貸出条件緩和債権関係Q&A
○各論
【実現可能性の高い抜本的な経営再建計画】
(問26) 「特に、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。」とあるが、
ここでいう金融支援とは具体的にどのようなものを指すのか。
当該経営再建計画に基づく貸出金とは、当該債務者に対する貸出金のすべてが含まれると考えてよいのか。
「当該計画に基づく貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、当該計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権に該当することとなる」とあるが、この場合認定されるのは過去貸出条件緩和債権に認定していた貸出金のみが対象か。
経営再建の「終了」時点ではなく「開始」時点における当該経営再建計画に基づくすべての貸出金が貸出条件緩和債権ではないと判断してよいのか。あるいは「当該経営再建計画に基づく貸出金」というのは、当該計画開始後に新たに実行した貸出金のみを指すと解釈すべきなのか。
(答)
金融支援の内容としては債権放棄、元本返済猶予といった支援及びその組み合わせが想定される。なお、新規融資(運転資金)支援は含まない。
当該経営計画に基づく貸出金とは、経営再建計画の開始時に存在した貸出金とその後に計画に基づいて支援した貸出金が含まれる。
過去認定した貸出条件緩和債権のほかに、計画開始後債務者の支援を目的として貸出条件緩和を実施した貸出金が対象になる。一方、貸出条件緩和を行っていない貸出金は原則として対象外となる。
経営再建の「終了」時点ではなく計画に沿った金融支援の「実施」時点における当該経営再建計画に基づく貸出金はすべて貸出条件緩和債権には該当しないと考えて差し支えない(計画期間の開始時点やリストラ等の着手時点ではなく計画に沿った金融支援の実施による経営再建の開始時点であることに留意。)。
(注) なお、金融支援の実施後に経営再建計画を策定した場合には、計画期間の開始時点をもって金融支援の実施時点とみなして差し支えない(経営再建計画を踏まえた追加的な金融支援の実施を求めるものではない)。
(答)
1. 貸し手の金融機関と借り手の企業間で再建計画を策定し事業再生を進めていく場合、当該企業に対する債権が貸出条件緩和債権(要管理債権)から上方遷移するために再建計画が満たすべき基準としては、「実現可能性の高い」及び「抜本的な」という大別して2つの要件を満たすことが必要である旨規定している。
2. このうち、「実現可能性の高い」という要件として、3つの要素を掲げているが、それぞれの趣旨は、以下のとおり。
(1)「一 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。」
経営再建計画には、メイン行、非メイン行を含め多数の関係者が関与しており、これら関係者の同意が得られていることを確実にチェックする必要がある。
具体的には、「計画の実現に必要な関係者との同意」とは、経営再建計画の計画に沿った実行が妨げられないよう、予め契約等により計画に協力する(又は反対をしない)旨の意思を確認しておく必要があるすべての関係者の計画に協力する意思を指す。また、こうした「同意」の性格上、当該意思表示は、書面等によって明確に確認できることが必要である。
(2)「二 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。」
規模の大きな企業の再生については、資産売却等のリストラが逐次実施され、それに応じて債権放棄等の金融支援が行われる内容の計画となることもあるが、そうしたすべての金融支援が計画策定時に織り込まれている必要がある。
(3)「三 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること。」
計画における売上高等の想定は、当然のことながら、当該企業の事業価値や事業環境に照らして十分現実的なものである必要がある。
(注) 「三」においては、再建計画の実現性の検証に当たって、「売上(高)」=「事業の継続性と収益性の見通し」と「利益」=「キャッシュフローによる債務償還能力」を重要視しており、主な検証ポイントとして例示している。
(答)
1. 貸し手の金融機関と借り手の企業間で再建計画を策定し事業再生を進めていく場合、当該企業に対する債権が貸出条件緩和債権(要管理債権)から上方遷移するために再建計画が満たすべき基準としては、「実現可能性の高い」及び「抜本的な」という大別して2つの要件を満たすことが必要である旨規定している。
2. このうち、「抜本的な」という要件の趣旨は、以下のとおり。
(1)「概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先となることをいう」
再建計画の内容は短期間に徹底した経営改善を進めるものであることが必要であり、
i )期間については、「私的整理に関するガイドライン」や旧産業再生機構の「支援基準」において3年が目処とされていること
ii )徹底した経営改善の結果、3年後に到達すべき状態については、
- 「私的整理に関するガイドライン」においては「経常黒字化・実質債務超過解消」が求められていること
- 機構の「支援基準」においては、これらに加え、「有利子負債のキャッシュフローに対する比率が10倍以内となること」、「新たなスポンサーの関与等によりリファイナンスが可能と見込まれること」等が求められていること
を踏まえ、抜本的と認め得る再建計画の内容は、対象債務者が「3年後」に「正常先」となるようなものでなければならないと考えられる。
(2)「なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」を参照のこと。」
中小企業においては、大企業と比較してリストラの余地も小さく黒字化や債務超過解消までに時間がかかることが多い。そこで、
i )監督指針が「債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長」を認めていること、
ii )「私的整理に関するガイドライン」において、「中小企業においては合理的な理由があれば、柔軟な活用もあり得る」としており、中小企業の再建計画の策定を実務的にサポートする中小企業再生支援協議会においても、これを踏まえ、債務超過の解消年数は5年以内としていること、
iii )検査マニュアルでは概ね5年以内(5~10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む)に正常先となる経営改善計画が策定されていれば破綻懸念先から要注意先以上へのランクアップを認めていること
等を勘案し、中小企業に限り、検査マニュアルを参照して、卒業基準(要管理債権からのランクアップ基準)を「計画期間が概ね5年以内(5~10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む)で、計画終了後正常先となる経営改善計画が策定されていること」に緩和することとしている(※)。
(※)金融検査マニュアルにおける「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」を、監督指針における「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」と同義とみなして、差し支えない。
(※)合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画については、「金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能となる場合」は計画終了時点における債務者区分が要注意先でも差し支えない。
(答)
平成20年11月7日の改正は、中小企業の資金繰り支援のための臨時的・時限的な措置ではなく、大企業と比べてリストラの余地も小さく、経営改善に時間がかかることが多いという中小企業の特性を踏まえた恒久的な措置である。
(答)
1. 本規定の趣旨は、あくまで債務者が中小企業である場合に、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」の参照を認めるものである。
2. ただし、「債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない」とあるとおり、大・中堅企業であっても、その規模又は事業の特質を踏まえた計画期間の合理的な延長は排除されるものではない。
(答)
1. (前段について)平成20年11月7日の改正により、経営再建計画の期間中において基準金利と同等の利回りの確保を求める要件は課されないこととなる。当該改正は、大企業等についても適用されるものである。
2. (後段について)平成20年11月7日以前に貸出条件緩和債権となっていた債権についても、平成20年11月7日以降においては、ご指摘のとおり、当該要件は課されないこととなる。
(答)
1. 「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」が策定されているかどうかは、自己査定の都度、その時点での材料を基に判断を行うことになる。したがって、条件変更を行った時点で経営再建計画が策定されていない、あるいは条件変更を行った時点の経営再建計画が「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の要件を満たしていない場合であっても、自己査定の時点で「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の要件を満たす計画が策定されていれば、卒業基準を満たすことになる。
2. なお、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の要件のうち、計画期間については、計画が策定されてから終了するまでの期間ではなく、自己査定を行った時点から計画が終了するまでの期間で判断する。
(答)
1. 「私的整理に関するガイドライン」に基づき再建を行うに当たって、再建計画終了時点で、債務者区分は正常先となることを想定している場合(Q37参照)には、「私的整理に関するガイドライン」に基づく再建計画は、本項の「抜本的な」の条件に該当するものとして差し支えないと考える。
2. また、仮に、(注2)に該当しない場合であっても、計画が順調に進捗するなどの結果、(注4)の前段の記載に該当するかどうかを検証することとなる。
(答)
1. 中小企業再生支援協議会が策定支援した再生計画については、「当該計画が(注1)及び(注2)の要件を満たしていると認められる場合に限り、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」であると判断して差し支えない。」旨規定されている。
2. 当該計画が(注1)及び(注2)を満たしている以上、中小企業再生支援協議会の策定支援の有無に関わらず、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」と認められるところ、同協議会の、中小企業の再生支援を行う公的機関としての役割の重要性に鑑み、確認的に中小企業再生支援協議会について、記述したところである。
(答)
そのような理解で差し支えない。
「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」によって貸出条件緩和債権に該当しないこととなった債権については、その後要件を満たさなくなった場合に、約定条件の変更を経なくとも再び貸出条件緩和債権に該当することとなる。
なお、当該規定は、債務者に係る経営再建計画が当初の実現可能性、抜本性を満たさなくなった場合には、直ちに当該債務者の貸出金について厳格な資産判定をすべきとの理由から規定されているものであることに留意が必要である。
【その他】
(答)
他行が保有していた貸出条件緩和債権を適正な価額(購入者利回り等を勘案し、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると認められるような価額設定の場合等、債権の取得価額が債務者の信用リスクを反映して債権金額より低くなっている場合)で購入した場合には、取得後、新たな条件緩和措置を採っていない限り、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えないと考える。
(答)
1. コベナンツの変更・猶予そのものは、貸出金の金利や返済期間の変更等の貸出条件の緩和を行うものではなく、債務者に対する取引の総合的な採算には何ら影響を与えるものではない。従って、コベナンツの変更・猶予のみをもって、「貸出条件緩和債権」に該当すると判断するには及ばない。
2. ただし、債務者の経営が著しく悪化しており、金利減免や元本返済猶予等をコベナンツの変更・猶予と併せて行ったことにより、取引の総合的な採算に影響が及んでいる場合には、貸出条件緩和債権に該当するか否かを検証しなければならないことに留意が必要である。
(答)
1. 日本政策投資銀行と協働して既存債務の条件緩和(実質的に既存債務の条件緩和として行われる更新融資を含む)を行う場合(更新融資に対して日本政策投資銀行が保証を付す場合を含む)であっても、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されているときには、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。
2. また、改正産活法の認定企業に対して、日本政策投資銀行による出資と協調して既存債務の条件緩和(実質的に既存債務の条件緩和として行われる更新融資を含む)を行う場合も、同法に基づく認定計画が、監督指針における経営再建計画の要件を満たしているときには、当該認定計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。