措置に関し、トンチン性の高い商品については、認可特定保険業者が利用者に対して、その商品特性について十分説明を行うための体制が整備されているか。

    (注)トンチン性とは、死亡者の持分が生存者に移ることにより、生存者により多くの給付が与えられる割合のことを指す。

  • (16)命令第11条第1項第2号に該当するものとして特定保険業の認可を受けた認可特定保険業者については、命令第31条に定める措置に関し、毎事業年度ごとに、同号の計画の実施状況に関する説明書類の作成、保険契約者への縦覧・交付(又は送付)等を行うための体制が整備されているか。

  • (17)行政庁の承認を受けて特定保険業以外の業務を行う認可特定保険業者については、命令第32条に定める措置に関し、保険料収入等の規模、取扱保険商品の特性等に応じ、本部機能を有する部門、保険募集管理部門及び保険金等支払管理部門の役職員が特定保険業に専念する体制が構築されている等、特定保険業の適正かつ確実な遂行を行うための必要な人員が確保されているか。

II -3-5-2 保険金等支払管理態勢

II -3-5-2-1 意義

保険金等の支払いは、認可特定保険業者の基本的かつ最も重要な機能であることから、保険金等支払事務が適時・適切に実施できるための支払管理態勢を構築しておくことが重要である。

II -3-5-2-2 主な着眼点
  • (1)保険金等の支払いに係る理事の認識及び理事会の役割

    • マル1理事会は、適切な保険金等支払管理態勢の構築に係る方針を明確に定めているか。

    • マル2理事は、適時・適切な保険金等の支払いが健全かつ適切な事業運営の確保に重大な影響を与えることを十分認識しているか。

    • マル3理事会は、保険金等の支払いに係る業務全般を管理する部門(以下「支払管理部門」という。)を設置する等、保険金等支払管理を統合的に管理できる体制を整備しているか。また、上記の体制においては、例えば保険金等支払管理に関連する各部門の間で相互牽制等の機能が十分発揮されるものとなっているか。なお、組織体制については、必要に応じ随時見直し、支払管理態勢の構築に係る方針の変更や支払管理手法にあわせて改善を図っているか。

    • マル4理事会は、保険金等の支払査定基準の改廃等の保険契約者等の保護に重大な影響を与えるものについて、十分な検討を行っているか。また、上記以外の支払管理のための規定についても理事会等への報告が行われた上で整備しているか。

    • マル5理事会は、点検・内部監査等を適切に活用し、支払いに係る苦情情報や訴訟事案等保険契約者等の利益に重大な影響を与える事案を含めた保険金等の支払い及び不払状況(件数、内容等を含む。)について定期的に報告を受け、原因分析に基づいた必要な意思決定や指示を行う等、把握された支払関係情報を業務の執行及び管理態勢の整備等に活用しているか。また、理事は、利用者からの支払関係の苦情への対応について、支払管理部門任せとするのではなく、適時・適切に報告を受けること等により実態把握を行い、必要な意思決定や指示によって対策を講じることとしているか。

    • マル6理事は、適切な保険金等の支払管理態勢を構築するため、業務に精通した人材を所要の部署に確保するための人事及び人材育成並びにシステムの構築、規程・マニュアル・帳票類等の支払事務に係る手続き・書式の整備等についての方針を明確に定めているか。

    • マル7理事会は、保険金等の支払いに係る適切な業務運営が行われるよう、経営資源の配分を適切に行っているか。また、保険金等の支払管理が適切に行われているかどうか確認しているか。

  • (2)保険金等支払管理に関与する管理者の認識及び役割

    • マル1支払管理部門の長及び支払管理に責任を有する理事(以下「保険金等支払管理者」という。)は、適切な支払管理態勢の構築の重要性を理解・認識しているか。また、保険金等支払管理者は、部門の担当者に適切な支払管理態勢の構築の重要性を理解・認識させるための適切な方策を講じているか。

    • マル2支払管理部門は、事業推進部門やシステム部門等の関連する部門(以下「関連部門」という。)や事業拠点等に対して適切な支払管理態勢を構築するために必要な管理・指導を行っているか。

    • マル3保険金等支払管理者は、支払管理に係る規程・マニュアル・帳票類等の支払事務に係る手続き・書式について、見直し・改善するよう適切な方策を講じているか。

    • マル4保険金等支払管理者は、支払管理を行う組織が機能を有効に発揮できるよう、専門性も考慮しつつ適切に人員の配置を行っているか。また、人員の配置にあたっては、実務経験者等、専門性を持った人材を配置しているか。

    • マル5保険金等支払管理者は、職員を長期間にわたり同一部署の同一業務に従事させることのないよう、人事ローテーションを確保しているか。やむを得ない理由により、長期間にわたり同一部署の同一業務に従事している場合は、事故防止のためその他の適切な方策を講じているか。

    • マル6支払管理部門は、保険金等の支払いに係る問題を把握した場合に、関連部門と連携し、十分な原因分析を踏まえた適切な改善策を講じているか。また、その状況について理事会等に報告しているか。

  • (3)支払査定担当者の人材育成及び査定能力の維持・向上

    • マル1保険金等支払管理者は、専門性を持った支払査定担当者の確保のための長期的な展望に基づく人材育成策を策定しているか。

    • マル2保険金等支払管理者は、支払査定能力を維持・向上させるための方法・体制を整備しているか。特に、適切な支払査定を支払査定担当者が行えるよう、医学的知識の習得、約款・特約条項の理解の向上等を図ることを確保するために、一定の研修及び効果測定等の義務付けその他の方策を講じているか。また、医学の進歩や医療の変化等に対応して、教育・研修内容の見直しを適時・適切に行っているか。

  • (4)関連部門との連携

    • マル1支払管理部門と関連部門は密接な連携を図ることによって、支払い時のみならず、保険募集や苦情・紛争処理への適切な対応が行われるような態勢となっているか。

    • マル2支払管理部門は、支払査定を行う過程において把握したコンプライアンス上の問題について、コンプライアンス担当部門に報告する態勢となっているか。また、支払管理部門は、必要に応じて、コンプライアンス担当部門及び関連部門から保険募集時の説明状況等について情報を取得する態勢となっているか。

    • マル3約款所定の支払事由に該当しないケース、例えば、支払対象外の手術や1回の入院についての支払日数の限度超過等の請求に関する苦情に対しては、支払管理部門と関連部門は相互連携して、苦情の発生原因を分析した上で防止するような対応策を検討しているか。

    • マル4保険金等支払いに係るシステム構築において、支払管理部門及びシステム部門をはじめとする関連部門は、連携の上、理事会で定められた方針に基づき、適切な保険金等支払管理態勢の確立に向けたシステム構築を行う等の点に留意した態勢が整備されているか。

    • マル5支払管理部門をはじめとする関連部門は、理事会等及び保険金等支払管理者に対して、支払管理に関わる経営に重大な影響を与える情報を網羅し、分かりやすくかつ正確に報告しているか。

  • (5)支払管理部門における態勢整備

    • マル1支払管理部門の職員は、保険金等の支払いが認可特定保険業者の基幹業務の一つであることを理解・認識し、適切な保険金等支払管理態勢の構築及び確立に向けた取組みを不断に行う態勢となっているか。また、支払管理部門は、保険金等支払業務のみならず、例えば保険募集、事故連絡受付及び請求手続並びに苦情・相談への対応等を含むすべての利用者対応を踏まえた取組みが必要であることに留意しているか。

    • マル2支払管理部門においては、支払査定の判断や査定結果の妥当性の事後検証にあたって、必要に応じて外部の専門家の意見を反映させているか。また、利用者からの苦情について、利用者の視点に立った分析を行うこと等により、適切な支払管理態勢の構築及び確立に役立てているか。

    • マル3支払管理部門の職員それぞれの役割及び権限は明確となっているか。例えば、決裁権限規定においては、保険金等の金額や支払い又は不払いとで合理的な差異が設けられているか。

    • マル4保険金等の支払事由が発生した場合には、利用者保護、利用者利便の視点に立った適切な損害調査、事実の確認や利用者対応等が行われるような態勢が整備されているか。

    • マル5反社会的勢力等からの不当な請求等に対しては、ゆるぎない対応に遺漏ないようにしているか。

    • マル6保険金等の請求及び支払いにあたっては、機微(センシティブ)情報を取り扱うことを踏まえ、利用者に関する情報の管理について、具体的な取扱基準を定めた上で役職員に周知徹底しているか。特に、個人である利用者に関する情報の管理について、命令、個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、同ガイドライン(外国にある第三者への提供編)、同ガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)及び同ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)(以下、合わせて「保護法ガイドライン」という。)、金融分野ガイドライン及び実務指針の規定に基づく適切な取扱いが確保されているか。

    • マル7保険募集、事故連絡受付、保険金等請求時においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。

      • ア.支払管理部門は関連部門と連携して、保険募集や事故連絡受付等のそれぞれの利用者対応時において、保険金等の請求手続等に関して、十分かつ分かりやすい説明や請求漏れを未然に防止するための方策を講じているか。例えば、ホームページへの掲載のほか、保険金等の支払いに関する説明資料を作成し、保険契約者等へ配付することによる情報提供の充実を図っているか。なお、当該説明資料の記載内容については、少なくとも利用者からの照会に対応する窓口が明記される必要があるほか、保険金等が支払いとなる場合や支払われない場合の具体的事例等が記載されることが望ましい。

      • イ.保険契約者等に対して支払われる保険金等の種類について、書面等で分かりやすく案内が行われているか。また、満期保険金、解約返戻金(消滅時に支払われることとなる返戻金を含む。)等に関する保険契約者等への適切な通知が行われているか。

      • ウ.保険金請求書等の帳票類については、保険商品の仕組みが多様化していること等を踏まえ請求漏れを未然に防止するとともに、分かりやすい内容となるよう見直しを適時・適切に行っているか。例えば、苦情等が発生している帳簿類の点検や利用者の視点に立った分析等を行っているか。

      • エ.保険金受取人等が保険金等の請求を行えない場合、当該受取人等に代わる代理人等が請求することができるような手続きを整備しているか。

      • オ.総損害額が確定する前に保険金の一部を支払う、いわゆる内払いを行う場合の認可特定保険業者の対応について、被保険者間や被害者間の公平性確保の観点から、マニュアル・規定等に、内払いに係る手続きを定め、内払いを行う場合例示するなど、被保険者のニーズのみならず被害者のニーズにも留意し、適切に対応する態勢整備を図っているか。

    • マル8支払査定時においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。

      • ア.保険金等の支払可否の判断にあたっては、立証責任が認可特定保険業者側にあるか、請求者側にあるかにかかわらず、事実関係の調査・確認を十分に行う態勢となっているか。

      • イ.高度な法的判断又は医的判断を要するものについては、支払管理部門の担当者のみで判断せず、必要に応じて外部の専門家の見解を求める態勢となっているか。

      • ウ.同一の保険事故において、支払事務を異なる職員が担当する場合に、職員間の相互連携が図られる態勢となっているか。

      • エ.保険金等の支払可否の判断に影響を与える判例等の動向を遺漏なく把握すべく態勢を整備しているか。

      • オ.支払査定マニュアルの内容は体系的・網羅的なものとなっているか。

      • カ.管理者等が行う二次的なチェック態勢は十分なものとなっているか。

      • キ.保険金等の支払い漏れ等をチェック・防止したり、支払いを促すようなシステム対応は十分なものとなっているか。

      • ク.保険契約者等保護の観点から、例えば、遅延利息の起算日や解除期限日等の期限の管理は適切に行われているか。

      • ケ.支払管理部門は、保険金等の支払い漏れが無く迅速な保険金等の支払いが行われるよう、適切に進捗管理を行っているか。また、支払いに至るまでの所要日数の短縮を図るための方策を講じているか。

      • コ.支払管理部門は、保険金等を請求した保険金受取人等に対して、支払いまでに時間を要する場合には、日数を要する理由、支払いの目途等について分かりやすく説明する等の方策を講じているか。

    • マル9支払査定後においては、以下の点に留意した態勢が整備されているか。

      • ア.支払いに関する照会や不払い時の苦情申し出に対して、迅速かつ正確な対応を行う観点から、職員による適切な対応が行われるための方策を講じているか。

      • イ.保険金受取人等から支払査定の結果に関し苦情申し出があった場合等については、支払可否の判断の根拠となった事実関係等について再度の事実確認を実施する態勢となっているか。

      • ウ.不払いとなる場合については、約款等の根拠条文の記載を含めその理由となる説明が、保険金受取人等に対して分かりやすいものとなっているか。

      • エ.苦情等の受付及びその解決に向けた迅速な手続きを規定した処理規程を整備しているか。

    • マル10支払管理部門においては、以下のような事後的なチェック態勢が整備されているか。

      • ア.保険金等支払管理者から権限委任されている事項について、適切な権限行使が行われているかを定期的に点検・監査する等の管理が行われているか。

      • イ.複数の支払部門にまたがるような保険金等の支払いについて、支払い漏れ防止の観点から、各支払部門が相互に確認する体制を整備する等、定期的にチェックを行う態勢となっているか。

      • ウ.支払保険金等について、保険金受取人等からの申し出により請求放棄等の処理がなされた事案が、真に適正な事務処理が行われたかどうかを事後的に検証できる態勢を整備しているか。

      • エ.不払いとした理由を保険金受取人等に対して説明するためのモデル文書については、苦情・問い合わせ等を通じて把握した課題を踏まえ見直し・改善するような態勢となっているか。また、実際に送付された支払いを否とする通知について、当該内容について検証する態勢となっているか。

      • オ.不払いとした事例について内容を分析し、分析結果を保険金等の支払いを適切に行うための対応策や態勢整備等に役立てているか。

      • カ.不払いに関する苦情については、当該不払いを決定した支払担当部門のみで処理するのではなく、最終的にはコンプライアンス担当部門等の他部門で当該苦情処理が適切に処理されたかどうかを検証する態勢となっているか。

      • キ.支払管理態勢の一層の強化の観点から、支払査定の妥当性の事後検証の仕組み等を整備しているか。

    • マル11保険契約者その他の利用者が、認可特定保険業者の業務状況を適切に判断できるように、保険金等を不払いとした件数・内容や苦情等に関する情報等の積極的な情報開示に取り組むことが望ましい。

  • (6)内部監査

    • マル1理事会は、内部監査が適切な保険金等支払管理態勢を確立することに重大な影響を与えることを十分認識しているか。

    • マル2内部監査部門は、支払管理部門をはじめとする被監査部門等に対して十分牽制機能が働く独立した体制となっているか。また、被監査部門等から不当な制約を受けることなく監査を実施しているか。

    • マル3理事会等は、支払管理態勢に対する内部監査が有効に機能するよう、内部監査部門において支払実務に精通した人材を適切な規模で配置しているか。また、内部監査部門は、適切な支払管理態勢の検証を行うような十分な権能を付与されているか。

    • マル4支払管理部門の役職員は、内部監査が適切な支払管理態勢を確立することに重要な役割を果たすことを十分認識しているか。

    • マル5内部監査部門は、適切な支払管理態勢を検証するための内部監査業務の実施要領等を作成し、理事会等による承認を受けているか。また、内部監査部門の長は、実施要領等の適切性・有効性を確認しているか。

    • マル6内部監査部門は、適切な支払管理態勢を検証するため、頻度・深度等に配慮した効率的かつ実効性のある監査計画を策定しているか。

    • マル7内部監査部門は、内部監査業務の実施要領等に基づき、支払管理部門及び関連部門の全ての業務に対する監査を定期的に実施しているか。

    • マル8内部監査部門は、理事会に対して、支払管理態勢に係る内部監査の結果、その他重要な事項を適時・適切に報告しているか。特に経営に重大な影響を与える問題点については、速やかに報告しているか。

    • マル9内部監査部門は、検査の結果を分析し、これを的確に支払管理部門をはじめとする被監査部門等へ遅滞なく通知しているか。更に、内部監査部門は、支払管理部門における改善状況を適切に管理し、その後の内部監査に反映させているか。また、保険金等支払管理者は、内部監査の結果等を適切な保険金等支払管理態勢の確立に役立てているか。

  • (7)監事による監査

    • マル1保険金等支払いに関する監事による監査については、業務執行体制の適否を監査する視点で実施しているか。例えば、募集管理関係からみた問題等と利用者からの苦情の状況等から窺える利用者サービスの問題等を関連づけて総合的に監査することとしているか。

    • マル2保険金等支払実務に関する体系的な監査手法を確立しているか。

    • マル3監事は、保険金等支払管理者等に対するヒアリングや支払管理部門に対する往査等、保険金等の支払実務そのものに対する直接的な監査を実施しているか。

    • マル4監事は、理事会に対して、保険金等の支払いに関する監査結果、その他重要な事項を適時・適切に報告しているか。

II -3-5-2-3 監督手法・対応

保険金等支払管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。

II -3-6 利用者等に関する情報管理態勢

II -3-6-1 意義

利用者に関する情報は、保険取引の基礎をなすものであり、その適切な管理が確保されることが極めて重要である。

特に、個人である利用者に関する情報については、命令、個人情報の保護に関する法律、保護法ガイドライン、金融分野ガイドライン及び実務指針の規定に基づく適切な取扱いが確保される必要がある。

また、クレジットカード情報(カード番号、有効期限等)を含む個人情報(以下「クレジットカード情報等」という。)は、情報が漏えいした場合、不正使用によるなりすまし購入等二次被害が発生する可能性が高いことから、厳格な管理が求められる。

更に、認可特定保険業者は、法人関係情報(金融商品取引業等に関する内閣府令第1条第4項第14号)を入手し得る立場であることから、その厳格な管理と、インサイダー取引等の不公正な取引の防止が求められる。

以上を踏まえ、認可特定保険業者は、利用者に関する情報及び法人関係情報(以下、「利用者等に関する情報」という。)を適切に管理し得る態勢を確立することが重要である。

II -3-6-2 主な着眼点

  • (1)利用者等に関する情報管理態勢

    • マル1理事等は、利用者等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、適切性を確保するための組織体制の確立(部門間における適切な牽制の確保を含む。)、内部規則の策定等、内部管理態勢の整備を図っているか。

    • マル2利用者等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱基準を定めた上で、研修等により役職員に周知徹底しているか。特に、当該情報の他者への伝達については、コンプライアンス(利用者に対する守秘義務、説明責任)及びレピュテーションの観点から検討を行った上で取扱基準を定めているか。

    • マル3利用者等に関する情報へのアクセス管理の徹底(アクセス権限を付与された本人以外が使用することの防止等)、内部関係者による利用者等に関する情報の持出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化等の対策を含め、利用者等に関する情報の管理が適切に行われているかを検証できる体制となっているか。

      また、特定職員に集中する権限等の分散や、幅広い権限等を有する職員への管理・牽制の強化を図る等、利用者等に関する情報を利用した不正行為を防止するための適切な措置を図っているか。

    • マル4利用者等に関する情報の取扱いを委託する場合は、以下の措置を講じているか。

      (注)「委託」とは、契約の形態や種類を問わず、認可特定保険業者が代理店を含む他の者に利用者等に関する情報の取扱いの全部又は一部を行わせることを内容とする合意の一切を含む(以下、 II -3-6-2において同じ。)。

      • ア.保険代理店を含む外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において利用者等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか。

      • イ.保険代理店を含む外部委託先において漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。

      • ウ.保険代理店を含む外部委託先による利用者等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。

        その上で、保険代理店を含む外部委託先においてアクセス権限が付与される役職員及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。

        更に、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、保険代理店を含む外部委託先において定期的又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と実際の利用者との突合を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。

      • エ.二段階以上の委託が行われた場合には、保険代理店を含む外部委託先が再委託先等の事業者に対して十分な監督を行っているかについて確認しているか。

        また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して当該認可特定保険業者による直接の監督を行っているか。

    • マル5利用者等に関する情報の漏えい等が発生した場合に、適切に責任部署へ報告され、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった利用者等への説明、当局への報告及び必要に応じた公表が迅速かつ適切に行われる体制が整備されているか。

      また、情報漏えい等が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策が講じられているか。更には、他で発生している漏えい事故等を踏まえ、類似事例の再発防止のために必要な措置の検討を行っているか。

    • マル6独立した内部監査部門において、定期的又は随時に、利用者等に関する情報管理に係る幅広い業務を対象にした監査を行っているか。

      また、利用者等に関する情報管理に係る監査に従事する職員の専門性を高めるため、研修の実施等の方策を適切に講じているか。

  • (2)個人情報管理

    • マル1個人である利用者に関する情報については、命令第27条に基づき、その安全管理、従業者の監督及び当該情報の取扱いを委託する場合にはその委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として以下の措置が講じられているか。

      • ア.金融分野ガイドライン第8条、第9条及び第10条の規定に基づく措置

      • イ.実務指針 I 、 II 、 III 及び別添2の規定に基づく措置

    • マル2個人である利用者に関する人種、信条、門地、本籍地、保健医療又は犯罪経歴についての情報その他の特別の非公開情報を、命令第29条に基づき、金融分野ガイドライン第5条第1項各号に列挙する場合を除き、利用しないことを確保するための措置が講じられているか。

      (注)「その他特別の非公開情報」とは、以下の情報をいう。

      • ア.労働組合への加盟に関する情報

      • イ.民族に関する情報

      • ウ.性生活に関する情報

        エ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第4号に定める事項に関する情報

        オ.個人情報の保護に関する法律施行令第2条第5号に定める事項に関する情報

        カ.犯罪により害を被った事実に関する情報

        キ.社会的身分に関する情報
         

    • マル3クレジットカード情報等については、以下の措置が講じられているか。

      • ア.クレジットカード情報等について、利用目的その他の事情を勘案した適切な保存期間を設定し、保存場所を限定し、保存期間経過後適切かつ速やかに廃棄しているか。

      • イ.業務上必要とする場合を除き、クレジットカード情報等をコンピュータ画面に表示する際には、カード番号を全て表示させない等の適切な措置を講じているか。

      • ウ.クレジットカード情報等の取扱いを第三者に委託する場合は、代理店を含む外部委託先において、クレジットカード情報等を保護するためのルール及びシステムが有効に機能しているかについて、定期的又は随時に、点検又は立入検査を行っているか。

      • エ.クレジットカード情報等について、二段階以上の委託が行われた場合には、保険代理店を含む外部委託先が再委託先等の事業者を十分に監督していると認められる場合を除き、定期的又は随時に、点検又は立入検査を行う等、再委託先等の事業者に対して自社による直接の監督を行っているか。

  • (3)法人関係情報を利用したインサイダー取引等の不公正な取引の防止

    • マル1役職員による有価証券の売買その他の取引等に係る内部規則を整備し、必要に応じて見直しを行う等、適切な内部管理態勢を構築しているか。

    • マル2役職員によるインサイダー取引等の不公正な取引の防止に向け、職業倫理の強化、関係法令や社内規則の周知徹底等、法令等遵守意識の強化に向けた取組みを行っているか。

    • マル3法人関係情報を入手し得る立場にある役職員が当該法人関係情報に関連する有価証券の売買その他の取引等を行った際には報告を義務付ける等、不公正な取引を防止するための適切な措置を講じているか。

II -3-6-3 監督手法・対応

利用者等に関する情報管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条又は改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づき行政処分を行うものとする。

II -3-7 反社会的勢力による被害の防止

II -3-7-1 

反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要な課題であり、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進していくことは、社会的責任の観点から必要かつ重要なことである。特に、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む認可特定保険業者においては、認可特定保険業者自身や役職員のみならず、利用者等の様々な利害関係者(ステークホルダー)が被害を受けることを防止するため、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められる。

もとより認可特定保険業者として公共の信頼を維持し、業務の適切性及び健全性を確保するためには、反社会的勢力に対して屈することなく法令等に則して対応することが不可欠であり、認可特定保険業者においては、政府指針の趣旨を踏まえ、平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた態勢整備に取り組む必要がある。

特に、近時反社会的勢力の資金獲得活動が巧妙化しており、関係企業を使い通常の経済取引を装って巧みに取引関係を構築し、後々トラブルとなる事例も見られる。こうしたケースにおいては理事等の断固たる対応、具体的な対応が必要である。

なお、役職員の安全が脅かされる等不測の事態が危惧されることを口実に問題解決に向けた具体的な取組みを遅らせることは、かえって認可特定保険業者や役職員自身等への最終的な被害を大きくし得ることに留意する必要がある。

  • (参考)「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合わせ

    • (1)反社会的勢力による被害を防止するための基本原則

      • 組織としての対応

      • 外部専門機関との連携

      • 取引を含めた一切の関係遮断

      • 有事における民事と刑事の法的対応

      • 裏取引や資金提供の禁止

    • (2)反社会的勢力のとらえ方

      暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である(平成23年12月22日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」参照)。

II -3-7-2 主な着眼点

反社会的勢力とは一切の関係をもたず、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消するための態勢整備及び反社会的勢力による不当要求に適切に対応するための態勢整備の検証については、被害者救済の観点を含め個々の取引状況等を考慮しつつ、例えば以下のような点に留意することとする。

  • (1)組織としての対応

    反社会的勢力との関係の遮断に組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署だけに任せることなく理事等が適切に関与し、組織として対応することとしているか。

  • (2)反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

    反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。特に、一元的な管理態勢の構築に当たっては、以下の点に十分留意しているか。

    • マル1反社会的勢力対応部署において反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新(情報の追加、削除、変更等)する体制となっているか。また、取引先の審査を行う際に、当該情報を適切に活用する体制となっているか。

    • マル2反社会的勢力対応部署において対応マニュアルの整備や継続的な研修活動、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関との平素からの緊密な連携体制の構築を行う等、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制となっているか。特に、日常時より警察とのパイプを強化し、組織的な連絡体制と問題発生時の協力体制を構築することにより、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報する体制となっているか。

    • マル3反社会的勢力との取引が判明した場合及び反社会的勢力による不当要求がなされた場合等において、当該情報を反社会的勢力対応部署へ迅速かつ適切に報告・相談する体制となっているか。また、反社会的勢力対応部署は、当該情報を迅速かつ適切に理事等に対し報告する体制となっているか。さらに、反社会的勢力対応部署において実際に反社会的勢力に対応する担当者の安全を確保し担当部署を支援する体制となっているか。

  • (3)適切な事前審査の実施

    反社会的勢力との取引を未然に防止するため、反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査を実施するとともに、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を徹底する等、反社会的勢力が取引先となることを防止しているか。

  • (4)適切な事後検証の実施

    反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか。

  • (5)保険金等の支払審査の実施

    反社会的勢力からの不当な請求等を防止する観点から、保険金等の支払審査を適切に行うための態勢が整備されているか。

  • (6)反社会的勢力との取引解消に向けた取組み

    • マル1反社会的勢力との取引が判明した旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に理事等に報告され、理事等の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2平素から警察・暴力団追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関と緊密に連携しつつ、反社会的勢力との取引の解消を推進する態勢が整備されているか。

    • マル3事後検証の実施等により、取引開始後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、可能な限り契約の解除を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配慮しているか。

    • マル4いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢が整備されているか。

  • (7)反社会的勢力による不当要求への対処

    • マル1反社会的勢力により不当要求がなされた旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に理事等に報告され、理事等の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2反社会的勢力からの不当要求があった場合には積極的に警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関に相談するとともに、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等を踏まえた対応を行うこととしているか。特に、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報を行うこととしているか。

    • マル3反社会的勢力からの不当要求に対しては、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、積極的に被害届を提出するなど、刑事事件化も躊躇しない対応を行うこととしているか。

    • マル4反社会的勢力からの不当要求が、事業活動上の不祥事や役職員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査することとしているか。

II -3-7-3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件届出書等により、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づく業務改善命令の発出を検討するものとする。その際、反社会的勢力への資金提供や反社会的勢力との不適切な取引関係を認識しているにもかかわらず関係解消に向けた適切な対応が図られない等、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づく業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。

また、反社会的勢力であることを認識しながら組織的に資金提供や不適切な取引関係を反復・継続する等、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為等に対しては、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第133条に基づく厳正な処分について検討するものとする。

II -3-8 適切な表示の確保

  • (1)情報開示の趣旨を十分踏まえて適切に開示を行う体制が確立されているか。

  • (2)保険募集用の資料等(広告も含む。)について、表示媒体や保険商品の特性に応じた適正な表示を確保するための措置が講じられているか。

  • (3)適正な表示を確保するための内部規則が適切に策定されているか。

    (注)内部規則は、次の事項等を踏まえ、保険期間、保障内容、引受条件及び保険料率・保険料等が適切に表示されるよう留意して策定されているか。

    • マル1保険商品の保障内容に関する優良性を示す際に、それと不離一体の関係にあるものを併せてわかりやすく示さないこと等により、保険契約者等に著しく優良との誤解を与える表示となっていないか。

      例えば、保険契約の保障内容に以下の例示のような一定の制限条件があるにもかかわらず、当該条件が表示されていない場合、又は著しく小さな文字で表示されている、著しく短い時間で表示されている、参照先を明瞭にすることなく保障内容を強調した表示から離れたところに表示されている等により当該条件表示を保険契約者等が見落とすような表示方法となっている場合には、当該保険商品の仕組みの内容が、実際のものよりも著しく優良であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。

      • ア.支払事由の全部又は一部について、契約後一定の不担保期間がある場合

      • イ.保険金(給付金)額等が被保険者の年齢、契約後の年数、入院日数、対象疾病等の条件により減額又は消滅する場合

      また、保険商品の仕組みの保障内容に関する優良性と直接関係のない情報を表示し、あたかも優良であるかのごとき表示をなしている場合には、実際のものよりも著しく優良であるとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。

    • マル2保険商品の取引条件の有利性を示す際に、制限条件等を併せてわかりやすく示さないこと等により、保険契約者等に著しく有利との誤解を与える表示となっていないか。

      例えば、保険料の表示に関して、主たる保険契約者層とは考えられない若年層等の保険料を用例とし、その適用年齢等の条件表示を著しく小さく表示しているため、保険契約者等が見落とすような表示となっている場合には、他の年齢層等の保険契約者等についても当該保険料が適用され、実際のものよりも著しく安いとの誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。

      また、保険商品の仕組みの取引条件に関する有利性と直接関係のない情報を表示し、あたかも有利であるかのごとき表示をなしている場合には、実際のものよりも著しく有利であると誤解を与えるおそれがあることに留意する必要がある。

    • マル3保険商品・サービス等に関する表示が客観的事実に基づくものとなっているか。

      例えば、業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語、唯一性を直接に意味する用語、又は相対的な優位性があることを意味する用語を使用する場合は、その主張する内容が客観的に実証されているか。

    • マル4保険商品・サービス等に関する表示に業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語、唯一性を直接に意味する用語、又は相対的な優位性があることを意味する用語を使用する場合には、その主張する内容の根拠についても明確に表示しているか。

      例えば、「最高」「最低」「日本一」「ナンバーワン」、「当法人だけ」「業界初」「他にはない」、「ワイド」「最低水準」「割安」などの用語を使用する場合は、その用語の根拠となった調査方法、出典又は前提条件を表示する必要がある。

  • (4)適正な表示がなされるよう、コンプライアンス担当部門によるリーガルチェック等を含めた十分な審査体制が整備されているか。なお、審査については、以下の点に留意したものとなっているか。

    • マル1保険募集用の資料等について、本部で集中管理する等の方法により、表示内容に係る審査が漏れなく行われる体制となっているか。

    • マル2保険約款等、パンフレット、契約のしおり等について、それぞれの表示内容の整合性を確保するためのチェックがなされる体制となっているか。

    • マル3保険契約者等からの苦情において表示上の問題等が指摘されている場合には、その内容について分析し、問題が認められた場合には、改善のための適切な対応がとられる体制となっているか。

  • (5)保険商品の説明(比較広告等を含む)に係る改正法附則第4条の2において読み替えて準用する法第300条第1項第6号及び第7号については、以下の点に留意するものとする。

    • マル1保険契約に関する表示については、 II -3-3-2(4)に準じて取り扱うものとする。

    • マル2予想配当額の表示については、 II -3-3-2(5)に準じて取り扱うものとする。

II -3-9 事務リスク管理態勢

II -3-9-1 意義

事務リスクとは、認可特定保険業者の役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより、認可特定保険業者が損失を被るリスクをいうが、認可特定保険業者は当該リスクに係る役職員の人事管理を含む内部管理態勢を適切に整備し、業務の健全かつ適切な運営により信頼性の確保に努める必要がある。

II -3-9-2 主な着眼点

  • (1)事務リスク管理態勢

    • マル1全ての業務に事務リスクが存在していることを理解し、適切な事務リスク管理態勢が整備されているか。

    • マル2保険契約者等に係る個人情報の漏えいやプライバシーの侵害を発生させないよう、内部態勢の整備や職員あるいは保険代理店等に対する指導等の措置が講じられているか、保険の目的が存在しない契約(いわゆる架空契約)等法令や内部ルールに反する保険契約について、その発生の防止等の措置が講じられているか等、事務リスクを軽減することの重要性を認識し、事務リスク軽減のための具体的な方策を講じているか。

    • マル3事務部門は、十分に牽制機能が発揮されるよう体制が整備されているか。また、事務に係る諸規程が明確に定められているか。

  • (2)内部監査態勢

    内部監査部門は、事務リスク管理態勢を監査するため、内部監査を適切に実施しているか。

  • (3)事務所等におけるリスク管理態勢

    事務部門は、事務所等における事務管理態勢をチェックする措置を講じているか。

II -3-9-3 監督手法・対応

事務リスクの管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づき行政処分を行うものとする。

II -3-10 システムリスク管理態勢

II -3-10-1 意義

システムリスクとは、コンピュータシステムのダウン又は誤作動等のシステムの不備等に伴い、利用者や認可特定保険業者が損失を被るリスクやコンピュータが不正に使用されることにより利用者や認可特定保険業者が損失を被るリスクをいう。コンピュータのネットワーク化の拡大に伴い、重要情報に対する不正なアクセス、漏えい等のリスクが大きくなっている。システムを用いて事務を管理している認可特定保険業者にとって、システムが安全かつ安定的に稼動することは認可特定保険業者に対する信頼性を確保するための大前提であり、システムリスク管理態勢の充実強化は重要である。

II -3-10-2 主な着眼点

  • (1)システムリスクに対する認識等

    システムリスクについて十分認識し、法人として全体的なリスク管理の基本方針が策定されているか。

  • (2)システムリスク管理態勢

    システムリスク管理の基本方針が定められているか。システムリスク管理態勢の整備にあたっては、その内容について客観的な水準が判定できるものを根拠としているか。

    また、システムリスク管理態勢は、システム障害等の把握・分析、リスク管理の実施結果や技術進展等に応じて、不断に見直しを実施しているか。

  • (3)安全対策

    • マル1安全対策の基本方針が策定されているか。

    • マル2定められた方針、基準及び手順に従って安全対策を適正に管理する安全管理者が設置されているか。安全管理者は、システム、データ、ネットワークの管理体制を統括しているか。

  • (4)システム監査

    • マル1システム部門から独立した内部監査部門が定期的にシステム監査を行っているか。

    • マル2システム監査に精通した要員を確保しているか。

    • マル3監査対象はシステムリスクに関する業務全体をカバーしているか。

    • マル4システム監査の結果は適切に経営者に報告されているか。

  • (5)プログラムミスの発生防止

    認可特定保険業者におけるシステム不備により保険契約者等に対し不利益を及ぼすことを防ぐため、システム開発においては、次の点に留意して、プログラムミスの発生防止のための措置を講じているか。

    • マル1システム開発時の連携

      商品部門、事務部門及びシステム部門の間の連携が十分図られているか。

      連携にあたっては、

      • ア.関係する部門間での連携のためのルール・責任範囲が明確化されているか。

      • イ.保険料・配当金等の重要な事項に関する計算結果についてのシステム機能のチェックに、商品部門、事務部門が主体的に関与しているか。

      • ウ.関係する部門間で、必要な情報が共有されているか。

      • エ.関係する部門の責任者や担当者が明確にされているか。

      • オ.システムの開発や変更の記録が、保存期間を定めて文書等で保管されているか。

      等に留意する。

    • マル2システム開発時のチェック

      • ア.商品部門、事務部門及びシステム部門で連携して、商品や仕組みの内容に照らして取扱いの差異が生じる場合を網羅する適切かつ十分なケースを想定し、システム設計、プログラム設計及びテストを実施しているか。

      • イ.保険料・配当金等の重要な事項に関する計算結果については、特に重点的にチェックを実施しているか。また、システムの稼動に先立ち、チェックの実施状況を確認しているか。

      • ウ.各部門におけるチェックについては、具体的な内容毎に、十分な検証能力を有する者によって実施されているか。

      • エ.チェックの方法が適切に選択されているか。

    • マル3システム開発後のチェック・管理

      • ア.商品部門及び事務部門は、導入後においても、必要に応じてサンプルチェック等を実施しているか。

      • イ.システム開発の一部について実施時期を先延ばしした場合、その後のシステム開発における管理主体を明確にした上で、商品部門、事務部門及びシステム部門で連携してスケジュールを適切に管理しているか。

  • (6)外部委託管理

    システムに係る外部委託業務について、リスク管理が適切に行われているか。

  • (7)データ管理態勢

    • マル1データについて機密性等の確保のためデータ管理者を置いているか。

    • マル2データ保護、データ不正使用防止、不正プログラム防止策等について適切かつ十分な管理態勢を整備しているか。

  • (8)コンティンジェンシープラン

    • マル1コンティンジェンシープランが策定され、緊急時体制が構築されているか。

    • マル2コンティンジェンシープランの策定にあたっては、その内容について客観的な水準が判断しうるものを根拠としているか。

  • (9)障害発生時の対応

    • マル1利用者に対し、無用の混乱を生じさせないよう適切な措置を講じているか。

    • マル2障害が発生した場合、必要に応じ、認可特定保険業者において速やかに障害原因、復旧見込等の公表を行っているか。

II -3-10-3 監督手法・対応

  • (1)問題認識時

    システムリスク管理態勢について問題があると認められる場合には、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づき行政処分を行うものとする。

  • (2)障害発生時

    • マル1コンピュータシステムの障害の発生を認識次第、直ちに、その事実について当局宛て報告を求めるとともに、「障害発生等報告書」(様式集 別紙様式 III -1)にて当局宛て報告を求めるものとする。また、復旧時、原因解明時には改めてその旨報告を求めることとする。ただし、復旧原因の解明がされていない場合でも1ヵ月以内に現状について報告を求めることとする。

      (注)報告すべきシステム障害等

      • その原因の如何を問わず、認可特定保険業者が現に使用しているシステム・機器(ハードウェア、ソフトウェア共)に発生した障害であって、

      • ア.保険金等の支払いに遅延、停止等が生じているもの又はそのおそれがあるもの

      • イ.資金繰り、財務状況把握等に影響があるもの又はそのおそれがあるもの

      • ウ.その他業務上、上記に類すると考えられるもの

      • をいう。

      • ただし、一部のシステム・機器にこれらの影響が生じても他のシステム・機器が速やかに交替することで実質的にはこれらの影響が生じない場合を除く。

      • なお、障害が発生していない場合であっても、サイバー攻撃の予告がなされ、又はサイバー攻撃が検知される等により、上記のような障害が発生する可能性が高いと認められる時は、報告を要するものとする。

    • マル2必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき追加の報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第132条に基づく行政処分を行うものとする。

II -3-11 危機管理体制

II -3-11-1 意義

近年、金融機関が抱えるリスクは多様化・複雑化しており、情報化の進展等金融機関を取り巻く経営環境の変化も相俟って、通常のリスク管理だけでは対処できないような危機が発生する可能性は否定できず、危機管理の重要性が高まっている。

安全・安心や多様なリスク管理のニーズに応える役割の一翼を担う認可特定保険業者においても、危機発生時における初期対応や情報発信等の対応が極めて重要であることから、平時より危機管理体制を構築しておくことが必要である。

なお、風評リスク等に係る危機管理については、認可特定保険業者の資金繰りや社会に対して影響を与える可能性があることから、別途監督上の留意点を定めることとする。

(注)「危機」とは、例えば、(1)そのまま放置すると回復困難になりかねないほど、財務内容が悪化するような事態、(2)風評等により保険契約の解約が急増する等により、対応が困難なほど流動性に問題が生じるような事態、(3)システムトラブルや不祥事件等により信用を著しく失いかねないような事態、のほか、(4)大規模自然災害や大規模テロ等の災害・事故等により損害を被り、業務の継続的遂行が困難となるような事態等をいう。

II -3-11-2 平時における対応

  • (1)対応

    危機管理は平時における未然防止に向けた取組みが重要との認識の下、早期警戒制度等のオフサイト・モニタリングや不祥事件等届出書のヒアリングを行う中で、又は認可特定保険業者に関する苦情・情報提供等を受けた場合等において、認可特定保険業者における危機管理体制に重大な問題がないか検証することとし、特に以下の点に留意する。

  • (2)主な着眼点

    • マル1何が危機であるかを認識し、可能な限りその回避に努める(不可避なものは予防策を講じる)よう、平時より、点検を行う等未然防止に向けた取組みに努めているか。

    • マル2危機管理マニュアルを策定しているか。また、危機管理マニュアルは、自らの業務の実態やリスク管理の状況等に応じ、不断の見直しが行われているか。なお、危機管理マニュアルの策定に当たっては、客観的な水準が判定されるものを根拠として設計されていることが望ましい。

      (参考)想定される危機の事例

      • 自然災害(地震、風水害、異常気象、伝染病等)

      • 事故(大規模停電、コンピュータ事故等)

      • 風評(口コミ、インターネット、電子メール、憶測記事等)

      • 対企業犯罪(脅迫、反社会的勢力の介入、データ盗難、役職員の誘拐等)

      • 事業上のトラブル(苦情・相談対応、データ入力ミス等)

      • 人事上のトラブル(役職員の事故・犯罪、内紛、セクシャルハラスメント等)

      • 労務上のトラブル(内部告発、過労死、職業病、人材流出等)

    • マル3危機管理マニュアルには、危機発生の初期段階における的確な状況把握や客観的な状況判断を行うことの重要性や情報発信の重要性など、初期対応の重要性が盛り込まれているか。

    • マル4危機発生時における責任体制が明確化され、危機発生時の組織内及び関係者(関係行政庁を含む)への連絡体制等が整備されているか。危機発生時の体制整備は、危機のレベル・類型に応じて、組織全体を統括する対策本部の下、部門別等の事業拠点別に想定していることが望ましい。

    • マル5大規模自然災害等の危機発生時において、保険金支払業務を継続・復旧させていくべき機能と明確に位置付けた上で、日頃から、災害発生時に支払業務の継続・復旧が図られるような体制が整備されているか。また、保険契約者等に対して、保険金等の支払い等について便宜措置( III -1-5を参照)が図られるような体制が整備されているか。

    • マル6日頃からきめ細かな情報発信及び情報の収集に努めているか。また、危機発生時においては、危機のレベル・類型に応じて、情報発信体制・収集体制が十分なものとなっているか。

II -3-11-3 危機発生時における対応

  • (1)危機的状況の発生又はその可能性が認められる場合には、事態が沈静化するまでの間、当該認可特定保険業者における危機対応の状況(危機管理体制の整備状況、関係者への連絡状況、情報発信の状況等)が危機のレベル・類型に応じて十分なものになっているかについて、定期的にヒアリング又は現地の状況等を確認する等実態把握に努めるとともに、必要に応じて改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき報告徴求することとする。

  • (2)上記(1)の場合には、速やかに金融庁担当課室に報告する等、関係部局間における連携を密接に行うものとする。

II -3-11-4 事態の沈静化後における対応

認可特定保険業者における危機的状況が沈静化した後、危機発生時の対応状況を検証する必要があると認められる場合には、当該認可特定保険業者に対して、改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づき、事案の概要と認可特定保険業者の対応状況、発生原因分析及び再発防止に向けた取組みについて報告徴求することとする。

II -3-11-5 風評に関する危機管理態勢

  • (1)風評リスクへの対応に係る態勢が整備されているか。また、風評発生時における認可特定保険業者等の対応方法を検討しているか。なお、他の金融機関や取引先等に関する風評が発生した場合の対応方法についても、検討しておくことが望ましい。

  • (2)風評が伝達される媒体(例えば、インターネット、憶測記事等)に応じて、定期的に風評のチェックを行っているか。

  • (3)風評が保険契約の解約に結びついた場合の対応方法について、事務所等の状況把握、利用者対応、対外説明等、初動対応に関する規定を設けているか。

  • (4)上記(3)のような状況になった場合、当局担当課室、提携先等へ、速やかに連絡を行う体制になっているか。

II -3-12 障がい者等への対応

II -3-12-1 意義

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)により、事業者には、障害者に対する不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の努力義務が課せられており、認可特定保険業者及び保険募集人はこれを遵守する必要がある。

 また、認可特定保険業者及び保険募集人は、成年後見制度等の対象でなく意思表示を行う能力がありながら、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために保険取引における事務手続き等を単独で行うことが困難な者(以下、「障がい者等」という。)に対しても、視覚や聴覚に障がいのない者等と同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある。
 

II -3-12-2 主な着眼点

(1) 総論

マル1 「金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(平成28年告示第3号)の各規定に基づき、適切に対応しているか。
 
マル2 認可特定保険業者の取引に係る手続きにおいて、障がい者等の保険取引の利便性を向上させるよう努めているか。
 また、認可特定保険業者の新しい手続きの導入の場合に、必要に応じて、障がい者等に配慮した仕様を検討しているか。
 

マル3 認可特定保険業者が、障がい者等に配慮した取組みを推進するにあたっては、国及び地方自治体などにおける障がい者支援に係る施策を確認し、必要に応じて、認可特定保険業者のサービスにおいても利用するなどしているか。

マル4 障がい者等から認可特定保険業者又は保険募集人に対し、意見(相談、苦情を含む。)があった場合、それらを踏まえた取組みを行うよう努めているか。また、障がい者等からの意見を完全に実現できない場合であっても、代替策を検討するなどしているか。


 (2) 業務運営態勢等

障がい者等への対応状況を把握・検証の上、例えば、下記マル1マル6のような方策を行うなどの取組みがなされているか。

マル1 自筆が困難な障がい者等への代筆について

障がい者等のうち自筆が困難な者(以下、「自筆困難者」という。)から、口頭で保険取引の申込みがあった場合、認可特定保険業者の職員又は保険募集人(以下、II-3-12-2において「職員等」という。)が代筆したときは、例えば、複数の職員等が確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すなど、自筆困難者の保護を図ったうえで、代筆を可能とする旨の社内規則を整備し、十分な対応をしているか。
 なお、自筆困難者からの当該申込みは「口頭による意思表示」に当たると考えられるため、取引関係書類への代筆は、当該申込みに係る意思表示の範囲内に限られることに留意する必要がある。

 マル2 視覚に障がいがある者への代読について

視覚に障がいがある者から要請がある場合は、例えば、職員等が、当該者に係る取引関係書類を代読する規定を整備しているか。その際、個人情報の漏洩を防ぐとともに、複数の職員等が代読内容を確認したうえで、その確認したという事実を記録として残すこととしているか。

マル3 本人特定事項の確認について

本人確認書類として障がい者手帳が利用されている場合は、本指針「II-3-6 利用者等に関する情報管理態勢」を参照する。

マル4 情報発信について

障がい者等に配慮した取組み等の内容について、例えば、認可特定保険業者が、障がい者等の視覚・聴覚等で認識されるよう、情報発信に努めているか。

マル5 相談・苦情対応について

本指針「II-3-4 苦情処理態勢」を参照することとする。
 特に、障がい者等から、自立した日常生活及び社会生活を確保することに係る業務に関わる相談・苦情等を受けた場合、その改善に向けた検討や取組みを行うよう努めているか。

 マル6 研修等について

認可特定保険業者として、障がい者等に配慮した取組みのために整備した態勢の実効性を確保するため、顧客対応を行う全役職員及び保険募集人に対し、障がい者等に配慮した態勢について研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)により周知しているか。

II -3-12-3 監督手法・対応

日常の監督事務や、障がい者等からの苦情等を通じて把握された認可特定保険業者における障がい者等への対応に係る課題については、深度あるヒアリングを行うことにより内部管理態勢の整備状況を確認することとする。

また、認可特定保険業者の内部管理態勢の整備状況に疑義が生じた場合には、必要に応じ、報告(改正法附則第4条第1項及び第2項において読み替えて準用する法第272条の22に基づく報告を含む。)を求めて検証することとする。当該整備状況に問題が認められる場合には改善を促すこととする。

II -4 その他

II -4-1 認可特定保険業者の事務の外部委託

II -4-1-1 意義

各認可特定保険業者においては、経営の効率化の観点から、事務の外部委託が行われることが想定される。各認可特定保険業者が事務の外部委託を行う際には、委託事務の内容等に応じ、利用者保護又は経営の健全性を確保する観点から十分な検証を行う必要がある。

(注)上記における事務の外部委託とは、認可特定保険業者が、その業務を営むために必要な事務の一部又は全部を、当該認可特定保険業者以外に委託すること(保険募集につき保険代理店に委託することを除く。)をいう。

II -4-1-2 主な着眼点

  • (1)利用者保護の観点から以下の態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)が図られているか。

    • マル1委託契約によっても当該認可特定保険業者と利用者との間の権利義務関係に変更がなく、利用者に対しては、当該認可特定保険業者自身が事務を行ったのと同様の権利が確保されていることが明らかか。

    • マル2委託事務に関して契約どおりサービスの提供が受けられないときに、認可特定保険業者において利用者利便に支障が生じることを未然に防止するための態勢整備が行われているか。

    • マル3損害調査を委託する場合に、外部委託先において、利用者保護、利用者利便の視点に立った適切な損害調査が行われるような態勢が整備されているか。

      特に、損害調査に際して、関係当事者及び第三者の名誉、信用、プライバシー等の権利が不当に損なわれることのないような態勢が整備されているか。

    • マル4委託先における目的外使用の禁止も含めて利用者情報管理が整備されており、委託先に守秘義務が課せられているか。

    • マル5利用者等に関する情報の取扱いの委託については、 II -3-6を参照のこと。

    • マル6クレーム等について利用者から認可特定保険業者への直接の連絡体制を設ける等適切な苦情相談態勢が整備されているか。

  • (2)認可特定保険業者は、以下に示す点等、その経営の健全性の確保の観点から総合的な検証を行い、必要な態勢整備(委託契約等において外部委託先に対して態勢整備を求めることを含む。)を図っているか。

    • マル1リスク管理

      認可特定保険業者は、当該委託契約に沿ってサービスの提供を受けなかった場合の認可特定保険業者の業務への影響等外部委託に係るリスクを総合的に検証し、リスクが顕在化した場合の対応策等を検討しているか。

    • マル2委託先の選定

      認可特定保険業者の経営の合理性の観点からみて十分なレベルのサービスの提供を行いうるか、契約に沿ったサービス提供や損害等負担が確保できる財務・経営内容か、認可特定保険業者のレピュテーション等の観点から問題ないか等の観点から、委託先の選定を行っているか。

    • マル3契約内容

      契約内容は、委託事務の内容等に応じ、例えば、以下の項目について明確に示されるなど十分な内容となっているか。

      • ア.提供されるサービスの内容及びレベル並びに解約等の手続き。

      • イ.委託契約に沿ってサービスが提供されない場合における委託先の責務。委託に関連して発生するおそれのある損害の負担の関係(必要に応じて担保提供等の損害負担の履行確保等の対応を含む。)。

      • ウ.認可特定保険業者が、当該委託事務及びそれに関する委託先の経営状況に関して委託先より受ける報告の内容。

      • エ.金融当局の認可特定保険業者に対する検査・監督上の要請に沿って対応を行う際の取り決め。

    • マル4認可特定保険業者に課せられた法令上の義務等

      当該委託事務を認可特定保険業者自身が行った場合に課せられる法令上の義務等の履行に支障が生じる外部委託となっていないか。

    • マル5認可特定保険業者側の管理態勢

      委託事務に関する管理者の設置、モニタリング、検証態勢(委託契約において、認可特定保険業者が委託先に対して事務処理の適切性に係る検証を行うことができる旨の規定を盛り込む等の対応を含む。)等の社内管理態勢が整備されているか。

    • マル6情報提供

      委託事務の履行状況等に関し委託先から認可特定保険業者への定期的なレポートに加え、必要に応じ適切な情報が迅速に得られる態勢となっているか。

    • マル7監査

      認可特定保険業者において、外部委託事務についても監査の対象となっているか。

    • マル8緊急時等の対応

      委託契約に沿ったサービスの提供が行われない場合にも、認可特定保険業者の業務に大きな支障が生じないよう対応が検討されているか。また、利用者に対して委託先に代わりサービス提供が可能な態勢等が整備されているか。

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