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貸出条件緩和債権関係Q&A
○各論
【総合採算】
(答)
1. 「担保・保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保」されている場合とは、担保物件の価値や保証者の信用力等によって当該貸出金の信用リスク等が減少し、減少後の信用リスク等に見合ったリターンが確保されている場合をいう。
2. なお、具体的な担保物件の価値や保証者の信用力、活動中の先の信用リスク等、それに見合ったリターンの算定、判断の方法は、各金融機関において、業務の健全かつ適切な運営を確保するための基礎的な事項として、それぞれ開発・研鑚すべきものと考えられる。
(注) 例えば、LGDを非保全率で代替している金融機関において、ある債権の保全率が基準金利に反映されている平均的な保全率を大幅に上回っているとすると、当該保全率の差(非保全率の差)に当該区分の倒産確率を掛けた値を、当該債権の貸出金利に上乗せして基準金利と比較するなどの方法により、「基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか否か」を判断することが考えられる。
(答)
条件緩和後の貸出金の適用金利が基準金利を上回っていても、例えば当該貸出金に係る担保・保証が、基準金利算定における当該債務者の属する区分の平均的な担保・保証よりも少ないことなどから、当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案した結果、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと認められる場合には、貸出条件緩和債権に該当することとなる。
(注) ある債務者に対して複数の貸出金を有する場合で、債務者に対する取引の総合的な採算が基準金利を下回っている場合に開示対象となるのは、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと認められる個々の貸出金であり、貸出金にかかる総合的な採算が基準金利を上回っている債権までもが開示対象となるわけではないことに留意が必要である。
(答)
「取引の総合的な採算」に該当する範囲は、「金融機関と当該貸出金の債務者企業との取引」であり、基本的には債務者企業の範囲を拡大すべきではないと考えるが、個々のケースに当たっては、債務者の実態を勘案し判断することとなる。
(答)
1. 総合的な採算に勘案すべき要素としては、当該債務者から貸出期間にわたって継続的に見込める収益、或いは一時的であっても合理的な計算に基づき貸出期間全体にわたって配分可能である収益であり、間接費用を含む費用を控除した後の利益で勘案するものである。将来の収益については、貸出期間にわたってその収入が確実に得られることが合理的に説明可能である場合のみ、勘案することができる。
2. その他の要素としては、信託銀行等における証券代行手数料、年金受託手数料、不動産仲介手数料などの役務取引等収益が、「当該債務者に対する取引の総合的な採算」に勘案すべき対象となる。
(答)
例えば他の金融機関との競合上、現在の貸出金利水準が当該債務者の信用リスク等に比べ低く設定されている場合等が考えられる。
(答)
1. 根担保や根保証は、一定の範囲に属する不特定の債権を保全するものであり、保全する債権が確定するまでは、個別の債権のみを保全するものではないことから、総合的な採算を勘案するにあたって、根担保や根保証による信用リスク等の増減については、被担保等債権全体に均等に勘案される必要がある。
2. 但し、既に他の手段(特定担保や特定債務保証等)で信用リスク削減効果が勘案されている債権部分を除いて均等に勘案することを妨げるものではない。
(答)
1. 適用金利が、当該債権が属する区分における基準金利を下回るとしても、保証による信用リスク等の低下を含む取引の総合的な採算を勘案し、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されている場合には、貸出条件緩和債権には該当しないこととなる。
2. 特に、担保(優良担保、一般担保を問わない)や信用保証協会保証などの保証(優良保証、一般保証を問わない)等により100%保全されている貸出金は信用リスク等が極めて低いと考えられ、当該貸出金に係る調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)を確保していれば、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると判断して差し支えないものと考えられる。
【経営支援先に対する債権】
(答)
1. 「経営支援先に対する債権」については、運用上「必要となる支援の決定を行う方針」を固めているか否かの形式的な要件のみにより判定していたわけではなく、追加的支援の蓋然性について検証することとされてきており、当該記述 は、実際の運用に合わせ、規定したものである。
2. 経営再建計画が策定された債務者については、当該計画に基づき金融支援が開始された債務者について、債権放棄などを行い、今後はこれを行わないことが見込まれる状態にあるのが通常と考えられるが、そうした状態であっても、「計画には織り込んでいないが、将来的に、再建計画の管理を行う中で、追加の支援を含む計画の見直しが必要となる可能性が高い」場合があり、そうした場合における当該計画に基づく債権は、貸出条件緩和債権に該当することとなる。
(答)
1. 債務者に対して債権放棄やDESなどを実施し、追加的支援の蓋然性が高い場合には、「経営支援先に対する債権」に該当し、債務者単位で貸出金全体を開示することとなる。
2. 一方、債権放棄やDESなどを実施したが、追加的支援の蓋然性が高いと認められない場合には、当該債務者に係る債権は、「経営支援先に対する債権」に該当しないが、その場合であっても、個々の貸出金について、「一部債権放棄を実施した債権」等、他の貸出条件緩和債権の定義に該当する場合には開示する必要がある。
【一部債権放棄を実施した債権】
(答)
1. 「一部債権放棄を実施した債権」は、「元本の一部又は利息債権の放棄を行った貸出金の残債」と定義されており、債権放棄額の算出方法の如何に関わらず、債権放棄後の残債を債権単位で開示することで差し支えない。
2. なお、債権放棄に際し、開示を逃れるために意図的に債権を分割している場合には、本来開示すべき債権が開示されないこととなるため、分割をする前の当該貸出金の残債を開示する必要がある旨、規定されているところ。
【卒業基準】
(答)
一旦、貸出条件緩和債権から卒業した場合には、再度、債務者の経営再建・支援を図ることを目的に、債務者に有利な取決めを行わなければ、貸出条件緩和債権には該当しない。
ただし、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されていることによって、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断している場合に、その判断の前提となる計画について、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の要件を欠くこととなり、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、再度、貸出条件緩和債権に該当することに留意する必要がある。
(答)
そのような理解で差し支えない。
(答)
「当該債務者の経営状況」の「改善」は、各金融機関が、その業務の基本要素として、具体的事案に沿って個別に判断すべき事柄であるが、例えば、キャッシュフローの相当程度の改善、期間損益の黒字化、債務超過の解消等があれば、「改善」と判断できると考えられる。
(答)
過去に緩和した条件を復元した場合であっても、当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案した上で、信用リスク等に見合ったリターンが確保されていない場合には、貸出条件緩和債権は解除されないこととなる。