1 基本的考え方

1-1 参入に関する基本的考え方

平成16年12月の信託業法の改正により、受託可能財産の制限が撤廃されるとともに、信託業の担い手が拡大され、金融機関以外の者による信託業への参入が可能となったところである。

信託業法(平成16年法律第154号。以下「法」という。)では、運用型信託会社は免許制、管理型信託会社は登録制とされ、免許の審査基準、登録の拒否事由が規定されているところであるが、新たな信託業の担い手の参入手続きをより円滑なものとするため、本監督指針においては、まず、免許及び登録の審査に当たって留意すべき事項を具体的に規定することとした。円滑な参入手続きは、信託業への新規参入の促進、ひいては、資産の運用手段や企業の資金調達手段の多様化を通じた金融の円滑化にも資するものと考えられる。

また、平成18年6月の証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)の中で信託業法の改正が行われた。本改正では、市場リスクにより元本について損失が生じるおそれがある信託契約を「特定信託契約」として、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)の行為規制が準用されることとなったことから、特定信託契約に係る留意事項を新たに追加することとした。

さらに、平成18年12月の信託法(平成18年法律第108号)の成立に伴い、新しい信託類型として、信託法第3条第3号に掲げる方法によってする信託(以下「自己信託」という。)が認められた。信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第109号。以下「信託法整備法」という。)の中で信託業法の改正も行われ、自己信託については、当該自己信託の受益権を多数の者が取得することができる場合、登録制とされたことから、登録の審査にあたって留意すべき事項を新たに追加することとした。

1-2 金融検査・監督に当たっての基本的考え方

  • (1)信託制度が活用されるためには、信託会社が法令等を遵守した健全な業務運営を行うことにより、利用者が安心して信託を利用できることが不可欠である。

    参入後の信託会社の検査・監督に当たっては、信託の委託者及び受益者の保護を図る観点から、継続的な情報収集等により、信託業務を健全かつ適切に遂行する上で問題となる事象を早期に発見するとともに、必要に応じて行政処分等の監督上の措置を適時適切に行うことが重要である。本監督指針では、業務運営の健全性を確保するため、信託会社に対して法第42条に基づく報告徴求や法第43条に基づく業務改善命令を行う場合の着眼点を記載するとともに、法第44条第1項各号又は法第45条第1項各号に該当して業務停止命令及び免許・登録の取消しを行う際の留意事項について記載することとした。

  • (2)また、運用型信託会社については免許制であることから、免許の審査に当たっては、業務の執行方法が社内規則等により定められているか、業務運営体制、業務管理体制が整備されているかについても審査することとなるが、管理型信託会社については登録制であることから、これらを登録の審査項目とはしていない。しかしながら、管理型信託会社においても、その業務を適切に遂行する上で、これらの体制整備が必要なことは当然であり、管理型信託会社の検査・監督に当たっては、これらの体制整備の状況についても留意する必要がある。

  • (3)さらに、信託の受益権を多数の者が取得することができる自己信託については登録制であり、登録を受けた者が他に営む業務(兼業業務)についても、金融監督当局の検査・監督対象となることに留意する必要がある。

  • (4)自己信託の登録にあたっては、受益者保護の観点から、以下の観点に留意する必要がある。

    • マル1受託者(委託者)の裁量により信託財産を運用することが可能な当該自己信託では、運用型信託会社に準じた体制整備が必要である。

    • マル2信託財産につき保存行為又は財産の性質を変えない範囲の利用行為若しくは改良行為のみが行われる当該自己信託では、管理型信託会社に準じた体制が必要である。

  • (5)信託契約代理店の検査・監督に当たっては、信託契約代理店への検査・監督の重要性もさることながら、信託業法施行規則(平成16年内閣府令第107号。以下「規則」という。)第40条第3項の規定に鑑み、所属信託会社及び所属信託兼営金融機関(以下「所属信託会社等」という。)に対する検査・監督に重点を置き、まずは所属信託会社等への検査・監督を通じて、信託契約代理店が営む信託契約代理業に係る業務の健全かつ適切な運営が確保されるよう検査・監督を行う必要がある。

1-3 本監督指針の位置付け

本監督指針は、法第2条に規定する信託会社、外国信託会社、信託契約代理店、法第50条の2第1項の登録を受けた者、法第51条第1項の信託の受託者(以下「特定信託業者」という。)及び法第52条第1項の登録を受けた同項に規定する承認事業者(以下「承認事業者」という。)並びに金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和18年法律第43号。以下「兼営法」という。)第1条第1項の認可を受けた金融機関(以下「信託兼営金融機関」という。)(以下「信託会社等」という。)の監督事務に関し、その基本的考え方、免許・登録審査に際しての留意事項、業務運営の状況に関して報告・改善を求める場合の留意事項等を総合的にまとめたものである。

金融庁は、検査・監督に関する方針として、本監督指針のほかに、分野別の「考え方と進め方」や各種原則(プリンシプル)、年度単位の方針、業界団体等への要請等の様々な文書を示しているが、検査・監督を行うに当たっては、各文書の趣旨・目的を踏まえた用い方をするとともに、信託会社等に対し当該趣旨を丁寧に説明することとする。

1-4 財務局との適切な連携の確保

1-4-1 金融庁・各財務局間の連携

監督事務は効率的・効果的に行われる必要があることから、金融庁、各財務局間において適切に連携を図り、信託会社等に関する情報等を共有していくことが重要である。

特に、信託契約代理店と所属信託会社等の監督事務を効率的・効果的に行うには、当該信託契約代理店及び当該所属信託会社等を監督する部局間の密接な連携及び情報・問題意識の共有が重要である。

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