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- 信託会社等に関する総合的な監督指針(13 企業価値担保権信託会社)
13 企業価値担保権信託会社
13-1 企業価値担保権信託会社の監督事務の取扱い
13-1-1 行政報告
(1) 財務局長は、各四半期末現在における企業価値担保権専業信託会社の状況について、別紙様式26により各四半期末の翌月20日までに監督局長へ報告するものとする。
(2) 財務局長は、次に掲げる委任事項について行政処理を行ったときは、その結果を遅滞なく監督局長に報告するものとする。
推進法第33条第2項及び第38条の規定による届出の受理
推進法第39条第2項の規定による兼業の承認
推進法第39条第4項の規定による兼業業務の業務方法書の変更の承認
推進法第41条及び企業価値担保権に関する信託業務に関する内閣府令(以下「企業価値担保権信託府令」という。)第12条の規定による報告の受理
推進法第44条第1項(第1号に係る部分に限る。)及び第4項並びに企業価値担保権信託府令第13条第1項第3号の規定による届出の受理
推進法第45条第1項(同法第54条第3項において準用する場合を含む。)の規定による報告及び資料の提出の命令
推進法第46条の規定による業務改善命令
推進法第54条第2項の規定による意見の陳述
13-1-2 監督体制
企業価値担保権信託会社である銀行等の監督については、推進法が銀行等へのみなし免許制に立脚している趣旨に鑑み、原則として、銀行法等の各業法に基づく監督を担当する者が併せて実施するものとする。なお、やむを得ず担当を分ける場合においては、十分な連携のもとに事務を実施するものとする。
13-2 免許申請書の審査に際しての留意事項
申請者より、推進法第34条に基づく免許の申請があった場合には、企業価値担保権に関する信託業務が創設された趣旨やその営む業務の内容等を踏まえつつ、以下の点に留意するものとする。
平時における担保権者の権限行使や債務不履行発生時の担保権実行等は、基本的には事業性に着目した融資を担う与信者が最も適切に判断できると考えられることから、当該受託者に求められる信託事務は、現実的には、受益者(与信者)の意思を確認するなど、ある程度定型的に行動すれば足りるものが多いと考えられる。また、もう一方の受益者(一般債権者等)のために、事業成長担保権の実行手続において、その取り分を確保し、給付するという一連の事務についても、ある程度定型的なものとなることが考えられる。
13-2-1 免許申請書及び添付書類の受理に当たっての留意事項
(1) 免許申請書に記載する営業所とは、企業価値担保権に関する信託業務の全部又は一部を営むために開設する一定の施設を指し、駐在員事務所、連絡事務所その他営業以外の用に供する施設は除くものとする。
(2) 官公署が証明する書類については、申請の日前3ヶ月以内に作成されたものを提出させるものとする。
(3) 推進法第34条第2項第4号の「収支の見込みを記載した書類」とは、具体的には、業務の開始を予定する日の属する事業年度及び当該事業年度の翌事業年度から起算して3事業年度における別紙様式10により作成した企業価値担保権信託会社単体ベース及び子会社等(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和五十一年大蔵省令第二十八号)第2条第3号に規定する子会社及び同条第7号に規定する関連会社をいう。)を含めた連結ベースの業務の収支見込み並びにその根拠を記載した書類とする。
(4) 企業価値担保権信託府令第6条第2項第2号の住民票の抄本には、次の項目が記載されているものを提出させるものとする。
住所
氏名
生年月日
本籍(5) 国内に居住しない外国人が提出した本国の住民票に相当する書面の写し又はこれに準ずる書面は、企業価値担保権信託府令第6条第2項第2号の「これに代わる書面」に該当する。
(6) 企業価値担保権信託府令第6条第2項第8号に掲げる「企業価値担保権に関する信託業務を的確に遂行することができる知識又は経験を有する者の確保の状況並びに当該者の配置の状況を記載した書面」には、以下の事項を記載するものとする。
企業価値担保権に関する信託業務を的確に遂行することができる知識を有する者並びに当該知識及び信託関係法令に関する知識を有する者の知識を習得した方法並びに当該者の配置予定先
(注)「企業価値担保権に関する信託業務を的確に遂行することができる知識」とは、企業価値担保権に関する信託業務を営む上で必要となる信託業務全般の基礎的な知識のことをいい、例えば、信託の仕組み、信託法、信託業法、推進法のほか、個人情報の保護に関する法律など企業価値担保権に関する信託業務を行う上で必要となる関係法令や企業価値担保権に関する信託業務(他の担保権信託その他の信託業務及び他の担保権信託業務に類似する業務を含む。)の実務についての基礎知識が考えられる。もっとも、企業価値担保権に関する信託業務の内容は、次のような簡素なものであるため、当該知識を有しているか審査するに当たっても、これらの点に留意する必要がある。
・信託財産(企業価値担保権)につき保存行為又は財産の性質を変えない範囲内の利用行為若しくは改良行為のみが行われるものであること
・信託業務は、推進法の定め(特定被担保債権者の指図等)又は企業価値担保権信託契約の別段の定めに基づき行われることが想定されていること(推進法第28条第2項、第61条等参照)
なお、「信託関係法令に関する知識」とは、当該知識を習得した者が主に法令等遵守部門に配置されることを前提とした信託関係法令についての知識のことをいうが、企業価値担保権に関する信託業務の場合、その業務の内容は、上記のとおり簡素なものであるため、例えば、信託法、信託業法その他関係法令(民法、刑法等の基本法の関連部分を含む。)について、必要な場合に、(過去の重要判例等も含め)理解するために求められる基礎的な知識で足りるものと考えられる。
企業価値担保権に関する信託業務(他の担保権信託その他の信託業務及び他の担保権信託業務に類似する業務を含む。)に携った経験を有する者の経歴及び配置予定先
(注)「他の担保権信託業務に類似する業務」とは、例えば、担保権の管理及び処分や預金若しくは貯金又は定期積金の受入れに関する業務、保険料の収受に関する業務などが考えられる。(7) 企業価値担保権信託府令第6条第2項第9号に掲げる「その他法第35条の規定による審査をするため参考となるべき事項を記載した書面」とは、具体的には以下のとおり取り扱うものとする。
信託財産の管理又は処分の方法、信託財産の分別管理の方法及び企業価値担保権の信託業務の実施体制(委託者に対する契約内容の説明の実施体制を含む。)を記載した書面
次に掲げる事項に関する業務の執行方法を定めた社内規則(業務マニュアルその他これに準ずるものを含む。以下同じ。)
イ.信託財産の分別管理
ロ.信託契約締結の勧誘
ハ.信託契約の内容の明確化
ニ.帳簿書類の作成及び保存並びに閲覧
ホ.企業価値担保権信託府令第11条において準用する規則第40条第2項第1号及び第2号に掲げる業務の運営(当該業務に関する社内における責任体制を明確化する規定を含むものに限る。)
企業価値担保権に関する信託業務の一部を第三者に委託する場合には、委託先の業務遂行能力を継続的に確認するための体制(委託先の業務遂行能力に問題がある場合における対応策を含む。)を明らかにした書面
その他審査の参考となる書類
13-2-2 人的構成に照らした業務遂行能力の審査
申請者が推進法第35条第1項第3号及び企業価値担保権信託府令第7条第2号に掲げる業務遂行能力等に関する基準を満たしているか否かについては、13-2-1(7)の書面等の記載内容に照らして、以下により判断することとする。なお、これらはあくまでも例示であり、その行うべき体制整備等は申請者が行おうとする企業価値担保権に関する信託業務の規模、特性により異なることに留意し、申請者が以下の基準を満たしていない場合には、満たす必要がない合理的理由について聴取することとする。
(1)顧客保護の観点からの信託業務の執行方法の審査
信託財産の分別管理の執行方法
信託財産の分別管理に関する社内規則に、分別管理の執行方法が具体的に定められており、信託財産が自己の固有財産及び他の信託財産と明確に区分され、かつ、信託財産に係る受益者を判別できることとしているか。また、その遵守状況について適切に検証することとしているか。なお、信託財産のうち不特定被担保債権留保額の金銭については、不特定被担保債権者を一の受益者とみなして、他の受益者と判別できることで足りる。
信託契約の締結の勧誘及び信託契約の内容の明確化の執行方法
顧客への勧誘・説明に関する社内規則に、顧客への勧誘、企業価値担保権信託契約の内容の明確化及び説明並びに企業価値担保権信託契約締結時の書面交付の方法が具体的に定められており、法令等を遵守した適切な信託の引受けを行うこととしているか。特に、推進法第40条第1項において準用する法第24条第2項に規定する委託者の知識、経験及び財産の状況に照らした適切な信託の引受けを行うため、企業価値担保権に関する顧客の知識等を把握し、これに照らした勧誘、説明、引受けを行うための具体的な方法が記載されているか。また、顧客の知識等の把握の状況及び信託の引受けの際の法令等の遵守状況について適切に検証することとしているか。
帳簿書類の作成及び保存並びに閲覧の方法
13-2-1(7)
ニの帳簿書類の作成及び保存並びに閲覧に関する社内規則に、信託法第37条第1項に規定する帳簿等及び同条第2項に規定する貸借対照表、損益計算書等の作成及び保存並びに閲覧の方法が具体的に記載されているか。
(注)実務上、担保権が信託財産である場合においては、基本的に備忘価額(1円)を貸借対照表に計上することで足りることに留意する。(2)経営体制等に照らした業務遂行能力の審査
経営体制(役員又は従業員の確保状況)
イ.企業価値担保権に関する信託業務の本部機能を有する部門に、企業価値担保権に関する信託業務を的確に遂行することができる知識を有する者を配置することとなっているか。うち少なくとも1名は、企業価値担保権に関する信託業務(他の担保権信託その他の信託業務及び他の担保権信託業務に類似する業務(13-2-1(6)注参照)を含む。)に3年以上携った経験を有する者であるか。
(注)「企業価値担保権に関する信託業務の本部機能を有する部門」は、他の部門(内部管理に関する業務を行う部門を除く。)から独立した体制であることは要しない。
ロ.内部監査部門に、企業価値担保権に関する信託業務に関する知識を有する者を配置することとなっているか。
ハ.法令等遵守の管理部門に、企業価値担保権に関する信託業務を的確に遂行することができる知識及び信託関係法令に関する知識を有する者を配置することとなっているか。
ニ.企業価値担保権に関する信託業務に係る営業の担当者は、当該信託業務に関する知識を有する者であるか。
ホ.企業価値担保権に関する信託業務を担当する役員が、その経歴及び能力等に照らして、当該信託業務を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有しているか。
業務運営体制
イ.営業統括、信託財産の管理(企業価値担保権の実行手続において受けた配当の額に相当する資産の管理を含む。)、顧客管理、電算システム管理、苦情・紛争処理、社内教育・研修、企業価値担保権に関する信託業務の委託先管理、法令等遵守の管理、内部監査等を的確に行うことができる体制が整備されているか。
ロ.行おうとする企業価値担保権に関する信託業務の規模・特性に応じて、各部門に求められる役員又は従業員の能力の基準が明らかになっているか。
ハ.企業価値担保権に関する信託業務を担当する役員の担当業務並びに企業価値担保権に関する信託業務を担当する組織及びその事務分掌について、社内規則に規定する旨が定められるとともに当該社内規則が整備されているか。
ニ.法令等を遵守し、信託商品の適切な勧誘、説明及び書面交付を顧客に行えるよう営業の担当者に適切に研修等を実施できる体制が整備されているか。
ホ.信託約款等を策定・変更する際に、営業の本部機能を有する部門とは独立した部門において法令及び会計上の検討を行うなど相互牽制機能が十分に働く体制が整備されているか。
ヘ.推進法第40条第1項において準用する法第29条第2項各号に掲げる取引を行おうとする場合には、社内規則において、同条第2項柱書きに規定する自己取引等が許容される要件を満たすことを検証できる形で定められているか。
・ 当該取引を実施する部門から独立した内部監査部門による定期的かつ実効性のある検証・監査ができる体制が整備されているか。
(注)なお、企業価値担保権信託に係る営業及び受託の担当者が、貸付債権に関する業務を兼務することも差し支えない。
業務管理体制
イ.法令等遵守の管理、内部監査を行う部門は、営業統括、信託財産の管理を行う部門から独立した体制となっているか。また、内部監査部門は、企業価値担保権に関する信託業務を行う全ての部門に対して十分な牽制機能が働く独立した体制となっているか。
ロ.委託先の管理体制
企業価値担保権信託会社が企業価値担保権に関する信託業務の一部を第三者に委託する場合には、企業価値担保権信託会社は、委託先が業務遂行能力や委託に係る契約に記載された条件を満たしているかを継続的に確認できる体制を整備しているか。また、委託先の業務遂行能力に問題がある場合における対応策(業務の改善の指導、委託の解消等)を明確に定めているか。なお、企業価値担保権信託会社の委託先の業務遂行能力の確認については、委託先において以下の体制が整備されているか留意する。
a.委託される業務の内容に即した人材(管理・処分を行う資産に関する知識・経験を有する者等)が確保されているか。
b.内部管理に関する業務を適正に遂行するための体制が整備されているか。
ハ.内部管理体制の整備
a.13-2-1(7)
ホの内部管理に関する業務の運営に関する社内規則に、当該業務の具体的な運営方法及び社内における責任体制が明確に記載されているか。
b.企業価値担保権に関する信託業務に関する社内規則の内容を信託業務に携わる全役職員に周知徹底することとしているか。
(注)上記の担当部門はあくまでも例示であり、その行うべき体制整備等は、申請者が行おうとする企業価値担保権に関する信託業務の規模・特性により異なることに留意する。
13-2-3 兼業業務の審査
3-4-4に準じるものとする。
13-3 経営管理の評価に関する留意事項
3-3に準じるものとする。
13-4 監督に係る事務処理上の留意事項
13-4-1 兼業承認
3-4-4に準じるものとする。
13-4-2 信託業務の委託
3-4-5に準じるものとする。
なお、企業価値担保権に関する信託業務は、企業価値担保権を信託財産とし、これを管理し、被担保債権を回収するために担保権実行等を行うことになるが、貸付債権の弁済を受領するのと同様の行為であるため、基本的に、企業価値担保権信託会社は「信託財産の保存行為に係る業務」(推進法第40条第1項において準用する法第22条第3項第1号)又は「信託財産の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする業務」(同項第2号)のみを営むこととなる点に留意する。
13-4-3 産業競争力強化法に関する留意事項
事業再編の実施に関する指針(平成26年1月17日付財務省、経済産業省告示第1号)の企業価値担保権専業信託会社への適用に際しては、当該企業価値担保権専業信託会社が営む業務のうち企業価値担保権に関する信託業務について、以下の点に留意するものとする。
(1)「売上高」については、「信託報酬」と読み替えて適用するものとする。
(2)「当該商品又は役務の提供に係る販売費」は、例えば、経費を指す。
(3)「従業員1人当たりの付加価値額の値」は、例えば、従業員1人当たりの付加価値額(営業利益、給料、固定資産減価償却費の和)を指す。
13-5 業務運営の状況に関して報告・改善を求める場合の留意事項
企業価値担保権信託会社の業務運営の適切性、健全性に疑義が生じた場合には、必要に応じ、推進法第45条第1項に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、推進法第46条に基づく業務改善命令を行うことが必要となる。その際の着眼点については、法令及び本監督指針に規定する免許申請の際の審査基準を満たしているか否か、3-5(3-5-1、3-5-2、3-5-4、3-5-7及び3-5-9を除く。)に記載した事項のほか、以下の点にも留意するものとする。
13-5-1 業務運営状況の評価に関する留意事項
(1) 契約締結時交付書面についての留意事項
推進法第40条第1項において準用する法第26条第1項第3号の「信託の目的」については、以下の事項を記載する。
・ 企業価値担保権が委託者の総財産(将来において会社の財産に属するものを含む。)を担保目的財産とすることで、委託者の事業に必要な資金の調達等の円滑化等を図り、委託者の事業の継続及び成長発展を支えることを目的とするものであること。
・ 企業価値担保権信託会社は、受益者のために、推進法及び企業価値担保権信託契約の規定に従い、企業価値担保権の管理及び処分を行うこと。
推進法第40条第1項において準用する法第26条第1項第7号の「信託業務を委託する場合(第二十二条第三項各号に掲げる業務を委託する場合を除く。)には、委託する信託業務の内容並びにその業務の委託先の氏名又は名称及び住所又は所在地(委託先が確定していない場合は、委託先の選定に係る基準及び手続)」については、13-4-2のとおり、企業価値担保権信託会社は推進法第40条第1項において準用する法第22条第3項第1号又は第2号に掲げる業務のみを営むこととなると考えられることから、契約締結時交付書面に記載する事項は基本的に想定されない。
(注)なお、企業価値担保権信託会社は、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律における説明義務は負わない(企業価値担保権信託会社は、同法に規定する金融商品販売業者等に該当しない)。
13-5-2 忠実義務及び善管注意義務の遵守状況の評価に関する留意事項
企業価値担保権に関する信託業務については、推進法第40条第1項において法第28条第1項及び第2項の忠実義務・善管注意義務に係る規定が準用されていない。もっとも、信託法の規律は及ぶため、企業価値担保権信託会社は、同法上の忠実義務及び善管注意義務を負う(注)。
(注)企業価値担保権信託会社が、信託兼営金融機関又は信託会社若しくは外国信託会社である場合であっても、企業価値担保権に関する信託業務を営む場合には、同様であることに留意する(担保付社債に関する信託業務と同様である。)。
また、忠実義務に違反する行為として、推進法第40条第1項において準用する法第29条第1項各号に掲げる取引及び同条第2項の規定に違反する取引が該当するが、忠実義務及び善管注意義務の遵守状況の評価に当たっては、これらの行為以外にも、例えば、推進法又は企業価値担保権信託契約の定めに従うことなく、自身の裁量的判断に基づき、同一内容の受益権を有する複数の特定被担保債権者(企業価値担保権の実行手続終結の決定がなされ、かつ清算手続開始原因に該当し又は破産手続開始の決定がなされ、不特定被担保債権が特定された場合にあっては、特定被担保債権者及び不特定被担保債権者)に対して合理的な理由なく異なる取扱いをし、特定被担保債権者間(上記の場合にあっては、特定被担保債権者及び不特定被担保債権者間)の公平を損ねるような場合など、忠実義務又は善管注意義務に違反することとなる場合があることに留意する。
13-5-3 信託業務の再委託
信託業務の委託先が委託を受けた業務を再委託しようとする場合には、委託先は、推進法第40条第1項において準用する法第22条第1項第2号の要件を満たす者を再委託先に選定しているか。
また、委託先は、委託が繰り返される過程で同号の趣旨が損なわれることのないよう、再委託契約の締結に当たって、法令遵守の観点から十分な検討を行っているか。
なお、必要に応じ、信託会社に対して推進法第45条第1項に基づく報告を求め、さらに、重大な問題があるときは、信託会社に対して推進法第46条に基づく業務改善命令を発出することとする。
13-5-4 事業報告書に関する留意事項
企業価値担保権信託会社は、推進法第41条及び企業価値担保権信託府令第12条に基づき、一定期間ごとに事業報告書を作成し、金融庁長官等に提出しなければならないこととされている。
当該事業報告書において、企業価値担保権の信託の引受けの状況として、当該期間の引受け件数を記載することとされ、その報告を求めることとされている。もっとも、本報告の目的は、個社ごとの件数の把握ではなく、あくまで好事例や全体的な傾向等の実態を把握する点にある(金融機関等の経営戦略・融資方針・ビジネスモデル等に応じ、対応が異なるのは当然である)。
当局は、この情報の利用に当たり、事業者のニーズに応えた適切な利用の妨げにならないよう、金融機関による件数目的の形式的な利用等を招く行為(例えば、当局が個社に対して、件数目標の設定を求めたり、利用が進んでいないことを理由とするヒアリングを行ったり、あるいは、信託の引受けの件数を個社別に公表したりする行為)を行わないよう留意する。
13-6 行政処分を行う際の留意事項
13-6-1 行政処分(不利益処分)に関する基本的な事務の流れについて
監督部局が企業価値担保権信託会社に対して行う主要な不利益処分としては、
推進法第46条に基づく業務改善命令、
推進法第46条に基づく業務停止命令、
推進法第47条に基づく業務停止命令、
推進法第47条に基づく免許取消しがあるが、これらの発動に関する基本的な事務の流れを例示すれば、以下のとおりである。
(1) 推進法第45条第1項に基づく報告徴求
オンサイトの立入検査や、オフサイト・モニタリング(ヒアリング、不祥事件等届出など)を通じて、企業価値担保権信託会社の経営管理態勢及び業務運営態勢に問題があると認められる場合においては、推進法第45条第1項に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について、報告を求めることとする。
報告を検証した結果、さらに精査する必要があると認められる場合においては、推進法第45条第1項に基づき、追加報告を求めることとする。(2) 推進法第45条第1項に基づき報告された改善・対応策のフォローアップ
上記報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、企業価値担保権信託会社の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、任意のヒアリング等を通じて上記(1)において報告された改善・対応策のフォローアップを行うこととする。
必要があれば、推進法第45条第1項に基づき、定期的なフォローアップ報告を求める。(3) 推進法第46条に基づく業務改善命令
上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、例えば、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が認められる場合、又は、企業価値担保権信託会社の自主的な取組みでは業務改善が図られないと認められる場合などにおいては、推進法第46条に基づき、業務執行の変更その他の監督上必要な措置を命じることを検討する。
なお、単独で、又は、下記(4)若しくは(5)の行政処分と同時に、制度改革等により可能となった新規業務への進出を一定期間行わせないこととする等の措置を命ずることが検討される場合がある。(4) 推進法第46条に基づく業務停止命令
上記(3)の業務改善命令を発出する際、業務の改善に一定期間を要し、その間、当該業務改善に専念させる必要があると認められる場合においては、推進法第46条に基づき、改善期間を勘案した一定の期限を付して当該業務の停止を命じることを検討する。(5) 推進法第47条に基づく業務停止命令
上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、重犯性や故意性・悪質性が認められる等の重大な法令等の違反又は公益を害する行為などに対しては、推進法第47条に基づき、当該業務の停止を命じることを検討する。併せて、推進法第46条に基づき、法令等遵守の管理を行うための態勢の確立等を命じることを検討する。(6) 推進法第47条に基づく免許の取消し
上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、重大な法令等の違反又は公益を害する行為が多数認められる等により、今後の業務の継続が不適当と認められる場合においては、推進法第47条に基づく免許の取消しを検討する。
なお、(3)から(6)の行政処分を検討する際には、以下の
から
までに掲げる要因を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要素がないかどうかを吟味することとする。
当該行為の重大性・悪質性
イ.公益侵害の程度
企業価値担保権信託会社が、例えば、企業価値担保権の制度概要の適切な理解の確保という観点から著しく不適切な説明を行い、企業価値担保権制度全体に対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。
ロ.受益者等被害の程度
広範囲にわたって多数の受益者等が被害を受けたかどうか。個々の受益者等が受けた被害がどの程度深刻か。
ハ.行為自体の悪質性
例えば、特定被担保債権者から指図を受けているにもかかわらず、これに違反して企業価値担保権の管理及び処分をし続けるなど、企業価値担保権信託会社の行為が悪質であったか。
ニ.行為が行われた期間や反復性
当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の行為が行われたことがあるか。
ホ.故意性の有無
当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。
へ.組織性の有無
当該行為が現場の営業担当者個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。更に経営陣の関与があったのか。
ト.隠蔽の有無
問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。
チ.反社会的勢力との関与の有無
反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。
当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性
イ.代表取締役(これに準ずる者を含む。)や取締役会(これに準ずる機関を含む。)の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。
ロ.内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。
ハ.コンプライアンス部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。
ニ.業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。
軽減事由
以上の他に、行政による対応に先行して、企業価値担保権信託会社自身が自主的に受益者等保護のために所要の対応に取り組んでいる、といった軽減事由があるか。
13-6-2 行政手続法との関係等
3-6-2に準じるものとする。
13-6-3 意見交換制度
3-6-3に準じるものとする。
13-6-4 監督処分に係る公告の留意事項
3-6-4に準じるものとする。
13-6-5 信託法に基づく手続き
3-6-5に準じるものとする。
13-7 廃業等に係る留意事項
企業価値担保権信託会社から、推進法第44条第1項第1号及び企業価値担保権信託府令第13条第1項第3号の規定による破産手続開始等の申立てに係る届出並びに推進法第44条第4項の規定による公告の届出(合併、会社分割及び事業譲渡に係るものを除く。)を受理した場合には、ヒアリング、推進法第45条第1項に基づく報告徴求又は検査等を実施し、以下の点を確認するものとする。確認の結果、問題が認められた場合には業務改善命令を行うほか、免許取消事由が確認された場合には、直ちに免許取消しを行うこととする。
・ 推進法第44条第4項の規定による公告の届出(合併、会社分割及び事業譲渡に係るものを除く。)を受理した場合には、受託者の地位を辞することに関し、信託法第57条第1項の規定に基づき委託者及び受益者の同意を得ているか(また、この場合、信託業務を承継する会社を定めているか(推進法第65条参照))又は信託法第57条第2項の規定に基づき裁判所の許可を得ているか。また、合併及び破産以外の解散の場合には、解散事由が発生しているか。
(注)信託法上、信託の受託者については、
委託者及び受益者の同意がある場合(第57条第1項)、
信託行為に別段の定めがある場合(第57条第1項但書)、
やむを得ない事由があるときに裁判所の許可を得た場合(第57条第2項)にのみ辞任が認められている。
13-8 立入検査に関する留意事項
3-8に準じるものとする。

