IV .保険商品審査上の留意点等

少額短期保険業者になろうとする者及び少額短期保険業者(以下、 IV において「少額短期保険業者」という。)から法の規定に基づき、保険商品の創設又は既存商品の改定に係る届出(以下、 IV において「保険商品の届出」という。)が行われた場合の審査にあたっては、保険契約者等の保護を踏まえ、各少額短期保険業者の特性や事情等を勘案し、画一的な審査を行うことがないように配慮するとともに、各少額短期保険業者の創意工夫を活かし、保険契約者等のニーズの変化に即応した迅速な商品開発を可能とする観点も踏まえ、法第272条の4第1項第5号及び第6号に基づき審査を行うこととし、特に以下の点に留意することとする。

また、既に締結された保険契約(売り止めした商品を含む。以下、「既契約」という。)を継続保有したまま少額短期保険業者の登録を行う場合、特定保険業者から他の少額短期保険業者へ既契約の包括移転等を行う場合には、その既契約に係る保険商品についても、同様の取扱いを行うこととする。

なお、平成22年4月より保険法が施行されており、その中で保険契約者等を保護するための規定の整備等が行われたところ。保険法の規定を踏まえた保険商品審査を引き続き行っていくとともに、審査上の留意点等については、保険商品の届出に係る審査内容及び保険契約者等のニーズ等を踏まえ、より効率化、明確化及び透明性を図る観点から適時に改定を行っていくこととする。

IV -1 事業方法書の記載事項に係る審査事項

事業方法書の記載事項については、事業方法書記載項目一覧表(別紙様式 II -5)に沿って記載されているか、また、その内容について保険契約者等の保護の観点から以下の点に留意して審査することとする。

IV -1-1 被保険者又は保険の目的の範囲

法第3条第5項第1号に掲げる保険種類については、被保険利益のある者を被保険者として明確に記載しているか。

IV -1-2 保険の種類の区分

  • (1)商品名称から想起される権利義務その他の内容が、保険契約者等に誤解させるおそれのあるものとなっていないか。

  • (2)保険の種類の区分に掲げられている保険商品については、令第1条の7に規定する保険に該当していないか。

  • (3)記載された保険商品の給付事由が該当する令第1条の6の「号」をその給付事由ごとに記載し、その保険商品の引受限度額を明確にしているか。

    • (注)一の保険契約者について引き受けることのできる保険金額の上限が法第272条の13第1項及び令第38条の9第1項で定められているが、一の保険契約者について引き受ける保険の各被保険者に係る保険金額の合計額が、令第38条の9第1項で定められた「上限総保険金額」を超えることのないよう留意する必要がある。

IV -1-3 被保険者又は保険の目的の選択

  • (1)危険選択については、モラルリスクを排除する方策を適切に講じているか。

  • (2)保険契約者又は被保険者に求める告知項目は、少額短期保険業者が危険選択を行う上で必要なものに限定されているか。また、「趣味」など判断基準があいまいな用語は適当でないことに留意するものとする。

IV -1-4 保険契約の締結の手続に関する事項

  • (1)契約内容を明確にすることにより保険契約者の保護を図り、契約当事者間の権利義務関係の早期安定を確保する観点から、例えば、以下の項目について記載しているか。

    • マル1保険契約の申込みに関する事項

    • マル2引受けの可否の決定に関する事項

    • マル3保険金額及び保険料の決定に関する事項

    • マル4保険証券の発行・交付に関する事項

    • マル5申込みの承諾通知に関する事項

    • マル6保険契約の失効・復活に関する事項

    • マル7保険契約の更新に関する事項

  • (2)他人の生命の保険契約に係る被保険者の同意の確認については、「 II -3-3-4 他人の生命の保険契約について」に留意して、被保険者保護の観点から明確な措置が講じられているか。

  • (3)クーリングオフの適用に係る取扱いについて、記載しているか。

IV -1-5 保険料の収受に関する事項

契約当事者間の権利義務関係の明確化及びその早期安定化を図るため、例えば、以下の項目について記載しているか。

  • (1)保険料の払込方法に関する事項

  • (2)保険料収納時の領収書交付に関する事項

  • (3)保険料の払込猶予期間に関する事項

IV -1-6 保険金及び払い戻される保険料及びその他の返戻金の支払いに関する事項

  • (1)払い戻される保険料及びその他の返戻金の金額又は計算方法を保険契約者に明瞭に開示するための措置を明確に記載しているか。

  • (2)事業活動損害保険等の取扱い

    事業活動に伴い、事業者が被る損害をてん補する保険(規則第83条第3号イからヌまで及びワからエまでに掲げる保険、並びに自動車の管理及び運行を対象とするものを除き、人の身体に関する状態、治療及び死亡によるものを含む。)については以下の点に留意して審査する。

    • マル1従業員等に死亡又は重度の障害が発生したことに伴い事業者が死亡又は重度の障害となった者の遺族又は家族等に葬祭費用や見舞金等の支払を行なうことを損害としててん補する保険については、損害のてん補性を確保するため、事業者が支払うものとして社会通念上相当な費用の金額の範囲内のものとなっているか。

    • マル2他人の生命の保険契約と同様のモラルリスクのおそれがある場合には、「 II -3-3-4他人の生命の保険契約について」に留意して適切なモラルリスク排除のための措置を講じているか。

  • (3)約定履行費用保険の取扱い

    事業活動損害保険のうち事業者が、一定の偶然な事由が生じたときに、一定の金銭給付等の債務を履行又は免除する旨の約定を第三者との間で締結している場合において、約定の履行によって当該事業者が被る損害をてん補する保険については以下の点に留意して審査する。

    • マル1公序良俗に反する約定の履行によって被る損害をてん補するものとなっていないか。

    • マル2約定における権利・義務の所在が第三者において明らかであり、保険金の支払によって事業者に不当利得が生じるものとなっていないか。

IV -1-7 保険証券、保険契約の申込書及びこれらに添付すべき書類に記載する事項

  • (1)保険証券記載事項については、保険法の規定に照らし適正なものとなっているか。また、契約内容を簡潔明瞭に記載し、権利義務関係が明確となっている等、保険契約者等の保護上必要な項目を記載することとなっているか。

  • (2)保険契約申込書等については、契約申込内容、申込人、申込日、告知事項等が明確なものとなっているか。また、同意書等(被保険者同意等)が必要な場合には、併せて提出されることとなっているか。

IV -1-8 保険契約の特約に関する事項

特約に関する事項を事業方法書に記載しているか。また、特約に関する事項においても IV -1及び IV -2に留意して審査を行うこととする。

IV -2 普通保険約款の記載事項に係る審査事項

普通保険約款の記載事項については、保険契約者等の保護の観点から、明確かつ平易で、簡素なものとなっているか、ほか、以下の点に留意して審査することとする。

IV -2-1 保険金の支払事由等

  • (1)保障又は補償(以下、「保障等」という。)の内容が法第3条第4項から第6項に適合しているか。

  • (2)保障等の内容が保険契約者等の需要及び利便に適合しているか。

  • (3)保障等の内容が偶然性及び損害のてん補性を有しているかなど、保険性の有無に係る検討が十分行われているか。

  • (4)支払事由に比して極端に高額な保険金が支払われるものや免責事由が極端に少ないもの、あるいは実損額を上回る保険金が支払われるものなどについては、射倖性が高いものとなっていたり、モラルハザードが生じやすいものとなっていないか、検討が十分に行われているか。

  • (5)保険期間の保障等を開始する日を明確にしているか。

IV -2-2 保険契約の無効原因

保険契約が無効となる事由等が明確なものとなっているか。

IV -2-3 保険者としての保険契約に基づく義務を免れるべき事由

  • (1)免責事由が広範囲なものとなっていないか。また、免責事由該当の際、保険契約者に返還すべき金額が明確なものとなっているか。

  • (2)免責事由については、公序良俗に反するものや会社の経営に影響を及ぼすような巨大リスクの排除に係るものなど公平性、合理性の点から問題のない内容や明確な内容となっているか。

  • (3)免責金額の設定については、モラルリスク排除の観点から適切な検証を行った上で設定されているか。

IV -2-4 保険料の増額又は保険金の削減等の保険契約者への不利益条項

本条項は、異常災害の発生や伝染病の発生等により、少額短期保険業者が巨額の損失を被るなど真にやむを得ない場合に、少額短期保険業者の破綻を未然に防止するための措置である。

本条項の趣旨を踏まえ、真にやむを得ない場合の明確な判断基準を含む手続きを策定するなど、保険契約者等保護の観点から適切なものとなっているか。

IV -2-5 保険者としての義務の範囲を定める方法及び履行の時期

  • (1)支払い、請求手続等に関する事項については、保険契約者等の保護上問題がない内容となっているか。

  • (2)保険金等の支払の時期については、支払いの請求から不当に期間の長いものとなっていないか。

  • (3)災害や傷害により死亡したこと又は人の重度の障害の状態となったことによって発生する損害を補償する保険契約において、保険金を請求する場合に、保険契約者等にとって合理的な限度を超えた立証責任を負わせていないか。

  • (4)(3)によらない場合において、保険金支払を制限する場合には免責事由に記載するなど、免責となることを保険者によって立証することが明確となっているか。

IV -2-6 保険契約者又は被保険者が保険約款に基づく義務の不履行のために受けるべき不利益に関する事項

  • (1)無選択更新契約となっている保険商品において、普通保険約款に定める告知義務違反に基づく契約解除期間(以下、「告反解除期間」という。)について各保険期間を通算する場合、告反解除期間が保険契約者等の保護の観点から、不当に長期間となっていないか。

  • (2)保険料が払い込まれなかった場合の保険契約者等の権利義務関係について、明確なものとなっているか。

IV -2-7 保険契約の全部又は一部の解除の原因及び当該解除の場合における当事者の有する権利及び義務

当事者が解除し得る事由が明確なものとなっているか。また、解除したことにより保険契約者等の権利を不当に侵害又は義務を不当に拡大していないか。

IV -2-8 契約者配当又は社員に対する剰余金の分配等

契約者配当等を支払うこととしている場合には、その支払事由等を明確に記載しているか。

IV -2-9 保険契約を更新する時の保険料その他の契約内容の見直しに関する事項

  • (1)更新時に保険料その他の契約内容の見直しを行うことがある旨を、普通保険約款において記載しているか。

  • (2)当該商品が不採算となり、更新契約の引受が困難となった場合には、少額短期保険業者はその契約の更新を引き受けないことがある旨を約款に記載しているか。

IV -2-10 保険法対応

「総合指針IV-1-18 保険法対応」に準じて取り扱うものとする。

IV -3 既契約に係る保険商品のうち売り止めにした商品の留意点

既契約に係る保険商品のうち売り止めにした商品を継続保有したまま少額短期保険業者の登録を行う場合、特定保険業者から他の少額短期保険業者へ既契約の包括移転等を行う場合において、法第272条の2第2項第2号から第4号に掲げる書類を作成しないままに業務を行っていた者については、その作成を求め、以下の点に留意することとする。また、同時期に同書類を変更する場合についても同様とする。

  • (1)規則第211条の4から第211条の6に定める記載事項がそれぞれ記載されているか。

  • (2)(1)の記載事項について、原則として従前の取扱内容と一致しているか。

  • (3)例外として、従前の取扱内容を変更する場合には、以下の2つの点を満たしているか。

    • マル1保険契約者にとって有利変更の場合には、必要に応じて契約者に通知を行うこととしているか。また、不利変更の場合には、必ず保険契約者の同意を得ているか。

    • マル2変更の内容が実行可能なものとなっているか。

IV -4 規則第211条の54に係る保険計理人の意見書

規則第211条の54に係る保険計理人意見書については、以下の事項に留意して的確であると判断しているか。

  • (1)保険料の算出方法及びその基礎

    • マル1保険料の算出方法及びその基礎については、十分性や公平性等を考慮して、合理的かつ妥当なものとなっているか。

    • マル2予定発生率及び損害額については、基礎データに基づいて合理的に算出が行われ、かつ、基礎データの信頼度に応じた補整が行われているか。

    • マル3予定利率については、保険種類、保険期間、保険料の払方を基に、適切な設定が行われているか。

    • マル4割引については、当該割引が数理的に見て合理的であるとともに、保険契約者間の公平性確保等に照らして問題がないものとなっているか。

    • マル5保障等の内容の改定に伴って、料率の改定を行っていない場合において、料率改定の必要性について十分な検証を行っているか。

  • (2)責任準備金の算出方法及びその基礎

    責任準備金の算出方法及びその基礎については、規則第211条の46に規定する事項が遵守されるものとなっているか。

  • (3)保険契約が解約された場合に払い戻される返戻金の算出方法及びその基礎

    保険契約が解約された場合に返還すべき返戻金の算出の方法及びその基礎については、支出した事業費及び投資上の損失、保険設計上の仕組み等に照らし、合理的かつ妥当に設定し、保険契約者にとって不当に不利益なものとなっていないか。

  • (4)社員配当準備金又は契約者配当準備金及び社員に対する剰余金の分配又は契約者配当の算出の方法

    社員配当又は契約者配当については、会社の健全性維持の必要額が準備されている状況において、個別契約の貢献に応じて行われる規定となっているか。

  • (5)その他保険数理に関して必要な事項

    (1)から(4)に掲げる事項以外に必要な事項を網羅しているか。

IV -5 商品販売予定を踏まえた効率的な保険商品審査の実施

保険商品審査において、少額短期保険業者から審査手続を円滑に進めるため事前の意見交換の要望がある場合には、別紙様式Ⅱ-9により作成した商品概要書、数理概要書等の提出を求めて意見交換を行うとともに、具体的な商品販売予定の有無を確認し、商品販売予定のある届出案件を優先するなど効率的な保険商品審査に努めるものとする。  

サイトマップ

ページの先頭に戻る